特許第5899100号(P5899100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5899100微細藻類の培養装置及び微細藻類の培養方法
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  • 特許5899100-微細藻類の培養装置及び微細藻類の培養方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5899100
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】微細藻類の培養装置及び微細藻類の培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20160324BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   C12M1/00 E
   C12N1/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-225963(P2012-225963)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-76016(P2014-76016A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】赤司 昭
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 潤
(72)【発明者】
【氏名】濱田 武志
【審査官】 山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−251170(JP,A)
【文献】 特表2010−530738(JP,A)
【文献】 特開平07−227269(JP,A)
【文献】 特開平02−150272(JP,A)
【文献】 特開2010−148433(JP,A)
【文献】 特開2012−187083(JP,A)
【文献】 Honda et al,Bioresource Technology,2012年 9月 7日,No. 125,p. 59-64
【文献】 Cheng et al,Separation and Purification Technology,2006年,No. 50,p. 324-329
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類に光を照射しつつ水を含む液体中で前記微細藻類を培養する培養部と、該培養部にて培養された微細藻類と前記液体とを含む微細藻類含有液を膜濾過することによって微細藻類を濃縮する濃縮部とを備え、前記濃縮部が、前記培養部にて培養される微細藻類に照射される光を遮らない位置に配されており、前記濃縮部にて濃縮された微細藻類を前記培養部へ送るように構成され
前記濃縮部が前記微細藻類含有液を収容する濃縮槽と、前記微細藻類含有液を膜濾過すべく濾過膜を含む膜ユニットとを有し、該膜ユニットが前記濃縮槽内の前記微細藻類含有液に浸漬されており、少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって前記膜ユニットを洗浄するように構成され、前記濃縮部にて前記洗浄に用いられた気体を前記培養部の前記液体に供給するように構成されている、微細藻類の培養装置。
【請求項2】
微細藻類に光を照射しつつ水を含む液体中で前記微細藻類を培養する培養部と、該培養部にて培養された微細藻類と前記液体とを含む微細藻類含有液を膜濾過することによって微細藻類を濃縮する濃縮部とを備え、前記濃縮部が、前記培養部にて培養される微細藻類に照射される光を遮らない位置に配された微細藻類の培養装置を用いて、前記濃縮部にて濃縮された微細藻類を前記培養部へ送る微細藻類の培養方法であって、
前記微細藻類の培養装置の前記濃縮部が、前記微細藻類含有液を収容する濃縮槽と、前記微細藻類含有液を膜濾過すべく濾過膜を含む膜ユニットとを有し、該膜ユニットを前記濃縮槽内の前記微細藻類含有液に浸漬させ、
少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって前記膜ユニットを洗浄し、前記濃縮部にて前記洗浄に用いられた気体を前記培養部の前記液体に供給する、微細藻類の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の培養装置及び微細藻類の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細藻類の培養装置としては、様々なものが知られており、例えば、水を含む液体と微細藻類とを収容する培養槽内において微細藻類に光を照射して光合成をさせつつ微細藻類を培養するように構成されたものが知られている。
【0003】
この種の微細藻類の培養装置としては、例えば、培養槽内に平膜や中空糸膜などの濾過膜が配され、該濾過膜の膜濾過によって培養槽内の微細藻類を濃縮するように構成されたものが知られている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
斯かる微細藻類の培養装置によれば、培養槽内において微細藻類の濃度を高め微細藻類を濃縮することができる。そして、濃縮された微細藻類からさらに液体分を除去すること等により、微細藻類が燃料などの用途に利用され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】本多 了ら、第45回日本水環境学会要旨集 1-J-15-4、「膜分離フォトバイオリアクターを用いた藻類濃縮培養による下水処理水からのバイオマス生産・二酸化炭素固定プロセスの開発」、平成23年3月18日、p.233
