(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5898416
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/00 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
A01K85/00 G
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-120630(P2011-120630)
(22)【出願日】2011年5月30日
(65)【公開番号】特開2012-244963(P2012-244963A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(72)【発明者】
【氏名】中島 優弥
【審査官】
木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−250387(JP,A)
【文献】
実開平08−000093(JP,U)
【文献】
特開平10−210883(JP,A)
【文献】
特開2004−222522(JP,A)
【文献】
特開2011−030459(JP,A)
【文献】
特開2003−061516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00−85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空であって、前部のヘッド及び後部のテールを有するボディと、
このボディの内部に、前後方向に移動可能に収容された第一重錘及び第二重錘と、
上記ボディに内蔵された、上記第一重錘の前後方向移動を案内する第一案内通路と、
上記ボディに内蔵された、上記第二重錘の前後方向移動を案内する第二案内通路と、
上記ボディに内蔵された、上記第一重錘を前方に付勢する弾性部材とを備えており、
上記第二重錘が、第一重錘の位置又はそれより前方に位置しており、
上記第二案内通路が、前部分と後部分とを有しており、上記前部分は、第二重錘の前端位置と中間位置との間の移動を案内し、上記後部分は、第二重錘の中間位置と後端位置との間の移動を案内するように構成されており、
上記第一案内通路の前端が、第二案内通路の上記前部分より後方に位置しており、
上記第一案内通路が、前後方向に延びるガイドワイヤから構成されており、
上記第二案内通路の前部分が、ボディの内面に形成された上部補強リブ、中部補強リブ及び隆起部から構成され、第二案内通路の後部分が、上記上部補強リブ、上記中部補強リブ及び上記ガイドワイヤから構成されており、
上記第二重錘は、上記第二案内通路の後部分においてのみ、上記第一重錘に当接することができ、当接したときには、第一重錘が後方へ移動したときにのみ後方へ移動することができ、第一重錘を越えて後方へ移動することはできないように構成されており、
キャスト時には、上記第一重錘が弾性部材の付勢力に抗して後方に移動しうるように構成されているルアー。
【請求項2】
上記弾性部材が、キャスト時に後方に移動する上記第一重錘によって圧縮されるように、第一重錘の後方に前後方向に延設されたコイルバネである請求項1に記載のルアー。
【請求項3】
上記弾性部材が、キャスト時に後方に移動する上記第一重錘によって伸長されるように、第一重錘の前方に前後方向に延設され且つ第一重錘に接続されたコイルバネ又はゴム紐である請求項1に記載のルアー。
【請求項4】
第三重錘を備えており、この第三重錘が、上記第一重錘の移動範囲の後方に配置されている請求項2又は3に記載のルアー。
【請求項5】
上記第一重錘が、ボディの前後方向の中央より前方の位置とテールの前部との間を移動可能にされており、
上記第二重錘が、ヘッドの後部と後端位置にある第一重錘の前端との間を移動可能にされている請求項1から4のいずれかに記載のルアー。
【請求項6】
上記第一重錘が、ボディの前後方向の中央より前方の位置とテールの前部との間を移動可能にされており、
上記第二重錘が、ヘッドの後部と後端位置にある第一重錘の前端との間を移動可能にされており、
上記第三重錘が、後端位置にある第一重錘の後方において、移動不能に収容されている請求項4に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りに用いられるルアーに関する。詳細には、本発明は、重心移動式のルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
