(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と、該基材の片面に積層された粘着剤層とからなり、5%延伸に要する引っ張り力が5〜10N/10mmである粘着テープを半導体ウエハの外周端縁に巻装し、前記端縁から所定幅の外周領域に貼着する工程を含む半導体ウエハ加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
なお、本発明において、「外周端縁」とは、円板状の半導体ウエハの縁部を意味するものである。また、「所定幅の外周領域」とは、円板状の半導体ウエハの場合、外周端縁から円板面の内側に向かう一定の領域を意味するものである。
【0012】
1.粘着テープ
(1)基材
図1に、本発明に係る粘着テープの構成を示す。粘着テープ1は、基材2と、基材2の片面に積層された粘着剤層3と、好ましくは粘着剤層3に積層されたセパレータ4と、からなる。
【0013】
基材2の材料は、後述する引っ張り力を付与し得る限りにおいて特に限定されず、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を金属イオンで架橋したアイオノマ樹脂などを用いることができる。また、これらの樹脂の混合物あるいは共重合体を用いることもできる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸およびメタクリル酸を、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基およびメタアクリロイル基を意味するものとする。
【0014】
基材2は、上記材料からなる単層あるいは多層のフィルムあるいはシートであってよく、異なる材料からなるフィルム等を積層したものであってもよい。
【0015】
基材2の材料は、特に主として低密度ポリエチレン(LDPE)からなる樹脂が好適である。他の材料に比較して柔軟なLDPEを採用することにより、粘着テープ1が低い引っ張り力でもよく伸び、半導体ウエハの外周端縁に巻装する際に十分に引き伸ばした状態で巻装でき、かつ破断なくテープを剥離できる。
【0016】
基材2の厚さは、粘着テープ1の引っ張り力が後述する範囲となる限りにおいて特に限定されないが、5〜150μmが好ましい。基材2の厚さは、より好ましくは10〜100μmであり、特に好ましくは30〜60μmである。
【0017】
基材2の厚さが厚いと粘着テープ1を十分延伸させて隙間なく貼り付けるために要する引っ張り力が大きくなり、半導体ウエハが割れてしまう。また、基材2の厚さが薄いと粘着テープ1を半導体ウエハから剥離除去する際に、粘着テープが破断して半導体ウエハの外周端縁に残留してしまう可能性がある。
【0018】
(2)粘着剤層
粘着剤層3を形成する粘着剤は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤などを用いることができる。このうち、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0019】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルなどが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0022】
粘着剤層3を形成する粘着剤としては、紫外線または電子線などにより硬化する放射線硬化型粘着剤を用いることもできる。さらに、ダイシング・ダイボンド兼用可能な粘着剤を用いてもよい。なお、粘着剤として放射線硬化型粘着剤を用いる場合には、基材2は放射線透過性を有することが好ましい。
【0023】
放射線硬化型粘着剤は、一般には、粘着剤の主成分となるアクリル系樹脂などのベース重合体と放射線硬化成分とからなる。放射線硬化成分は、分子中にラジカル重合性二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能な単量体、オリゴマー又は重合体であれば、特に限定されない。放射線硬化成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;エステルアクリレートオリゴマー;2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート又はイソシアヌレート化合物などが挙げられる。
【0024】
放射線硬化型粘着剤には、光重合開始剤を含有させてもよい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類などが挙げられる。
【0025】
粘着剤層3を形成する粘着剤には、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの公知の添加剤を含有させてもよい。
【0026】
粘着剤層3の半導体ウエハに対する室温での初期剥離力は、1〜6N/10mmが好ましく、3〜5N/10mmがより好ましい。半導体ウエハの貼付表面はシリコン上に成膜された酸化膜やフォトレジストである場合があり、初期剥離力は粘着テープ1を酸化膜に貼り付けた直後の値が上記範囲であることが特に好ましい。