【非特許文献2】本多 了、“下水処理水を利用した二酸化炭素回収・エネルギー生産プロセスの開発”、金沢大学ホームページ内、インターネット(URL:http://www.ce.t.kanazawa-u.ac.jp/~honda/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、斯かる微細藻類の培養装置は、培養槽内に配されている濾過膜が微細藻類の光合成に必要な光を遮ることから、光が遮られる分、微細藻類の光合成を十分に促すことができず、従って、微細藻類の増殖を必ずしも十分に促すことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点等に鑑み、微細藻類の増殖を十分に促すことができる微細藻類の培養装置を提供することを課題とする。また、微細藻類の増殖を十分に促すことができる微細藻類の培養方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る微細藻類の培養装置は、微細藻類に光を照射しつつ水を含む液体中で前記微細藻類を培養する培養部と、該培養部にて培養された微細藻類と前記液体とを含む微細藻類含有液を膜濾過することによって微細藻類を濃縮する濃縮部とを備え、前記濃縮部が、前記培養部にて培養される微細藻類に照射される光を遮らない位置に配されており、前記濃縮部にて濃縮された微細藻類を前記培養部へ送るように構成され
前記濃縮部が前記微細藻類含有液を収容する濃縮槽と、前記微細藻類含有液を膜濾過すべく濾過膜を含む膜ユニットとを有し、該膜ユニットが前記濃縮槽内の前記微細藻類含有液に浸漬されており、少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって前記膜ユニットを洗浄するように構成され、前記濃縮部にて前記洗浄に用いられた気体を前記培養部の前記液体に供給するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成からなる微細藻類の培養装置においては、前記濃縮部が、前記培養部にて培養される微細藻類に照射される光を遮らない位置に配されているため、濃縮部によって光が遮られないことから、前記培養部にて培養される微細藻類の光合成を十分に促すことができ、従って、微細藻類の増殖を十分に促すことができる。
また、微細藻類の培養装置は、前記濃縮部にて濃縮された微細藻類を前記培養部へ送るように構成されているため、前記培養部にて培養される微細藻類の濃度を高めることができる。従って、液体中において微細藻類の濃度が高まった分、微細藻類の増殖の方が、雑菌の増殖よりも優位となり、微細藻類の増殖が促される。
【0010】
本発明に係る微細藻類の培養装置においては、上述のごとく、前記濃縮部が前記微細藻類含有液を収容する濃縮槽と、前記微細藻類含有液を膜濾過すべく濾過膜を含む膜ユニットとを有し、該膜ユニットが前記濃縮槽内の前記微細藻類含有液に浸漬されており、少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって前記膜ユニットを洗浄するように構成され、前記濃縮部にて前記洗浄に用いられた気体を前記培養部の前記液体に供給するように構成されている
斯かる構成により、前記微細藻類の培養装置においては、前記濃縮部において前記微細藻類含有液に浸漬された膜ユニットが気体によって洗浄されるため、膜ユニットの表面に付着した汚れが除去される。従って、膜ユニットの詰まりが抑制され膜ユニットによる膜濾過がより確実に行われるため、より十分に微細藻類を濃縮することができるという利点がある。
しかも、斯かる構成により、前記微細藻類の培養装置においては、前記洗浄に用いられた二酸化炭素を含む気体を前記培養部の前記液体に供給するため、培養部にて培養される微細藻類へ光合成に必要な二酸化炭素を供給できる。従って、膜ユニットを洗浄するための気体を濃縮部に供給すれば、微細藻類の光合成のためにのみ用いる二酸化炭素を培養部に供給しなくとも、培養部における微細藻類の光合成を促すことができ、培養部における微細藻類の増殖を促すことができる。
【0011】
本発明に係る微細藻類の培養方法は、微細藻類に光を照射しつつ水を含む液体中で前記微細藻類を培養する培養部と、該培養部にて培養された微細藻類と前記液体とを含む微細藻類含有液を膜濾過することによって微細藻類を濃縮する濃縮部とを備え、前記濃縮部が、前記培養部にて培養される微細藻類に照射される光を遮らない位置に配された微細藻類の培養装置を用いて、前記濃縮部にて濃縮された微細藻類を前記培養部へ送る微細藻類の培養方法であって、
前記微細藻類の培養装置の前記濃縮部が、前記微細藻類含有液を収容する濃縮槽と、前記微細藻類含有液を膜濾過すべく濾過膜を含む膜ユニットとを有し、該膜ユニットを前記濃縮槽内の前記微細藻類含有液に浸漬させ、
少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって前記膜ユニットを洗浄し、前記濃縮部にて前記洗浄に用いられた気体を前記培養部の前記液体に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の微細藻類の培養装置及び培養方法は、上述したように、微細藻類の増殖を十分に促すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】微細藻類の培養装置の概要を表した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る微細藻類の培養装置の一実施形態について、図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0016】
本実施形態の微細藻類の培養装置10は、図1に示すように、微細藻類に光Bを照射しつつ水を含む液体A中で前記微細藻類を培養する培養部1と、該培養部1にて培養された微細藻類と前記液体とを含む微細藻類含有液を膜濾過することによって微細藻類を濃縮する濃縮部2とを備え、前記濃縮部2が、前記培養部1にて培養される微細藻類に照射される光Bを遮らない位置に配されており、前記濃縮部2にて濃縮された微細藻類を前記培養部1へ送るように構成されているものである。
【0017】
本実施形態の微細藻類の培養装置10は、前記濃縮部2が前記微細藻類含有液を収容する濃縮槽2aと、前記微細藻類含有液を膜濾過すべく濾過膜を含む膜ユニット2bとを有している。また、該膜ユニット2bが前記濃縮槽2a内の前記微細藻類含有液に浸漬されている。
