(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の光学イメージングシステムであって、前記スペクトル選択的な光学システムは、スペクトル的に等距離な波長において光を伝播させるように構成される、光学イメージングシステム。
請求項1に記載の光学イメージングシステムであって、前記スペクトル選択的な光学システムは、前記受け取った光の部分的にコード化されたスペクトルを含む出力を生成するように構成される、光学イメージングシステム。
請求項1に記載の光学イメージングシステムであって、前記入力部は、物体を支持するように構成される顕微鏡ステージを備える顕微鏡、および、前記顕微鏡ステージを顕微鏡対物レンズから分離する距離を変化させるように構成される位置決め装置、を含む、光学イメージングシステム。
請求項1に記載の光学イメージングシステムであって、前記スペクトル選択的な光学システムは、前記物体から受け取った光分布のフーリエ変換(FT)に対応する光分布を生成するように構成されるフーリエ変換(FT)装置を含み、前記FTは、前記受け取った光の空間的にコード化されたスペクトル成分を含む、光学イメージングシステム。
請求項1に記載の光学イメージングシステムであって、前記物体内の異なる深さに位置する物体の層を表すイメージを形成するように、前記空間的に異なる光学チャネルは、スペクトル選択的な光学システムから受け取った光分布を、イメージ平面上に再イメージするように構成されるビームスプリッタ(BS)装置を含む、光学イメージングシステム。
請求項7乃至9および10のいずれか一項に記載の光学イメージングシステムであって、前記ビームスプリッタ(BS)装置は、前記FT装置と光学連通し、前記BS装置は、入力光学軸、および、前記複数のイメージ平面にそれぞれ対応する複数の光学チャネルを含み、前記物体内の対応する深さに位置する前記物体の対応する層を表す対応するイメージを形成するように、前記複数の光学チャネルからの前記光学チャネルの各々は、前記光分布を対応するイメージ平面上に再イメージするように構成される、光学イメージングシステム。
請求項11に記載の光学イメージングシステムであって、前記BS装置は、前記BS装置の入力光学軸に対して、らせん状および階段状の関係に配置される調整可能なミラーを含む、光学イメージングシステム。
請求項11に記載の光学イメージングシステムであって、前記複数のイメージからの前記物体の対応する層を表すイメージの一部は、前記物体の前記対応する層の幾何学的にコード化されたスペクトル成分を表す、光学イメージングシステム。
請求項5に記載の光学イメージングシステムであって、前記光検出器は、前記物体内の異なる深さに位置する物体の層を表すイメージを検出するように構成され、前記物体が前記顕微鏡ステージに位置するとき、前記位置決め装置の駆動が、前記光検出器の平面に一致する前記複数の光学チャネルに対応する少なくとも1つのイメージ平面を生じさせる、光学イメージングシステム。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本願発明に使用するための多スペクトルイメージング(MSI)システムの概略図である。
【
図1B】本願発明に使用するための多スペクトルイメージング(MSI)システムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による顕微鏡ベースイメージングシステムを示す概略図である。
【
図3】本発明のイメージングシステムの顕微鏡部分の一実施形態を示す概略図である。
【
図4】本発明のシステムの多焦点光学部分の一実施形態の概略図である。
【
図5A】
図2のシステムの特定の部分を含む実施形態を示す概略図である。
【
図5B】
図2のシステムの特定の部分を含む実施形態を示す概略図である。
【
図5C】
図2のシステムの特定の部分を含む実施形態を示す概略図である。
【
図6】
図2の実施形態でイメージングされる物体平面に関して、視野の深さの特性を示す図である。
【
図7】
図4の多焦点光学部分の光学チャネルを通じて伝播される画像形成光により、検出器において形成されるサブ画像の相互の位置決めを示す概略図である。
【
図8A】従来のイメージングシステムのFOVを画定する重なる境界を備える、不規則形状の関心領域(ROI)の画像であり、また、その多焦点イメージングシステムの一実施形態を示す図である。
【
図8B】従来のイメージングシステムのFOVを画定する重なる境界を備える、不規則形状の関心領域(ROI)の画像であり、また、その多焦点イメージングシステムの一実施形態を示す図である。
【
図9】軸ステップ手段を備える本発明の実施形態により画像化することができる生物学的サンプルの厚さを示す概略図である。
【
図10】軸ステップ手段を備える本発明の実施形態により画像化することができる生物学的サンプルの厚さを示す概略図である。
【
図11A】
図2のシステムのスペクトル選択部分の一実施形態の概略図である。
【
図11B】サニャック干渉計として構成される、
図2のシステムのスペクトル選択部分の特定の実施形態を示す概略図である。
【
図12A】従来の顕微鏡ベースイメージングシステムにより必要とされるデータ取得時間と比較した、本発明の一実施形態により実行されるデータ取得時間の低減を示すグラフ図である。
【
図12B】生物学的組織の画像およびその画像を取得するのに用いられる対応するシステムの概略図であり、本発明の実施形態の使用により達成可能なサンプルフォトブリーチ効果の程度を示し、従来の顕微鏡ベースのイメージングシステムの使用からの結果と比較して低減されることを示す図である。
【
図12C】生物学的組織の画像およびその画像を取得するのに用いられる対応するシステムの概略図であり、本発明の実施形態の使用により達成可能なサンプルフォトブリーチ効果の程度を示し、従来の顕微鏡ベースのイメージングシステムの使用からの結果と比較して低減されることを示す図である。
【
図12D】生物学的組織の画像およびその画像を取得するのに用いられる対応するシステムの概略図であり、本発明の実施形態の使用により達成可能なサンプルフォトブリーチ効果の程度を示し、従来の顕微鏡ベースのイメージングシステムの使用からの結果と比較して低減されることを示す図である。
【
図12E】生物学的組織の画像およびその画像を取得するのに用いられる対応するシステムの概略図であり、本発明の実施形態の使用により達成可能なサンプルフォトブリーチ効果の程度を示し、従来の顕微鏡ベースのイメージングシステムの使用からの結果と比較して低減されることを示す図である。
【
図13A】
図5Cの実施形態により取得されるグリッド参照の4つの多焦点画像を示す図である。
【
図13B】検出器上の
図13Aの画像の取得順序および隣接位置決めを示す図である。
【
図14】
図2の実施形態で取得される、4つの多スペクトル多焦点画像を示す図である。
【
図15】
図2の実施形態の使用により取得される量子ドットマークされた前立腺組織の4つのハイパースペクトル画像を示す図である。
【
図16】
図2の実施形態の使用により取得される量子ドットマークされた前立腺組織の4つの追加のハイパースペクトル画像を示す図である。
【
図17】
図16に画像化されるサンプルにおいて配置される量子ドットマークに対応するスペクトルトレースを示すグラフ図である。
【
図18】
図16の量子ドットラベル付けされるサンプルの3つの異なる平面の、スペクトル混合しない3つの重なる画像を示す複合画像である。
【
図19】本発明の実施形態が促進する自動フォーカスの実施例の光学システムの概念を示すグラフ図である。
【
図20】インデックスミスマッチされた状態でサンプルのスペクトルイメージングのために、従来の顕微鏡ベースのシステムの使用から得られる光学収差を示す図であり、同様の条件下で本発明の実施形態による多焦点イメージングの使用により提供される利点を示す、図である。
【
図21】
図21Aは、インデックスミスマッチされた状態でサンプルのスペクトルイメージングのために、従来の顕微鏡ベースのシステムの使用から得られる光学収差を示す図であり、同様の条件下で本発明の実施形態による多焦点イメージングの使用により提供される利点を示す、図である。
図21Bは、インデックスミスマッチされた状態でサンプルのスペクトルイメージングのために、従来の顕微鏡ベースのシステムの使用から得られる光学収差を示す図であり、同様の条件下で本発明の多焦点イメージングの実施形態の使用により提供される利点を示す、図である。
【
図22A】インデックスミスマッチされた状態でサンプルのスペクトルイメージングのために、従来の顕微鏡ベースのシステムの使用から得られる光学収差を示す図であり、同様の条件下で本発明の多焦点イメージングの実施形態の使用により提供される利点を示す、図である。
【
図22B】インデックスミスマッチされた状態でサンプルのスペクトルイメージングのために、従来の顕微鏡ベースのシステムの使用から得られる光学収差を示す図であり、同様の条件下で本発明の多焦点イメージングの実施形態の使用により提供される利点を示す、図である。
【
