特許第5897951号(P5897951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5897951
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/061 20060101AFI20160324BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20160324BHJP
   F16D 15/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   F16D41/061
   F16D41/06 Z
   F16D15/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-73099(P2012-73099)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-204667(P2013-204667A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忠彦
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−004792(JP,A)
【文献】 特開平03−244832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/06−41/10
F16D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力系回転部材およびその入力系回転部材に対して軸方向に相対移動可能に構成された出力系回転部材と、
その出力系回転部材の内周面または外周面の一方に形成された出力軌道面と、
その出力軌道面に対向すると共に前記入力系回転部材の内周面または外周面の一方に形成された入力軌道面と、
その入力軌道面と前記出力軌道面との間に前記入力系回転部材の中心軸を含む面から所定角度傾斜させて介設された複数のコロと、
前記入力系回転部材または前記出力系回転部材と一体に形成または結合されると共に、前記中心軸に対して歯すじが非平行となるように歯が形成された第1ギヤと、
その第1ギヤに係合する第2ギヤとを備え、
その第2ギヤの反力によって前記第1ギヤに作用する軸方向力の向きは、前記入力軌道面および前記出力軌道面の間隔を狭めるときの軸方向における前記入力系回転部材または前記出力系回転部材の移動の向きと同一に設定され
前記第2ギヤが駆動歯車、前記第1ギヤが被動歯車となって前記第1ギヤ及び前記第2ギヤに発生する軸方向力は、前記コロの回転による前記入力系回転部材および前記出力系回転部材の引き離し力より先に前記入力系回転部材または前記出力系回転部材に作用することを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
前記第1ギヤは、前記第2ギヤの反力によって前記第1ギヤに作用する軸方向力の絶対値が、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの歯面同士の摩擦によって前記軸方向力と反対方向に働く摩擦力の軸方向分力の絶対値より大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記入力軌道面および前記出力軌道面と前記コロとが係合不能となる軸方向位置に前記入力系回転部材または前記出力系回転部材を移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記第2ギヤの回転軸の軸線は、前記中心軸と異なる位置にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクラッチ装置に関し、特に所定のトルクを確実に伝達できるクラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力系回転部材および出力系回転部材の間に形成される軌道に複数のコロを配置したクラッチ装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示されるクラッチ装置は、中心軸を含む面に対してコロが傾斜配置されると共に、出力系回転部材(外輪)が軸方向に移動自在に構成されている。出力系回転部材(外輪)に対して入力系回転部材(内輪)が所定方向に相対回転するときには、コロによる入力系回転部材および出力系回転部材の引き寄せ力(軌道間隔を狭める方向へ動かす力)により、出力系回転部材が軸方向に移動されてコロが係合し、出力系回転部材に動力が伝達される。