(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0026】
後述する本実施形態の変性共役ジエン系重合体の第1及び第2の製造方法においては、重合体主鎖に窒素原子を含有する官能基を有し、少なくとも一方の末端に、少なくとも1個の第2級アミノ基及び少なくとも1個のアルコキシシリル基を有し、3〜6分岐の構造である官能基を有する変性共役ジエン系重合体を製造する。
【0027】
〔変性共役ジエン系重合体の第1の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の第1の製造方法(以下、単に第1の製造方法と記載する場合がある。)は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用い、共役ジエン化合物と窒素原子含有ビニル化合物、又は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と窒素原子含有ビニル化合物とを、共重合させ、重合体の主鎖中に窒素原子を含み、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、前記共役ジエン系重合体の活性末端に、下記式(1)で表される化合物である変性剤を反応させる変性工程とを有する。
【0029】
式(1)中、R
1〜R
4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R
5は炭素数3〜10のアルキレン基を表し、R
6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。
【0030】
(重合工程)
重合工程においては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用い、
共役ジエン化合物と窒素原子含有ビニル化合物、
又は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と窒素原子含有ビニル化合物とを、共重合させ、重合体主鎖中に窒素原子を含み、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る。
【0031】
変性共役ジエン系重合体を構成する共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物と、窒素原子含有ビニル化合物との共重合体、もしくは共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と窒素原子含有ビニル化合物との共重合体である。
【0032】
<共役ジエン化合物>
共役ジエン化合物としては、特に限定されず、重合可能な単量体であればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
<芳香族ビニル化合物>
芳香族ビニル化合物としては、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
<窒素原子含有ビニル化合物>
窒素原子含有ビニル化合物としては、特に限定されず、窒素原子含有ビニル化合物でアニオン重合可能な単量体であればよく、目的とする変性共役ジエン系重合体とシリカとの反応性の観点から、例えば下記式(2)、(3)で表される化合物等が好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
式(2)中、R
7〜R
9は、各々独立して、水素又は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R
10は単結合、又は鎖の途中をNR
13、O、Sのいずれかで中断されてもよい炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表す。
R
11〜R
13は、各々独立して、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、及びケイ素上に炭素数1〜30のアルキル基及び/又は炭素数6〜30のアリール基を有する3置換シリル基からなる群より選ばれるいずれかを表す。
【0038】
式(3)中、R
7〜R
10は前記式(2)と同様であり、Xは鎖の途中をNR
14、O、Sのいずれかで中断されていてもよい炭素数3〜10の2価の炭化水素基で、炭素―炭素結合のすべてが単結合である飽和型環形成部、もしくは少なくとも一部が二重結合である不飽和環形成部を表す。
R
14は炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基を表す。
【0039】
前記式(2)で表される化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、N,N−ジエチルビニルベンジルアミン、N,N−ジプロピルビニルベンジルアミン、N,N−ジブチルビニルベンジルアミン、N,N−ジフェニルビニルベンジルアミン、2−ジメチルアミノエチルスチレン、2−ジエチルアミノエチルスチレン、2−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、N,N−ジメチル−2−(4−ビニルベンジロキシ)エチルアミン、N
1,N
1,N
2−トリメチル−N
2−(4−ビニルベンジル)エタン−1,2−ジアミン、N,N−ジメチル−2−((4−ビニルベンジル)チオ)エチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、得られる共重合体を、シリカを含む加硫物とした時の低ヒステリシスロス性、ウェットスキッド抵抗性、動的弾性率のバランスの観点から、N,N−ジメチルビニルベンジルアミンが好ましい。
【0040】
前記式(3)で表される化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、4−(2−モルホリノエチル)スチレン、4−(2−チアジノエチル)スチレン、4−(2−N−メチルピペラジノエチル)スチレン、1−((4−ビニルフェノキシ)メチル)ピロリジン、1−(4−ビニルベンジロキシメチル)ピロリジン、1−((4−ビニルベンジル)チオメチル)ピロリジン、N−メチル−1−(ピロリジン−1−イル)−N−(4−ビニルベンジル)メチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、得られる共重合体を、シリカを含む加硫物とした時の低ヒステリシスロス性、ウェットスキッド抵抗性、動的弾性率のバランスの観点から、4−(2−ピロリジノエチル)スチレンが好ましい。
【0041】
第1の製造方法の共役ジエン系重合体の重合工程における、前記窒素原子含有ビニル化合物の添加量は、特に限定されず、目的等に応じて調節することができる。例えば、以下に限定されるものではないが、後述する重合開始剤1モルに対して0.5〜100モルであることが好ましく、より好ましくは1〜20モルであり、さらに好ましくは2〜10モルである。
重合工程における窒素原子含有ビニル化合物の添加量を、重合開始剤1モルに対して0.5モル以上とすることで、操縦安定性に優れた加硫物が得られる。
一方において、得られる共役ジエン系共重合体を、シリカを含む変性共役ジエン系重合体組成物とした際の加工性の観点から、重合開始剤1モルに対して100モル以下とすることが好ましい。
第1の製造方法の共役ジエン系重合体の重合工程における窒素原子含有ビニル化合物を添加する時期は、特に限定されない。例えば、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物と同時、もしくは共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物の(共)重合途中に分割して添加することが挙げられる。
【0042】
<重合開始剤>
第1の製造方法の重合工程においては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いる。
重合開始剤として用いる有機アルカリ金属化合物は、特に限定されないが、モノ有機リチウム化合物が好ましい。
モノ有機リチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、低分子化合物、可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物、有機基とリチウムの結合様式において炭素−リチウム結合を有する化合物、窒素−リチウム結合を有する化合物等が挙げられる。
炭素−リチウム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等が挙げられる。
窒素−リチウム結合を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジ−n−ヘキシルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド等が挙げられる。
【0043】
上記のモノ有機リチウム化合物の他に、重合開始剤として、多官能有機リチウム化合物を用いて、重合を行うこともできる。
多官能有機リチウム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,4−ジリチオブタン、sec−ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンの反応物、1,3,5−トリリチオベンゼン、n−ブチルリチウムと1,3−ブタジエン及びジビニルベンゼンの反応物、n−ブチルリチウムとポリアセチレン化合物の反応物等が挙げられる。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている公知の有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
有機リチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
これらの有機リチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
有機リチウム化合物以外の他の有機アルカリ金属化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、有機セシウム化合物等が挙げられる。具体的には、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。その他にも、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等が挙げられる。また、他の有機金属化合物と併用してもよい。
【0045】
アルカリ土類金属化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機ストロンチウム化合物等が挙げられる。また、アルカリ土類金属のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミド等の化合物を用いてもよい。これらの有機アルカリ土類金属化合物は、アルカリ金属化合物や、その他有機金属化合物と併用してもよい。
【0046】
<重合方式>
変性共役ジエン系重合体の第1の製造方法の重合工程において得られる共役ジエン系重合体は、上述したアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤とし、アニオン重合反応による成長反応によって得られる活性末端を有する重合体であることが好ましい。特に、共役ジエン系重合体は、リビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する重合体であることがより好ましい。これにより、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
重合様式としては、特に限定されないが、回分式(「バッチ式」ともいう。)、連続式等の重合様式で行うことができる。連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。
反応器は、撹拌機付きの槽型、管型等のものが用いられる。
共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、後述する変性反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。アレン類としては、例えばプロパジエン、1,2−ブタジエン等が挙げられる。アセチレン類としては、例えばエチルアセチレン、ビニルアセチレン等が挙げられる。
【0047】
<重合溶媒>
共役ジエン系重合体の重合反応は、溶媒中で行うことが好ましい。
溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。以下に限定されるものではないが、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等が挙げられる。
重合反応に供する前に、不純物であるアレン類やアセチレン類を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体が得られる傾向にあり、更には高い変性率が達成される傾向にあるため好ましい。
【0048】
<極性化合物>
共役ジエン系重合体の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物と窒素含有ビニル化合物とをランダムに共重合させることができ、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。また、重合反応の促進等にも効果がある。
極性化合物としては、特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−tert−アミラート、カリウム−tert−ブチラート、ナトリウム−tert−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等を用いることができる。
これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができる。具体的には、重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルであることが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は、重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と窒素原子含有ビニル化合物とをランダム化する方法としては、例えば、スチレン及び窒素原子含有ビニル化合物の全量と1,3−ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中に残りの1,3−ブタジエンの断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0049】
<重合温度>
第1の製造方法の重合工程における重合温度はリビングアニオン重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
