(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
〔ベーンポンプの概要〕
図1は、実施例1の可変容量型ベーンポンプ1の軸方向断面図(
図2のI−I断面図)、
図2は可変容量型ベーンポンプ1の径方向断面図(
図1のII−II断面図)である。
図2はカムリング4が最もy軸負方向に位置する場合(偏心量最大)を示す。
実施例1の可変容量型ベーンポンプ1は、車両に搭載されるパワーステアリング装置に作動油を供給するものであり、図外のエンジンにベルト等を介して駆動されるプーリ9に駆動軸2が連結されている。
図2の断面図は、ポンプ機能の説明を簡便にするべく、油路構成等を概略的に示すものである。なお、駆動軸2の軸方向をx軸とし、ポンプボディ10に対して駆動軸が挿入される方向を正方向とする。また、カムリング4の揺動を規制するカムスプリング201(
図2参照)の軸方向であってカムリング4を付勢する方向をy軸負方向、x,y軸と直行する軸であって吸入通路IN側をz軸正方向とする。実施例1のベーンポンプは、リザーバタンクRESから吸入した作動油を必要な圧に昇圧し、必要な流量をパワーステアリング装置に供給する。
可変容量型ベーンポンプ1は、駆動軸2と、ロータ3と、カムリング4と、アダプタリング5と、ポンプボディ10とを有する。駆動軸2はエンジンとプーリ9を介して接続され、ポンプボディ10に回転自在に支持される。ロータ3は、駆動軸によって回転駆動される回転体であり、このロータ3の外周には軸方向溝である複数のスリット31が放射状に形成されている。この各スリット31には、ロータ3と略同じx軸方向長さを有する板状のベーン32が径方向に進退自在に挿入される。また、各スリット31の内径側端部には背圧室33が設けられ、作動油が供給されてベーン32を径方向外側に付勢する。
【0009】
ポンプボディ10はフロントボディ11およびリアボディ12から形成されている。フロントボディ11はx軸正方向側に開口する有底カップ形状であり、フロントボディ11の内周部には筒状のポンプ要素収容部112が形成されている。ポンプ要素収容部112のx軸負方向側は底部111によって閉塞されている。この底部111には円盤状のプレッシャプレート6が収装されている。フロントボディ11とリアボディ12は複数のボルトによって締結固定されている。ポンプ要素収容部112内であって、プレッシャプレート6のx軸正方向側には、アダプタリング5、カムリング4およびロータ3が収装されている。リアボディ12は、x軸正方向側からアダプタリング5,カムリング4およびロータ3と液密に当接し、アダプタリング5,カムリング4およびロータ3はプレッシャプレート6およびリアボディ12に狭持される。
【0010】
アダプタリング5は、筒状部であるポンプ要素収容部112内に設けられ、内部にカムリング収容部54(収容空間)が形成される円環状の部材である。なお、アダプタリング5の形状は、内部に収容空間が形成されるように少なくとも円弧形状の部分を備えていればよく、リング状に限らずCの字状に形成されていてもよい。アダプタリング5のy軸正方向端部には、径方向貫通孔51が設けられている。また、フロントボディ11のy軸正方向端部にはプラグ部材挿入孔114が設けられ、有底カップ形状のプラグ部材73が挿入されてフロントボディ11と外部との液密性を確保する。このプラグ部材73の内周にはカムスプリング201がy軸方向に伸縮可能に挿入され、アダプタリング5の径方向貫通孔51を貫通してカムリング4に当接し、y軸負方向へ付勢する。カムスプリング201は揺動量が最大となる方向にカムリング4を付勢し、圧力の安定しないポンプ始動時において吐出量(カムリング揺動位置)を安定させるものである。
【0011】
アダプタリング5の内部にはカムリング収容部54が形成されている。このカムリング収容部54内に駆動軸2に対して移動可能に設けられたカムリング4を有し、ロータ3およびベーン32と共に複数のポンプ室13を形成する。カムリング4は、アダプタリング5のカムリング収容部54内に移動可能に設けられ、軸方向長さがアダプタリング5の軸方向長さよりも短くなるように形成された環状の部材である。
アダプタリング5とカムリング4との間には、ピン40aが設けられている。このピン40aによりポンプ駆動時にアダプタリング5がフロントボディ11内で回転しないようにしている。またカムリング4は支持板40上をy軸方向に揺動可能に設けられている。
アダプタリング内周面53のz軸正方向端部にはシール部材50が設けられ、z軸負方向端部には支持面Nが形成され、支持面Nには支持板40が設けられている。この支持板40とシール部材50により、カムリング4とアダプタリング5との間の第1流体圧室A1と第2流体圧室A2との隔成している。第1流体圧室A1は、カムリング収容部54内で、かつ、カムリング4の外周側に設けられ、複数のポンプ室13の容積が増大する方向にカムリング4が移動するとき内部容積が減少する側に形成されている。第2流体圧室A2は、カムリング収容部54内で、かつ、カムリング4の外周側に設けられ、複数のポンプ室13の容積が増大する方向にカムリング4が移動するとき内部容積が増大する側に形成されている。
アダプタリング5のz軸正方向側であってシール部材50のy軸負方向側には貫通孔52が設けられている。この貫通孔52はそれぞれフロントボディ11内に設けられた制御圧油路113を介してスプール70へ連通し、y軸負方向側の第1流体圧室A1とスプール70を接続する。
【0012】
(フロントボディの構成)
フロントボディ11には、駆動軸2を軸支する軸支部117が形成されている。この軸支部117は底部111に貫通形成されている。軸支部117のプーリ9側端部にはオイルシール2aが設けられ、ベーンポンプ内の液密性を確保している。フロントボディ11のz軸正方向側には第1流体圧室A1内の圧力を制御することによりカムリング4の偏心量を制御する圧力制御手段であるスプール70を収装する制御バルブ収容孔116と、吸入通路INからの作動油をスプール70に導入する制御弁用吸入油路115と、第1流体圧室A1内に制御圧を吐出する制御圧油路113とを有する。