一方、出力系回転部材に対して入力系回転部材が反対方向に相対回転するときには、コロによる入力系回転部材および出力系回転部材の引き離し力(軌道間隔を広げる方向へ動かす力)により、出力系回転部材が軸方向に移動されてコロが係合解除され、入力系回転部材および出力系回転部材は相対回転(自由回転)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−173976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術では、入力軌道面および出力軌道面にコロが係合するときには、入力軌道面および出力軌道面とコロとに生じる摩擦力の軸方向分力によって、入力系回転部材および出力系回転部材の軸方向の引き寄せ力が抑制される。そのため、入力軌道面および出力軌道面の間隔を十分に狭くすることができず、所定のトルクを伝達できなくなることがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、所定のトルクを確実に伝達できるクラッチ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載のクラッチ装置によれば、入力系回転部材に対して出力系回転部材が軸方向に相対移動可能に構成され、出力系回転部材の内周面または外周面の一方に出力軌道面が形成される。その出力軌道面に対向すると共に入力系回転部材の内周面または外周面の一方に入力軌道面が形成される。その入力軌道面と出力軌道面との間に複数のコロが介設され、そのコロは、入力系回転部材の中心軸を含む面から所定角度傾斜しているので、入力系回転部材を所定方向に回転させると、コロは入力軌道面および出力軌道面に案内されて自転しつつ中心軸の回りを公転する。そのコロの回転に案内されて、入力系回転部材および出力系回転部材は径方向に弾性変形しながら、軸方向に、入力軌道面と出力軌道面との間隔が小さくなる方向へ相対移動する。その結果、入力軌道面および出力軌道面にコロが係合して、入力系回転部材から出力系回転部材に動力が伝達される。
【0007】
出力系回転部材に伝達された動力は出力系回転部材と一体に形成または結合される第1ギヤに伝達され、第1ギヤに係合する第2ギヤに伝達される。第1ギヤが入力系回転部材と一体に形成または結合されている場合には、第1ギヤと係合する第2ギヤから第1ギヤに動力が入力されると、入力系回転部材が回転する。第1ギヤは歯すじが中心軸に対して非平行となるように歯が形成されており、第2ギヤの反力によって第1ギヤに作用する軸方向力の向きは、入力軌道面および出力軌道面の間隔を狭めるときの軸方向における入力系回転部材または出力系回転部材の移動の向きと同一に設定されている。そのため、入力軌道面および出力軌道面にコロが係合して第1ギヤから第2ギヤへ動力が伝達されると、その第2ギヤの反力によって、入力系回転部材または出力系回転部材は、入力軌道面および出力軌道面の間隔を狭めるように軸方向への移動が促進される。これにより入力系回転部材および出力系回転部材の軸方向の引き寄せ力を増加させることができ、所定のトルクを確実に伝達できる効果がある。
第2ギヤが駆動歯車、第1ギヤが被動歯車となって第1ギヤ及び第2ギヤに発生する軸方向力は、コロの回転による入力系回転部材および出力系回転部材の引き離し力より先に入力系回転部材または出力系回転部材に作用する。よって、入力軌道面および出力軌道面とコロとの係合解除を素早く行うことができるという効果がある。
【0008】
請求項2記載のクラッチ装置によれば、第2ギヤの反力によって第1ギヤに作用する軸方向力の絶対値が、その軸方向力の反対方向に働く摩擦力であって第1ギヤ及び第2ギヤの歯面同士の摩擦による軸方向分力の絶対値より大きくなるように第1ギヤは設定されている。そのため、第1ギヤ及び第2ギヤの歯面同士の摩擦によって入力系回転部材および出力系回転部材の軸方向の引き寄せ力が抑制されることを防止できる。その結果、請求項1の効果に加え、所定のトルクを確実に伝達できる効果がある。
【0009】
請求項3記載のクラッチ装置によれば、入力軌道面および出力軌道面とコロとが係合不能となる軸方向位置に移動手段により入力系回転部材または出力系回転部材が移動されるので、入力系回転部材から出力系回転部材への動力の伝達を遮断することができる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、入力系回転部材から出力系回転部材へ動力を遮断可能に伝達できる効果がある。
【0010】
請求項4記載のクラッチ装置によれば、第2ギヤの回転軸の軸線は中心軸と異なる位置にあるので、第2ギヤの回転半径を小さくすることができる。その結果、請求項1から3のいずれかの効果に加え、クラッチ装置を小型化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施の形態におけるクラッチ装置の軸方向断面図である。
図2】コロの配置を示す入力系回転部材および保持器の斜視図である。
図3】(a)は入力系回転部材を軸方向に移動させたクラッチ装置の片側断面図であり、(b)はコロが係合状態にあるクラッチ装置の片側断面図である。
図4】(a)は入力軌道面および出力軌道面の展開図であり、(b)はコロが係合状態にある入力軌道面および出力軌道面の模式図である。