そして、本実施形態の微細藻類の培養装置10は、少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって前記膜ユニット2bを洗浄するように構成され、前記濃縮部2にて前記洗浄に用いられた気体を前記培養部1の前記液体に供給するように構成されている。
【0018】
さらに、本実施形態の微細藻類の培養装置10は、図1に示すように、水と微細藻類の培養成分とを混合する培養成分混合タンク3を備え、該培養成分混合タンク3にて混合した培養成分と水とを前記培養部1に送るように構成されている。
【0019】
また、本実施形態の微細藻類の培養装置10は、図1に示すように、濃縮部2において濃縮された微細藻類に嫌気的処理を施す嫌気処理部6をさらに備えている。
【0020】
前記液体Aは、少なくとも水を含むものである。また、前記液体Aは、通常、微細藻類の増殖を促す様々な培養成分をさらに含んでいる。
【0021】
前記培養成分としては、有機培養成分、又は、無機培養成分などが挙げられる。
前記有機培養成分としては、例えば、糖分、アミノ酸、エタノール、ビタミンなどが挙げられる。
前記無機培養成分としては、例えば、窒素(N)を含む窒素含有無機化合物、リン(P)を含むリン含有無機化合物などが挙げられる。また、前記無機栄養素としては、例えば、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、銅イオン、モリブデンイオン、ニッケルイオンなどが挙げられる。
【0022】
前記培養成分混合タンク3は、混合用撹拌機3aを有し、水と微細藻類の培養成分とを混合用撹拌機3aによって混合するように構成されている。また、前記培養成分混合タンク3は、混合することにより得られた培養成分を含む水溶液を培養部1へ送るように構成されている。
【0023】
前記培養成分混合タンク3によれば、培養部1の培養槽1aに収容される液体Aが適当量の水、及び、適当量の上述した培養成分を含むように、水及び培養成分を培養槽1a内へ供給することができる。
【0024】
前記培養部1は、微細藻類と該微細藻類を培養するための液体Aとを収容する培養槽1aを有している。そして、前記培養部1は、培養成分混合タンク3を経て送られてきた培養成分を含む水溶液を培養槽1a内に取り入れ、培養槽1aにおいて、液体A中で微細藻類を培養するように構成されている。また、前記培養部1は、培養槽1aにおいて培養した微細藻類と液体Aとを含む微細藻類含有液を濃縮部2へ送るように構成されている。
【0025】
前記培養部1は、微細藻類に光合成をさせるために、培養槽1aの上方から光Bを照射する照明機器1bを有している。
前記培養部1は、例えば図1に示すように、前記培養槽1aに収容する液体A中の微細藻類に照明機器1bからの光Bが照射されるように構成されている。
【0026】
前記培養槽1aは、培養槽1aの内部に収容する微細藻類の光合成を促進させるべく、上方から照射される光Bが液体Aを透過して底部にまで届くように、比較的深さが浅く形成されている。
【0027】
具体的には、前記培養槽1aは、例えば、液体Aの深さが20cm〜50cmとなるように形成されている。
前記培養槽1aとしては、例えば、開放系の培養槽、又は、閉鎖系の培養槽(フォトバイオリアクター)などが挙げられる。
【0028】
前記開放系の培養槽としては、例えば、レースウェイ型のもの、円形型のものなどが挙げられる。該開放系の培養槽は、建設費が比較的安いという利点を有する。また、開放系の培養槽は、通常、深さが比較的浅いため、比較的広大な設置面積を必要とする。
【0029】
前記閉鎖系の培養槽(フォトバイオリアクター)としては、例えば、平板型のもの、チューブ型のもの、太陽光集光・光転送・内部照射型のもの、完全人工光利用型のものなどが挙げられる。該閉鎖系の培養槽は、液体Aの温度、又は槽内への異物混入(コンタミネーション)の制御などが比較的容易にできるものである。なお、内部に濾過膜を配置するための空間がないチューブ型等の培養槽(フォトバイオリアクター)が閉鎖系の培養槽として採用されても、本実施形態の微細藻類の培養装置10は、通常、該培養槽(フォトバイオリアクター)にて効率的に微細藻類を増殖させることができ、また、チューブ型等の培養槽(フォトバイオリアクター)の外部に配された前記濃縮部2にて、微細藻類を効率的に濃縮することができる。
【0030】
前記培養槽1aとしては、微細藻類から得られる産物、設置する場所の条件、培養する微細藻類の種類などに応じて、適宜、最適なものが採用される。
【0031】
前記培養部1は、微細藻類に光Bを照射しつつ微細藻類を増殖させるように構成されている。即ち、前記培養部1は、明るい条件下にて微細藻類を増殖させることができるように構成されている。
前記培養部1において微細藻類に光Bを照射することにより、微細藻類は、光合成によって二酸化炭素を細胞内に取り込んで炭化水素や糖類などを合成しつつ増殖し得る(光独立栄養培養)。また、微細藻類は、光合成しつつ液体A中の成分(例えば、上述した有機培養成分等)を栄養成分として利用しつつ増殖し得る(光従属栄養培養)。
【0032】
なお、前記培養部1は、照明機器1bによって光Bを微細藻類に照射する代わりに、例えば、太陽からの自然光を微細藻類に照射するように構成されていてもよい。
【0033】
前記照明機器1bによって照射される光B又は自然光は、光の強度が特に限定されるものではないが、50μmol/m2/s〜200μmol/m2/sの強度であることが好ましい。
光の強度が50μmol/m2/s以上であることにより、光合成をより促すことができるという利点がある。また、光の強度が200μmol/m2/s以下であることにより、光による増殖阻害をより確実に抑制できるという利点がある。
【0034】
前記培養部1は、微細藻類に光Bを照射する期間と、光Bを照射しない期間とを交互に設けることにより、培養槽1a内の液体A中で微細藻類を増殖させるように構成されていてもよい。