また、重合工程により得られる共役ジエン系重合体のコールドフローを防止する観点から、分岐をコントロールするためのジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物を用いてもよい。
【0050】
<共役ジエン系重合体の構造>
第1の製造方法の重合工程で得られる共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、50〜100質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。
また、共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、操縦安定性も満足する加硫物を得ることができる。
ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定できる。
また、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜75モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、操縦安定性も満足する加硫物を得ることができる。
ここで、共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンと窒素原子含有ビニル化合物との共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
ランダム共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体等が挙げられる。ただし、ヒステリシスロス性等の観点から、窒素原子含有ビニル化合物の組成分布はランダムなものが好ましい。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
ブロック共重合体としては、例えば、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体(ジブロック)、3個からなる3型ブロック共重合体(トリブロック)、4個からなる4型ブロック共重合体(テトラブロック)等が挙げられる。例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックを「S」で表し、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロックを「B」で表すと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。
上記式において、各ブロックの組成は必ずしも均一である必要はない。例えば、ブロックBは芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体でもよく、又は芳香族ビニル化合物と窒素原子含有ビニル化合物との共重合体でもよく、さらには芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物と窒素原子含有ビニル化合物との共重合体でもよい。
また同様に、上記式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体である場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらには、ブロックBに、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
重合工程で得られる共役ジエン系重合体は、窒素原子含有ビニル化合物の単位及び/又は芳香族ビニル化合物の単位の連鎖が少ない又は無いことが好ましく、具体的には、これらの単位の連鎖が30以上であるブロックの数が、少ないか又は無いものであることが好ましい。
具体的には、重合体がブタジエン−スチレン−窒素原子含有ビニル共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリマー量を分析する公知の方法において、スチレン及び/又は窒素原子含有ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、重合体の総量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0052】
(活性末端の変性工程)
活性末端の変性工程においては、前記共役ジエン系重合体の活性末端に、下記式(1)で表される化合物である変性剤を反応させ、変性共役ジエン系重合体を得る。
【0054】
式(1)中、R
1〜R
4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、R
5は炭素数3〜10のアルキレン基を表し、R
6は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。
【0055】
第1の製造方法の共役ジエン系重合体の活性末端変性工程における変性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等の環状アザシラン化合物が挙げられる。
これらの中でも、変性剤の官能基と、シリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、加工性の観点から、mが2、nが3であるものが好ましい。
好ましい具体例としては、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンが挙げられる。
【0056】
上述した変性剤を、重合体の活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、0〜120℃で、30秒以上反応させることが好ましい。
上述した変性剤の添加量は、特に限定されないが、上述した重合開始剤1モルに対して、0.12〜0.6モルであることが好ましく、0.16〜0.5モルであることがより好ましく、0.16〜0.4モルであることがさらに好ましい。
得られる変性共役ジエン系重合体が十分な変性率を得る観点から0.12モル以上とすることが好ましく、加工性改良のために重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得ることが好ましいことに加え、変性剤のコストの観点から0.6モル以下とすることが好ましい。
【0057】
(変性共役ジエン系重合体)
上述した変性共役ジエン系重合体の第1の製造方法において得られる変性共役ジエン系重合体は、重合体主鎖に窒素原子含有官能基を有し、少なくとも一方の末端に、少なくとも1個の第2級アミノ基および少なくとも1個のアルコキシシリル基を有し、3〜6分岐の構造である官能基を有する。
<変性率>
上述した第1の製造方法により製造される変性共役ジエン系重合体は、本実施形態の効果をより優れたものにする観点から、シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率(以下、単に「変性率」という場合がある。)、すなわち官能基成分を有する重合体の割合が、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有する重合体となるように、変性共役ジエン系重合体を製造することが好ましい。
ここで、前記官能基成分を有する重合体とは、主鎖、末端のいずれかに官能基成分を有する重合体を言い、主鎖のみ変性、主鎖及び末端が変性、末端のみ変性された重合体のいずれも含む。
【0058】
すなわち、本実施形態により得られる変性共役ジエン系重合体は、窒素原子含有ビニル化合物と、式(1)で表される変性剤に由来する官能基とを分子内に有し、シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらには90質量%以上であることが好ましい。
【0059】
官能基成分を有する重合体の定量方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによって測定することができる。
このクロマトグラフィーを用いた方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたGPCカラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が挙げられる。
具体的には、後述する実施例において示す方法により測定することができる。
【0060】
<数平均分子量>
本実施形態の製造方法によって得られる変性共役ジエン系重合体の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは20,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは200,000〜600,000であり、より更に好ましくは300,000〜500,000である。操縦安定性の観点から上記下限値以上が好ましく、また加工性の観点から上記上限値以下が好ましい。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、加硫物の物性の観点から、好ましくは1.00〜3.50、より好ましくは1.10〜3.00である。
【0061】
(その他の処理)
<失活剤、中和剤>
本実施形態の第1の製造方法によって得られる変性共役ジエン系重合体においては、変性反応を行った後、当該変性共役ジエン系重合体の溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。
失活剤としては、特に限定されず、例えば水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。中和剤としては、特に限定されず、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9〜11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガス等が挙げられる。
【0062】
<水添反応>
本実施形態においては、変性共役ジエン系重合体を、不活性溶剤中で更に水素化することによって、二重結合の全部又は一部を飽和炭化水素に変換することができる。その場合、耐熱性、耐候性が向上し、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができる。その結果、自動車用途等種々の用途で一層優れた性能を発揮する。
より具体的には、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水素化率(以下、「水添率」という場合がある。)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
加硫ゴムとして用いる場合には、共役ジエン部の二重結合が部分的に残存していることが好ましい。かかる観点から、変性共役ジエン系重合体中の共役ジエン部の水添率は、3〜70%であることが好ましく、5〜65%であることがより好ましく、10〜60%であることが更に好ましい。
なお、変性共役ジエン系重合体中に、芳香族ビニル化合物に基づく単量体単位が含まれている場合、当該芳香族ビニル化合物に基づく芳香族二重結合の水添率については、特に限定されないが、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であるであることが更に好ましい。水素化率は、核磁気共鳴装置(NMR)等により求めることができる。
水素化の方法は、特に限定されず、公知の方法が利用できる。特に好適な水素化の方法としては、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込む方法で水素化する方法が挙げられる。触媒としては、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒等の不均一系触媒;ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、チタノセン等のメタロセンを用いた触媒等の均一系触媒等が挙げられる。これら中でも、特に、マイルドな水素化条件を選択できる観点から、チタノセン触媒が好ましい。また、芳香族基の水素化は、貴金属の担持触媒を用いることによって行うことができる。
水素化触媒の具体例としては、(1)Ni,Pt,Pd,Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni,Co,Fe,Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti,Ru,Rh,Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等が挙げられる。例えば、水素化触媒として特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報、特開平8−109219号公報に記載された公知の水素化触媒を使用することができる。好ましい水素化触媒としてはチタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物が挙げられる。
【0063】
<添加剤>
また、本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、重合後のゲル生成を防止する観点や、加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
ゴム用安定剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
また、必要に応じ、添加剤として、イオン性物質を除去、あるいは中和するために、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールを加えたり、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、デカン酸、クエン酸、リンゴ酸等のカルボン酸、無機酸水溶液、炭酸ガス等を、加えたりすることができる。
また、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の加工性を更に改善するために、必要に応じて伸展油を変性共役ジエン系共重合体に添加することができる。伸展油を変性共役ジエン系重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、伸展油を重合体溶液に加え、混合して、油展共重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。伸展油としては、例えばアロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)等が挙げられる。伸展油の添加量は、特に限定されないが、通常は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10〜60質量部であり、20〜37.5質量部が好ましい。
【0064】
<変性共役ジエン系重合体の取得方法>
変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が挙げられる。
【0065】
