(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の駆動装置を自動車等の可変圧縮比エンジンに具体化した第1実施形態を
図1〜
図10に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、可変圧縮比エンジン1は、ヘッドカバー2と、同
図1においてヘッドカバー2の下側に配置されたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の下側に配置されたシリンダブロック4と、シリンダブロック4の下側に配置されたロアケース5等を有している。
【0025】
ヘッドカバー2とシリンダヘッド3は互いに連結固定され、シリンダヘッド3とシリンダブロック4は、互いに連結固定されている。シリンダヘッド3には、
図1に示すように、吸気通路3a及び排気通路3bが形成されている。吸気通路3a及び排気通路3bは、吸気弁6a及び排気弁6bにてそれぞれ開閉されるようになっている。
【0026】
シリンダブロック4には、シリンダボア8が形成され、そのシリンダボア8内にはピストンPが上下方向に移動可能に収容されている。そして、シリンダボア8の内壁、ピストンPのピストンヘッド、シリンダヘッド3、吸気弁6a及び排気弁6bで囲まれた空間に燃焼室9が形成される。ピストンPは、コンロッドCRと連結されている。そのコンロッドCRは、ロアケース5内に配置されたクランクシャフトCSに連結されている。
【0027】
シリンダブロック4は、クランクシャフトCSを収容したロアケース5に対して、
図1において、上下方向に、移動可能に配置されている。詳述すると、シリンダブロック4は、ロアケース5に対して、上下方向に移動可能に支持されている。つまり、可変圧縮比エンジン1は、燃焼室9の容積を変更することで圧縮比を可変するエンジンである。詳述すると、シリンダブロック4がロアケース5に対して、上下方向に移動しその相対位置を変更すると、ピストンPの最上昇時の燃焼室9の容積が変更されるものである。
【0028】
次に、ロアケース5に対して被駆動体としてのシリンダブロック4を上下方向に移動させための駆動装置10について説明する。駆動装置10は、その燃焼室9の容積を変更する駆動力変換部としての容積変更機構と、その容積変更機構に回転トルクを付与し、その回転トルクにてシリンダブロック4に上下方向に移動(直線運動)させるモータMとから構成されている。
【0029】
図1、
図3に示すように、シリンダブロック4の左右外側面には、シリンダブロック4の前後両端までのびる収容溝11が凹設されている。収容溝11は、断面コ字状に形成され、その上側内壁面11aと下側内壁面11bは、平面であって互いに平行になるように形成されている。また、奥壁面11cは、平面であって、上側内壁面11a及び下側内壁面11bに対して直交している。
【0030】
収容溝11を形成する下側内壁12は、シリンダブロック4の左右外側面において、その中央部分を残し、
図2、
図4に示すように、前後両側部分が切り欠き形成されている。そして、切り入り残された下側内壁12、同下側内壁12の下側内壁面11bと相対向する部分の上側内壁面11a、及び、同下側内壁12と同上側内壁面11aに挟まれた部分の奥壁面11cとで、カム収容凹部13が形成されている。
【0031】
また、カム収容凹部13の前後両側の下側内壁12を切り落とした部分には、奥壁面11cと同一面となるL字状の段差壁面が形成される。そして、この段差壁面と同段差壁面と直交する部分の上側内壁面11aとで、嵌合ガイド部14(
図2、
図4において
図1の左側の前後一対の嵌合ガイド部14のみ図示)が形成されている。
【0032】
従って、シリンダブロック4の左右両側の外側面には、左右一対のカム収容凹部13が形成され、それらカム収容凹部13の前後両側には、嵌合ガイド部14が切り欠き形成されている。つまり、シリンダブロック4の下側四隅には、嵌合ガイド部14が切り欠き形成され、シリンダブロック4の前後両側中央位置には、カム収容凹部13が凹設されている。
【0033】
左右一対のカム収容凹部13内には、同一形状の偏芯カム18がそれぞれ配設されている。左右一対の偏芯カム18は円柱形状をなし、偏芯カム18の外周面がカム収容凹部13の上側内壁面11aと下側内壁面11bの2箇所で摺接可能に回転するようになっている。つまり、円柱形状の左右一対の偏芯カム18のカムプロフィールは、その直径がカム収容凹部13の上側内壁面11aと下側内壁面11bとの間隔と一致させている。
【0034】
シリンダブロック4の下側に配置されるロアケース5は、左右両側部の前後両側部に、即ち、ロアケース5の四隅に四角柱状のガイド部材20(
図2、
図4において左側の前後一対のガイド部材20のみ図示)がロアケース5の上面から延出形成されている。そして、四隅に延出形成されたガイド部材20は、対応するシリンダブロック4に形成された嵌合ガイド部14に対して下方から嵌合するようになっている。
【0035】
つまり、ロアケース5の後側の左右両側のガイド部材20は、シリンダブロック4の後側の左右両側の嵌合ガイド部14に下側から嵌合する。また、ロアケース5の前側の左右両側のガイド部材20は、シリンダブロック4の前側の左右両側の嵌合ガイド部14に下側から嵌合する。
【0036】
そして、対応する嵌合ガイド部14の段差壁面と当接する四角柱状のガイド部材20の当接面は、上下方向に移動可能にそれぞれ摺接する。従って、シリンダブロック4は、ロアケース5に対し、左右方向の移動が規制され、上下方向の移動が可能となるように支持される。
【0037】
図2、
図4に示すように、ロアケース5の左側の前後一対のガイド部材20(ロアケース5の右側の前後一対のガイド部材20も同様)には、前後一対の軸受(図示略)が設けられ、両軸受間に負荷回転軸23が回転可能に支持されている。前後両側のガイド部材20間に配置された左右一対の負荷回転軸23は、それぞれ同じ高さ位置に配置され、シリンダブロック4にそれぞれ形成された左右一対のカム収容凹部13内を貫通するようになっている。
【0038】
左右一対のカム収容凹部13内をそれぞれ貫通する左右一対の負荷回転軸23は、カム収容凹部13内に収容された偏芯カム18をそれぞれ固着する。負荷回転軸23は、円柱形状の偏芯カム18を偏芯して固着している。詳述すると、負荷回転軸23は、その中心軸線O1が偏芯カム18の中心軸線O2に対して変位させて偏芯カム18を固着している。従って、軸受に支持された負荷回転軸23が回転すると、偏芯カム18は、負荷回転軸23に中心軸線O1を回転中心に偏芯回転をする。
【0039】
ちなみに、
図5に示すように、負荷回転軸23の中心軸線O1及び偏芯カム18の中心軸線O2を通過する線であって、その中心軸線O1を起点に最も距離が長い偏芯カム18の外周面部を長径部aといい、最も距離が短い偏芯カム18の外周面部を短径部bという。
【0040】
