(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筐体の内部に、複数の電極板をその一の板面を一方向に向けて互いに間隔を空けて配列し、前記電極板同士の間に形成された電解室において原料水を電気分解し、電解生成物を発生させる複極式電解槽に用いられ、前記電極板の端縁の全周を被覆し支持して絶縁する支持体において、
前記支持体は、平板状かつ長尺の小片を複数組み合わせて枠状に形成されるものであり、
前記小片のそれぞれには、前記小片の幅方向の一端側の端面に一の前記電極板の端縁を嵌入させる嵌入溝が一条形成されており、
前記複数の小片は、それぞれの前記嵌入溝に前記電極板の端縁を嵌入させた状態で長手方向の端部同士が当接し、
前記小片の一端部は、この小片の一方の板面側が切り欠かれて薄肉部とされるとともに、この小片の他端部の他方の板面側が切り欠かれて薄肉部とされ、
前記一方の端部と他方の端部とは、これら両端部間方向に直交しかつ厚さ方向中央部を通る仮想線を軸として板面を反転させた際に互いに一致する形状に形成されていることを特徴とする支持体。
前記小片の前記幅方向の他端側に、厚さ方向に貫通し、前記原料水を前記一の板面側から前記他の板面側に又は前記他の板面側から前記一の板面側に流動させる切欠又は貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の支持体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態として示した複極式電解槽及びこの電解槽を装着させた電解水製造装置について、
図1〜
図6を参照して説明する。
図1に示すように、電解水製造装置Aは、原料水を電気分解し電解生成物を発生させる電解槽1と、電解槽1で得られた電解生成物を希釈水Wと混合させるタンク(混合部)100と、タンク100と電解槽1とを連結させるよう介装された配管101と、電解槽1の動作を制御する制御部102とを備えている。
【0013】
本発明に係る複極式電解槽(以下「電解槽」と称する)1は、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液等の塩素イオンを含有する原料水を電気分解し、電解酸化の作用により塩素ガス等の電解生成物を発生させるものであり、水等との混合部を備え次亜塩素酸水を製造する電解水製造装置に装着されるものである。以下に説明する各実施形態においては、希塩酸を原料水とし、塩素を電解生成物とする。
【0014】
図2は、電解槽1を電極板5,5の板面間方向に分解して示した斜視図である。この図に示すように、電解槽1は、略直方体形状の筐体2と、中空孔3が形成され筐体2の内部に配置された支持体4,4・・と、支持体4に支持された複数の電極板5,5・・と、を備えており、筐体2の内部に予め原料水(不図示。以下同様)が充填された状態で液密に封止されている。
筐体2は、側板6A〜6D、底板6E、天板6Fとを備え、これらは塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂により形成されている。
【0015】
側板6A〜6D及び底板6Eは、それぞれ所定の厚みを有する平面視矩形の板状体である。底板6Eの端縁上には、側板6A〜6Dが互いの端面を当接させて立設され、側板6A〜6Dの端面同士、及び、側板6A〜6Dと底板6Eが当接面で液密となるように接着固定され、中空の箱状に形成されている。
【0016】
図3は、組み立てられた状態の電解槽1の縦断面図であり、電極棒挿入孔8の中心における断面を示している。同図に示すように、側板6A,6Cには、それぞれその幅方向中央部であって高さ方向中央よりやや下方に、厚さ方向に貫通する頭部挿入段部7及び電極棒挿入孔8が形成されている。
また、側板6A,6Cの内面中央部には、直近に位置する電極板5との隙間を埋めるスペーサ9を配置するための段部10が形成されている。
【0017】
側板6B,6D(
図3において、側板6Bは省略)には、その上端縁から所定の間隔をおいた位置から鉛直下方に向けて形成された突条15,15・・が幅方向に等間隔で複数形成され、突条15,15・・同士の間に、複数の支持体4を立ち上がり姿勢で間隔を空けて保持するための係合溝16,16・・が形成されている。
