【実施例】
【0028】
(実施例1)
35μm厚さの電解銅箔を酸洗浴(A)(硫酸5%水溶液)に10秒間浸漬し、次いで水洗し、その光沢面にニッケル粗化処理浴(B)において19A/dm
2、15秒間陰極電解処理した。次いで水洗後その面をニッケルめっき浴(C)において4A/dm
2、20秒間被覆めっきし、水洗し、乾燥した。
【0029】
(B) 硫酸ニッケル(六水塩) 90 g/l
アンモニア 18 g/l
pH 6.0
温度 45℃
(C) 硫酸ニッケル(六水塩) 250 g/l
塩化ニッケル(六水塩) 50 g/l
ホウ酸 20 g/l
pH 4.0
温度 40℃
【0030】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 3.3μm、放射率を測定すると0.48であった。表面粗さはサーフコーダSE500(小坂研究所製)を用いて測定し、放射率はD&S AERD 放射率計(京都電子工業製)を用いて測定した。以下の実施例、比較例においても同じ測定を行った。また蛍光X線分析(RIX2000理学電機製)で付着元素量を調べた。Niの付着量は 7.92 g/m
2であった。以下の実施例、比較例においても同様に分析した。
【0031】
一方、20μm厚さのSUS304ステンレス箔を幅3mm、長さ11cmに切り取り、この両面に5.5×5.5cm、厚さ50μmの粘着性ポリイミドフィルムを貼り付け、さらに片側にこの粗化処理銅箔を処理面側を外側にして5×5cmの大きさで貼り付け、これを
図1に示したように断熱材上に設置した。そして、ステンレス箔線に10cmの端子間距離をとり、整流器で2.5Aの一定電流を連続的に通電し、5のポイント(試料表面上)の発熱による温度を調べた。15分間の通電によりおよそ安定し、その温度は57℃であった。なお、試料を貼り付けない場合は同じ電流を通電し、15分間後安定した温度は69℃であった。 以下の実施例、比較例においても同じ測定を行った。
【0032】
以後の実施例、比較例を含めて結果を表1に示す。
【0033】
(実施例2)
35μm厚さの電解銅箔を酸洗浴(A)で酸洗し、水洗後、その光沢面にニッケル粗化処理浴(B)において19A/dm
2、15秒間陰極電解処理した。次いで水洗後、その面をニッケルリンめっき浴(D)において2.5A/dm
2、20秒間被覆めっきし、水洗し、乾燥した。
【0034】
(D) 硫酸ニッケル(六水塩) 60 g/l
次亜リン酸ナトリウム(一水塩) 55 g/l
pH 4.0
温度 30℃
【0035】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 2.3μm、放射率を測定すると0.66であった。またその表面のSEM観察を行い、その写真を
図2に示す。
このニッケル粗化処理銅箔のNiの付着量は 6.56 g/m
2、Pの付着量は 0.18 g/m
2であった。ここで同じ(B)浴による同じ条件でニッケル粗化処理をしただけの箔についてはNi量は5.50 g/m
2であったので、この実施例におけるニッケルリン被覆めっき層中のNi量は1.06 g/m
2であり、リン量は約15%であった。次に、この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は54℃であった。
【0036】
(実施例3)
35μm厚さの電解銅箔を酸洗浴(A)で酸洗し、水洗後、その光沢面にニッケル粗化処理浴(B)において19A/dm
2、15秒間陰極電解処理した。次いでその面をニッケル硫黄めっき浴(E)において2.5A/dm
2、20秒間被覆めっきした。
【0037】
(E) 硫酸ニッケル(六水塩) 150g/l
チオ硫酸ナトリウム(五水塩) 40g/l
pH 4.5
温度 30℃
【0038】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 2.1μm、放射率を測定すると0.65であった。またその表面のSEM観察を行い、その写真を
図3に示す。またNiの付着量は 6.51 g/m
2、Sの付着量は 0.08 g/m
2であった。ニッケル硫黄被覆めっき層中の硫黄量は、約7 %であった。次にこの銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は56℃であった。
【0039】
(実施例4)
30μm厚さの1N30アルミニウム箔を用意し、両面を脱脂浴(F)(NaOH10g/l水溶液)に30秒間浸漬し、水洗し、酸洗浴(G)(硝酸20%水溶液)に15秒間浸漬し、次いで水洗後、亜鉛置換浴(H)(ZnO 9g/l、NaOH80g/l、ロッセル塩25g/l、塩化第二鉄四水塩2g/l)に30秒間浸漬し、次いで酸洗浴(G)に20秒間浸漬後、水洗し、次に再び亜鉛置換浴(H)に30秒間浸漬した。