そして、左側の負荷回転軸23に固着された左側の偏芯カム18の長径部aが上側内壁面11aに接している時、右側の負荷回転軸23に固着された右側の偏芯カム18の長径部aも上側内壁面11aに接するように、左右一対の偏芯カム18は、各負荷回転軸23に対して固着されている。
【0041】
従って、
図1に示すように、偏芯カム18が回転し、偏芯カム18の長径部aがカム収容凹部13の上側内壁面11aに当接している時(偏芯カム18の短径部bが下側内壁面11bに当接している時)、シリンダブロック4は、ロアケース5に対して最も離間した上方位置に配置されることになる。
【0042】
反対に、
図3に示すように、偏芯カム18が回転し、偏芯カム18の短径部bがカム収容凹部13の上側内壁面11aに当接している時(偏芯カム18の長径部aが下側内壁面11bに当接している時)、シリンダブロック4は、ロアケース5に対して最も近接した下方位置に配置されることになる。
【0043】
図1、
図2に示すように、ロアケース5の前後両側のガイド部材20の中間位置の上面には、嵌着凹部25が凹設されている。嵌着凹部25には、スプリングSPが上方に向かって配設され、そのスプリングSPの上端部はカム収容凹部13の下側内壁12の下面12aに当接している。そして、スプリングSPは、常に、シリンダブロック4をロアケース5に対して上方に離間させる弾性力をシリンダブロック4に付与している。
【0044】
ロアケース5であって、その後側の左右両側に設けたガイド部材20の後面には、駆動装置10を構成するモータM(
図2、
図4において左側のモータMのみ図示)が支持ブロック26を介して固設されている。左右一対のモータMは、本実施形態では、ブラシレスモータにて構成され、その出力軸(図示略)が減速機を介してそれぞれ左右一対の負荷回転軸23に駆動連結されている。そして、左右一対のモータMは、負荷回転軸23を回転させ、偏芯カム18を偏芯回転させる。
【0045】
ここで、左右一対の偏芯カム18が回転することによってシリンダブロック4が上下動して燃焼室9の容積が変更する動作について説明する。
まず、偏芯カム18が、
図5(a)に示す低圧縮比状態から下降し、
図5(b)に示す状態を経て、
図5(c)に示す高圧圧縮比状態に推移する「下降行程」に従って説明する。
【0046】
下降行程では、負荷回転軸23を回転させ、シリンダブロック4をスプリングSPの弾性力に抗して下方に押し下げる。
図5(a)で示すように、偏芯カム18の外周面の短径部bがカム収容凹部13の下側内壁面11bに当接した状態から、
図5(b)の状態を経て、
図5(c)に示す偏芯カム18の外周面の長径部aがカム収容凹部13の下側内壁面11bに当接して行くまでの行程である。
【0047】
ここで、
図5(a)の偏芯カム18のカム配置の位置は、可変圧縮比エンジン1は低圧縮比状態にある。
図5(c)の偏芯カム18のカム配置の位置は、可変圧縮比エンジン1は高圧縮比状態にある。
【0048】
なお、各
図5(a)〜(c)で示す1点鎖線は、偏芯カム18が、負荷回転軸23の中心軸線O1を中心に微小角度Δθ回転した後の偏芯カム18の外郭と下側内壁12の下側内壁面11bの外郭を示す。
【0049】
ところで、
図5(a)に示す位置の低圧縮比状態から、偏芯カム18が負荷回転軸23の中心軸線O1を中心に微小角度Δθの回転をする場合と、
図5(c)に示す位置の高圧縮比状態から、偏芯カム18が負荷回転軸23の中心軸線O1を中心に微小角度Δθの回転をする場合とで、下側内壁12の変位は共に小さくほぼ等しい。
【0050】
これに対して、
図5(b)に示す位置から、偏芯カム18が負荷回転軸23の中心軸線O1を中心に微小角度Δθの回転をする場合は、先の2つの場合より下側内壁12の変位は遙かに大きい。
【0051】
従って、偏芯カム18が
図5(a)(c)の付近にある時には下側内壁12からの抗力が小さく、シリンダブロック4を下げるのに要求される力Fが小さくなることから、偏芯カム18を回転させるトルクが低くてもよいことになる。これに対して、偏芯カム18が
図5(b)の付近にある時には下側内壁12からの抗力が大きく、シリンダブロック4を下げるのに要求される力Fが大きくなることから、偏芯カム18を回転させるために高トルクが要求されることになる。
【0052】
また、下側内壁12の下降速度(シリンダブロック4の下降速度)を一定に保つためには、
図5(a)(c)の付近では偏芯カム18は速く回転し、
図5(b)の付近では偏芯カム18は遅く回転することが要求される。つまり、負荷回転軸23は、
図5(a)(c)の付近では「低トルク高速回転」の特性が要求され、
図5(b)の付近では「高トルク低速回転」の特性が要求される。
【0053】
なお、偏芯カム18を可変圧縮比エンジン1に適用した時、シリンダブロック4の移動に相対して燃焼圧による力が変化するため、
図5(a)に示す位置付近での「低トルク高速回転」の特性は、厳密には異なると考えられるが、説明の便宜上、本実施形態ではその差を無視して説明する。
【0054】
従って、下降行程において、偏芯カム18に回転力を付与する際の負荷回転軸23に要求される「回転数−トルク特性」は、
図6に破線で示す非線形実負荷特性線Ldとして示され、非線形回転数−トルク特性となる。つまり、非線形実負荷特性線Ldは、「低トルク高速回転」の第1点P1と「高トルク低速回転」の第2点P2を結ぶ、略反比例形の湾曲した特性曲線である。
【0055】
その結果、偏芯カム18が
図5(a)から
図5(c)に推移する場合、
図6の第1点P1の位置から、第2点P2に向かって左側に下降しながら移行する。偏芯カム18が
図5(b)の状態になると、第2点P2に到達する。
【0056】
偏芯カム18が
図5(b)から
図5(c)に推移する場合、
図6の第2点P2の位置から、第1点P1に向かって右側に上昇しながら移行する。そして、偏芯カム18が
図5(c)の状態になると、第1点P1に到達する。
【0057】
このように、負荷回転軸23に要求される「回転数−トルク特性」が
図6破線で示す非線形の非線形実負荷特性線Ldであることから、負荷回転軸23に駆動転結されるモータMは、その「回転数−トルク出力特性」が
図6破線で示す非線形実負荷特性線Ldに対応することが要求される。
【0058】
次に、左右両側に設けた駆動装置10の電気的構成について説明する。左右両側の駆動装置10は両方とも同じ構成なので説明の便宜上、一方の駆動装置10の構成について説明する。
【0059】
図7に示すように、駆動装置10は、モータMを有している。モータMは、スター結線中性点切替タイプのブラシレスモータであって、8極12スロット集中巻きのブラシレスモータにて構成されている。
【0060】
ロータは、本実施形態では、そのロータコアに8個の永久磁石を周方向に埋め込んだ所謂IPM(Interior Permanent Magnet)構造のロータである。
一方、ステータは、3相交流のための各相の巻線が巻回される12個のティースT(