側板6Bの係合溝16と側板6Dの係合溝16とは、それぞれ同数、互いに対向するように形成されている。
【0018】
図2,
図3に示すように、天板6Fは、所定の厚さ寸法を有し、平面視矩形に形成された板状体である。
天板6Fの上面には、球面形状で中実に形成された膨出部17と、膨出部17から水平方向に突出する突出部18が形成されている。
膨出部17の内部には、電解生成物をその上方に収集し導出口20に送出する導出流路19が形成されている。導出流路19は、所定の幅寸法で膨出部17内を二分割するように側面視略半円形に切り欠かれ、天板6Fの下面で開口している。この導出流路19下面の開口部は、小片4aの全ての切欠44,44・・に跨っている。
【0019】
突出部18は、膨出部17の上部から側板6B方向に延出している。
突出部18には、導出流路19と突出部18の先端外方とを連通させ、電解生成物を導き出す導出口20が形成されている。
【0020】
天板6Fの下面には、側板6A〜6Dにより形成される内部の形状に嵌合するように突出し、かつ、側板6B,6Dに形成された突条15,15・・の上端に当接する位置まで挿入される嵌入部25が形成されている。
嵌入部25の外周部分の下面には、ガスケット27が取り付けられている。
【0021】
電極板5は、チタン合金等の金属製の板体であり、略正方形に形成されている。電極板5の陽極となる一方の板面には白金(Pt)やイリジウム(Ir)などの貴金属類等がコーティングされ、陰極となる他方の板面にも、チタンからなる基材上に、PrやIr等の触媒をコーティングしたものを用いる。なお、陰極面における水素ガスの発生には、PtまたはIrは必須ではなく、陽極面と異なる触媒をコーティングしてもよい。また、基材がチタンの場合、触媒のコーティング無しでも水素ガスの発生は可能であるため、一枚の電極板5の表裏で、陰陽両面が存在する電極の最も単純な形態である、片面のみのコーティングも利用することができる。
【0022】
各電極板5・・は、所定の間隔をおいて対向する側板6A,6C間に、それぞれ板面を側板6A,6C間方向の一方向に向けて並べて配列されており、電極板5・・のうち、両端に配置される電極板5には、その中央部に金属製の電極棒28が固定されている。
【0023】
電極棒28は、一端部に頭部29が形成され、他端部外面に雄螺子部28aが形成されたものであり、頭部29が電極板5の中央部に固定されている。
前記両端に配置される電極板5と側板6A,6Cとの間の段部10には、着脱自在なスペーサ9が配置されている。また、この電極板5の他方の板面には枠状の絶縁体31が配置され、両端に位置する電極板5の端縁5Rを覆い絶縁している。枠状の絶縁体31の中空孔31aは、電極板5の板面よりも小さい矩形形状に形成され、枠状の外形は、電極板5の外形よりも大きい矩形形状に形成され、電極板5の端縁を覆っている。
【0024】
図4に示す支持体4は、塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂等の絶縁性の合成樹脂により形成され、電極板5の端縁5Rの全周を覆うとともに、電極板5をその中空孔3内に保持するものであり、
図5に示すように、4つの分割自在な小片4aの端部同士を当接させて形成されている。
【0025】
図5に示すように、一の小片4aは、略短冊状の平板部材(長尺で平板状)であり、長手方向(矢印X方向)の寸法が
図4に示す電極板5の端縁5Rの寸法よりも長く、矢印X方向の中間部35は電極板5の厚さ寸法よりも厚く形成されている(以下、この厚肉に形成された中間部を「厚肉部35」という)。
【0026】
長手方向の両端に位置する各端部36A,36Bは、
図6(a)、(b)に示すように、厚肉部35と同じ厚さ寸法を有する壁部がその厚さ方向中心を通り、前記壁部を二等分する仮想平面M上で壁部の半分が切り欠かれており、両端部36A,36B間で仮想平面Mを境に互いに異なる板面側に形成され、それぞれ薄肉部とされている(以下、各端部36A,36Bを「薄肉部36A,36B」という)。また、
