特許第5897941号(P5897941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5897941-2次電池の充放電検査装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897941
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】2次電池の充放電検査装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20160324BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20160324BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160324BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   H02J7/10 H
   H02J7/10 B
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-57705(P2012-57705)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-192395(P2013-192395A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年7月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117499
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−146372(JP,A)
【文献】 実開平01−146733(JP,U)
【文献】 特開昭62−210828(JP,A)
【文献】 特開2010−281717(JP,A)
【文献】 特開2011−211861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の2次電池を検査する充放電検査装置であって、
それぞれが前記2次電池ごとに設けられ、前記2次電池を充電する充電状態と、前記2次電池を放電し、その電力を1次側に回収する放電状態と、が切りかえ可能に構成される、複数の昇降圧コンバータと、
それぞれが前記2次電池ごとに設けられ、対応する前記2次電池の電圧および対応する前記2次電池に対する充放電電流の少なくとも一方を示す検出信号を生成する複数のセンサと、
それぞれが前記2次電池ごとに設けられ、対応する前記2次電池と対応する前記昇降圧コンバータの出力の間に設けられた、複数のリレーと、
前記複数のリレーを制御するコントローラであって、各センサからの前記検出信号が判定基準を満たすとき、前記判定基準を満たす検出信号を検出したセンサに対応する前記リレーを遮断するコントローラと、
前記コントローラとネットワークを介して接続され、前記複数のリレーそれぞれの前記判定基準を個別に指定する複数のデータを格納する管理サーバと、
を備え、
前記コントローラには、前記複数のリレーそれぞれの前記判定基準を個別に指定する前記複数のデータが、前記管理サーバから前記ネットワークを介して前記コントローラに伝送されることを特徴とする充放電検査装置。
【請求項2】
前記充放電検査装置は、N個(Nは2以上の整数)の2次電池を単位として構成され、
前記コントローラは、N個の昇降圧コンバータごとに設けられることを特徴とする請求項1に記載の充放電検査装置。
【請求項3】
各センサからの前記検出信号は、前記ネットワークを介して前記管理サーバに伝送されることを特徴とする請求項1または2に記載の充放電検査装置。
【請求項4】
前記複数の昇降圧コンバータの前段に設けられ、前記充電状態において、商用電源からの交流電圧を直流化して前記複数の昇降圧コンバータに供給するとともに、前記放電状態において、前記昇降圧コンバータからのエネルギーを前記商用電源に回収する電源装置をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の充放電検査装置。
【請求項5】
前記電源装置は、