また、底部111には、後述するプレッシャプレート6の第2吸入口62と対向する位置に窪ませて形成された吸入溝111bと、第2吐出口63と対向する位置に窪ませて形成された吐出溝111aと、吸入側背圧溝64のx軸負方向側面に対向する吐出圧導入溝111cと、吐出溝111aに接続されパワーステアリング装置に作動油を送出する吐出通路20とを有する。吸入溝111bには吸入圧が作用し、吐出溝111aと吐出圧導入溝111cには吐出圧が作用する。吸入溝111bには潤滑油路118がx軸に対して斜めに穿設され、オイルシール2aへ潤滑油を供給している。
(プレッシャプレートの構成)
プレッシャプレート6は、筒状部であるポンプ要素収容部112内に設けられ、アダプタリング5と底部111との間に配置されている。また、プレッシャプレート6は、アダプタリング5の軸方向一方側の端面と当接する当接部であるx軸正方向側側面61と、駆動軸2が貫通可能に形成された孔部であって駆動軸2と軸方向に相対移動可能となるように形成された貫通孔66を有する。
プレッシャプレート6のx軸正方向側側面61には、z軸正方向側に円弧状に配置された第2吸入口62と、z軸負方向側に円弧状に配置された第2吐出口63と、背圧室33に吐出圧を導入する吸入側背圧溝64および吐出側背圧溝65とが形成されている。第2吸入口62は、カムリング4の軸方向一端面に対向するように配置され、駆動軸2の回転に伴い複数のポンプ室13の容積が増大する吸入領域に開口するように形成されている。
またプレッシャプレート6は、吐出溝111aと吐出圧導入溝111cの吐出圧がx軸負方向側面67に作用することによりアダプタリング5側に付勢される。
【0013】
(リアボディの構成)
リアボディ12には、作動油を貯留するリザーバタンクRESから第1吸入口122に作動油を導入する吸入通路12aがz軸方向に形成されている。吸入通路12aのz軸正方向側にはスプール70に作動油を供給する油路12dが形成されている。リアボディ12の略中心部には駆動軸2を軸支する有底状の軸支部12cが形成されている。吸入通路12aの下端には軸支部12cと連通する潤滑油路12bが形成され、駆動軸2と軸支部12c内との摺動における潤滑性を確保している。
リアボディ12のx軸負方向側には円形状に隆起したポンプ形成面120を有する。このポンプ形成面120は、カムリング4の他端側をプレッシャプレート6側と定義したとき、カムリング4の一端側に位置することになる。ポンプ形成面120には、カムリング4の軸方向一端面に対向するように配置され、吸入領域に開口するように第1吸入口122が形成されている。また、カムリング4の軸方向一端面に対向するように配置され、吐出領域に開口するように第1吐出口123が形成されている。また、ポンプ形成面120には背圧室33には、吐出圧を導入する吸入側背圧溝124および吐出側背圧溝125が形成されている。
【0014】
図3はリアボディ12をx軸正方向側から見た図である。
図4はリアボディ12の軸方向断面図(
図3のIII−III断面図)である。
図5はリアボディ12の斜視図である。
図6はリアボディ12を吸入通路12aの軸線および軸支部12cの軸線を通る面で切断した状態の斜視図である。
リアボディ12をy軸負方向側から見たときに、カムリング4とオーバラップする領域(
図3に示す領域C)であって吸入領域に対応する範囲には、他よりもx軸方向の厚さが厚い厚肉部12eが形成されている。また、軸支部12cに対応する位置には厚肉部12eに連続して凸状の軸支凸部12gが形成され、軸支凸部12gのz軸負方向側には軸支凸部12gに連続して凸状のボルトボス12hが形成されている。ボルトボス12hには、ポンプボディ10を車両側に固定する際にボルトが挿入されるねじ部12iが形成されている。
リアボディ12をy軸負方向側から見たときに、ロータ3とオーバラップする領域(
図3に示す領域D)であって吸入領域に対応する範囲(ボルトボス12hは除く)には凹状の薄肉部12fが形成されている。この薄肉部12fの底面12jのx軸方向位置(
図4に示す点線Eの位置)、軸支部12cの底面のx軸方向位置(
図4に示す点線Fの位置)よりもフロントボディ11側(x軸負方向側)に位置し、底面12jとリアボディ12のx軸負方向側のポンプ形成面120との厚さは、リアボディ12のx軸方向厚さのなかで最も薄い箇所となっている。
薄肉部12fは約半周にわたって周方向に形成されているが、その周方向中間部付近にはボルトボス12hが形成されている。すなわち薄肉部12fは二カ所に形成されていることとなる。それぞれの薄肉部12fは、径方向長さ(凹部形状の幅)よりも周方向長さの方が長い形状に形成されている。
薄肉部12fの底面12jの径方向外側の位置(
図4に示す点線Gの位置)は、リアボディ12のx軸負方向側のポンプ形成面120に形成された第1吐出口123とオーバラップするように形成されている。また、薄肉部12fの底面12jの径方向内側の位置(
図4に示す点線Hの位置)は、リアボディ12のx軸負方向側のポンプ形成面120に形成された吐出側背圧溝125とオーバラップするように形成されている。
【0015】
〔制御部の構成〕
可変容量型ベーンポンプ1の制御部は、第1流体圧室A1、第2流体圧室A2、制御バルブ7と吐出通路20から構成されている。
吐出通路20は、ポンプボディ10内において各部を接続する作動油の通路である。フロントボディ11には、y軸方向に延びる略円筒状の制御バルブ収容孔116が形成されており、制御バルブ収容孔116には制御バルブ7が収容される。
制御バルブ7はスプール70の位置を変位させることで、第1流体圧室A1への作動油の供給を切り替える。
図2の状態では、制御圧油路113と後述する低圧室116bが連通した状態となっており、第1流体圧室A1には吸入圧が作用している。