オオクチバス、ブリ及びその幼魚、スズキ等の大型の魚は、ベイトとして小魚を補食する。これら大型の魚はフィッシュイータと称されている。フィッシュイータを捕獲する手段としてルアーフィッシングが普及している。ルアーフィッシングではルアーが用いられる。ルアーにはラインが連結される。キャストによりルアーは空中を飛行し、やがて着水する。ラインが巻かれることによってルアーは水中を泳ぐ。このルアーをベイトと勘違いしたフィッシュイータは、ルアーに食いつく。ルアーに取り付けられたフックがフィッシュイータに刺さり、フィッシュイータが釣り上げられる。
【0003】
ルアーとしては、フィッシュイータの勘違いを誘うための効果的な水中姿勢及びアクションを達成しうるものが好ましい。一方、釣り人はルアーを遠方へキャストしたいと望むことがある。前述のように、ルアーは空中を飛行する。飛行時には、ルアーは空気抵抗を受ける。空気抵抗の小さなルアーは、遠方へとキャストされうる。重心位置が適正なルアーは飛行姿勢が安定し、空気抵抗が小さい。
【0004】
特開2007−209229公報には、重心移動式のルアーが開示されている。このルアーでは、ボディに内蔵された重錘がルアーの長手方向(前後方向)に移動しうる。キャスとされることにより、ルアーが空中を飛行するとき、重錘はテール側に位置する。すなわち、飛行時のルアーの重心はテール側にある。このルアーは、リリース(手指によるラインのロックを解除すること)前にはラインに引っ張られてヘッドを先頭にしているが、リリース後はすぐにテールを先頭にして滑空する。ルアーは、滑空の途中からほぼ弾道曲線(滑空曲線)に平行な姿勢となり、重心のある先頭(テール側)が下がった姿勢で落下する。着水時においても、重錘はテール側にあるのでテールが先頭である。
【0005】
着水直後に、ラインが巻かれることにより、ルアーが揺れつつやや下方を向く。ルアーの姿勢の変化に伴い、重錘は徐々にヘッド側へと移動する。上記公報に開示されたルアーでは、重錘がヘッド側に保持される手段として、磁石が用いられている。この磁石により、水中では、重錘はヘッド側に保持される。ルアーの着水から重錘がヘッドに至るまでには時間を要する。ルアーのヘッド寄りの適正な重心位置は、ルアーの水中における姿勢及びアクションに寄与しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−209229公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のとおり、ルアーの着水から重錘がヘッドに至るまでには時間を要する。重錘の移動速度が遅いときは、適正な重心位置となるまでの、着水時からの時間が長い。適正な重心位置が得られるまでは、ルアーとしての効果が発揮されない。また、単一の重錘又は一纏まりの重錘が磁石等によってヘッドに固定されている場合、単一の重錘又は一纏まりの重錘が常時前後に移動する場合等では、重力がボディにバランスよく負荷されないことがある。このような場合は、ルアーの効果的なアクション(泳ぎ)が期待できない。
【0008】
本発明の目的は、飛距離が大きく、しかも、ほぼ着水と同時に、フィッシュイータの勘違いを誘うための効果的な水中姿勢及びアクションが達成されうるルアーの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るルアーは、
中空であって、前部のヘッド及び後部のテールを有するボディと、
このボディの内部に、前後方向に移動可能に収容された第一重錘及び第二重錘と、
上記ボディに内蔵された、上記第一重錘の前後方向移動を案内する第一案内通路と、
上記ボディに内蔵された、上記第二重錘の前後方向移動を案内する第二案内通路と、
上記ボディに内蔵された、上記第一重錘を前方に付勢する弾性部材とを備えており、
上記第二重錘が、第一重錘の位置又はそれより前方に位置しており、
上記第一案内通路の前端が、第二案内通路の前端より後方に位置しており、
キャスト時には、上記第一重錘が弾性部材の付勢力に抗して後方に移動しうるように構成されている。
【0010】
