(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る半導体装置の第1実施形態を、
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1および
図2に示すように、本半導体装置1は、熱伝導シート10と、熱伝導シート10の一方の面10a上に一端部21aが接続された複数のリード21と、リード21の一端部21aに固定された半導体チップ22と、熱伝導シート10の一部11、リード21の一端部21a、および半導体チップ22を封止するモールド樹脂23とを備えている。
【0018】
熱伝導シート10はアルミニウムにより形成され、その厚さは、例えば、300μmに設定されている。熱伝導シート10の一部11は、平坦な形状に形成されている。この例では、熱伝導シート10の表面は平坦に形成されている。熱伝導シート10の残部12の形状については、後述する。
熱伝導シート10としては、アルミニウム以外にも、銅などの熱伝導率の高い金属などを適宜用いることができる。
【0019】
本実施形態では、熱伝導シート10の一方の面10aとリード21の一端部21aとの間には、絶縁シート(絶縁膜)26および金属箔27が、熱伝導シート10側から絶縁シート26、金属箔27の順で積層されている。
絶縁シート26には、例えば、エポキシ樹脂や、フィラー入りのエポキシ樹脂を用いることができるが、絶縁シート26を薄く形成するには、ポリイミドで形成することが好ましい。絶縁シート26がポリイミドで形成されている場合には、その厚さは、例えば、25μm以上150μm以下に設定することができる。
【0020】
金属箔27は、例えば、銅箔などのような、熱伝導率の高い金属材料を薄膜状に形成したものである。金属箔27の厚さは、例えば、18μm以上300μm以下に設定される。熱伝導シート10、絶縁シート26、および金属箔27が積層される積層方向Dに見たときに、金属箔27は絶縁シート26より小さく形成されている。
リード21は、銅を帯板状に形成して構成され、その厚さは、例えば、500μmに設定されている。リード21の一端部21aは、モールド樹脂23内に埋設された状態で金属箔27に接合されている。リード21の他端部21bは、モールド樹脂23から外部に露出している。リード21における一端部21aと他端部21bとの間には、積層方向Dにおいて、熱伝導シート10の一部11に対して一端部21aより他端部21bの方が離間するように段部21cが形成されている。
なお、リード21としては、銅以外にも、アルミニウムなどの電気抵抗が少なく、かつ、熱伝導率の高い金属材料を用いることができる。
【0021】
リード21や熱伝導シート10は、一般的に、金属製のシートにプレスやエッチング加工をすることで形成される。
本実施形態の半導体装置1は、リード21を形成するリード用シート材より、熱伝導シート10を形成する熱伝導用シート材の方が、幅方向E(熱伝導シート10の一部11から残部12に向かう方向、および、積層方向Dにそれぞれ直交する方向。)の単位長さ当たりの曲げ剛性を小さく設定している。具体的には、リード用シート材と熱伝導用シート材とが同一の材料で形成されている場合には、リード用シート材の厚さより熱伝導用シート材の厚さを薄く設定する。また、リード用シート材と熱伝導用シート材との厚さが同じ場合には、リード用シート材の縦弾性係数より熱伝導用シート材の縦弾性係数の方を小さく設定する。
【0022】
シート状の材料の場合、幅方向Eの単位長さ当たりの曲げ剛性は、材料の縦弾性係数に比例するとともに、シートの厚さの3乗に比例する。縦弾性係数は、アルミニウムに対して銅が約2倍であり、厚さは、熱伝導シート10に対してリード21が、約1.7倍に設定されている。このため、幅方向Eの単位長さ当たりの曲げ剛性は、熱伝導シート10に対してリード21が、約9倍になる。
本実施形態では、互いに構成の異なるリード用シート材および熱伝導用シート材を用い、リード用シート材からリード21を、熱伝導用シート材から熱伝導シート10をそれぞれ形成することで、熱伝導シート10を曲げ加工しやすくすることができる。
【0023】