スプール70のy軸正方向側にはバルブスプリング71が圧縮状態で設置され、スプール70をy軸負方向側に常時付勢している。スプール70のy軸負方向側には制御バルブ収容孔116の開口部を閉塞する蓋部材72が螺合されている。
スプール70は、y軸負方向側から順に、第1小径部70a、第1ランド部70b、第2小径部70c、第2ランド部70dが形成されている。第1ランド部70bと第2ランド部70dの外径は制御バルブ収容孔116の内径とほぼ同径に形成されており、また、第1小径部70aと第2小径部70cの外径は制御バルブ収容孔116の内径よりも小径に形成されている。制御バルブ収容孔116内は、制御バルブ収容孔116の内周、第1小径部70aの外周、蓋部材72、第1ランド部70bに囲まれた空間により高圧室116aが形成されている。また制御バルブ収容孔116の内周、第2小径部70cの外周、第1ランド部70b、第2ランド部70dに囲まれた空間により低圧室116bが形成されている。また制御バルブ収容孔116の内周およびy軸正方向側端面、第2ランド部70dにより中圧室116cが形成されている。
【0016】
高圧室116aと中圧室116cは共に吐出通路20と連通している。吐出通路20は吐出溝111aに連通し、通路21と通路22に分岐する。通路22は高圧室116aに接続し、通路21は中圧室116cに接続する。通路21の途中にメータリングオリフィス23が設けられている。メータリングオリフィス23により、可変容量型ベーンポンプ1の吐出流量が多くなるほど、メータリングオリフィス23の前後の差圧が大きくなる。すなわち、吐出圧が高くなるほど、高圧室116aの油圧に対して、中圧室116cの油圧は低くなる。
スプール70の内部にはy軸正方向側が開口するリリーフバルブ収容孔70eが形成されている。リリーフバルブ収容孔70eには、リリーフバルブ8が収容される。中圧室116cの油圧が高くなりすぎたときに、中圧室116cと低圧室116bとを連通するものである。リリーフバルブ8はy軸負方向側から順に、バルブスプリング80、スプリング保持部材81、ボールプラグ82、シート部材83が設けられている。シート部材83は軸方向に貫通する貫通孔83aが形成されており、リリーフバルブ収容孔70e内に圧入されている。バルブスプリング80はリリーフバルブ収容孔70eのy軸負方向側の底面と、スプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材81を介してボールプラグ82をシート部材83方向に付勢している。スプール70には、ボールプラグ82が位置する付近にリリーフバルブ収容孔70eと第2小径部70cの外周とを貫通する貫通孔70fが形成されている。すなわち、リリーフバルブ収容孔70eのボールプラグ82よりy軸負方向側は低圧室116bと連通している。
【0017】
〔作用〕
(第1および第2流体圧室への作動油の供給)
次に、作動油の供給に関する作用について説明する。
制御バルブ収容孔116の高圧室116aには通路22が接続し、中圧室116cには通路21が接続する。通路21の途中に設けられたメータリングオリフィス23により、可変容量型ベーンポンプ1の吐出流量が多くなるほど、メータリングオリフィス23の前後の差圧が大きくなる。すなわち、吐出流量が多くなるほど、高圧室116aの油圧に対して、中圧室116cの油圧は低くなる。このときの差圧とスプール70のy軸正方向側に設けられたバルブスプリング71の付勢力によってスプール70の位置が制御され、制御圧を生成する。
具体的には、可変容量型ベーンポンプ1の吐出流量が少なく、メータリングオリフィス23前後の差圧が小さいときには、高圧室116a内の油圧と中圧室116c内の油圧との差圧は小さい。そのため、スプール70が中圧室116c内の油圧とバルブスプリング71から受けるy軸負方向の付勢力に対して、高圧室116a内の油圧から受けるy軸正方向の付勢力が小さく、スプール70はy軸負方向側に移動している(スプール70は
図2に示す位置に位置する)。このとき第1流体通路A1は低圧室116bと連通し、制御圧として吸入圧が導入されることとなる。
【0018】
可変容量型ベーンポンプ1の吐出流量が多くなると、吐出流量の上昇に伴いメータリングオリフィス23前後の差圧が大きくなる。これに伴い、スプール70が中圧室116c内の油圧とバルブスプリング71から受けるy軸負方向の付勢力に対して、高圧室116a内の油圧から受けるy軸正方向の付勢力が大きくなると、スプール70はy軸正方向側に移動し始める。スプール70がy軸正方向側に移動すると、第1ランド部70bによって低圧室116bに開口する制御圧油路113の開口面積が徐々に小さくなり、逆に高圧室116aに開口する制御圧油路113の開口面積が徐々に大きくなる。最後には、低圧室116bと制御圧油路113との連通は遮断され、高圧室116aと制御圧油路113とが連通されることとなる。このとき第1流体圧室A1には制御圧として吸入圧が導入されることとなる。なお制御圧油路113が、高圧室116aと低圧室116bの両方に開口しているときには、それぞれの開口割合に応じた圧力に調圧されたものが制御圧として第1流体圧室A1に導入される。
前述のように、第1流体圧室A1にはスプール70の位置に応じた制御圧が導入される。一方、第2流体圧室A2は第2吸入口62と第1吸入口122と連通し、吸入圧が導入される。したがって、第2流体圧室A2には常時吸入圧が導入され、これにより可変容量型ベーンポンプ1は第1流体圧室A1の油圧P1のみ制御される。第2流体圧室A2の油圧P2は制御されず常時P2=吸入圧となるため、第2流体圧室A2は安定した圧力を得ることが可能となり、油圧外乱を防止して安定したカムリング4の揺動制御が実行可能となる。
【0019】
(カムリングの偏心動作)
カムリング4が第1流体圧室A1の油圧P1から受けるy軸正方向の付勢力が、第2流体圧室A2の油圧P2とカムスプリング201から受けるy軸負方向の付勢力の和よりも大きくなれば、カムリング4は支持板40上を転がりながらy軸正方向に移動する。この移動によりy軸正方向側のポンプ室13は容積が拡大し、y軸負方向側のポンプ室13は容積が減少する。