〔変性共役ジエン系重合体の第2の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の第2の製造方法(以下、単に第2の製造方法と記載する場合がある。)においては、
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用い、共役ジエンを重合、又は共役ジエンと他の共重合可能な単量体を共重合して活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、
前記共役ジエン系共重合体の活性末端に、下記式(I)で表される化合物を反応させ、活性末端を変性する変性工程と、
【0067】
前記共役ジエン系重合体の主鎖のビニル基を、ヒドロシリル化反応により、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する珪素変性基により変性する工程を含む。
【0068】
なお、前記式(I)中、R
21〜R
24は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R
25は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、
R
26は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、pは1又は2の整数であり、qは2又は3の整数である。
【0069】
前記アミノ基としては、置換基のないアミノ基、すなわち、−NH
2で表わされるものの他、−NHR(Rは置換基を表す)で表される1置換アミノ基、また、−NH−で表される別々の炭素と結合しているイミノ基、−NR
2、(Rは置換基を表す。)で表される2置換アミノ基、更に、同一の炭素と2重結合で結合しているイミノ基、すなわち、=N−で表されるもの等、窒素原子を含む官能基が挙げられる。
【0070】
(重合工程)
重合工程においては、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用い、共役ジエンを重合、又は共役ジエンと共重合可能な他の単量体を共重合して活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る。
【0071】
<共役ジエン化合物>
共役ジエン化合物としては、特に限定されず、重合可能な単量体であればよく、上記第1の製造方法における重合工程で用いた共役ジエン化合物をいずれも用いることができる。特に、1,3−ブタジエンが、工業的入手のしやすさの観点から好ましい。
【0072】
<共役ジエンと共重合可能な他の単量体>
重合工程において用いる、共役ジエンと共重合可能な他の単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン以外の共役ジエン化合物、ビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、アクリル酸化合物等が挙げられる。
共重合の場合は、これらの単量体の内1種又は2種以上が用いられる。
好適な共重合し得る他の単量体としては、芳香族ビニル化合物である。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、p−N,N−ジエチルアミノメチルスチレン、p−N,N−ジエチル−2−アミノエチルスチレン等がある。
さらに好ましい単量体としては、イソプレン、スチレンである。
共役ジエンとして1,3−ブタジエンを用いた場合、好ましいブタジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体である。ブタジエン系重合体において、ブタジエン単位は50〜100質量%が好ましい。
【0073】
<重合開始剤>
重合工程においては、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を重合開始剤として用いる。
【0074】
前記アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物としては、上述した上記変性共役ジエン系重合体の第1の製造方法の、重合工程において記載した化合物と、同様の化合物を使用することができる。
【0075】
<重合溶媒>
共役ジエン系重合体の重合反応は、不活性溶媒中で、溶液重合で行うことが好ましい。
重合溶媒としては、上述した上記変性共役ジエン系重合体の第1の製造方法の、重合工程において記載した溶媒と、同様の溶媒を使用することができる。
【0076】
<極性化合物>
共役ジエン系重合体の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。
極性化合物としては、上述した上記変性共役ジエン系重合体の第1の製造方法の、重合工程において記載した極性化合物と同様の化合物を、同様の添加量で使用することができる。
【0077】
<重合温度>
重合温度はリビングアニオン重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
また、共役ジエン系重合体のコールドフローを防止する観点から、分岐をコントロールするためのジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物を用いてもよい。
【0078】
<重合様式>
重合様式としては、特に限定されないが、上述した第1の製造方法と同様に、回分式(「バッチ式」ともいう。)、連続式等の重合様式で行うことができる。
連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。
反応器は、撹拌機付きの槽型、管型等のものが用いられる。
また、共役ジエン化合物中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、後述する変性反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、上述した第1の方法と同様に、低減化させることが好ましい。
【0079】
<共役ジエン系重合体の構造>
第2の製造方法の重合工程で得られる共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、50〜100質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。
また、共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、操縦安定性も満足する加硫物を得ることができる。
ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定できる。
また、共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜75モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、操縦安定性も満足する加硫物を得ることができる。
ここで、共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンとの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
ランダム共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、特に限定されず、例えば、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、組成がテーパー状に分布しているテーパー(勾配)ランダム共重合体等が挙げられる。共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合や1,2−結合等の組成は、均一であってもよいし、分布があってもよい。
ブロック共重合体としては、例えば、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体(ジブロック)、3個からなる3型ブロック共重合体(トリブロック)、4個からなる4型ブロック共重合体(テトラブロック)等が挙げられる。例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックを「S」で表し、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロックを「B」で表すと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。
上記式において、各ブロックの組成は必ずしも均一である必要はない。例えば、ブロックBは芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体でもよい。
また同様に、上記式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体である場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらには、ブロックBに、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
重合工程で得られる共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル化合物の単位の連鎖が少ない又は無いことが好ましく、具体的には、これらの単位の連鎖が30以上であるブロックの数が、少ないか又は無いものであることが好ましい。
具体的には、重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリマー量を分析する公知の方法において、スチレン単位が30以上連鎖しているブロックが、重合体の総量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0081】
(活性末端の変性工程)
活性末端の変性工程においては、前記共役ジエン系重合体の活性末端に、下記式(I)で表される化合物である変性剤を反応させ、変性共役ジエン系重合体を得る。
【0083】
式(I)中、R
21〜R
24は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R
25は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、
R
26は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、pは1又は2の整数であり、qは2又は3の整数である。
なお、R
21〜R
24はアルキル基であることが好ましく、その炭素数は1〜10であることが好ましい。R
25、R
26のアルキレン基の炭素数は、好ましくは2〜7であり、より好ましくは3〜5である。
【0084】
第2の製造方法の共役ジエン系重合体の活性末端の変性工程における変性剤としては、上述した第1の製造方法において記載した変性剤と同様のものを用いることができる。
【0085】
上述した変性剤を、重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に限定されないが、上述した第1の製造方法と同様とすることができる。
【0086】
上述した変性剤の添加量は、特に限定されないが、重合開始剤のモル数に対して、変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、0.6〜3倍となる範囲であることが好ましく、0.8〜2.5倍となる範囲であることがより好ましく、0.8〜2倍となる範囲であることが更に好ましい。得られる変性共役ジエン系重合体が十分な変性率を得る観点から0.6倍以上とすることが好ましく、加工性改良のために重合体末端同士をカップリングさせ分岐状重合体成分を得ることが好ましいことに加え、変性剤のコストの観点から3倍以下とすることが好ましい。
【0087】
活性末端の変性工程は、上述した重合工程が、回分式の場合は、重合工程で用いた反応器中で続いて変性反応を行っても、次の反応器に移送して行ってもよい。
重合工程が連続式の場合は次の反応器に移送して行う。
活性末端の変性工程は、好ましくは重合工程に引き続いて直ちに行い、より好ましくは5分以内に変性剤を混合して変性反応を行う。
変性反応のための反応器は十分な撹拌が行われるものが好ましい。具体的には、スタティックミキサー型反応器、攪拌機付漕型反応器等がある。
【0088】
(主鎖の変性工程)
主鎖の変性工程においては、前記共役ジエン系重合体の主鎖のビニル基を、後述するヒドロシラン化合物を用いて、ヒドロシリル化反応により、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する珪素変性基により、変性する。
【0089】
ヒドロシリル化反応は、有機溶剤溶液中、又は重合体のまま(溶剤なしの状態)、混練機中で行なわれ、官能基を有するヒドロシラン化合物を触媒存在下に反応させ、共役ジエン系重合体主鎖に変性を行う。好ましくは、溶液重合における重合後に更に終末端変性して得られる重合体溶液をそのまま用いる。
【0090】
<ヒドロシラン化合物>
前記主鎖の変性工程のヒドロシリル化反応における、官能基を有する珪素変性基を導入するヒドロシラン化合物としては、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するヒドロシラン化合物であれば、特に限定されるものではなく、好ましくは、一般式HSiR
3-nX
n、(Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Xはアミノ基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭化水素またはオルガノシラン化合物基を表し、nは1〜3である。)で表されるヒドロシラン化合物である。
【0091】
上記一般式において、nが1であり、また、Rが炭素数1〜3の炭化水素を表すことが好ましい。これにより、ヒドロシリル化反応の収率が高いという効果が得られる。
また、主鎖の変性工程において用いるヒドロシラン化合物は、加水分解等の後反応によりアミノ基、アルコキシ基、水酸基を生成するものでもよい。
【0092】
前記アルコキシシリル基を有するヒドロシラン化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ジメチルモノメトキシシラン、ジメチルモノエトキシシラン、ジメチルモノプロポキシシラン、ジメチルモノブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジプロポキシシラン、エチルジエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、分子中にH−Si基及びアルコキシシリル基を有するオルガノシロキサン化合物が挙げられる。
【0093】
前記アミノ基を有するヒドロシラン化合物には、2置換アミノ基を有するヒドロシラン化合物、保護化1置換アミノ基を有するヒドロシラン化合物、保護化アミノ基を有するヒドロシラン化合物が含まれる。
2置換アミノ基を有するヒドロシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、ジメチルアミノジメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ジエチルアミノジエチルシランが挙げられる。