【0040】
次いで水洗後、その片面をニッケルめっき浴(C)で7 A/dm
2、60秒間陰極電解してニッケルめっきした後、水洗後、ニッケル粗化処理浴(B)において19 A/dm
2 15秒間陰極電解処理した。次いで水洗後、ニッケルめっき浴(C)において2.5A/dm
2、20秒間被覆めっきした。このニッケル粗化処理アルミ箔の表面粗さはRzjis 3.2μm、放射率を測定すると0.39であった。このアルミ箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は62℃であった。
【0041】
(実施例5)
30μm厚さの1N30アルミニウム箔を用意し、その光沢面を実施例4における最後のニッケル被覆浴(C)をニッケルリンめっき浴(D)2.5A/dm
2、20秒間とした以外すべて同じ方法で処理、めっきした。このニッケル粗化処理アルミ箔の表面粗さはRzjis 2.9μm、放射率を測定すると0.64であった。このアルミ箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は57℃であった。
【0042】
(実施例6)
20μm厚さのステンレス箔SUS304を用意し、脱脂浴(I)(NaOH50g/l)で3A/dm
2、30秒間陰極脱脂、水洗後酸洗浴(A)で5A/dm
2、60秒間陰極電解し、その片面にニッケル粗化処理浴(A)において23A/dm
2 15秒間陰極電解処理した。次いでその面をニッケルリンめっき浴(D)において2.5A/dm
2、20秒間被覆めっきした。
【0043】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 1.6μm、放射率を測定すると0.46であった。このステンレス箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は62℃であった。
【0044】
(実施例7)
35μm厚さの電解銅箔をその光沢面について実施例2においてニッケル-リンめっき浴(D)を浴(J)2.5A/dm
2、20秒間としたこと以外すべて同じ方法で処理した。
【0045】
(J) 硫酸ニッケル(六水塩) 60g/l
次亜リン酸ナトリウム(一水塩) 15g/l
pH 4.0
温度 30℃
【0046】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 2.4μm、放射率を測定すると0.60であった。またNiの付着量は 6.63 g/m
2、Pの付着量は 0.13 g/m
2であった。ニッケル-リン被覆めっき層中のリンは、約10%であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は57℃であった。
【0047】
(実施例8)
35μm厚さの電解銅箔をその光沢面について、実施例3においてニッケル硫黄めっき浴(E)を浴(K)としたこと以外すべて同じ方法で処理した。
【0048】
(K) 硫酸ニッケル(六水塩) 150g/l
チオ硫酸ナトリウム(五水塩) 20g/l
pH 4.5
温度 30℃
【0049】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 2.5μm、放射率を測定すると0.68であった。またNiの付着量は 6.70 g/m
2、Sの付着量は0.04 g/m
2であった。ニッケル硫黄被覆めっき層中の硫黄は、約3%であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は56℃であった。
【0050】
(実施例9)
35μm厚さの電解銅箔を用意し、実施例2において表面処理を粗面側としたこと以外すべて同じ方法で処理した。このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 8.1μm、放射率を測定すると0.58であった。またNiの付着量は 6.65 g/m
2、Pの付着量は0.13 g/m
2であった。ニッケル-リン被覆めっき層中のリンは、約10%であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は58 ℃であった。
【0051】
(実施例10)
35μm厚さの電解銅箔を用意し、実施例2においてニッケル粗化処理浴を(B)の代わりに
(L)とし、電解時間を20秒間とし、(D)浴のNi-P被覆めっきを2.5A/dm
2、40秒間としたこと以外すべて同じ方法で処理した。
【0052】
(L) 硫酸ニッケル六水塩 110 g/l
アンモニア 25 g/l
pH 5.7
温度 40℃