かかる構成のルアーは以下の作用を奏する。キャスト時には第一及び第二の重錘がその慣性により弾性部材の付勢力に抗してボディの後部(テール側部分)に在る。ルアーは、その後、テール側を先頭にして上昇飛行するとき、糸や空気の抵抗によって大きく減速する(絶対値の大きな加速度を受ける)ので、第一及び第二の重錘はテール側に在り続ける。次いで、ルアーが降下を始めると、その負の加速度(減速度)の絶対値は小さくなる。すなわち、ルアーの減速の程度が小さくなる。その結果、第一及び第二の重錘は弾性部材の付勢力によって前方に押し戻される。着水時には、第二重錘は第一重錘より前方へ至る。その結果、ルアーに重力がバランスよく負荷され、着水と同時にルアーとしての効果(フィッシュイータを誘う)を発揮しうる姿勢及びアクションをとることができる。
【0011】
上記弾性部材が、キャスト時に後方に移動する上記第一重錘によって圧縮されるように、第一重錘の後方に前後方向に延設されたコイルバネであってもよい。
【0012】
又は、上記弾性部材が、キャスト時に後方に移動する上記第一重錘によって伸長されるように、第一重錘の前方に前後方向に延設され且つ第一重錘に接続されたコイルバネ又はゴム紐であってもよい。
【0013】
好ましくは、第三重錘を備えており、この第三重錘は、上記第一重錘の移動範囲の後方に配置される。
【0014】
好ましくは、上記第一重錘が、ボディの前後方向の中間部とテールの前部との間を移動可能にされており、上記第二重錘が、ヘッドの後部と後端位置にある第一重錘の前端との間を移動可能にされている。
【0015】
第三重錘を備えたルアーの場合、好ましくは、上記第一重錘が、ボディの前後方向の中間部とテールの前部との間を移動可能にされており、上記第二重錘が、ヘッドの後部と後端位置にある第一重錘の前端との間を移動可能にされており、上記第三重錘が、後端位置にある第一重錘の後方において、移動不能に収容されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るルアーでは、キャスティング時に、当初テール側にあった重錘が弾性部材によってヘッド側へと移動させられ、着水時には重心がヘッド方向に移動する。第一重錘と第二重錘とが前後方向の異なる位置に至り、ルアーに対して重力がバランスよく負荷される。従って、このルアーでは、着水時から適正な水中姿勢及びアクションが達成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るルアーを、ライン及びフックと共に示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII−III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、重錘が移動した後の
図1のルアーの状態を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、重錘がさらに移動した後の
図1のルアーの状態を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図1のルアーがキャストされたときの状態を時系列に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1に示されたルアー1は、ボディ2、ラインアイ3、三個のフックアイ4を備えている。各フックアイ4にはフック5が取り付けられている。ラインアイ3にはライン6が接続されている。ボディ2は、ベイトである小魚に類似の外形を有する。ボディ2は、前部のヘッド7及び後部のテール8を備えている。図中の右側がヘッド7側(前方)であり、左側がテール8側(後方)であり、上側が背側であり、下側が腹側である。
【0020】
ボディ2は、ヘッド7側であって且つ腹側に、リップを備えてもよい。典型的には、ボディ2は合成樹脂から形成されている。好ましい合成樹脂はABS樹脂である。ボディ2が金属材料又は木質材料から形成されてもよい。ラインアイ3及びフックアイ4は、金属線が曲げられることによって形成されている。金属線の典型的な材質はステンレス鋼である。金属線の一部はボディ2に埋設されており、残余の部分はボディ2から露出している。埋設により、ラインアイ3及びフックアイ4がボディ2に固定される。
【0021】
図2から
図5に示されるように、ボディ2は中空である。典型的には、このボディ2は、対称形の左ボディピース2Lと右ボディピース2R(
図3)とが重ね合わされた状態で接合されることにより構成される。ボディ2の内部には、第一重錘9、第二重錘10、第三重錘11、弾性部材12及びガイドワイヤ13が備えられている。本実施形態では、弾性部材12として圧縮コイルばねが用いられている。第一重錘9及び第二重錘10は、前後方向(ヘッド7とテール8とを結ぶいわば長手方向)に移動可能である。上記圧縮コイルばね12は、第一重錘9をヘッド7に向けて弾力的に付勢している。第一重錘9、第二重錘10及び第三重錘11の各比重はボディ2の比重よりも大きい。これらの重錘9、10、11の材質としては、鉛、鉛合金、真鍮、タングステン、タングステン合金、鋼及びステンレス鋼が例示される。
