特許第5899368号(P5899368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5899368
(24)【登録日】2016年3月11日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20160324BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20160324BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   C03C27/12 D
   B32B17/10
   B32B27/30 102
【請求項の数】14
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-255840(P2015-255840)
(22)【出願日】2015年12月28日
(62)【分割の表示】特願2015-557875(P2015-557875)の分割
【原出願日】2015年1月15日
【審査請求日】2015年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-5484(P2014-5484)
(32)【優先日】2014年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達矢
(72)【発明者】
【氏名】内村 裕二
【審査官】 相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−201932(JP,A)
【文献】 特開2006−248826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00〜43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層のみを備えるか、又は、
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の第1の表面側に配置されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第2の層とを備え、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が31.5モル%以上であり、
中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が異なる場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が同一である場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の引張破断エネルギーJ/mmをYとしたときに、Xが20℃以上、50℃以下であり、Yが(0.043X+0.83)J/mm以上である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が2モル%以下である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が68.2モル%以下である、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
2層以上の構造を有する中間膜である場合に、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
2層以上の構造を有する中間膜である場合に、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少ない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
2層以上の構造を有する中間膜である場合に、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高く、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少ない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の前記第1の表面側に配置されており、かつ前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む前記第2の層とを備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の前記第1の表面側に配置されており、かつ前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む前記第2の層と、前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備える、請求項7に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高く、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第3の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高い、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少なく、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第3の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少ない、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高く、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第3の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高く、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少なく、
前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第3の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少ない、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の前記第1の表面側に配置されており、かつ前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む前記第2の層と、前記第2の層の前記第1の層側とは反対の表面側に配置されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第4の層とを備える、請求項7に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記第4の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高い、請求項12に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記合わせガラス用中間膜が、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置されている、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
下記の特許文献1には、合わせガラスの高周波域での遮音性を広い温度範囲に渡り高めることができる中間膜が開示されている。この中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、上記第1の層の第1の表面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第2の層と、上記第1の層の上記第1の表面とは反対の第2の表面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備える。この中間膜では、上記第1の層に含まれる上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、上記第2の層及び第3の層に含まれる上記ポリビニルアセタール樹脂の各水酸基の含有率よりも低く、上記第1の層の厚みの上記第2の層と上記第3の層との合計厚みに対する比が0.14以下である。
【0004】
また、下記の特許文献2には、広い温度範囲に渡り耐貫通性を高めることができる中間膜が開示されている。特許文献2では、耐貫通性を高めるために、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基の炭素数を小さくしたり、炭素数が小さいアルデヒドを用いた共アセタール樹脂を用いたりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2012/043816A1
【特許文献2】WO2006/038332A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、合わせガラスを軽量化するために、合わせガラスの厚みを薄くすることが検討されている。しかし、合わせガラスの厚みを薄くすると、合わせガラスの耐貫通性が低くなりやすいという問題がある。
【0007】
そこで、従来の中間膜と比較して、耐貫通性がより一層高められた中間膜の開発が求められている。
【0008】
本発明の目的は、合わせガラスの耐貫通性を高めることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が異なる場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が同一である場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度℃をXとし、中
間膜の引張破断エネルギーJ/mmをYとしたときに、Xが20℃以上、50℃以下であり、Yが(0.043X+0.83)J/mm以上である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0010】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、前記合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層のみを備えるか、又は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の第1の表面側に配置されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第2の層とを備える。
【0011】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が31.5モル%以上である。
【0012】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が2モル%以下である。
【0013】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が68.2モル%以下である。
【0014】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、2層以上の構造を有する中間膜である場合に、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高い。
【0015】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、2層以上の構造を有する中間膜である場合に、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少ない。
【0016】
本発明に係わる合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記合わせガラス用中間膜は、前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の前記第1の表面側に配置されており、かつ前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む前記第2の層とを備える。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記合わせガラス用中間膜は、前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の前記第1の表面側に配置されており、かつ前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む前記第2の層と、前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第3の層とを備える。
【0018】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高く、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第3の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高い。
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する
