(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、さらなる軽量化と剛性、強度の向上のため、炭素繊維強化樹脂などの強化樹脂の使用が検討されている。この強化樹脂は、車両や飛行機の骨格だけでなく、船、建材、橋などの補強部材としての使用も期待されている。
【0006】
そこで、炭素繊維強化樹脂を金属板(鋼板やアルミニウム)で補強した一体成型部品を用いる場合、炭素繊維強化樹脂は、表面が樹脂であるため、アルミニウムのように、金属板との表面の接合面での電気化学的腐蝕は発生しないが、端部において、電気化学的腐蝕が発生する場合がある。これは、炭素繊維強化樹脂の端部が切断されたままであり、炭素繊維強化樹脂の端部から露出した炭素繊維に水分が付着することで、金属板との接触部位において自然電位に差が生じ、発生するためである。
【0007】
この端部での自然電位の差が金属板においてサビを発生させ、補強部材としての強度や剛性の特性を劣化させてしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、金属板と炭素繊維強化樹脂との一体成型部品において、金属板でのサビを防止できる一体成型部品製造方法および一体成型部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明に係る一体成型部品製造方法は、金属板と炭素繊維強化樹脂シートとの一体成型部品を製造する一体成型部品製造方法であって、凸状部を備える金属板と、炭素繊維強化樹脂シートを、炭素繊維強化樹脂シートの端部
近傍が凸状部
を覆うように重ねる工程と、凸状部に対応した型で
、炭素繊維強化樹脂シートの端部と金属板の表面とが離間するようにプレスするプレス工程とを備える。
【0010】
好適には、上記解決手段に加えて、本発明に係る一体成型部品製造方法は、
炭素繊維強化樹脂シートの端部と金属板の表面との間に離間部材を設ける。
【0011】
好適には、上記解決手段に加えて、本発明に係る一体成型部品製造方法は、離間部材を金属板側に設ける。
【0012】
好適には、上記解決手段に加えて、本発明に係る一体成型部品製造方法は、離間部材を炭素繊維強化樹脂シート側に設ける。
【0013】
好適には、上記解決手段に加えて、本発明に係る一体成型部品製造方法は、離間部材が絶縁体である。
【0014】
好適には、上記解決手段に加えて、本発明に係る一体成型部品製造方法は、離間部材をプレス工程後に取り除く離間部材除去工程を備える。
【0015】
さらに、上記解決手段に加えて、本発明に係る一体成型部品は、金属板と炭素繊維強化樹脂シートとの一体成型部品であって、炭素繊維強化樹脂シートの端部と金属板の表面とを離間して一体的に成形する。
【0016】
好適には、上記解決手段に加えて、本発明に係る一体成型部品は、金属板が、炭素繊維強化樹脂シートが重ねられる位置における炭素繊維強化樹脂シートの端部より内側の部位であって、かつ炭素繊維強化樹脂シート側へ向かって凸状部を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一体成型部品製造方法および一体成型部品によれば、自然電位の差により発生する金属板におけるサビを防止することで、補強部材としての強度や剛性の特性の劣化を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態を示している。
図1に基づいて本発明の一体成型部品について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る一体成型部品1の斜視図である。一体成型部品1は、鋼板やアルミニウム系金属などからなる金属板10と炭素繊維強化樹脂シート20とが重ね合されて一体となっている。炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tは、一体成型部品1において、金属板10の表面10Sから離間している。
【0021】
金属板10は、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tよりも内側の部位であって、かつ炭素繊維強化樹脂シート20へ向かって凸状部10Aを備えている。したがって、金属板10は、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tの部位で、炭素繊維強化樹脂シート20と接しないようになっている。
【0022】
さらに、本発明の第1実施形態に係る一体成型部品1では、金属板10が、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tよりも内側の部位であって、かつ炭素繊維強化樹脂シート20へ向かって凸状となり、その延長が金属板10の平面と同一平面に戻っている。
図2において、わかりやすく図示する。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態にかかる一体成型部品1の断面図である。金属板10と炭素繊維強化樹脂シート20が張り合わされており、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tは金属板10の表面10Sから離間している。