図5】(a)は第1ギヤと第2ギヤとの噛み合いにおける回転方向およびスラスト方向を示す模式図であり、(b)は第2実施の形態におけるクラッチ装置の第1ギヤと第2ギヤとの噛み合いにおける回転方向およびスラスト方向を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態におけるクラッチ装置1の軸方向断面図であり、図2はコロ8の配置を示す内輪4(入力系回転部材)及び保持器9の斜視図である。なお、図1では内輪4から外輪10へ動力を伝達する機構を図示し、軸方向力を受けるスラストベアリング等の図示を省略している。また、第1ギヤ12及び第2ギヤ13にそれぞれ形成された歯12a,13aの一部の図示を省略している。
【0013】
図1に示すようにクラッチ装置1は、入力系回転部材としての内輪4と、その内輪4の外周側に配置される出力系回転部材としての外輪10と、内輪4及び外輪10の間に介設される複数のコロ8と、外輪10と共に回転する第1ギヤ12と、その第1ギヤ12に係合する第2ギヤ13とを主に備えて構成されている。
【0014】
内輪4は、入力軸2の回転動力を外輪10に伝達するための機能を担う部材であり、中心軸o回りの単葉回転双曲面をなす入力軌道面4aが外周面に形成されている。内輪4は、スプライン4bによって入力軸2に対して回転が規制される一方、入力軸2に対する軸方向の移動が許容されている。ストッパ5,6は、所定量を超える内輪4の軸方向の移動を規制するための部材であり、内輪4の軸方向端面と所定の間隔をあけて入力軸2の外周であって内輪4の軸方向端面の軸方向外側に突設されている。内輪4は、ストッパ5と内輪4との間に配設された皿ばね7によって、軸方向端面がストッパ6に当接するように軸方向の一方側(図1右側)に付勢されている。
【0015】
入力軸2は軸方向にカムシャフト3が貫設されている。カムシャフト3は、駆動装置(図示せず)によって軸方向に移動されることにより、外周に形成されたカム面3aによってピン3bを入力軸2の外周に出没させるための部材である。ピン3bは入力軸2の径方向に貫設される部材であり、カム面3aによって押し上げられて入力軸2の外周に先端が突出すると、内輪4の内周面に形成された傾斜面4cに先端が押し付けられる。内輪4の傾斜面4cにピン3bが押し付けられることによる内輪4の軸方向力は、皿ばね7の付勢力(軸方向力)より大きく設定されているので、皿ばね7の付勢力に抗して内輪4がストッパ5側(図1左側)に移動する。
【0016】
外輪10は、内輪4と共に入力軸2の動力を第1ギヤ12に伝達するための機能を担う部材であり、中心軸o回りの単葉回転双曲面をなす出力軌道面10aが内周面に形成されている。外輪10は、内輪4と相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に構成されている。外輪10は、ストッパ5に突設された鍔5a及びストッパ6によって、所定量を超える軸方向の移動が規制される。ストッパ5,6は、入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が係合して捻じ込まれたときに、一定位置で内輪4及び外輪10の軸方向移動を停止させ、一定以上のトルクがかからないようにするトルクリミッタの機能と、コロ8の抜け出しを防止する機能とを有する。外輪10は、ストッパ6と外輪10との間に配設された皿ばね11によって、軸方向端面が鍔5aに当接するように軸方向の他方側(図1左側)に付勢されている。皿ばね11は、入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔を広げるように外輪10を付勢するための部材である。
【0017】
図2に示すように、コロ8は円筒状に形成される部材であり、保持器9によって入力軌道面4aと出力軌道面10aとの間に保持される。保持器9は、コロ8が相互に干渉することなく円滑に回転するように、互いに間隔をあけてコロ8を保持するための部材である。コロ8は、中心軸oを含む面から一定角度α(例えば15°)傾斜して入力軌道面4a及び出力軌道面10aの円周方向に複数配設され、入力軌道面4a及び出力軌道面10aに外周面が線状に接触可能に配置される。
【0018】
図1に戻って説明する。第1ギヤ12は、外輪10に伝達された動力を、係合する第2ギヤ13に伝達するための部材であり、外輪10の外周面に外輪10と一体に形成または結合されると共に、外周面に複数の歯12aを有し、その歯すじが中心軸oに対して非平行となるように形成されている。第2ギヤ13も同様に外周面に複数の歯13aを有し、その歯すじが中心軸oに対して非平行となるように形成されている。本実施の形態では、第1ギヤ12及び第2ギヤ13は、互いに係合する一対のヘリカルギヤとして形成されており、第2ギヤ13の回転軸14の軸線は中心軸oと異なる位置に配置されると共に、第2ギヤ13の回転軸14は中心軸oと平行に配置されている。なお、第2ギヤ13を複数のピニオンギヤで構成し、その第2ギヤ13の外周にリングギヤ(内歯車)を配置する遊星歯車機構とすることは可能である。