保護化1置換アミノ基を有するヒドロシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノジメチルシラン、N−エチル−N−トリメチルシリルアミノジエチルシランが挙げられる。
保護化アミノ基を有するヒドロシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、N,N−ビストリメチルシリルアミノジメチルシラン、N,N−ビストリメチルシリルアミノジエチルシランが挙げられる。
【0094】
水酸基を有するヒドロシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、ジメチルヒドロキシシラン、ジエチルヒドロキシシラン、ジブチルヒドロキシシランが上げられる。また、加水分解により水酸基を有する珪素変性基を導入するヒドロシラン化合物として、具体的には、ジメチルモノメトキシシラン、ジメチルモノエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、ジメチルグリシジルシラン、ジエチルグリシジルシランなどのエポキシ基を有するシラン化合物が挙げられる。
【0095】
ヒドロシリル化反応は、有機溶剤溶液中又は重合体のまま(溶剤なしの状態)混練機中で行なわれ、官能基を有するヒドロシラン化合物を触媒存在下に反応させ、共役ジエン系重合体の主鎖を変性する。好ましくは、溶液重合における重合後に更に終末端変性して得られる重合体溶液をそのまま用いる。
【0096】
反応するヒドロシラン化合物の量は、目的に応じて任意であるが、好ましくは、共役ジエン系重合体の主鎖1モルに対し、1〜10モルである。
この範囲で主鎖の変性を行うことにより、目的とする変性共役ジエン系重合体組成物や、その加硫物において、フィラーとの親和性が改良され、かつ良好な加工性が得られる。より好ましくは、主鎖1モルに対し、反応するヒドロシラン化合物の量は、2〜5モルである。その場合、更にフィラーとの親和性と加工性とのバランスが優れる。
【0097】
ヒドロシリル化反応の触媒としては、白金又は白金含有触媒が主に用いられる。
好ましくは、均一系白金触媒が好適に用いられ、以下の例に限定されるものではないが、例えば、塩化白金酸溶液(すなわちSpeier触媒)、Pt
2(ジビニルテトラメチルジシロキサン)
3溶液(すなわちKarstedt触媒)、ジクロロ(η
4−シクロ−1,5−ジエン)Pt(II)等がある。
反応に使う白金触媒の量は、好ましくはヒドロシラン化合物当たり0.01〜10mmol/mol、より好ましくは0.1〜1mmol/molである。
そのほか、ヒドロシリル化触媒としては、Ti、Zr、Hf、Ni、Co、Ru、Rhのうちいずれかを含むメタロセン化合物であり、特にチタノセン化合物と有機リチウム又は有機アルミニウムの反応物を用いてもよい。
ヒドロシリル化反応は、好ましくは20〜150℃の温度範囲で行い、より好ましくは50〜120℃で行う。この範囲では適度な反応時間で主鎖の変性反応を実施可能であり、ゲル化等の副反応が少なく、実用的である。
活性末端の変性後の重合溶液を用い、末端の変性反応に続いてヒドロシリル化反応を行う場合は、当該主鎖の変性反応を、活性末端の変性時の温度や、重合工程における重合温度と同じ温度で行うことができる。溶液状態では、反応時間は10分〜5時間が好ましく、より好ましくは30分〜2時間の範囲である。
【0098】
(変性共役ジエン系重合体)
上述した実施形態の変性共役ジエン系重合体の第2の製造方法において製造される変性共役ジエン系重合体は、重合体主鎖に窒素原子含有官能基を有し、少なくとも一方の末端に、少なくとも1個の第2級アミノ基および少なくとも1個のアルコキシシリル基を有し、3〜6分岐の構造である官能基を有する。
【0099】
<変性率>
本実施形態の、第2の製造方法により製造される変性共役ジエン系重合体は、本実施形態の効果をより優れたものにする観点から、シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率(以下、単に「変性率」という場合がある。)、すなわち官能基成分を有する重合体の割合が、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有する重合体となるように、変性共役ジエン系重合体を製造することが好ましい。
ここで、前記官能基成分を有する重合体とは、主鎖、末端のいずれかに官能基成分を有する重合体を言い、主鎖のみ変性、主鎖及び末端が変性、末端のみ変性された重合体のいずれも含む。
【0100】
すなわち、本実施形態により得られる変性共役ジエン系重合体は、上記式(I)で表される変性剤、及びヒドロシリル化反応を行うヒドロシラン化合物に由来する官能基を分子内に有し、シリカ粒子充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定のカラムへの吸着量によって求められる変性率が60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましい。
【0101】
官能基成分を有する重合体の定量方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによって測定することができる。
このクロマトグラフィーを用いた方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたGPCカラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が挙げられる。
具体的には、後述する実施例において示す方法により測定することができる。
【0102】
<数平均分子量>
本実施形態の、第2の変性共役ジエン系重合体の製造方法により製造される変性共役ジエン系重合体は、上述した第1の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体と同様に、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、好ましくは20,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは200,000〜600,000であり、さらにより好ましくは300,000〜500,000である。
操縦安定性の観点から上記下限値以上が好ましく、また加工性の観点から上記上限値以下が好ましい。
また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、加硫物の物性の観点から、好ましくは1.00〜3.50、より好ましくは1.10〜3.00である。
【0103】
(その他の処理)
<失活剤、中和剤>
その他の処理として、上述した第1の製造方法と同様に、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤、中和剤としては、上述した第1の製造方法と同様の材料を適用できる。
【0104】
<水添反応>
上述した第1の製造方法と同様に、変性共役ジエン系重合体を、不活性溶剤中で更に水素化してもよい。
【0105】
<添加剤>
また、上述した第1の製造方法と同様に、必要に応じて各種添加剤を配合してもよい。
【0106】
<重合体の取得方法>
最終的に得られた変性共役ジエン系重合体の取得方法においても、上述した第1の製造方法と同様の方法を適用できる。
【0107】
上述したように、本実施形態の変性共役ジエン系重合体の、第1及び第2の製造方法においては、重合体主鎖に窒素原子含有官能基を有し、少なくとも一方の末端に、少なくとも1個の第2級アミノ基および少なくとも1個のアルコキシシリル基を有し、3〜6分岐の構造である官能基を有する、変性共役ジエン系重合体が得られる。
少なくとも一方の末端に、少なくとも1個の第2級アミノ基及び少なくとも1個のアルコキシシリル基を有し、3〜6分岐の構造である官能基を有することにより、ヒステリシスロスの低減及び加工性向上の効果が得られ、更に重合体主鎖に窒素原子含有官能基を有することにより、操縦安定性を向上させる効果が得られる。
【0108】
(変性ブタジエン系重合体)
上述した第2の製造方法の重合工程で、共役ジエンとして特に1,3−ブタジエンを用いた場合に得られる変性ブタジエン系重合体について、結合芳香族ビニル量、ブタジエン単位中のビニル結合含量、ガラス転移温度、ブタジエン単位のビニル結合含量の分布、重合体末端の官能基の組み合わせ、ブタジエン単位のビニル結合含量の分布の制御方法、変性ブタジエン系重合体の好適な例、タイヤ用途に好適な重合体、履物用途に好適な重合体、伸展油の添加、及びムーニー粘度に関し、以下に説明する。
【0109】
<結合芳香族ビニル量>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体が、ビニル芳香族化合物との共重合体である場合、結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜50質量%であることが好ましく、特にタイヤトレッドに用いる場合は、20〜40質量%であることがより好ましい。
結合ビニル芳香族化合物量が上記範囲であると、タイヤトレッド用途において低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、耐摩耗性や破壊強度も満足する加硫物を得ることができる。ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定できる。
【0110】
<ブタジエン単位中のビニル結合含量>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体のブタジエン単位中のビニル結合含量は、特に限定されないが、10〜80モル%であることが好ましく、25〜70モル%であることがより好ましい。
ビニル結合量が上記範囲であると、タイヤトレッド用途において、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがさらに優れ、耐摩耗性や破壊強度も満足する加硫物を得ることができる。
ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R. R. Hampton, Analytical Chemistry, 21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
【0111】
<ガラス転移温度>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体は、さらに、ガラス転移温度が好ましくは−70℃〜0℃の範囲、より好ましくは−50℃〜−20℃の範囲であり、これにより、タイヤトレッド用途において、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがより一層優れた加硫物を得ることができる。
ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とすることができる。
【0112】
<ブタジエン単位のビニル結合含量の分布>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体において、ブタジエン単位のビニル結合含量において、主鎖に沿って分布を有している構造であることが好ましい。この構造であると、主鎖の変性反応であるヒドロシリル化反応がビニルの高い側においてより高い頻度で行われ、主鎖の官能基変性度に所望の範囲で傾きが得られる。これにより末端変性と組み合わせて種々の所望の変性構造が得られる。
【0113】
<重合体末端の官能基の組み合わせ>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体は、特に、末端変性の官能基との組み合わせにおいては、重合体分子の片側に特定の官能基が多く付与され、他の片側に他の特定の官能基を多く付与されている構造が好ましい。
具体的には、開始末端に2置換アミノ基を付与し、さらに、開始側の主鎖を高ビニル結合含量として、開始側に2置換アミノ基を主鎖変性し、終末端にアルコキシシリル基を付与するという構造が好ましい例として挙げられる。
【0114】
<ブタジエン単位のビニル結合含量の分布の制御方法>
上記<ブタジエン単位のビニル結合含量の分布>において説明したように、ブタジエン単位のビニル結合含量において、主鎖に沿って分布を有している構造とするための1つの方法としては、重合時の温度を変更する方法である。
低温では高ビニル結合含量であり高温では低ビニル結合含量とすることができ、重合に際し、昇温しつつ重合する方法により、ブタジエン単位のビニル結合含量の分布を制御することができる。
例えば、重合開始温度30℃から最高到達温度90℃までとすると、ビニル化剤の種類と量を適当に設定すると、ビニル結合含量70モル%から30モル%まで連続的に変化させることができる。
また、他の方法としては、重合途中にビニル化剤を追加・増量することにより、低ビニル結合含量から高ビニル結合含量へ変化させることができる。この方法では、ビニル結合含量10モル%から80モル%まで連続的に、あるいは、段階的に変化させることができる。
【0115】
<変性ブタジエン系重合体の好適な例>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体が、1,3−ブタジエンと他の所定の単量体との共重合体である場合、ブタジエン−スチレン共重合体であることが好ましい。
ブタジエン単位とスチレン単位の共重合体での構成は、ランダムでもブロックでもよい。ランダムとしては、均一なランダムでもテーパーランダムでもよい。ブロック構造としては、完全なブロックでも一部にランダム構造を含むテーパーブロックでもよい。それぞれ、目的に応じて選択可能である。
【0116】
<タイヤ用途に好適な重合体>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体の組成物を用いた加硫配合組成物ゴムがタイヤトレッド用途である場合は、変性ブタジエン系重合体は、ブタジエン−スチレンランダム共重合体であることが好ましい。また、ランダム構造で、かつ結合スチレン量が3〜50質量%であることがより好ましく、かかる場合、繰り返し変形に対し発熱量が小さいという特徴があり、タイヤの要求性能に合致する。
その場合、ランダム共重合体としては、スチレン単位の連鎖長が30以上の成分、すなわちブロックスチレンが少ないものであるか、又は無いものが好ましい。
具体的には、共役ジエン系重合体が、ブタジエン−スチレンランダム共重合体である場合、Kolthoffの方法(I.M.Kolthoff,et al. , J.Polym.Sci. 1,429(1946)に記載の方法)で、分岐状共役ジエン系重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量(ブロックスチレン量)を分析する公知の方法で測定すると、ブタジエン系重合体全量に対し、前記ブロックスチレン量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0117】