【0027】
粘着剤層3の剥離力が高すぎると粘着テープ1を半導体ウエハの外周端縁から剥離除去し難くなり、粘着テープの破断、粘着剤残留又は半導体ウエハの破損が発生しやすくなる。
【0028】
粘着剤層3の厚さは、粘着剤の種類により適宜に決定することができるが、5〜60μmが好ましい。粘着剤層3の厚さは、より好ましくは10〜50μmであり、特に好ましくは20〜40μmである。
【0029】
粘着剤層の厚さが薄いと、粘着テープ1の貼り付けあるいは半導体ウエハの加工中に、粘着テープが半導体ウエハの外周端縁から脱落する可能性がある。一方、粘着剤層の厚さが厚いと、粘着テープ1を剥離除去しにくくなる。
【0030】
粘着剤層3は、セパレータ4に塗工して基材2に転写する転写塗工、または基材2に粘着剤を直接塗工することによって形成できる。ウエハに接する粘着剤層3表面の平滑性を考慮すると転写塗工がより好ましい。また、粘着剤層3は、粘着剤からなる層の表裏がそれぞれセパレータでラミネートされた状態で入手できるものを利用することもできる。この場合には、表面または裏面の一方のセパレータを除去して粘着剤を露出し、この露出面を基材2に貼り付けることにより、粘着剤層3がセパレータ4で保護された粘着テープ1を得ることができる。
【0031】
(3)セパレータ
セパレータ4は、粘着剤層3上には剥離可能に積層される。セパレータ4は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、紙などを用いることができる。転写塗工時の耐熱性と異物抑止性の観点から、ポリエチレンテレフタレートが望ましい。
【0032】
セパレータ4の表面には粘着剤層3からの剥離性を高めるため、必要に応じて、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理が施されていてもよい。粘着剤層に安定した剥離性を付与する観点から、シリコーン処理が好ましい。セパレータの厚みは、10〜75μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0033】
(4)引っ張り力
粘着テープ1の引っ張り力は、室温にて300mm/分で引っ張り試験を行ったときの5%延伸に要する力が5〜10N/10mmに設定される。引っ張り力を上記数値範囲に設定することにより、粘着テープ1が小さい力でもよく伸びるようになる。このため、半導体ウエハを割ることなく、かつ隙間が発生しないように十分に引き伸ばして、ウエハの外周端縁に巻装できる。
【0034】
さらに、粘着テープ1は、歪み量の変化に対する応力の変化が少なく、引き伸ばした状態での応力分布が均一となることが好ましい。引き伸ばした状態での応力分布が均一であると、粘着テープ1の巻装後、引き伸ばされた粘着テープ1を被着体の外周端縁から所定幅の外周領域に貼着する際にテープにシワが発生するのを抑制できる。
【0035】
粘着テープ1の引っ張り力は、基材2の材料および厚さを適宜選択および変更することによって上記数値範囲内に設定できる。例えばポリエチレンテレフタレートなどの剛直で弾性が高い材料を基材2に用いる場合、厚さを薄くすることで引っ張り力を小さくできる。一方、アイオノマ樹脂などの軟質で弾性が低い材料を基材2に用いる場合、厚さを厚くすることで引っ張り力を大きくできる。
【0036】
(5)幅
粘着テープ1の幅は、被着体を直径6〜12インチの汎用の半導体ウエハとする場合、1〜3mmが好ましい。粘着テープ1の幅が小さいと、半導体ウエハの外周端縁からテープがはずれやすくなる。粘着テープ1の幅が大きいと、半導体ウエハの外周端縁にテープを隙間無く貼り付けることが困難になる。
【0037】
2.半導体加工方法
本発明に係る半導体ウエハ加工方法は、上述の粘着テープ1を半導体ウエハの外周端縁に巻装し、前記端縁から所定幅の外周領域に貼着する工程を含む。
図2に、本発明に係る半導体ウエハ加工方法の上記工程を示す。(A)は断面模式図であり、(B)は上面模式図である。
【0038】
まず、粘着テープ1の一端を半導体ウエハ5の外周端縁51の所定位置に貼りつけ、粘着テープ1を半導体ウエハ5の上面および下面に折り込みながら外周に沿って一周以上にわたって巻き付ける。次に、巻き始め部分と巻き終わり部分の重なりを裁断し、巻き始めと巻き終わりのテープ端同士が付き合うように加工する。
巻き始めと巻き終わりのテープ端間に隙間が生じる場合にも、該隙間は0.5mm以下となるようにすることが望ましく、0.1mm以下にすることがさらに望ましい。
【0039】
この際、粘着テープ1が小さい力でもよく伸びるため、十分に引き伸ばした状態で半導体ウエハ5の外周端縁に巻装できる。なお、粘着テープ1は一本の連続したテープとして外周端縁51に巻装されることが好ましいが、断片化された数本のテープを外周端縁51に貼り合わせて繋いで巻装してもよい。
【0040】
