(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部導体を絶縁体で覆ったコア部と、このコア部の周囲に設けられた複数本の素線からなる外部導体と、外部導体の周囲を覆うシースとを有する同軸電線の端末処理方法であって、
前記シースを端部で除去することで前記外部導体部分を露出させる外部導体露出工程と、
端末拡開治具を使用して、露出された前記外部導体の端末近傍箇所を外周側から圧縮して変形させ、前記外部導体の端末部分を前記コア部から離れるように広げる外部導体端末拡開工程と、
を含み、
前記端末拡開治具は、
対向側に溝部が形成された接離可能な一対の成形ブロックを有し、
前記各成形ブロックの溝部は、前記同軸電線の軸方向からみたときに、前記一対の成形ブロックの対向方向と垂直な第1方向に直線的に延びる底部と、前記底部の前記第1方向の両端部から対向側に向けてそれぞれ突出する一対の成形刃部と、により構成され、
前記一対の成形ブロックの前記一対の成形刃部が、前記同軸電線の軸方向において互い違いにずれた位置に配置されており、
前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて互いに近接させることで、前記溝部によって正六角形または正八角形となる保持穴が形成され、
前記保持穴に前記外部導体の端末近傍箇所を配置させて前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて前記互いに近接させることで、前記保持穴が縮小されて前記外部導体の端末近傍箇所が圧縮される、ことを特徴とする同軸電線の端末処理方法。
内部導体を絶縁体で覆ったコア部と、このコア部の周囲に設けられた複数本の素線からなる外部導体と、外部導体の周囲を覆うシースとを有する同軸電線の端末処理装置であって、
露出された前記外部導体の端末近傍箇所を外周側から圧縮して変形させ、前記外部導体の端末部分を前記コア部から離れるように広げる端末拡開治具を備え、
前記端末拡開治具は、
対向側に溝部が形成された接離可能な一対の成形ブロックを有し、
前記各成形ブロックの溝部は、前記同軸電線の軸方向からみたときに、前記一対の成形ブロックの対向方向と垂直な第1方向に直線的に延びる底部と、前記底部の前記第1方向の両端部から対向側に向けてそれぞれ突出する一対の成形刃部と、により構成され、
前記一対の成形ブロックの前記一対の成形刃部が、前記同軸電線の軸方向において互い違いにずれた位置に配置されており、
前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて互いに近接させることで、前記溝部によって正六角形または正八角形となる保持穴が形成され、
前記保持穴に前記外部導体の端末近傍箇所を配置させて前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて前記互いに近接させることで、前記保持穴が縮小されて前記外部導体の端末近傍箇所が圧縮される、ことを特徴とする同軸電線の端末処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同軸電線の端末部分において、例えば、外部導体を分離させる場合などでは、前処理として、露出させた外部導体の端部を径方向外方へ広げることが行われる。
しかし、この外部導体は、内部導体を絶縁体で覆ったコア部の外周に横巻きまたは縦添えされているため、外部導体の端部を容易に拡開させることは困難であった。
また、自動車等の車両に配線されるワイヤハーネスでは、コア部の外周に配置される外部導体を、シールド用ではなく内部導体と同様に導線として使用する同軸電線が用いられることがある。このような用途に用いられる同軸電線は、外部導体がシールド用のような細径ではないため、外部導体の端部での拡開がさらに困難であった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に外部導体の端部を拡開させることが可能な同軸電線の端末処理方法及び端末処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る同軸電線の端末処理方法は、下記(1)を特徴としている。
(1) 内部導体を絶縁体で覆ったコア部と、このコア部の周囲に設けられた複数本の素線からなる外部導体と、外部導体の周囲を覆うシースとを有する同軸電線の端末処理方法であって、
前記シースを端部で除去することで前記外部導体部分を露出させる外部導体露出工程と、
端末拡開治具を使用して、露出された前記外部導体の端末近傍箇所を外周側から圧縮して変形させ、前記外部導体の端末部分を前記コア部から離れるように広げる外部導体端末拡開工程と、
を含