y軸負方向側のポンプ室13の容積が減少すると、単位時間当たりに吸入側から吐出側に供給される油量が減少し、メータリングオリフィス23の上流圧と下流圧との差圧が低下する。これにより、スプール70はバルブスプリング71により押し戻され、スプール70の制御圧が下げられる。よって、第1流体圧室A1の油圧P1も低下し、y軸負方向への付勢力の和に抗し切れなくなると、カムリング4はy軸負方向側に移動する。
y軸正・負方向の付勢力がほぼ等しくなると、カムリング4に作用するy軸方向の力がつりあってカムリング4は静止する。これにより油量が増加するとメータリングオリフィス23の差圧が上昇し、スプール70はバルブスプリング71を押してバルブ制御圧が上昇する。このため、上記とは逆にカムリング4はy軸正方向へ移動する。実際にはカムリング4は移動ハンチングを起こすことなく、メータリングオリフィス23のオリフィス径とバルブスプリング71とにより設定された流量が一定となるようにカムリング4の偏心量が決定される。
【0020】
(リアボディの変形均一化)
従来、リアボディ12のx軸正方向側とx軸負方向側の外観の厚みは、吸入領域に対応する部分でも吐出領域に対応する部分でもほぼ均一に形成されていた。リアボディ12の吸入領域に対応する部分には吸入通路12aが形成される一方、吐出領域に対応する部分は密実に形成されていた。したがって、リアボディ12の吸入領域側は、吐出領域側に比べて剛性が低い。
吸入領域であっても、プレッシャプレート6はフロントボディ11の底部111に形成された吐出圧導入溝111cに導入される吐出圧によってx軸正方向に押圧される。またプレッシャプレート6の吸入側背圧溝64、吸入領域に位置するロータ3の背圧室33、リアボディ12の吸入側背圧溝124には吐出圧が作用する。そのため、剛性が低いリアボディ12の吸入領域側に応力が集中し、吐出領域側に比べて吸入領域側の変形が大きくなるおそれがある。したがって、リアボディ12のポンプ形成面120の吸入領域がx軸正方向側により変形することとなり、ロータ3とポンプ形成面120の吐出領域とが片当たりし、かじりが生じるおそれがあった。
【0021】
そこで実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12のx軸正方向側の面に、x軸正方向側に向かって開口する凹形状の薄肉部12fを形成し、薄肉部12fを底面12jとリアボディ12のx軸負方向側のポンプ形成面120との厚さが、リアボディ12のx軸方向厚さのなかで最も薄くなるように形成した。
これにより、リアボディ12の吐出領域側の剛性を低下させ、可変容量型ベーンポンプ1が駆動したときに、吸入領域側と同程度に変形させることを可能とした。したがって、ロータ3とポンプ形成面120の片当たりを抑制することができる。
また実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12の薄肉部12fの外縁のうち径方向外側部分を、第1吐出口123と径方向においてオーバラップするように形成した。
これにより、薄肉部12fの外縁のうち径方向外側部分が第1吐出口123より径方向内側に位置するように薄肉部12fを形成した場合にくらべ、リアボディ12の吐出領域側の剛性を低下させることが可能となる。したがって、ロータ3とポンプ形成面120の片当たりを抑制することができる。また薄肉部12fの外縁のうち径方向外側部分が第1吐出口123より径方向外側に位置するように薄肉部12fを形成した場合にくらべ、リアボディ12の第1吐出口123部分における剛性を高めることが可能となる。したがって、第1吐出口123の径方向中間部から内側部の変形量を大きくすることができ、第1吐出口123の開口外縁のうち径方向内側部分とロータ3との片当たりを抑制することができる。
【0022】
また実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12の薄肉部12fの底面12jの外縁の径方向外側部分を、第1吐出口123と径方向においてオーバラップするように形成した。
底面12jは、リアボディ12のx軸方向の肉厚が最も薄くなる部分である。この底面12jの外縁と第1吐出口123との位置関係を規定することにより、リアボディ12の吐出領域の剛性を正確に調整することができる。
また実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、薄肉部12fの外縁のうち径方向内側部分を、吐出側背圧溝125と径方向においてオーバラップするように形成した。
これにより、吐出側背圧溝125付近におけるリアボディ12の剛性のバランスの適正化を図り、吐出側背圧溝125の外縁の径方向外側部分とロータ3との片当たりを抑制することができる。
また実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12のx軸方向の厚さを、カムリング4と径方向にオーバラップする領域において、吐出領域側が吸入領域側よりも小さくなるように形成した。
これにより、薄肉部12fよりも径方向外側部分においても、リアボディ12の吐出領域側の剛性を低下させることができ、リアボディ12の吸入領域側の剛性と吐出領域側の剛性とのバランスを向上させることができる。
【0023】
また実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12の薄肉部12fを、底面12jが軸支部12cの底面よりもフロントボディ11側に位置するように形成した。
これにより、薄肉部12fにおけるリアボディ12の肉厚を充分に薄くすることができ、剛性を低下させることが可能となる。したがって、リアボディ12の吸入領域側の剛性と吐出領域側の剛性とのバランスを向上させることができる。
