(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ赤道のタイヤ軸方向両側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のセンター主溝と、該センター主溝のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を継ぐ複数本のミドル横溝とが設けられることにより、
前記一対のセンター主溝で区分された1本のセンター陸部、及び、前記センター主溝と前記ショルダー主溝と前記ミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列を具えた空気入りタイヤであって、
前記センター主溝は、前記センター主溝のタイヤ軸方向内側の内側溝縁のタイヤ軸方向の最も内側の点と、前記センター主溝のタイヤ軸方向外側の外側溝縁のタイヤ軸方向の最も内側の点との中間点、及び前記内側溝縁のタイヤ軸方向の最も外側の点と前記外側溝縁のタイヤ軸方向の最も外側の点との中間点を交互に継いだ直線で形成された溝中心線を有し、
前記センター主溝は、前記溝中心線がタイヤ周方向に対して一方側に傾斜する複数本の長辺部と、前記溝中心線が前記長辺部とは逆向きに傾斜し、かつタイヤ周方向に隣り合う前記長辺部間を継ぎ、前記長辺部よりもタイヤ周方向の長さが小さい短辺部とが交互に配されたジグザグ状をなし、
前記長辺部は、等幅にのびる主部片と、主部片に連なりタイヤ軸方向内側にのびる副部片とからなるL字状をなし、
前記センター陸部は、前記ミドルブロック列の一ピッチ内に、タイヤ軸方向にのびる6本以上のセンターサイピングが設けられ、
前記各ミドルブロックは、タイヤ周方向の長さが、前記ミドルブロック列の一ピッチの85〜95%であり、かつ、タイヤ軸方向にのびるミドルサイピングが5本以下で設けられることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記ミドルサイピングは、前記センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記ミドルブロック内で終端する第1サイプと、前記ショルダー主溝からタイヤ赤道側へのびかつ前記ミドルブロック内で終端する第2サイプとからなり、
前記第1サイプと前記第2サイプとは、タイヤ周方向に交互に配される請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、センター主溝をジグザグ状とし、センター陸部及びミドルブロックに設けられるサイピングの本数を規定することを基本として、氷路性能と乾燥路での操縦安定性能とをバランス良く向上させた空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に、タイヤ赤道のタイヤ軸方向両側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のセンター主溝と、該センター主溝のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を継ぐ複数本のミドル横溝とが設けられることにより、前記一対のセンター主溝で区分された1本のセンター陸部、及び、前記センター主溝と前記ショルダー主溝と前記ミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列を具えた空気入りタイヤであって、
前記センター主溝は、前記センター主溝のタイヤ軸方向内側の内側溝縁のタイヤ軸方向の最も内側の点と、前記センター主溝のタイヤ軸方向外側の外側溝縁のタイヤ軸方向の最も内側の点との中間点、及び前記内側溝縁のタイヤ軸方向の最も外側の点と前記外側溝縁のタイヤ軸方向の最も外側の点との中間点を交互に継いだ直線で形成された溝中心線を有し、前記センター主溝は、
前記溝中心線がタイヤ周方向に対して一方側に傾斜する複数本の長辺部と、
前記溝中心線が前記長辺部とは逆向きに傾斜し、かつタイヤ周方向に隣り合う前記長辺部間を継ぎ、前記長辺部よりもタイヤ周方向の長さが小さい短辺部とが交互に配されたジグザグ状をなし、前記長辺部は、等幅にのびる主部片と、主部片に連なりタイヤ軸方向内側にのびる副部片とからなるL字状をなし、前記センター陸部は、前記ミドルブロック列の一ピッチ内に、タイヤ軸方向にのびる6本以上のセンターサイピングが設けられ、前記各ミドルブロックは、タイヤ周方向の長さが、前記ミドルブロック列の一ピッチの85〜95%であり、かつ、タイヤ軸方向にのびるミドルサイピングが5本以下で設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記センター陸部は、前記長辺部