み、
前記端末拡開治具は、
対向側に溝部が形成された接離可能な一対の成形ブロックを有し、
前記各成形ブロックの溝部は、前記同軸電線の軸方向からみたときに、前記一対の成形ブロックの対向方向と垂直な第1方向に直線的に延びる底部と、前記底部の前記第1方向の両端部から対向側に向けてそれぞれ突出する一対の成形刃部と、により構成され、
前記一対の成形ブロックの前記一対の成形刃部が、前記同軸電線の軸方向において互い違いにずれた位置に配置されており、
前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて互いに近接させることで、前記溝部によって正六角形または正八角形となる保持穴が形成され、
前記保持穴に前記外部導体の端末近傍箇所を配置させて前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて前記互いに近接させることで、前記保持穴が縮小されて前記外部導体の端末近傍箇所が圧縮される、こと。
【0008】
上記(1)の同軸電線の端末処理方法では、外部導体の端末近傍箇所を外周側から圧縮して変形させることで、極めて容易に、外部導体の端末部分をコア部から離れるように広げることができる。これにより、その後に同軸電線に対して行う処理の作業性の向上を図ることができる。
加えて、成形ブロックを互いに近接させることで、溝部から形成される正六角形または正八角形の保持穴が縮小される。これにより、この保持穴に外部導体の端末近傍箇所を配置させておくことで、外部導体の端末近傍箇所の外周を概ね均一に圧縮させることができ、外部導体の端部を同心円状に均一広げることができる。これにより、その後に同軸電線に対して行う処理の作業性をより向上させることができる。
【0009】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る同軸電線の端末処理装置は、下記
(2)を特徴としている。
(2) 内部導体を絶縁体で覆ったコア部と、このコア部の周囲に設けられた複数本の素線からなる外部導体と、外部導体の周囲を覆うシースとを有する同軸電線の端末処理装置であって、
露出された前記外部導体の端末近傍箇所を外周側から圧縮して変形させ、前記外部導体の端末部分を前記コア部から離れるように広げる端末拡開治具を備え
、
前記端末拡開治具は、
対向側に溝部が形成された接離可能な一対の成形ブロックを有し、
前記各成形ブロックの溝部は、前記同軸電線の軸方向からみたときに、前記一対の成形ブロックの対向方向と垂直な第1方向に直線的に延びる底部と、前記底部の前記第1方向の両端部から対向側に向けてそれぞれ突出する一対の成形刃部と、により構成され、
前記一対の成形ブロックの前記一対の成形刃部が、前記同軸電線の軸方向において互い違いにずれた位置に配置されており、
前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて互いに近接させることで、前記溝部によって正六角形または正八角形となる保持穴が形成され、
前記保持穴に前記外部導体の端末近傍箇所を配置させて前記一対の成形ブロックを前記対向方向にて前記互いに近接させることで、前記保持穴が縮小されて前記外部導体の端末近傍箇所が圧縮される、こと。
【0010】
上記(2)の同軸電線の端末処理装置では、外部導体の端末近傍箇所を端末拡開治具で外周側から圧縮して変形させ、外部導体の端末部分をコア部から離れるように広げることができる。これにより、その後に同軸電線に対して行う処理の作業性の向上を図ることができる。
加えて、成形ブロックを互いに近接させることで、溝部から形成される正六角形または正八角形の保持穴が縮小される。これにより、この保持穴に外部導体の端末近傍箇所を配置させておくことで、外部導体の端末近傍箇所の外周を概ね均一に圧縮させることができ、外部導体の端部を同心円状に均一広げることができる。これにより、その後に同軸電線に対して行う処理の作業性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に外部導体の端部を拡開させることが可能な同軸電線の端末処理方法及び端末処理装置を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の同軸電線の端末処理方法及び端末処理装置による端末処理の対象となる同軸電線を示す図であって、
図1(a)は端部における斜視図、
図1(b)は端部における断面図である。
【
図2】
図2は、端末処理された同軸電線の端部の斜視図である。
【
図3】
図3は、外部導体露出工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図4】