【0024】
金属板10が、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tよりも内側の部位であって、かつ炭素繊維強化樹脂シート20へ向かって凸状となり、その延長が金属板10の平面と同一平面に戻っている。
【0025】
なお、
図1および
図2の右側は図示を省略しているが、左側と同様に炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tが金属板10の表面10Sから離間している。
【0026】
このように、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tを金属板10の表面10Sから離間させているので、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tから露出する炭素繊維に水分が付着したとしても、金属板10との間に自然電位の差は生じず、金属板10をサビから防ぐことができる。
【0027】
また、一体成型部品1を使用する場所によっては、金属板10の表面10Sに塗装が行われていてもよいが、塗装がない場合、炭素繊維強化樹脂シート20の表面が溶解し金属板10に接着しやすいので、金属板10の表面10Sに塗装を行っていない本実施形態は接着においてより効果がある。
【0028】
続いて、本実施形態に係る一体成型部品の製造方法を
図3および
図4に基いて説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る一体成型部品製造方法を示すフローブロック図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係る一体成型部品製造方法を示すフロー図である。
【0029】
一体成型部品製造方法を実現する装置は、L字形状の下側型200と下側型200と金属板10の凸状部10Aに対応した下部が短い台形の上側型201から構成される。上側型201は、スプリングなどのプレスをするための部材が接続されている。
【0030】
図3における重ね合わせ載置工程(ステップST1)は、
図4のAに、
図3におけるプレス工程(ステップST2)は、
図4のBに、
図3における離間部材除去工程(ステップST3)は、
図4のDにそれぞれ対応する。
【0031】
まず、絶縁体からなる離間部材30を凸状部10Aの外側に備えるシート状の金属板10と炭素繊維強化樹脂シート20とを装置の下側型200に載置する。このとき、炭素繊維強化樹脂シート20を、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tが金属板10の凸状部10Aよりも外側になるように重ね、載置する(ステップST1:
図4のA)。
【0032】
炭素繊維強化樹脂シート20は金属板10よりも内側の位置で重ね合わされる。このため、炭素繊維強化樹脂シート20の面積は金属板10の面積よりも小さいことが好ましい。
【0033】
次に、プレス工程によって、下側型200と金属板10の凸状部10Aに対応した下部が短い台形の上側型201が、下側型200に対して、金属板10と炭素繊維強化樹脂シート20とをプレスする(ステップST2:
図4のB)。
【0034】
このとき、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tは離間部材30に押し付けられる状態となる。また、凸上部10Aよりも内側の部位は、上側型201の形状に沿って、下側型200に押し付けられるため、金属板10と炭素繊維強化樹脂シート20が密着する。
【0035】
このプレスにより、炭素繊維強化樹脂シート20の端部20Tが金属板10の表面から離間して一体的に形成される(
図4のC)。
【0036】
さらに、金属板10に備えられた離間部材30を除去する(ステップST3:
図4のD)。
【0037】
なお、プレス時には、必要に応じて、適宜パッドやベースを加熱することで、加工しやすくすることも可能である。
【0038】
例えば、加熱により重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化する熱硬化性樹脂を使用した場合、金属板10と炭素繊維強化樹脂シート20の重ね合わせを行い、プレス後の一体成型部品1を加熱する。この加熱は、プレス時の上側型201を加熱することで行うことも可能である。
【0039】
また、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなる熱可塑性樹脂を使用した場合、金属板10と炭素繊維強化樹脂シート20の重ね合わせを行った後のプレス時に、加熱された上側型201によって炭素繊維強化樹脂シート20側からプレスをするようにする。若しくは、下側型200を加熱しておき、金属板10を介して炭素繊維強化樹脂シート20を加熱するようにしてもよい。
【0040】
以上のような工程によって、本実施形態の一体成型部品1が製造される。
【0041】
