【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 掲載日:2011年 5月 3日以降 掲載アドレス: http://www.imc.cas.cz/sympo/isic16/index.html http://www.imc.cas.cz/sympo/isic16/schedule.html http://www.imc.cas.cz/sympo/isic16/posters.htm
【文献】
JEONG−HOON LEE et. al.、FULLERENE/POLY(METHYLPHENYLSILANE)(PMPS) ORGANIC PHOTOVOLTAIC CELLS、SYNTHETIC METALS、VOLUME 145、ISSUE 1、PAGES 11−14、2004年8月27日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
[光電変換材料]
本発明の光電変換材料(発電材料)は、ポリシランで構成されたp型有機半導体と、n型有機半導体とを含む。すなわち、このような光電変換材料は、光電変換素子の光電変換層(発電層)を形成するための材料として利用できる。
【0019】
(p型有機半導体)
p型有機半導体は、ポリシランで構成されている。ポリシランとしては、Si−Si結合を有する直鎖状、環状、分岐状、又は網目状の化合物であればよい。このようなポリシランとしては、特に限定されないが、通常、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表された構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有するポリシランであってもよい。
【0021】
(式中、R
1およびR
2は、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、有機基又はシリル基を示し、x、y及びzはそれぞれ1以上の整数を示す。)
前記式(1)及び(2)において、R
1およびR
2で表される有機基としては、例えば、炭化水素基(例えば、アルキル基、シクロアルケニル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)、これらの炭化水素基に対応するエーテル基(アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基など)などが挙げられる。通常、前記有機基は、アルキル基、アルケニル基(例えば、ビニル、アリルなどのC
2−6アルケニル基)、シクロアルキル基、シクロアルケニル基(例えば、シクロヘキセニルなどのC
5−10シクロアルケニル基)、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基であってもよく、特に、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基など)、芳香族炭化水素基(アリール基など)である場合が多い。
【0022】
代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル基などのC
1−12アルキル基(例えば、C
1−10アルキル基、好ましくはC
1−6アルキル基)が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどのC
5−10シクロアルキル基(例えば、C
5−8シクロアルキル基)などが挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチルなどのC
6−12アリール基(例えば、C
6−10アリール基、好ましくはC
6−8アリール基)などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどのC
6−12アリール−C
1−6アルキル基(例えば、C
6−10アリール−C
1−4アルキル基、好ましくはC
6−8アリール−C
1−2アルキル基)などが挙げられる。
【0023】
炭化水素基に対応するエーテル基としては、前記炭化水素基に対応するエーテル基、例えば、アルコキシ基(メトキシ基などのC
1−6アルコキシ基)、シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシなどのC
5−10シクロアルキルオキシ基)、アリールオキシ基(フェノキシなどのC
6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシなどのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基)などが挙げられる。シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基などのSi
1−10シラニル基(Si
1−6シラニル基など)などが挙げられる。
【0024】
これらのうち、R
1およびR
2は、アルキル基(例えば、メチル基などのC
1−4アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC
6−20アリール基)などの炭化水素基である場合が多い。