【0053】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 2.7μm、放射率を測定すると0.61であった。またNiの付着量は 9.90 g/m
2、Pの付着量は 0.27 g/m
2であった。ここで同じ(L)浴による同じ条件でニッケル粗化処理をしただけの箔についてはNi量は7.30 g/m
2であったので、この実施例におけるニッケル-リン被覆めっき層中のリンは、約9%であった。
この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は57℃であった。
【0054】
(実施例11)
35μm厚さの電解銅箔を用意し、実施例2においてニッケルリン被覆めっきをニッケル-硫黄-リン被覆めっき(M)浴としたこと以外すべて同じ方法で処理した。
【0055】
(M) 硫酸ニッケル(六水塩) 80g/l
次亜リン酸ナトリウム(一水塩) 25g/l
チオ硫酸ナトリウム(五水塩) 5g/l
pH 4.0
温度 30℃
【0056】
このニッケル粗化処理銅箔の表面粗さはRzjis 2.4μm、放射率を測定すると0.57であった。 またNiの付着量は 6.25 g/m
2、Pの付着量は 0.01 g/m
2 Sの付着量は 0.03 g/m
2であった。ニッケル硫黄-リン被覆めっき層中の硫黄は約4%、リンは約1%であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は58 ℃であった。
【0057】
(比較例1)
35μm厚さの電解銅箔を用意し、光沢面側の表面粗さ、放射率を調べた。表面粗さはRzjis 1.9μm、放射率は0.02であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムにはりつけ、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は68℃であった。
【0058】
(比較例2)
35μm厚さの電解銅箔を用意し、その光沢面にめっき浴(D)により2.5A/dm
2、20秒間でニッケルリンめっきし、水洗、乾燥した。表面粗さはRzjis 1.8μm、放射率は0.16であった。またNiの付着量は 1.07 mg/m
2、Pの付着量は0.24 mg/m
2であった。ニッケルリンめっき中のリン量は約18%であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムにはりつけ、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は66℃であった。
【0059】
(比較例3)
30μm厚さの1N30アルミニウム箔を用意し、表面粗さ、放射率を調べた。表面粗さはRzjis 0.2μm、放射率は0.03であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムにはりつけ、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は68℃であった。
【0060】
(比較例4)
35μm厚さの電解銅箔を用意し、その光沢面を黒化処理浴(N)
(N) NaOH 15g/l NaClO
2 40g/l リン酸三ナトリウム(12水塩) 5g/l 90℃
の水溶液中に浸漬し、150秒間の表面酸化を行った。この面の表面粗さ、放射率を調べた。表面粗さはRzjis 2.0μm、放射率は0.07であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムにはりつけ、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は64℃であった。
【0061】
(比較例5)
35μm厚さの電解銅箔を用意し、この粗面側を処理浴(O)
(O) 硫酸100 g/L、硫酸銅(五水塩) 50 g/L
において10A/dm
2、8秒間陰極電解した。次いで処理浴(P)
(P) 硫酸100 g/L、硫酸銅(五水塩) 220 g/L
において粗面側を5A/dm
2、70秒間陰極電解した。次に水洗後めっき浴(D)で2.5A/dm
2、20秒間ニッケルリンめっきし、水洗し、乾燥した。この銅箔の処理面表面粗さはRzjis 9.8μmであった。放射率は0.16であった。この銅箔について実施例1と同じ方法でポリイミドフィルムに貼り付け、SUS箔線の発熱による温度を調べた。15分間の通電により安定した温度は65℃であった。
【0062】
以上から本発明の実施例においては比較例と比べて格段に高い放射率が測定され、ポリイミドフィルムを介して発熱に対して放熱効率が良く、発熱回路による温度上昇も低いことが確認された。
【0063】
【表1】