前記ネットワークを介して各センサからの前記検出信号を受け、前記電源装置を制御するとともに、ある検出信号が所定の判定基準を満たすとき、その検出信号に対応する前記昇降圧コンバータに対する電力供給を制限するマスターコントローラを備えることを特徴とする請求項4に記載の充放電検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池を検査する充放電検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、ニッケル水素電池をはじめとする繰り返し充電可能な2次電池が広く利用されている。2次電池はその出荷前に、充放電検査装置を用いて正常に機能するかが検査される(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示されるように、充放電検査装置は、2次電池ごとに設けられ、2次電池に対する充電、放電を行う昇降圧コンバータを備える。昇降圧コンバータの前段には、2次電池の充電時において、商用交流電圧を直流電圧に変換して昇降圧コンバータに供給し、2次電池の放電時には、昇降圧コンバータにより放電された電流を、商用電源に回収する電源装置が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−146372号公報
【特許文献2】特開2011−24308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような充放電検査装置において、電池電圧VBATや充電電流ICHGが異常値となると、充放電検査装置自身、あるいは2次電池の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
そこで本発明者らは、異常時に充放電検査装置および2次電池を保護するために、諸降圧コンバータの出力と2次電池の間に、市販のメータリレーを設け、異常検出時にリレーを遮断することを検討した。
【0007】
メータリレーは、一般的に、電流あるいは電圧を表示する指示針(メータ)と、電流あるいは電圧が設定したしきい値を超えたときに遮断(あるいは導通)するリレーと、を備える。しきい値は、ダイヤルなどによってアナログ的に変更可能となっている。
【0008】
かかる構成では、電池と同数のメータリレーが必要となり、各メータリレーに対して、異常検出の判定基準であるしきい値を設定する必要がある。充放電検査装置が同じ種類の2次電池を同時に試験する場合、すべての2次電池に対して同じ判定基準を設定すればよい。
【0009】
一方で、異なる種類の2次電池を検査する場合、2次電池1ごとに最適な判定基準を設定する必要があるところ、数十〜数百のメータリレーに対して、作業者が手動でメータリレーのしきい値を変更することは現実的ではない。したがってメータリレーを用いる構成では、異なる種類の2次電池を検査する場合においても、すべての2次電池に対して同じ判定基準を適用せざるを得ない。その結果、ある2次電池に対しては基準が甘くなり、別の2次電池に対しては基準が厳しくなってしまう。
【0010】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、複数の2次電池を、最適な条件で個別に保護可能な充放電検査装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様の充放電検査装置は、複数の2次電池を検査する充放電検査装置であって、それぞれが2次電池ごとに設けられ、2次電池を充電する充電状態と、2次電池を放電し、その電力を1次側に回収する放電状態と、が切りかえ可能に構成される、複数の昇降圧コンバータと、それぞれが2次電池ごとに設けられ、対応する2次電池の電圧および対応する2次電池に対する充放電電流の少なくとも一方を示す検出信号を生成する複数のセンサと、それぞれが2次電池ごとに設けられ、対応する2次電池と対応する昇降圧コンバータの出力の間に設けられた、複数のリレーと、複数のリレーを制御するコントローラであって、各センサからの検出信号が判定基準を満たすとき、対応するリレーを遮断するコントローラと、コントローラとネットワークを介して接続され、リレーごとの判定基準を指定するデータを格納する管理サーバと、を備える。コントローラには、リレーごとの判定基準を指定するデータが、管理サーバからネットワークを介してコントローラに伝送される。
【0012】
この態様によると、複数の2次電池それぞれについて、異常判定の条件を個別かつ一括して設定することができる。その結果、複数の2次電池を、最適な条件で個別に保護できる。
【0013】
充放電検査装置は、N個(Nは2以上の整数)の2次電池を単位として構成され、コントローラは、N個の昇降圧コンバータごとに設けられてもよい。
【0014】