【0025】
代表的なポリシランとしては、例えば、前記式(1)で表される構造単位を有するポリシラン(直鎖状又は環状ポリシラン)、前記式(2)で表される構造単位を有するポリシラン(分岐鎖状又は網目状ポリシラン)、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位を組み合わせて有するポリシラン(分岐鎖状又は網目状ポリシラン)などが挙げられる。これらのポリシランにおいて、前記式(1)で表される構造単位、前記式(2)で表される構造単位は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、分岐鎖状又は網目状ポリシランは、下記式(3)で表される構造単位をさらに含んでいてもよい。
【0027】
なお、ポリシランは、有機基を有する。そのため、ポリシランは、前記式(1)および前記式(2)において、R
1及び/又はR
2が有機基(特に炭化水素基)である構造単位を少なくとも有している。
【0028】
代表的なポリシランとしては、直鎖状又は環状ポリシラン[例えば、ポリジアルキルシラン(例えば、ポリジメチルシラン、ポリメチルプロピルシラン、ポリメチルブチルシラン、ポリメチルペンチルシラン、ポリジブチルシラン、ポリジヘキシルシラン、ジメチルシラン−メチルへキシルシラン共重合体などのポリジC
1−10アルキルシラン、好ましくはポリジC
1−6アルキルシラン、さらに好ましくはポリジC
1−4アルキルシラン)、ポリアルキルアリールシラン(例えば、ポリメチルフェニルシラン、メチルフェニルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体などのポリC
1−10アルキルC
6−12アリールシラン、好ましくはポリC
1−6アルキルC
6−10アリールシラン、さらに好ましくはポリC
1−4アルキルC
6−8アリールシラン)、ポリジアリールシラン(例えば、ポリジフェニルシランなどのポリジC
6−12アリールシラン好ましくはポリジC
6−10アリールシラン、さらに好ましくはポリジC
6−8アリールシラン)、ジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体(例えば、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体などのジC
1−10アルキルシラン−C
1−10アルキルC
6−12アリールシラン共重合体、好ましくはジC
1−6アルキルシラン−C
1−6アルキルC
6−10アリールシラン共重合体、さらに好ましくはジC
1−4アルキルシラン−C
1−4アルキルC
6−8アリールシラン共重合体)などの前記式(1)において、R
1およびR
2が炭化水素基(特に、アルキル基又はアリール基)である構造単位を有する直鎖状又は環状ポリシラン]、網目状ポリシラン[例えば、ポリアルキルシリン(例えば、メチルシリン−エチルシリン共重合体などのポリC
1−10アルキルシリン、好ましくはポリC
1−6アルキルシリン、さらに好ましくはポリC
1−4アルキルシリン)、ポリアリールシリン(例えば、ポリフェニルシリンなどのポリC
6−12アリールシリン、好ましくはポリC
6−10アリールシリン、さらに好ましくはポリC
6−8アリールトシリン)、アリールシリン−アルキルシリン共重合体(例えば、メチルシリン−フェニルシリン共重合体などのC
1−10アルキルシリン−C
6−12アリールシリン共重合体、好ましくはC
1−6アルキルシリン−C
6−10アリールシリン共重合体、さらに好ましくはC
1−4アルキルシリン−C
6−8アリールシリン共重合体)、アリールシリン−アルキルアリールシラン共重合体(例えば、フェニルシリン−メチルフェニルシラン共重合体などのC
6−12アリールシリン−C
1−10アルキルC
6−12アリールシラン、好ましくはC
6−10アリールシリン−C
1−6アルキルC
6−10アリールシラン、さらに好ましくはC
6−8アリールシリン−C
1−4アルキルC
6−8アリールシラン)などの前記式(2)においてR
1が炭化水素基(特に、アルキル基又はアリール基)である構造単位を有する網目状ポリシラン]が挙げられる。なお、「シリン」とは、前記式(2)で表される分岐状構造単位の命名である。
【0029】
ポリシランは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0030】
これらのポリシランのうち、直鎖状ポリシラン、環状ポリシランが好ましい。直鎖状のポリシラン(例えば、ポリアルキルアリールシランなどのアリール基を有する直鎖状のポリシラン)は、電気伝導性やホール移動性の点で優れ、高い電流密度を得やすい。また、環状ポリシラン(例えば、環状のポリジアリールシランなど)はバンドギャップを大きくしやすく、開放電圧を大きくすることができ、良好な光電変換機能を得やすい。
【0031】
さらに、ポリジアルキルシラン、ポリアルキルアリールシラン、環状ポリジアリールシランなどは、上記の光電変換特性の他、溶媒に対する溶解性に優れ、塗布性や製膜性の観点からも好ましい。
【0032】