図23】本発明の一実施形態による使用のための代替多焦点光学部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書を通じて、「一実施形態」、「ある実施形態」、「関連する実施形態」またはそれら類似の語は、参照される「実施形態」に関して説明されるある具体的な特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書を通じて「一実施形態において」、「ある実施形態において」、およびそれら類似の語は、必ずしも必要的ではないが、同一の実施形態の全てに言及している。それのみでおよび/または図面を参照して開示されるいかなる部分も、本発明の全ての特徴の完全なる説明を提供することを意図するものではないことを理解されたい。
【0014】
さらに、以下の開示で参照する図面は、本発明の特徴を説明しており、同様の参照符号は同一または類似の要素を示している。図面において、図示される構造的要素は、一般に、寸法を示すためのものではなく、強調および理解のために他の要素に対してある要素が拡大して示されることがある。単一の図面が、本発明の全ての特徴の完全な説明を与えることを意図するものではないことを理解されたい。換言すれば、図面は、本発明の特徴のいくつかの全般的な説明であり、本発明の特徴の全ての説明ではない、ということである。所与の図面および参照される図面に関する説明を含む本開示の関連する部分は、その図面および議論を単純にするために、および、その図面で特徴付けられる特定の要素の直接的な議論のために、特定の視点の全ての要素または示され得る全ての特徴を含む。
【0015】
当業者は、本発明を具体的な特徴、要素、部品、構造、詳細、または特徴の1つまたはそれ以上を実施せずに実現可能であることを認識し、また他の方法、部品、材料などを使用して実現可能であることを認識するであろう。それゆえ、本発明のある実施形態の具体的な詳細は、その実施形態を説明する各図面および全ての図面に必ずしも図示する必要はないが、説明中で特に断らない限り、図面におけるこれらの詳細の存在が示唆されている。他の例において、周知の構造、詳細、材料、または動作は、議論される本発明の実施形態の趣旨が不明瞭になることを避けるために、所与の図面に示されないことがあり、また、詳細に説明されないことがある。さらに、説明される本発明の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において適当な方法で任意に組み合わせることができる。
【0016】
さらに、概略的なフローチャートが含まれる場合、論理フローチャートダイアグラムとしての全般的な説明である。論理フローチャートの示される順番およびラベル付けされたステップは、示される方法の一実施形態の表示である。説明される方法の1つ以上のステップまたはそれらの部分に等価な機能、論理、または効果を備える他のステップおよび方法も理解されるであろう。さらに、採用されるフォーマットおよびシンボルは、方法の論理ステップを説明するために提供され、本方法の範囲を限定するためのものではないことを理解されたい。フローチャートダイアグラムで様々なタイプの矢印および線が使用されるが、これらは対応する方法の範囲を限定することを意図するものではないと理解されたい。実際、いくつかの矢印または他のコネクタは、方法の論理フローを示すためだけに使用されることがある。たとえば、ある矢印は、示される方法の符号が付されたステップの不特定の期間の待ち状態または監視期間を示すことがある。一般性を損なうことなく、処理ステップまたは特定の方法の順番は、対応する図示のステップの順番に厳格に縛られるものではない。
【0017】
本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される本発明は、本開示の全体から評価されることが意図されている。
本稿で議論される多スペクトル多焦点画像取得の方法およびシステムは、三次元サンプルの多スペクトルイメージングは、イメージング光学系およびサンプルの相互再位置決めを必要としない方法で複数の焦点面で同時に実行できる、という認識から生じる。具体的には、提案される方法およびシステムは、単一の取得ステップおよび非浸漬条件において、いくつかの折りたたみ部を備えるサンプル内の異なる深さに位置するサンプル層に対応するハイパースペクトルイメージングデータを含むサンプルの画像は、従来の、100倍顕微鏡によるオイル浸漬組織画像、単一焦点面の全視野スペクトルデータ取得に比べて、視野(FOV)を増加させ、被写界深度(DOF)を16倍増加させる。具体的には、開示される発明の実施形態は、イメージング光学系とイメージサンプルとの相互の再位置決めに関する繰り返しの機械的運動をバイパスすることを可能にし、より短いイメージングサイクルを確立し、多数の焦点面における予め決定された多スペクトルイメージングデータを収集するのに必要とされる露光を低減することでサンプルのフォトブリーチ効果を実質的に低減することで、画像化されるサンプルに関連し得る感光性対比染色または他の化学的部分を保護する。さらに、本発明の実施形態は、サンプル内の深さの決定の正確さを増加させることを可能にし、ドライ対物レンズでイメージングを実行するときに優位である。
【0018】
従来の多スペクトルイメージングシステムおよび本発明の実施形態
本発明の実施形態は、多スペクトルイメージング(MSI)システムまたは蛍光顕微鏡システムのようなイメージングシステムとともに採用することができる。一般に、MSIは、ピクセルレベルにおける画像のスペクトル分布へのアクセスを提供することで、コンピュータ制御される顕微鏡ベースのイメージングシステムによる病理学的標本の分析を備える。様々な多スペクトルイメージングシステムが存在し、あらゆるMSIシステムに共通する操作の状況は、多スペクトルイメージを形成する能力である。多スペクトル画像は、特定の波長で取得された画像データ、または、電磁スペクトルの特定のスペクトル幅で取得された画像データを含む画像である。これらの波長は、光学フィルタで、または、たとえば赤外(IR)のような可視光範囲の外側の波長における電磁放射を含む予め決定されるスペクトル成分を選択する能力をもつ他の機器の使用により、単一化される。
【0019】
標本画像の取得を促進する2つの共通するタイプのMSIシステムが
図1A、
図1Bに概略的に示される。
図1Aは、光学イメージングシステム104を含む機器100を示し、光学イメージングシステム104の一部108は、離散光学バンドの予め決定される数Nを画定するように調整可能なスペクトル選択的なシステムを含む。光学システム104は、組織サンプル110を画像化するように構成され、広帯域光源112で光学検出器116上に透過照明される。図示のように、一実施形態である光学イメージングシステム104は、たとえば顕微鏡のような拡大システムを含むことができ、全体として光学システム104の単一光学出力部122に空間的に整合する単一光学軸120を備える。画像が異なる離散スペクトルバンドで取得されることを確保するために、スペクトル選択システム108が調節または調整され(たとえばコンピュータプロセッサ126により)、システム104は、組織110の画像のシーケンスを形成する。装置100は、追加的に、ディスプレイ122を含むことができ、ここに、取得された画像のシーケンスから少なくとも1つの視覚的に認識可能な組織の画像が表示される。スペクトル選択するシステム108は、光学的に分散的な要素を含むことができ、回折格子、薄フィルム干渉フィルタのような光学フィルタの集合、または、ユーザー入力または予めプログラムされたプロセッサ126に応答して、光源112からサンプル110を通って検出器116に伝播される光のスペクトルから特定の幅を選択するように構成される他のシステム、を含むことができる。
【0020】
いくつかのスペクトルバンドで複数のスペクトル離散光学画像を同時に取得するように構成される装置の代替実施形態150が
図1Bに示される。ここで、スペクトル選択システム154は、N離散スペクトルバンドに対応するいくつかの光学出力部を画定する。システム154は、光学システム158から伝播される光出力156を受け取り、この光の出力の少なくとも一部を、Nの空間的に異なる光学パス162−1〜162−Nに沿って向き決めし、同定されるスペクトルバンドにおいて、この同定されたスペクトルバンドに対応する光学パスに沿って、検出システム166上にサンプル110を画像化する。他の代替実施形態(図示せず)は、実施形態100、150の特徴と組み合わせることができることを理解されたい。
【0021】
しかし、特定の一実施形態において、3D組織サンプルのイメージング情報の多スペクトル成分は、スペクトル分解イメージングデータを形成するために、DOFにより特徴付けられる顕微鏡を使用して単一の取得ステップにおいて取得されたイメージングデータを、空間周波数ドメインに変換することで決定される。さらに、多焦点イメージングデータを形成するために、異なる焦点距離および随意に光操作素子を備える多チャネルイメージング光学系を使用して、顕微鏡対物レンズのDOF内でサンプルの異なる深さに対応する、イメージング信号の分離部分またはデカップリング部分を介して、イメージングデータを空間的に変換することで、取得されたデータの3D成分(多焦点成分)は決定される。
