(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5898114
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/24 20060101AFI20160324BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20160324BHJP
F23N 5/12 20060101ALI20160324BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
F23N5/24 106Z
F23N5/00 Y
F23N5/12 A
F23N1/00 102A
F23N5/00 S
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-48921(P2013-48921)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-173811(P2014-173811A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120802
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】平賀 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】赤木 万之
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−086408(JP,A)
【文献】
特開平03−036417(JP,A)
【文献】
実開昭56−149257(JP,U)
【文献】
実開昭59−071051(JP,U)
【文献】
特開昭58−060123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
F23N 1/00
F23N 5/00
F23N 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナが複数並設されたバーナユニットを備え、バーナユニットを構成する複数のバーナのうち並設方向一端に設けられたバーナに点火する点火プラグと、並設方向他端に設けられたバーナの火炎を検知するフレームロッドとが設けられ、並設方向一端に設けられたバーナからバーナユニットを構成する他のバーナに火移りさせるようにした燃焼装置であって、
燃焼中に定期的に火移り促進制御を実行するようにし、火移り促進制御は、バーナユニットを構成する各バーナへの供給ガス量を一時的に増加させ、または、各バーナへの供給空気量を一時的に減少させることで行うことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記火移り促進制御は、前記バーナユニットを構成する各バーナへの供給ガス量が所定値以下である弱燃焼のときのみに行うことを特徴とする請求項1記載の燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナが複数並設されたバーナユニットを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃焼装置として、特許文献1記載のものが知られている。このものでは、バーナユニットを構成する複数のバーナのうち並設方向一端に設けられたバーナに点火する点火プラグと、並設方向他端に設けられたバーナの火炎を検知するフレームロッドとが設けられ、並設方向一端に設けられたバーナからバーナユニットを構成する他のバーナに火移りさせるようにしている。そして、フレームロッドが火炎を検知することにより、バーナユニットの全てのバーナが着火していると判断して、バーナユニットへのガス供給を継続し、フレームロッドが火炎を検知しなくなったときは、生ガスの放出を防止するために、バーナユニットへのガス供給を中止する。
【0003】
ところで、強風等の外乱その他の影響により、一部のバーナが失火してしまう虞がある。上記従来例のものでは、フレームロッドが設けられていないバーナが失火した場合には、それを判別することはできないため、失火したバーナから生ガスが放出され続けてしまう。
【0004】
尚、上記不具合を解消するために、全てのバーナにフレームロッドを設けることも考えられるが、それではコストアップを招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−50413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑み、フレームロッドが設けられていないバーナが失火しても、生ガスが放出され続けることなく、且つ、コストアップを回避できるようにした燃焼装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナが複数並設されたバーナユニットを備え、バーナユニットを構成する複数のバーナのうち並設方向一端に設けられたバーナに点火する点火プラグと、並設方向他端に設けられたバーナの火炎を検知するフレームロッドとが設けられ、並設方向一端に設けられたバーナからバーナユニットを構成する他のバーナに火移りさせるようにした燃焼装置であって、燃焼中に定期的に火移り促進制御を実行するようにし、火移り促進制御は、バーナユニットを構成する各バーナへの供給ガス量を一時的に増加させ、または、各バーナへの供給空気量を一時的に減少させることで行うことを特徴とする。
【0008】