図8参照)を備えている。12個のティースTは、U相、V相、W相のための3個のティースTを1組として、4組周方向に順番に配置されている。従って、各相の巻線は90度間隔に配置される。
【0061】
なお、説明の便宜上、12個のティースTをそれぞれ区別して特定するとき、符号の後に数字を付加して、第1〜第12ティースTT1〜T12という。
このとき、第1ティースT1、第4ティースT4、第7ティースT7及び第10ティースT10を、U相用のティースTという。また、第2ティースT2、第5ティースT5、第8ティースT8及び第11ティースT11を、V相用のティースTという。さらに、第3ティースT3、第6ティースT6、第9ティースT9及び第12ティースT12を、W相用のティースTという。
【0062】
つまり、U相、V相、W相のための3個のティースTを1組とする3相ティースが、周方向に4組順番に配置されている。従って、4組の各相のティースTは90度間隔に配置される。
【0063】
U相は、
図8に示すように、第1U相巻線Lu1と第2U相巻線Lu2を有している。第1U相巻線Lu1は、集中巻きにてU相の各ティースT1,T4,T7,T10を所定の数だけ巻回されている。第1U相巻線Lu1の始端U1aは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB1に接続されている。バスバーB1は、U相の電源電圧Vuが供給される電力線L1を介して受電端子Tuに接続されている。また、第1U相巻線Lu1の終端U1bは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB3に接続されている。なお、この第1U相巻線Lu1が、第1系統巻線S1(
図9参照)におけるU相の巻線を構成する。
【0064】
また、第2U相巻線Lu2は、第1U相巻線Lu1と同様に、集中巻きにてU相の各ティースT1,T4,T7,T10を所定の数だけ巻回されている。第2U相巻線Lu2の始端U2aは、バスバーB3に接続されている。また、第2U相巻線Lu2の終端U2bは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB2に接続されている。従って、第2U相巻線Lu2と第1U相巻線Lu1は、直列に接続される。なお、直列に接続した第1U相巻線Lu1と第2U相巻線Lu2が、第2系統巻線S2(
図10参照)におけるU相の巻線を構成する。
【0065】
そして、U相において、第1U相巻線Lu1の終端U1bと第2U相巻線Lu2の始端U2aを接続したバスバーB3は、
図8に示すように、電力線L3及び第1U相スイッチング素子Qu1を介して中性線NLと接続されている。
【0066】
第1U相スイッチング素子Qu1は、
図7に示すように、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、ドレン端子が電力線L3及びバスバーB3を介して、第1U相巻線Lu1と第2U相巻線Lu2に接続され、ソース端子が中性線NLに接続されている。第1U相スイッチング素子Qu1のゲート端子には、第1U相駆動信号CTu1が入力される。そして、第1U相スイッチング素子Qu1は、Hレベルの第1U相駆動信号CTu1が入力されるとオンし、Lレベルの第1U相駆動信号CTu1が入力されるとオフするようになっている。
【0067】
また、第2U相巻線Lu2の終端U2bを接続したバスバーB2は、
図8に示すように、電力線L2及び第2U相スイッチング素子Qu2を介して中性線NLに接続されている。
【0068】
第2U相スイッチング素子Qu2は、
図7に示すように、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、ドレン端子が電力線L2及びバスバーB2を介して、第2U相巻線Lu2の終端U2bに接続され、ソース端子が中性線NLに接続されている。第2U相スイッチング素子Qu2のゲート端子には、第2U相駆動信号CTu2が入力される。そして、第2U相スイッチング素子Qu2は、Hレベルの第2U相駆動信号CTu2が入力されるとオンし、Lレベルの第2U相駆動信号CTu2が入力されるとオフするようになっている。
【0069】
V相は、
図8に示すように、第1V相巻線Lv1と第2V相巻線Lv2を有している。第1V相巻線Lv1は、集中巻きにてV相の各ティースT2,T5,T8,T11を所定の数だけ巻回されている。第1V相巻線Lv1の始端V1aは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB4に接続されている。バスバーB4は、V相の電源電圧Vvが供給される電力線L4を介して受電端子Tvに接続されている。また、第1V相巻線Lv1の終端V1bは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB6に接続されている。なお、この第1V相巻線Lv1が、第1系統巻線S1(
図9参照)におけるV相の巻線を構成する。
【0070】
また、第2V相巻線Lv2は、第1V相巻線Lv1と同様に、集中巻きにてV相の各ティースT2,T5,T8,T11を所定の数だけ巻回されている。第2V相巻線Lv2の始端V2aは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB6に接続されている。また、第2V相巻線Lv2の終端V2bは、バスバーB5に接続されている。従って、第2V相巻線Lv2と第1V相巻線Lv1は、直列に接続される。なお、直列に接続した第1V相巻線Lv1と第2V相巻線Lv2が、第2系統巻線S2(
図10参照)におけるV相の巻線を構成する。
【0071】
そして、V相において、第1V相巻線Lv1の終端V1bと第2V相巻線Lv2の始端V2aを接続したバスバーB6は、
図8に示すように、電力線L6及び第1V相スイッチング素子Qv1を介して中性線NLと接続されている。
【0072】
第1V相スイッチング素子Qv1は、
図7に示すように、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、ドレン端子が電力線L6及びバスバーB6を介して、第1V相巻線Lv1と第2V相巻線Lv2に接続され、ソース端子が中性線NLに接続されている。第1V相スイッチング素子Qv1のゲート端子には、第1V相駆動信号CTv1が入力される。そして、第1V相スイッチング素子Qv1は、Hレベルの第1V相駆動信号CTv1が入力されるとオンし、Lレベルの第1V相駆動信号CTv1が入力されるとオフするようになっている。
【0073】
また、第2V相巻線Lv2の終端V2bと接続したバスバーB5は、
図8に示すように、電力線L5及び第2V相スイッチング素子Qv2を介して中性線NLに接続されている。
【0074】
第2V相スイッチング素子Qv2は、