【0022】
第一重錘9は、ボディ2内部を前後方向に移動可能にされている。第一重錘9は、ボディ2の中央よりやや前方の位置から、テール8のわずかに前方の位置まで移動しうる。第一重錘9は、ボディ2の前端から、ボディ2の全長の約30%の位置から約80%の位置まで移動しうる。上記約30%の位置とは、第一重錘9の前端の位置であり、約80%の位置とは、第一重錘9の後端の位置である。この寸法は一例である。
図2及び
図4は、ともに、第一重錘9が移動範囲の前端位置AFにある状態を示している。
図5は、第一重錘9が移動範囲の後端位置ARにある状態を示している。第一重錘9は、その前端位置AFにおいて、後述する隆起部18により、そこからの前方への移動が阻止されている。第一重錘9は、その後端位置ARにおいて、後述する閉止壁19により、そこからの後方への移動が阻止されている。
【0023】
本実施形態では、第一重錘9は、前後方向に整列された複数個の小重錘から構成されている。第一重錘9の個数を増減することにより、ルアーの重量及び重心の位置が調整されうる。本実施形態における第一重錘9は、同一形状同一寸法の円柱形を呈している。もちろん、前後移動に障害がなく、後述の第二重錘10との当接に障害がなければ、異なる形状及び異なる寸法の複数個の小重錘が採用されてもよく、一個の重錘のみが装備されてもよい。第一重錘9の中心位置に、軸方向に沿って貫通孔(ワイヤ挿通孔)14が形成されている(
図3)。第一重錘9のワイヤ挿通孔14には、ガイドワイヤ13が挿通されている。ガイドワイヤ13は、金属線から形成される。ガイドワイヤ13の典型的な材質としては、鋼、ステンレス鋼、銅合金及びチタン合金が例示される。金属線の表面に、摩擦力軽減の目的で、表面処理が施されてもよい。第一重錘9は、複数個の小重錘に分けられているため、移動時のガイドワイヤ13から抵抗が低減される。
【0024】
ガイドワイヤ13は、ボディ2の内部を前後方向に延びている。ガイドワイヤ13は、ヘッド7のわずかに後方の位置から、第三重錘11の取り付け位置近傍(テール8のわずかに前方)の位置まで延びている。ガイドワイヤ13は、ボディ2の内部に着脱可能に取り付けられている。ガイドワイヤ13の前後両端は、いずれもボディ2内部の係合突条15a、15bに係合している。ガイドワイヤ13は、第一重錘9の案内通路(第一案内通路)としての機能を有する。この第一案内通路13は、第一重錘9の前端位置AF(
図2、
図4)と後端位置AR(
図5)との間において、第一重錘9の左右上下方向の大きな変位を規制している。
【0025】
上記圧縮コイルばね12は、第一重錘9の後方(テール8側)に、圧縮状態で前後方向に延設されている。この圧縮コイルばね12はガイドワイヤ13に外挿されている。すなわち、ガイドワイヤ13は圧縮コイルばね12の内径側に挿入されている。圧縮コイルばね12の前端は、第一重錘9の後端面に当接している。圧縮コイルばね12は、前端位置AFにある第一重錘9の後端面と、後端の係合突条15bとの間に、圧縮状態で延設されている。後端の係合突条15bと、その前方に位置する後述の閉止壁19との間には、圧縮されたコイルばね12が収容されるばねスペース20が形成されている。第一重錘9は、外力により、圧縮コイルばね12の復元力に抗して、第三重錘11の近傍まで移動することができる。圧縮コイルばね12の典型的な材質としては、鋼、ステンレス鋼、銅合金が例示される。
【0026】
第二重錘10は第一重錘9の前方に配置される。第二重錘10は、後述する第二案内通路16内を、前後方向に移動可能にされている。第二重錘10は、第一重錘9の前方に配置される。第二重錘10は、ヘッド7近傍にある前端位置BFから、後端位置ARにある第一重錘9の前端に当接する位置(後端位置BR)まで移動することができる。第二重錘10は、ボディ2の前端から、ボディ2の全長の約10%の位置から約70%の位置まで移動しうる。上記約10%の位置とは、第二重錘10の前端の位置であり、約70%の位置とは、第二重錘10の後端の位置である。この寸法は一例である。
【0027】
図2は、第二重錘10が移動範囲の前端位置BFにある状態を示している。
図4は、第二重錘10が、移動範囲の中間位置BMにおいて、前端位置AFにある第一重錘9に当接した状態を示している。この