また実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12の薄肉部12fの周方向中間部において、リアボディ12の外部からボルトを挿入するためのボルトボス12hを形成した。
薄肉部12fを周方向に長く形成すると、その周方向中間部の撓み量が大きくなる。薄肉部12fの周方向中間部にボルトボス12hを形成することにより、薄肉部12fの局所的な撓みを抑制することができる。
また実施例1の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12の薄肉部12fを径方向長さよりも周方向長さの方が長い長細略円弧状に形成した。
これにより、薄肉部12fによる剛性低下の作用を、吐出領域側により広く、均一に作用させることができる。
【0024】
〔効果〕
以下、実施例1から把握される本発明の可変容量型ベーンポンプ1の効果を列挙する。
(1)ポンプ要素収容部112(筒状部)と、ポンプ要素収容部112のx軸負方向側(軸方向一方側)を閉塞する底部111と、を有するフロントボディ11(第1ハウジング)と、ポンプ要素収容部112のx軸正方向側(軸方向他方側)を閉塞するリアボディ12(第2ハウジング)と、から構成されるポンプボディ10(ポンプハウジング)と、ポンプボディ10に軸支される駆動軸2と、ポンプ要素収容部112内に移動可能に設けられた環状のカムリング4と、カムリング4内に設けられ、駆動軸2によって回転駆動されるロータ3と、ロータ3の周方向に複数個形成されたスリット31と、スリット31内に出没自在に設けられ、カムリング4およびロータ3と共に複数のポンプ室13を隔成するベーン32と、ポンプ要素収容部112内の底部111とカムリング4の間に設けられ、ポンプ室13から吐出される吐出圧によってカムリング4側に押圧されるプレッシャプレート6と、リアボディ12に設けられ、ロータ3の回転に伴い複数のポンプ室13のうち容積が増大する吸入領域と対向する位置に形成された第1吸入口122(吸入口)と、リアボディ12に設けられ、ポンプボディ10外部から第1吸入口122へ作動液を導入する吸入通路12aと、プレッシャプレート6またはリアボディ12に設けられ、ロータ3の回転に伴い複数のポンプ室13のうち容積が減少する吐出領域と対向する位置に形成された第1吐出口123、第2吐出口63(吐出口)と、ポンプボディ10に設けられ、吐出領域から吐出された作動液である吐出作動液をポンプボディ10外部に吐出する吐出通路20と、リアボディ12に設けられ、スリット31の径方向最内端である背圧室33(スリット基部)と対向する円弧形状を有し、少なくとも吸入領域側に形成され、吐出作動液の一部が導入されることによりベーン32を径方向外側に突出させる吸入側背圧溝124、吐出側背圧溝125(背圧導入溝)と、リアボディ12に設けられ、外部に開口する凹形状を有し、吐出領域側においてロータ3と径方向にオーバラップするように配置され、凹形状の底面12jとリアボディ12の軸方向内側面との間の軸方向寸法である肉厚のうち、最も肉厚が小さい最薄部の肉厚が、リアボディ12の軸方向厚さのうち最も小さくなるように形成された薄肉部12f(吐出側薄肉部)と、を有することとした。
よって、リアボディ12の吐出領域側の剛性を低下させ、可変容量型ベーンポンプ1が駆動したときに、吸入領域側と同程度に変形させることを可能とした。したがって、ロータ3とポンプ形成面120の片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
【0025】
(2)薄肉部12fの外縁のうち径方向外側部分を、第1吐出口123と径方向においてオーバラップするように形成した。
よって、薄肉部12fの外縁のうち径方向外側部分が第1吐出口123より径方向内側に位置するように薄肉部12fを形成した場合にくらべ、リアボディ12の吐出領域側の剛性を低下させることが可能となる。したがって、ロータ3とポンプ形成面120の片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
また薄肉部12fの外縁のうち径方向外側部分が第1吐出口123より径方向外側に位置するように薄肉部12fを形成した場合にくらべ、リアボディ12の第1吐出口123部分における剛性を高めることが可能となる。したがって、第1吐出口123の径方向中間部から内側部の変形量を大きくすることができ、第1吐出口123の開口外縁のうち径方向内側部分とロータ3との片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
(3)吐出側背圧溝125を、吐出領域側に設け、薄肉部12fの外縁のうち径方向内側部分を、吐出領域側の吐出側背圧溝125と径方向においてオーバラップするように形成した。
よって、吐出側背圧溝125付近におけるリアボディ12の剛性のバランスの適正化を図り、吐出側背圧溝125の外縁の径方向外側部分とロータ3との片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
【0026】