図5に示すように、薄肉部36A,36Bは、それぞれ厚肉部35の端縁から、厚肉部35の幅方向の長さLと同寸法延出しており、略正方形に形成されている。
【0027】
図5、
図6に示すように、厚肉部35を形成する両平板面には、液体又は気体の流動を促進させるために、その幅方向(
図5における矢印Y方向,
図6においては紙面奥行き方向)に貫通するよう凹んだ流路37a,37b,37cが厚肉部35の延在方向Xに所定の幅寸法で形成されている。
また、小片4aの周端には、幅方向の一端側の端部を除いて、所定の幅寸法で厚さ方向中間部に向かって薄厚とされ、後述する筐体2の係合溝16にスライドして挿入され、係止される被係合壁部45が形成されている。
【0028】
厚肉部35の幅方向(矢印Y方向)の一端側の端面には、長手方向(矢印X方向)に貫通する嵌入溝38が一条形成され、矢印Y方向の他端側には、複数の切欠44が形成されている。
図6(b),(c)に示すように、嵌入溝38は、互いに対向する壁部32,33の内壁面32a,33aと、これらの内壁面32a,33aの間に垂直に形成された奥壁面34とにより形成されている。
嵌入溝38ないし厚肉部35の延在寸法は、電極板5の両端の角部K,Kが嵌入溝38から突出するように、電極板5の端縁5Rよりも短い寸法に形成され、嵌入溝38の厚さ寸法は、電極板5を略隙間なく嵌入できるよう電極板5の厚さ寸法と略同寸法に形成されている。
【0029】
図5,
図6(b)に示すように厚肉部35の両端に形成された薄肉部36A,36Bには、嵌入凹所39が形成されている。
嵌入凹所39は、各薄肉部36A,36Bの仮想平面Mを向く各内側面36a、36bに、平面視矩形で厚さ方向に電極板5の厚さ寸法の1/2寸法凹んで形成されており、2つの側面40,41と、側面40,41に囲まれた底面43とを備えている。
【0030】
嵌入凹所39の一方の側面40は、嵌入溝38の奥壁面34の延長面上に形成されており、他方の側面41は、一方の側面40に直交するとともに、嵌入溝38の延在方向に直交する方向に形成されている。また、側面40,41に囲まれた嵌入凹所39の底面43は、嵌入溝38の内壁面32a又は内壁面33aの延長面上に形成されている。両薄肉部36A,36Bに形成された嵌入凹所39は、嵌入された電極板5の角部K,Kの一方の面5a側の壁部と他方の面5b側の壁部をそれぞれ嵌合させるようになっている。
【0031】
以上の構成の下に、小片4aは、嵌入溝38と嵌入凹所39によって、電極板5の角部Kから角部Kに亘る端縁5Rを嵌入させるとともに、嵌入させた端縁5Rの延在方向に徒に相対移動しないように構成されている。
また、小片4aは、小片4aの長手方向(矢印X方向)に直交するとともに厚さ方向中心を通る仮想線F1を軸として小片4aの板面を反転させた際に、薄肉部36Aの形状と薄肉部36Bの形状とが一致するように回転対称に構成されている。
【0032】
切欠44は、嵌入溝38と反対側(幅方向(矢印Y方向)の他端側)の各流路37a,37b,37cが形成された領域に、嵌入溝38側に向かってかつ嵌入溝38と間隔をおいた位置まで入り込むように形成されているとともに、小片4aの厚さ方向に貫通している。切欠44の深さ寸法(嵌入溝38側方向への入り込み寸法)は、被係合壁部45の幅寸法をよりも大きい寸法に形成されている。
【0033】
小片4aを電極板5に装着して支持体4とするには、嵌入溝38を電極板5の端縁5Rに向けてこの各端縁5Rに順次嵌入させる。
そうすると、各小片4aは、隣り合う他の小片4aに対して直交する向きに配置され、一の小片4aの一方の薄肉部36A,36Bと、他の小片4aの他方の薄肉部36B,36Aとが重なり合い、
図6(b)に示す内側面36a,36b同士が対向する。更に嵌入凹所39同士が対向し、
図4に示すように、重ねられた薄肉部36A,36B同士の外形が合致して、全ての小片4aによって矩形の内形及び外形を形成する枠状の平板部材からなる一の支持体4となる。
【0034】
複数の小片4aが組み合わされて支持体4とされた際に、各小片4aの嵌入溝38及び嵌入凹所39は、内側に開口し電極板5を嵌入させ、その端縁5Rを被覆する一連の嵌入溝50となる。
また、支持体4の外縁は、外周方向に一連となった被係合壁部45となる。