なお、ポリシラン(直鎖状又は網目状ポリシラン)の平均重合度は、ケイ素原子換算(すなわち、一分子あたりのケイ素原子の平均数)で、2〜1000、好ましくは5〜500、さらに好ましくは10〜300程度であってもよい。また、ポリシランが環状である場合、環状ポリシランの重合度(又は環の員数)は、通常、4〜12程度であってもよく、好ましくは4〜10、さらに好ましくは5〜10(特に5〜8)程度であってもよい。
【0033】
ポリシランが非環状構造(直鎖状、分岐鎖状、網目状)の場合、末端基(末端置換基)は、通常、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(塩素原子など)、アルキル基、アルコキシ基、シリル基などであってもよい。また、末端基は、不活性基により封鎖されていてもよい(又は封鎖基により置換されていてもよい)。このような不活性基(封鎖基)としては、シリル基、アセチル基、フッ素原子などが挙げられるが、シリル基であるのが好ましい。
【0034】
シリル基としては、全ての水素原子が炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基などの前記例示の炭化水素基)で置換されたシリル基、例えば、トリアルキルシリル基(トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリルなどのトリC
1−10アルキルシリル基、好ましくはトリC
1−6アルキルシリル基、さらに好ましくはトリC
1−4アルキルシリル基など)、トリアリールシリル基(例えば、トリフェニルシリルなどのトリC
6−10アリールシリル基)、ジアルキルアリールシリル基(例えば、ジメチルフェニルシリル、ジエチルフェニルシリル、エチルメチルフェニルシリルなどのジC
1−10アルキルC
6−10アリールシリル基、好ましくはジC
1−6アルキルC
6−8アリールシリル基、さらに好ましくはジC
1−4アルキルフェニルシリル基など)、アルキルジアリールシリル基(例えば、メチルジフェニルシリル、エチルジフェニルシリル、プロピルジフェニルシリルなどのC
1−10アルキルジC
6−10アリールシリル基、好ましくはC
1−6アルキルジC
6−8アリールシリル基、さらに好ましくはC
1−4アルキルジフェニルシリル基など)などが挙げられる。これらの不活性基は、単独で又は2種以上組み合わせてポリシランの末端を封鎖(末端基を置換)していてもよい。
【0035】
なお、ポリシランの末端基が封鎖されている場合、少なくとも一部が封鎖されていればよく、ポリシランの末端封鎖割合は、例えば、30%以上(例えば、40〜100%)、好ましくは50%以上(例えば、60〜100%)、さらに好ましくは70%以上(例えば、80〜100%)であってもよい。
【0036】
なお、環状構造のポリシランは、末端基同士が互いに結合して環を形成しているため、上記のような封鎖基による封鎖がなくても、すべての末端が封鎖されたポリシランとなる。このような末端が封鎖されたポリシランや環状ポリシランは、安定性に優れ、光電変換材料又は光電変換層の耐久性向上の観点から好適である。
【0037】
ポリシラン(直鎖状又は網目状ポリシランなど)の分子量は、重量平均分子量で200〜100000、好ましくは300〜50000、さらに好ましくは400〜30000(例えば、500〜10000)程度であってもよい。
【0038】
なお、ポリシランは、室温(例えば、15〜25℃程度)で、固体状又は液体状であってもよく、特に、固体状のポリシランを好適に使用してもよい。
【0039】
なお、ポリシランは、市販品を利用してもよく、種々の公知の方法を用いて調製してもよい。これらのポリシランを製造するには、例えば、ポリシランの構造単位に対応するケイ素含有モノマーを原料として、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類(例えば、ジハロシランなど)を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報など)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)など)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)など)、金属触媒の存在下にヒドラジン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報など)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)など)、環状シラン類の開環重合による方法などの方法が挙げられる。
【0040】
これらのうち、得られるポリシランの純度、製造コストや安全性などの工業性の点から、マグネシウムの存在下、ハロシラン類を重合させることにより得られた(すなわち、マグネシウム還元法により得られた)ポリシランを好適に使用してもよい。
【0041】
