【文献】
社団法人日本化学会編,日本化学会第88春季年会 講演予稿集 II,2008年 3月12日,p.1613,4 PB-086
【文献】
Journal of Organic Chemistry,2005年,Vol.70, No.24,p.10178-10181
【文献】
Journal of Organic Chemistry,1993年,Vol.58, No.11,p.3194-3195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの存在下でトリフルオロメタンスルホン酸を2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物に反応させて4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物を得る、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールの製造方法。
前記ジアリールがビナフチルであることを特徴とする請求項1に記載の4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールの製造方法。
N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの存在下でトリフルオロメタンスルホン酸を2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物に反応させて4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’− ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物を得る
工程と、
得られた4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’− ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物のホルミル基
を反応させて4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物の2,2’位の一方又は両方に、ホルミル基から誘導される、ホルミル基以外の基を導入する工程とを含む、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−1,1’−
ジアリール誘導体の製造方法であって、
前記4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−1,1’−ジアリール誘導体は、
ホルミル基から誘導される、ホルミル基以外の基をジアリールの2,2’位の一方又は両方に独立して有するジトリフラートジアリール誘導体A、または、
二つのホルミル基から誘導されてジアリールの2,2’位を含む環状基を有するジトリフラートジアリール誘導体Bであり、
前記ジトリフラートジアリール誘導体Aにおけるホルミル基から誘導される、ホルミル基以外の基は、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシル基、イミノ基、アルキル基、アルケニル基、アミノ基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、アルキニル基、アルキルシリル基、アルケニルシリル基、アルキニルシリル基、ホスホニル基、ホスフィニル基、スルホニル基、スルフィニル基、アシル基、下記式(1)で表されるケテン基、または下記式(2)で表されるアレン基であり、
前記の基におけるアルコキシル、アルキル、アルケニル、及びアルキニルの炭素数は20以下であり、ホルミル基から誘導される基は、6個以下の芳香族環やヘテロ芳香族環を置換基として含んでもよく、これらの芳香族基の炭素数は16以下であり、下記式(1)及び(2)中、Rは独立して水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
【化1】
前記ジトリフラートジアリール誘導体Bにおける環状基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい5〜7員環の構造である、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−1,1’−ジアリール誘導体の製造方法。
前記ジアリールがビナフチルであることを特徴とする請求項3に記載の4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−1,1’−ジアリール誘導体の製造方法。
N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン及びトリフルオロメタンスルホン酸をホルミルアレーンに反応させてヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンを得る、ヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、不斉構造を有するジアリール誘導体を製造することができる方法及び新規なビナフチル誘導体を提供する。
【0007】
また本発明は、特定のアレーンにおいて、ヨウ素化とトリフルオロメタンスルホニルオキシ化とを一反応工程で行うことができる方法及び新規なアレーン誘導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、不斉構造を有する特定のビナフチル誘導体にジヨードヒダントインの存在下でトリフルオロメタンスルホン酸を反応させることによって、不斉構造が保たれたままビナフチルの4,4’位に高い選択性で(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ基が導入されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの存在下でトリフルオロメタンスルホン酸を2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物に反応させて4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物を得る、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールの製造方法を提供する。