【0022】
以下で議論するように、1つのサブシステム(以下「スペクトル装置」と言及され、これはスペクトル分解イメージングデータの処理を促進する)および他のサブシステム(「多焦点光学系」または「多焦点光学部分」と言及され、これは、空間分解イメージングデータの処理を促進する)は、全体として、互いに独立であり、一方の使用は必ずしも他方の使用を制限しない。さらに、これらサブシステムの両者は、同時に使用することができる。
【0023】
両サブシステムを含む実施形態で生物学的サンプルをイメージングすることで得られる多焦点(空間分解)およびスペクトル分解イメージングデータは、3Dサンプルの多スペクトル画像を示す4次元データセットを形成する。イメージング信号のスペクトル分解および多焦点部分は、さらに、CCDのような単一の光学検出器で同時に記録される。結果として、検出器の平面内において、空間的に変換されたイメージングデータ(これは画像化されたサンプルの特定の深さ方向の層の空間的な情報を提供する)を含むイメージ部分の重ね合わせが形成され、イメージ部分は、スペクトル分解データ(これは特定のサンプル層のスペクトル成分を提供する)を含む。サンプルの示される各々の深さを示すスペクトルパラメータおよび空間パラメータは、対応する多焦点およびスペクトル分解イメージ部分から決定され、また、随意選択的に、さらなる処理および必要であればユーザーへの表示のために、有形の非過渡的なコンピュータ可読媒体に記録される。
【0024】
代替的に、任意のサブシステムは、必要であれば構造的および光学的に解放される。多焦点光学系を含むがスペクトル装置が解放されている一実施形態での光学イメージングデータ取得の結果として、光学検出器は、選択される動作波長において複数の空間的に異なる物体平面の画像を記録する。一方、スペクトル装置を含むが、多焦点光学部分が取り除かれる一実施形態での光学イメージングデータの取得の結果として、検出器は、スペクトル装置により画定される多数のスペクトルバンド幅における単一の物体平面の画像を記録する。
【0025】
一般に、顕微鏡、スペクトル装置、および多焦点光学系は、相互に協働し、連続的に位置決めされる光学サブシステムの列を形成し、画像化されるサンプルからのイメージングデータを形成する光を光学検出器にリレーする。一実施形態において、そのような光学リレーは、中間イメージ平面に対応するサンプルの少なくとも1つの中間イメージを形成することを含む。
図2は、本発明の多焦点ハイパースペクトルイメージングシステムのコンセプトの概略図を提供し、物体を第1中間イメージング平面208上にイメージングする顕微鏡システム204と、第1中間平面208から第2中間平面216へ中間イメージをリレーするスペクトル装置212と、第2中間イメージ平面216において形成される中間イメージを、光学検出器224上へ再イメージングする多焦点光学系220と、を示し、これらは随意選択的に、プログラムコードおよび対応する記憶媒体を備えるコンピュータシステム230により制御および調整される。
【0026】
イメージングシステム
図3は、
図2の顕微鏡サブシステムの一実施形態を示し、これは、第1イメージ平面306上にサンプル/物体302をイメージングするために使用される。実施形態300は、照明源310を含み、光314を光学トレイン316を通して中間イメージ平面306上に伝達する。図示のように、第1光学トレイン316は、視野レンズ318、視野開口部322、第1コンデンサ326(第1コンデンサレンズ326Aおよび第1コンデンサ開口部326Bを含むように示される)、対物レンズ330、およびチューブレンズ334を備える。実施形態300は、追加的に、照明器336を含み、これは、第2照明源334から、対物レンズ330を通してサンプル302を励起光340で照明するように構成される。照明器336は、サンプル302への励起光340の照明がサンプル302に蛍光を生じさせるように構成される。このサンプル302からの蛍光放射は、対物レンズ330で集められ、さらに、チューブレンズ334に向かうように向きき決めされる。照明器336は、第2照明源334、第2コンデンサ348、第2視野開口部352、および励起光340のスペクトル成分を選択する(一実施形態においては調整可能に)ように構成される励起フィルタ356を含む。特定の実施形態において、第2視野開口部352は矩形である。
【0027】
ビームスプリッタ360は、光学トライン316および照明器336を通じて伝播する交差点に適切に位置決めされ、これらの光学ビームの間で少なくとも部分的に空間的に重なることを確保する。ビームスプリッタ360とチューブレンズ334との間でイメージ形成ビーム372を横切るように取り外し可能に配置される放射フィルタ364は、光学的に励起されたサンプル302から蛍光光学信号をチューブレンズ334に向けて伝達し、照明光ビーム340をブロックするように構成される。実施形態300の光学システムは、第2視野開口部352のイメージが中間イメージ平面306にリレーされることを確保するように、適切に調整される。一実施形態において、顕微鏡は、ケーラー照明システムを含むことができる。しかし、一般に、当業者に知られた他の照明システムも適切に使用することができる。
【0028】
本発明のシステムの光学トレインに沿って移動し、さらに
図2、3を参照すると、スペクトル装置212の一実施形態は、中間イメージ平面(イメージ平面208またはイメージ平面306など)において形成される物体(
図3の物体302など)の中間イメージを、多焦点光学系220の前に配置される他の中間イメージ平面(平面216など)上にリレーするように構成される。スペクトル装置212の実施形態は、本願の他の箇所で議論される。
【0029】
多焦点光学部分
以下で議論されるように、本発明のシステムの多焦点光学部分の実施形態は、3D物体のイメージの取得に必要とされる時間の低減を促進し、一般に、多焦点光学部分の異なる光学チャネルに対応する複数のイメージ平面において、画像化される物体の複数の物体平面を示すイメージングデータの同時取得を可能にする。
【0030】
1)ピュア多焦点
図2のシステムの多焦点光学部分220の一実施形態400は、平面216からの中間イメージを、光学検出器224の前におけるターゲットイメージ平面上に再イメージングし、これは
図4を参照して以下に説明される。
【0031】
多焦点光学部分400の入力部は、第2中間イメージ平面216から、好ましくは矩形開口部406を通じて光を受け取るコリメートレンズ404を備え、受け取った光をコリメートされたビーム408として操作ミラー要素のグループに向けて伝達する。412A、412B、412C、412D、412E、412F、412G、412Hとして示される操作ミラー要素は、全体として複数の光学チャネル(4つの光学チャネルが図示されている)を画定するように適切に位置決めされ、コリメートされた入力ビーム408を対応する数のイメージ形成ビーム(図示では4つのビーム421、422、423、424)に分割し、各々は、対応する光学チャネルに沿って向き決めされる。少なくともいくつかのイメージ形成ビームは(図示ではビーム422、423、424)、さらに、対応する調整レンズ428、432、436に向けて伝達される。イメージ形成ビーム421、422、423、424からの光は、さらに、最終イメージングレンズ440により受け取られ、これは、光学検出器224の平面において、それぞれイメージ形成ビーム421、422、423、424に対応するサブイメージ(図示せず)を形成する。
【0032】
本発明による多焦点イメージングのアイディアの実施例は、複数の物体平面のイメージングを可能にし、一方、顕微鏡ベースイメージングシステムの検出器、システムの光学系、および試験下のサンプルの、空間的に固定された協働を維持する。一般に、検出器が顕微鏡の光学系およびサンプルに対して空間的に固定される場合、検出器は、特定の物体平面の2D光学イメージを記録し、物体平面は、部分的に、顕微鏡対物レンズの焦点距離により画定される。たとえば、
図5Aの実施形態(
図2の実施形態200と比較し、多焦点光学部分220を備えない)は、イメージデータ取得のときににおい「合焦」している物体の特定の部分のイメージを生成するように構成される。同様に、
図5B(
図2の実施形態200と比較して、スペクトル装置212および多焦点光学部分220の両方を備えない)の実施形態550により画像が形成される。また、本発明の実施形態は、一般的に、検出器の平面の位置が、顕微鏡の光学系に対して固定されるように構成される。それゆえ、多焦点イメージング能力を備える実施形態を増強するために、および