【0019】
ストッパ5,6及び鍔5aの間隔は、皿ばね7,11の付勢力によって内輪4の軸方向端面がストッパ6に当接されると共に外輪10の軸方向端面が鍔5aに当接される場合に、入力軌道面4a又は出力軌道面10aの少なくとも一方にコロ8の外周面が接触しないように設定されている。この場合は入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8は係合不能となる。これに対し、カムシャフト3を軸方向の一方側(図1左側)に移動させて皿ばね7の付勢力に抗して内輪4をストッパ5側に移動させた場合には、入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔が狭くなり、入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が線状に接触するように設定されている。
【0020】
以上のように構成されるクラッチ装置1について、図3及び図4を参照してその動作を説明する。図3(a)は入力系回転部材(内輪4)を軸方向に移動させたクラッチ装置1の片側断面図であり、図3(b)はコロ8が係合状態にあるクラッチ装置1の片側断面図であり、図4(a)は入力軌道面4a及び出力軌道面10aの展開図であり、図4(b)はコロ8が係合状態にある入力軌道面4a及び出力軌道面10aの模式図である。なお、図4(a)及び図4(b)では、内輪4のトルクによって回転したコロ8及び外輪10を、コロ8´及び外輪10´(二点鎖線)によって図示している。
【0021】
図3(a)に示すように、カムシャフト3を軸方向の一方側(図3(a)左側)に移動させ、ピン3bにより内輪4をストッパ5側に移動させた場合には、入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔が狭くなり、入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が線状に接触する。内輪4が一方向(図2及び図4(a)矢印Ri方向)に回転すると、図4(b)に示すようにコロ8が自転しながら(図4(b)時計回り)入力軌道面4aを公転する。コロ8の回転によってコロ8及び出力軌道面10aが径方向(図4(b)上下方向)に変位(l及びL)し、出力軌道面10aは、それらの変位によって径方向に弾性変形しながら矢印K方向(図4(a)参照)へ移動する。その結果、外輪10は、図4(a)に示す矢印Ro方向へ回転すると共に、軸方向における矢印C方向(入力軌道面4aと出力軌道面10aとの間隔(以下「軌道間隔」と称す)を狭める方向)へ相対移動する。軸方向における内輪4の移動はストッパ5及びピン3bによって規制されているので、図3(b)に示すように、外輪10が、皿ばね11の付勢力に抗して軌道間隔を狭める方向(図3(b)右側)に移動する。これにより、入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が係合し内輪4から外輪10に動力が伝達される。
【0022】
なお、軸方向における外輪10の相対移動が所定の位置(ストッパ6の位置)で規制されると、それ以上は軸方向の軌道間隔は縮まらなく、外輪10の径方向の弾性変形が生じるので、その軌道間隔で伝達可能なトルク(所定値)より大きなトルクを伝達できなくなる。その結果、内輪4及び外輪10は所定値より大きなトルクで相対回転が可能となる。即ち、クラッチ装置1はトルクリミッタとしての機能を発揮する。
【0023】
次に、入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が係合した状態において(図3(b)参照)、外輪10に対して内輪4が反対方向(図2反矢印Ri方向)に相対回転する場合には、コロ8の回転による引き離し力(軌道間隔を広げる方向へ動かす力)により、内輪4及び外輪10は軸方向において互いに離れる方向に相対移動する。軸方向における内輪4の移動はストッパ5及びピン3bによって規制されているので、図3(a)に示すように、外輪10が、軌道間隔を広げる方向(図3(a)左側)に移動する。皿ばね11の付勢力は、外輪4の軸方向の一方側(図3(a)左側)への移動を補助する。これにより、入力軌道面4a及び出力軌道面10aとコロ8との係合が解除され、内輪4及び外輪10は相対回転(自由回転)が可能となる。
【0024】
なお、入力軌道面4a及び出力軌道面10aとコロ8との係合が解除された状態において(図3(a)参照)、カムシャフト3を軸方向の他方側(図3(a)右側)に移動させてピン3bによる傾斜面4cの押し付けを解除した場合には、皿ばね7の付勢力によって内輪4がストッパ6側に移動される。入力軌道面4a又は出力軌道面10aの少なくとも一方にコロ8が接触しなくなるので、コロ8は入力軌道面4a及び出力軌道面10aに係合不能となる。その結果、内輪4から外輪10への動力の伝達を遮断することができる。