の前記主部片、前記主部片のタイヤ周方向の一方側に設けられた前記副部片、及び、前記主部片のタイヤ周方向の他方側に設けられた前記短辺部で囲まれてタイヤ軸方向外方に突出する凸部を有する
のが望ましい。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記センターサイピングは、一端が前記凸部で開口する請求項2記載の空気入りタイヤである。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ミドルサイピングは、前記センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記ミドルブロック内で終端する第1サイプと、前記ショルダー主溝からタイヤ赤道側へのびかつ前記ミドルブロック内で終端する第2サイプとからなり、前記第1サイプと前記第2サイプとは、タイヤ周方向に交互に配される
のが望ましい。また
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ショルダー主溝と接地端との間を継ぐ複数本のショルダー横溝が設けられ
ることにより、前記ショルダー主溝と接地端と前記ショルダー横溝とで区分された複数個のショルダーブロックが形成され、前記ショルダー横溝は、ショルダー主溝から接地端側へ傾斜する傾斜部と、前記傾斜部と接地端との間をタイヤ軸方向に沿ってのびる軸方向部とを含み、前記ショルダーブロックには、内側ショルダーサイピングと、前記内側ショルダーサイピングのタイヤ軸方向外側に配される外側ショルダーサイピングとが設けられ、前記内側ショルダーサイピングは、前記傾斜部と同じ角度に配され、前記外側ショルダーサイピングは、タイヤ軸方向に沿ってのびているのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気入りタイヤでは、トレッド部に、タイヤ赤道のタイヤ軸方向両側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のセンター主溝と、該センター主溝のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、センター主溝とショルダー主溝との間を継ぐ複数本のミドル横溝とが設けられることにより、一対のセンター主溝で区分された1本のセンター陸部、及び、センター主溝とショルダー主溝とミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列を具える。
【0011】
そして、センター主溝は、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜する複数本の長辺部と、タイヤ周方向に隣り合う長辺部間を継ぎ、長辺部よりもタイヤ周方向の長さが小さい短辺部とが交互に配されたジグザグ状とされる。このようなセンター主溝は、タイヤ軸方向のエッジ成分を含むため、氷路での駆動力及び制動力を高める。従って、氷路性能が向上する。
【0012】
センター陸部は、ミドルブロック列の一ピッチ内に、タイヤ軸方向にのびる6本以上のセンターサイピングが設けられる。各ミドルブロックは、タイヤ周方向の長さが、ミドル横溝の前記ピッチの85〜95%であり、かつ、タイヤ軸方向にのびるミドルサイピングが5本以下で設けられる。このようなセンターサイピング及びミドルサイピングによって、さらにタイヤ軸方向のエッジ成分が増加し、より一層、氷路性能が向上する。また、センターサイピング及びミドルサイピングの本数を上述のように規定することにより、旋回時、センター陸部よりも大きな横力の作用するミドルブロックの剛性を高めることで、旋回性能が向上する。また、ミドルブロックのタイヤ周方向の長さをミドル横溝の前記ピッチに対し大きく確保し、ミドルブロックの剛性がさらに高められる。従って、本発明の空気入りタイヤでは、氷路性能と乾燥路での操縦安定性能とがバランス良く向上する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)は、例えば冬用タイヤとして好適に利用でき、そのトレッド部2には、タイヤ赤道Cのタイヤ軸方向両側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のセンター主溝3Aと、該センター主溝3Aのタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝3Bとが設けられる。また、本実施形態では、トレッド部2に、センター主溝3Aとショルダー主溝3Bとの間を継ぐ複数本のミドル横溝4A、及び、ショルダー主溝3Bと接地端Teとの間を継ぐ複数本のショルダー横溝4Bが設けられる。