(4)ポンプ要素収容部112(筒状部)と、ポンプ要素収容部112のx軸負方向側(軸方向一方側)を閉塞する底部111と、を有するフロントボディ11(第1ハウジング)と、ポンプ要素収容部112のx軸正方向側(軸方向他方側)を閉塞するリアボディ12(第2ハウジング)と、から構成されるポンプボディ10(ポンプハウジング)と、ポンプボディ10に軸支される駆動軸2と、ポンプ要素収容部112内に移動可能に設けられた環状のカムリング4と、カムリング4内に設けられ、駆動軸2によって回転駆動されるロータ3と、ロータ3の周方向に複数個形成されたスリット31と、スリット31内に出没自在に設けられ、カムリング4およびロータ3と共に複数のポンプ室13を隔成するベーン32と、ポンプ要素収容部112内の底部111とカムリング4の間に設けられ、ポンプ室13から吐出される吐出圧によってカムリング4側に押圧されるプレッシャプレート6と、リアボディ12に設けられ、ロータ3の回転に伴い複数のポンプ室13のうち容積が増大する吸入領域と対向する位置に形成された第1吸入口122(吸入口)と、リアボディ12に設けられ、ポンプボディ10外部から第1吸入口122へ作動液を導入する吸入通路12aと、プレッシャプレート6またはリアボディ12に設けられ、ロータ3の回転に伴い複数のポンプ室13のうち容積が減少する吐出領域と対向する位置に形成された第1吐出口123、第2吐出口63(吐出口)と、ポンプボディ10に設けられ、吐出領域から吐出された作動液である吐出作動液をポンプボディ10外部に吐出する吐出通路20と、リアボディ12に設けられ、スリット31の径方向最内端である背圧室33(スリット基部)と対向する円弧形状を有し、少なくとも吸入領域側に形成され、吐出作動液の一部が導入されることによりベーン32を径方向外側に突出させる吸入側背圧溝124、吐出側背圧溝125(背圧導入溝)と、リアボディ12に設けられ、外部に開口する凹形状を有し、吐出領域側において吐出側背圧溝125と第1吐出口123の間の領域と径方向にオーバラップするように配置され、凹形状を有する部分の周方向長さが径方向長さよりも長い略円弧形状に形成された薄肉部12fと、を有することとした。
よって、リアボディ12の吐出領域側の剛性を低下させ、可変容量型ベーンポンプ1が駆動したときに、吸入領域側と同程度に変形させることを可能とした。したがって、ロータ3とポンプ形成面120の片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
【0027】
(5)ポンプ要素収容部112(筒状部)と、ポンプ要素収容部112のx軸負方向側(軸方向一方側)を閉塞する底部111と、を有するフロントボディ11(第1ハウジング)と、ポンプ要素収容部112のx軸正方向側(軸方向他方側)を閉塞するリアボディ12(第2ハウジング)と、から構成されるポンプボディ10(ポンプハウジング)と、フロントボディ11に設けられた軸支部117(第1シャフト挿入孔)と、リアボディ12に設けられ、フロントボディ11側に向かって開口する有底形状を有する軸支部12c(第2シャフト挿入孔)と、軸支部117および軸支部12c内に回転自在に軸支される駆動軸2と、ポンプ要素収容部112内に移動可能に設けられた環状のカムリング4と、カムリング4内に設けられ、駆動軸2によって回転駆動されるロータ3と、ロータ3の周方向に複数個形成されたスリット31と、スリット31内に出没自在に設けられ、カムリング4およびロータ3と共に複数のポンプ室13を隔成するベーン32と、ポンプ要素収容部112内の底部111とカムリング4の間に設けられ、ポンプ室13から吐出される吐出圧によってカムリング4側に押圧されるプレッシャプレート6と、リアボディ12に設けられ、ロータ3の回転に伴い複数のポンプ室13のうち容積が増大する吸入領域と対向する位置に形成された第1吸入口122(吸入口)と、リアボディ12に設けられ、ポンプボディ10外部から第1吸入口122へ作動液を導入する吸入通路12aと、リアボディ12に設けられ、ロータ3の回転に伴い複数のポンプ室13のうち容積が減少する吐出領域と対向する位置に形成された第1吐出口123(吐出口)と、ポンプボディ10に設けられ、吐出領域から吐出された作動液である吐出作動液をポンプボディ10外部に吐出する吐出通路20と、リアボディ12に設けられ、スリット31の径方向最内端である背圧室33(スリット基部)と対向する円弧形状を有し、吸入領域側および吐出領域側に形成され、吐出作動液の一部が導入されることによりベーン32を径方向外側に突出させる吸入側背圧溝124、吐出側背圧溝125(背圧導入溝)と、リアボディ12に設けられ、外部に開口する凹形状を有し、吐出領域側において吐出側背圧溝125と第1吐出口123の間の領域と径方向にオーバラップするように配置され、凹形状の底面12jとリアボディ12の軸方向内側面との間の軸方向寸法である肉厚のうち、最も肉厚が小さい最薄部の底面が、軸支部12cの底面12jよりもフロントボディ11側に位置するように形成された薄肉部12fと、を有することとした。
よって、リアボディ12の吐出領域側の剛性を低下させ、可変容量型ベーンポンプ1が駆動したときに、吸入領域側と同程度に変形させることを可能とした。したがって、ロータ3とポンプ形成面120の片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
【0028】
〔実施例2〕
実施例2の可変容量型ベーンポンプ1について説明する。実施例2の可変容量型ベーンポンプ1では、リアボディ12の厚肉部12eの周方向端部にテーパ部12kを形成した。実施例1と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図7はリアボディ12をx軸正方向側から見た図である。
図8はリアボディ12をy軸正方向側から見た図である。
図7,
図8に示すように厚肉部12eの周方向端部には、吐出領域側から吸入領域側に向かうにつれて徐々に厚さが増大するテーパ部12kが形成されている。言い換えると、リアボディ12のカムリング4と径方向にオーバラップする領域は、吐出領域側と吸入領域側の中間部にリアボディ12の軸方向厚さが吸入領域側に向かって徐々に増大するテーパ部12kが形成されている。
(6)リアボディ12のカムリング4と径方向にオーバラップする領域に、吐出領域側と吸入領域側の中間部にリアボディ12の軸方向厚さが吸入領域側に向かって徐々に増大するテーパ部12kを形成した。
よって、吐出領域側と吸入領域側の中間部において、リアボディ12の厚さの変化を滑らかにし、応力集中を緩和することができる。
【0029】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施例1に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