【0025】
次に図5(a)を参照して、第1ギヤ12及び第2ギヤ13の回転方向と第1ギヤ12に作用する軸方向力(スラスト)について説明する。図5(a)は第1ギヤ12と第2ギヤ13との噛み合いにおける回転方向およびスラスト方向を示す模式図である。なお、図5(a)では外輪10の外周面に形成された第1ギヤ12と、それに係合する第2ギヤ13とを図示し、内輪4、コロ8等の図示を省略すると共に、第1ギヤ12及び第2ギヤ13にそれぞれ形成された歯12a,13aの一部の図示を省略している。
【0026】
入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8を線状に接触させた状態で、図5(a)に示すように、外輪10に対して内輪4を一方向(図5(a)矢印Ri方向)に相対回転させると、前述のように入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が係合し内輪4から外輪10に動力が伝達される(矢印Roは外輪10の回転方向)。外輪10に伝達された動力によって第1ギヤ12が駆動されると(回転方向は矢印Ro方向)、第2ギヤ13及び回転軸14に回転が伝達されると共に(回転方向は矢印Rt方向)、第2ギヤ13(被動歯車)及び第1ギヤ12に、それぞれ一定方向(図5(a)矢印A方向及び矢印P方向)の軸方向力が発生する。第1ギヤ12及び第2ギヤ13の歯すじの方向は、第1ギヤ12に作用する軸方向力の向き(図5(a)矢印A方向)が、入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔を狭めるときの軸方向における外輪10の移動方向(図5(a)矢印A方向)と同一になるように設定されている。
【0027】
ここで、入力軌道面4a及び出力軌道面10aとコロ8とに生じる摩擦力の軸方向分力は、入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が係合するときの内輪4及び外輪10の軸方向の引き寄せ力を抑制し、内輪4から外輪10へ所定のトルクを伝達できない原因となる。これに対しクラッチ装置1によれば、コロ8の回転による入力軌道面4a及び出力軌道面10aの引き寄せ力に加え、第2ギヤ13の反力による軸方向力によって、外輪10は、入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔を狭めるように軸方向への移動が促進される。その結果、内輪4及び外輪10の軸方向の引き寄せ力を増加させることができるので、クラッチ装置1は所定のトルクを確実に伝達できる。
【0028】
一方、入力軌道面4a及び出力軌道面10aにコロ8が係合した状態において、外輪10に対して内輪4が反対方向(図5(a)反矢印Ri方向)に相対回転する場合には、第2ギヤ13が駆動歯車、第1ギヤ12が被動歯車となる。この場合には、第2ギヤ13及び第1ギヤ12にそれぞれ反対方向(図5(a)反矢印A方向および反矢印P方向)の軸方向力が発生する。この軸方向力は、第2ギヤ13が駆動歯車、第1ギヤ12が被動歯車となると同時に働くので、コロ8の回転による内輪4及び外輪10の引き離し力より外輪10に早く作用する。その結果、入力軌道面4aと出力軌道面10aとの間隔を早く広げることができるので、入力軌道面4a及び出力軌道面10aとコロ8との係合解除を素早く行うことができる。
【0029】
また、内輪4及び外輪10が相対回転(自由回転)をするときには、コロ8の回転による入力軌道面4a及び出力軌道面10aの引き離し力に加え、第1ギヤ12及び第2ギヤ13による反対方向(図5(a)反矢印A方向)の軸方向力が外輪10に働く。その結果、コロ8の回転による引き離し力によって内輪4及び外輪10が離れる以上に、第1ギヤ12に働く軸方向力によって入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔を広げることができる。これにより内輪4及び外輪10が相対回転(自由回転)をするときのトルクを減少できる。
【0030】
さらに図5(a)を参照して、第1ギヤ12及び第2ギヤ13の歯面同士の摩擦について検討する。第1ギヤ12を一方向(図5(a)矢印Ro方向)に回転した場合には、第2ギヤ13の反力によって第1ギヤ12の歯面に、軸直角平面における円周力Nが作用する。一方、被動歯車である第2ギヤ13の歯面にも、軸直角平面における円周力Nが作用する。円周力Nは、中心軸oと垂直方向の接線力F及び中心軸oと平行方向の軸方向力Sに分解される。第1ギヤ12のねじれ角をβとすれば、軸方向力Sは式(1)で表される。
【0031】
S=N・sinβ …式(1)
また、第1ギヤ12及び第2ギヤ13の歯面同士の摩擦係数をμとすれば、第2ギヤ13の歯面による摩擦力の軸方向分力S´は式(2)で表される。
【0032】
S´=μN・cosβ …式(2)