なお、p型有機半導体は、ポリシラン単独で構成してもよく、ポリシランと他のp型有機半導体(非ポリシラン系p型有機半導体)とで構成してもよい。他のp型有機半導体と組み合わせることにより、光吸収波長を拡大できる場合がある。他のp型有機半導体としては、特に限定されず、π電子系又は共役系化合物などが例示できる。代表的な他のp型有機半導体としては、例えば、非ポリマー型化合物{又は低分子化合物、例えば、ポルフィリン類[又はポルフィリン骨格を有する化合物、例えば、ポルフィリン、金属ポルフィリン(鉄ポルフィリンなど)、テトラベンゾポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、金属テトラベンゾポルフィリン(亜鉛テトラベンゾポルフィリンなど)など]、フタロシアニン類[又はフタロシアニン骨格を有する化合物、例えば、フタロシアニン、金属フタロシアニン(鉄フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、銅フタロシアニンなど)など]、金属キレート化合物[例えば、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、オキシン、アセチルアセトン、グリシン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)などの金属塩(例えば、遷移金属塩)など]、縮合多環式芳香族化合物(例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレンなど)、テトラシアノキノジメタン錯体など}、共役系高分子[例えば、ポリチオフェン類[例えば、チオフェン系モノマー(例えば、3−ヘキシルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−(4−オクチルフェニル)−2,2’−ビチオフェン、3−(4−オクチルフェニル)−チオフェンなど)の単独重合体又は共重合体]、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリビニレン類(ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレンなど)、ポリアセチレン類など]などが挙げられる。これらの他のp型有機半導体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0042】
ポリシランと他のp型有機半導体とを組み合わせる場合、これらの割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜5/95(例えば、90/10〜10/90)程度の範囲から選択でき、例えば、85/15〜15/85(例えば、80/20〜20/80)、好ましくは75/25〜25/75(例えば、70/30〜30/70)、さらに好ましくは65/35〜35/65程度であってもよい。なお、p型有機半導体全体に対するポリシランの割合は、5重量%以上(例えば、10重量%以上)、好ましくは20重量%以上(例えば、25重量%以上)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、35重量%以上)、特に40重量%以上であってもよい。
【0043】
(n型有機半導体)
n型有機半導体(n型半導体)としては、ポリシランとの組合せにおいてn型有機半導体として作用する有機半導体であれば特に限定されず、芳香族カルボン酸誘導体[例えば、ナフタレンカルボン酸誘導体(例えば、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなど)、ペリレンカルボン酸誘導体(例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミドなど)]、前記例示のポルフィリン類やフタロシアニン類のフッ化物(例えば、フッ素化フタロシアニン、フッ素化金属フタロシアニンなど)などであってもよいが、代表的には、フラーレン類、カーボンナノチューブなどの炭素系半導体を好適に使用できる。特に、n型有機半導体は、電子吸引性やポリシランとの電子状態的な適合しやすさなどの観点から、フラーレン類で構成してもよい。
【0044】
フラーレン類としては、フラーレン(例えば、C
60、C
70、C
74、C
76、C
78、C
82、C
84、C
240、C
540、C
720、C
860、ミックスドフラーレンなど)、フラーレン(前記例示のフラーレンなど)の金属内包物[例えば、周期表第1A族元素(K、Na、Rbなど)、周期表第2A族元素、ランタノイド族元素(Laなど)などの金属がドープされたフラーレンなど]、フラーレン誘導体(又はフラーレン修飾体)などが挙げられる。なお、フラーレン類の形態は、例えば、サッカーボール状、バッキーボール状などであってもよい。特に、フラーレン誘導体は、ポリシランとのバルクテロ構造を形成しやすく、また、有機溶媒に対する溶解性や電子の授受のしやすさなどの観点からも、好適に用いることができる。
【0045】
フラーレン誘導体(置換フラーレン)としては、例えば、置換基{例えば、炭化水素基[アルキル基(例えば、メチル基、t−ブチル基などのC
1−10アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC
6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基)など]、アシル基(例えば、アセチル基、ブチリルオキシ基など)、カルボキシアルキル基(例えば、カルボキシブチル基などのカルボキシC
1−10アルキル基)又はそのエステル基(例えば、メトキシカルボニルブチル基、n−ブトキシカルボニルブチル基、イソブトキシカルボニルブチル基、n−ヘキシルオキシカルボニルブチル基などのC