【0015】
これにより、本実施形態のトレッド部2には、一対のセンター主溝3A、3Aで区分されたセンター陸部5、センター主溝3Aとショルダー主溝3Bとミドル横溝4Aとで区分されたミドルブロック6がタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列6R、及び、ショルダー主溝3Bと接地端Teとショルダー横溝4Bとで区分された複数個のショルダーブロック7がタイヤ周方向に隔設された一対のショルダーブロック列7Rが配される。
【0016】
本実施形態のトレッドパターンは、タイヤ赤道C上の任意の点を中心としてバリアブルピッチを除いて実質的な点対称パターンで形成されている。
【0017】
前記「接地端」Teは、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0018】
前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMAであれば"標準リム"、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"となる。また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【0019】
また、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0020】
本実施形態のセンター主溝3Aは、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜(
図1では左上がりに傾斜)する複数本の長辺部8と、タイヤ周方向に隣り合う長辺部8、8間を継ぎ、かつ、長辺部8よりもタイヤ周方向の長さが小さい短辺部9とが交互に配されたジグザグ状に形成される。このようなセンター主溝3Aは、タイヤ軸方向のエッジ成分を含むため、駆動力及び制動力が大きくなる。従って、氷路性能が向上する。本実施形態の長辺部8は、溝中心線10aに沿って等幅にのびる主部片8aと、該主部片8aに連なりタイヤ軸方向内側にのびる副部片8bとからなるL字状をなす。
【0021】
センター主溝3Aの角度α1は、その溝中心線10の角度として得られる。本実施形態の長辺部8は、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜(
図1では、左上がりに傾斜)する溝中心線10aを有する。また、本実施形態の短辺部9は、タイヤ周方向に対して他方側に傾斜(
図1では、右上がりに傾斜)する溝中心線10bを有する。
【0022】
図2は、センター陸部5及びミドルブロック6の部分拡大図である。
図2に示されるように、溝中心線10a、10bを含んだセンター主溝3Aの溝中心線10は、センター主溝3Aのタイヤ軸方向内側の内側溝縁10xのタイヤ軸方向の最も内側の点a1と、センター主溝3Aのタイヤ軸方向外側の外側溝縁10yのタイヤ軸方向の最も内側の点a2との中間点s1、及び内側溝縁10xのタイヤ軸方向の最も外側の点a3と外側溝縁10yのタイヤ軸方向の最も外側の点a4との中間点s2を交互に継いだ直線で形成される。また、
図2には、長辺部8と短辺部9との交差位置8eが仮想線で示される。
【0023】
長辺部8のタイヤ周方向に対する角度α1が小さい場合、タイヤ軸方向のエッジ成分が低下するおそれがある。長辺部8の前記角度α1が大きい場合、センター主溝3Aの排水抵抗が大きくなり、排水性能が悪化するおそれがある。このため、長辺部8の角度α1は、好ましくは5°以上、より好ましくは7°以上であり、好ましくは20°以下、より好ましくは18°以下である。
【0024】