(ボルト無し形状)
図9はリアボディ12をx軸正方向側から見た図である。
図10はリアボディ12の軸方向断面図(
図9のIV−IV断面図)である。
図11はリアボディ12の斜視図である。
図12はリアボディ12を吸入通路12aの軸線および軸支部12cの軸線を通る面で切断した状態の斜視図である。
図9〜
図12に示すようにボルトボスを設けず、薄肉部12fを吐出領域の約半周にわたって設けるようにしても良い。
(薄肉部の別形状1)
図13はリアボディ12をx軸正方向側から見た図である。
図14はリアボディ12の軸方向断面図(
図13のV−V断面図)である。
図13、
図14に示すように、薄肉部12fの底面12jの径方向断面形状を曲面に形成しても良い。
(薄肉部の別形状2)
図15はリアボディ12をx軸正方向側から見た図である。
図16はリアボディ12の軸方向断面図(
図15のVI−VI断面図)である。
図15、
図16に示すように、薄肉部12fの径方向外側の面を外側に傾斜させても良い。
(薄肉部の別形状3)
図17はリアボディ12をx軸正方向側から見た図である。
図18はリアボディ12の軸方向断面図(
図13のVII−VII断面図)である。
図17、
図18に示すように、薄肉部12fの側面に抜き勾配を形成するようにしても良い。
【0030】
〔請求項以外の技術的思想〕
更に、上記実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項2に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記吐出側薄肉部の外縁は、前記吐出側薄肉部の前記底面における外縁であることを特徴とする可変容量形ポンプ。
底部は、第2ハウジングの軸方向の肉厚が最も薄くなる部分である。この底面の外縁と吐出口との位置関係を規定することにより、第2ハウジングの吐出領域の剛性を正確に調整することができる。
(ロ)請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2ハウジングの軸方向厚さは、前記カムリングと径方向にオーバラップする領域において、前記吐出領域側が前記吸入領域側よりも小さくなるように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部よりも径方向外側部分においても、第2ハウジングの吐出領域側の剛性を低下させることができ、第2ハウジングの吸入領域側の剛性と吐出領域側の剛性とのバランスを向上させることができる。
【0031】
(ハ)上記(ロ)に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2ハウジングの前記カムリングと径方向にオーバラップする領域は、前記吐出領域側と前記吸入領域側の中間部に前記第2ハウジングの軸方向厚さが前記吸入領域側に向かって徐々に増大するテーパ部を有することを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出領域側と吸入領域側の中間部において、リアボディ12の厚さの変化を滑らかにし、応力集中を緩和することができる。
(ニ)請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第1ハウジングは、前記駆動軸を回転自在に軸支する第1シャフト挿入孔を備え、
前記第2ハウジングは、前記第1ハウジング側に向かって開口する有底形状を有し前記駆動軸を回転自在に軸支する第2シャフト挿入孔を備え、
前記吐出側薄肉部の底面は、前記第2シャフト挿入孔の底面よりも前記第1ハウジング側に位置するように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部における第2ハウジングの肉厚を充分に薄くすることができ、剛性を低下させることが可能となる。したがって、第2ハウジングの吸入領域側の剛性と吐出領域側の剛性とのバランスを向上させることができる。
(ホ)請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2ハウジングは、前記吐出側薄肉部の周方向中間部において、前記第2ハウジングの外側からボルトを挿入するためのボルトボスを有することを特徴とする可変容量形ポンプ。
薄肉部12fを周方向に長く形成すると、その周方向中間部の撓み量が大きくなる。薄肉部12fの周方向中間部にボルトボス12hを形成することにより、薄肉部12fの局所的な撓みを抑制することができる。
(ヘ)請求項1に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記吐出側薄肉部は、径方向長さよりも周方向長さが長い長細略円弧形状を有することを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部による剛性低下の作用を、吐出領域側により広く、均一に作用させることができる。
【0032】
(ト)請求項4に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記吐出側薄肉部の外縁のうち径方向外側部分は、前記吐出口と径方向においてオーバラップするように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部の外縁のうち径方向外側部分が吐出口より径方向内側に位置するように薄肉部を形成した場合にくらべ、第2ハウジングの吐出領域側の剛性を低下させることが可能となる。したがって、ロータと第2ハウジングとの片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