さらに詳細には、田中らの方法として知られているオゾン分解による方法で、上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体を分解し、GPCによりスチレン連鎖分布を分析した場合、単離スチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が1のスチレンが、全結合スチレン量に対し40質量%以上であり、長鎖ブロックスチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が8以上のスチレンが全結合スチレン量に対し10質量%以下であることが好ましい。
【0118】
上述したタイヤ用途のブタジエン−スチレンランダム共重合体は、前記<ガラス転移温度>で説明したDSCで測定されるガラス転移温度が−80℃から0℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度が上記範囲であると、引張り強さに優れ、繰り返し歪に対する発熱量も小さく、ゴム弾性も優れる組成物が得られる。
【0119】
<履物用途に好適な重合体>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体の加硫組成物が、履物用途である場合は、変性ブタジエン系重合体は、ブロック構造であることが好ましく、これにより履物、特に靴底用の要求性能に合致する特性が得られる。特にモジュラスが高く、硬い感触となる。また、スチレン単位の連鎖長が30以上の成分が多いことが好ましい。具体的には、ブタジエン系重合体が、ブタジエン−スチレンランダム共重合体である場合、Kolthoffの方法で、ブタジエン系重合体全量に対し、ブロックスチレン量が、10質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。
【0120】
<伸展油による油展>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体は、伸展油により油展されたものであってもよい。伸展油としては、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、さらにIP346法による多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。特に、多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油を用いることが、環境安全上の観点とオイルブリード防止、さらにウェットグリップ特性の観点からより好ましい。
アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52 (12) 799 (1999) に示されるTDAE、MESの他、SRAE、RAE等がある。
伸展油の使用量は任意であるが、通常は、ブタジエン系重合体100質量部に対し、5〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましい。
【0121】
<ムーニー粘度>
上述した第2の製造方法により得られる変性ブタジエン系重合体は、重合体又はその油展重合体において、100℃ムーニー粘度が、30から100であることが好ましい。
【0122】
〔変性共役ジエン系重合体組成物〕
上述した第1及び第2の製造方法によって得られた変性共役ジエン系重合体は、所定の充填剤と組み合わせることにより、各種変性共役ジエン系重合体組成物を構成する。
以下、第1の変性共役ジエン系重合体組成物、第2の変性共役ジエン系重合体組成物について説明する。
(第1の変性共役ジエン系重合体組成物)
第1の変性共役ジエン系重合体組成物は、上述した第1及び第2の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体(以下、単に変性共役ジエン系重合体と記載する場合がある。)を20質量部以上含むゴム成分100質量部に対し、シリカ系無機充填剤0.5〜300質量部を含むものとし、好ましくは、シリカ系無機充填剤5〜200質量部を含むものとする。
【0123】
<ゴム成分>
第1の変性共役ジエン系重合体組成物を構成するゴム成分は、当該ゴム成分100質量部としたとき、変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含み、さらには変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を、組み合わせて使用できる。
変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体としては、特に限定されず、例えば、共役ジエン系重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水素添加物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水素添加物、非ジエン系重合体、天然ゴム等が挙げられる。
具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
また、非ジエン系重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
【0124】
上述した各種ゴム状重合体は、水酸基やアミノ基等の極性を有する官能基を付与した変性ゴムであってもよい。
またその重量平均分子量は、性能と加工特性のバランスの観点から、2,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,500,000であることがより好ましい。また、低分子量のいわゆる液状ゴムを用いることもできる。これらのゴム状重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
上述したゴム状重合体を含む変性共役ジエン系重合体組成物とする場合、配合比率(質量比)は、変性共役ジエン系重合体/ゴム状重合体として、20/80〜100/0が好ましく、30/70〜90/10がより好ましく、50/50〜80/20が更に好ましい。
したがって、ゴム状重合体を含むゴム成分全体を100質量部としたとき、当該ゴム成分中に、第1及び第2の製造方法により得られた変性共役ジエン系重合体を、好ましくは20〜100質量部、より好ましくは30〜90質量部、さらに好ましくは50〜80質量部含むことが好ましい。
変性共役ジエン系重合体/ゴム状重合体の配合比率が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスが更に優れ、操縦安定性もより一層満足する加硫物を得ることができる。
【0126】
<シリカ系無機充填剤>
シリカ系無機充填剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、SiO
2、又はSi
3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO
2、又はSi
3Alを構成単位の主成分とすることがより好ましい。ここで、主成分とは、シリカ系無機充填剤中に50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。
シリカ系無機充填剤として、具体的には、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も用いることができる。これらの中でも、強度や耐摩耗性等の観点から、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が挙げられる。これらの中でも、低ヒステリシス性、ウェットスキッド抵抗性のバランスに優れる観点から、湿式シリカが好ましい。
【0127】
変性共役ジエン系重合体組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100〜300m
2/gであることが好ましく、170〜250m
2/gであることがより好ましい。
また必要に応じて、比較的比表面積が小さい(例えば、比表面積が200m
2/g以下のシリカ系無機充填剤)と、比較的比表面積の大きい(例えば、200m
2/g以上のシリカ系無機充填剤)と、を組み合わせて用いることができる。これにより、良好な低ヒステリシスロス性、ウェットスキッド抵抗性を高度にバランスさせることができる。
【0128】
上記のように、第1の変性共役ジエン系重合体組成物におけるシリカ系無機充填剤の配合量は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、0.5〜300質量部であることが好ましく、5〜200質量部がより好ましく、20〜100質量部が更に好ましい。シリカ系無機充填剤の配合量は、無機充填剤の添加効果が発現する観点から、0.5質量部以上とすることが好ましく、分散性の観点から、300質量部以下とすることが好ましい。
【0129】
<カーボンブラック>
上述した第1の変性共役ジエン系重合体組成物には、カーボンブラックを含有させてもよい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えばSRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。これらの中でも、窒素吸着比表面積が50m
2/g以上、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの含有量は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、0.5〜100質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましく、5〜50質量部が更に好ましい。カーボンブラックの配合量は、ドライグリップ性能や導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現する観点から、0.5質量部以上とすることが好ましく、分散性の観点から、100質量部以下とすることが好ましい。
【0130】
<金属酸化物、金属水酸化物>
上述した第1の変性共役ジエン系重合体組成物には、シリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に、金属酸化物や金属水酸化物を含有させてもよい。
金属酸化物とは、化学式MxOy(Mは金属原子を表し、x及びyは各々1〜6の整数を表す。)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。
また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も用いることができる。金属水酸化物としては、特に限定されず、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0131】
<シランカップリング剤>
上述した第1の変性共役ジエン系重合体組成物には、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤は、ゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、一般的には、硫黄結合部分とアルコキシシリル基、シラノール基部分を一分子中に有する化合物が用いられる。具体的には、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、上述したシリカ系無機充填剤100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部が更に好ましい。シランカップリング剤の配合量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる。
【0132】
<ゴム用軟化剤>
上述した第1の変性共役ジエン系重合体組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を含有させてもよい。
ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
鉱物油系ゴム用軟化剤は、ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれるオイルを含み、これらのうち、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。
第1の変性共役ジエン系重合体において用いるゴム用軟化剤としては、適度な芳香族含量を有するものが重合体との馴染みがよい傾向にあるため好ましい。
ゴム用軟化剤の芳香族含量としては、2〜65%が好ましく、5〜55%がより好ましく、10〜45%が更に好ましい。
ゴム用軟化剤の含有量は、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、30〜90質量部が更に好ましい。ゴム用軟化剤の配合量がゴム成分100質量部に対して100質量部を超えると、ブリードアウトを生じやすく、組成物表面にベタツキを生ずるおそれがある。
【0133】
<添加剤>
上述した第1の変性共役ジエン系重合体組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲内で、上述した材料以外のその他の軟化剤や充填剤、さらに、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。
その他の充填剤としては、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0134】
(第1の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法)
上述した第1の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法については、特に限定されるものではない。例えば、上述したゴム成分と、シリカ系無機充填剤、その他必要に応じた各種材料を、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いて溶融混練する方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。
これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機を用いた溶融混練方法が生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、変性共役ジエン系重合体と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0135】
(加硫物)
第1の変性共役ジエン系重合体組成物は、加硫物として好適に用いられる。
加硫物は、変性共役ジエン系重合体を、シリカ系無機充填剤や、必要に応じてカーボンブラック等の無機充填剤、変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤、加硫剤、加硫促進剤・助剤等と混合し、加熱して加硫することにより得ることができる。