ここで、火移り促進制御で各バーナへのガス供給量を増加させると、火炎が大きくなって火移りしやすくなり、また、火移り促進制御で各バーナへの供給空気量を減少させると、一次空気の不足で火炎が二次空気を求めて大きくなって、火移りしやすくなる。そして、本発明によれば、フレームロッドが設けられていないバーナが失火しても、火移り促進制御によって当該バーナに火移りさせ、生ガスが放出され続けることを防ぐことができる。更に、フレームロッドは、バーナユニットを構成する複数のバーナのうち並設方向他端のバーナに設けられるだけであり、コストアップを回避できる。
【0009】
ここで、各バーナへの供給ガス量が多い強燃焼のときは、火炎が大きくなるため、バーナ間で火移りしやすく、フレームロッドが設けられていないバーナが失火したままになる可能性は低い。
【0010】
そのため、本発明において、前記火移り促進制御は、前記バーナユニットを構成する各バーナへの供給ガス量が所定値以下である弱燃焼のときのみに行うことが望ましい。これによれば、失火の可能性が低いときに前記火移り制御を無駄に実行することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の燃焼装置である温風暖房機の内部構造を示す図。
【
図3】
図1の温風暖房機が具備するバーナユニットの斜視図。
【
図5】
図1の温風暖房機で行う制御内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1に示す温風暖房機FFに本発明を適用した実施形態について説明する。温風暖房機FFの機体内には、後述するバーナユニットBを内蔵する燃焼筐1が配置されると共に、バーナユニットBの燃焼ガスが内部に流入する熱交換器2が配置されている。熱交換器2は、バーナユニットBに対向して配置される第1熱交換パイプ21と、第1熱交換パイプ21の下方に配置される第2熱交換パイプ22と、更に下方に配置される第3熱交換パイプ23とを備える。そして、第1熱交換パイプ21の下流端と第2熱交換パイプ22の上流端とをボックス24を介して連通させると共に、第2熱交換パイプ22の下流端と第3熱交換パイプ23の上流端とをボックス25を介して連通させ、第3熱交換パイプ23の下流端から排気ファン3を介して燃焼ガスを図示省略した排気筒に排出している。また、熱交換器2の上方に配置される対流ファン4の作動により、温風暖房機FF内に吸い込まれる室内空気を熱交換器2との熱交換で加熱し、温風として機外に吹き出させるようにしている。
【0013】
燃焼筐1内には、燃焼筐1内の空間を燃焼室11と燃焼室11の上流側の給気室12とに仕切る仕切り板13が設けられている。そして、排気ファン3の作動で熱交換器2を介して作用する吸引力により、図示省略した給気筒から給気ボックス5を介して給気室12内に空気が供給されるようにしている。仕切り板13には、
図2に示す如く、多数の分布孔13aが形成されており、給気室12に供給された空気がこれらの分布孔13aを介して燃焼室11に二次空気として供給されるようにしている。
【0014】
燃焼室11内には、バーナユニットBが上下2段に配置されている。
図3も参照して、各バーナユニットBは、2個の管状バーナ6,6を並設して構成されている。管状バーナ6は、混合管61と、混合管61の先端部に嵌合させた炎口部材62とで構成されている。混合管61は、尾端の流入口61aと、流入口61aに対し縮径したベンチュリー部61bと、ベンチュリー部61bから先方に向けて次第に拡径するテーパー管部61cとを有している。そして、流入口61aに臨ませて配置したガスノズル63から噴出する燃料ガスと一次空気とが流入口61aから混合管61内に流入し、混合管61内で燃料ガスと一次空気との混合気が生成されるようにしている。
【0015】
炎口部材62の前面には、中央部の第1炎口62aと、第1炎口62aの周囲に位置する、スリット状の複数の第2炎口62bとが形成されている。そして、第1炎口62aから噴出する混合気の燃焼で形成される火炎に、第2炎口62bから噴出する混合気で形成される火炎が合体して、前方に細長く伸びる火炎が形成され、第1熱交換パイプ21に火炎が送り込まれる。
【0016】
バーナユニットBを構成する2個の管状バーナ6,6の2個の混合管61,61は、混合管61の半割り形状部分を横方向に間隔を存して2個成形した上下2枚の板材64,64を接合して構成されている。また、両板材64,64の両混合管61,61の間に位置する部分の先端部には、混合気が先方に噴出する細長形状の火移り炎口65が形成され、両管状バーナ6,6間で火移りが行われる。また、火移り炎口65の長手方向中間部には、火移り炎口65の他の部分よりも幅広の中間炎口部65aを設けている。
【0017】
図2を参照して、燃焼室11内には、各バーナユニットBを構成する2個の管状バーナ6,6のうち、並設方向一端に設けられた#1の管状バーナ6に点火する点火プラグ71と、並設方向他端に設けられた#2の管状バーナ6の火炎を検知するフレームロッド72とが設けられている。そして、イグナイタ71a(
図4参照)の作動で点火プラグ71の火花放電が行われて#1の管状バーナ6に点火されると、火移り炎口65を介して#2の管状バーナ6に火移りされるようにしている。また、フレームロッド72が火炎を検知することにより、各バーナユニットBの全ての管状バーナ6に着火されたことが確認できる。
【0018】
図4を参照して、バーナユニットBに対する燃料ガスの供給路8には、供給路8の開閉を行う電磁弁81と、弱燃焼から強燃焼まで燃焼状態が変化するように燃料ガス量を調節する比例弁82とが介設されている。更に、比例弁82の下流側で供給路を各管状バーナ6のガスノズル63に夫々接続されるように分岐させている。
【0019】