【0010】
また本発明は、N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの存在下でトリフルオロメタンスルホン酸を2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物に反応させて4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体を得る工程と、得られた4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物のホルミル基を反応させて4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物の2,2’位の一方又は両方に、ホルミル基から誘導される、ホルミル基以外の基を導入する工程とを含む、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−1,1’−ジアリール誘導体の製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、前記ジアリールがビナフチルである前記の製造方法を提供する。
【0012】
また本発明は、S体又はR体又はそれらの混合物の4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルを提供する。
【0013】
また本発明は、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルのS体又はR体のホルミル基を反応させて得られるS体又はR体又はそれらの混合物の4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−1,1’−ビナフチル誘導体を提供する。
【0014】
また本発明は、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチルのS体又はR体又はそれらの混合物であるか、又は、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチルのS体又はR体又はそれらの混合物である、前記のS体又はR体又はそれらの混合物の4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−1,1’−ビナフチル誘導体を提供する。
【0015】
さらに本発明者らは、ジヨードヒダントインとトリフルオロメタンスルホン酸とをホルミルアレーンに反応させることによって、ホルミルアレーンのヨウ素化とトリフルオロメチルスルホニルオキシ化とが行われることを見出した。
【0016】
すなわち本発明は、N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン及びトリフルオロメタンスルホン酸をホルミルアレーンに反応させてヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンを得る、ヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンの製造方法をさらに提供する。
【0017】
また本発明は、前記ホルミルアレーンが2−ナフトアルデヒドである前記のヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンの製造方法を提供する。
【0018】
さらに本発明は、3−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−5,7,8−トリヨード−2−ナフトアルデヒドを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ビナフチルの4,4’位に[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ基が導入された新規なビナフチル誘導体を提供することができる。
【0020】
また本発明は、ホルミルアレーンのヨウ化及びトリフルオロメタンスルホニルオキシ化物を一反応工程で得ることができ、また、ヨウ素及びトリフルオロメタンスルホニルオキシ基が導入された新規なホルミルアレーン誘導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルの
1H NMRスペクトルを表す図である。
【
図2】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルの
1H NMRスペクトルの一部を拡大して示す図である。
【
図3】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルの
13C NMRスペクトルを表す図である。
【
図4】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルの
13C NMRスペクトルの一部を拡大して示す図である。
【
図5】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルの3,3’位の水素に係るNOE相関NMRスペクトルを表す図である。
【
図6】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルのホルミル基の水素に係るNOE相関NMRスペクトルを表す図である。
【
図7】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチルの
1H NMRスペクトルを表す図である。
【
図8】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチルの
1H NMRスペクトルの一部を拡大して示す図である。
【
図9】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチルの
13C NMRスペクトルを表す図である。
【