図7に示すように、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、ドレン端子が電力線L5及びバスバーB5を介して、第2V相巻線Lv2の終端V2bに接続され、ソース端子が中性線NLに接続されている。第2V相スイッチング素子Qv2のゲート端子には、第2V相駆動信号CTv2が入力される。そして、第2V相スイッチング素子Qv2は、Hレベルの第2V相駆動信号CTv2が入力されるとオンし、Lレベルの第2V相駆動信号CTv2が入力されるとオフするようになっている。
【0075】
W相は、
図8に示すように、第1W相巻線Lw1と第2W相巻線Lw2を有している。第1W相巻線Lw1は、集中巻きにてW相の各ティースT3,T6,T9,T12を所定の数だけ巻回されている。第1W相巻線Lw1の始端W1aは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB7に接続されている。バスバーB7は、W相の電源電圧Vwが供給される電力線L7を介して受電端子Twに接続されている。また、第1W相巻線Lw1の終端W1bは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB9に接続されている。なお、この第1W相巻線Lw1が、第1系統巻線S1(
図9参照)におけるW相の巻線を構成する。
【0076】
また、第2W相巻線Lw2は、
図8に示すように、第1W相巻線Lw1と同様に、集中巻きにてW相の各ティースT3,T6,T9,T12を所定の数だけ巻回されている。第2W相巻線Lw2の始端W2aは、バスバーB9に接続されている。また、第2W相巻線Lw2の終端W2bは、モータケース内のリア側に配設されたバスバーB8に接続されている。従って、第2W相巻線Lw2と第1W相巻線Lw1は、直列に接続される。なお、直列に接続した第1W相巻線Lw1と第2W相巻線Lw2が、第2系統巻線S2(
図10参照)におけるW相の巻線を構成する。
【0077】
そして、W相において、第1W相巻線Lw1の終端W1bと第2W相巻線Lw2の始端W2aを接続したバスバーB9は、
図8に示すように、電力線L9及び第1W相スイッチング素子Qw1を介して中性線NLと接続されている。
【0078】
第1W相スイッチング素子Qw1は、
図7に示すように、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、ドレン端子が電力線L9及びバスバーB9を介して、第1W相巻線Lw1と第2W相巻線Lw2に接続され、ソース端子が中性線NLに接続されている。第1W相スイッチング素子Qw1のゲート端子には、第1W相駆動信号CTw1が入力される。そして、第1W相スイッチング素子Qw1は、Hレベルの第1W相駆動信号CTw1が入力されるとオンし、Lレベルの第1W相駆動信号CTw1が入力されるとオフするようになっている。
【0079】
また、第2W相巻線Lw2の終端W2bと接続したバスバーB8は、
図8に示すように、電力線L8及び第2W相スイッチング素子Qw2を介して中性線NLに接続されている。
【0080】
第2W相スイッチング素子Qw2は、
図7に示すように、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、ドレン端子が電力線L8及びバスバーB8を介して、第2W相巻線Lw2の終端W2bに接続され、ソース端子が中性線NLに接続されている。第2W相スイッチング素子Qw2のゲート端子には、第2W相駆動信号CTw2が入力される。そして、第2W相スイッチング素子Qw2は、Hレベルの第2W相駆動信号CTw2が入力されるとオンし、Lレベルの第2W相駆動信号CTw2が入力されるとオフするようになっている。
【0081】
ちなみに、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2を全てオフ状態にし、第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1を予め定めたタイミングでオンさせる。これによって、モータMの巻線構造は、U相が第1U相巻線Lu1、V相が第1V相巻線Lv1、W相が第1W相巻線Lw1からなるスター結線となる。
図9にその等価回路を示す。
【0082】
従って、U相の第1U相巻線Lu1が第1系統巻線S1となり、V相の第1V相巻線Lv1が第1系統巻線S1となり、W相の第1W相巻線Lw1が第1系統巻線S1となる。
一方、第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1を全てオフ状態にし、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2を予め定めたタイミングでオンさせる。これによって、モータMの巻線構造は、U相が第1及び第2U相巻線Lu1,Lu2の直列回路、V相が第1及び第2V相巻線Lv1,Lv2の直列回路、W相が第1及び第2W相巻線Lw1,Lw2の直列回路からなるスター結線となる。
図10にその等価回路を示す。
【0083】
従って、U相の第1及び第2U相巻線Lu1,Lu2の直列回路が第2系統巻線S2となり、V相の第1及び第2V相巻線Lv1,Lv2の直列回路が第2系統巻線S2となり、W相の第1及び第2W相巻線Lw1,Lw2の直列回路が第2系統巻線S2となる。
【0084】
従って、モータMが、
図9で示す等価回路で駆動されるとき、モータMは、
図6実線で示す高速回転低トルク出力特性線Laの回転数−トルク出力特性(N−T出力特性)に従って駆動される。
【0085】
また、モータMが、
図10で示す等価回路で駆動されるとき、モータMは、
図6実線で示す低速回転高トルク出力特性線Lbの回転数−トルク出力特性(N−T出力特性)に従って駆動する。
【0086】
尚、
図6において、高速回転低トルク出力特性線Laと低速回転高トルク出力特性線Lbとが交差する交差点を切替点Pxといい、切替点Pxに対応するモータMの回転トルクTnを切替トルクTxという。そして、モータMが出力可能な範囲のうち、切替トルクTx未満のトルク領域を第1トルク領域Z1といい、切替トルクTx以上のトルク領域を第2トルク領域Z2という。
【0087】
また、
図6において、非線形実負荷特性線Ldの「低トルク高速回転」の第1点P1に対応するモータMの回転の回転トルクTnを最小トルクTminといい、「高トルク低速回転」の第2点P2に対応するモータMの回転トルクTnを最大トルクTmaxという。
【0088】
そして、高速回転低トルク出力特性線Laは、この高速回転低トルク出力特性線Laの回転数−トルク出力特性を使ってモータMを駆動する場合、その高速回転低トルク出力特性線Laの使用両側部が非線形実負荷特性線Ldと交差するように設定されている。また、低速回転高トルク出力特性線Lbは、同様に、この低速回転高トルク出力特性線Lbの回転数−トルク出力特性を使ってモータMを駆動する場合、その低速回転高トルク出力特性線Lbの使用両側部が非線形実負荷特性線Ldと交差するように設定されている。