ここで、入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔を狭めるように外輪10を軸方向(図5(a)矢印A方向)へ移動させるには、第2ギヤ13に対して第1ギヤ12を軸方向(図5(a)矢印A方向)に移動させることが必要である。そのためには摩擦力の軸方向分力S´の絶対値より軸方向力Sの絶対値が大きいこと、即ち式(3)が成立することが必要である。なお、S>0,S´>0なので、式(3)では絶対値記号を省略する。
【0033】
S−S´>0 …式(3)
式(3)に式(1)及び式(2)を代入して解くと、式(4)が導かれる。
【0034】
μ<tanβ …式(4)
式(4)に示すように第1ギヤ12及び第2ギヤ13の歯面同士の摩擦係数μと第1ギヤ12のねじれ角βとを設定すれば、第2ギヤ13に対して第1ギヤ12を軸方向(図5(a)矢印A方向)に移動させることができる。それに伴い入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔を狭めるように外輪10を軸方向(図5(a)矢印A方向)へ移動させることができるので、第1ギヤ12及び第2ギヤ13の歯面同士の摩擦によって、内輪4及び外輪10の軸方向の引き寄せ力が抑制されることを防止できる。これによりクラッチ装置1は所定のトルクを確実に伝達できる。
【0035】
また、クラッチ装置1によれば、第2ギヤ13の回転軸14の軸線は中心軸oと異なる位置にあるので、第1ギヤ12と同心状の内歯車等によって第2ギヤ13を形成する場合と比較して、第2ギヤ13の回転半径を小さくすることができる。その結果、クラッチ装置1を小型化できると共に構造を簡素化できる。
【0036】
また、外輪10(出力系回転部材)のトルクはギヤ(第1ギヤ12及び第2ギヤ13)によって伝達されるので、ボールスプラインやピン等によってトルクを伝達する場合と比較して、トルクが伝達される接触面の面積を大きくできる。その結果、面圧(歯面圧)を低下させることができ、トルクが伝達される部分(接触面)の耐久性を向上できる。
【0037】
また、第1ギヤ12及び第2ギヤ13はヘリカルギヤによって構成されているので、同じ大きさの平歯車に比べて強度を大きくできると共に、静かに回転動力を伝達できる。また、高速回転を伝達可能であると共に、第1ギヤ12及び第2ギヤ13の歯数の組み合わせに制限がなく自在性に優れる。
【0038】
次に図5(b)を参照して、第2実施の形態におけるクラッチ装置101について説明する。クラッチ装置101は、第2ギヤ113から第1ギヤ112に動力を入力し、外輪10を入力系回転部材、内輪4を出力系回転部材とする点、第1ギヤ112(又は第2ギヤ113)の歯すじのねじれ方向を、第1実施の形態におけるクラッチ装置1の第1ギヤ12(又は第2ギヤ13)の歯すじのねじれ方向と異ならせている点が第1実施の形態と相違する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0039】
図5(b)に示すように回転軸14及び第2ギヤ113を矢印Rt方向に回転すると、第1ギヤ112が矢印Ri方向に被動され、外輪10が矢印Riに回転する。内輪4及び外輪10にコロ8が係合すると、軸102から矢印Roの回転動力が出力される。
【0040】
第1ギヤ112が矢印Ri方向に被動されるときは、第2ギヤ113(歯113a)の反力によって、第1ギヤ112(歯112a)の歯面に軸直角平面における円周力Nが作用する。これにより、第1ギヤ112及び外輪10に軸方向力S(矢印A方向)が発生する。クラッチ装置101もクラッチ装置1と同様に、第1ギヤ112に作用する軸方向力Sの向き(矢印A方向)が、軌道間隔を狭めるときの軸方向における外輪10の移動方向と同一になるように、第1ギヤ112及び第2ギヤ113の歯すじのねじれ方向が設定されている。
【0041】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法等)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0042】
上記実施の形態では、外輪10の外周に第1ギヤ12,112を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内輪4の軸方向端面を軸方向に延設して外輪10の軸方向端面より軸方向外側に延びる延設部(図示せず)を設け、その延設部に第1ギヤ12,112を設けることは可能である。その第1ギヤ12,112に係合する第2ギヤ13,113を設けることにより、本実施の形態と同様の作用効果を実現できる。
【0043】
上記実施の形態では、入力軌道面4a及び出力軌道面10aを単葉回転双曲面で形成し、円筒状のコロ8を採用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形態における入力軌道面4a、出力軌道面10a及びコロ8を採用することは当然可能である。他の形態としては、例えば入力軌道面4a及び出力軌道面10aを単葉回転双曲面で形成しコロ8を円錐状とするもの、入力軌道面4a又は出力軌道面10aを円筒状としたり、コロ8を鼓状、太鼓状や円筒状としたりするもの等が挙げられる。
