【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、本明細書中で「モレキュラーシーブSSZ−28」又は単純に「SSZ−28」と名付けられるモレキュラーシーブを含む。モレキュラーシーブSSZ−28及びその調製方法は米国特許第5,200,377号及び米国特許第5,785,947号明細書に開示されている。
【0005】
SSZ−28の調製において、N,N−ジメチルトロピニウム又はN,N−ジメチル−3−アゾニウム ビシクロ[3.2.2]ノナンのカチオンが構造指向剤(「SDA」)として利用される可能性があり、また、それは結晶化テンプレートとしても知られている。SSZ−28を作るために有益な前記SDA類は、下記構造式(1)及び(2)により表される。
【化1】
【化2】
【0006】
前記SDAカチオンは、前記SSZ−28の形成について不利にならないいずれのアニオンであり得るアニオンと結合する。代表的なアニオンには、ハロゲン(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物)、水酸化物、酢酸イオン、硫酸イオン、四フッ化ホウ酸イオン(tetrafluoroborate)、カルボン酸イオンなどが含まれる。前記SDAは水酸化物イオンを提供するためにも使用することができる。したがって、イオン交換(例えば、ハロゲン化物イオンの水酸化物イオンへのイオン交換)に有益である。
【0007】
一般的に、SSZ−28は、水酸化物イオンの存在下において、(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム及びそれらの混合物から選択される酸化物、(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化ホウ素、及びそれらの混合物から選択される酸化物、(3)N,N−ジメチルトロピニウム及びN,N−ジメチル−3−アゾニウム ビシクロ[3.2.2]ノナンのカチオンから選択される構造指向剤を接触させることにより調製される。
【0008】
SSZ−28は、モル比で以下を含む反応混合物から調製される:
【表1】
ここで、Yはケイ素、ゲルマニウム及びそれらの混合物から選択され、Xはアルミニウム、ガリウム、鉄、ホウ素、及びそれらの混合物から選択され、Qは構造指向剤であり、N,N−ジメチルトロピニウム及びN,N−ジメチル−3−アゾニウム ビシクロ[3.2.2]ノナンのカチオンから選択され、Mはアルカリ金属カチオンであり、また、Zは、1から8の炭素原子を有するアミン、水酸化アンモニウム及びそれらの混合物から選択される少なくとも一つのアミンを含むアミン成分である。
【0009】
酸化アルミニウムの典型的な源は、アルミン酸塩、アルミナ、及び、AlCl
3、Al
2(SO
4)
3、Al(OH)
3のようなアルミニウム化合物、カオリン粘土、及びその他のゼオライトである。アルミニウム酸化物の源の一例としては、LZ−210ゼオライト(Yゼオライトタイプ)である。
【0010】
酸化ケイ素の典型的な源は、ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、フュームドシリカ(fumed silica)、テトラアルキルオルトシリケート(tetraalkyl orthosilicates)、及びシリカ水酸化物を含む。ガリウム、鉄、臭素及びゲルマニウムは、それらアルミニウム及びシリコンの相手方に対応する形態で添加してもよい。塩、特に、塩化ナトリウムのようなアルカリ金属ハロゲン化物は、前記反応混合物に添加され、又は形成されることができる。
【0011】
反応混合物は、選択的に、1〜8個の炭素原子を有するアミン類、水酸化アンモニウム及びそれらの混合物から選択される少なくとも一つのアミンを含むアミン成分(Z)を含むことができる。これらアミン類の非限定的な例としては、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、n-ブチルアミン、ピペリジン、4-メチルピペリジン、シクロヘキシルアミン、t−オクチルアミン、シクロペンチルアミン、及びそれらの混合物が挙げられる。これらのアミン類を使用することにより、用いられる構造指向剤の量を減少させることができ、莫大なコスト削減という結果になる。前記アミン成分を使用することにより、構造指向剤の量はモレキュラーシーブのミクロ細孔の容積を満たすに必要とされるレベル以下のレベル、即ち、アミン成分の非存在下でモレキュラーシーブが結晶化するために必要とされる量より少ない量にまで減少させることが可能となる。さらに、アミン成分の使用は、種結晶と組み合わせて使用したときの結晶成長より速く促進することができる。アミン化合物を用いるSSZ−28の調製方法は、米国特許第5,785,947号明細書に開示されている。
【0012】
実際には、SSZ−28は、
(a)(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム及びそれらの混合物から選択される酸化物、(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化ホウ素及びそれらの混合物から選択される酸化物、(3)SSZ−28の形成に不利にならない対イオンの陰イオンを有するN,N−ジメチルトロピニウム及びN,N−ジメチル−3−アゾニウム ビシクロ[3.2.2]ノナンのカチオンから選択される構造指向剤、及び、(4)アルカリ金属カチオンを含む水溶液を調製するステップ;
(b)SSZ−28の結晶形成のために十分な条件下に水溶液を保持するステップ;及び、
(c)SSZ−28の結晶を回収するステップを含む方法により調製される。
【0013】