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の使用量は、通常は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、通常120〜200℃であり、好ましくは140〜180℃である。
また、加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。
加硫促進剤の使用量は、通常、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。
また、加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。
【0136】
上述した第1及び第2の製造方法により得られた変性共役ジエン系重合体に、シリカ系無機充填剤を分散させ、加硫物としたとき、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスに優れ、かつ優れた操縦安定性を付与できる。
【0137】
(第2の変性共役ジエン系重合体組成物)
第2の変性共役ジエン系重合体組成物は、上述した第1及び第2の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体(以下、単に変性共役ジエン系重合体と記載する場合がある。)を20質量部以上含むゴム成分100質量部に対し、シリカ及び/又はカーボンブラックであるフィラーを5〜200質量部を含む。
当該第2の変性共役ジエン系重合体組成物は、上述した第2の製造方法により得られた変性共役ジエン系重合体、特に重合工程の共役ジエン化合物として1,3−ブタジエンを用いて製造された変性共役ジエン系重合体を用いる場合に好適である。
なお、第2の変性共役ジエン系重合体組成物に含有される前記フィラーが、シリカ及びカーボンブラックであることが好ましく、シリカとカーボンブラックとの質量比率が1対99〜99対1であることがより好ましい。本実施形態の変性共役ジエン系重合体を用いることにより、種々の官能基の組み合わせ効果により、シリカ、カーボンブラックの双方の分散性が向上し、優れた補強効果が得られる。
【0138】
<ゴム成分>
上記ゴム成分としては、変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を、組み合わせて使用できる。当該ゴム状重合体については、上記第1の変性共役ジエン系重合体組成物における<ゴム状重合体>に記載した材料と同様の材料をいずれも用いることができる。
【0139】
<フィラー>
第2の変性共役ジエン系重合体組成物は、フィラーとして、シリカ及び/又はカーボンブラックを、変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含むゴム成分100質量部に対し、5〜200質量部を含む。
フィラーを多く用いると、硬さ、モジュラスが上昇するため、フィラーの含有量を調整することにより、用途に応じた所望の物性が得られる。前記範囲内であれば、フィラーの分散がよく、良好な加工性が得られる。
タイヤ用途においては、フィラーは5〜150質量部とすることが好ましく、履物用途においては、30〜200質量部とすることが好ましい。前記範囲において柔らかいものから硬いものまで広く対応可能である。
なお、可塑剤を用いることによっても、硬さ、モジュラスの調整を行うことができる。
可塑剤としては、上述した伸展油と同様のオイルが使用可能であり、その他、種々の天然物オイル、合成オイル、低分子量重合体等が用いられる。
【0140】
[シリカ]
シリカとしては、沈降性シリカ、ヒュームドシリカ等があり、特に沈降性シリカが好ましく用いられる。
沈降性シリカにおいては、BET法窒素吸着比表面積(N
2SA)で、50〜400m
2/gのシリカが好ましく用いられ、より好ましくは100〜300m
2/gのシリカが用いられる。この範囲とすることにより、補強性と分散性のバランスが良好なものとなる。
用途に応じて、好適な粒径のシリカを用いることができ、例えば、200m
2/g未満の範囲のものと200m
2/g以上の範囲のものを併用してもよい。これにより、転がり抵抗(低ヒステリシスロス性)、破壊強度(破断強度)、操縦安定性等を制御することができる。
上述した第1及び第2の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体は、沈降性シリカの分散性が良好なため、組成物において高い比表面積のシリカを用いてもよく分散させることが可能である。
【0141】
[カーボンブラック]
カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等があり、用途に応じて選択される。
複数種類のカーボンブラックを併用することにより、補強性を高めることができるとともに、タイヤトレッド用途においてドライグリップ性能を向上させることができる。
カーボンブラックは、BET法窒素吸着比表面積(N
2SA)が、好ましくは30〜200m
2/gのものが用いられ、この範囲において補強性と分散性のバランスが良好である。
【0142】
[その他のフィラー]
第2の変性共役ジエン系重合体組成物においては、さらに、他のフィラーを用いることができる。例えば、アルミナ類、炭酸カルシウム、クレー、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、酸化チタン、雲母等が挙げられる。
【0143】
<シランカップリング剤>
第2の変性共役ジエン系重合体組成物においては、シランカップリング剤を、さらに用いてもよい。
シランカップリング剤とは、分子中にシリカ親和部とポリマー親和部の両方を有する化合物であり、シリカ親和部として、代表的にはアルコキシシリル基であり、ポリマー親和部として、ポリスルフィド、メルカプト基、エチレン2重結合等である。
以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が用いられる。
シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対し、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部である。
シランカップリング剤をこの範囲で配合すると、シリカの分散性がより改善され、加工性が良くなり、さらに耐摩耗性が向上する等加硫ゴムの性能が改良される。
【0144】
(第2の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法)
上述した第2の変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法としては、機械的混合による方法、溶液、分散液状態での混合等の、公知の方法を適用できる。好ましくは、混練機により機械的に練る方法であり、ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等を使用した公知の方法が好適である。
【0145】
(加硫物)
第2の変性共役ジエン系重合体組成物は、加硫物として好適に用いられる。
加硫物は、変性共役ジエン系重合体を、シリカ及び/又はカーボンブラックであるフィラー、変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体、シランカップリング剤、各種添加剤、加硫剤、加硫促進剤・助剤等と混合し、加熱して加硫することにより得ることができる。
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の使用量は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量部がより好ましい。
加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、120〜200℃が好ましく、より好ましくは140〜180℃である。
また、加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。
加硫促進剤の使用量は、通常、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であり、0.1〜15質量部が好ましい。
また、加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。
【0146】
〔変性共役ジエン系重合体組成物を架橋処理したゴム組成物〕
上述した第1及び第2の変性共役ジエン系重合体組成物は、架橋剤、各種配合剤等を加えて架橋し、ゴム組成物として所望のゴム製品の製造に用いることができる。
架橋剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物等が用いられる。
前記配合剤としては、加硫促進剤、加硫助剤が挙げられる。
硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド等が用いられ、有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が用いられる。
また加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアジニン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも1つを含有するものを使用することができる。
加硫助剤として、酸化亜鉛、ステアリン酸等を使用することができる。さらに、老化防止剤を用いることができる。
【0147】
〔タイヤ等〕
上述した第1及び第2の変性共役ジエン系重合体組成物を架橋処理したゴム組成物は、タイヤ、防振ゴム、各種工業用品に用いることができる。
特に、タイヤのトレッド用のゴム材料として、キャップトレッド用、アンダートレッド用に好適に用いられる。
【実施例】
【0148】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
なお、試料の分析は下記に示す方法により行った。
【0149】
(1)結合スチレン量
試料100mgをクロロホルムで100mLにメスアップ、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製、分光光度計「UV−2450」)。
【0150】
(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
試料50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm
−1の範囲で測定して所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造を求めた(日本分光社製、フーリエ変換赤外分光光度計「FT−IR230」)。
【0151】
(3)ムーニー粘度
ムーニー粘度計(上島製作所社製、「VR1132」)を用い、JIS K6300(ISO289−1)に準拠し、ムーニー粘度を測定した。測定温度は100℃とした。まず、試料を1分間予熱した後、2rpmでローターを回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML
1+4)とした。
【0152】
(4)ガラス転移温度(Tg)
ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製、示差走査熱量計DSC3200Sを用い、ヘリウム50mL/分の流通下、−100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0153】
(5)分子量
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
カラムは、ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperH−H、カラム:東ソー社製 TSKgel SuperH7000、TSKgel SuperH6000、TSKgel SuperH5000を使用した。
オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製、「HLC8320」)を用いた。
測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0154】
(6)分岐度
重合工程で得られた、活性末端を有する共役ジエン系重合体をアルコール等により失活させたもの(未変性ポリマー)のGPCクロマトグラムにおけるピークトップ分子量をMbとし、前記活性末端の変性工程を経て得られた変性共役ジエン系重合体(変性ポリマー)のGPCクロマトグラムにおけるピークトップ分子量をMcとしたとき、Mc/Mb≧3となる成分の分率を算出し、「3分岐以上の成分分率」とした。
【0155】
(7)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用することにより測定した。
試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。
【0156】
・試料溶液の調製:
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
【0157】
・ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件:
THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperH−H、カラム:東ソー社製 TSKgel SuperH7000、TSKgel SuperH6000、TSKgel SuperH5000を使用した。
カラムオーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8320)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
【0158】
・シリカ系カラムを用いたGPC測定条件:
THFを溶離液として用い、試料200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:DIOL 4.6×12.5mm 5micron、カラム:Zorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60Sを使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分で、東ソー社製 CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021で、RI検出器を用いて測定し、クロマトグラムを得た。
【0159】
・変性率の計算方法:
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(なお、P1+P2=P3+P4=100とする。)
【0160】
(8)スチレン連鎖
Kolthoffの方法に従い、測定用の試料のオスミウム酸分解生成物を得、これを用いて、メタノール中でブロックポリスチレンに相当する不溶ポリスチレンを析出させた。
この不溶ポリスチレン量を定量し、重合体当たりの質量%としてブロックスチレン量を算出した。