即ち、前記培養部1は、微細藻類に光Bを照射して光合成を行わせつつ微細藻類を増殖させる期間と、暗条件下にて微細藻類を増殖させる期間とを繰り返し交互に設けるように構成されていてもよい。
前記培養部1において微細藻類に光Bを照射する期間は、通常、日光が出ている昼の時間に相当する8時間〜15時間である。また、微細藻類に光合成を行わせない暗条件の期間は、通常、日光が出ていない夜の時間に相当する9時間〜16時間である。これらの期間は、状況や目的に応じて変化させることができる。
【0035】
前記培養部1は、培養槽1aにおける培養温度が、例えば、20℃〜35℃に制御されるように構成されている。
前記培養部1における液体AのpHは、微細藻類が増殖できるpHであれば、特に限定されない。該pHとしては、ユーグレナ(Euglena)属生物を培養する場合には、例えば、3.0〜5.5が採用される。
【0036】
前記培養部1は、液体AのpHを調整すべく、塩酸のような無機酸を液体Aに添加するように構成されていてもよく、酢酸のような有機酸を液体Aに添加するように構成されていてもよい。有機酸を液体Aに添加することにより、微細藻類が該有機酸を炭素源として利用し増殖することができる。
なお、前記培養部1は、無機酸及び有機酸の両方を液体Aに添加するように構成されていてもよい。
【0037】
前記培養部1は、図1に示すように、二酸化炭素を含む気体によって培養槽1a中の液体Aを曝気するための曝気管1cを有している。
【0038】
前記曝気管1cは、培養槽1aの底部に配されており、二酸化炭素を含む気体を培養槽1aの底部側から液体A中へ気泡状に供給するように構成されている。
【0039】
二酸化炭素を含む気体としては、例えば、空気、排気ガス、炭酸ガス、又は、これらの混合ガス等が挙げられる。
【0040】
前記培養部1によれば、例えば、二酸化炭素を含む気体として二酸化炭素を比較的多く含む排気ガスを採用し、該排気ガスを曝気管1cを経由させて培養槽1a内の液体Aに供給することにより、液体Aを曝気しつつ、微細藻類に光合成を行わせることができる。
【0041】
また、前記培養部1によれば、例えば、前記気体として空気を採用し、曝気管1cを経由させて液体A中に該空気を供給することにより、液体Aを曝気しつつ、培養槽1a内の微細藻類に呼吸用の酸素を供給することができる。
また、前記培養部1によれば、曝気管1cからの曝気を止めることにより、液体Aを嫌気条件下におくこともできる。
前記培養部1は、微細藻類を培養しつつ曝気管1cによって液体Aを常時曝気するように構成されていてもよく、上述した光Bを照射しない期間においてのみ液体Aを曝気するように構成されていてもよい。
【0042】
なお、前記培養部1は、微細藻類と液体Aとを槽内にて撹拌する撹拌装置(図示せず)を有していてもよい。
【0043】
前記微細藻類は、昆布やワカメと異なり、通常、単細胞性である。また、通常、大きさが概ね数マイクロメートルから数十マイクロメートルの微小な藻類である。
【0044】
前記微細藻類としては、ユーグレナ(Euglena)属に属する生物、クロレラ(Chlorella)属に属する生物、オーキセノクロレラ(Auxenochlorella)属に属する生物、ボツリオコッカス(Botryococcus)属に属する生物、ナンノクロリス(Nannochloris)属に属する生物、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する生物、ネオクロリス(Neochloris)属に属する生物、シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)属に属する生物、セネデスムス(Scenedesmus)属に属する生物からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
【0045】
前記ユーグレナ(Euglena)属に属する生物としては、例えば、Euglena gracilisEuglena longaEuglena caudataEuglena oxyurisEuglena tripterisEuglena proximaEuglena viridisEuglena sociabilisEuglena ehrenbergiiEuglena desesEuglena pisciformisEuglena spirogyraEuglena acusEuglena geniculataEuglena intermediaEuglena mutabilisEuglena sanguineaEuglena stellataEuglena terricolaEuglena klebsiEuglena rubra、又は、Euglena cyclopicolaなどが挙げられる。
【0046】
前記クロレラ(Chlorella)属に属する生物としては、例えば、Chlorella vulgarisChlorella pyrenoidosa、又は、Chlorella sorocinianaなどが挙げられる。
【0047】
前記オーキセノクロレラ(Auxenochlorella)属に属する生物としては、例えば、Auxenochlorella protothecoidesなどが挙げられる。
【0048】
前記ボツリオコッカス(Botryococcus)属に属する生物としては、例えば、Botryococcus brauniiなどが挙げられる。
【0049】
前記ナンノクロリス(Nannochloris)属に属する生物としては、例えば、Nannochloris bacillarisNannochloris normandinaeなどが挙げられる。
【0050】
前記ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する生物としては、例えば、Nannochloropsis oculataなどが挙げられる。
【0051】