1−10アルコキシカルボニルC
1−10アルキル基;シクロヘキシルオキシカルボニルブチル基などのC
5−10シクロアルコキシカルボニルC
1−10アルキル基;フェノキシカルボニルブチル基、ナフチルオキシカルボニルブチル基などのC
6−10アリールオキシカルボニルブチル基など)、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、ヘテロ環基(例えば、ピロリジン環基などの窒素含有環基;ジオキソラン環基などの酸素含有環基)など}で置換されたフラーレン、液晶ポリマー、色素類、ポリエチレンオキシドなどで修飾(置換)されたフラーレンなどが挙げられる。また、置換フラーレンとして、特開2010−103204号公報に記載の化合物なども使用できる。なお、置換フラーレンにおいて、置換基は単独で又は2種以上組み合わせてフラーレンに置換していてもよい。
【0046】
代表的なフラーレン誘導体には、例えば、フェニル−C
61−酪酸メチルエステル、フェニル−C
61−ブタン酸n−ブチルエステルなどのアリール−C
61−酪酸エステル(例えば、C
6−10アリール−C
61−酪酸C
1−10アルキルエステル)などが含まれる。
【0047】
n型有機半導体(フラーレン類など)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0048】
(光電変換材料の形態)
本発明の光電変換材料では、p型有機半導体とn型有機半導体とを組み合わせればよく、光電変換層において、個別の層(p型有機半導体の層とn型有機半導体の層)を形成してもよいが、通常、同一の層を形成してもよい。すなわち、本発明の光電変換材料は、通常、ポリシランで構成されたp型有機半導体と、n型有機半導体とを含む組成物の形態であってもよい。
【0049】
このような光電変換材料(又は光電変換層)において、特に、p型有機半導体とn型有機半導体とは、バルクヘテロ接合構造を形成していてもよい(又は形成可能であってもよい)。本発明では、ポリシランとフラーレン類などのn型半導体とを組み合わせることで、効率よくバルクヘテロ構造(バルクヘテロ接合)を形成でき、そのため、光電変換機能において優れている。
【0050】
バルクヘテロ接合構造において、ポリシラン(又はp型有機半導体)およびn型有機半導体の結晶子サイズは、通常、それぞれ、ナノメータサイズ[例えば、1〜2000nm(例えば、2〜1000nm)、好ましくは3〜500nm(例えば、5〜300nm)、さらに好ましくは10〜200nm(例えば、15〜150nm)、特に20〜100nm(例えば、30〜80nm)程度]である場合が多い(すなわち、バルクヘテロ構造は、ナノ結晶混合バルクヘテロ構造である場合が多い)。なお、結晶子サイズは、X線回折におけるピークの半値幅より得ることができる。本発明では、ポリシランとn型有機半導体とを組み合わせることで、ポリシランおよびn型有機半導体が相互にナノメータサイズにまで効率よく微結晶化されて結合又は接合するため、ポリシラン(又はp型有機半導体)とn型有機半導体との光電変換境界面積を大きくでき、良好なバルクヘテロ構造を形成できる。
【0051】
光電変換材料において、p型有機半導体の割合は、n型有機半導体100重量部に対して、1〜500重量部(例えば、2〜350重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、3〜400重量部(例えば、4〜350重量部)、好ましくは5〜300重量部(例えば、8〜250重量部)、さらに好ましくは10〜200重量部(例えば、15〜170重量部)、特に20〜150重量部(例えば、25〜120重量部)程度であってもよい。
【0052】
なお、光電変換材料は、光電変換層の態様に応じて、慣用の方法により調製でき、例えば、p型有機半導体およびn型有機半導体を単一の層に含む光電変換層を形成するためには、p型有機半導体とn型有機半導体とを混合することにより得ることができる。なお、混合においては、必要に応じて、p型有機半導体およびn型有機半導体は、溶媒(例えば、後述の溶媒)に溶解又は分散させてもよい。
【0053】
[光電変換素子]
本発明の光電変換材料は、光電変換素子の光電変換層(又は発電層)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記光電変換材料で形成された光電変換層を備えた光電変換素子(光電変換デバイス)も含まれる。
【0054】
このような光電変換素子は、少なくとも光電変換層を備えていればよいが、光電池などとして用いる場合、通常、陽極と、光電変換層と、陰極とをこの順に備えている。すなわち、光電変換素子は、陽極、光電変換層、および陰極が、この順序で積層された構造を有する。なお、電極(陽極、電極)と光電変換層の間には、電荷(電子又はホール)の移動をより一層効率よく行うため、必要に応じて、バッファ層(電荷輸送層)が形成されていてもよい。
【0055】