図2、3、4Aを参照して、調整レンズ428、432、436の光学特性は、互いに異なるものとなるように適切に選択される。結果として、本システムの個別のイメージングチャネルは(図示のように、イメージ形成ビーム421、422、423、424に対応するチャネルであり、これに沿って、サンプル302からレンズ330、334および調整レンズを通って検出器224に向かって光が伝達される)、サンプル302の深さ方向において異なる層をイメージングする。特定の一実施形態において、調整レンズ428、432、436の焦点距離は、それぞれイメージングビーム421、422、423、424に対応する光学トレインの有効焦点距離が、対応する異なるイメージ平面上にイメージングされることを確保するように選択される。
【0033】
本発明の多焦点イメージングのアイディアは、さらに、
図5C、6のダイアグラムおよびさらに
図2、3、4Aを参照して説明される。
図6のダイアグラムは、複数の連続的な物体平面(それぞれ画像化されるサンプルの複数の層に対応する)を示し、
図3の顕微鏡300および
図4Aの多焦点光学系400を備える
図2の実施形態200を使用して同時に画像化することができる。たとえば、実施形態400の調整レンズの有効焦点距離がtだけ互いに異なるならば、また、対物レンズ330が被写界深度DOFを備えるならば、そのような調整レンズを備えない従来のイメージングシステムと比べて、サンプルが画像化される有効被写界深度はDOFからDに増強される。集合的に、4個のイメージングチャネルが構成され、サンプルの深さ方向に等距離tだけ離間する、サンプル302の4個の異なる層604、608、612、616をイメージングする。たとえば、t=2ミクロン、DOF=2ミクロンであり、本発明の多焦点実施形態の有効被写界深度はD=8ミクロンである。
【0034】
さらに、
図4を参照すると、多焦点光学部分400は、操作ミラー412A、412B、412C、412D、412E、412F、412G、412H、および対応する調整レンズ428、432、436を含む。操作ミラーおよび調整レンズは、空間的、入力ビーム408の局所的な光学軸44(
図4のz軸に平行である)に対してらせん状および階段状に配置され、
図7に示され、光ビーム421、422、423、424によりそれぞれ形成されるサブイメージ721A、722A、723A、724Aは、検出器224の平面内に隣接するようにされる。
【0035】
随意選択として、操作ミラー要素の少なくともいくつかの空間的な向きは、ミラー412Bに関して矢印410で示されるように、運動学的に調整される。いくつかの実施形態において、操作ミラー412A、412B、412C、412D、412E、412F、412G、412Hのいくつかは、所望の比率により、画像形成ビームの入力ビーム408の強度を分割するために、(破線により示されるように)部分的に透明である。
【0036】
視野の再構成
Nの物体平面の単一検出器への多焦点イメージングが非重なり画像を生成することを保証するために、光学パス内に矩形開口部が配置される。そのような開口部は、
図3の対物レンズ330の全FOVの1/Nの部分に対応する光を透過させるように適切に寸法決めされる。たとえば、
図4の実施形態において、光ビーム421、422、423、424を伝播させる光学トレインに対応するN=4の物体平面を同時にイメージングするように構成され、矩形開口部406は、レンズ330のFOVの約25%をフレームするように寸法決めされる。結果として得られる
図7に示されるサブイメージ721A、722A、723A、724は、単一のカメラチップ224のそれぞれ四分の一を占めるように寸法決めされる。
【0037】
本発明の多焦点イメージングシステムの実施形態により提供される利点は、不規則な形状のROIの画像を効率的に取得するためのシステムの能力である。特に、不規則な形状の物体特徴(特に、使用されるイメージングシステムのFOVよりも大きな特徴)の矩形の検出器上への効率的なイメージングは、通常、過度なイメージング(画像の一部が検出器の外側にくる場合)または少ないイメージング(検出器の一部が背景を記録し、ROIの画像を記録しない場合)を生じさせる。
図8Aに示されるように、たとえば、不規則な境界816を備えるROI810の、本願で説明される多焦点イメージング能力を処理しない従来の顕微鏡ベースのシステムでのイメージングは、画像820を形成し、この一部820Aは、ROI810の外側の背景により占められる。反対に、多焦点イメージングシステムの実施形態による、関心サンプルのイメージングは、FOVにおける連続的な画像830A、830B等の取得を可能にし、イメージングチャネルの数に比例して低減される。
図8Bに示されるように、形成される画像は、集合的にROI810をカバーし、一方、横断することなく不規則な境界820Aに追従する。したがって、本発明の実施形態は、不規則な形状の物体を表す包括的なイメージングデータの取得の効率を促進し、無関係なイメージングデータの取得を最小化する。
【0038】
さらに、本発明の多焦点イメージングシステムの実施形態のFOVは、従来のシステムと比較して低減されるので、蛍光イメージングにおける病理学的標本のフォトブリーチが優位に減少する。実際、蛍光要素の効率的な光励起またはサンプルの意図的なフォトブリーチは、異なる露光に対応する重なるFOVにより画定される小さな制御領域に制限される。この事実は、多焦点スペクトルFRETに有利に使用することができ、複数の取得は、アクセプタフォトブリーチによる共鳴エネルギー移動の効率を測定するために必要とされる。
【0039】
本発明の実施形態によるイメージングは、光学拡大率を変更するためのシステムを再構成することでより大きなFOVで実行することができる。たとえば、100倍の拡大率で、本発明の多焦点イメージングシステムの使用によりイメージングされる物体視野は、1,384平方ミクロンであり、40倍の拡大率で同一のシステムの場合、8,652平方ミクロンをイメージングし、10倍の拡大率の場合、取得される物体の領域は138,445ミクロンに増加する。代替的に、より大きなセンサ(たとえばCCDまたはCMOS)または、より大きなセンサとより大きな対物レンズ(ステレオ顕微鏡/顕微鏡対物レンズなど)の組み合わせは、FOVのサイズを増加させるために使用することができる。
【0040】
さらに、
図2を参照すると、本発明の一実施形態は、多焦点光学部分220の脱係合(またはバイパス)を可能とするように構成され、それにより、平面216からの中間画像を検出器224の平面へ直接的に再イメージングできる。多焦点光学部分220の脱係合またはバイパスを与えるシステムの再構成は、2つのステップを含む。第1ステップにおいて、FOVを制限する開口部(たとえば
図4の開口部406)が、画像形成光学ビーム408のパスから取り除かれる。FOV制限開口部の除去に続いて、
図4のビームスプリッタミラー412B、412D、412Hを保持するアセンブリは、単一の光学パス(
図4における、光学軸444に沿って伝播するビームに対応する)を維持するようにこれらのビームスプリッタを取り除くように調整される。代替実施形態において、ビームスプリッタ光学系の周りで単一光学パスに沿ってビーム408を再向き決めするために、第1ビームスプリッタミラー412Aの前に、補助的な不透明な反射器(たとえば、ミラーまたはプリズム、図示せず)がビーム408の光学パス内に挿入される。
【0041】
そのような有利な再構成の結果として、一実施形態は、最大FOVで単一の物体平面を取得するようにされる
図5Aの従来のイメージングシステムとして、または、最大FOVの1/Nの部分においてNの各物体平面を同時にイメージングするように構成された多焦点イメージングシステムとして、構成される。一実施形態の多焦点光学部分220の脱係合は(
図5Aに概略的に示される構造を生じさせる)、以下で議論されるように、スペクトル装置のスペクトル調整のステップ(たとえば、干渉計のステップレート)よりも、必要とされる露光時間が優位に長くなるとき、スペクトル装置212を使用した多スペクトルイメージデータ取得の間に有利であることを証明する。他の例として、大きなFOVのイメージングが非常に高分解能で必要なとき、または、手近にあるサンプルが薄く単一物体平面のイメージングで有効に再現できるとき、システムの多焦点光学部分220の脱係合が望ましいことがある。
【0042】
2)ハイブリッド多焦点
多焦点画像取得のために構成される本発明の上述の実施形態は、複数の物体平面を同時にイメージングするように構成され、また、結果として、単一のスナップショットで、病理学的サンプル(生物学的組織の3Dサンプルなど)の厚さを通じて非常に効率よく分子プローブデータを集めるように動作可能であり、サンプルの厚さ領域を横断するために従来のシステムにより必要とされる機械的な移動をせずに可能である。分子病理学に適用されるもののような様々なスペクトルイメージング技術(たとえば、TMPRSS:ERG挿入アッセイのような多重チャンネル量子ドット(QD)FISHアッセイを評価するため)は、イメージングのサイクルタイムを短くすることから優位な利点を得られる。説明される多焦点イメージング技術は、従来の明視野ISH(in-situ hybridization)および発色性アッセイに関連し、3D空間でのプローブ位置の識別への需要、および、拡大した被写界深度での画像取得への需要による。説明される多焦点イメージング技術は、カラーカメラ画像取得に適合するようにすることができ、たとえば、RGBカラーイメージングのために設計されるカメラ(たとえばBayer maskまたは3−CCDカメラなど)を使用することで、または、代替的に、伝播する光パスまたは検出パスにおいて赤、緑、青の色フィルタを使用して連続的に露光することで、あるいは、ハイパースペクトルデータから赤、緑、青の波長バンドを選択することでカラーカメラ画像取得に適合するようにすることができる。本発明の実施形態は、軸再位置決め能力を備える従来の自動化された顕微鏡システムよりも、少ない電子機械部品および/または自動化要素を備える。それにもかかわらず、従来のzステップ手段と説明される上述の多焦点取得システムの組み合わせは、所定の時間内に画像化できる物体平面のさらなる数を増加させる可能性を備え、または代替的に画像取得時間を減少させる可能性を備える。