半導体チップ22は、ダイオードやトランジスタなどのように、通電することによって発熱する半導体素子である。半導体チップ22は、積層方向Dに見て矩形の板状に形成されていて、自身の外面に設けられた不図示の電極パッドにより、リード21の一端部21aと電気的に接続されている。本実施形態では、2つの半導体チップ22が用いられている。
モールド樹脂23は、積層方向Dに見たときに、絶縁シート26と同じ形状になるように形成されている。モールド樹脂23における絶縁シート26が接合された面とは反対側の面には、段部23aが形成されている。段部23aは、幅方向Eに延びるように形成されている。モールド樹脂23としては、公知のエポキシ樹脂などを用いることができる。
モールド樹脂23は、リード21の他端部21bが露出するように、熱伝導シート10の一部11、絶縁シート26、金属箔27、リード21の一端部21a、および半導体チップ22を封止している。
【0024】
熱伝導シート10の残部12は、モールド樹脂23から突出するとともに、モールド樹脂23の外面に沿って配されるように屈曲されている。具体的には、熱伝導シート10の一部11はモールド樹脂23の主面23b側に配されていて、熱伝導シート10は屈曲部14で折られることで、残部12がモールド樹脂23の側面(外面)23cに沿って配されている。さらに、熱伝導シート10は屈曲部15で折られることで、モールド樹脂23における主面23bとは反対側の面となる主面(外面)23dに沿って残部12が配されている。残部12の端部は、モールド樹脂23の段部23a近傍まで延びている。
図2に示すように、熱伝導シート10の残部12とモールド樹脂23の側面23cとの間には、隙間S1が形成されている。同様に、残部12とモールド樹脂23の主面23dとの間には、隙間S2が形成されている。
【0025】
次に、以上のように構成された半導体装置1を製造する本実施形態の半導体装置1の製造方法の一例について説明する。
本半導体装置1の製造方法は、熱伝導シート10、リード21、および半導体チップ22などを互いに接続する接続工程と、互いに接続したこれらの部品をモールド樹脂23で封止する封止工程と、熱伝導シート10の残部12を、モールド樹脂23の外面に沿って配されるように屈曲させる形状修正工程とを備えている。
【0026】
まず、接続工程において、予め互いに接合されて一体に形成された、熱伝導シート10、絶縁シート26、および金属箔からなる放熱部材を用意する。熱伝導シート10は、アルミニウム製の前述の熱伝導用シート材をプレスすることなどで形成され、この時点では平坦な形状に形成されている。熱伝導シート10は、前述のリード用シート材よりも、幅方向の単位長さ当たりの曲げ剛性が小さい材料で形成する。積層方向Dに見て、絶縁シート26および金属箔は、同一形状に形成されている。この放熱部材のうち、金属箔について、リード21の一端部21aを搭載する領域を残すようにエッチング加工を施し、金属箔27を形成する。
銅製のリード用シート材をプレスすることなどで、段部21cを有するリード21を複数形成する。
金属箔27上に不図示のハンダペーストを塗布してリード21の一端部21aを載置し、さらに、リード21の一端部21a上の所定の領域にハンダペーストを塗布して半導体チップ22を載置する。
この状態で、リフローを実施することにより、ハンダを介して、
図3に示すように、リード21の一端部21aが金属箔27に接続され、半導体チップ22がリード21の一端部21aに固定される。以上の手順により、半導体チップ22に関する電気的接続が完了する。
【0027】
続いて、封止工程において、
図4に示すように、熱伝導シート10の一部11、絶縁シート26、金属箔27、リード21の一端部21a、および半導体チップ22をモールド樹脂23で封止する。
このとき、モールド樹脂23からリード21の他端部21bが露出するとともに、モールド樹脂23から熱伝導シート10の残部12を突出させるように封止する。
【0028】
次に、形状修正工程において、熱伝導シート10の残部12を、モールド樹脂23の外面に沿って配されるように屈曲させる。具体的には、
図5に示すように、平坦な形状に形成された熱伝導シート10の残部12におけるモールド樹脂23側の面に曲げ用の治具Gを当てて折ることなどで、熱伝導シート10に屈曲部15を形成する。さらに、