陽極は、例えば、導電性金属(金、銀、白金、銅など)、導電性金属酸化物[例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、アンチモンドープ金属酸化物(アンチモンドープ酸化錫など)、錫ドープ金属酸化物(錫ドープ酸化インジウムなど)、アルミニウムドープ金属酸化物(アルミニウムドープ酸化亜鉛など)、ガリウムドープ金属酸化物(ガリウムドープ酸化亜鉛など)など]、炭素質材料(カーボンナノチューブなど)などの透明導電体又は半導電体(導電剤)で構成できる。陽極は、基板[例えば、透明絶縁体(ガラス、プラスチックフィルムなど)などで形成された基板(特に、ガラスなどの絶縁性透明基板)]上に形成されていてもよい。なお、陽極が基板上に形成されている場合、光電変換層は、陽極側に形成される。
【0056】
陽極の厚みは、用途などに応じて適宜選択でき、例えば、5〜10000nm(例えば、10〜5000nm)、好ましくは20〜1000nm、さらに好ましくは30〜500nm(例えば、50〜300nm)程度であってもよい。また、基板の厚みは、特に限定されず、例えば、1〜10000μm、好ましくは10〜5000μm、さらに好ましくは50〜3000μm程度であってもよい。
【0057】
陽極と光電変換層との間に設けられるバッファ層は、ホール(正孔)輸送機能を有しているのが好ましい。このようなバッファ層(正孔輸送層、ホール輸送層、ホールキャリア層)は、通常、ホール輸送剤で構成されている。ホール輸送剤としては、前記光電変換材料(又はポリシラン)との組み合わせにおいて、ホール輸送機能を有する成分であれば特に限定されず、例えば、ポリチオフェン系樹脂[例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PT)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)など]、ポリビニレン系樹脂[例えば、ポリ(P−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジオクチルオキシ−P−フェニレンビニレン)(OOPV)などのポリフェニレンビニレン系樹脂;ポリチエニレンビニレンなどのポリチエニレンビニレン系樹脂など]、ポリフェニレン系樹脂(例えば、ポリ(p−フェニレン)樹脂、ポリ(m−フェニレン)系樹脂)など]などが挙げられ、光電変換層を構成するp型有機半導体(特にポリシラン)との組合せにおいて、ホール輸送機能を有していれば、前記例示の他のp型有機半導体をホール輸送剤として使用することもできる。ホール輸送剤は、単独で又は2種以上組合せてもよい。
【0058】
なお、ホール輸送剤は、ドーパントを含んでいてもよい(又はドーパントがドープされていてもよい)。例えば、カチオン性の樹脂(PEDOTなど)は、ドーパントと組み合わせて複合体を形成してもよい。ドーパントとしては、特に限定されないが、アニオン性化合物、例えば、無機酸(例えば、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸など)、有機酸(例えば、カルボン酸、スルホン酸など)、ポリアニオン樹脂[例えば、ポリジエンスルホン酸(例えば、ポリイソプレンスルホン酸など)、ポリスルホアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリスルホエチル(メタ)アクリレートなど)、ポリ(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、これらの共重合体などの酸基(スルホン酸基など)を有する樹脂]などが挙げられる。ドーパントは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0059】
ドーパントの割合は、ホール輸送剤1モルに対して、例えば、0.1〜100モル、好ましくは0.3〜70モル、さらに好ましくは0.5〜50モル、特に1〜20モル程度であってもよい。
【0060】
なお、ホール輸送層の厚みは、例えば、1〜1000nm(例えば、2〜500nm)、好ましくは3〜300nm(例えば、3〜200nm)、さらに好ましくは4〜100nm(例えば、5〜50nm)程度であってもよく、通常3〜40nm(例えば、5〜30nm)程度であってもよい。なお、ホール輸送層の厚みが大きすぎると、電気抵抗が上昇する虞がある。
【0061】
陽極又はホール輸送層上に形成される光電変換層は、前記のように、p型有機半導体の層とn型有機半導体の層とを積層構造であってもよいが、通常、p型有機半導体およびn型有機半導体とを含む単一の層(又は前記組成物の形態の光電変換材料で形成された層)であってもよい。このようなp型有機半導体およびn型有機半導体を含む組成物により形成された光電変換層は、後述のように、p型有機半導体とn型有機半導体とを含む混合物(例えば、溶液)を塗布するなどの簡便な方法により、前記のようなバルクヘテロ接合を効率よく形成できる。
【0062】
光電変換層の厚みは、用途などに応じて適宜選択でき、10〜5000nm(例えば、12〜3000nm)程度の範囲から選択でき、例えば、15〜1000nm(例えば、20〜800nm)、好ましくは30〜500nm、さらに好ましくは50〜300nm(例えば、70〜200nm)程度であってもよい。
【0063】
なお、積層構造の光電変換層を形成する場合、p型有機半導体の層とn型有機半導体の層との厚み割合は、前者/後者=20/1〜1/20、好ましくは10/1〜1/10、さらに好ましくは5/1〜1/5程度であってもよい。