各センサからの検出信号は、ネットワークを介して前記管理サーバに伝送されてもよい。これにより、ネットワークに接続されるさまざまなユニットが、各2次電池それぞれの状態をモニターすることが可能となる。
【0015】
ある態様の充放電検査装置は、複数の昇降圧コンバータの前段に設けられ、充電状態において、商用電源からの交流電圧を直流化して複数の昇降圧コンバータに供給するとともに、放電状態において、昇降圧コンバータからのエネルギーを商用電源に回収する電源装置をさらに備えてもよい。
【0016】
電源装置は、ネットワークを介して各センサからの検出信号を受け、電源装置を制御するとともに、ある検出信号が所定の判定基準を満たすとき、その検出信号に対応する昇降圧コンバータに対する電力供給を制限するマスターコントローラを備えてもよい。
これにより、下流の昇降圧コンバータに加えて、上流の電源装置において異常検出および保護を行うことが可能となり、堅牢なシステムが構築できる。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の2次電池を、最適な条件で個別に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係る充放電検査装置を示すブロック図である。
図2】コントローラの構成例を示す回路図である。
図3図3(a)、(b)は、変形例に係る昇降圧ユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
図1は、実施の形態に係る充放電検査装置2を示すブロック図である。充放電検査装置2は、検査対象の複数N個(Nは2以上の整数)の2次電池1を充電し、あるいは放電することにより、2次電池1の電気的特性が仕様を満たしているかを検査する。2次電池1は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが例示されるが、特に限定されない。
【0023】
充放電検査装置2は、複数M個(Mは2以上の整数)の2次電池1を単位として構成される。M個の2次電池1が検査単位40を構成しており、それらがひとつの検査パレットに搭載されて搬入、搬出される。
【0024】
充放電検査装置2は、最大でL個(Lは2以上の整数)の検査単位40を同時に検査可能に構成される。つまり充放電検査装置2は、N=M×L個の2次電池1を同時に検査可能である。j番目(1≦j≦L)の検査単位40[j]に含まれる、i番目(1≦i≦M)の2次電池1を、1[j,i]と記す。
【0025】
充放電検査装置2は、電源装置10、L個の昇降圧ユニット20、管理サーバ30、ネットワーク32、コンピュータ34を備える。電源装置10はひとつの筐体内に設けられ、L個の昇降圧ユニット20は、電源装置10とは別のひとつの筐体内に設けられる。
【0026】
L個の昇降圧ユニット20はそれぞれ、検査単位40ごとに設けられる。電源装置10と、L個の昇降圧ユニット20それぞれの間は、電力線L1[1:L]を介して接続される。電源装置10は、電力線L1[1〜L]を介して、L個の昇降圧ユニット20に対して直流リンク電圧V2を供給する。
【0027】
j番目(1≦j≦L)の昇降圧ユニット20[j]は、対応する検査単位40[j]に含まれるM個の2次電池1[j,1]〜1[j,M]を充電し、あるいは放電可能に構成されている。昇降圧ユニット20[j]は、コントローラ22[j]、M個の昇降圧コンバータ24[j,1]〜24[j,M]、M個のリレー26[j,1]〜26[j,M]、M個のセンサ28[j,1]〜28[j,M]を備える。
【0028】
昇降圧コンバータ24[j,1]〜24[j,M]はそれぞれ、対応する検査単位40[j]に含まれるM個の2次電池1[j,1]〜1[j,M]に対応付けられる。昇降圧コンバータ24[j,i]は、対応する2次電池1[j,i]を充電する充電状態と、対応する2次電池1[j,i]を放電し、その電力を1次側に回収する放電状態と、が切りかえ可能に構成される。昇降圧コンバータ24の構成は特に限定されず、公知の回路を用いればよい。
【0029】
M個のセンサ28[j,1]〜28[j,M]はそれぞれ2次電池1[j,1]〜1[j,M]ごとに設けられる。センサ28[j,i]は、対応する2次電池1[j,i]の電圧VBATおよび対応する2次電池1[j,i]に対する充放電電流ICHGの少なくとも一方を示す検出信号を生成する。好ましくはセンサ28[j,i]は、電池電圧VBATを示す電圧検出信号Svj,iと、充放電電流ICHGを示す電流検出信号Sij,iの両方を生成する。センサ28の構成も特には限定されず、公知の技術を用いればよい。複数のセンサ28[j,1]〜28[j,M]により生成される検出信号Svj,1〜j,M、Sij,1〜j,Mは、コントローラ22[j]に入力される。