温風暖房機FFの機体内には、排気ファン3、対流ファン4、電磁弁81、比例弁82及びイグナイタ71aを制御するコントローラCが設けられている。コントローラCには、機体上面に設けられる図示省略した運転スイッチからの信号やフレームロッド72からの信号が入力される。
【0020】
以下、
図5を参照して、コントローラCによる制御について詳述する。先ず、運転スイッチがONされると、STEP1で、排気ファン3をプリパージ回転数で回転させる。
【0021】
次に、STEP2で、排気ファン3を点火回転数で回転させ、STEP3で、イグナイタ71aを作動させ、STEP4で、電磁弁81を開弁させると共に、比例弁82を所定の点火開度に開かせる。
【0022】
STEP5では、フレームロッド72が所定の待ち時間内に火炎を検知したか否かを判別する。フレームロッド72が火炎を検知したとき、STEP6に進み、イグナイタ71aの作動を停止させ、STEP7で、対流ファン4を回転させ、STEP8で、室温が暖房設定温度になるように管状バーナ6への供給ガス量を調節する温調制御を実行する。
【0023】
温調制御では、室温と暖房設定温度との偏差に応じて管状バーナ6への供給ガス量が変化するように比例弁82の開度を調節すると共に、供給ガス量に見合った燃焼用空気が管状バーナ6に供給されるように、排気ファン3の回転数を供給ガス量に比例して可変する。
【0024】
温調制御を開始すると、STEP9で、フレームロッド72が火炎を検知しているか否かを判別し、火炎を検知していれば、STEP10に進む。STEP10では、後述する火移り促進制御を前回実行してから所定時間経過しているか否かを判別する。所定時間経過しているとき、STEP11で、各管状バーナ6への供給ガス量が所定値以下であるか否かを判別し、所定値以下であるとき、即ち、弱燃焼であるとき、STEP12で、火移り促進制御を実行する。
【0025】
一方、STEP10で、火移り促進制御を前回実行してから所定時間経過していないと判別されたとき、または、STEP11で、各管状バーナ6への供給ガス量が所定値より大きいと判別されたときは、火移り促進制御を行わない。
【0026】
STEP13では、運転スイッチがOFFされたか否かを判別し、運転スイッチがOFFされているとき、STEP14に進み、電磁弁81及び比例弁82を閉弁させると共に、排気ファン3及び対流ファン4の回転を停止させて終了し、運転スイッチがOFFされていないときは、STEP8に戻る。
【0027】
また、STEP5で、フレームロッド72が待ち時間内に火炎を検知しなかったと判別されたとき、STEP15に進み、イグナイタ71aの作動を停止させ、STEP16で、電磁弁81及び比例弁82を閉弁させると共に、排気ファン3の回転を停止させて終了する。また、STEP9で、フレームロッド72が火炎を検知していないと判別されたときは、STEP14に進み、上記の如く電磁弁81及び比例弁82を閉弁させると共に、排気ファン3及び対流ファン4の回転を停止させて、失火による生ガスの放出を防止する。
【0028】
ここで、火移り促進制御は、比例弁82の開度を大きくして、各管状バーナ6への供給ガス量を一時的(例えば5秒間)に増加させ、または、排気ファン3の回転数を下げて、各管状バーナ6への供給空気量を一時的(例えば5秒間)に減少させることで行う。尚、排気ファン3の回転数を下げるとき、比例弁82の開度を大きくしてもよく、また、比例弁82の開度を大きくするとき、排気ファン3の回転数を上げてもよい。
【0029】
本実施形態によれば、火移り促進制御で各管状バーナ6へのガス供給量を増加させると、火炎が大きくなって火移りしやすくなり、また、火移り促進制御で各管状バーナ6への供給空気量を減少させると、一次空気の不足で火炎が二次空気を求めて大きくなって、火移りしやすくなる。従って、#1の管状バーナ6が失火しても、火移り促進制御によって#2の管状バーナ6から#1の管状バーナ6に火移りさせ、生ガスが放出され続けることを防ぐことができる。
【0030】
尚、各管状バーナ6にフレームロッドを夫々設けて失火を判別するようにして、生ガスが放出され続けることを防ぐことも考えられるが、それではコストアップを招いてしまう。これに対し、本実施形態では、フレームロッド72は、バーナユニットBを構成する2個の管状バーナ6,6のうち#2の管状バーナ6に設けられるだけであり、コストアップを回避できる。
【0031】
また、各管状バーナ6への供給ガス量が多い強燃焼のときは、火炎が大きくなるため、管状バーナ6,6間で火移りしやすく、#1の管状バーナ6が失火したままになる可能性は低い。本実施形態では、火移り促進制御は、バーナユニットBを構成する各管状バーナ6への供給ガス量が所定値以下である弱燃焼のときのみに行うため、失火の可能性が低いときに火移り制御を無駄に実行することを回避できる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、火移り促進制御に際し、イグナイタ71aを作動させ、#1の管状バーナ6への点火動作を併せて行ってもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、管状バーナ6を2個並設してバーナユニットBを構成しているが、管状バーナ6の並設個数は3個以上であってもよく、また、管状バーナ6以外のバーナが並設されてもよい。
【0034】
更に、上記実施形態は、温風暖房機FFに本発明を適用したものであるが、給湯器等の他のガス器具にも同様に本発明を適用できる。尚、給湯器は使用時間が短いのに対し、温風暖房機は長時間使用される可能性が高い。従って、本実施形態のように、温風暖房機に本発明を適用すると、生ガスが放出され続けることを防ぐのに効果的である。
【符号の説明】
【0035】
6…管状バーナ、B…バーナユニット、71…点火プラグ、72…フレームロッド。