【0064】
また、ホール輸送層と光電変換層との厚み割合は、前者/後者=1/30〜1/0.1、好ましくは1/20〜1/0.5(例えば、1/15〜1/1)、さらに好ましくは1/10〜1/2程度であってもよい。
【0065】
陰極と光電変換層との間に設けられるバッファ層は、電子輸送機能を有しているのが好ましい。このようなバッファ層(電子輸送層、正孔ブロック層)は、通常、電子輸送剤で構成されている。なお、正孔ブロック層は、さらなる製造プロセスを必要とし、電気抵抗を上昇させる場合があるため、必ずしも設けなくてもよい。電子輸送剤としては、前記光電変換材料(又はn型有機半導体)との組み合わせにおいて、電子輸送機能を有する成分であれば特に限定されず、例えば、無機化合物[アルカリ金属化合物(例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウムなどのハロゲン化物など)、金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウムなど)など]の他、光電変換層を構成するn型有機半導体(フラーレン類など)との組合せにおいて、電子輸送機能を有していれば、前記例示の他のn型有機半導体を電子輸送剤として使用することもできる。電子輸送剤は、単独で又は2種以上組合せてもよい。
【0066】
なお、電子輸送層の厚みは、例えば、1〜1000nm(例えば、2〜500nm)、好ましくは3〜300nm(例えば、3〜200nm)、さらに好ましくは4〜100nm(例えば、5〜50nm)程度であってもよく、通常3〜40nm(例えば、5〜30nm)程度であってもよい。
【0067】
陰極は、特に限定されず、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウムなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、これらの酸化物、これらの合金又は混合物(ナトリウムカリウム合金、リチウムアルミニウム合金など)などで構成できる。なお、陰極は、必要に応じて、陽極と同様の基板上に形成してもよい。
【0068】
陰極の厚みは、用途などに応じて適宜選択でき、例えば、5〜10000nm(例えば、10〜5000nm)、好ましくは20〜1000nm、さらに好ましくは30〜500nm(例えば、50〜300nm)程度であってもよい。
【0069】
[光電変換素子の製造方法]
本発明の光電変換素子は、光電変換材料を用いて光電変換層を形成する工程を少なくとも経て製造できる。特に、陽極(およびバッファ層)、光電変換層、陽極と、陰極(およびバッファ層)とをこの順に備えた光電変換素子は、代表的には、陽極又はホール輸送層上に、光電変換層を形成し、さらに、形成された光電変換層上に、必要に応じて電子輸送層を形成した後、他方の電極(例えば、陰極)を形成することにより製造できる。
【0070】
ホール輸送層の形成方法は特に限定されないが、例えば、ホール輸送剤を含む塗布剤を陽極上にコーティングすることにより形成できる。なお、塗布剤は、溶媒(後述の溶媒など)を含んでいてもよく、コーティング法も慣用の方法(スピンコート法などの後述の方法)を利用できる。コーティング後、必要に応じて、乾燥処理や熱処理(後述の処理など)を行ってもよい。また、コーティングは、不活性雰囲気(例えば、窒素、アルゴンなどの希ガス雰囲気など)下でおこなってもよい。
【0071】
光電変換層は、陽極又はバッファ層(例えば、ホール輸送層)などの上に、前記のように、p型有機半導体の層とn型有機半導体の層とを順に形成してもよいが、通常、p型有機半導体およびn型有機半導体を含む層を形成する場合が多い。また、このような光電変換層は、蒸着法(真空蒸着法)などにより形成してもよいが、通常、塗布法により形成できる。代表的には、前記工程(光電変換層形成工程)では、p型有機半導体およびn型有機半導体を含む塗布剤を用いて、コーティング(塗布法)により光電変換層を形成してもよい。本発明では、このようなコーティング法によっても、前記のようなバルクヘテロ接合構造の光電変換層を効率よく形成できる。
【0072】
塗布剤は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、p型有機半導体およびn型有機半導体を分散又は溶解できる溶媒であれば特に限定されず、例えば、炭化水素類[例えば、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)など]、エーテル類(例えば、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノンなどのジアルキルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなど)、グリコールエーテル類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、グリコールエーテルエステル類(セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロアルカン、ジクロロベンゼンなどのハロアレーン)、窒素含有溶媒(N−メチルピロリドンなど)などの溶媒が使用できる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0073】