図10】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチルの
13C NMRスペクトルの一部を拡大して示す図である。
【
図11】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチルの
1H NMRスペクトルを表す図である。
【
図12】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチルの
1H NMRスペクトルの一部を拡大して示す図である。
【
図13】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチルの
13C NMRスペクトルを表す図である。
【
図14】実施例1で得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチルの
13C NMRスペクトルの一部を拡大して示す図である。
【
図15】実施例2で得られた生成物のX線結晶構造解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ジアリールのS体又はR体又はそれらの混合物(以下、「ジトリフラートジホルミルジアリール」とも言う)及びS体又はR体又はそれらの混合物であるその誘導体を提供する。ここでジトリフラートジホルミルジアリールの誘導体とは、ホルミル基から誘導される基がジトリフラートジホルミルジアリールの2,2’位の一方又両方に導入されているジアリールを言う(以下、「ジトリフラートジアリール誘導体」とも言う)。
【0023】
本発明において、ジアリールは、二つの芳香族環が1,1’位で互いに単結合によって結合してなる化合物である。ジアリールにおける二つの芳香族基は、2,2’位にホルミル基を有していれば特に限定されず、同じでもよいし異なっていてもよい。ジアリールにおける芳香族基は、炭素数が6〜18であることが好ましい。このようなジアリールとしては、例えばビナフチルが挙げられる。
【0024】
以下、本発明について、ビナフチルを例に説明する。以下の説明において、4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルのS体又はR体又はそれらの混合物を「ジトリフラートジホルミルビナフチル」とも言う。また、S体又はR体又はそれらの混合物であるジトリフラートジホルミルビナフチルの誘導体を「ジトリフラートビナフチル誘導体」とも言う。
【0025】
ジトリフラートジホルミルビナフチルは、N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの存在下でトリフルオロメタンスルホン酸を2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルのS体又はR体に反応させることによって得られる。
【0026】
出発原料である2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルは、S体であってもよいし、R体であってもよいし、またこれらの混合物であってもよいが、光学分割の用途の観点からは、S体又はR体であることが好ましい。
【0027】
2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルは、例えば2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(ビナフトール)のジトリフラート化と、それに続く一酸化炭素存在下でのパラジウム触媒によるカルボキシメチル化と、それによって得られる2,2’−ビス(カルボキシメチル)−1,1’−ビナフチルの還元と、によって得ることができる。この方法では、原料の軸不斉は生成物まで保たれる。
【0028】
ジトリフラートジホルミルビナフチルの合成におけるN,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの使用量は、ジトリフラートジホルミルビナフチルの収率を高める観点から、2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルに対して2モル当量以上であることが好ましく、3モル当量以上であることがより好ましい。また、効果の頭打ちや経済的な観点から、N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの使用量は、2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルに対して5モル当量以下であることが好ましく、3.5モル当量以下であることがより好ましい。
【0029】
N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインは、例えば国際公開第2007/026766号パンフレットに記載されているように、水溶液中、塩基の存在下で5,5−ジメチルヒダントインに一塩化ヨウ素を反応させることによって得ることができる。
【0030】
ジトリフラートジホルミルビナフチルの合成におけるトリフルオロメタンスルホン酸の使用量は、ジトリフラートジホルミルビナフチルの収率を高める観点から、2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルに対して2モル当量以上であることが好ましく、4モル当量以上であることがより好ましい。また、効果の頭打ちや経済的な観点から、トリフルオロメタンスルホン酸の使用量は、2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルに対して10モル当量以下であることが好ましく、7モル当量以下であることがより好ましい。トリフルオロメタンスルホン酸は、市販品として入手することができる。
【0031】