【0089】
さらに、モータMは、高速回転低トルク出力特性線Laと低速回転高トルク出力特性線Lbの交差する切替点Pxが以下の条件となるように、高速回転低トルク出力特性線Laと低速回転高トルク出力特性線Lbを設定している。
【0090】
ここで、
図6において、非線形実負荷特性線Ldの第1点P1と第2点P2を直線で結ぶ回転数−トルク出力特性の出力特性線を線形仮想負荷特性線Lxとする。そして、切替点Pxは、線形仮想負荷特性線Lxと前記非線形実負荷特性線Ldとの間が最も離間する前記非線形実負荷特性線Ld上の特性点を通る、線形仮想負荷特性線Lxに直交する直交線Lxaの線上に存在するように設定している。なお、前記非線形実負荷特性線Ldは、線形仮想負荷特性線Lxに対し第1点P1及び第2点P2の中間点に向けて特性図の原点側に突出する略サインカーブ形状の曲線となっている。
【0091】
従って、
図6破線で示す負荷回転軸23に要求される非線形実負荷特性線Ldに対応するためには、第1トルク領域Z1にある時には、モータMを高速回転低トルクで駆動し、第2トルク領域Z2にある時には、モータMを低速回転高トルクで駆動させればよいことになる。
【0092】
詳述すると、第1トルク領域Z1にある時には、モータMを
図9で示す等価回路にし、N−T出力特性を
図6に示す高速回転低トルク出力特性線Laに従った駆動する。また、第2トルク領域Z2にある時には、モータMを
図10で示す等価回路にし、N−T出力特性を
図6に示す低速回転高トルク出力特性線Lbに従った駆動する。
【0093】
これによって、負荷回転軸23と駆動転結されたモータMは、そのN−T出力特性が
図6破線で示す非線形実負荷特性線Ldに最も近似した特性となる。
駆動装置10は、回転数センサ28を有している。回転数センサ28は、ロアケース5の後側のガイド部材20に設けられ、負荷回転軸23のその時々の回転数(モータMの出力軸のその時々の回転速度N)を検出し、その回転数検出信号SGNを出力する。
【0094】
図7に示すように、駆動装置10は、ECU(電子制御ユニット)30を有している。ECU30は、マイクロコンピュータからなり、モータMのリアカバー壁に固設した収容ボックスB内に収容されている。本実施形態では、ECU30は、収容ボックスB内の回路基板(図示しない)に第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2とともに実装されている。
【0095】
ECU30は、図示しない外部装置から圧縮比の変更を指令する指令信号CNTが入力され、この指令信号CNTに基づいて、モータMを駆動制御する。
ECU30は、回転数センサ28からその時々の回転数検出信号SGNを入力する。ECU30は、回転数検出信号SGNに基づいて、その時のモータMの回転速度Nを算出する。ECU30は、算出した回転速度Nに基づいて、その時の回転トルクTnが、第1トルク領域Z1と第2トルク領域Z2のいずれの領域に属しているか判定するようになっている。
【0096】
そして、ECU30は、回転トルクTnが第1トルク領域Z1にある時、モータMをN−T出力特性を高速回転低トルク出力特性線Laに基づいて駆動させるべく、モータMの巻線を
図9に示す等価回路にする。即ち、ECU30は、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2をオフさせる。
【0097】
そして、ECU30は、第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1を予め定めたタイミングでオンさせる。これによって、モータMは、第1U相、第1V相及び第1W相巻線Lu1,Lv1,Lw1が通電されて回転磁界が生成されるようになっている。
【0098】
また、ECU30は、回転トルクTnが第2トルク領域Z2にある時、モータMをN−T出力特性を低速回転高トルク出力特性線Lbに基づいて駆動させるべく、モータMの巻線を
図10に示す等価回路にする。即ち、ECU30は、第1相、第1V相及び第1W相スイッチグ素子Qu1〜Qw1をオフさせる。
【0099】
そして、ECU30は、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2を予め定めたタイミングでオンさせる。これによって、モータMは、第1U相、第1V相及び第1W相巻線Lu1,Lv1,Lw1、及び、第2U相、第2V相及び第2W相巻線Lu2,Lv2,Lw2、が通電されて回転磁界が生成されるようになっている。
【0100】
次に、上記のように構成した駆動装置10の作用について説明する。
今、
図1から
図3に示す位置までシリンダブロック4を下降させて、可変圧縮比を変更させる場合について説明する。
【0101】
図1の状態では、偏芯カム18の位置は、
図5(a)に示す位置ある。そして、この状態から、ECU30に、シリンダブロック4を
図1から
図3に示す位置まで下降させて、可変圧縮比を変更させる指令信号CNTが図示しない外部装置から入力される。
【0102】
ECU30は、指令信号CNTに応答して、シリンダブロック4を下降すべくモータMを駆動させる。この時、ECU30は、偏芯カム18の回動位置、即ちシリンダブロック4が最上位置に位置していることを先の制御で認識しているものとする。そのため、ECU30は、負荷回転軸23に要求されるトルクは、
図6で示す非線形実負荷特性線Ldの第1点P1に対応する最小トルクTminであることから、モータMを第1トルク領域Z1に基づく制御で行う。
【0103】
ECU30は、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2を全てオフ状態にする。そして、ECU30は、モータMの巻線構造を、
図9に示すように、U相は第1U相巻線Lu1、V相は第1V相巻線Lv1、W相は第1W相巻線Lw1からなるスター結線にする。そのために、ECU30は、第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1を予め定めたタイミングでオンさせる。
【0104】
これによって、モータMは、そのN−T出力特性が
図6に示す高速回転低トルク出力特性線Laに従った駆動をする。モータMが駆動を開始し偏芯カム18が回動すると、シリンダブロック4は下降を開始する。
【0105】
ECU30は、回転数センサ28からの回転数検出信号SGNを入力して回転速度Nを算出して、回転トルクTnが第1トルク領域Z1から第2トルク領域Z2に遷移したかどうか判定する。
【0106】
ここで、ECU30は、回転トルクTnが切替トルクTxに達すると、回転トルクTnが第1トルク領域Z1から第2トルク領域Z2に遷移したと判定する。そして、ECU30は、第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1を全てオフ状態にする。そして、モータMの巻線構造を、