【0043】
したがって、本発明の関連する実施形態は、顕微鏡対物レンズを物体/サンプルに対して、または代替的に、サンプルを固定されたレンズに対して前進させるように動作可能な、マイクロモータのような従来の軸ステップ(zステップ)手段を含む。この場合、画像取得時間の単位においてイメージングされる深さ方向の物体平面の数は、さらに増加する。この「ハイブリッド」多焦点ステップアプローチは、サンプルの厚さの全体をイメージングしながらより高い軸方向の分解能を達成するために、物体層の空間的に織り交ぜられたスタックを取得するのに使用することができる。代替的に、このハイブリッドアプローチは、所定の数の取得イベントにおいてイメージングすることができるサンプルの厚さのダイナミックレンジを増加させるのを促進する。第1応用が
図9に示されており、第2応用が
図10に示されている。
【0044】
図9に示されるように、従来のステップのdzの軸方向インクリメントおよび
図6を参照して説明される多焦点イメージングシステムの組み合わせは、物体の2つの連続的なz位置において、空間的に挟みこまれた物体の深さ方向の平面のセットA、Bを示す多焦点イメージングデータを収集することを可能にする。
図3の対物レンズ330の第1位置においてイメージングされるセットAの物体平面は実線で示され、
図3の対物レンズ330の第2位置においてイメージングされるセットBの物体平面は破線で示される。軸ステップ手段を備える従来の顕微鏡300が、対物レンズの2つのdz離間位置における物体の2つの深さ方向の層に対応するスペクトルイメージングデータを取得する必要がある時間ウィンドウにおいて、同一の顕微鏡および多焦点光学系400を組み合わせる特定の「ハイブリッド」実施形態により、8個の異なる物体層がイメージングされる。この時間ウィンドウの間にハイブリッド多焦点実施形態によりイメージングされる物体の全体の厚さは、実質的にD1となる。一例として、具体的な実施形態は、t=2ミクロン、dz=1ミクロン、D1=9ミクロンである。ハイブリッド多焦点ステップイメージ取得システムは、効率および軸方向分解能の向上を促進し、物体層のスタックは、標本の全体の厚さを通してイメージングすることができる。
【0045】
代替的に、同一の装置の組み合わせは、ステップモータの軸方向のインクリメントをdzからDzまで増加させるとき、全体のイメージングされる物体の深さをD1からD2まで増加させることができる。
図10を参照し、個別の物体平面の第1セット(実線で示される)は、顕微鏡対物レンズの第1位置においてイメージングされる。個別の物体平面の第2セット(破線で示される)は、Dzだけ第1位置から異なる、対物レンズの第2位置においてイメージングされる。結果として、顕微鏡の対物レンズの、物体に対する2つの連続的な位置において、集合的な物体の深さD2がイメージングされる。一例として、特定の一実施形態は、t=2ミクロン、Dz=8ミクロン、D2=16ミクロンである。それゆえ、本発明のイメージングシステムのハイブリッド多焦点ステップの実施形態は、数十ミクロン(非限定的な例として、30−50ミクロン)のオーダーの厚さのサンプルを通してデータ取得時間の単位におけるデータ収集の効率を優位に改善するために用いることができ、また、そうすることで、減少する露光時間によりサンプルの全体としてのフォトブリーチを低減する。説明されるハイブリッド多焦点ステップの実施形態で有利にイメージングすることができるサンプルの実際的な厚さの制限は、イメージングされるサンプルの光学的な鮮明さおよび対物レンズの作動距離により与えられる。そのようなハイブリッドシステムにより提供される利点は、3Dサンプルの関心特徴の位置、およびサンプルの3Dの解剖学的構造の全体を効率的に同定する能力を含む。たとえば、この能力は、より大きな空間的な正確さおよび/または拡張した焦点範囲で3D空間における染色体の遺伝子シーケンスの同定を促進すること、クロマチンの相対的な分布の同定、または、核の3D形状の不規則性の同定における優位性を実証することができる。
【0046】
スペクトル装置
スペクトル分解イメージングデータを取得するため、本発明の実施形態は、様々な戦略を採用することができる。一般的なスペクトル選択装置
図1A、1Bを参照して説明され、これらは、いくつか例をあげれば、干渉フィルタ、色吸収フィルタ、調整可能な複屈折液晶(LCs)と交差偏光素子を備える波長板の組み合わせ、音響光学フィルタ(AOFs)、調整可能な電子光学フィルタ、分散光学系、反射式または透過式に作用する回折格子、プリズム、ニ色性または多色性ミラー、などを含むことができる。
【0047】
特定の実施形態において、
図2のスペクトル装置は、(随意選択として調整可能な)光学エタロンまたは干渉計を含み、(随意選択として調整可能な)ファブリーペロー型、マイケルソン型、サニャック型、フィゾー型、またはGires-Tournois型の干渉計のような干渉計を含み、非常に高いスペクトル分解を確保する。また、本発明の一実施形態のスペクトル選択システムとして使用される干渉計スペクトル装置は、他のスペクトルフィルタ要素に比較して、所定の取得時間の単位でスペクトル装置を通じて伝播される全ての波長の光のより高いスループットを提供する、ということが予期せず、経験的に分かった。
図11Aを参照し、本発明のシステムの多焦点イメージングの実施形態の一部としての干渉スペクトル装置は、スペクトル装置を通じてシステムにより形成される多焦点イメージ上に重ねられる干渉フリンジ内に伝播された光のスペクトル情報のエンコードを生じさせる。それゆえ、検出器平面に伝達された画像形成光に含まれるスペクトル情報を周波数ドメインから空間ドメインに変換することで、干渉計1110はフーリエ変換器として動作するように構成される。最終画像の干渉フリンジの空間分布を解析することで、画像形成光のスペクトル分布が取り戻される。たとえば、
図11Bの実施形態において、スペクトル装置1110は、支持部1114上に配置されるサニャック干渉計を含む。
図11Aに示されるように、支持部1114は軸1118の周りで回転可能であり、スペクトルフィルタ1110が、全体のシステムから脱係合でき、たとえば支持部1114の単純な回転により単純なミラー1122のようなスペクトルに関係ない反射器で代替できることを確保し、また、検出器平面上の最終画像の干渉フリンジが導入されることを確保する。フーリエ変換分光計において採用される本発明の一実施形態において、サニャック型またはマイケルソン型の干渉計のような干渉計をスペクトル装置として使用する他の利点は、低い光レベル(たとえば蛍光分光)における信号データのより効率的な収集を含む。具体的には、直接測定ではなく多重測定を採用するときに、信号対ノイズ比の改善が得られる(フェルゲット利得として知られている)。干渉計スペクトル装置1110が光学パスから脱係合するとき(
図11A、11Bには示されていない)、多スペクトルイメージングは異なるスペクトルフィルタの使用により確保することができる。
【0048】
画像取得時間の低減
従来の、連続イメージ取得システムの取得レートは、いくつかの要因により制限され、要因は、少なくとも(i)(多スペクトルイメージングの場合)所与のスペクトルバンド幅内の露光の数が掛算されるスペクトル選択装置のステップレート、または露光数が掛算される露光時間;(ii)サンプルの画像が取得される対物レンズのz位置の選択された数が掛算されるzスキャンユニットのステップレート、および(iii)異なる物体平面において取得されたスペクトルイメージを処理するのに必要とされる計算時間、を含む。
図3−5、6、7、9、10を参照して議論されたように、本発明の実施形態は、従来の顕微鏡システムの光学被写界深度を高めるのを促進し、特別な機器の制御および/またはシステムの部品が、従来の顕微鏡ベースのイメージングシステムにおいて単一の物体平面で画像を取得できる位置を超えて運動を必要とせずに、複数の物体平面でイメージングできる。結果として、画像取得時間の単位において、従来の顕微鏡画像取得システムによる単一物体平面を示すイメージングデータの量よりも、本発明の多焦点実施形態により、異なる深さの物体平面を示すより多くの量のイメージングデータが取得される。換言すれば一度に単一の物体平面のイメージングができる従来の連続取得システムの場合よりも、本発明の多焦点イメージングシステムの実施形態によるいくつかの物体平面を表すイメージデータの取得の方が、インターバル時間がより短い。この利点は