特に限定されるものではないが、短辺部9のタイヤ周方向に対する角度α2は、好ましくは30°以上、より好ましくは35°以上であり、好ましくは60°以下、より好ましくは55°以下である。短辺部9の角度α2が大きい場合、排水性能が悪化するおそれがある。短辺部9の角度α2が小さい場合、氷路性能が悪化するおそれがある。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態のショルダー主溝3Bは、タイヤ周方向に沿った直線状をなす。このような主溝3Bは、溝内の排水をタイヤ回転方向の後方へスムーズに排出するとともに、ミドルブロック6及びショルダーブロック7のタイヤ周方向の剛性を高く確保して、制動時の車両のふらつきや片流れなどの不安定な挙動を抑制し、乾燥路での操縦安定性能を向上させる。
【0026】
各主溝3A、3Bの溝幅(溝中心線と直角方向に測定される溝幅で、以下、他の溝についても同様とする。)W1、W2及び溝深さD1、D2(
図3に示す)については、慣例に従って種々定めることができる。しかしながら、これらの溝幅又は溝深さが小さくなると、排水性能が悪化するおそれがある。逆に、これらの溝幅又は溝深さが大きくなると、陸部5及び各ブロック6、7の剛性が小さくなり、操縦安定性能が悪化するおそれがある。このため、各主溝3A、3Bの溝幅W1、W2は、例えば、トレッド接地幅TWの2〜6%が望ましい。各主溝3A、3Bの溝深さD1、D2は、例えば、10〜15mmが望ましい。
【0027】
陸部5及び各ブロック6、7のタイヤ軸方向の剛性をバランスよく確保するため、センター主溝3Aとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L1は、トレッド接地幅TWの3〜11%が望ましい。ショルダー主溝3Bとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L2は、トレッド接地幅TWの25〜35%が望ましい。なお、各主溝3A、3Bの各位置は、それらの溝中心線(ショルダー主溝3Bの溝中心線G2)で特定されるが、本実施形態のように、センター主溝3Aがジグザグ状の非直線の場合、溝中心線10の振幅の中心線G1が用いられる。
【0028】
センター主溝3Aのジグザグの振幅y1は、好ましくはセンター陸部5のタイヤ軸方向の最大幅Waの10%以上、より好ましくは12%以上であり、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下である。センター主溝3Aの振幅y1が大きい場合、センター主溝3Aの排水抵抗が大きくなるおそれがある。センター主溝3Aの振幅y1が小さい場合、タイヤ軸方向のエッジ成分が小さくなるおそれがある。センター主溝3Aの振幅y1は、振幅の中心線G1と内側溝縁10x(
図2に示す)の最も内側の点a1又は外側溝縁10y(
図2に示す)の最も外側の点a4との間の最短距離である。
【0029】
ミドル横溝4Aは、直線状かつ一定の方向に傾斜(
図1では、左上がりに傾斜)している。このようなミドル横溝4Aは、センター主溝3Aからショルダー主溝3B側へ溝内の水をスムーズに排出できる。
【0030】
ミドル横溝4Aのタイヤ軸方向に対する角度α3が大きい場合、ミドルブロック6のタイヤ軸方向のエッジ成分が小さくなり、駆動、制動力が低下するおそれがある。前記角度α3が小さい場合、タイヤ周方向のエッジ成分を効果的に大きくできないおそれがある。このため、ミドル横溝4Aの角度α3は、好ましくは7°以上、より好ましくは10°以上、好ましくは7°以下、より好ましくは10°以下である。
【0031】
ショルダー横溝4Bは、ショルダー主溝3Bから接地端Te側へ傾斜(
図1では、右上がりに傾斜)する傾斜部13aと、該傾斜部13aと接地端Teとの間をタイヤ軸方向に沿ってのびる軸方向部13bとを含む。本実施形態の傾斜部13a及び軸方向部13bは、直線状にのびる。これにより、ショルダー横溝4Bの排水抵抗が小さくなる。また、ショルダーブロック7の剛性が確保され、旋回性能が向上する。
【0032】
傾斜部13aのタイヤ軸方向に対する角度α4が大きい場合、タイヤ軸方向のエッジ成分が小さくなるおそれがある。傾斜部13aの角度α4が小さい場合、タイヤ周方向のエッジ成分が小さくなるおそれがある。このため、傾斜部13aの角度α4は、好ましくは10°以上、より好ましくは12°以上であり、好ましくは20°以下、より好ましくは18°以下である。
【0033】
傾斜部13aの溝幅W4aは、好ましくはショルダーブロック7のタイヤ周方向の最大長さLaの8%以上、より好ましくは9%以上であり、好ましくは18%以下、より好ましくは17%以下である。傾斜部13aの溝幅W4aが大きい場合、ショルダーブロック7の剛性が低下するおそれがある。傾斜部13aの溝幅W4aが小さい場合、排水性能が悪化するおそれがある。