前記ネオクロリス(Neochloris)属に属する生物としては、例えば、Neochloris aquaticaNeochloris cohaerensNeochloris conjunctaNeochloris gelatinosaNeochloris pseudostigmataNeochloris pseudostigmaticaNeochloris pyrenoidosaNeochloris terrestrisNeochloris texensisNeochloris vigensisNeochloris wimmeriNeochloris oleoabundansなどが挙げられる。
【0052】
前記シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)属に属する生物としては、例えば、Pseudochoricystis ellipsoideaなどが挙げられる。
【0053】
前記セネデスムス(Scenedesmus)属に属する生物としては、例えば、Scenedesmus ovaltermusScenedesmus disciformisScenedesmus acumunatusScenedesmus dimorphusなどが挙げられる。
【0054】
上記の微細藻類は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)、独立行政法人国立環境研究所微生物系統保存施設(郵便番号305-8506 茨城県つくば市小野川16-2)、又は、The Culture Collection of Algae at the University of Texas at Austin, USA(http://web.biosci.utexas.edu/utex/default.aspx)などから容易に入手される。
【0055】
前記微細藻類としては、バイオディーゼルの原料となるトリグリセリドを大量に蓄積できるという点、食物繊維、ビタミン、カロテノイド、タンパク質、リノール酸、リノレン酸などの有価物を多く含んでいるという点、大量に培養しやすいという点で、前記クロレラ(Chlorella)属に属する生物が好ましい。
また、前記微細藻類としては、バイオディーゼルの原料となるワックスエステルを大量に蓄積できるという点、ビタミン、カロテノイド、栄養価の高いタンパク質、パラミロンなどの有価物を多く含んでいるという点、大量に培養しやすいという点で、前記ユーグレナ(Euglena)属に属する生物が好ましい。
【0056】
前記濃縮部2は、図1に示すように、前記培養部1にて培養された微細藻類と液体Aとを含む微細藻類含有液を濃縮すべく該微細藻類含有液を収容する濃縮槽2aと、微細藻類含有液を膜濾過する濾過膜を含む膜ユニット2bとを有している。膜ユニット2bは、微細藻類含有液に浸かるように濃縮槽2a内に配されている。
そして、前記濃縮部2は、微細藻類含有液を膜ユニット2bの濾過膜によって膜濾過することにより、濾過膜を透過した透過水を得るように構成されている。また、前記濃縮部2は、透過水を得つつ濃縮槽2a内にて微細藻類の濃度を高め微細藻類を濃縮するように構成されている。
さらに、前記濃縮部2は、濃縮した微細藻類を培養部1の培養槽1aへ送るように構成されている。また、前記濃縮部2は、濃縮した微細藻類を前記嫌気処理部6へ送るように構成されてもいる。
【0057】
本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、図1に示すように、前記濃縮部2が、前記培養部1にて培養される微細藻類に照射される光を遮らない位置に配されている。即ち、前記濃縮部2が、前記培養部1にて培養される微細藻類に照射される光を遮らないように、培養槽1aに貯留された液体Aの外に配されている。
具体的には、本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、前記濃縮部2が、前記培養槽1aにおける底部と、照射される光の光源との間に位置しないように配されている。より具体的には、前記濃縮部2は、例えば、前記培養槽1aの横、下方、又は、照明機器1bの上方などに配されている。
従って、本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、濃縮部2によって光が遮られない分、前記培養部1にて培養される微細藻類の光合成が促される。
【0058】
また、本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、前記濃縮部2により前記微細藻類含有液を膜濾過することによって微細藻類の濃度を高めることができる。即ち、前記濃縮部2によって、前記培養部1にて培養された微細藻類と前記液体とを含む微細藻類含有液を膜濾過するため、濾過膜を透過した透過水を得ることができる。そして、透過水を得る分、水分を減らすことができるため、濃縮部2の濃縮槽2a内の微細藻類の濃度を高めることができ、十分に微細藻類を濃縮することができる。
【0059】
前記微細藻類の培養装置10は、少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって濃縮部2の膜ユニット2bを洗浄するように構成されている。
前記気体としては、例えば、空気、排気ガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガス等が挙げられる。
【0060】
前記濃縮部2は、例えば図1に示すように、前記気体を前記濃縮槽2aに供給する散気管2cを有している。
前記散気管2cは、濃縮槽2aの底部に配されており、微細藻類含有液中へ、二酸化炭素を含む気体としての排気ガス等を濃縮槽2aの底部側から気泡状に供給するように構成されている。
【0061】
そして、前記微細藻類の培養装置10は、濃縮部2の濃縮槽2a内部に微細藻類含有液を収容し、散気管2cから供給される気体を散気することにより、膜ユニット2bの表面を洗浄するように構成されている。
本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、膜ユニット2bの表面が散気管2cから供給される気体の散気によって洗浄されるため、膜ユニット2bの表面に付着した汚れが除去される。従って、膜ユニット2bの詰まりが抑制され膜ユニット2bによる膜濾過がより確実に行われることから、より十分に微細藻類を濃縮することができる。