図10に示すように、U相は第1及び第2U相巻線Lu1,Lu2の直列回路、V相は第1及び第2V相巻線Lv1,Lv2の直列回路、W相は第1及び第2W相巻線Lw1,Lw2の直列回路からなるスター結線にする。そのために、ECU30は、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2を予め定めたタイミングでオンさせる。
【0107】
これによって、モータMは、そのN−T出力特性が
図6に示す高速回転低トルク出力特性線Laから低速回転高トルク出力特性線Lbに従った駆動をする。そして、偏芯カム18は、このモータMの駆動によってさらに回転してシリンダブロック4を下降させる。
【0108】
そして、偏芯カム18が
図5(c)に示す回動位置から
図5(b)に示す回動位置に向かって回動すると、第2トルク領域Z2にある回転トルクTnは、最大トルクTmax→切替トルクTx→第1トルク領域Z1→最小トルクTminに向かって推移していく。
【0109】
やがて、回転トルクTnが切替トルクTxに達すると、ECU30は回転トルクTnが第2トルク領域Z2から第1トルク領域Z1に遷移したと判定する。そして、ECU30は、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2を全てオフ状態にする。そして、モータMの巻線構造を、
図9に示すように、U相は第1U相巻線Lu1、V相は第1V相巻線Lv1、W相は第1W相巻線Lw1からなるスター結線にする。そのために、ECU30は、第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1を予め定めたタイミングでオンせる。
【0110】
これによって、モータMは、そのN−T出力特性が
図6に示す低速回転高トルク出力特性線Lbから高速回転低トルク出力特性線Laに従った駆動をする。そして、偏芯カム18は、このモータMの駆動によってさらに回転してシリンダブロック4を下降させる。
【0111】
そして、回転トルクTnが最小トルクTminになると、即ち、偏芯カム18がさらに回動し
図5(c)に示す回動位置に到達すると、ECU30は、シリンダブロック4が
図3に示す位置まで下降したと判断する。そして、ECU30は、第1U相、第1V相及び第1W相スイッチング素子Qu1〜Qw1、並びに、第2U相、第2V相及び第2W相スイッチング素子Qu2〜Qw2を全てオフ状態にしてモータMを駆動停止させて圧縮比の変更制御を終了する。
【0112】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、偏芯カム18(負荷回転軸23)の回転トルクが第1トルク領域Z1にある時、モータMを、高速回転低トルク出力特性線Laに基づくN−T出力特性を使って駆動した。
【0113】
従って、モータMは、第1トルク領域Z1において、偏芯カム18(負荷回転軸23)がシリンダブロック4に付与するための非線形の回転数−トルク特性の非線形実負荷特性線Ldに近似した回転トルクTnを生成することができる。
【0114】
(2)本実施形態によれば、偏芯カム18(負荷回転軸23)の回転トルクが第2トルク領域Z2にある時、モータMを、低速回転高トルク出力特性線Lbに基づくN−T出力特性を使って駆動した。
【0115】
従って、モータMは、第2トルク領域Z2において、偏芯カム18(負荷回転軸23)がシリンダブロック4に付与するための非線形回転数−トルク特性の非線形実負荷特性線Ldに近似した回転トルクTnを生成することができる。
【0116】
(3)本実施形態によれば、第1トルク領域Z1と第2トルク領域Z2の境界を切替トルクTxで区分した。そして、切替トルクTxは、高速回転低トルク出力特性線Laと低速回転高トルク出力特性線Lbとの交差点を切替点Pxし、その切替点Pxに対応する回転トルクTnを切替トルクTxとした。
【0117】
従って、モータMは、第1トルク領域Z1での制御から第2トルク領域Z2での制御に移行する場合(その逆の場合も同様)、連続性が保たれて急激な変動動作を低減させることができる。その結果、モータMは、第1トルク領域Z1と第2トルク領域Z2の全領域において、シリンダブロック4に対して変動幅の小さい移動速度(駆動速度)及び変動幅の小さい移動させる力を実現できる。
【0118】
しかも、非線形実負荷特性線Ldを、線形の回転数−トルク特性の高速回転低トルク出力特性線Laと低速回転高トルク出力特性線Lbとで近似させることから制御が容易にできる。
【0119】
(4)本実施形態によれば、高速回転低トルク出力特性線Laと低速回転高トルク出力特性線Lbが交差する切替点Pxは、
図6に示すように、線形仮想負荷特性線Lxと前記非線形実負荷特性線Ldとの間が最も離間する前記非線形実負荷特性線Ld上の特性点を通る、線形仮想負荷特性線Lxに直交する直交線Lxaの線上に存在するように設定した。
【0120】
従って、非線形である非線形実負荷特性線Ldは、線形である高速回転低トルク出力特性線La及び低速回転高トルク出力特性線Lbの2つで、最も近似させることができる。
その結果、モータMを第1トルク領域Z1で駆動させる場合においても、また、第2トルク領域Z2で駆動させる場合においても、効率のよい駆動が行えて消費電力の低減、過剰エネルギーの発熱を低減することができる。
【0121】
(5)本実施形態によれば、1つのモータMについて、各相のステータティースに、2系統の巻線を巻回し、
図6に示す高速回転低トルク出力特性線Laと低速回転高トルク出力特性線Lbの2つの回転数−トルク出力特性を切替可能に形成した。
【0122】
従って、1つのモータMについて、2つの回転数−トルク出力特性を切替可能にしたことから、駆動装置10の小型化を実現することができる。
(6)本実施形態によれば、1つのモータMについて、各相のステータティースに2つの系統の巻線を巻回した。即ち、第1系統巻線S1は、各相の巻線Lu1,Lv1,Lw1を集中巻きにて巻回して形成した。第2系統巻線S2は、同じく、各相の巻線Lu2、Lv2,Lw2を集中巻きした後、第1系統巻線S1の各相の巻線Lu1,Lv1,Lw1とそれぞれ直列に接続することによって形成した。
【0123】
従って、モータMの構造を簡単にでき、小型化することができるとともに、駆動装置10をより小型化することのできる駆動装置を提供することにある。
尚、上記した第1実施形態は、各相の第1系統巻線S1と、その第1系統巻線S1の各相の巻線Lu1,Lv1,Lw1と直列に接続することによって形成された第2系統巻線S2は、
図9及び
図10に示すように、その受電端子Tu、Tv,Twを共通にすることができた。
【0124】
これを、
図11に示すように、第1系統巻線S1と第2系統巻線S2を、それぞれ個別に、各相のステータティースに巻線Lu,Lv,Lwを集中巻きにて巻回するようにして実施してもよい。つまり、第1系統巻線S1の受電端子Tu1,Tv1,Tw1と第2系統巻線S2の受電端子Tu2,Tv2,Tw2をそれぞれ分けて形成する。