図2に示すように、残部12における屈曲部15よりも一部11側に、屈曲部14を形成する。
このとき、熱伝導シート10の残部12とモールド樹脂23の側面23cとの間に隙間S1が形成され、さらに、残部12とモールド樹脂23の主面23dとの間に隙間S2が形成されるように調節する。
以上の工程により、半導体装置1が製造される。
【0029】
次に、以上のように構成された半導体装置1の動作について説明する。
複数のリード21の一部から所定の電圧波形などを入力すると、その信号は半導体チップ22で処理されて、リード21の残部から出力される。信号を処理するときに、半導体チップ22で熱が発生する。
半導体チップ22で発生した熱の一部は、リード21の一端部21a、金属箔27、および絶縁シート26を介して、熱伝導シート10の一部11に伝導される。熱伝導シート10の一部11に伝導された熱は、一部11におけるモールド樹脂23とは反対側の面、および、熱伝導シート10の残部12から外部に伝達される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置1、および半導体装置1の製造方法によれば、熱伝導シート10を、リード21を形成するリード用シート材より幅方向Eの単位長さ当たりの曲げ剛性が小さい熱伝導用シート材で形成している。このように、リード用シート材とは異なる熱伝導用シート材を用いて熱伝導シート10を形成することで、熱伝導シート10に屈曲部14、15を容易に形成することができる。
【0031】
熱伝導シート10の残部12は、モールド樹脂23の側面23cおよび主面23dに沿って配されるように屈曲されている。このため、半導体装置1の外形を小さく維持しつつ、熱伝導シート10の表面積を大きくすることで、熱伝導シート10による放熱効率を高めることができる。
モールド樹脂23の側面23cおよび主面23dと熱伝導シート10の残部12との間には、隙間S1、S2が形成されている。これにより、熱伝導シート10と外気(空気)との接触面積を増加させて、熱伝導シート10による放熱効率をさらに高めることができる。また、熱伝導シート10からモールド樹脂23に熱が伝えられるのを抑制することができる。
【0032】
熱伝導シート10を備えることで、外部の電磁気的なノイズを熱伝導シート10において遮断できるため、このノイズが半導体チップ22に到達することを抑制することができる。したがって、半導体チップ22が外部の電磁気的なノイズから受ける影響を低減させることができる。
【0033】
なお、本実施形態の半導体装置1は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
例えば、半導体装置を配置する空間の周囲に余裕がある場合には、
図6に示す半導体装置1Aのように、前記第1実施形態の半導体装置1において、屈曲部15は形成されなくてもよい。
さらに、半導体装置1Aにおいて、屈曲部14を形成せず、残部12を平坦な形状に形成してもよい。この場合、前述の半導体装置1の製造方法において、形状修正工程を行わないことになる。
【0034】
図7に示す半導体装置1Bのように、熱伝導シート10の表面に、複数の凹部31が形成されていてもよい。この例では、複数の凹部31は、熱伝導シート10の残部12の外側の表面において、幅方向Eに延びるとともに、幅方向Eおよび積層方向Dにそれぞれ直交する直交方向Fに互いに間隔を開けて形成されている。
このように半導体装置1Bを構成することで、熱伝導シート10と外気との接触面積を増加させて、熱伝導シート10による放熱効率をさらに高めることができる。
なお、本変形例の複数の凹部31は、直交方向Fに延びるとともに幅方向Eに互いに間隔を開けて形成してもよい。この場合、半導体装置1Bをリード21が鉛直方向と平行になるように基板などに取り付けたときに、複数の凹部31も鉛直方向と平行になるように配置される。半導体装置1Bで発生した熱により、半導体装置1Bの近傍には上向きに自然対流が発生する。凹部31が自然対流が流れる向きに沿って配置されることで、自然対流により生じる層流が凹部31に沿って流れやすくなり、凹部31における放熱効率を高めることができる。