本実施形態の微細藻類の培養装置10は、濃縮槽2a内部の微細藻類に光が照射されるように構成されていてもよい。これにより、濃縮部2において微細藻類を濃縮しつつ微細藻類を増殖させることもできる。
【0062】
前記膜ユニット2bは、濾過膜を有している。また、前記膜ユニット2bは、前記微細藻類含有液に浸かるように濃縮槽2a内に配されている。そして、前記膜ユニット2bは、前記微細藻類含有液を膜濾過して濾過膜を透過した透過水を得るように構成されている。
なお、前記膜ユニット2bは、図1に示すように、通常、外側において微細藻類と接するように、微細藻類と液体Aとを含む微細藻類含有液中に浸漬されている。また、前記膜ユニット2bは、通常、内側を陰圧にすることにより外側から内側へ向けて膜濾過を行い、濾過膜を透過した透過水を取り出すように構成されている。
【0063】
前記濾過膜には、通常、微細藻類が透過できない大きさの孔が形成されている。
前記濾過膜としては、濾過によってより確実に微細藻類の濃度を高めることができ、しかも、細菌等の雑菌を透過させることができるという点で、精密濾過膜(MF膜)が好ましい。
前記精密濾過膜(MF膜)の孔径は、通常、0.01〜10μmである。斯かる範囲の孔径が形成された濾過膜においては、濃縮槽2a内にて微細藻類と共存している細菌等の雑菌を透過させることができる。即ち、濾過膜を透過した透過水中に雑菌が含まれ得る。従って、濾過膜を雑菌が透過する分、微細藻類含有液中における雑菌が減少することとなる。
本実施形態の微細藻類の培養装置10は、濃縮した微細藻類を培養部1の培養槽1aへ送るように構成されているため、濾過膜の孔径が雑菌を透過させない小さいものであると、送られる微細藻類とともに濾過膜を透過しなかった雑菌が培養槽1aへ送られ得る。そして、この雑菌は、培養槽1aにおける微細藻類の増殖を抑制し得る。このような雑菌を減らすべく、前記精密濾過膜(MF膜)の孔径は、雑菌がより確実に濾過膜を透過できるように、0.45μmを超える孔径(最小孔径が0.45μmを超える)であることが好ましい。
【0064】
前記濾過膜の形状としては、従来公知のものが挙げられ、例えば、中空糸状に形成されたいわゆる中空糸膜状、又は、板状の平膜状などが挙げられる。
また、前記濾過膜の素材としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、セルロース、ポリアミド、セラミック等が挙げられる。
【0065】
前記濾過膜の形状としては、従来公知のものが挙げられ、例えば、中空糸状に形成されたいわゆる中空糸膜状、又は、板状の平膜状などが挙げられる。
【0066】
前記微細藻類の培養装置10は、例えば図1に示すように、培養部1及び濃縮部2に気体を供給する気体供給機構5を備えている。
【0067】
前記気体供給機構5が供給する気体としては、上述したように少なくとも二酸化炭素を含むものが採用される。該気体としては、空気、排気ガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガス等が挙げられる。
【0068】
前記気体供給機構5は、例えば図1に示すように、供給する気体の圧力を高める気体供給用ポンプ5aと、該気体供給用ポンプ5aから供給される気体により濾過膜を有する膜ユニット2bを洗浄すべく該気体を濃縮部2へ送る洗浄用配管5bとを有している。
【0069】
前記気体供給機構5は、気体供給用ポンプ5aによって圧力が高められた気体を洗浄用配管5bを経由させて濃縮部2に送るように構成されている。
【0070】
前記洗浄用配管5bは、一端側が気体供給用ポンプ5aに取り付けられ、他端側が濃縮部2の散気管2cに取り付けられ、気体を気体供給用ポンプ5aから散気管2cに送るように構成されている。
【0071】
さらに、前記気体供給機構5は、例えば図1に示すように、前記培養部1に気体を供給する培養用配管5cを有し、気体供給用ポンプ5aから供給される気体を培養部1に送るように構成されている。
【0072】
前記培養用配管5cは、例えば、一端側が気体供給用ポンプ5aに取り付けられ、他端側が後述する気体返送用配管4の途中に配された後述する供給元切替弁4aに取り付けられている。
前記微細藻類の培養装置10においては、供給元切替弁4aの切替によって、気体供給用ポンプ5aから供給され培養用配管5cを経た気体が、供給元切替弁4aを経て、さらに気体返送用配管4の一部を経て培養部1の曝気管1cに送られる。
【0073】
前記微細藻類の培養装置10は、図1に示すように、濃縮部2にて前記洗浄に用いられた気体を培養部1の前記液体Aに供給する気体返送用配管4を備えている。気体返送用配管4の途中には、上述した供給元切替弁4aが取り付けられている。
前記微細藻類の培養装置10は、前記気体供給機構5から濃縮部2に送られ濃縮部2における膜ユニット2bを洗浄した後の気体を、気体返送用配管4に取り付けられた供給元切替弁4aの切替によって、培養部1の液体Aに供給するように構成されている。
【0074】
本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、濃縮部2にて前記洗浄に用いる気体として二酸化炭素を含む気体が採用され、該気体が培養部1の前記液体Aに供給されることにより、培養部1にて培養される微細藻類に二酸化炭素が供給される。従って、二酸化炭素を必要とする微細藻類の光合成が培養部1において促される。
また、本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、濃縮部2にて前記洗浄に用いられた二酸化炭素を含む気体が培養部1の前記液体Aに供給されるため、二酸化炭素を含む気体が気体供給用ポンプ5aから培養部1へ供給されなくとも、培養部1における微細藻類の光合成を促すことができる。即ち、本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、二酸化炭素を含む気体を膜ユニット2bの洗浄のために濃縮部2に供給すれば、微細藻類の光合成のためにのみ用いる二酸化炭素を培養部1に供給しなくとも、培養部1における微細藻類の光合成を促すことができる。