【0125】
第1系統巻線S1の受電端子Tu1,Tv1,Tw1には、モータMを低トルク高速回転数で駆動させるための電源が供給されている給電線に切替スイッチング素子(図示せず)を介して接続する。一方、第2系統巻線S2の受電端子Tu2,Tv2,Tw2には、モータMを高トルク低速回転数で駆動させるための電源が供給されている給電線に切替スイッチング素子(図示せず)を介して接続する。
【0126】
そして、偏芯カム18(負荷回転軸23)の回転トルクが第1トルク領域Z1にある時、第1系統巻線S1を選択して、モータMを、高速回転低トルク出力特性線Laに基づくN−T出力特性で駆動する。
【0127】
また、偏芯カム18(負荷回転軸23)の回転トルクが第2トルク領域Z2にある時、第2系統巻線S2を選択して、モータMを、低速回転高トルク出力特性線Lbに基づくN−T出力特性で駆動する。
【0128】
ちなみに、各図示しない切替スイッチング素子を、第1系統巻線S1及び第2系統巻線S2と中性線NLとを結ぶ引出線上に設けてもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図12に従って説明する。
【0129】
本実施形態は、第1実施形態のモータMとその巻線構造に特徴を有する。そのため、その特徴を有する部分について、詳細に説明して同じ構成部分については、説明の便宜上省略する。
【0130】
図12に示すように、モータMは、デルタ結線切替タイプのブラシレスモータであって、8極12スロット集中巻きのブラシレスモータにて構成されている。そして、3相交流のための各相の巻線が巻回される12個のステータのティースは、U相、V相、W相を1組として、4組周方向に順番に配置されている。従って、各相の巻線は90度間隔に配置される。
【0131】
U相は、第1U相巻線Lu1と第2U相巻線Lu2を有している。
第1U相巻線Lu1は、集中巻きにてU相の各ティースに所定の数だけ巻回されている。そして、第1U相巻線Lu1の始端U1aは、第1及び第2スイッチング素子Q1,Q2を介してU相の受電端子Tuに接続されている。また、第1U相巻線Lu1の終端U1bは、V相の受電端子Tvに接続されている。なお、この第1U相巻線Lu1が、第1系統巻線S1(
図13参照)におけるU相の巻線を構成する。
【0132】
第2U相巻線Lu2は、集中巻きにてU相の各ティースに所定の数だけ巻回されている。そして、第2U相巻線Lu2の始端U2aは、U相の受電端子Tuに接続されている。また、第2U相巻線Lu2の終端U2bは、第3及び第4スイッチング素子Q3,Q4を介して第1U相巻線Lu1の始端U1aに接続されている。
【0133】
従って、第1U相巻線Lu1と第2U相巻線Lu2は、第3及び第4スイッチング素子Q3,Q4を介して直列に接続されている。なお、直列に接続したこの第1U相巻線Lu1と第2U相巻線Lu2が、第2系統巻線S2(
図14参照)におけるU相の巻線を構成する。
【0134】
第1〜第4スイッチング素子Q1〜Q4は、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、それぞれケート端子に第1〜第4駆動信号CT1〜CT4が入力される。そして、第1〜第4スイッチング素子Q1〜Q4は、Hレベルの第1〜第4駆動信号CT1〜CT4が入力されるとオンし、Lレベルの第1〜第4駆動信号CT1〜CT4が入力されるとオフするようになっている。
【0135】
V相は、第1V相巻線Lv1と第2V相巻線Lv2を有している。
第1V相巻線Lv1は、集中巻きにてV相の各ティースに所定の数だけ巻回されている。そして、第1V相巻線Lv1の始端V1aは、第5及び第6スイッチング素子Q5,Q6を介してV相の受電端子Tvに接続されている。また、第1V相巻線Lv1の終端V1bは、W相の受電端子Twに接続されている。なお、この第1V相巻線Lv1が、第1系統巻線S1(
図13参照)におけるV相の巻線を構成する。
【0136】
第2V相巻線Lv2は、集中巻きにてV相の各ティースに所定の数だけ巻回されている。そして、第2V相巻線Lv2の始端V2aは、V相の受電端子Tvに接続されている。また、第2V相巻線Lv2の終端V2bは、第7及び第8スイッチング素子Q7,Q8を介して第1V相巻線Lv1の始端V1aに接続されている。なお、直列に接続したこの第1V相巻線Lv1と第2V相巻線Lv2が、第2系統巻線S2(
図14参照)におけるV相の巻線を構成する。
【0137】
第5〜第8スイッチング素子Q5〜Q8は、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、それぞれケート端子に第5〜第8駆動信号CT5〜CT8が入力される。そして、第5〜第8スイッチング素子Q5〜Q8は、Hレベルの第5〜第8駆動信号CT5〜CT8が入力されるとオンし、Lレベルの第5〜第8駆動信号CT5〜CT8が入力されるとオフするようになっている。
【0138】
W相は、第1W相巻線Lw1と第2W相巻線Lw2を有している。
第1W相巻線Lw1は、集中巻きにてW相の各ティースに所定の数だけ巻回されている。そして、第1W相巻線Lw1の始端W1aは、第9及び第10スイッチング素子Q9,Q10を介してW相の受電端子Twに接続されている。また、第1W相巻線Lw1の終端W1bは、U相の受電端子Tuに接続されている。なお、この第1W相巻線Lw1が、第1系統巻線S1(
図13参照)におけるW相の巻線を構成する。
【0139】
第2W相巻線Lw2は、集中巻きにてW相の各ティースに所定の数だけ巻回されている。そして、第2W相巻線Lw2の始端W2aは、W相の受電端子Twに接続されている。また、第2W相巻線Lw2の終端W2bは、第11及び第12スイッチング素子Q11,Q12を介して第1W相巻線Lw1の始端W1aに接続されている。なお、直列に接続したこの第1W相巻線Lw1と第2W相巻線Lw2が、第2系統巻線S2(
図14参照)におけるW相の巻線を構成する。
【0140】
第9〜第12スイッチング素子Q9〜Q12は、ボディーダイオードD付きのNチャネルMOSトランジスタよりなり、それぞれケート端子に第9〜第12駆動信号CT9〜CT12が入力される。そして、第9〜第12スイッチング素子Q9〜Q12は、Hレベルの第9〜第12駆動信号CT9〜CT12が入力されるとオンし、Lレベルの第9〜第12駆動信号CT9〜CT12が入力されるとオフするようになっている。
【0141】
そして、第3、第4、第7、第8、第11及び第12スイッチング素子Q3,Q4,Q7,Q8,Q11,Q12をオフ状態に保持する。そして、第1、第2、第5、第6、第9及び第10スイッチング素子Q1,Q2,Q5,Q6,Q9,Q10をオン状態にする。これによって、モータMの巻線構造は、U相が第1U相巻線Lu1、V相が第1V相巻線Lv1、W相が第1W相巻線Lw1からなるデルタ結線となる。