なお、溶媒を含む塗布剤において、p型有機半導体およびn型有機半導体の総量の割合は、例えば、0.1〜30重量%、好ましくは0.2〜20重量%、さらに好ましくは0.3〜15重量%(例えば、0.5〜2重量%)程度であってもよい。
【0074】
塗布法としては、特に限定されず、慣用の方法、例えば、スピンコーティング法、ディッピング法、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、インクジェット法、キャスト法などによりコーティングすることができる。なお、塗布量は、例えば、光電変換層の厚みに応じて適宜選択できる。
【0075】
塗布後の塗膜には、必要に応じて乾燥処理や加熱処理を施すことができる。乾燥処理とともに加熱処理を行ってもよい。乾燥又は加熱処理において、加熱温度は、例えば、40〜170℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃程度であってもよい。
【0076】
なお、コーティングは、不活性雰囲気(例えば、窒素、アルゴンなどの希ガス雰囲気など)下でおこなってもよい。
【0077】
電子輸送層は、前記ホール輸送層と同様の方法(塗布法など)により光電変換層上に形成できる。
【0078】
陰極は、光電変換層上又は電子輸送層上に、蒸着やスパッタリングの方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0080】
なお、実施例では、以下の成分を使用した。
【0081】
(1)p型有機半導体
環状ポリシラン(PDPS):5員環のポリジフェニルシラン(デカフェニルペンタシラン)、大阪ガスケミカル(株)製、「SI−30−10」
ジメチルポリシラン(DMPS):Strem Chemicals Inc.製
ポリメチルフェニルシラン(PMPS):大阪ガスケミカル(株)製、「SI−10−10」
銅フタロシアニン系化合物(CuPc):テトラキス(4−クミルフェノキシ)フタロシアニンの銅錯体、Sigma Aldrich Corp.製
(2)n型有機半導体
フラーレン(C
60):C
60フラーレン、Material Technologies Research Ltd.製
フラーレン誘導体(PCBM):置換フラーレン(フェニル−C
61−酪酸メチルエステル)、フロンティアカーボン(株)製
(3)ホール輸送剤
ポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)(PEDOT:PSS):Sigma Aldrich Corp.製
なお、上記成分の構造を以下に示す。
【0082】
【化3】
【0083】
【化4】
【0084】
【化5】
【0085】
【化6】
【0086】
(実施例および比較例
並びに参考例)
超音波洗浄したITO/ガラス基板(ジオマテック(株)製、厚み〜300μm、〜10Ω/□)のITO電極(陽極)上に、ホール輸送剤(PEDOT:PSS)を2重量%の割合で含む水溶液をスピンコートし、100℃で20分間熱処理し、厚み30nmのホール輸送層(バッファ層)を形成した。
【0087】
そして、表1に示す量のp型有機半導体およびn型有機半導体をジクロロベンゼン1mLに溶解して作製した混合液を、ホール輸送層にスピンコートし、窒素雰囲気下、100℃で30分間熱処理し、厚み100nmバルクヘテロ接合型の光電変換層(有機半導体層、発電層)を形成した。
【0088】
さらに、陰極としてアルミニウムを光電変換層上に厚み150nmで真空蒸着し、窒素雰囲気下、140℃で30分間熱処理し、太陽電池構造の光電変換素子を得た。なお、このような構造とすることで、光吸収により、pn接合界面で励起子が生成し、電子とホールに電荷分離して、電子はアルミニウム電極側、ホール(正孔)はITO側へ流れ、光起電力が生じる。
【0089】
そして、得られた光電変換素子の各種特性を測定した。結果を表1に示す。なお、実施例
3について、電流密度と電圧との特性を示す図を
図1に示す。
図1の結果から明らかなように、暗電流と光電流の差、およびX軸とY軸との交点の差が大きく、良好な電気特性を示していることがわかる。また、実施例
3の光電変換層について、X線回折実験を行ったところ、回折ピークの半値幅より、PDPSが51.2nm、PCBMが50.6nmの結晶子サイズを有するナノ結晶混合バルクヘテロ構造を形成していた。また、電子顕微鏡観察を行ったところ、3nmの長周期ナノバルクヘテロ構造を形成していることがわかった。
【0090】
【表1】
【0091】
これらの結果から明らかなように、本発明の実施例では、ポリシランとフラーレン類とを組み合わせることにより、従来のフタロシアニン/フラーレン系太陽電池に比べて、開放電圧や電流密度に上昇が見られるなど、光電変換特性を著しく向上できた。このような光電変換特性が向上した理由としては、ポリシランとフラーレン類とを組み合わせると、バルクヘテロ接合型薄膜内における光電変換境界面積が大きくなったこと、ポリシランのエネルギーギャップとフラーレン類のエネルギーレベルの適合性により開放電圧が上昇したこと、ポリシラン中のπ電子移動により電気伝導性が向上したことなどがその要因として考えられる。