また、切欠44は、各外縁において外側に開口する方向に向けられる。
【0035】
上記の各構成要素からなる電解槽1は、
図3に示すように、筐体2内に電極板5、支持体4を配置して組み立てられる。
すなわち、側板6Aに一番近い電極板5に固定された電極棒28を側板6Aの内面側から電極棒挿入孔8に挿通し、側板6Cに一番近い電極板5に固定された電極棒28を側板6Cの内面側から電極棒挿入孔8に挿通する。そして、各電極棒28の雄螺子部28aに管部材51、ワッシャ52、スプリングワッシャ53を介在させた状態で、ナット54を緊締する。
【0036】
側板6A,6Cの内面の段部10には、スペーサ9を配置し、電極板5の他の板面側に絶縁体31を挿入配置する。
一方、
図4、
図5に示すように電極板5の端縁5R全周に、4つの小片4aの嵌入溝38及び嵌入凹所39,39を相対的に嵌入させ、電極板5を中空孔3内に保持させておいた支持体4を複数用意しておく。そして、電極板5を保持した複数の支持体4が筐体2内に所定の間隔を空けて配置されるように、支持体4の被係合壁部45を所定の係合溝16内に挿入させる。
【0037】
そして、側板6A〜6Dに囲まれた上端開口部から電気分解される原料水を適量注入し、天板6Fを被冠させて、不図示の螺子等の固定具で天板6Fと側板6A〜6Dとを緊締し、液密に封止することで、原料水を保持した電解槽1が完成する。
【0038】
この場合、各支持体4の中空孔3は、電極板5によって略完全に閉口され、電極板5,5・・同士が間隔をおいて配列されることにより形成された空間が、原料水を電気分解する電解室Cとなり、電解室C内に原料水が保持されている。
一方、電解室C,C間は、支持体4の切欠44を介して連通し、原料水又は製造された電解生成物を自在に流動させるようになっている。
【0039】
また、支持体4の下方に水平方向に配置された小片4aの流路37a〜37c及び両側方に鉛直方向に配置された小片4a,4aの流路37a,37b,37cは、それぞれ、切欠44を介して電解室C,C間で通液された原料水を電極板5に向けて導く流路となり、支持体4の上方に水平方向に位置する小片4aに形成された流路37a,37b,37cは、電気分解で得られた電解生成物を円滑に上方に流動させる流路となっている。
【0040】
更に、上方の小片4aに形成された切欠44,44,44は、膨出部17に形成された導出流路19と連通し、導出流路19は更に導出口20に連通しているため、電解室Cにて生成された電解生成物は、導出流路19に収集された後、導出口20から導出される。
電解槽1は、導出口20においてのみ開口しており、その他の箇所においては液密に封止されている。
【0041】
次に、電解水製造装置Aの他の構成について説明する。
図1に示すように、希釈水原水を貯留するタンク100は、電解水の製造時に希釈水Wを貯留させ、電解生成物(例えば、塩素)を混合及び保持させる容器であり、タンク100の設置部100Jに着脱自在に設置されている。タンク100内には、希釈水Wと電解液とを混合し攪拌させるポンプ104が設置されている。設置部100Jの下部には、配管101を通じて電解生成物を導入する導入口103が設けられている。
なお、タンク100は、PET等の樹脂製ボトルで、電解水の製造後に設置部100Jから取り外して持ち運べるように構成されていてもよい。
【0042】
配管101は、その一端がタンク100の導入口103に着脱自在に接続され、他端が電解槽1の導出口20に固定されるものであり、硬質の樹脂管又は樹脂製のフレキシブル管が用いられている。
【0043】
制御部102は、定電流装置105、タイマー兼カウンター106及びランプ等の表示手段107を有し、電解槽1の駆動及び停止等を行うようになっている。定電流装置105及びタイマー兼カウンター106は、別々の部材を組み合わせて結線して構成してもよいが、シーケンサーやコンピュータ等にこれらの機能をまとめて一体に構成してもよい。
【0044】
次に、上記の複極式電解槽1を装着させた電解水製造装置Aによる電解液の生成について、
図3を参照して説明する。
まず、
図1に示すようにタンク100に所定量の希釈水Wを充填して設置部100Jに設置する。