【0030】
リレー26[j,1]〜26[j,M]はそれぞれ2次電池1[j,1]〜1[j,M]ごとに設けられる。リレー26[j,i]は、対応する2次電池1[j,i]と対応する昇降圧コンバータ24[j,i]の出力の間に設けられる。
【0031】
コントローラ22[j]は、昇降圧コンバータ24[j,1]〜24[j,M]を制御するとともに、リレー26[j,1]〜26[j,M]の導通、遮断を制御する。コントローラ22[j]は、ネットワーク32を介して管理サーバ30と接続されており、管理サーバ30内のデータにアクセス可能となっている。具体的には、コントローラ22[j]は、管理サーバ30に格納されたデータをダウンロード(読み出し)可能であり、またセンサ28[j,1]〜28[j,M]により測定された検出信号Svj,1〜j,M、Sij,1〜j,Mなどの情報を管理サーバ30にアップロード(書き込み)可能となっている。
【0032】
コントローラ22[j]は、センサ28[j,1]〜28[j,M]からの検出信号Sij,1〜j,M、Svj,1〜j,Mを受け、それにもとづいてリレー26[j,1]〜26[j,M]の導通、遮断を制御する。具体的にはコントローラ22[j]は、センサ28[j,i]からの検出信号Sij,i、Svj,iが、所定の判定基準を満たすとき、そのセンサに対応するリレー26[j,i]を遮断する。
【0033】
ここで、管理サーバ30には、すべての昇降圧ユニット20[1]〜20[L]内のすべてのリレー26[1,1]〜26[L,M]について、各リレー26ごとの判定基準を指定するデータDv、Diが格納可能となっている。そして、j番目の昇降圧ユニット20[j]のコントローラ22[j]には、その昇降圧ユニット20[j]内のリレー26[j,1]〜26[j,M]それぞれに対する判定基準を指定するデータDvj,1〜j,M、Dij,1〜j,Mが伝送される。
【0034】
管理サーバ30には、レシピと称される検査工程を記述するファイルが格納される。作業者は、コンピュータ34を利用して、検査工程に先立ってレシピを作成し、管理サーバ30に格納する。レシピには、搬入される2次電池1の種類、充電電流の目標値、充電時間、放電電流の目標値、放電時間、充放電のサイクル数などが記述される。上述のデータDv、Diは、レシピ内に記述されてもよいし、別ファイルに記述されてもよい。
【0035】
図2は、コントローラ22[j]の構成例を示す回路図である。コントローラ22[j]はたとえば市販のマイコン、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される。コントローラ22[j]は、インタフェース回路50、M個のリレー制御部52[j,1]〜52[j,M]を備える。
【0036】
インタフェース回路50は、ネットワーク32を介して管理サーバ30と接続される。リレー制御部52[j,i]は、対応するリレー26[j,i]を制御する。リレー制御部52[j,i]には、対応するセンサ28[j,i]からの検出信号Sij,i、Svj,iが入力される。インタフェース回路50は、ネットワーク32を介して管理サーバ30から、対応するリレー26[j,i]に対する判定基準を示すデータDij,i、Dvj,iを読み出し、レジスタ54に格納する。デジタルコンパレータ56は、検出信号Sij,iと、データDij,iが示す上限値を比較し、充放電電流ICHGが上限を超えたときにアサート(たとえばハイレベル)されるオフ信号S1を生成する。デジタルコンパレータ58は、検出信号Svj,iと、データDvj,iが示す上限値を比較し、電池電圧VBATが上限値を超えたときにアサート(たとえばハイレベル)されるオフ信号S2を生成する。論理ゲート60は、少なくとも一方のオフ信号S1、S2がアサートされると、対応するリレー26[j,i]をオフする。
【0037】
つまりコントローラ22は、2次電池1[j,i]の電池電圧VBATが、データDvj,iが指定する上限値を超えると、その2次電池1[j,i]に対応するリレー26[j,i]をオフする。またコントローラ22は、2次電池1[j,i]に対する充放電電流ICHGが、データDij,iが指定する上限値を超えると、その2次電池1[j,i]に対応するリレー26[j,i]を遮断する。
【0038】