図12に示され、物体内の異なる深さに位置する4つの物体平面を示すハイパースペクトルデータを収集するためにzステップモータを備える、従来の単一物体平面イメージングシステムに必要とされる総取得時間のグラフ1210を示している。比較のために、グラフ1220が示され、これは、同一のイメージングデータを取得するために4個のイメージングチャネル(
図4参照)および干渉計(
図11参照)を備える、本発明の多焦点システムで必要とされる時間を計算値として示している。データのスペクトル分布は、多焦点システムの調整可能な干渉計の512の干渉ステップ(露光)を画定し、各ステップは約80msかかる。従来のシステムでの同一のデータの取得は、物体平面ごとに100秒の超過時間が必要である。
【0049】
さらに、
図8A、8B、12Aを参照し、本発明の多焦点イメージングシステムの使用による多スペクトル画像取得のフォトブリーチ低減の効果が、
図12B、12Cに示されている。
図12Bは、本発明の多焦点能力を備えない従来のシステムのFOV内で、約160秒の露光で取得したDAPI染色前立腺組織サンプルの画像を示している。この従来の構成は
図12Dに概略的に示されている。
図12Bに対応するサンプルのフォトブリーチの程度は、約75%であると見積もられる。反対に、
図12Cは、対応する4分した検出器上の連続的な各ステップにおける上述したFOVの約1/4をイメージングすることで、4つの連続ステップにおいて、本発明の多焦点実施形態で取得された同一のサンプルの画像である。この例は、多焦点光学部分を通しイメージングされるより小さな領域だけに照明領域を制限するために、視野照明パス内の開口部の使用を示す。このイメージング構成に関連する概略は
図12Eに示されている。
図12Cの1/4FOVの各々のサブイメージ1、2、3、4は、40秒の露光だけを必要とし、それゆえ、サンプルの全体のフォトブリーチの程度を約18.75%減少させる。視野平面に対する共役(conjugate)である平面におけるより小さい開口の使用は、照明の被写界深度を拡張するために使用することができ、励起のための被写界深度が増加する。入射角度を減少させることで(たとえば対応する開口数を減少させることにより)、単一正面フラックスのより大きな深さがビーム軸に沿って実現される。この考慮は、多焦点装置によりイメージングされる深さを通して蛍光体の十分な励起を確保することを助ける。
【0050】
ハイパースペクトル多焦点イメージデータ取得および処理の具体例
生物学的サンプルの多スペクトルイメージングは、
図2の実施形態に類似の実施形態で実行され、これは、
図3の顕微鏡システムを含み、スペクトル装置の実施形態は、
図11A、11Bに示されるもののようなサニャック干渉計を含み、また、多焦点光学部分は、4つの光学イメージングチャネルを備え、
図4の実施形態のように構成された。それゆえ、以下の議論は、
図2、3、4、7を参照してなされる。4つの物体平面がそれぞれ4分された単一の検出器224上にそれぞれイメージングされることを可能にするために、視野開口部406は矩形に形状付けられ、実施形態の光学系により提供されるFOVの中心25%を通過させるように寸法決めされた。表1に要約される操作ミラー412A、412B、412C、412D、412E、412F、412G、412Hの光学特性は、多焦点光学部分の4つの光学イメージングチャネルを通して形成されるサブイメージが同等の強度レベルを備えるように選択された。
【0052】
調整レンズ428、432、436の焦点距離f
iは、
1/F
i=1/f
1+1/f
i−[d/(f
1f
i)]
により適切に選択された。ここでdは、有効焦点距離f
1を備えるレンズ440と、有効焦点距離f
iを備える所与のi番目のフォーカス調整レンズとの間の幾何学的距離であり、F
iはi番目の光学チャネルに対応する有効焦点距離である。実施形態の光学イメージングチャネルの間にお有効焦点距離の相違は、対物レンズ330のDOFのインクリメントに対応するように計算され、対物レンズの拡大率が掛算される。たとえば、物体空間のDOFが2ミクロンの場合、光学チャネルの拡大率は40倍であり、CCDにおけるイメージ平面のターゲットシフトは80ミクロンである。それゆえ、実際問題として、いくつかの調整レンズ428、432、436は、負の光学パワーを備えるように適切に選択され、また、いくつかは正のパワーを持つように適切に選択された。結果として、検出器224は、4分割に対応してサブイメージ721A、722A、723A、724Aを記録し、サブイメージの1つが選択された物体平面を示すようにされ、残りの3つのサブイメージが選択された物体平面の下2ミクロンに位置する物体平面、選択された物体平面の上2ミクロンおよび4ミクロンの物体平面を表す。集合的に、記録されたサブイメージは、物体空間の約8ミクロンの深さの範囲に広がる。一般的な抗反射(AR)コートレンズが、40倍、NA=0.75に適切であることが分かった(対物レンズ330、2ミクロンの被写界深度)。
【0053】
図13Aは、本発明のイメージングシステムの実施形態の4つの多焦点イメージングチャネルにより同時に形成される、4つの物体平面の4つの多焦点サブイメージ(A)、(B)、(C)、(D)を示し、20倍の拡大率で、(スペクトル装置として使用される)干渉計が脱係合された。画像化された物体は、薄い金属フォイルのグリッドパターンであり、透過光顕微鏡のための透明基板上に取り付けられた。各画像に対応する被写界深度は2ミクロンである。
図6のダイアグラムを参照し、集合的に、
図13Aの4つの画像は、8ミクロンの深さの物体空間を示していることが理解される。この画像取得において、ベストフォーカスの平面は、画像(A)に対応するように選択された。
【0054】
本発明の多焦点スペクトルイメージング干渉計の完全な実施形態200(スペクトル装置220としてのサニャック干渉計1110を含む)、および上述した多焦点光学部分400を通じた、同一の薄い金属フォイルのグリッド物体のイメージングの結果として、検出器224は
図14のサブイメージ(E)、(F)、(G)、(H)を記録した。画像(G)は、物体空間内における、実質的に合焦する平面に対応する。画像(F)、(H)は、画像(G)に対して、(画像(G)の物体平面からぞれぞれ上および下に)2ミクロン、−2ミクロンだけシフトした物体平面を表す。サニャック干渉計の使用による、イメージングデータのスペクトル成分の空間ドメインへの変換の結果として、上述したように、
図14のサブイメージ(E)、(F)、(G)、(H)の各々は、光学パスに干渉計が存在していることを示す垂直干渉フリンジ1410を含む。適切にプログラムされたコンピュータプロセッサでの干渉フリンジ1410の幾何学的な解析は、
図14の画像のスペクトル成分を抽出することを可能にする。
図14のもののような画像は、選択された方向に沿って空間的に離間し、選択された波長でイメージングされる、4つの異なる2D物体(すなわち4つの物体平面)についての情報を含むデータセットを含むことが理解される。
【0055】
本発明の一実施形態は、単一画像取得サイクルにおいて、
図15に示されるようなQ−dots(QDs)でラベル付けされる3D前立腺組織の深さ方向の一連の平面を表すハイパースペクトルイメージングデータを取得するために用いられた。組織のラベリングまたはターゲット付けを実行するために、組織の選択された部分に選択的に結合させるようにQDsはしばしば組織に特化した結合サイトで機能付けされる。たとえば、QDsは、蛍光顕微鏡を用いた生物学的使用成分の検出のために、無機蛍光体として使用することができる。ここで、QDsは組織分子の成分として使用され、対応するタイプの組織成分の同定するようにこの分子が蛍光を発するようにされる。組織サンプルのQDの蛍光を検出することで、組織の生物学的構造について、および/または組織の特定の成分の位置について決定することができる。
【0056】
図16は、上述のように取得された3D前立腺組織サンプルの深さ方向に異なる平面の4つのサブイメージ(M)、(N)、(O)、(P)は、異なる物体は、たとえば核酸1620に関連付けられるQDsのように特徴つけられ、物体内の異なる深さにおいて識別される。各画像の2ミクロンの被写界深度は、焦点深度の重なりなく、40倍、NA=0.75(対物レンズ330)のイメージング条件に対応する。
【0057】
異なる蛍光体(異なる種類のQDsなど)が共に局在化する場合、蛍光マーカーでラベル付けされた物体の異なる平面を表すサブイメージは(
図16のものなど)、共に局在化された蛍光体の存在および寄与を解明するためにさらに使用することができる。たとえば、
図17は、
図16に対応するFOVの共に局在化するプローブを示す3×3ピクセル領域におけるマーカーから受け取った光のスペクトルの平均から導かれる合計(未処理)のスペクトルトレースを示している。スペクトルカーブ1710の特徴は、QD565、QD655、およびDAPI対比染色に対応する蛍光のスペクトルピークに一致し、それにより、最終画像のインターフェログラム部分(たとえば