【0034】
軸方向部13bの溝幅W4bは、例えば、傾斜部13aの溝幅W4aよりも大きく形成されている。これにより、傾斜部13aからの水がスムーズに接地端Te側に排出される。軸方向部13bの溝幅W4bは、好ましくは傾斜部13aの溝幅W4aの1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上であり、好ましくは2.4倍以下、より好ましくは2.3倍以下である。
【0035】
図3に示されるように、ミドル横溝4Aの溝深さD3は、氷路性能及び排水性能をバランスよく高めるため、8〜13mmである。同様の観点より、ショルダー横溝4Bの溝深さD4は、7〜12mmである。なお、本実施形態では、ショルダー横溝4Bの溝深さD4をミドル横溝4Aの溝深さD3よりも小として、大きな横力が作用するショルダーブロック7の剛性を高め、旋回性能を向上させる。
【0036】
図2に示されるように、センター陸部5は、長辺部8と、該長辺部8の主部片8a側のタイヤ周方向に隣り合う短辺部9とで囲まれてタイヤ軸方向の外方に突出する凸部15を有する。このような凸部15は、タイヤ軸方向のエッジ成分を含む。このため、氷路での駆動力及び制動力が高まり、氷路性能が向上する。凸部15は、本実施形態では、センター陸部5のタイヤ軸方向の両側、かつ、タイヤ周方向に交互に位置ずれして形成される。
【0037】
センター陸部5は、ミドルブロック列6Rの一ピッチP内に、タイヤ軸方向にのびる6本以上のセンターサイピング17が設けられる。このようなセンターサイピング17は、タイヤ軸方向のエッジ成分を増加させ、より一層、氷路性能を向上させる。センターサイピング17の本数が過度に大きい場合、センター陸部5の剛性が低下し、乾燥路での操縦安定性能が悪化する。このため、センターサイピング17は、前記一ピッチP内に、好ましくは7本以上であり、好ましくは9本以下、より好ましくは8本以下である。本実施形態のセンターサイピング17は、前記一ピッチP内に7本設けられている。
【0038】
本実施形態のセンターサイピング17は、一端が凸部15で開口する。このようなセンターサイピング17によって区分されたセンター陸部5の陸部片は、路面から受ける力によって、互いに倒れ易くなる。従って、本実施形態のセンターサイピング17は、大きなエッジ効果を発揮して氷路性能を向上させる。なお、本実施形態のセンターサイピング17は、直線状で形成される。これにより、上述の倒れこみがさらに容易になり、一層、氷路性能が向上する。なお、センターサイピング17は、このような形状に限定されるものではなく、例えば、波状のものでも良い。
【0039】
センターサイピング17は、駆動力や制動力を大きく確保するため、タイヤ軸方向に対する角度α5が0〜10°が望ましい。
【0040】
センターサイピング17は、センター主溝3A、3A間を継ぐオープンタイプのサイピング17aと、長辺部8からタイヤ赤道Cを越えてセンター陸部5内で終端するセミオープンタイプのサイピング17bとで構成される。本実施形態のセンターサイピング17は、前記一ピッチP内で、オープンタイプのサイピング17aが1本とセミオープンタイプのサイピング17bが6本で構成される。このようなセンターサイピング17は、氷路性能と乾燥路での操縦安定性能とをバランスよく高める。
【0041】
上述の作用を効果的に発揮させる観点より、セミオープンタイプのサイピング17bの他端17yから該他端17yに近接するセンター陸部5の陸部縁までのタイヤ軸方向の距離Lbは、好ましくはセンター陸部5の最大幅Wa(
図1に示す)の8%以上、より好ましくは10%以上であり、好ましくは28%以下、より好ましくは26%以下である。
【0042】
センター陸部5には、センターサイピング17と直交し、かつ、長手方向の大きさがセンターサイピング17よりも小さいクロスサイピング18が設けられる。このようなクロスサイピング18は、タイヤ周方向のエッジ成分を含み、旋回性能を向上させる。本実施形態のクロスサイピング18は、センター陸部5のタイヤ軸方向の外側の領域Soには夫々1本、センター陸部5の内側の領域Siには夫々2本配される。このようなクロスサイピング18は、センター陸部5の剛性をタイヤ軸方向に亘って均等化し、陸部片をさらに倒れ易くし、エッジ効果を高く発揮させる。センター陸部5の前記内側の領域Siは、センター陸部5のタイヤ軸方向の中間点からタイヤ軸方向の両外側に夫々センター陸部5の最大幅Waの25%以内の領域である。センター陸部5の前記外側の領域Soは、センター陸部5の前記内側の領域Siのタイヤ軸方向外側の領域である(以下、ミドルブロック6及びショルダーブロック7の場合も同様の領域の定義とする。)。