ジトリフラートジホルミルビナフチルの合成は、溶媒中で行うことができる。溶媒は一種でも二種以上でもよい。このような溶媒としては、前記のジトリフラートジホルミルビナフチルの合成に対して不活性な溶媒を用いることができ、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、及び四塩化炭素等のハロゲン系溶媒や、THF、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、及びメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE) 等のエーテル系溶媒が挙げられる。溶媒は、反応条件に応じて選ぶことができる。例えば、加熱を必要とするときは、ジクロロメタンは低沸点のため、ジクロロメタンよりもジクロロエタンを用いることが好ましい。
【0032】
ジトリフラートジホルミルビナフチルの合成反応は、0〜80℃の範囲で行うことができる。ジトリフラートジホルミルビナフチルの合成における反応温度は、N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの分解を防止する観点、及び副生成物の生成を抑制する観点から、0〜50℃であることが好ましく、20〜40℃であることがより好ましい。
【0033】
また、ジトリフラートジホルミルビナフチルの合成は、トリフルオロメタンスルホン酸の劣化を予防する観点から、乾燥窒素雰囲気で行うことが好ましい。ジトリフラートジホルミルビナフチルの合成において、生成物は、反応溶媒から回収し、カラムクロマトグラフィーや再結晶等の通常の技術を用いて精製することが好ましいが、反応や処理を引き続いて行う場合は、反応溶媒からの回収や精製を省略してもよい。
【0034】
前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、前記ジトリフラートジホルミルビナフチルのホルミル基を反応させてジトリフラートジホルミルビナフチルの2,2’位の一方又は両方に、ホルミル基から誘導される、ホルミル基以外の基を導入することによって得られる。ホルミル基以外の基は、ホルミル基から直接又は二以上の工程を経て他の基を形成する有機合成の通常の手法によって導入することができる。
【0035】
ジトリフラートビナフチル誘導体としては、例えば、ホルミル基から誘導される基をビナフチルの2,2’位の一方又は両方に独立して有するジトリフラートビナフチル誘導体Aや、二つのホルミル基から誘導されてビナフチルの2,2’位を含む環状基を有するジトリフラートビナフチル誘導体Bが挙げられる。
【0036】
ジトリフラートビナフチル誘導体Aは、ビナフチルの2,2’位の一方のみにホルミル基以外の基を有していてもよいし、両方に有していてもよい。またジトリフラートビナフチル誘導体Aは、ビナフチルの2,2’位の両方の基が同じであってもよいし異なっていてもよい。光学分割の用途の観点から、ジトリフラートビナフチル誘導体Aは、2,2’位の基のいずれか一方が同じであるか、両方が同じであることが好ましい。
【0037】
ジトリフラートビナフチル誘導体Aにおけるホルミル基以外の基としては、通常の有機合成においてホルミル基から直接又は二以上の工程を経て誘導される種々の基が挙げられる。このような基としては、例えば、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシル基、イミノ基、アルキル基、アルケニル基、アミノ基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、アルキニル基、アルキルシリル基、アルケニルシリル基、アルキニルシリル基、ホスホニル基、ホスフィニル基、スルホニル基、スルフィニル基、アシル基、下記式(1)で表されるケテン基、及び下記式(2)で表されるアレン基が挙げられる。前記の基におけるアルコキシル、アルキル、アルケニル、及びアルキニルの炭素数は20以下であることが好ましく、1〜12(アルケニル及びアルキニルは2〜12)であることがより好ましい。また、ホルミル基から誘導される基は、6個以下の芳香族環やヘテロ芳香族環を置換基として含んでもよい。これらの芳香族基の炭素数は16以下であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。なお、下記式(1)及び(2)中、Rは独立して水素、メチル基、又はフェニル基を表す。
【0039】
前記ジトリフラートビナフチル誘導体Bは、ホルミル基や前記のホルミル基以外の基であるビナフチルの2,2’位の基のそれぞれが脱水縮合等の閉環反応によって結合した構造の環構造を有する。このような環構造としては、ヘテロ原子を含んでいてもよい5〜7員環の構造が挙げられ、例えば、ジトリフラートジホルミルビナフチルのホルミル基のピナコールカップリングにより得られるジオールを含む環、及びホルミル基とアミノアルコールとの縮合で得られるアミドの、トリエチルアミン存在下、トリフェニルホスフィンで処理することよる閉環反応で生成するオキサゾリル環を有する複素環アミン、が挙げられる。
【0040】
前記ジトリフラートビナフチル誘導体としては、例えば、(S)又は(R)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチル、(S)又は(R)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチル、(S)又は(R)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(カルボキシルメチル)−1,1’−ビナフチル、(S)又は(R)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジエテニル−1,1’−ビナフチル、及び、(S)又は(R)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジイミノ−1,1’−ビナフチルが挙げられる。
【0041】
前記ジトリフラートジホルミルビナフチル及び前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、
1H NMR、
13C NMR、IR、MS等の通常の分析装置によって確認することができる。
【0042】
前記ジトリフラートジホルミルビナフチル及び前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、そのままで、不斉識別剤としての利用が期待される。
【0043】