図4は、外部導体端末拡開工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図5】
図5は、端末拡開治具を説明する端末拡開治具の正面図である。
【
図6】
図6は、外部導体端末拡開工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図7】
図7は、外部導体の拡開について説明する端末拡開治具の正面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、外部導体の端末部分が拡開された同軸電線の端部の側面図及び正面図である。
【
図9】
図9は、中子装着工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図10】
図10は、中子装着工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図11】
図11は、外部導体解放工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図12】
図12は、チャック治具による同軸電線のチャックの状態を説明するチャック治具の正面図である。
【
図13】
図13は、外部導体解放工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図14】
図14は、外部導体分割工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図15】
図15は、外部導体分割工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図16】
図16は、内部導体取出し工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図17】
図17は、内部導体取出し工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図18】
図18は、外部導体収束工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図19】
図19は、外部導体収束工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図20】
図20は、外部導体撚合わせ工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図21】
図21は、外部導体撚合わせ工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図22】
図22は、外部導体端末裁断工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【
図23】
図23(a)及び
図23(b)は、参考例1に係る端末拡開治具を示す図であって、それぞれ正面図である。
【
図24】
図24(a)及び
図24(b)は、参考例2に係る端末拡開治具を示す図であって、それぞれ正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態の例を、図面を参照して説明する。
【0015】
なお、本実施形態では、同軸電線のコア部と外部導体とを分岐させる場合を例示して説明する。
【0016】
図1は、本発明の同軸電線の端末処理方法及び端末処理装置による端末処理の対象となる同軸電線を示す図であって、
図1(a)は端部における斜視図、
図1(b)は端部における断面図、
図2は、端末処理された同軸電線の端部の斜視図である。
【0017】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本発明に係る端末処理方法及び端末処理装置が端末処理を行う対象となる同軸電線10は、その中心に、内部導体11を絶縁体12で覆ったコア部13を有し、このコア部13の周囲に外部導体14が設けられ、さらに、その周囲がシース15で覆われた構造とされている。
【0018】
内部導体11は、例えば、複数本の銅線からなる撚り線または銅線からなる単線である。絶縁体12は、合成樹脂からなる絶縁材から形成されている。外部導体14は、複数本の銅線等の素線14aを一方向へ横巻きで巻き付けたものである。シース15は、合成樹脂からなる絶縁材から形成されている。
【0019】
この同軸電線10は、外部導体14がシールド用ではなく内部導体11と同様に導線として使用されるもので、自動車等の車両に配線されるワイヤハーネスとして用いられる。このような同軸電線10の外部導体14では、シールドのための外部導体のような細径の素線よりも太い素線が用いられている。