そして、電源を入れ、電解槽1に一定電流値の電流(定電流)を、所定の時間通電し、原料水(希塩酸)の電気分解を行う。原料水は、予め筐体2内に所定量充填されているため、陰陽各極とされた電極棒28,28に通電することにより、電解室C内において原料水が電気分解され、この電解室C内で気体と液体の混濁した状態の、若しくは、主として気体となった電解生成物が生成される。電解生成物は、電解室C内から支持体4の流路37a,37b,37c(
図5参照)を通って導出通路19を経て導出口20に至る。電解生成物は、その後、配管101の内部を経由してタンク100内に流入し、タンク100内に設置されたポンプ104により、希釈水と混合されて電解水とされる。
【0045】
上記の動作において、筐体2内には予め原料水が充填されているが、電解室C,C間は、切欠44により連通し、原料水が電解室C,C間を流動可能となっているため、電解槽1の使用前において、各電解室C内の液面は均一になっている。
電極棒28に通電し電気分解が開始されると、各電解室Cの電気分解条件が僅かずつ異なり電気分解の速度が僅かずつ異なる結果、各電解室C間の原料水の消費速度が変わって、原料水の液面水位が異なってしまうことが考えられる。
【0046】
しかしながら、この電解槽1においては、
図2、
図3に示すように各電解室Cが支持体4の下部及び側部に位置する小片4aの複数切欠44によって互いに異なる高さで連通する構成とされている。したがって、各電解室Cの液面水位が変化しようとしても各電解室C間において原料水が流動し、常に各電解室C内における液面水位が均一に保たれやすくなる。
したがって、この点においても各電解室C内における電気分解の条件が均一化され、効率の良い電気分解がなされる。
【0047】
以上に説明したように、電解槽1によると、
図5に示すように、電極板5の端縁5Rに小片4aの嵌入溝38を相対的に嵌入させるようにするだけで、一の小片4aの一端側の薄肉部36Aと他の小片4aの他端側の薄肉部36Bとを合致させつつ、電極板5の端縁の全周を囲繞して支持体4を容易かつ確実に取り付けることができるという効果が得られる。
【0048】
また、小片4aは、その薄肉部36A,36B間に直交し、厚さ方向中心を通る仮想線F1で反転させた場合、薄肉部36Aの形状と薄肉部36Bの形状とが一致し、嵌入溝38及び切欠44の位置関係も略同一となるように構成されている。したがって、小片4aをその板面の向きに関係なく電極板5に取り付けることができるため、電極板5への取り付けが一層容易となるという効果が得られる。
【0049】
また、切欠44が、嵌入溝38と反対側の端縁に、この嵌入溝38と距離を設けて形成されているため、電極板5に電解室C,C間を連通させる開口部等の流路を設ける必要がない。したがって、電極板5に開口部を形成することにより電極板5の端縁を露出させることを防止することができ、電極板5の漏洩電流による腐食を効果的に抑制することができるという効果が得られる。
【0050】
また、この切欠44が中空孔3に連通せずかつ支持体4の外縁側に位置するように構成されているため、電極板5の端縁5Rを露出させることがなく、かつ、外縁を切り欠いて通液させるようになっているため、電解室Cに面する支持体4の板面積を極力小さくして、その分電極板5の占有面積を可及的に大きく確保することができる。したがって、電解槽1の電気分解の効率を高めることができるという効果が得られる。
【0051】
また、同形状の小片4aを電極板5に装着して支持体4とすることができるため、支持体4を製造する金型のコストを抑えて、小片4aないし支持体4の製造コストを抑制することができるという効果が得られる。また、電極板5に同形状の小片4aを四方から取り付けるため、電極板5の端縁の上下左右の向きを選ばず、簡単に電解槽1に装着させることができるという効果が得られる。
【0052】
また、筐体2の内壁に係合溝16を設けているため、電極板5を保持した支持体4の挿入位置に応じて、一電解室Cの容量を容易に設定又は変更することができるという効果が得られる。
また、被係合壁部45を支持体4の厚さよりも薄肉に形成しているとともに、被係合壁部45を係合させる係合溝16を、被係合壁部45の厚さに合わせて細かく形成することができる。したがって、一電解室Cの容量を微調整しやすいという効果が得られる。