また、前記ジトリフラートジホルミルビナフチル及び前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、4,4’位の[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ基の一方又は両方を、直接又は二以上の工程を経て、例えばトリメチルシリル基、フェニル基、ナフチル基、ジフェニルホスホニル基等の他の基に置き換えてさらなるビナフチル誘導体とすることによって、不斉識別能が改良された不斉識別剤としての利用が期待される。4,4’位への他の基の導入は、例えばビナフチルのヨウ化物では薗頭反応が容易に進行し、またトリフルオロメチルスルホニル基はヨウ素と同等のクロスカップリング活性を有することから、薗頭反応によって行われることが期待され、このような反応によって、例えばビナフチルの4,4’位に炭素間三重結合を有する基を導入することが期待される。
【0044】
又は、4,4’位への他の基(例えばフェノール基)の導入は、トリフルオロメチルスルホニル基の加水分解によって行うことができる。
【0045】
また、前記ジトリフラートジホルミルビナフチル及び前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、1,1’、2,2’、及び4,4’位以外の水素を、例えばトリメチルシリル基、フェニル基、ナフチル基、ジフェニルホスホニル基等の他の基に置き換えることによっても、不斉識別能が改良された不斉識別剤としての利用が期待される。1,1’、2,2’、及び4,4’位以外の水素の置換は公知の技術を用いて行うことができ、例えば3,3’位の水素の置換は、Chemistry Letters (2001), (5), 386−387.に、記載されている方法、すなわちルテニウム触媒を用いたC−H活性化反応、に準じて行うことができる。
【0046】
また、前記ジトリフラートジホルミルビナフチル及び前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、4,4’位の[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ基を、例えばビニル、アリル、エチニル、プロパルジル、アクリロイル、スチリル、アルコキシシリル、アリルシリル等の重合性の置換基に置き換えることによって、不斉識別能を有する多量体の形成が期待される。また前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、ホルミル基から誘導される基として重合性の基を採用することによっても、不斉識別能を有する多量体の形成が期待される。これらの多量体は、粒子状又は円柱状等の所望の形状を有する光学異性体用分離剤としての利用が期待される。前記ジトリフラートジホルミルビナフチル及び前記ジトリフラートビナフチル誘導体への重合性の置換基の導入は、前述した他の基の導入と同様に行うことができる。
【0047】
また前記ジトリフラートジホルミルビナフチル及び前記ジトリフラートビナフチル誘導体は、アミノ基、水酸基、及びエポキシ基等の、担体との結合性を有する基を前述のいずれかの位置に導入することによって、シリカゲル等の、液体クロマトグラフィーに使用することができる粒子状又は円柱状の担体と、この担体に担持される前記ジトリフラートジホルミルビナフチル又は前記ジトリフラートビナフチル誘導体とからなる光学異性体用分離剤の形成が期待される。前記の結合性を有する基の導入は、前記ジトリフラートジホルミルビナフチル又は前記ジトリフラートビナフチル誘導体への前述した基の導入と同様に行うことができる。
【0048】
以上、ビナフチルを例に本発明を説明したが、本発明の製造方法は、前記のビナフチルを他のジアリール、例えばビフェニルやビアントラセン、ビテトラセン、ビフェナントレン、ビピレン、ビクリセン、に置き換えたジアリール誘導体を用いることによって、ビナフチル誘導体と同様のジアリール誘導体の製造に適用されることが期待される。
【0049】
また本発明は、N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン及びトリフルオロメタンスルホン酸をホルミルアレーンに反応させて(以下、「反応B」とも言う)ヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンを提供する。
【0050】
前記ホルミルアレーンは、ホルミル基を一つ有する。ホルミルアレーンにおけるアレーンの炭素数は6〜60であることが好ましい。このようなアレーンとしては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、クリセン、テトラセン、及びC
60フラーレンが挙げられる。また前記ホルミルアレーンとしては、例えば2−ナフトアルデヒド、2−ホルミルアンントラセン、9−ホルミルアントラセン、2−ホルミルピレン、フタルアルデヒド、及びテレフタルアルデヒドが挙げられる。
【0051】
前記反応BにおけるN,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントインの使用量は、ホルミルアレーンに導入するヨウ素の数に応じて決めることができ、ホルミルアレーンに対するモル比で1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜4.0であることがより好ましく、3.5〜4.0であることがさらに好ましい。
【0052】
また反応Bにおけるトリフルオロメタンスルホン酸の使用量は、ホルミルアレーンに導入するトリフルオロメタンスルホニルオキシ基の数に応じて決めることができ、ホルミルアレーンに対するモル比で2.0〜8.0であることが好ましく、4.0〜8.0であることがより好ましく、7.0〜8.0であることがさらに好ましい。
【0053】
反応Bにおける反応温度は、反応性の観点から決めることができ、25〜40℃であることが好ましい。反応Bにおける反応温度は、反応温度の制御の容易さの観点から、反応溶媒の沸点であることが好ましい。
【0054】
反応Bは、前述したジトリフラートジホルミルビナフチルの合成と同様に、前述した溶媒の中で行うことができる。上記の反応温度の範囲に沸点を有する溶媒(例えばジクロロメタン(沸点:40℃))を反応Bの反応溶媒に用いることが好ましい。