反応混合物をSSZ−28の結晶が形成されるまで高温に維持する。水熱結晶化は、普通は自己生成圧力(autogenous pressure)下、100℃から200℃の間の温度で、通常は135℃から180℃の間の温度で行われる。結晶化期間は、普通は1日を超え、通常は約5日間から約10日間である。モレキュラーシーブは結晶化工程の間、緩やかな攪拌又はかき混ぜを用いて調製することができる。
【0014】
水熱結晶化工程の間、SSZ−28結晶は反応混合物から、自発的に核形成させることができる。種物質としてのSSZ−28結晶の使用は、完全な結晶化を起こすために必要な時間が減る点で有利である。加えて、シーディング(seeding)は、望ましくない局面でのSSZ−28の形成及び/又は核形成を促進することにより得られる生成物の純度を上げることができる。種として使用する場合、SSZ−28結晶は、反応混合物に使用される酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム及びそれらの混合物から選択される酸化物の重量の0.1%から10%の間の量で添加する。
【0015】
モレキュラーシーブ結晶がいったん形成されると、その固体生成物は濾過のような標準的機械分離技術により反応混合物から分離される。結晶は水で洗浄され、そして乾燥(例えば、90℃から150℃にて8〜24時間)され、合成したままのSSZ−28結晶が得られる。乾燥工程は大気圧下でも減圧下でも実施することができる。
【0016】
SSZ−28は、合成したままの(例えば、SSZ−28からSDAを除去する前の)及び無水状態で、(モル比で)以下のものを含む組成を有する:
(0.1〜2)Q:(0〜1.0)Z:(0.1〜2.0)M:X
2O
3:(20〜50未満)YO
2であり、ここでQはN,N−ジメチルトロピニウム又はN,N−ジメチル−3−アゾニウム ビシクロ[3.2.2]ノナンのカチオンから選択される構造指向剤であり;
Zは、1から8の炭素原子を有するアミン、水酸化アンモニウム及びそれらの混合物から選択される少なくとも一つのアミンを含むアミン成分であり;
Mはアルカリ金属カチオンであり;
Xはアルミニウム、ガリウム、鉄、ホウ素、及びそれらの混合物から選択され;
Yはケイ素、ゲルマニウム及びそれらの混合物から選択される。調製された時の、YO
2/X
2O
3モル比は、典型的に30から約45の範囲にある。一つの実施態様として、SSZ−28は、Xがアルミニウムであり、Yがケイ素であるアルミノケイ酸塩である。
【0017】
SSZ-28はそのX線回析パターンにより特性付けることができる。SSZ−28は、合成したままで、粉末X線回析パターンが表1に示す特徴的な線を示す結晶構造を有している。
【表2】
【0018】
結晶性SSZ−28は合成したままで使用できるが、好ましくは熱的処理(焼成)を行う。通例、イオン交換によりアルカリ金属カチオン(もしあれば)を除去し、それを水素、アンモニウム、又はいずれの好ましい金属イオンと置換することが望ましい。
【0019】
焼成後、SSZ−28の粉末X線回析パターンは下記表2に示される特徴的な線を示す。
【表3】
【0020】
X線粉末回析パターンは標準技法により測定した。放射線はCuKα線であった。ピーク高さと、2θ(θはブラッグ角)の関数としての位置は、ピークの相対強度から読み取られ、d(記録された線に対応するナノメートルでの平面間距離)を計算することができる。
【0021】
散乱角(2θ)測定の変動(機器誤差及び各サンプルの差による)は、±0.20度で評価されている。焼成は、回析パターンのマイナーなシフトだけでなく、「合成したままの」材料のパターンと比べてピークの強度において変化するという結果となり得る。
【0022】
SSZ−28は幅広く様々な物理的形状に形成することができる。一般的に言えば、モレキュラーシーブは粉末、顆粒、又は成形物、例えば2−メッシュ(Tyler)スクリーンを通過するが、400−メッシュ(Tyler)スクリーン上には残るのに十分な粒径を有する押し出し成形物の形態とすることができる。触媒を有機質粘結剤(有機バインダー)とともに押し出すこと等により成形する場合には、SSZ−28は乾燥する前に押し出すか、又は、乾燥し若しくは部分的に乾燥してから押し出すことができる。
【0023】
SSZ−28は有機変換プロセスで使用される温度や他の条件に耐性の他の材料とともに複合化することができる。このようなマトリクス材料としては、活性又は不活性材料、合成又は天然ゼオライト、並びに粘土、シリカ、及び金属酸化物のような無機材料が挙げられる。そのような材料及びその材料を使用することのできる態様の例は、米国特許第4,910,006号及び5,316,753号明細書に開示されている。
【0024】
SSZ−28はガス流中の窒素の酸化物の接触還元に使用することができる。典型的に、ガス流は酸素も含んでおり、しばしば化学量論的に過剰な酸素を含んでいる。また、前記モレキュラーシーブは窒素酸化物の還元触媒効果を有する金属若しくは金属イオンを、内部に若しくは表面に含有する。そのような金属若しくは金属イオンの例としては、コバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム及びそれらの混合物である。
【0025】
ゼオライト存在下での窒素の酸化物の接触還元プロセスのひとつの例は、米国特許第4,297,328号明細書に開示されている。そこで、前記触媒プロセスは一酸化炭素及び炭化水素の燃焼であり、また、内燃機関に由来する排気ガスのようなガス流中に含まれる窒素の酸化物の接触還元である。用いられたゼオライトは、該ゼオライト中に若しくは表面に効果的な量の触媒銅金属又は銅イオンを与えるように、十分に金属イオン交換、添加若しくは充填される。加えて、当該プロセスは酸化剤(例えば酸素)が過剰な条件下で行われる。