電源装置10は、マスターコントローラ12、回生コンバータ14、L個の双方向コンバータ16[1]〜16[L]を備える。図1では単一の回生コンバータ14のみが示されるが、実際には充放電検査装置2の規模に応じて、回生コンバータ14が複数設けられてもよい。
【0039】
回生コンバータ14は、その1次側が商用交流電源と接続され、その2次側がL個の双方向コンバータ16[1]〜16[L]の1次側と接続される。回生コンバータ14は、その2次側の消費電力が正であるとき、商用交流電源からの交流電圧VACを第1直流リンク電圧V1に変換し、双方向コンバータ16[1]〜16[L]に供給する。反対に、回生コンバータ14はその2次側の消費電力が負であるとき、2次側の電力を商用交流電源側に回収する。
【0040】
双方向コンバータ16[1]〜16[L]はそれぞれ、昇降圧ユニット20ごとに設けられる。j番目(1≦j≦L)の双方向コンバータ16[j]は、その2次側に接続される昇降圧ユニット20[j]の消費電力が正であるとき、第1直流リンク電圧V1を第2直流リンク電圧V2に変換する。反対に、双方向コンバータ16[j]は、その2次側に接続される昇降圧ユニット20[j]の消費電力が負であるとき、2次側の電力を回生コンバータ14側に回収する。
【0041】
マスターコントローラ12は、管理サーバ30に格納されたレシピと、センサ28[1,1]〜28[L,M]によって測定された各種情報にもとづいて、回生コンバータ14および双方向コンバータ16[1]〜16[L]の動作状態を制御する。
【0042】
以上が充放電検査装置2の構成である。続いてその動作を説明する。
【0043】
作業者によってレシピが作成され、管理サーバ30にアップロードされる。コンピュータ34上の検査プログラムが実行されると、レシピにしたがって電源装置10および昇降圧ユニット20[1]〜20[L]が制御され、N個の2次電池1が検査される。
【0044】
管理サーバ30には、N=M×L個の2次電池1それぞれについて、判定基準を示すデータDi、Dvが格納されている。j番目の昇降圧ユニット20[j]のコントローラ22[j]には、検査単位40[j]に含まれる2次電池1[j,1]〜1[j,M]に対応するデータDij、1〜j、M、Dvj、1〜j、Mが伝送される。コントローラ22[j]は、伝送されたデータDij、1〜j、M、Dvj、1〜j、Mにもとづいて、2次電池1[j,1]〜1[j,M]の異常を検出する。
【0045】
以上が充放電検査装置2の動作である。
この充放電検査装置2によれば、複数の2次電池1それぞれについて、異常判定の条件を個別かつ一括して設定することができる。その結果、複数の2次電池を、最適な条件で個別に保護できる。
【0046】
また、メータリレーを用いる場合に比べて、格段に速いスピードで、全チャンネルの条件設定が可能となる。
【0047】
さらに検査の途中においても、任意のチャンネル[j,i]に関して、任意のタイミングで異常判定の条件を変更することも可能となる。たとえば検査の途中で、あるチャンネルに搬送される2次電池1[j,i]の種類が変更になるような場合、それにあわせてデータDij,i,Dvj,iを書き換えることにより、新しい種類の電池に応じた異常判定が可能となる。
【0048】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0049】
(第1変形例)
図2の昇降圧ユニット20[j]では、デジタル比較処理、言い換えればソフトウェア処理によって異常判定を行ったが本発明はそれには限定されない。たとえばデジタル比較処理に代えて、あるいはそれに加えて、アナログコンパレータによるハードウェア処理によって異常判定を行ってもよい。図3(a)、(b)は、変形例に係る昇降圧ユニット20[j]の構成を示す図である。M個のチャンネルは同様に構成されるため、i番目のチャンネルのみを示している。
【0050】
図3(a)の昇降圧ユニット20[j]において、センサ28[j,i]は電池電圧VBATに応じた検出信号Svj,iを生成する。可変電圧源66[j,i]は、デジタル制御の可変電圧源であり、デジタル/アナログ変換器であってもよい。コントローラ22[j]は、データDvj,iを可変電圧源66[j,i]に対して出力する。可変電圧源66[j,i]は、データDvj,iに応じた電圧レベルのしきい値電圧Vthvj,iを生成する。アナログコンパレータ64[j,i]は、しきい値電圧Vthvj,iと、センサ28の出力電圧Svj,iを比較する。そして電池電圧VBATがデータDvj,iに応じた上限値を超えると電磁リレー26[j,i]を遮断する。可変電圧源66[j,i]はコントローラ22[j]に内蔵されてもよい。この変形例によれば、ハードウェア処理によって、電池電圧の異常を検出でき、2次電池1ごとに、判定基準を個別に設定できる。