【0055】
また、反応Bは、トリフルオロメタンスルホン酸の劣化を予防する観点から、乾燥窒素雰囲気で行うことが好ましい。反応Bにおいて、生成物は、反応溶媒から回収し、カラムクロマトグラフィーや再結晶等の通常の技術を用いて精製することが好ましいが、反応や処理を引き続いて行う場合は、反応溶媒からの回収や精製を省略してもよい。
【0056】
反応Bによれば、例えば2−ナフトアルデヒドから一段の反応で3−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−5,7,8−トリヨード−2−ナフトアルデヒドを得ることができる。反応Bの生成物は、必要に応じて精製品を用い、
1H NMR、
13C NMR、IR、MS、及びX線結晶構造解析等の通常の分析を行う装置を利用することによって確認することができる。
【0057】
反応Bで生成したヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンは、必要に応じてヨウ素及びトリフラート位置でのクロスカップリング反応を用いる誘導化を行うことによって、種々のナフタレンアルデヒド誘導体の合成への利用が期待される。
【0058】
また前記ヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンは、そのまま、又はさらなる誘導体化を経てホモカップリング反応を行うことによって、ジアリール誘導体とすることができる。このホモカップリング反応におけるヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンは、同じでも異なっていてもよい。
【0059】
ヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンの誘導体化としては、例えばトリフルオロメチルスルホニルオキシ基のヒドロキシ化が挙げられる。このようなヒドロキシ化は、ヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーンのアルカリによる加水分解によって行うことができる。また、ホモカップリングによるジアリール誘導体(ホモカップリング化物)は、例えばヨウ化[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]ホルミルアレーン又はその誘導体を鉄イオンの存在下で加熱することによって得ることができる。
【0060】
前記ホモカップリング化物は、1,1’位でアレーン誘導体が結合してなる。前記ホモカップリング化物は、2,2’位や互いに対向する位置関係にある置換基の存在によって、軸不斉を有することがある。このような軸不斉を有するホモカップリング物は、光学分割することによって、そのままで不斉識別剤としての利用が期待される。
【0061】
また、前記ホモカップリング化物は、前述したジトリフラートホルミルビナフチルからジトリフラートビナフチル誘導体への誘導体化や、トリフルオロメチルスルホニル基やヨウ素の他の基への置き換え等のさらなる誘導体化や多量体化を適用することによって、不斉識別能が改良された不斉識別剤として利用が期待される。
【実施例】
【0062】
本実施例において、湿気に敏感な操作は、全て五酸化リンを通して乾燥させた窒素雰囲気下で行った。NMRスペクトルはJEOL EX270分光計(
1H NMRで270MHz、
13C NMRで67.5MHz)で測定した。ケミカルシフトはδppmで、テトラメチルシランを
1H NMR、重クロロホルム(δ77.0)を
13C NMRの基準として報告した。
【0063】
[実施例1]
(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルの合成
【0064】
【化2】
【0065】
N,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン(DIH、369mg、0.97mmol)及びジクロロメタン(3.0mL)を混合し、得られた混合液にトリフルオロメタンスルホン酸(175μL、0.20mmol)を0℃で滴下した。得られた混合液を室温(25℃)に戻して五分間撹拌した後、(S)−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチル(102mg、0.33mmol)をジクロロメタン(2.0mL)に溶かした溶液を前記混合液に0℃で滴下し、室温で2時間反応させた。ここまでの操作を乾燥窒素雰囲気下で行った。その後、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液と反応液を分液漏斗に入れて撹拌し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、ろ過、減圧蒸留を行った。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=5:1(体積比))にかけ、(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチル(129mg、収率65%)を得た。
【0066】
得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルのNMRの測定結果を以下に示す。また前記
1H NMRのスペクトルを
図1及び
図2に、
13C NMRのスペクトルを
図3及び
図4に、3,3’位の水素に係るNOE相関NMRのスペクトルを
図5に、及び、ホルミル基の水素に係るNOE相関NMRのスペクトルを
図6に、それぞれ示す。
1H NMR(CDCl
3)δ7.31(d,J=8.6Hz,2H),7.59(dd,J=7.3,7.6Hz,2H),7.88(dd,J=7.6,7.3Hz,2H),8.18(s,2H),8.32(d,J=8.6Hz,2H),9.58(s,2H);
13C NMR(CDCl
3)δ114.42,118.63(q,J
C-F=319.5Hz),121.98,127.38,128.88,129.88,131.59,133.09,134.80,137.87,146.99,188.30.