【0075】
前記微細藻類の培養装置10は、図1に示すように、濃縮部2における膜分離(膜濾過)によって得られた透過水を設備外へ取り出す透過水取出用配管7を備えている。
前記微細藻類の培養装置10は、透過水取出用配管7によって、膜分離後の透過水を培養装置10外へ送るように構成されている。
前記透過水取出用配管7によって培養装置10外へ送られた透過水は、例えば、河川や海へ放流されるか、又は、下水へ放流される。又は、該透過水は、さらに廃水処理が施され得る。
【0076】
前記微細藻類の培養装置10は、濃縮部2の濃縮槽2aにて濃縮された微細藻類を培養部1の培養槽1aへ送る微細藻類返送用配管8を備えている。
前記微細藻類返送用配管8は、例えば図1に示すように、一端側が濃縮部2の濃縮槽2aの内部に配され、他端側が培養部1の培養槽1aの内部に配されている。
前記微細藻類の培養装置10は、濃縮部2の濃縮槽2aにおいて濃縮された微細藻類を、微細藻類返送用配管8を経て、培養部1の培養槽1aに送るように構成されている。
前記微細藻類の培養装置10においては、濃縮部2の濃縮槽2aにおいて濃縮された微細藻類を微細藻類返送用配管8によって培養部1の培養槽1aに送り、培養槽1a内の微細藻類の濃度を高めることができる。そして、送られた微細藻類を培養部1の培養槽1aにて培養できる。
【0077】
従って、前記微細藻類の培養装置10においては、培養槽1a内の微細藻類の濃度が高まった分、微細藻類の増殖の方が、雑菌の増殖よりも優位となり、微細藻類の増殖が促される。
【0078】
前記微細藻類の培養装置10においては、培養槽1a内の微細藻類の濃度を上記のごとく強制的に高めることによって、培養槽1a内における微細藻類をより高い濃度で培養できることから、培養槽1aの容積を比較的小さいものにすることができる。
なお、前記微細藻類の培養装置10においては、上述した培養成分等を含む排水を前記液体Aとして採用することにより、培養部1において微細藻類を培養しつつ、前記排水中の有機物、窒素分やリン分等の無機栄養塩を微細藻類の増殖に利用して、排水を浄化することもできる。排水の浄化においては、装置の小型化が要求されるため、培養槽1aの容積を比較的小さいものにできる前記微細藻類の培養装置10は、排水の浄化においても好適に使用され得る。
【0079】
前記微細藻類の培養装置10においては、上述した開放型の培養槽1aが採用された場合、培養槽1aの水深が比較的浅いため、培養槽1a内の液体Aにおける二酸化炭素の吸収経路が比較的短くなり、従って、二酸化炭素の溶解効率が比較的低いものとなり得る。即ち、開放型の培養槽1aにおいては、微細藻類の二酸化炭素利用効率が比較的低いものとなり得る。一方、前記微細藻類の培養装置10においては、濃縮槽2aの水深が比較的深いことから、濃縮槽2aにおける散気によって二酸化炭素が液体に比較的多く溶け込むことができる。従って、濃縮槽2aの液体の方が、培養槽1a内の液体Aよりも、溶け込んだ二酸化炭素をより多く含み得ることになる。そして、濃縮槽2aの微細藻類を培養槽1aに送ること、即ち、上記の微細藻類含有液を培養槽1aに送ることによって、培養槽1a内の二酸化炭素濃度が高まり得ることから、培養部1においてより効率的に微細藻類の光合成を行うことができ、従って、微細藻類の増殖を十分に促すことができる。
【0080】
また、前記微細藻類の培養装置10は、濃縮部2を2つ備え、2つの濃縮部2によって微細藻類の培養を並列に行うように構成されていてもよい。
斯かる構成の微細藻類の培養装置10においては、一方の濃縮部2において濾過膜を次亜塩素酸ナトリウムなどの薬品によって洗浄しつつ、もう一方の濃縮部2において微細藻類の濃縮を行うことができる。従って、微細藻類の安定した連続的培養を行うことができる。なお、次亜塩素酸ナトリウムを用いた濾過膜の洗浄は、濃縮部2の膜ユニット2bに対する散気だけで濾過膜の詰まりを解消することが困難であるとき、又は、培養装置10の定期メンテナンスのときなどにおいて実施され得る。
【0081】
前記微細藻類の培養装置10においては、培養部1と濃縮部2とが互いに離間するように配されているため、濃縮部2にて用いた上記の薬品が培養部1の培養槽1aに入らないようにすることができる。従って、濃縮部2における薬品による濾過膜の洗浄を比較的容易に行うことができ、しかも、培養部1における微細藻類が薬品の影響を受けない。従って、前記微細藻類の培養装置10においては、濃縮部2において安定した膜濾過を行うことができる。
【0082】
前記微細藻類の培養装置10は、図1に示すように、濃縮部2における膜分離によって得られた透過水を培養成分混合タンク3へ送る透過水返送用配管9を備えている。
前記透過水返送用配管9は、例えば図1に示すように、一端側が透過水取出用配管7の途中に配された送り先切替弁7aに取り付けられている。また、前記透過水返送用配管9は、例えば図1に示すように、他端側が培養成分混合タンク3の内部に配されている。
前記微細藻類の培養装置10は、送り先切替弁7aの切替によって、膜分離により得られた透過水を、透過水取出用配管7の一部及び透過水返送用配管9を経由させ、培養成分混合タンク3へ送るように構成されている。
前記微細藻類の培養装置10においては、膜分離により得られた透過水を培養成分混合タンク3へ送ることができる。透過水は、培養部1の液体Aに含まれていた培養成分を含み得る。従って、透過水に含まれている培養成分が培養部1における微細藻類の培養に利用される分、新たに液体Aに加える培養成分を減らすことができる。
【0083】
また、前記微細藻類の培養装置10は、膜分離により得られた透過水に含まれ得る細菌等の雑菌を減少させる除菌用濾過膜(図示せず)を経た透過水を、培養成分混合タンク3へ送るように構成されていてもよい。
前記除菌用濾過膜としては、例えば、孔径が0.45μm以下の精密ろ過膜、又は、限外濾過膜などが採用される。除菌用濾過膜によって透過水を膜ろ過することによって、細菌等の雑菌がほとんど取り除かれた培養成分を含む透過水を培養部における培養に利用することができる。