また吐出側薄肉部の外縁のうち径方向外側部分が吐出口より径方向外側に位置するように吐出側薄肉部を形成した場合にくらべ、第2ハウジングの吐出口部分における剛性を高めることが可能となる。したがって、吐出口の径方向中間部から内側部の変形量を大きくすることができ、吐出口の開口外縁のうち径方向内側部分とロータとの片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
(チ)請求項4に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記背圧導入溝は、前記吐出領域側にも設けられ、
前記吐出側薄肉部の外縁のうち径方向内側部分は、前記吐出領域側の前記背圧導入溝と径方向においてオーバラップするように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出領域側の背圧導入溝付近における第2ハウジングの剛性のバランスの適正化を図り、背圧導入溝の外縁の径方向外側部分とロータとの片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
(リ)請求項4に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2ハウジングの軸方向厚さは、前記カムリングと径方向にオーバラップする領域において、前記吐出領域側が前記吸入領域側よりも小さくなるように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部よりも径方向外側部分においても、第2ハウジングの吐出領域側の剛性を低下させることができ、第2ハウジングの吸入領域側の剛性と吐出領域側の剛性とのバランスを向上させることができる。
【0033】
(ヌ)上記(リ)に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2ハウジングの前記カムリングと径方向にオーバラップする領域は、前記吐出領域側と前記吸入領域側の中間部に前記第2ハウジングの軸方向厚さが前記吸入領域側に向かって徐々に増大するテーパ部を有することを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出領域側と吸入領域側の中間部において、リアボディ12の厚さの変化を滑らかにし、応力集中を緩和することができる。
(ル)請求項4に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第1ハウジングは、前記駆動軸を回転自在に軸支する第1シャフト挿入孔を備え、
前記第2ハウジングは、前記第1ハウジング側に向かって開口する有底形状を有し前記駆動軸を回転自在に軸支する第2シャフト挿入孔を備え、
前記吐出側薄肉部の底面は、前記第2シャフト挿入孔の底面よりも前記第1ハウジング側に位置するように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部における第2ハウジングの肉厚を充分に薄くすることができ、剛性を低下させることが可能となる。したがって、第2ハウジングの吸入領域側の剛性と吐出領域側の剛性とのバランスを向上させることができる。
(ヲ)請求項5に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記吐出側薄肉部の外縁のうち径方向外側部分は、前記吐出口と径方向においてオーバラップするように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部の外縁のうち径方向外側部分が吐出口より径方向内側に位置するように薄肉部を形成した場合にくらべ、第2ハウジングの吐出領域側の剛性を低下させることが可能となる。したがって、ロータと第2ハウジングとの片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
また吐出側薄肉部の外縁のうち径方向外側部分が吐出口より径方向外側に位置するように吐出側薄肉部を形成した場合にくらべ、第2ハウジングの吐出口部分における剛性を高めることが可能となる。したがって、吐出口の径方向中間部から内側部の変形量を大きくすることができ、吐出口の開口外縁のうち径方向内側部分とロータとの片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
【0034】
(ワ)請求項5に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記背圧導入溝は、前記吐出領域側にも設けられ、
前記吐出側薄肉部の外縁のうち径方向内側部分は、前記吐出領域側の前記背圧導入溝と径方向においてオーバラップするように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出領域側の背圧導入溝付近における第2ハウジングの剛性のバランスの適正化を図り、背圧導入溝の外縁の径方向外側部分とロータとの片当たりを抑制し、かじりの発生を抑制することができる。
(カ)請求項5に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2ハウジングの軸方向厚さは、前記カムリングと径方向にオーバラップする領域において、前記吐出領域側が前記吸入領域側よりも小さくなるように形成されることを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出側薄肉部よりも径方向外側部分においても、第2ハウジングの吐出領域側の剛性を低下させることができ、第2ハウジングの吸入領域側の剛性と吐出領域側の剛性とのバランスを向上させることができる。
(ヨ)上記(カ)に記載の可変容量形ポンプにおいて、
前記第2ハウジングの前記カムリングと径方向にオーバラップする領域は、前記吐出領域側と前記吸入領域側の中間部に前記第2ハウジングの軸方向厚さが前記吸入領域側に向かって徐々に増大するテーパ部を有することを特徴とする可変容量形ポンプ。
よって、吐出領域側と吸入領域側の中間部において、リアボディ12の厚さの変化を滑らかにし、応力集中を緩和することができる。