【0043】
特に限定されるものではないが、上述の作用を効果的に発揮させるため、前記内側の領域Siに設けられる2本のクロスサイピング18、18のピッチPaは、センター陸部5の最大幅Waの4〜8%が望ましい。
【0044】
ミドルブロック6は、タイヤ周方向の長さLcが、好ましくはミドルブロック列6Rの一ピッチPの85%以上、より好ましくは88%以上である。このようなミドルブロック6は、タイヤ周方向の剛性が高く確保され、駆動力・制動力が高まり、氷路性能が向上する。前記長さLcが過度に大きい場合、排水性能が悪化するおそれがある。このため、前記長さLcは、好ましくは95%以下、より好ましくは92%以下である。
【0045】
ミドルブロック6には、ショルダー主溝3Bからタイヤ赤道C側にのびミドルブロック6内で終端するミドルラグ溝20が設けられる。このようなミドルラグ溝20は、タイヤ軸方向のエッジ成分を含み、駆動力や制動力をさらに高める。
【0046】
図1に示されるように、ミドルラグ溝20は、ショルダー横溝4Bに連なる。これにより、ミドルブロック6の踏面の水膜を接地端Te側にスムーズに排出できるため、排水性能が向上する。ミドルラグ溝20とショルダー横溝4Bとが連なるとは、ショルダー横溝4Bのショルダー主溝3Bでの開口端とミドルラグ溝20のショルダー主溝3Bでの開口端とが、タイヤ周方向で重なる態様をいう。
【0047】
図2に示されるように、ミドルブロック6は、タイヤ軸方向にのびるミドルサイピング21が、5本以下で設けられる。これにより、ミドルブロック6のタイヤ周方向の剛性を確保できる。また、ミドルサイピング21のエッジ効果によって、氷路性能が向上する。このような作用を効果的に発揮させるため、ミドルサイピング21は、好ましくは2本以上、より好ましくは3本以上であり、また好ましくは4本以下である。本実施形態のミドルサイピング21は、各ミドルブロック上に4本設けられている。
【0048】
ミドルサイピング21は、本実施形態では、センター主溝3Aからタイヤ軸方向外側にのびかつミドルブロック内6で終端するセミオープンタイプの第1サイプ21aと、ショルダー主溝3Bからタイヤ赤道C側へのびかつミドルブロック6内で終端するセミオープンタイプの第2サイプ21bとからなる。そして、第1サイプ21aと第2サイプ21bとは、タイヤ周方向に交互に配される。これにより、ミドルブロック6のタイヤ周方向の剛性が均等化され、さらに操縦安定性能と氷路性能とがバランスよく向上する。なお、上述の作用をより効果的に発揮するため、ミドルサイピング21は、ミドル横溝4Aの前記角度α3と同じ角度α6で形成されるのが望ましい。
【0049】
図1に示されるように、ショルダーブロック7は、タイヤ周方向に連続してのびるショルダー細溝24が設けられる。これにより、ショルダーブロック7は、ショルダー細溝24よりもタイヤ軸方向内側に配される内側ブロック7Aと、内側ブロック7Aよりもタイヤ軸方向外側に配される外側ブロック7Bとに区分される。このようなショルダー細溝24は、タイヤ周方向に大きなエッジ効果を発揮し旋回性能を向上させる。
【0050】
ショルダー細溝24の溝幅W5が大きい場合、内側ブロック7A又は外側ブロック7Bのタイヤ軸方向の剛性が小さくなり、旋回性能が悪化するおそれがある。ショルダー細溝24の溝幅W5が小さい場合、排水性能を高めることができないおそれがある。このため、前記溝幅W5は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上であり、また好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.3mm以下である。同様の観点より、ショルダー細溝24の溝深さD5(
図3に示す)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上であり、また好ましくは9mm以下、より好ましくは8mm以下である。
【0051】