図13にその等価回路を示す。
【0142】
従って、U相の第1U相巻線Lu1が第1系統巻線S1となり、V相の第1V相巻線Lv1が第1系統巻線S1となり、W相の第1W相巻線Lw1が第1系統巻線S1となる。
また、第1、第2、第5、第6、第9及び第10スイッチング素子Q1,Q2,Q5,Q6,Q9,Q10をオフ状態に保持する。そして、第3、第4、第7、第8、第11及び第12スイッチング素子Q3,Q4,Q7,Q8,Q11,Q12をオン状態にする。これによって、モータMの巻線構造は、U相が第1及び第2U相巻線Lu1,Lu2の直列回路、V相が第1及び第2V相巻線Lv1,Lv2の直列回路、W相が第1及び第2W相巻線Lw1,Lw2の直列回路からなるデルタ結線となる。
図14にその等価回路を示す。
【0143】
従って、U相の第1及び第2U相巻線Lu1,Lu2の直列回路が第2系統巻線S2となり、V相の第1及び第2V相巻線Lv1,Lv2の直列回路が第2系統巻線S2となり、W相の第1及び第2W相巻線Lw1,Lw2の直列回路が第2系統巻線S2となる。
【0144】
これによって、モータMが、
図13で示す等価回路で駆動されるとき、モータMは、
図6に示す高速回転低トルク出力特性線LaのそのN−T出力特性に従って駆動される。また、モータMが、
図14で示す等価回路で駆動されるとき、モータMは、
図6に示す低速回転高トルク出力特性線LbのN−T出力特性に従って駆動する。
【0145】
そして、偏芯カム18(負荷回転軸23)の回転トルクが第1トルク領域Z1にある時、モータMの巻線構造を
図13に示す巻線構造に切替えて、モータMを高速回転低トルク出力特性線Laに基づくN−T出力特性を使って駆動する。
【0146】
反対に、偏芯カム18(負荷回転軸23)の回転トルクが第2トルク領域Z2にある時、モータMの巻線構造を
図14に示す巻線構造に切替えて、モータMを低速回転高トルク出力特性線Lbに基づくN−T出力特性を使って駆動する。
【0147】
従って、本実施形態によれば、第1実施形態の上記効果に加えて、巻線構造がデルタ結線のモータMにも応用でき、駆動装置10の使用範囲を広げることができる。
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
【0148】
・上記実施の形態では、ブラシレスのモータMに具体化したが、ブラシ付きDCモータに応用して実施してもよい。
この場合、
図15の模式図に示すように、ブラシ付きDCモータ40のロータ側に高速用整流子41と高トルク用整流子42とを設ける。高速用整流子41には、共通ブラシ43と高速用ブラシ44が、回転する高速用整流子41の各整流子片41aと摺接するように配置されている。高トルク用整流子42には、1つの高トルク用ブラシ45が、高速用整流子41とともに回転する高トルク用整流子42の各整流子片42aと摺接するように配置されている。
【0149】
また、ロータコアの各ティース46(図では1つのみ図示)には、高速用巻線47と高トルク用巻線48の2つの巻線がそれぞれ巻回されている。各ティース46に巻回された高速用巻線47と高トルク用巻線48は、
図16の説明電気回路図に示すように、直列にそれぞれ接続されている。
【0150】
そして、各高速用巻線47であって、高トルク用巻線48との接続点CNと反対側の端子は高速用整流子41の所定の整流子片41aにそれぞれ接続されている。
また、各高トルク巻線48であって、高速用巻線47との接続点CNと反対側の端子は高トルク用整流子42の所定の整流子片42aにそれぞれ接続させている。さらに、各高速用巻線47と高トルク用巻線48の接続点CNは、高速用整流子41の所定の整流子片41aにそれぞれ接続させている。
【0151】
そして、一定電圧の電源から高速用ブラシ44に、あるいは、高トルク用ブラシ45に電力を供給する。この時、前記実施形態と同様に、トルクに対し線形となる回転数−トルク特性を有する。
【0152】
これによって、偏芯カム18の回転トルクが第1トルク領域Z1にある時、高速用ブラシ44から高速用巻線47に電力を供給するようにし、ブラシ付きDCモータ40を高速回転低トルク出力特性線Laに基づくN−T出力特性を使って駆動させることができる。
【0153】
反対に、偏芯カム18の回転トルクが第2トルク領域Z2にある時、高トルク用ブラシ45から高トルク用巻線48及び高速用巻線47に電力を供給するようにし、ブラシ付きDCモータ40を低速回転高トルク出力特性線Lbに基づくN−T出力特性を使って駆動させることができる。
【0154】
・上記実施の形態では、被駆動体としてのシリンダブロック4を上下方向に等速等直線駆動力で移動させる可変圧縮比エンジンに具体化した。これは、モータにて被駆動体を直線運動させる駆動装置であって、モータMの回転駆動力が直線駆動力に変換される駆動装置であれば何れでもよい。
【0155】
・上記第1及び第2実施形態のブラシレスモータMでは、ティースの数が12個、ロータの磁極が8極であったが、これに限定されるものではなく、ティースの数及びロータの磁極の数を適宜変更して実施してもよい。
【0156】
・上記第1及び第2実施形態のブラシレスモータMでは、切替巻線が定電圧印加時において線形回転数−トルク出力特性を有するものであったが、これに限定されない。例えば、切替巻線が定電圧印加時において非線形回転数−トルク出力特性を有するものであっても、前記駆動力変換部の前記非線形回転数−トルク特性である非線形実負荷特性線Ldの最大回転数最小トルク点P1から最小回転数最大トルク点P2の間の、少なくとの異なる領域の所要出力を満たすとともに、少なくとも一部において前記最大回転数最小トルク点P1と前記最小回転数最大トルク点P2を直線で結ぶ線形仮想負荷特性線Lxと前記非線形実負荷特性線Ldで囲まれた領域にあって所要出力を満たすものであり、モータMの出力が前記2点P1,P2の間において線形仮想負荷特性線Lxに対し非線形実負荷特性線Ld側へと漸近するものであればよい。
【0157】
・上記第1及び第2実施形態では、モータMの回転速度Nの回転速度Nに基づいて、その時の回転トルクTnが、第1トルク領域Z1と第2トルク領域Z2のいずれの領域に属しているか判定するようにした。
【0158】
これを、トルクセンサを、ロアケース5の後側のガイド部材20に設け、モータMの出力軸にかかるその時々の回転トルクを検出して、その時の回転トルクTnが、第1トルク領域Z1と第2トルク領域Z2のいずれの領域に属しているか判定するようにてもよい。
【0159】
・上記第1及び第2実施形態のブラシレスモータMでは、8個の永久磁石を用いたIPM(Interior Permanent Magnet)構造のロータであったが、4個の永久磁石と永久磁石間の鉄極を磁極としたコンシクエント型のIPM構造のロータに応用してもよい。勿論、SPM(Surface Permanent Magnet)構造のロータに応用してもよい。