また、スチレン単位が1個のスチレン単連鎖の全スチレン中の含有率(質量%)及びスチレン単位が8個以上連なったスチレン長連鎖の全スチレン中の含有率(質量%)を、田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))に従って、スチレン−ブタジエン共重合ゴムをオゾンによって分解した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分析して求めた。
【0161】
〔製造例1(4−(2−ピロリジノエチル)スチレンの合成)〕
製造例1においては、重合工程で用いる、窒素原子含有ビニル化合物として、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン:Py−Stの合成を行った。
先ず、内容積1Lで、十分に窒素置換した耐圧容器に、シクロヘキサン388g、ピロリジン36g、ジビニルベンゼン65gを加え、0℃に調節した水浴中に静置した。
次に、n−ブチルリチウム0.072gを含むシクロヘキサン溶液を加えて撹拌した。
2時間後、系にイソプロパノールを加えて反応を停止させ、抽出・洗浄・精製を経て4−(2−ピロリジノエチル)スチレンを得た。
【0162】
〔実施例1〕
内容積5Lで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン(Bd)265g、スチレン(St)93g、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン(DMVB)1.66g、ノルマルヘキサン(nHex)1633g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.85gを反応器へ入れ、反応器内温を55℃に保持した。
重合開始剤として、n−ブチルリチウム0.33gを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は82℃に達した。
反応温度のピーク到達2分後、反応器に2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを0.40g添加し、75℃で5分間変性反応を実施した。
このとき、n−ブチルリチウムに対するN,N−ジメチルビニルベンジルアミン及び変性剤のモル比は、それぞれ2.00、0.25であった。
【0163】
この重合体溶液に、酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;BHT)0.7gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(変性共役ジエン系重合体;試料A)を得た。
【0164】
試料Aを分析した結果、結合スチレン量は27質量%、結合ブタジエン量は73質量%であった。100℃でのムーニー粘度は52であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準拠して計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は57%であった。また、変性率は94%であった。試料Aの分析結果を表1に示した。
【0165】
〔実施例2〕
N,N−ジメチルビニルベンジルアミンの添加量を3.32gとした以外は上記(試料A)の調製と同様にして、試料Bを得た。
n−ブチルリチウムに対するN,N−ジメチルビニルベンジルアミン及び変性剤のモル比は、それぞれ4.00、0.25であった。
試料Bを分析した結果、結合スチレン量は27質量%、結合ブタジエン量は73質量%であった。100℃でのムーニー粘度は55であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準拠して計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は54%であった。また、変性率は92%であった。試料Bの分析結果を表1に示した。
【0166】
〔実施例3〕
N,N−ジメチルビニルベンジルアミンの添加量を6.64gとした以外は上記試料Aの調製と同様にして、試料Cを得た。
n−ブチルリチウムに対するN,N−ジメチルビニルベンジルアミン及び変性剤のモル比は、それぞれ8.00、0.25であった。
試料Cを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74質量%であった。100℃でのムーニー粘度は54であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準拠して計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は55%であった。また、変性率は90%であった。試料Cの分析結果を表1に示した。
【0167】
〔実施例4〕
N,N−ジメチルビニルベンジルアミンを4−(2−ピロリジノエチル)スチレンとし、その添加量を2.07gとした以外は上記試料Aの調製と同様にして、試料Dを得た。
このとき、n−ブチルリチウムに対する4−(2−ピロリジノエチル)スチレン及び変性剤のモル比は、それぞれ2.00、0.25であった。
試料Dを分析した結果、結合スチレン量は27質量%、結合ブタジエン量は73質量%であった。100℃でのムーニー粘度は49であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準拠して計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は57%であった。また、変性率は92%であった。試料Dの分析結果を表1に示した。
【0168】
〔実施例5〕
内容積10Lで、内部の高さと直径の比(L/D)が4であり、底部に入り口、頂部に出口を有し、撹拌機及び温度調整用のジャケットを有するオートクレーブを2基直列に連結し、1基目を重合反応器として、2基目を変性反応器とした。
【0169】
予め、水分等の不純物を除去した、1,3−ブタジエンを17.8g/分、スチレンを6.2g/分、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン(DMVB)を0.94g/分、n−ヘキサンを125.6g/分の条件で混合した。この混合溶液が1基目の反応器に入る直前で、不純物不活性化処理用のn−ブチルリチウムを0.075mmol/分でスタティックミキサーを用いて混合した後、1基目反応器の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.020g/分の速度で、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.187mmol/分の速度で、1基目反応器の底部へ供給し、反応器出口の内温を90℃となるように重合反応を継続させた。
【0170】
1基目反応器出口より、変性剤添加前の重合体溶液を少量抜き出し、酸化防止剤(BHT)をポリマー100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、100℃のムーニー粘度を測定した結果、49であった。
【0171】
2基目の反応器の温度を85℃に保ち、変性剤として2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを0.060mmol/分の速度で2基目反応器の底部から添加し、変性(カップリング)反応を実施した。2基目反応器の頂部から流出した重合体溶液に酸化防止剤(BHT)をポリマー100gあたり0.2gとなるように0.048g/分(n−ヘキサン溶液)で連続的に添加し、変性反応を終了させ、伸展油としてS−RAEオイル(ジャパンエナジー社製、「JOMOプロセスNC140」)をポリマー100gあたり30.0gとなるように添加した後に溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体(試料E)を得た。
【0172】
試料Eを分析した結果、100℃のムーニー粘度は75であった。また、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74質量%、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)は55モル%、変性率は91%であった。試料Eの分析結果を表2に示す。
【0173】
〔比較例1〕
内容積5Lで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン265g、スチレン93g、4−tert−ブチルスチレン(tBu−St)1.65g、ノルマルヘキサン1633g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.85gを反応器へ入れ、反応器内温を55℃に保持した。
重合開始剤として、n−ブチルリチウム0.33gを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は83℃に達した。
反応温度のピーク到達2分後、反応器に、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを0.40g添加し、75℃で5分間変性反応を実施した。
このとき、n−ブチルリチウムに対する4−tert−ブチルスチレン及び変性剤のモル比は、それぞれ2.00、0.25であった。
上記試料Aの調製と同様にして、酸化防止剤の添加、スチームストリッピングによる脱溶剤を行い、試料Fを得た。
試料Fを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74質量%であった。100℃でのムーニー粘度は54であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準拠して計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は56%であった。また、変性率は78%であった。試料Fの分析結果を表1に示した。
【0174】
〔比較例2〕
内容積5Lで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン265g、スチレン93g、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン0.70g、ノルマルヘキサン1633g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.34gを反応器へ入れ、反応器内温を55℃に保持した。
重合開始剤として、n−ブチルリチウム0.14gを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は72℃に達した。n−ブチルリチウムに対するN,N−ジメチルビニルベンジルアミンのモル比は、2.00であった。
上記試料Aの調製と同様にして、酸化防止剤の添加、スチームストリッピングによる脱溶剤を行い、試料Gを得た。
試料Gを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74質量%であった。100℃でのムーニー粘度は52であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準拠して計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は55%であった。また、変性率は79%であった。試料Gの分析結果を表1に示した。
【0175】
〔比較例3〕
内容積5Lで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン265g、スチレン93g、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン1.06g、ノルマルヘキサン1633g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.54gを反応器へ入れ、反応器内温を55℃に保持した。
重合開始剤として、n−ブチルリチウム0.21gを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は76℃に達した。
反応温度のピーク到達2分後、反応器にN−n−ブチル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタンを0.33g添加し、75℃で5分間変性反応を実施した。このとき、n−ブチルリチウムに対するN,N−ジメチルビニルベンジルアミン及び変性剤のモル比は、それぞれ2.00、0.50であった。
上記試料Aの調製と同様にして、酸化防止剤の添加、スチームストリッピングによる脱溶剤を行い、試料Hを得た。
試料Hを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は56であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準拠して計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は57%であった。また、変性率は93%であった。試料Hの分析結果を表1に示した。
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】
【0178】
前記表1、表2中、*1〜*3について、以下に説明を記載する。
*1 DMVB:N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、
Py−St:4−(2−ピロリジノエチル)スチレン
tBu−St:4−tert−ブチルスチレン
*2 NBL:ノルマルブチルリチウム
*3 AS−1:2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン
AS−2:N−n−ブチル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン
【0179】
〔実施例6〜10〕、〔比較例4〜6〕
表1に示す(試料A〜D、F〜H)、表2に示す(試料E)を原料ゴムとして、以下に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有するゴム組成物を得た。
変性共役ジエン系重合体(試料A〜D、F〜H):100.0質量部、
(試料E):130.0質量部
シリカ(エボニック デグサ社製、「Ultrasil VN3」、窒素吸着比表面積 175m
2/g):75.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製、「シーストKH(N339)」):5.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製、「Si75」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド):6.0質量部
S−RAEオイル(ジャパンエナジー社製、「JOMOプロセスNC140」):30.0質量部(試料A〜D、F〜Hのみ。試料Eは添加なし)
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:2.0質量部