【0020】
本実施形態に係る端末処理方法及び端末処理装置では、
図2に示すように、上記の同軸電線10を、端部におけるシース15が除去され、内部導体11を絶縁体12で覆ったコア部13と外部導体14とが分岐された状態に端末処理する。そして、このように端末処理することで、コア部13の端部で内部導体11を露出させ、この内部導体11及びコア部13から分岐させた外部導体14をコネクタ等へ接続することができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る端末処理方法及び端末処理装置を、その工程毎に詳述する。
【0022】
図3は、外部導体露出工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図4は、外部導体端末拡開工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図5は、端末拡開治具を説明する端末拡開治具の正面図、
図6は、外部導体端末拡開工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図7は、外部導体の拡開について説明する端末拡開治具の正面図、
図8(a)及び
図8(b)は、外部導体の端末部分が拡開された同軸電線の端部の側面図及び正面図、
図9は、中子装着工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図10は、中子装着工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図11は、外部導体解放工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図12は、チャック治具による同軸電線のチャックの状態を説明するチャック治具の正面図、
図13は、外部導体解放工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図14は、外部導体分割工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図15は、外部導体分割工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図16は、内部導体取出し工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図17は、内部導体取出し工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図18は、外部導体収束工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図19は、外部導体収束工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図20は、外部導体撚合わせ工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図21は、外部導体撚合わせ工程を説明する同軸電線の端部の斜視図、
図22は、外部導体端末裁断工程を説明する同軸電線の端部の斜視図である。
【0023】
(外部導体露出工程)
外部導体14を露出させる外部導体露出工程を行う。
具体的には、同軸電線10の端部におけるシース15をカッタ等により切断する。そして、切断箇所よりも端部側のシース15を端部方向へ引き抜く。これにより、
図3に示すように、外部導体14を所定長さだけ露出させる。
【0024】
(外部導体端末拡開工程)
外部導体露出工程で露出させた外部導体14の端末を広げる外部導体端末拡開工程を行う。
【0025】
この外部導体端末拡開工程では、
図4に示すように、把持治具21及び端末拡開治具71を用いる。
【0026】
把持治具21は、シース15の外径に対応する円弧状の把持凹部22が形成された一対の把持ブロック23を備えており、この把持凹部22で同軸電線10のシース15の端部を把持する。
【0027】
図5に示すように、端末拡開治具71は、同軸電線10の外部導体14の左右に配置された成形ブロック72を備えている。成形ブロック72は、上下に成形刃部73を有しており、左右の成形ブロック72で、上下の成形刃部73が同軸電線10の軸方向へ互い違いにずらされている。そして、これらの成形ブロック72には、上下の成形刃部73によって外部導体14側に圧縮溝部74が形成されている。また、この圧縮溝部74は、その底部に直線部74aが形成されて台形状とされている。これにより、これらの成形ブロック72の圧縮溝部74の間に同軸電線10の外部導体14の端末近傍箇所を配置させた状態で、