【0044】
上記実施の形態では、第1ギヤ12,112及び第2ギヤ13,113を一対のヘリカルギヤ(斜歯ギヤ)で構成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、歯すじが中心軸oと非平行となるように歯を形成し軸方向力(スラスト)が発生するものであれば、他のギヤを採用することは当然可能である。他のギヤとしては、例えば、かさ歯車、ねじ歯車等を挙げることができる。
【0045】
上記実施の形態では、第2ギヤ13,113の回転軸14を中心軸oと異なる位置に設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2ギヤ13,113を内歯車とすることによって、第2ギヤ13,113の回転軸14の軸線を中心軸oと同じ位置に設けることは当然可能である。
【0046】
上記実施の形態では、第1ギヤ12,112及び第2ギヤ13,113を一対のヘリカルギヤで構成したので、第2ギヤ13,113の回転軸14を中心軸oと平行な位置に配置する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、第2ギヤ13,113の回転軸14の軸線と中心軸oとの位置関係は、第1ギヤ12,112及び第2ギヤ13,113の種類によって適宜設定することが可能である。例えば、かさ歯車を採用した場合には第2ギヤ13,113の回転軸14の軸線を中心軸oと交わる位置に配置し、ねじ歯車を採用した場合には第2ギヤ13,113の回転軸14と中心軸oとを食い違い軸となるように配置する。
【0047】
上記実施の形態では、第1ギヤ12,112に第2ギヤ13,113を係合させ、その第2ギヤ13,113の回転軸14を出力軸とする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1ギヤ12,112をサンギヤとすると共に第2ギヤ13,113を複数のピニオンギヤで構成し、その第2ギヤ13,113の外側にリングギヤ(内歯車)を配置した遊星歯車機構を採用することは当然可能である。また、外輪10を軸方向に延設して第1ギヤ12,112(リングギヤ)を設け、第2ギヤ13,113を複数のピニオンギヤで構成し、その第2ギヤ13,113の内側にサンギヤを配置した遊星歯車機構を採用することも可能である。この遊星歯車機構は、シングルピニオン式、ダブルピニオン式のいずれを採用することも可能である。この場合、ピニオンギヤの公転を出力に割り当てたり、リングギヤやサンギヤの回転を出力に割り当てたりすることができる。
【0048】
上記実施の形態では、内輪4及び外輪10とコロ8とを係合不能にするため、カムを利用して内輪4を軸方向に移動させる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外輪10を軸方向に移動させる手段を採用することによって、内輪4及び外輪10とコロ8とを係合不能にすることは当然可能である。
【0049】
上記実施の形態では、内輪4を軸方向に移動させる手段としてカムシャフト3と、そのカムシャフト3のカム面3aによって出没し内輪4の傾斜面4と干渉するピン3bと、軸方向に内輪4を付勢する皿ばね7とを備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の移動手段を採用することは当然可能である。内輪4又は外輪10を軸方向に移動させる他の移動手段としては、例えば、流体圧を利用するシリンダ、磁力を利用する電磁石等の公知の手段を挙げることが可能である。
【0050】
上記実施の形態では、皿ばね7,11によって内輪4や外輪10を軸方向に付勢する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の付勢部材を採用することは当然可能である。他の付勢部材としては、例えば圧縮コイルばね、ゴム状弾性体等が挙げられる。
【0051】
上記実施の形態では、入力軌道面4a及び出力軌道面10aの間隔を広げる(ストッパ5側に外輪10を移動させる)ように外輪10を付勢する皿ばね11を設けているが、外輪10及び内輪4が相対回転するときには、コロ8の回転および第2ギヤ13の反力によって外輪10がストッパ5側に動かされるので、皿ばね11を省略することは可能である。
<その他>
<手段>
技術的思想1のクラッチ装置は、入力系回転部材およびその入力系回転部材に対して軸方向に相対移動可能に構成された出力系回転部材と、その出力系回転部材の内周面または外周面の一方に形成された出力軌道面と、その出力軌道面に対向すると共に前記入力系回転部材の内周面または外周面の一方に形成された入力軌道面と、その入力軌道面と前記出力軌道面との間に前記入力系回転部材の中心軸を含む面から所定角度傾斜させて介設された複数のコロと、前記入力系回転部材または前記出力系回転部材と一体に形成または結合されると共に、前記中心軸に対して歯すじが非平行となるように歯が形成された第1ギヤと、その第1ギヤに係合する第2ギヤとを備え、その第2ギヤの反力によって前記第1ギヤに作用する軸方向力の向きは、前記入力軌道面および前記出力軌道面の間隔を狭めるときの軸方向における前記入力系回転部材または前記出力系回転部材の移動の向きと同一に設定されている。