また、熱伝導シート10に、凹部31に代えて凸部を形成してもよいし、凹部および凸部の両方を形成してもよい。このように構成しても、本変形例と同様の効果を奏することができる。
【0035】
図8に示す半導体装置1Cのように、熱伝導シート10の残部12に、熱伝導シート10の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔32を形成してもよい。この例では、それぞれの貫通孔32は、熱伝導シート10の厚さ方向に見て円形状に形成されている。複数の貫通孔32は、幅方向Eおよび直交方向Fに、それぞれ互いに間隔を開けて並べて配置されている。
このように半導体装置1Cを構成することで、熱伝導シート10と外気との接触面積を維持しつつ、熱伝導シート10の質量を低減させることができる。
なお、本変形例では、貫通孔32は厚さ方向に見て円形状に形成されているとした。しかし、貫通孔の形状はこれに限ることなく、厚さ方向に見て楕円形状や、多角形状に形成されていてもよい。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図9および
図10を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図9に示すように、本実施形態の半導体装置2は、前記第1実施形態の半導体装置1において、熱伝導シート10に代えて、半導体チップ22を覆うように配置された熱伝導シート40を備えている。熱伝導シート40は、熱伝導シート10の構成に加えて、一対の側部41を有している。
側部41は、
図9および
図10に示すように、熱伝導シート40の残部12に対して折られることで、モールド樹脂23の幅方向Eの両側面23fをそれぞれ覆っている。
【0037】
このように構成された本実施形態の半導体装置2によれば、熱伝導シート40を容易に曲げ加工することができる。
さらに、半導体装置2は、モールド樹脂23を覆う面積が熱伝導シート10より大きな熱伝導シート40を備えることで、半導体チップ22が外部の電磁気的なノイズから受ける影響をさらに低減させることができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11に示すように、本実施形態の半導体システム3は、前述の半導体装置1と、アルミニウムなどの金属で形成されたケース50とを備えている。
【0039】
半導体装置1において、熱伝導シート10の一部11、絶縁シート26、モールド樹脂23、および、熱伝導シート10の残部12には、互いに連通する挿通孔11a、26a、23g、12aがそれぞれ形成されている。挿通孔11a、26a、23gの内径は等しく設定され、挿通孔12aは挿通孔11aより内径が大きく設定されている。
金属箔27、リード21の一端部21aには、挿通孔27a、21eがそれぞれ形成されていて、挿通孔27a、21eは内径が等しく設定されている。挿通孔27aの内径はモールド樹脂23の挿通孔23gより大きく設定されていて、挿通孔27a、21eの内周面がモールド樹脂23から露出しないように構成されている
【0040】
熱伝導シート10の一部11および残部12の外面は、ケース50に接続されている。ケース50には、雌ネジ部51が形成されている。
挿通孔11a、26a、23gにネジ部材56の軸部57を挿通させ、ネジ部材56の頭部58をモールド樹脂23の主面23dに係止させるとともに、軸部57の雄ネジ部57aをケース50の雌ネジ部51に螺合させることで、ケース50に半導体装置1が取り付けられる。
【0041】
このように構成された本実施形態の半導体システム3によれば、半導体チップ22で発生し熱伝導シート10に伝導された熱を、熱伝導率の高いケース50を介して外部により効果的に伝達させることができる。
【0042】
以上、本発明の第1実施形態から第3実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態から第3実施形態では、熱伝導シート10の残部12はモールド樹脂23の側面23cおよび主面23dに沿って配されるように屈曲されているとした。しかし、熱伝導シート10の残部12は、モールド樹脂23の側面23cおよび主面23dに沿って配されるように湾曲されるように構成してもよい。