【0051】
ヒューズ62は、充放電電流ICHGが所定のしきい値を超えると切断する。これにより充放電電流ICHGの異常を検知でき、回路を保護できる。また、コントローラ22[j]によるソフトウェア処理による異常検出と、ハードウェアによる異常検出を組み合わせることにより、より堅牢なシステムを構築できる。
【0052】
図3(b)の昇降圧ユニット20[j]において、センサ28[j,i]は電池電圧VBATと充放電電流ICHGを検出する。
【0053】
電流センサ28a[j,i]は、充放電電流ICHGの経路上に設けられたセンス抵抗Rsの電圧降下にもとづいて、充放電電流ICHGに応じた検出信号Sij,iを生成する。コントローラ22[j]はデータDij,iに応じたしきい値電圧Vthij,iを出力する。アナログコンパレータ64a[j,i]は、しきい値Vthij,iを比較し、充放電電流ICHGの異常を検出する。アナログコンパレータ64b[j,i]とセンサ28b[j,i]は、図3(a)のアナログコンパレータ64[j,i]とセンサ28[j,i]に対応する。
【0054】
論理ゲート68[j,i]は、アナログコンパレータ64a[j,i]とアナログコンパレータ64b[j,i]の少なくとも一方が異常を検知すると、リレー26[j,i]を遮断する。
【0055】
この変形例によれば、ハードウェア処理によって、電池電圧の異常および充放電電流の異常を検出でき、また2次電池1ごとに、判定基準を個別に設定できる。図3(a)の構成では、過電流異常によりヒューズ62が切断すると、ヒューズ62を交換するまで次の検査が行えないが、図3(b)の構成では、充放電電流の異常時においてもリレー26により回路を保護するため、ヒューズ62を交換する手間が省ける。
【0056】
(第2変形例)
電池の種類が定まれば、その電池に対して設定すべき判定基準が定まる。そこでレシピに記述される2次電池1[j,i]の種類に応じて、それに対応するリレー26の判定基準であるデータDv、Diを生成してもよい。これは、電池の種類と、判定基準であるデータDi,Dvの関係を示すテーブルを管理サーバ30に格納しておくことで実現できる。あるいは、検査プログラムに、電池の種類と、最適なデータDi、Dvの関係式を記述し、演算によってデータDi,Dvを生成してもよい。
【0057】
(第3の変形例)
上述のように、センサ28[j,i]により測定された検出信号Svj,i、Sij,iなどの情報は、管理サーバ30にアップロードされる。したがって、電源装置10に設けられたマスターコントローラ12は、これらの検出信Svj,i、Sij,iにもとづいて、各2次電池1の電圧異常、あるいは電流異常を検知できる。マスターコントローラ12による異常検出は、図2のコントローラ22[j]のリレー制御部52[j]と同様の構成で実現してもよい。
【0058】
マスターコントローラ12は、ある2次電池1[j,i]において異常が検出されると、それに対応する昇降圧コンバータ24[j,i]に対する電力供給を制限してもよい。電力供給の制限は、双方向コンバータ16[j]あるいは回生コンバータ14を制御することで実現できる。
【0059】
このように、マスターコントローラ12を用いて、昇降圧コンバータ24よりも上流において異常検出および保護を行うことにより、より堅牢なシステムを構築できる。
【0060】
(第4の変形例)
実施の形態では、回生コンバータ14と昇降圧ユニット20の間に双方向コンバータ16を設ける場合を説明したが、双方向コンバータ16を省略してもよい。
【0061】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0062】
1…2次電池、2…充放電検査装置、4…回生コンバータ、6…双方向コンバータ、8…昇降圧コンバータ、10…電源装置、12…マスターコントローラ、14…回生コンバータ、16…双方向コンバータ、20…昇降圧ユニット、22…コントローラ、24…昇降圧コンバータ、26…リレー、28…センサ、30…管理サーバ、32…ネットワーク、34…コンピュータ、40…検査単位、50…インタフェース回路、52…リレー制御部、54…レジスタ、56,58…デジタルコンパレータ、60…論理ゲート、62…ヒューズ、64…アナログコンパレータ、66…可変電圧源、68…論理ゲート。
図1
図2
図3