技術的思想2のクラッチ装置は、技術的思想1記載のクラッチ装置において、前記第1ギヤは、前記第2ギヤの反力によって前記第1ギヤに作用する軸方向力の絶対値が、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤの歯面同士の摩擦によって前記軸方向力と反対方向に働く摩擦力の軸方向分力の絶対値より大きくなるように設定されている。
技術的思想3のクラッチ装置は、技術的思想1又は2に記載のクラッチ装置において、前記入力軌道面および前記出力軌道面と前記コロとが係合不能となる軸方向位置に前記入力系回転部材または前記出力系回転部材を移動させる移動手段を備えている。
技術的思想4のクラッチ装置は、技術的思想1から3のいずれかに記載のクラッチ装置において、前記第2ギヤの回転軸の軸線は、前記中心軸と異なる位置にある。
<効果>
技術的思想1記載のクラッチ装置によれば、入力系回転部材に対して出力系回転部材が軸方向に相対移動可能に構成され、出力系回転部材の内周面または外周面の一方に出力軌道面が形成される。その出力軌道面に対向すると共に入力系回転部材の内周面または外周面の一方に入力軌道面が形成される。その入力軌道面と出力軌道面との間に複数のコロが介設され、そのコロは、入力系回転部材の中心軸を含む面から所定角度傾斜しているので、入力系回転部材を所定方向に回転させると、コロは入力軌道面および出力軌道面に案内されて自転しつつ中心軸の回りを公転する。そのコロの回転に案内されて、入力系回転部材および出力系回転部材は径方向に弾性変形しながら、軸方向に、入力軌道面と出力軌道面との間隔が小さくなる方向へ相対移動する。その結果、入力軌道面および出力軌道面にコロが係合して、入力系回転部材から出力系回転部材に動力が伝達される。
出力系回転部材に伝達された動力は出力系回転部材と一体に形成または結合される第1ギヤに伝達され、第1ギヤに係合する第2ギヤに伝達される。第1ギヤが入力系回転部材と一体に形成または結合されている場合には、第1ギヤと係合する第2ギヤから第1ギヤに動力が入力されると、入力系回転部材が回転する。第1ギヤは歯すじが中心軸に対して非平行となるように歯が形成されており、第2ギヤの反力によって第1ギヤに作用する軸方向力の向きは、入力軌道面および出力軌道面の間隔を狭めるときの軸方向における入力系回転部材または出力系回転部材の移動の向きと同一に設定されている。そのため、入力軌道面および出力軌道面にコロが係合して第1ギヤから第2ギヤへ動力が伝達されると、その第2ギヤの反力によって、入力系回転部材または出力系回転部材は、入力軌道面および出力軌道面の間隔を狭めるように軸方向への移動が促進される。これにより入力系回転部材および出力系回転部材の軸方向の引き寄せ力を増加させることができ、所定のトルクを確実に伝達できる効果がある。
技術的思想2記載のクラッチ装置によれば、第2ギヤの反力によって第1ギヤに作用する軸方向力の絶対値が、その軸方向力の反対方向に働く摩擦力であって第1ギヤ及び第2ギヤの歯面同士の摩擦による軸方向分力の絶対値より大きくなるように第1ギヤは設定されている。そのため、第1ギヤ及び第2ギヤの歯面同士の摩擦によって入力系回転部材および出力系回転部材の軸方向の引き寄せ力が抑制されることを防止できる。その結果、技術的思想1の効果に加え、所定のトルクを確実に伝達できる効果がある。
技術的思想3記載のクラッチ装置によれば、入力軌道面および出力軌道面とコロとが係合不能となる軸方向位置に移動手段により入力系回転部材または出力系回転部材が移動されるので、入力系回転部材から出力系回転部材への動力の伝達を遮断することができる。その結果、技術的思想1又は2の効果に加え、入力系回転部材から出力系回転部材へ動力を遮断可能に伝達できる効果がある。
技術的思想4記載のクラッチ装置によれば、第2ギヤの回転軸の軸線は中心軸と異なる位置にあるので、第2ギヤの回転半径を小さくすることができる。その結果、技術的思想1から3のいずれかの効果に加え、クラッチ装置を小型化できる効果がある。
【符号の説明】
【0052】
1,101 クラッチ装置
3 カムシャフト(移動手段の一部)
4 内輪(入力系回転部材または出力系回転部材)
4a 入力軌道面、出力軌道面
7 皿ばね(移動手段の一部)
8 コロ
10 外輪(出力系回転部材または入力系回転部材)
10a 出力軌道面、入力軌道面
12,112 第1ギヤ
12a,112a 歯
13,113 第2ギヤ
14 回転軸
o 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5