図4に示される第二重錘10の中間位置BMは当接位置BMともいう。
図5は、第二重錘10が移動範囲の後端位置BRにある状態を示している。本実施形態では、第二重錘10は、前後方向に整列された複数個の小重錘から構成されている。小重錘は、同一形状同一寸法の球体からなる。第二重錘10の個数を増減することにより、ルアーの重量及び重心の位置が調整されうる。もちろん、前後移動に障害がなく、第一重錘9との当接に障害がなければ、異なる形状及び異なる寸法の複数個の小重錘が採用されてもよく、一個の重錘のみが装備されてもよい。
【0028】
図2から
図5に示されるように、左右のボディピース2L、2Rの各内面には、前後方向に、上部補強リブ17U、中部補強リブ17M及び下部補強リブ17Lが形成されている。左ボディピース2Lの各リブの形成位置と、右ボディーピース2Rの各リブの形成位置とは対応している。第二案内通路16は、上部補強リブ17U、中部補強リブ17M、ボディ2内部の下部に形成された隆起部18、及び、ボディ2内部に装着された上記ガイドワイヤ13によって構成されている。隆起部18は、左右のボディピース2L、2Rの各内面の、フックアイ4装着部の上部に形成された、第二重錘10にとっての床部である。隆起部18は
図3には示されていない。これらの補強リブ17U、17M、隆起部18及びガイドワイヤ13が、第二重錘10のガイドレールとしての機能を発揮する。
【0029】
第二重錘10を、その前端位置BF(
図2)と中間位置BM(
図4)との間を案内する第二案内通路16の前部分は、上記上部補強リブ17U、中部補強リブ17M及び隆起部18から構成される。上部補強リブ17U及び隆起部18が、第二重錘10の上下方向の大きな変位を規制している。中部補強リブ17Mが、第二重錘10の左右方向の大きな変位を規制している。第二重錘10を、その中間位置BM(
図4)と後端位置BR(
図5)との間を案内する第二案内通路16の後部分は、上記上部補強リブ17U、中部補強リブ17M及びガイドワイヤ13から構成される。上部補強リブ17U及びガイドワイヤ13が、第二重錘10の上下方向の大きな変位を規制している。中部補強リブ17Mが、第二重錘10の左右方向の大きな変位を規制している。
【0030】
第二重錘10は、第一重錘9が後方へ移動したときにのみ、その中間位置BMから後端位置BRへ移動することができる。第二重錘10は、第一重錘9を越えて後端位置BRへ移動することはできない。第二重錘10は、外力を受けることにより、第一重錘9を押すことによってコイルばね12を圧縮しつつ、その後端位置BRへ移動することができる。第二重錘10は、コイルばね12の復元力によって前方へ移動する第一重錘9に押されて、前方へ移動する。第一重錘9は、上記隆起部18に当接して停止する。第二重錘10は、慣性によって前端位置BFまで移動しうる。第二重錘10は、上部補強リブ17Uの前端の下方に折れ曲がった屈曲部21に当接して停止する。
【0031】
上記第二案内通路16の前端部には、第二重錘10を仮収容する仮収容スペース22が形成されている。この仮収容スペース22が、第二重錘10の前端位置BFである。仮収容スペース22は、第二案内通路16に段差が形成されることにより、形成されている。上記段差は、上部補強リブ17Uの段差部23と隆起部18の前端部分とにより、形成されている。第二重錘10は、外力により、隆起部18を乗り越えて、仮収容スペース22から後方へ脱出することができる。
【0032】
上記第三重錘11は、テール8部分に移動不能に設けられている。本実施形態では、第三重錘11は、テール8部分に、閉止壁19とリブとによって形成された収容スペース24内に移動不能に収容されている。収容スペース24は、第一重錘9の後端位置ARの後方に隣接して設けられている。本実施形態では、第三重錘11は、前後方向に整列された複数個の小重錘から構成されている。小重錘は、同一形状同一寸法の球状の小重錘からなる。第三重錘11の個数を増減することにより、ルアーの重量及び重心の位置が調整されうる。もちろん、異なる形状及び異なる寸法の複数個の小重錘が採用されてもよく、一個の重錘のみが装備されてもよい。第三重錘11は、後端位置ARにある第一重錘9の後方において、前後方向に移動可能に収容されていてもい。例えば、前後方向に余裕のある収容スペース内に第三重錘11が収容されてもよい。この場合、第三重錘11を前方へ付勢する弾性部材が備えられてもよい。例えば、第三重錘11の後方に圧縮コイルばねが装着されてもよい。
【0033】