図6に示すように、成形ブロック72同士を近接させると、成形ブロック72同士の間には、
図7に示すように、正六角形の保持穴Aが形成される。
【0028】
上記の把持治具21及び端末拡開治具71を用いた外部導体端末拡開工程では、
図4に示すように、把持治具21の把持ブロック23の間に同軸電線10のシース15の端部を配置させた状態で、把持ブロック23同士を近接させる。これにより、把持ブロック23の把持凹部22で同軸電線10のシース15の端部を把持する。
【0029】
このように、把持治具21によって同軸電線10のシース15の端部を把持した状態で、
図6に示すように、外部導体14部分の端末から約1mmから10mmの位置で成形ブロック72を外部導体14へ向かって移動させる。すると、
図7に示すように、これらの左右に設けられた成形ブロック72は、圧縮溝部74に外部導体14の端末近傍箇所を保持しながら成形刃部73が互いに噛み合うように交差する。これにより、圧縮溝部74に保持された外部導体14には、その外周から成形ブロック72の成形刃部73及び圧縮溝部74の直線部74aが押し付けられる。これにより、コア部13の周囲の外部導体14は、その成形刃部73及び圧縮溝部74の直線部74aの押し付け箇所が中心方向へ圧縮されて屈曲される。
【0030】
そして、上記のように成形ブロック72の成形刃部73及び圧縮溝部74の直線部74aで外部導体14を中心方向へ圧縮すると、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、この押し付け箇所よりも端末側の外部導体14が押し付け方向と逆方向である径方向外方へ広がることとなり、コア部13を構成する絶縁体12から分離される。
【0031】
ここで、成形ブロック72は、底部に直線部74aを有する圧縮溝部74を有し、成形ブロック72同士を近接させることで、成形ブロック72同士の間に正六角形の保持穴Aが形成される。そして、これらの成形ブロック72同士を近接させると、成形刃部73の互いの対向部分及び互いに対向する圧縮溝部74の直線部74aが次第に近接することで、成形ブロック72同士の間の保持穴Aが縮小する。したがって、それぞれの成形ブロック72の圧縮溝部74で圧縮される外部導体14の外周には、成形刃部73及び圧縮溝部74の直線部74aが隙間なくかつ概ね均一に接し、よって、外部導体14は、その外周が均一に圧縮されることとなる。これにより、同軸電線10の外部導体14は、同心円状に均一広げられる。
【0032】
このように、端末拡開治具71で外部導体14を成形しても外部導体14の端末の広がりが十分でない場合は、成形ブロック72を一旦離間させて一回目の圧縮位置から端末と反対側へずらして再度成形ブロック72を外部導体14部分へ押し付ける。すると、外部導体14が、軸方向の2箇所で径方向外方へ変形することから、外部導体14の端末での広がりを大きくすることができる。
【0033】
(中子装着工程)
図9に示すように、外部導体端末拡開工程によって外部導体14を端末で広げたら、
図10に示すように、コア部13の端末部分に、例えば、硬質の樹脂や金属から形成された円筒状の中子81を被せて装着する。
【0034】
(外部導体解放工程)
コア部13に中子81を装着したら、露出させた外部導体14を解してコア部13から離す外部導体解放工程を行う。
【0035】
この外部導体解放工程では、
図11に示すように、チャック治具31を用いる。チャック治具31は、
図12に示すように、等間隔に配置された3つのチャック体32を有しており、これらのチャック体32が径方向へ移動可能とされている。これらのチャック体32は、その配置の中心側に押圧凹部33を有しており、チャック治具31には、チャック体32の配置の中心に、押圧凹部33によって囲われた挿通孔34が形成されている。このチャック治具31は、挿通孔34を中心としてチャック体32が回動可能とされている。
【0036】
チャック治具31を用いた外部導体解放工程では、
図11に示すように、チャック治具31の挿通孔34に同軸電線10の外部導体14部分の端部を挿入した状態でチャック体32を配置の中心側へ移動させる。これにより、外部導体14部分を各チャック体32の押圧凹部33で外周側から押圧して固定する。
【0037】
この状態において、
図13に示すように、チャック治具31のチャック体32を、横巻きされた外部導体14の巻方向と逆方向へ回動させる。すると、外部導体14が解されて各素線14aに弛みが生じ、コア部13から離れて膨らんだ状態となる。
【0038】
この外部導体解放工程において、
図11及び