【0053】
なお、原料水又は電解生成物が電解室C,C間を流動することを許す切欠44に代えて、嵌入溝38から離間した位置で小片4aの厚さ方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されていてもよい。
また、筐体2内に挿入配置された電極板5を備えた支持体4は、3組とされているが、挿入する電極板5及び支持体4の組数は、適宜増減することができる。
【0054】
また、筐体2は、天板6Fを固定具により固定し開閉自在に構成されているが、開閉自在とする壁部は、側板6B,6D又は底板6Eのいずれかであってもよく、側板6B,6Dを開閉自在とする場合には、係合溝16を底板6E及び天板6Fの内壁面に設ければよい。
【0055】
また、膨出部17には、導出流路19が形成されているが、電解生成物を収集して導出口20へ送出する形状としては、膨出部17の表面形状に沿って内壁面が球面形状に形成されたものであってもよい。この場合、内壁面は、全ての電解室Cに跨っているとなおよい。
膨出部17の内壁面をこのような形状とすることにより、各電解室Cにおいて製造される電解生成物を膨出部17内の上方に効率的に収集することができ、収集した電解生成物を膨出部17内の頂面19t付近で開口した導出口20に送出することができるという効果が得られる。
【0056】
また、支持体4は、
図7に示すように、長方形状の電極板5を支持することが出来るように、電極板5の短手方向に延びる端縁5Rを支持する小片60aと電極板5の長手方向に延びる端縁5Rを支持する小片60bとの二種類の小片60a,60bを備えたものであってもよい。この場合、小片60a,60bは、電極板5に沿わせる方向の寸法が異なる点を除いて上記一実施形態で示した支持体4の小片4aと同様に形成されている。
【0057】
又は、支持体4は、矩形以外の正多角形からなる不図示の電極板の端縁の全周を支持するものであってもよい。この場合、不図示の小片は、電極板の一辺沿うように直線状に形成されているとともに、隣接する他の小片と交叉する電極板の角部において薄肉に形成され、他の小片と厚さ方向に当接する点を除いて、上記一実施形態で示した支持体4の小片4aと同様に形成されている。
【0058】
また更には、支持体4は、
図8に示すように、円形の電極板5の周端縁を支持することが出来るように、支持体4を4等分して形成された小片62a,62a・・からなるものであってもよい。この場合は、小片62aが電極板5の端縁5Rに沿って円弧状に形成されている点を除いて、上記一実施形態で示した支持体4の小片4aと同様に形成されている。
なお、小片62aは、支持体4を等分して形成されていれば、4分割されたものに限定されるものではない。
また、以上の一実施形態並びに各変形例においては、支持体4の外形と中空孔3の形状とが略相似している態様を示しているが、このように支持体4の外形と中空孔3の形状とは一致している必要はない。例えば、
図4に示すような外形が矩形の支持体4において、中空孔3を円形にし、このような円形の中空孔3に
図8に示すような円形の電極板5を支持するような態様であってもよい。
【0059】
なお、上記した支持体4の変形例の支持体4を収容する筐体2の内孔(不図示)は、これらの変形例の支持体4の被係合壁部45を嵌合させて支持し得るように、支持体4の形状に合わせて形成された溝(不図示)を有するものであればよい。
【0060】
また更に、支持体4を構成する小片4a及び上記変形例60a,60b,62aは、上記実施形態で示した形状のものに限定されるものではなく、例えば、
図4に示す支持体4を、仮想線F2で分割したもの、又は
図7に示す支持体4を仮想線F3で分割したもの、又は
図8に示す支持体4を仮想線F4で分割したものであってもよい。
【0061】
なお、上記実施形態及びその変形例では、原料水が予め充填されたバッチ式の電解槽1を例示して説明したが、電解槽1は、筐体2の下部に原料水を供給する貯留槽(不図示)と連結させる配管(不図示)を接続させる供給口を形成し、連続的又は断続的に原料水を筐体2内に供給しながら電解水を製造する連続式の電解水製造装置に用いられるものであってもよい。