図14の画像の干渉フリンジ1410など)から適切にデコードされたスペクトル情報を示す。ここで、565nm付近の光を発するQD種は、QD565のようにラベル付けされ、655nm付近の光を発するQD種は、QD655のようにラベル付けられる。
【0058】
本発明のシステムの実施形態で取得されるイメージングデータを処理するための、本発明のコンピュータプログラムの一実施形態は、さらに、(i)検出器の同一のピクセル上にイメージングされる異なるマーカー(たとえばQD565およびQD655など)に対応する、データのスペクトル脱混合(または分解)、(ii)各マーカーの存在の、および相対的な画像へのそれらの寄与の量の解明、を促進するために使用することができる。スペクトルの脱混合は、当業界で公知の線形方法を使用して実行することができ、または、特定の実施形態において、2011年5月6日に出願された、「Method and System of Spectral Unmixing of Tissue Images」との表題の米国仮出願61/483202号明細書に説明されている非線形方法を使用して行うことができる。かかる特許出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の各光学イメージングチャネルで取得されるスペクトル脱混合された画像データは、その後、サンプルの異なる深さを表す対応するサブイメージを形成するために使用される。これらのサブイメージは、独立に解析することができ、または、代替的または追加的に、これらのサブイメージは必要であれば適切に処理して重ね、単一の画像平面上に投影される、同定された物体平面における生物学的物体サンプルの3Dイメージを表す、最終的な2Dイメージを形成することができる。
図18のサンプルは、
図16の物体の3つの異なる物体平面(それぞれ3つの異なる深さに対応する)を示す3つのスペクトル脱混合サブイメージの「重ね合わせ」から得られる、そのような最終画像を示している。
図16の画像を得るために、本発明の実施形態の干渉計で予め画定される波長において取得される、物体の4つの平面(深さ)の内の3つを示すイメージデータのセットが、当業界で知られたようにスペクトル脱混合されて重ね合わせられる。
【0059】
追加の特徴
本発明の実施形態は、追加の有利な特徴、特性、および能力を提供し、たとえば、A)対物レンズの焦点面に対してイメージングされる多焦点体積の軸方向の位置決めの自動化の可能性、B)屈折率不整合条件下(index-mismatching conditions)での画像取得中の、光学的な前方ショートニング(optical fore-shortening)の緩和、などである。
【0060】
オートフォーカス能力
一例において、本発明のイメージングシステムのハイブリッド多焦点実施形態(すなわち、
図4の部分400のような多焦点光学部分を含む実施形態)、および電気機械的zステップ手段の使用は、イメージングデータの取得中にオートフォーカスを実現するために使用することができる(たとえば
図2に示されるシステムの一部としてスペクトル装置を使用、または、
図5Cに示されるようにスペクトル装置の脱係合する)。波長分解オートフォーカス能力を提供するために、自動化フィルタタレットまたはエミッションフィルタホイールとの組み合わせを用いることができる。さらに
図5C、13A、13Bを参照し、たとえば、
図5Cの実施形態を使用して取得されるグリッド標準素子の異なる物体平面を表す、サブイメージ(A)−(D)に対応するイメージングデータセットは、1つのサブイメージから他方の鮮明度の程度の変化を表すメトリックまたはメトリック値を算出するためにペアにおいて比較される。一実施形態において、データセットの比較は、イメージングデータのピクセル毎の差の決定、および異なるイメージデータセットに対応する異なるサブイメージの形成を含む。不鮮明の程度を画定するメトリックは、そのような異なるサブイメージのピクセルにわたって平均化した強度値を含む。たとえば、表2は、サブイメージの差、(BA)=(B)−(A)、(CB)=(C)−(B)、(DC)=(D)−(C)を表すデータを要約し、それぞれ対応するイメージングデータセットを引き算することで得られる。
【0062】
対応する対物レンズの焦点面に位置する、イメージングされた物体平面に導出されたメトリックの値は、決定されるメトリック値の全ての中で最高値である。一実施形態において、メトリックは、「差分」サブイメージの全てのピクセルにわたる強度の合計として定義することができる。代替的な一実施形態において、メトリックは、ピクセル強度の平均値として定義される。それゆえ、導出されるメトリック値の変化に基づいて、本発明のシステムのプロセッサは、対物レンズの現在位置から、最小の不鮮明度(または脱フォーカス)でイメージングされた物体平面に到達するために必要とされる、サンプルに対する顕微鏡対物レンズの運動方向を決定することができる。
図13A、13B、および表2に対応する「ベストフォーカス」の方向の自動化された決定の一例は、
図19に示されている。この例において、適切にフォーカスされた物体平面の画像を取得するときのポイントに顕微鏡対物レンズを配置するために、適切にプログラムされたプロセッサにより、リアルタイムで決定されるメトリック値の増加により特徴付けられる方向に対物レンズを移動させるべきである。
【0063】
関連する一実施形態において、連続するイメージングされる物体平面を表すサブイメージの変化を特徴付ける代替手段を採用することができ、たとえば、いくつか例示すれば(i)隣接ピクセルにより定義される画像部分のコントラストの決定、(ii)スペクトル解析、(iii)ヒストグラム解析、(iv)分散解析、(v)Brenner法、(vi)Range法、およびMendelsohn/Mayall法などを採用することができる。
【0064】
本発明のイメージングシステムのオートフォーカスの方法の上述した実施形態は、顕微鏡対物レンズとイメージングされるサンプルとを分離する距離を自動的または手動で変化させるように構成されるモータ駆動ステージを備える(たとえば、サンプルの支持を提供する素子を対物レンズに対して自動的に再位置決めするために)、暗視野顕微鏡システムまたは明視野顕微鏡システムとともに使用することができる。具体的には、そのような動作距離の変化は、選択されたサブイメージが形成されるイメージ平面を光検出器の平面にともに配置するために実現することができる。サンプルの厚さに変化がある場合またはサンプルが傾いている場合、オートフォーカス能力は、複数の物体平面からフォーカスコントラストの高いサンプル領域を選択するために用いることができ、また、対応するイメージデータを処理することで、これらの領域のイメージを、高いコントラストを備える1つの連続イメージ内に選択的に合成することができる。オートフォーカス能力は、高コントラストでイメージングされた物体平面から、選択されたスペクトル特性(たとえば可視光スペクトルの緑の部分において蛍光するQDs)を備える、高コントラストターゲットを選択するために使用することができる。追加的に、この能力は、画定されるスペクトル領域における高いコントラストを備える物体平面を併合することで、たとえば色収差などの様々なイメージングの欠点を補正するために使用することができる。そのような合成の一例は、スペクトルの赤部分において高いコントラスを備えるイメージ領域を、スペクトルの緑の領域に高いコントラストを備えるイメージ領域に合成することを含む。
【0065】
屈折率整合したイメージング 対 屈折率が不整合したイメージング
本発明のシステムおよび方法の実施形態は、物体を特徴付ける有効屈折率が、所与の顕微鏡対物レンズが最適化されたイメージングのための媒体の屈折率と異なるとき(たとえばより大きい)、物体平面(物体内の異なる深さに位置する)を表すイメージングデータの正確な取得のために有利に使用することができる。空気中で使用するように設計される顕微鏡対物レンズは、z軸に沿って単一の位置(たとえば、サンプル/カバースリップ境界に対応する位置)でイメージングするために使用されることが意図され、また、そのような対物レンズが空気よりも大きな屈折率を備えるサンプルのイメージングに使用される場合、イメージングされる物体平面の軸方向の位置を表す測定は不正確になる(また、オイル浸漬対物レンズの使用が好まれる)、ということが認識される。このエラーは、入射媒体(空気)とイメージングされる媒体(サンプル)との間の屈折率の不整合により生じ、サンプル内のそのようなROIの位置が増加するときに、イメージングされるROIの「ストレッチ」に現れる。
【0066】
収差はスネルの法則の適用により容易に理解でき、
図20、21A、21Bに概略的に示される。
図20は、カバースリップの下に配置され、オイル浸漬対物レンズでイメージングされた、ターゲット蛍光球形ビーズの3つの画像を示し、対物レンズは以下の媒体内に取り付けられた。すなわち、屈折率整合オイル(1.51の屈折率、イメージA)、屈折率不整合グリセロール(屈折率約1.42、イメージB)、屈折率不整合水(屈折率約1.3、イメージC)である。軸方向(z軸)に沿って画像に現れている収差(ビーズの画像における期待される円形からの形状のずれ)は、屈折率の不整合が増加するにしたがって増加する。同様に、