図12に示すように、チャック治具31の各チャック体32の押圧凹部33で外部導体14部分を外周側から押圧すると、外部導体14は、中子81の外周面とチャック体32の押圧凹部33とで挟持されて固定されることとなり、内部導体11を有するコア部13への押圧の負荷がなくなる、または軽減される。また、チャック治具31で外部導体14を固定した状態でチャック体32を回動させて外部導体14の撚り戻しを行うと、外部導体14とともに中子81が回動することとなり、内部導体11を有するコア部13への捩じれの負荷がなくなる、または軽減される。
【0039】
なお、チャック体32の回転角度θは、露出させた外部導体14の軸方向の長さ寸法L(mm)と外部導体14の撚りピッチP(mm/回転)とから次式で算出する。
【0041】
(外部導体分割工程)
解されてコア部13から離された外部導体14を分割する外部導体分割工程を行う。
【0042】
この外部導体分割工程では、
図14に示すように、分割治具41を用いる。分割治具41は、同軸電線10の端部における左右に設けられており、同軸電線10に対して軸方向と直交する方向へ移動可能とされている。これらの分割治具41は、同軸電線10へ向かって突出する分割片42を有する一対の分割体43を備えており、これらの分割体43は、互いに上下方向へ開閉可能とされている。
【0043】
上記の分割治具41を用いた外部導体分割工程では、
図14に示すように、分割体43同士を閉じた状態の分割治具41を同軸電線10に近接させ、解されて膨らんだ状態の外部導体14へ分割片42を挿し込む。
【0044】
この状態で、
図15に示すように、それぞれの分割治具41の分割体43を上下に開き、また、チャック治具31のチャック体32を径方向外方へ移動させて外部導体14の端部における固定を解除する。すると、外部導体14は、上下二つの素線14aの群に分割され、これらの素線14aの群の間に隙間Sが形成され、この隙間Sでコア部13が露出された状態となる。
【0045】
(内部導体取出し工程)
外部導体14を二つの素線14aの群に分割したら内部導体11を有するコア部13を取り出す内部導体取出し工程を行う。
【0046】
この内部導体取出し工程では、
図16に示すように、押出治具51を用いる。この押出治具51は、同軸電線10の端部における一側に設けられており、同軸電線10に対して軸方向と直交する方向へ移動可能とされている。この押出治具51には、その先端側における同軸電線10の端部と逆側の角部に、同軸電線10のコア部13を保持する保持溝52が形成されている。
【0047】
上記の押出治具51を用いた内部導体取出し工程では、
図17に示すように、押出治具51を同軸電線10に近接させて外部導体14に形成された一方の隙間Sへ押し込む。このようにすると、コア部13が押出治具51の保持溝52内に入り込んで保持されるとともに、この押出治具51によって側方へ押圧されてシース15の端部側で屈曲される。これにより、内部導体11を有するコア部13が他方の隙間Sから外部導体14の外へ押し出されて取り出される。
【0048】
(外部導体収束工程)
内部導体11を有するコア部13を取り出したら外部導体14を収束させる外部導体収束工程を行う。
【0049】
この外部導体収束工程では、
図18に示すように、収束治具61を用いる。この収束治具61は、同軸電線10の外部導体14の左右に一対ずつ配置された収束ブロック62を備えている。これらの収束ブロック62は、外部導体14の左右で同軸電線10の軸方向へ位置がずらされて互い違いに配置されており、それぞれ外部導体14に対して軸方向と直交する方向へ移動可能とされている。これらの収束ブロック62には、外部導体14側にV溝63が形成されている。
【0050】
上記の収束治具61を用いた外部導体収束工程では、
図19に示すように、コア部13を上方へ向けた状態で収束ブロック62を外部導体14へ向かって移動させる。すると、これらの左右に設けられた収束ブロック62は、V溝63に外部導体14を保持しながら互いに重なり合うように交差する。これにより、V溝63に保持された外部導体14は、収束ブロック62によって挟み込まれ、よって、同軸電線10の軸線上に収束される。
【0051】
(外部導体撚合わせ工程)
収束させた外部導体14を撚り合わせる外部導体撚合わせ工程を行う。
【0052】
この外部導体撚合わせ工程では、
図20に示すように、前述したチャック治具31を用いる。チャック治具31を用いた外部導体撚合わせ工程では、チャック治具31の挿通孔34に同軸電線10の外部導体14の端部を挿入した状態でチャック体32を配置の中心側へ移動させる。これにより、外部導体14の端部を各チャック体32の押圧凹部33で外周側から押圧して固定する。
【0053】
この状態において、
図21に示すように、チャック治具31のチャック体32を、一方向へ回動させる。このようにすると、外部導体14の素線14aが撚り合わされる。