一体成型部品1は、プレス後、不要な金属板10の一部を切断したり、またさらなる形状加工を経て使用することも可能である。
【0042】
例えば、車両のボディーや骨格、飛行機や船のボディーや骨格、建材、橋などの補強部材として使用できる。
【0043】
次に
図5により、本発明の第2実施形態に係る一体成型部品製造方法を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る一体成型部品製造方法を示すフロー図である。フローブロック図は、
図3を流用して説明する。
図3における重ね合わせ載置工程(ステップST1)は、
図5のBに、
図3におけるプレス工程(ステップST2)は、
図5のDに、
図3における離間部材除去工程(ステップST3)は、
図5のFにそれぞれ対応する。
【0044】
まず、絶縁体からなる離間部材31を備える炭素繊維強化樹脂シート21を用意する(
図5のA)。離間部材31は、炭素繊維強化樹脂シート21の端部21Tに設けられる。
【0045】
シート状の金属板11と炭素繊維強化樹脂シート21とを装置の下側型202に載置する。このとき、端部21Tに離間部材31を備えた炭素繊維強化樹脂シート21を、端部21Tが金属板11の凸状部11Aよりも外側になるように重ね、載置する(ステップST1:
図5のB)。
【0046】
炭素繊維強化樹脂シート21は金属板11よりも内側の位置で重ね合わされる。このため、炭素繊維強化樹脂シート21の面積は金属板11の面積よりも小さいことが好ましい。
【0047】
炭素繊維強化樹脂シート21が熱硬化性である場合、自重によって
図5のCのように、炭素繊維強化樹脂シート21が撓み、金属板11の表面と炭素繊維強化樹脂シート21の表面が密着する。
【0048】
次に、プレス工程によって、下側型202と、金属板11の凸状部11Aと離間部材31の形状に対応した上側型203が、下側型202に対して、金属板11と炭素繊維強化樹脂シート21とをプレスする(ステップST2:
図5のD)。
【0049】
このとき、炭素繊維強化樹脂シート21の端部21Tは離間部材31に押し付けられる状態となる。このプレスにより、炭素繊維強化樹脂シート21の端部21Tが金属板11の表面から離間して一体的に形成される(
図5のE)。
【0050】
さらに、金属板11に備えられた離間部材31を除去する(ステップST3:
図5のF)。これにより、本発明の第2実施形態に係る一体成型部品製造方法によって一体成型部品2が形成される。
【0051】
<実施形態の構成及び効果>
本実施形態における一体成型部品製造方法は、金属板10,11と炭素繊維強化樹脂シート20,21との一体成型部品1,2を製造する一体成型部品製造方法であって、凸状部10A,11Aを備える金属板10,11と炭素繊維強化樹脂シート20,21を、炭素繊維強化樹脂シート20,21の端部20T,21Tが凸状部10A,11Aよりも外側になるように重ねる工程(ステップST1:
図4のA、
図5のB)と、凸状部10Aに対応した型でプレスするプレス工程(ステップST2:
図4のB、
図5のD)とを備える。
【0052】
上記のように構成したことで、プレスと同時に、炭素繊維強化樹脂シート20,21の端部20T,21Tと金属板10,11の表面とを離間させることができる。
【0053】
本実施形態における一体成型部品製造方法は、凸状部10A,11Aの外側に離間部材30,31を設ける工程を備える。
【0054】
本実施形態における一体成型部品製造方法は、離間部材30を金属板10側に設ける。
【0055】
本実施形態における一体成型部品製造方法は、離間部材31を炭素繊維強化樹脂シート21側に設ける。
【0056】
本実施形態における一体成型部品製造方法は、離間部材30,31が絶縁体である。
【0057】
上記のように構成したことで、プレスと同時に、炭素繊維強化樹脂シート20,21の端部20T,21Tと金属板10,11の表面とを完全に離間させることができる。
【0058】
本実施形態における一体成型部品製造方法は、離間部材30,31をプレス工程後に取り除く離間部材除去工程(ステップST3:
図4のD、
図5のF)を備える。
【0059】
本実施形態における一体成型部品1,2は、金属板10,11と炭素繊維強化樹脂シート20,21との一体成型部品であって、炭素繊維強化樹脂シート20,21の端部20T,21Tと金属板10,11の表面とを離間して一体的に成形する。
【0060】
本実施形態における一体成型部品1,2は、金属板10,11が、炭素繊維強化樹脂シート20,21が重ねられる位置における炭素繊維強化樹脂シート20,21の端部20T,21Tより内側の部位であって、かつ炭素繊維強化樹脂シート20,21側へ向かって凸状部10A,11Aを備えている。
【0061】
上記のように構成したことで、炭素繊維強化樹脂シート20,21の端部20T,21Tが金属板10,11の表面に密着することを防止でき、金属板10,11のサビを防止することができる。
【0062】
<定義等>
本発明の金属板とは、鋼板やアルミニウム系金属などの板をいう。
【0063】
また、本発明で、炭素繊維強化樹脂は、熱可塑性または熱硬化性の炭素繊維強化樹脂をいう。