図6には、その(1)から(6)にかけて、上記ルアー1のキャスティング状態が概略的且つ時系列に示されている。(1)はキャスティングのスタートを示し、(2)(3)はルアー1がライン6によってドライブされている状態を示し、(4)(5)はルアー1がライン6によるドライブから解放されて滑空している状態を示し、(6)はルアー1が着水したところを示している。キャストされることにより、ボディ2は飛行し、第一重錘9及び第二重錘10は、慣性によって瞬時に圧縮コイルばね12を圧縮してテール8側に移動する(
図5、
図6の(1)、(2)、(3))。第三重錘11はテール8部に収容された状態である。
【0034】
ルアー1はテール8を先頭にして飛行する。飛行中にルアー1には、空気の抵抗により、絶対値の大きな負の加速度(減速度)が作用する。ルアー1は、その飛行速度が低下し、降下を始める頃には上記負の加速度の絶対値は小さくなる。すなわち、ルアー1の減速の程度が小さくなる。その結果、第一重錘9及び第二重錘10は圧縮コイルばね12の復元力によってヘッド7側に押し戻される(
図4、
図5、
図6の(4)、(5))。第三重錘11はテール8部に収容され、移動し得ない。
【0035】
着水後には、第一重錘9及び第二重錘10は、それぞれの前端位置AF、BFに至っている(
図2、
図6の(6))。第一重錘9及び第二重錘10は、前端位置AF、BFに固定されるわけではなく、外力の方向や強さに応じて変位しうる。第三重錘11はテール8部から移動し得ない。基本的に、第一重錘9はボディ2のほぼ中央部分に位置し、第二重錘10はヘッド7近傍に位置し、第三重錘11はテール8に位置する。その結果、ボディ2の全長にわたって重力がバランスよく負荷される。従って、使用者は、着水後、このルアー1を容易に泳がせることができる。第一重錘9と第二重錘10のみが装備されたルアーであっても、その個数の増減により、ボディの全長にわたって重力がバランスよく負荷されうる。第三重錘11が付加されれば、さらに効果的な良好な重力バランスが得られる。また、ルアー1の滑空時には、第一及び第二の重錘9、10が、先頭のテール8からヘッド7に向けて移動しつつある。このように、ルアー1の重心が先頭(テール8)よりややヘッド7側にあれば、ルアー1に迎角が生じて揚力が発生する。その結果、ルアー1は、テールを下げた姿勢(弾道曲線にほぼ平行な姿勢)では落下しないので、ルアー1の滑空距離が伸びることも期待できる。
【0036】
本実施形態では、弾性部材12として圧縮コイルばねが採用されている。しかし、本発明では圧縮コイルばねには限定されない。弾性部材として、例えば、引っ張りコイルばね、ゴム紐等が採用されうる。引っ張りコイルばね又はゴム紐は、引っ張られた状態で、その前端がヘッド7近傍又は上記隆起部18に固定され、後端が第一重錘9に接続される。第一重錘9が複数個の小重錘からなる場合、引っ張りコイルばね又はゴム紐の後端は、後端に位置する小重錘に接続される。第一重錘9は、この引っ張りコイルばね又はゴム紐によって前方へ付勢されている。
【0037】
本実施形態は、前端位置AFにある第一重錘9の前端に、第二重錘10が直接当接しうるように構成されている。しかし、本発明ではかかる構成には限定されない。例えば、第一重錘9の前端位置に、第二重錘10と当接しうる係合突起が上方に向けて突設されてもよい。また、上記係合突起は、第一重錘9の後端位置に突設されてもよい。この場合、前後方向において、第二重錘が第一重錘に重なり合って位置する場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るルアーは、湖沼、池、ダム、川、海等の種々のフィールドでの釣りに適している。
【符号の説明】
【0039】
1・・・ルアー
2・・・ボディ
3・・・ラインアイ
4・・・フックアイ
5・・・フック
6・・・ライン
7・・・ヘッド
8・・・テール
9・・・第一重錘
10・・・第二重錘
11・・・第三重錘
12・・・圧縮コイルばね(弾性部材)
13・・・ガイドワイヤ
14・・・ワイヤ挿通孔
15・・・係合突条
16・・・第二案内通路
17U・・・上部補強リブ
17M・・・中部補強リブ
17L・・・下部補強リブ
18・・・隆起部
19・・・閉止壁
20・・・ばねスペース
21・・・(上部補強リブの)屈曲部
22・・・仮収容スペース
24・・・収容スペース
AF・・・(第一重錘の)前端位置
AR・・・(第一重錘の)後端位置
BF・・・(第二重錘の)前端位置
BM・・・(第二重錘の)中間位置
BR・・・(第二重錘の)後端位置