【0054】
なお、この回動方向としては、予め横巻きされていた外部導体14の巻方向と同一方向とするのが好ましい。また、チャック体32の回転数は、外部導体14の素線14aの材料特性によって異なるが、概ね、2回転から3回転程度とするのが好ましい。また、外部導体14の素線14aを撚り合わせると、その撚り合わせによって外部導体14が軸方向に収縮する。したがって、チャック治具31は、同軸電線10の軸方向に移動可能とし、外部導体撚合わせ工程では、撚り合わせによって収縮する外部導体14に対応してチャック治具31を軸方向へ移動させる。
【0055】
(外部導体端末裁断工程)
図22に示すように、チャック治具31で固定されたことでチャック痕が形成されている外部導体14の端末部分をカッタ等で切断して除去する外部導体端末裁断工程を行う。
【0056】
以上の工程を行うことで、同軸電線10の端部において内部導体11を有するコア部13と外部導体14とが分岐され、それぞれコネクタ等への接続が可能な状態となる。
【0057】
このように、上記実施形態に係る端末処理方法及び端末処理装置によれば、外部導体14の端末近傍箇所を端末拡開治具71で外周側から圧縮して変形させ、外部導体14の端末部分をコア部13から離れるように広げることができる。これにより、その後に同軸電線10に対して行う処理の作業性の向上を図ることができる。
【0058】
例えば、同軸電線10の外部導体14の端末を同心円状に広げることで、内部導体11を有するコア部13の保護のための中子装着工程での作業性を向上させることができ、また、外部導体解放工程における外部導体14の撚り戻しを均一にすることができ、品質の向上を図ることができる。
【0059】
また、成形ブロック72を互いに近接させることで、圧縮溝部74から形成される正六角形の保持穴Aが縮小される。これにより、この保持穴Aに外部導体14の端末近傍箇所を配置させておくことで、外部導体14の端末近傍箇所の外周を概ね均一に圧縮させることができ、外部導体14の端部を同心円状に均一広げることができる。これにより、その後に同軸電線10に対して行う処理の作業性をより向上させることができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、端末拡開治具71の成形ブロック72を互いに近接させることで正六角形となる保持穴Aが形成される場合を例にとって説明したが、保持穴Aの形状としては、正八角形でも良い。
【0061】
また、上記実施形態では、外部導体解放工程において、横巻きされた外部導体14の撚りと逆に回転させて外部導体14を弛ませたが、外部導体14が縦添えされた同軸電線10の場合では、チャック治具31によって外部導体14の端部を把持した状態で、このチャック治具31を軸方向における端部と逆方向へ移動させて外部導体14を弛ませることとなる。
【0062】
ここで、本発明の更なる優位性を説明するため、端末拡開治具の参考例を示す。
【0063】
(参考例1)
図23(a)及び
図23(b)は参考例1に係る端末拡開治具を示す図である。
図23(a)に示すように、参考例1の端末拡開治具91では、成形ブロック92に、同軸電線10の外部導体14部分を圧縮するU字状の溝部94が設けられている。
【0064】
図23(b)に示すように、溝部94に同軸電線10の外部導体14を保持させて端末拡開治具91の成形ブロック92を近接させると、溝部94の底部同士は互いに近接し、外部導体14を圧縮することとなる。しかし、それぞれの成形ブロック92を近接させても、溝部94の縁部近傍部分の外部導体14への押圧力は増加せず、よって、外部導体14の上下部分での圧縮力が不足してしまう。これにより、外部導体14が周方向へ均一に圧縮されず、外部導体14の端末における拡開にばらつきが生じてしまう。
【0065】
(参考例2)
図24(a)及び
図24(b)は参考例2に係る端末拡開治具を示す図である。
図24(a)に示すように、参考例2の端末拡開治具95では、成形ブロック96に、同軸電線10の外部導体14部分を圧縮するV字状の溝部98が設けられている。
【0066】
図24(b)に示すように、溝部98に同軸電線10の外部導体14を保持させて端末拡開治具95の成形ブロック96を近接させると、溝部98が外部導体14を圧縮することとなる。しかし、溝部98の谷部及びそれぞれの成形ブロック96の溝部98同士の噛み合わせ部分に空間Gが形成され、この空間Gの部分での圧縮力が不足してしまう。これにより、外部導体14が周方向へ均一に圧縮されず、外部導体14の端末における拡開にばらつきが生じてしまう。
【0067】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。