また、前記微細藻類の培養装置10は、膜分離により得られた透過水に含まれ得る細菌等の雑菌を減少させるべく、熱殺菌処理が施された透過水を培養成分混合タンク3へ送るように構成されていてもよい。
【0084】
前記嫌気処理部6は、培養後に濃縮された微細藻類と液体とを収容する嫌気槽6aと、嫌気槽6a内の微細藻類に酸素を含まない嫌気処理用気体を供給する嫌気処理用気体供給管6bと、該嫌気処理用気体供給管6bに嫌気処理用気体を送る嫌気処理用配管6dと、該嫌気処理用配管6dに嫌気処理用気体を送るべく嫌気処理用気体を加圧する嫌気処理用ポンプ6cと、嫌気槽6a内の微細藻類を撹拌する嫌気処理用撹拌機6eとを有している。
【0085】
前記嫌気処理部6は、必要に応じて、嫌気処理用ポンプ6cにて加圧された嫌気処理用気体が嫌気処理用配管6dを経て嫌気処理用気体供給管6bに供給され、嫌気処理用気体供給管6bから嫌気槽6a内の微細藻類に嫌気処理用気体を供給することにより、嫌気槽6a内の液体中に含まれる酸素を追い出すように構成されている。また、嫌気的処理を施している間に、嫌気槽6a内の微細藻類を嫌気処理用撹拌機6eによって撹拌するように構成されている。
【0086】
前記嫌気処理用気体としては、例えば、窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられる。
【0087】
本実施形態の微細藻類の培養装置10は、前記嫌気処理部6を備え、微細藻類としてユーグレナ(Euglena)属に属する生物を採用することが好ましい。これにより、ユーグレナ(Euglena)属に属する生物からワックスエステルを主成分とする油脂を精製できるという利点がある。
前記培養部1において光Bが照射されつつ培養されるユーグレナ(Euglena)属生物は、光合成によって増殖し、二酸化炭素から有機物(多糖類や脂質等)を合成し、該有機物を細胞内に貯める。また、光Bが照射されつつ培養されるユーグレナ(Euglena)属生物は、液体A中に有機性炭素源(上述した有機培養成分など)があれば、有機性炭素源からも有機物(多糖類や脂質等)を合成して該有機物を細胞内に貯蔵する。そして、細胞内に多糖類や脂質等の有機物を貯蔵したユーグレナ(Euglena)属生物を前記嫌気処理部6によって嫌気条件下におくことにより、ユーグレナ(Euglena)属生物が、細胞内にワックスエステル等を貯蔵する。貯蔵されたワックスエステルは、燃料などの原料として利用され得る。
このように、ユーグレナ(Euglena)属生物は、培養部1において培養された後に、嫌気処理部6において嫌気条件下におかれることにより、有用なワックスエステルを細胞内に貯蔵する。従って、貯蔵されたワックスエステルを燃料などの原料として精製して利用するためには、本実施形態の微細藻類の培養装置10においては、微細藻類としてユーグレナ(Euglena)属に属する生物が採用され、前記嫌気処理部6が備えられていることが好ましい。
なお、本実施形態の微細藻類の培養装置10は、ユーグレナ(Euglena)属に属する生物の細胞内に貯蔵された有価物を様々な用途で利用すべく、必ずしも前記嫌気処理部6を備えている必要はなく、例えば、培養部1にて増殖させたユーグレナ(Euglena)属に属する生物、又は、濃縮部2にて濃縮したユーグレナ(Euglena)属に属する生物をそのまま回収するように構成されていてもよい。同様に、本実施形態の微細藻類の培養装置10は、ユーグレナ属以外の微細藻類を培養する場合にも、必ずしも前記嫌気処理部6を備えている必要はない。
【0088】
次に、本実施形態の微細藻類の培養方法について説明する。
【0089】
本実施形態の微細藻類の培養方法は、上述した各機器類を用いることによって実施することができる。また、本実施形態の微細藻類の培養方法においては、上述した操作などが適宜採用される。
【0090】
本実施形態の微細藻類の培養方法は、微細藻類に光を照射しつつ水を含む液体中で前記微細藻類を培養する培養部と、該培養部にて培養された微細藻類と前記液体とを含む微細藻類含有液を膜濾過することによって微細藻類を濃縮する濃縮部とを備え、前記濃縮部が、前記培養部にて培養される微細藻類に照射される光を遮らない位置に配された微細藻類の培養装置を用いて、
前記濃縮部にて濃縮された微細藻類を前記培養部へ送るものである。
【0091】
また、本実施形態の微細藻類の培養方法においては、前記微細藻類の培養装置の前記濃縮部が、前記微細藻類含有液を収容する濃縮槽と、前記微細藻類含有液を膜濾過すべく濾過膜を含む膜ユニットとを有し、該膜ユニットを前記濃縮槽内の前記微細藻類含有液に浸漬させ、
少なくとも二酸化炭素を含む気体の散気によって前記膜ユニットを洗浄し、前記濃縮部にて前記洗浄に用いられた気体を前記培養部の前記液体に供給することが好ましい。
【0092】
本実施形態の微細藻類の培養装置及び培養方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の微細藻類の培養装置及び培養方法に限定されるものではない。
また、一般の微細藻類の培養装置及び培養方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の微細藻類の培養装置及び培養方法は、例えば、細胞内に炭化水素や多糖類などの有機物を貯蔵する微細藻類を培養によって増殖させるために好適に使用できる。そして、培養した微細藻類は、健康食品、医薬品、飼料、化成品、又は燃料等の用途で好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0094】
1:培養部、 1a:培養槽、 1b:照明機器、 1c:曝気管、
2:濃縮部、 2a:濃縮槽、 2b:膜ユニット、 2c:散気管、
3:培養成分混合タンク、 3a:混合用撹拌機、
4:気体返送用配管、 4a:供給元切替弁、
5:気体供給機構、
5a:気体供給用ポンプ、 5b:洗浄用配管、 5c:培養用配管、
6:嫌気処理部、
6a:嫌気槽、 6b:嫌気処理用気体供給管、 6c:嫌気処理用ポンプ、
6d:嫌気処理用配管、 6e:嫌気処理用撹拌機、
7:透過水取出用配管、 7a:送り先切替弁、
8:微細藻類返送用配管、
9:透過水返送用配管、
10:培養装置、
A:液体、B:光。
図1