老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:1.8質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
合計:228.0質量部
【0180】
上記した材料を下記の方法により混練してゴム組成物を得た。
温度制御装置を具備する密閉混練機(内容量0.5L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム(A〜H)、充填剤(シリカ、カーボンブラック)、有機シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度は155〜160℃でゴム組成物(配合物)を得た。
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度を155〜160℃に調整した。冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練した。その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。
加硫後、ゴム組成物の粘弾性を測定した。粘弾性測定結果を表3に示した。
【0181】
ゴム組成物の粘弾性は、下記の方法により測定した。
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機「ARES」を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
各々の測定値は比較例4を100として指数化した。
0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットスキッド抵抗性の指標とした。値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が良好であることを示す。
また、50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費特性の指標とした。値が小さいほど省燃費性能が良好であることを示す。
さらに、50℃、周波数10Hz、ひずみ3%での複素弾性率|G*|(|G*|=(G‘
2+G“
2)
1/2)を操縦安定性の指標とした。値が大きいほど操縦安定性が良好であることを示す。G‘、G“はそれぞれ貯蔵弾性率、損失弾性率を表す。
【0182】
【表3】
【0183】
表3に示す通り、重合体鎖中に窒素原子を含む試料A〜Eを用いた実施例6〜10の変性共役ジエン系重合体組成物は、重合体の主鎖中に窒素原子を含まない試料Fを用いた比較例4の組成物と比較して、0℃のtanδが高くウェットスキッド抵抗性に優れているとともに、50℃のtanδが低くヒステリシスロスが小さく、タイヤの低転がり抵抗性が実現されており、更に|G*|が高く、操縦安定性にも優れていることが確認された。
また、前記式(1)により表される化合物である変性剤で変性した試料A〜Eを用いた実施例6〜10の変性共役ジエン系重合体組成物は、重合体鎖の活性末端を変性していない試料Gを用いた比較例5、及び前記式(1)により表される化合物以外の変性剤で変性した試料Hを用いた比較例6の組成物と比較しても、ウェットスキッド抵抗性、低ヒステリシスロス性、操縦安定性に優れていることが確認された。
【0184】
以上より、実施例の変性共役ジエン系重合体及び変性共役ジエン系重合体組成物は、加硫物としたときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスに優れ、かつ操縦安定性にも優れていることが確認された。
【0185】
〔実施例11〕
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン(Bd)770g、スチレン(St)260g、シクロヘキサン(cHex)4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.45gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウム13.0mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は90℃に達した。
反応温度のピーク到達2分後、反応器に2,2−ジメトキシ−1(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを3.25mmol添加し、5分間変性反応を行った。
続いて、ジエチルアミノジメチルシラン52mmol及び塩化白金酸イソプロパノール溶液を加えた。
用いた塩化白金酸はヒドロシラン化合物に対し0.25mmol/molであった。
内温を90℃に保持しながら撹拌を継続し、1時間後にブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、重合体を得た。得られた重合体を重合体Iとする。
重合体Iを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は60であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は52モル%であった。
また、変性率は99%であった。
ガラス転移温度は−30℃であった。
重合体Iの分析結果を、表4に示した。
【0186】
〔実施例12〕
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチレン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.45gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤として、ヘキサメチレンイミン(13.0mmol)とn−ブチルリチウム(13.0mmol)をあらかじめ反応させた、ヘキサメチレンイミノリチウム13.0mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は90℃に達した。
反応温度のピーク到達2分後、反応器に2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを3.25mmol添加し、5分間変性反応を行った。
続いて、ジメチルモノエトキシシラン26mmol及び塩化白金酸イソプロパノール溶液を加えた。用いた塩化白金酸はヒドロシラン化合物に対し0.30mmol/molであった。
内温を90℃に保持しながら撹拌を継続し、1時間後にブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、重合体を得た。得られた重合体を重合体Jとする。
重合体Jを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は65であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は52モル%であった。
また、変性率は99%であった。
ガラス転移温度は−30℃であった。重合体Jの分析結果を表4に示した。
【0187】
〔比較例7〕
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチレン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.00gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウム7.9mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は88℃に達した。反応温度のピーク到達2分後、反応器に3−(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシランを3.96mmol添加し、5分間変性反応を行った。
その後、ブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、重合体を得た。
得られた重合体を重合体Kとする。
重合体Kを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。
100℃でのムーニー粘度は58であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は53モル%であった。
また、変性率は80%であった。
ガラス転移温度は−29℃であった。
重合体Kの分析結果を表4に示した。
【0188】
〔比較例8〕
内容積11リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3−ブタジエン770g、スチレン260g、シクロヘキサン4250g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.45gを反応器へ入れ、反応器内温を38℃に保持した。
重合開始剤としてn−ブチルリチウム13.0mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は90℃に達した。
反応温度のピーク到達2分後、反応器に4塩化珪素を3.25mmol添加し、5分間変性反応を行った。
続いて、ジエチルアミノジメチルシラン26mmol及び塩化白金酸イソプロパノール溶液を加えた。
用いた塩化白金酸はヒドロシラン化合物に対し0.25mmol/molであった。
内温を90℃に保持しながら撹拌を継続し、1時間後にブレンドタンクに移送し、その後、ブレンドタンクに移送し、安定剤としてBHTを重合体に対し1質量%加えて、ラボ用ドラムドライヤーを用いて溶剤を除去し、重合体を得た。
得られた重合体を重合体Lとする。
重合体Lを分析した結果、結合スチレン量は25質量%、結合ブタジエン量は75質量%であった。100℃でのムーニー粘度は62であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造のビニル結合量(1,2−結合量)は52モル%であった。
また、変性率は90%であった。
ガラス転移温度は−30℃であった。
重合体Lの分析結果を表4に示した。
【0189】
【表4】
【0190】
前記表4中、*4〜*6について、以下に説明を記載する。
*4 NBL ノルマルブチルリチウム
HMI-Li ヘキサメチレンイミノリチウム
*5 AS-1 2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン
DMAPTES 3-(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン
SiCL4 四塩化珪素
*6 DEASiH ジエチルアミノジメチルシラン
EOSiH ジメチルモノエトキシシラン
【0191】
〔実施例13、14〕、〔比較例9、10〕
得られた重合体I〜Lを原料ゴムとして、以下に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有するゴム組成物を得た。
配合
変性ブタジエン系重合体(試料I〜L):100.0質量部
シリカ(トーソーシリカ社製、ニプシルAQ):75.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストKH(N339)):5.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製、Si75):6.0質量部
S-RAEオイル(ジャパンエナジー社製、JOMOプロセスNC140):30.0質量部
ワックス(大内新興化学社製、サンノックN):1.5質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:2.0質量部
老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:1.8質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
合計:229.5質量部
上記した材料を下記の方法により混練してゴム組成物を得た。
【0192】
温度制御装置を具備する密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム、充填剤(シリカ、カーボンブラック)、有機シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。
この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練した。その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。加硫後、ゴム組成物の物性を測定した。
物性測定結果を表5に示した。
【0193】
ゴム組成物の物性は、下記の方法により測定した。
(1)配合物ムーニー粘度
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300-1に準じて、130℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定し、比較例9の結果を100として指数化した。値が小さいほど加工性に優れることを示す。
【0194】
(2)300%モジュラス、切断時伸び
JIS K6251の引張試験法に準じて測定し、比較例9の結果を100として指数化した。
【0195】
(3)粘弾性パラメータ
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。各々の測定値は比較例9を100として指数化した。
0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットスキッド抵抗性の指標とした。値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が良好であることを示す。
また、50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費特性の指標とした。値が小さいほど省燃費性能が良好であることを示す。
【0196】
(4)耐摩耗性
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所製)を使用し、JIS K6264−2に準じて、荷重44.1N、1000回転の摩耗量を測定し、比較例9を100として指数化した。指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
【0197】
【表5】
【0198】
表4に示す通り、実施例13及び14の変性共役ジエン系重合体組成物は、比較例9及び10の重合体組成物と比較して、50℃のtanδが低くてヒステリシスロスが少なく、タイヤの低転がり抵抗が実現されているとともに、0℃のtanδも高く、ウェットスキッド性能に優れていることが確認された。
さらに、実用上十分な加工性(配合物ムーニー粘度)、耐摩耗性、300%モジュラス、切断時伸びを有していることが確認された。
【0199】
本出願は、2011年8月26日に日本国特許庁へ出願された、特願2011−184397、2011年10月18日に日本国特許庁へ出願された、特願2011−229038に基づくものであり、その内容は、ここに参照として取り込まれる。