内側ブロック7A及び外側ブロック7Bには、一端がショルダー細溝24に開口し、他端が内側ブロック7A内又は外側ブロック7B内で終端するセミオープンタイプの内側ショルダーサイピング25a及び外側ショルダーサイピング25bが設けられる。これにより、さらに氷路性能が向上する。また、内側ブロック7A及び外側ブロック7Bにセミオープンタイプのサイピング25a、25bを設けることにより、旋回時に大きな横力の作用するショルダーブロック7の剛性が確保される。
【0052】
内側ショルダーサイピング25aは、例えば、ショルダー横溝4Bの傾斜部13aと同じ角度α8に配されるのが望ましい。これにより、内側ブロック7Aの剛性が高く確保される。同様の観点より、外側ショルダーサイピング25bは、例えば、タイヤ軸方向に沿ってのびるのが望ましい。
【0053】
また、ミドルブロック6及びショルダーブロック7には、ミドルサイピング21、内側ショルダーサイピング25a及び外側ショルダーサイピング25bと直交し、かつ長手方向の長さが小さいクロスサイピング26が設けられる。センター陸部5に設けられたクロスサイピング18と同様、各ブロック6、7の外側の領域には1本、内側の領域には2本のサイピングが設けられる。
【0054】
図4には他の実施形態のトレッド部2の展開図が示される。
図4に示されるように、センター陸部5、ミドルブロック6、及び、ショルダーブロック7には、ジグザグ状のサイピング27が設けられる。このようなサイピング27は、多方向にエッジ効果を発揮して、さらに雪路での走行性能を向上させ得る。
【0055】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0056】
図1の基本パターンを有するサイズ195/80R15の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの乾燥路での操縦安定性能、排水性能、及び氷路性能がテストされた。また、
図4の基本パターンを有するサイズ195/80R15の空気入りタイヤが、表2の仕様に基づき試作され、同様に、各試供タイヤの乾燥路での操縦安定性能、排水性能、及び氷路性能がテストされた。各タイヤの共通仕様は、以下の通りである。表1又は表2に記載された溝を除いて各溝の溝幅及び角度は、
図1又は
図4の通りである。
トレッド接地幅TW:162mm
<各主溝>
溝深さD1、D2:12.5mm
<横溝>
ミドル横溝の溝深さD3:9.0mm
ミドルラグ溝の溝深さ:9.0mm
ショルダー横溝の溝深さD4:7.0mm
ショルダー細溝の溝深さD5:10.5mm
<センターサイピング>
ミドルブロック列の一ピッチ内にオープンタイプのサイピングの本数:1本
セミオープンタイプのサイピングの他端と陸部縁とのタイヤ軸方向距離Lb/TW:16〜20%
<その他>
各サイピングの深さ:8.0mm
各クロスサイピングの深さ:4.0mm
テスト方法は、次の通りである。
【0057】
<乾燥路での操縦安定性能>
各試供タイヤを、下記の条件で、排気量2700ccの4輪駆動車の全輪に装着し、圧雪路のテストコースをドライバー1名乗車で走行させた。そして、このときのハンドル応答性、剛性感及びグリップ等に関する走行特性がドライバーの官能により評価された。結果は、実施例1及び実施例1Rを100とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
リム:15×6.0J
内圧:350kPa(前輪)
内圧:425kPa(後輪)
荷重:4.9kN(半積条件)
【0058】
<排水性能(ラテラル・ハイドロプレーニングテスト)>
上記テスト車両にて、半径102m、幅5mのアスファルト路面の全体に、水深10mmの水たまりを設けたコース上を、速度を60〜90km/hまで段階的に増加して走行させたときの前輪の平均横加速度(横G)が算出された。結果は、実施例1及び実施例1Rを100とする指数で表示されている。数値が大きいほど良好である。
【0059】
<氷路性能(制動力)>
上記テスト車両にて、氷路のテストコースを走行し、速度30km/hからABSブレーキをかけ、停止するまでの制動距離が計測された。結果は、実施例1及び実施例1Rの制動距離の逆数を100とする指数で表示されている。数値が大きいほど良好である。
テストの結果が表1に示される。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
テストの結果、表1及び表2ともに、実施例のタイヤは、比較例に比べて操縦安定性能、排水性能、及び氷路性能が有意に向上していることが確認できた。