図21A、221Bを参照すると、空気内でイメージングするように設計された対物レンズが組織学的標本(空気の屈折率より大きな屈折率を備える)をイメージングするのに用いられる場合、サンプルのイメージングされる特徴は、イメージングされる物体平面の深さが増加すると、漸進的に、光学的に、前方に短くなる(画像が圧縮される)。
図21、21Bは、それぞれ屈折率整合条件および屈折率不整合条件での、90度ガラス(屈折率〜1.51)の反射プリズム素子(この境界は線2110で示される)のイメージングの側面を概略的に示している。屈折率が整合した条件でのイメージングは、サンプルの上のカバースリップ上でオイル(n〜1.51)内に浸漬したオイル浸漬レンズ(2112、40倍、NA=1.2)により実行された。一方、屈折率不整合条件でのイメージングは、空気内でのイメージングのために設計されたレンズ2114(20倍、NA=0.7)により実行された。従来、顕微鏡対物レンズのzステップ再位置決めを使用してイメージングされる異なる物体平面を示すために取得されるイメージングデータの再構築は、連続的な画像の物体平面の間の分離は、対物レンズの連続的な位置の間の分離と同一であると仮定されている。換言すれば、従来のデータ処理は、イメージングに関連する幾何学的パスは光学的パスと同一であるとの仮定の下で実行されている。しかし、この仮定は、屈折率が整合している条件(
図21A)に限り実際的である。
図21Bに示される場合のように、光学パスが屈折率の不整合により変更される場合、たとえば、入射媒体(空気)の屈折率およびイメージングされる媒体(ガラスプリズム)の屈折率が実質的に異なる場合、zステップは、再構成されるイメージデータにおける寸法のひずみを生じさせる。屈折率不整合イメージング条件において生じる収差は、
図21Bに示され、(i)
図21Bにおいて破線で示されるプリズム素子自身の境界2110から、プリズム素子のイメージの境界を表す線2120のずれにより、また、(ii)プリズム自身の頂点角度(90度)と比較した、プリズムのイメージの頂点角度(〜119度)の変化により、示される。
図21Bに示されるように、イメージングされるプリズム(境界2120により示される)は、スキャン方向(z軸)に圧縮されたように見える。測定誤差の値は、イメージングの深さおよびサンプルの屈折率の両方に依存し、これは、イメージング手順の校正を優位に複雑にする。
図21Bに示される測定誤差(カバースリップ/サンプルの境界から測定される距離B)は、イメージングの深さの約38%であると決定された。
【0067】
図22Aは、3Dサンプルを屈折率不整合条件でイメージングすることから生じる収差(再構成されるイメージの光学的な前方短縮)の追加の説明を提供する。より高い被写界深度、より大きなFOV、およびスライド/サンプルハンドリングのし易さにより、空気浸漬イメージングは、病理学標本のスペクトルイメージングに好まれることが認識されている。多焦点光学部分を含む本発明の実施形態の使用は上述の測定エラーを軽減し、これは、顕微鏡対物レンズの(z軸に沿う)軸方向位置の変化を示すデータが、物体空間よりもイメージ空間内に引き出すからである。本発明の実施形態による多焦点イメージングを使用するとき、イメージ平面とこれらの平面に対応するイメージデータとの間の分離は、同一光学パスの収差の影響を受ける。結果として、イメージ再構成手順の間、
図22Bに概略的に示されるように、これらの共通の収差はオフセットする。
【0068】
本発明の多焦点イメージングシステムおよび方法の上述の収差補正能力は、組織内の病理学的条件の決定に有効となりえ、これはそのような能力が3D空間における相対的な距離のより正確な距離の測定を促進するからである。さらに、本システムの多焦点光学部分は、顕微鏡対物レンズの電子機械的位置決めの誤差の影響を受けないので、物体平面の相対的な位置は、たとえばスペクトルFISHイメージ取得において現在採用されている従来のイメージングシステムと比較して、屈折率不整合条件の下で本質的により正確である。
【0069】
本発明の上述の実施形態の実際的な応用の一例は、ホルマリン固定され、パラフィン埋め込み組織に対して、拡大した被写界深度による病理学的決定の能力を含む。複数の焦点面を同時に取得するための実施形態に特有の能力により、明視野ISH、または、単一または二重チャネル蛍光または多モーダル明視野表現の可視化(「疑似明視野」)における、拡大した被写界深度のイメージをリアルタイムで生成でき、拡大被写界深度でのナビゲーションおよび画像記録に便宜を与える。画像の迅速なぼけ除去または拡大被写界深度処理は、焦点のぼけを生じさせずに、組織の知覚および信号検出の能力を高めるように実装することができる。これは、従来の接眼レンズを通した直接的な視認またはストリーミングCCDカメラによるリアルタイム表示に対して、より高品質の実験結果を与える。本発明のシステムを使用する多スペクトルイメージングを実行する方法の実施形態は、
図12A、12B、12Cを参照して議論されたように、(従来の、複数回のステップ方向の異なる焦点面におけるスペクトル取得の繰り返しに関連する)時間消費を節約する。そのような改良は、特に、スペクトル取得ステップ速度またはカメラの読み出し速度に対応する時間期間よりも、多焦点取得のための露光時間が短い条件に関連する。
【0070】
具体的な実施形態の例を参照しながら本発明が説明されたが、本稿で説明された本発明の趣旨から逸脱することなく、説明された実施形態の修正および変形が当業者に可能であることが理解されるであろう。たとえば、本発明の方法のいくつかの側面がフローチャートを参照して説明されたが、フローチャートの各ブロックまたはブロックの組み合わせの全てまたは一部の機能、動作、決定などは、組み合わせることができ、または、分離して動作させるように分割でき、あるいは異なる順序で行うことができることを当業者は容易に理解するであろう。
【0071】
さらに、実施形態が様々な説明的なデータ構造に関して説明されたが、当業者は、本システムを様々なデータ構造を使用して実施化できることを理解するであろう。本発明の実施形態のために選択された特定の値が示されているが、本発明の範囲内において、あらゆるパラメータの値は、異なる応用に適合するように幅広く変更することができることを理解されたい。たとえば、
図2の実施形態200の多焦点光学部分220の代替実施形態は、ピラミッド形状のミラーおよび/またはプリズム素子を含むことができ、複数の光学イメージ形成チャネルを実現する光学ビームスプリッタは、偏光ベースのおよび/または波長ベースのビーム分割およびスプリッタを含むことができる。複数の検出器は、FOVを増加させるため、読み出しバンド幅を増加させるため、または、高速イメージングデータ取得を促進する複合ビームスプリッタスキームを可能にするために使用することができる(
図2の要素224として)。本発明によるイメージングシステムの多焦点光学系および光学検出器部分の特定の代替実施形態2300が
図23に示される。
図2の実施形態と比較して、実施形態2300は、たとえば、装置220のようなスペクトル装置からの光2304を受け取るように構成される。光2304のビームは、プリズム2308を横切り、また、さらにプリズム2308のファセット2312において分割され、このファセットは随意選択として薄フィルムコーティング2316でコーティングされ、反射ビーム2320とファセット2312を通って伝播するビーム2324との予め決定された強度の比を促進する。反射されるビーム2320はさらに、プリズム2308の他のファセット上で全反射し、検出器2332に向かってサイドファセット2328を通って出る。入力ビーム2304の伝播する部分2324は、界面2344に沿って第3プリズム2340に隣接する他のプリズム2336に入り、プリズム2336の界面2344(随意選択で薄フィルムコーティング2348でコートされる)での部分反射および界面2352でのTIRの後検出器2356に向けて出る。ビームの残りの部分2360はプリズム2340を通り、さらに検出器2364により記録される。それぞれ検出器2332、2356、2364に関連付けられる調整レンズ2368、2372、2376は、
図2の実施形態の調整レンズ428、432、436と類似の機能を実行するように構成される。一実施形態において、ビームスプリッタ界面2312/2352および対応するコーティング2316は、ビーム2320とビーム2324の強度の比が約33/67になるように構成され、また、中間スプリッタ界面2344および対応するコーティング2348は、界面2344におけるビーム分割が約50/50になるように適切に構成される。
【0072】
さらに、開示される側面、またはこれらの側面の一部は、上述されていないように組み合わせることができる。したがって、本発明は、開示される実施形態に限定されるものとはみなされるべきではない。