【0067】
13C NMRにおいて、C−Fのカップリングがクワルテットで観測され、カップリング定数がおよそ320Hzで観測されることから、C−F結合の存在が確認された。また、質量分析でM+Hピークが607に観測された。さらに、NOE相関NMRにおいて、3位か4位であると同定できるプロトンの照射により、2位に存在するホルミル基のプロトンに6%のnOeが観測され、照射したプロトンは3位であると確認でき、3位か4位であると同定されるプロトンのシングレットピークが3位であることから、[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]基は4位に導入されていると判断できることにより、4位にトリフラート基が導入されていることが確認された。なお、逆にホルミルプロトンの照射により3位と同定できたプロトンにnOeが観測できることも確認された。
【0068】
(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチルの合成
【0069】
【化3】
【0070】
(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチル(100mg、0.165mmol)、メタノール(3.0mL)、及びエタノール(3.0mL)を混合した後、得られた混合液に水素化ホウ素ナトリウム(10.6mg、0.28mmol)を加え、室温で17時間撹拌した。その後、セライト濾過、減圧蒸留を行った。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=1:1(体積比))にかけ、(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチル(89.8mg、収率89%)を得た。得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビナフチルのNMRの測定結果を以下に示す。また前記
1H NMRのスペクトルを
図7及び
図8に、
13C NMRのスペクトルを
図9及び
図10に、それぞれ示す。
1H NMR(CDCl
3)δ3.74(br,2H),3.99(d,J=12.2Hz,2H),4.29(d,J=11.9Hz,2H),7.00(d,J=8.6Hz,2H),7.38(dd,J=7.3,7.4Hz,2H),7.64(dd,J=8.5,7.0Hz,2H),7.72(s,2H),8.16(d,J=8.6Hz,2H);
13C NMR(CDCl
3)δ61.97,118.7(q,J
C-F=319.2Hz),118.81,121.15,125.93,126.26,128.25,128.46,133.20,134.07,137.28,145.95.
【0071】
(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチルの合成
【0072】
【化4】
【0073】
(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチル(98.7mg、0.16mmol)、2−メチル−2−ブテン(356μL、3.4mmol)、t−ブチルアルコール(tBuOH、1.5mL)、及びテトラヒドロフラン(THF、670μL)を混合した後、得られた混合液に80%亜塩素酸ナトリウム(85.4mg、0.76mmol)及びリン酸二水素ナトリウム(56.0mg、0.47mmol)の混合水溶液(670μL)を滴加し、室温で12時間撹拌した。その後、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、ろ過、減圧蒸留を行った。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=5:1(体積比))にかけ、(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチル(103mg、収率99%)を得た。得られた(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジカルボキシル−1,1’−ビナフチルのNMRの測定結果を以下に示す。また前記
1H NMRのスペクトルを
図11及び
図12に、
13C NMRのスペクトルを
図13及び
図14に、それぞれ示す。
1H NMR(CDCl
3)δ6.98(d,J=8.6Hz,2H),7.34(dd,J=6.8,8.4Hz,2H),7.72(dd,J=7.8,7.6Hz,2H),8.12(s,2H),8.23(d,J=8.1Hz,2H),11.57(br,2H);
13C NMR(CDCl
3)δ118.40,118.8(Q,J
C-F=319.9Hz),121.23,124.75,127.28,128.56,130.39,133.79,141.52,145.36,170.19.