粘着テープ1は外周端縁51から所定幅wの外周領域(貼り付け領域)に貼着される。幅wは、半導体ウエハ5の直径6〜12インチである場合、1〜3mmとなることが好ましい。
【0041】
粘着テープ1の貼り付け領域は外周側ほど径が大きく、半導体ウエハ5の中心方向に従って径が小さくなっている。粘着テープ1は十分に引き伸ばした状態で半導体ウエハ5の上面および下面に折り込まれながらウエハ外周領域に貼着されるため、貼り付け領域のうち外周側では貼り付けられた粘着テープ1が引き伸ばされた状態を維持し、貼り付け領域のうち内周側では貼り付けられた粘着テープ1が弾性回復により適度に縮む。
このため、本発明に係る粘着テープでは、粘着テープ1では、隙間やシワを生じることなく半導体ウエハ5の外周領域に貼り付けることが可能である。
【0042】
次いで、粘着テープ1を貼着し外周端縁を保護した半導体ウエハ5の主表面52にフォトレジストの塗工、パターン形成、プラズマエッチングなどの回路形成を目的とした各種加工を行う。
【0043】
この際、外周端縁が粘着テープ1で被覆され保護されていることで、外周端縁部分が予期せず加工されるのを防止できる。例えばプラズマエッチングの工程において半導体ウエハ5の外周端縁部分の酸化膜が除去されシリコンが露出するのを防ぎ、シリコンの脱落による異物の発生や異物による工程歩留まりの低下を防止できる。
【0044】
最後に、加工終了後に、半導体ウエハ5から粘着テープ1を剥離除去する。粘着テープ4を除去する方法は、特に制限されず、周知の方法を適宜用いることができる。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
アクリル酸エステル共重合体ベースポリマーと、ポリイソシアネート硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社)をトルエン・酢酸エチルに溶解し、粘着剤を調製した。アクリル酸エステル共重合体には、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸およびアクリル酸2ヒドロキシエチルを成分とするものを用いた。
調製した粘着剤を、厚み38μmのセパレータ(E−7002、東洋紡績)に塗工し、厚み80μmのプロピレン系共重合体フィルム(サンアロマー、X500F)にラミネートして、厚み30μmの粘着剤層を有する粘着テープを得た。
【0046】
得られた粘着テープについて、JIS Z−1702に準じて引っ張り力を測定した。自動引っ張り試験機を用いて、ダンベル形状のテープサンプル(標線間長さ40mm、幅10mm)を引っ張り速度300mm/分で引っ張り、引っ張り前に対して5%延伸するのに要する力を測定した。テープサンプルは、セパレータを剥離した状態で測定に供した。なお、得られた粘着テープのシリコン酸化膜に対する粘着力は4.5N/10mmであった。
【0047】
3mm幅に裁断した粘着テープを1.2N/10mmの引っ張り力で引き伸ばしながら酸化膜を形成したウエハ(6インチ)の外周領域に貼り付けた。貼り付け後、粘着テープのしわの有無、耐熱性、剥離時の破断の有無を評価した。しわの有無は目視により確認した。耐熱性は、粘着テープを貼り付けたウエハを100℃で5分間加熱し、熱によるテープの収縮変形が生じるか否かを指標として評価した。また、粘着テープをウエハから手で剥離したときのテープの破断の有無を確認した。
【0048】
<実施例2>
基材を厚み60μmのLDPE系フィルム(トレテック7721、東レフィルム加工株式会社)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、評価を行った。
【0049】
<実施例3>
基材を厚み200μmのエチレン系アイオノマーフィルム(ハイミラン1855、三井デュポンポリケミカル株式会社)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、評価を行った。
【0050】
<比較例1>
基材を厚み80μmのエチレン系アイオノマーフィルム(ハイミラン1855、三井デュポンポリケミカル株式会社)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、評価を行った。
【0051】
<比較例2>
基材を厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(E−5107、東洋紡績株式会社)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、評価を行った。
【0052】
上記実施例1ないし3比較例1及び2に係る粘着テープについての評価結果を「表1」に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表に示されるように、実施例1〜3の粘着テープでは、しわを生じることなく貼り付けを行うことができ、かつ破断を生じることなく剥離できた。また、耐熱性も良好であった。一方、比較例1,2の粘着テープでは、剥離時の破断や貼り付け時のしわが生じ、耐熱性も不十分であった。