【0074】
[比較例]
DIHを添加しない以外は前記の(S)−4,4’−ビス[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフチルの合成と同様に反応を試みた。しかしながら反応は進行せず、それぞれの原料が回収された。
【0075】
[実施例2]
3−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−5,7,8−トリヨード−2−ナフトアルデヒドの合成
【0076】
【化5】
【0077】
窒素雰囲気下、2−ナフトアルデヒド(2.00g、12.8mmol)のジクロロメタン溶液(40mL)にN,N’−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン(DIH、17.0g、44.7mmol)を加え、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、7.93mL、89.6mmol)を滴下した。得られた溶液を30分間還流した後、亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を終了させ、水、食塩水で分液洗浄した後、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた固体をアセトニトリルで洗浄、ろ過し、白色固体を25%の収率で得た。
【0078】
得られた生成物をNMRにて測定した。また、得られた生成物を少量のジクロロメタンに溶かし、ヘキサンを加えて再結晶して、X線結晶構造解析を行った。
13C NMR及び
1H NMRのケミカルシフト及びカップリングパターンのみからは決定できない、ヨウ素及びトリフルオロメチルスルホニルオキシ基の結合位置を、X線結晶構造解析より明らかにした。これらの測定結果から、各置換基の種類及びその結合位置を決定し、生成物が3−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−5,7,8−トリヨード−2−ナフトアルデヒドであることを特定した。前記生成物のNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl
3)δ7.31(d,J=8.6Hz,2H),7.59(dd,J=7.3,7.6Hz,2H),7.88(dd,J=7.6,7.3Hz,2H),8.18(s,2H),8.32(d,J=8.6Hz,2H),9.58(s,2H);
13C NMR(CDCl
3)δ111.61,114.42,116.33,121.03,121.98,125.75,127.38,128.88,129.88,131.59,133.09,134.80,137.87,146.99,188.30.
【0079】
また、前記生成物のX線結晶構造解析の結果を
図15に示す。
【0080】
3−ジヒドロキシ−5,7,8−トリヨード−2−ナフトアルデヒドの合成
【0081】
【化6】
【0082】
5,7,8−トリヨード−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ−2−ナフトアルデヒド(1,000mg、1.47mmol)、1,4−ジオキサン(4.7mL)、メタノール(2.2mL)を混合した後、1N NaOH水溶液(6.60mL)を滴下し、室温で12時間撹拌した。その後、6N塩酸で中和、水、メタノールで洗浄を行った後に乾燥させ、5,7,8−トリヨード−3−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド(720mg、収率89%)を得た。得られた5,7,8−トリヨード−3−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドのNMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ10.52(s,1H,OH),10.20(s,1H,CHO),8.58(s,1H),8.51(s,1H),7.59(s,1H);
13C NMR(100MHz,DMSO−d
6):δ190.4(C=O),158.8,147.5,138.4,137.2,130.3,127.1,117.7,117.0,108.2,100.3
【0083】
5,7,8−トリヨード−3−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドのホモカップリング
【0084】
【化7】
【0085】
FeCl
3・6H
2O(1,996g,7.38mmol)、水(5.0mL)を混合した後、5,7,8−トリヨード−3−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド(299mg,0.362mmol)を加えた。その後、懸濁溶液になるまで超音波処理を行い、120℃に設定したオイルバス中で72時間撹拌と還流を行った。反応終了後、6N塩酸、水で洗浄を行った。乾燥後、基質と目的物である二量体(
1H NMRから求めた収率で38%)の混合物を得た。得られた5,7,8−トリヨード−3−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドの4,4’−ビナフチル二量体の
1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ11.07(s,2H),10.13(s,2H),8.82(s,2H),8.67(s,2H)