前記第2の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少なく、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第3の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少ない。
【0020】
本発明に係わる合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記合わせガラス用中間膜は、前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む第1の層と、前記第1の層の前記第1の表面側に配置されており、かつ前記ポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤とを含む前記第2の層と、前記第2の層の前記第1の層側とは反対の表面に配置されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第4の層とを備える。
【0021】
本発明に係わる合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第4の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも高い。
【0022】
本発明に係わる合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第4の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第4の層に含まれる前記可塑剤の含有量が、前記第2の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層に含まれる前記可塑剤の含有量よりも少ない。
【0023】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記合わせガラス用中間膜が、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置されている、合わせガラスが提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が異なる場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が同一である場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の引張破断エネルギーJ/mmをYとしたときに、Xが20℃以上、50℃以下であり、Yが(0.043X+0.83)J/mm以上であるので、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの耐貫通性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す部分切欠断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す部分切欠断面図である。
図3図3は、本発明の第3の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す部分切欠断面図である。
図4図4は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0027】
本発明に係る合わせガラス用中間膜において、該中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が異なる場合、中間膜の両側の2つの表面(第1の表面と第2の表面)のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の両側の2つの表面のガラス
転移温度が同一である場合、中間膜の両側の2つの表面(第1の表面と第2の表面)のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の引張破断エネルギーJ/mmをYとする。Xの単位は℃である。Yの単位は、J/mmである。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、Xが20℃以上、50℃以下であり、Yが(0.043X+0.83)J/mm以上である。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、以下の式(i)及び式(ii)を満足する。中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度は異なっていてもよく、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度は同一であってもよい。なお、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が同一である場合には、上記ガラス転移温度X℃は、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度である。
【0028】
20℃≦X≦50℃ ・・・式(i)
【0029】
Y≧(0.043X+0.83)J/mm ・・・式(ii)
【0030】
本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上述した構成が備えられているので、中間膜を用いた合わせガラスの耐貫通性を高めることができる。また、中間膜の厚みを薄くしたり、中間膜を用いた合わせガラスの厚みを薄くしたりしても、充分に高い耐貫通性を維持することができる。中間膜における各層の厚みが同じである場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜における上述した構成が備えられることで、上述した構成が備えらえていない場合と比べて、合わせガラスの耐貫通性を高めることができる。
【0031】
なお、上記式(ii)を満足すれば、合わせガラスの耐貫通性が高くなることは、本発明者らが行った実験により確認されており、また後述する実施例及び比較例から理解することができる。
【0032】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記引張破断エネルギーYJ/mmが(0.043X+1.43)J/mm以上を満足することが好ましい。すなわち、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、下記式(ii’)を満足することが好ましい。
【0033】
Y≧(0.043X+1.43)J/mm ・・・式(ii’)
【0034】
なお、上記式(ii’)を満足すれば、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなることは、本発明者らが行った実験により確認されており、また後述する実施例及び比較例から理解することができる。
【0035】
上記ガラス転移温度X℃は、好ましくは23℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは29℃以上、より一層好ましくは31℃以上、特に好ましくは33℃以上、最も好ましくは35℃以上、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは43℃以下、特に好ましくは41℃以下、最も好ましくは40℃以下である。Xが上記の範囲内であると、中間膜の取扱いが容易になる。
【0036】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記引張破断エネルギーYJ/mmは、好ましくは1.69J/mm以上、好ましくは4J/mm以下である。
【0037】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度の双方が20℃以上、50℃以下であることが好ましい。合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度の双方が好ましくは23℃以上、好ましくは40℃以下である。
【0038】
上記ガラス転移温度及び上記引張破断エネルギーYJ/mmを上記の値を満足するようにする方法としては、1)中間膜のガラス転移温度を高くする方法、2)中間膜(特に第1の層)に用いるポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率を高くする方法、3)中間膜(特に第1の層)に用いる可塑剤の含有量を少なくする方法、並びに4)中間膜(特に第1の層)に用いるポリビニルアセタール樹脂を製造する際の熟成温度を高くする方法等が挙げられる。上記1)〜3)のいずれかの方法のみを用いて、上記引張破断エネルギーYJ/mmが上記の値を満足するようにする調整すると、中間膜が硬くなりすぎることにより、取扱が困難になることがある。そのため、上記1)〜3)の少なくとも1つの方法と、上記4)の方法とを組み合わせることが好ましい。
【0039】
上記引張破断エネルギーYJ/mmは、引張試験機を用いて、23℃で測定される。引張試験機としては、オリエンテック社製「テンシロン万能試験機」等が挙げられる。
【0040】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0041】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に部分切欠断面図で示す。
【0042】
図1に示す中間膜1は、2層以上の構造(積層構造)を有する多層の中間膜である。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、第1の層2と、第1の層2の第1の表面2a側に配置された第2の層3と、第1の層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b側に配置された第3の層4とを備える。第2の層3は、第1の層2の第1の表面2aに積層されている。第3の層4は、第1の層2の第2の表面2bに積層されている。第1の層2は、中間層である。第2の層3及び第3の層4は、例えば、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層2は、第2の層3と第3の層4との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜1は、第2の層3と第1の層2と第3の層4とがこの順で積層された多層構造を有する。
【0043】
第2の層3の第1の層2側とは反対側の表面3aは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。第3の層4の第1の層2側とは反対側の表面4aは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。
【0044】
なお、第1の層2と第2の層3との間、及び、第1の層2と第3の層4との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第1の層2と第2の層3、及び、第1の層2と第3の層4とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を含む層、及びポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0045】
中間膜を用いた合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、第1の層2は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことが好ましく、第2の層3は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことが好ましく、第3の層4は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことが好ましい。但し、中間膜1は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む。すなわち、中間膜1は、第1の層2、第2の層3及び第3の層4の内の少なくとも1層は、ポリビニルアセタール樹脂を含む。
【0046】
図2に、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に部分切欠断面図で示す。
【0047】
図2に示す中間膜31は、1層の構造を有する単層の中間膜である。中間膜31は、第1の層である。中間膜31は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜31は、合わせガラス用中間膜である。中間膜を用いた合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点から、中間膜31は、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含む。
【0048】
図3に、本発明の第3の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に部分切欠断面図で示す。
【0049】
図3に示す中間膜1Aは、2層以上の構造(積層構造)を有する多層の中間膜である。中間膜1Aは、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1Aは、合わせガラス用中間膜である。中間膜1Aは、第1の層2と、第1の層2の第1の表面2a側に配置された第2の層3と、第2の層3の第1の層2側とは反対の表面3a側に配置された第4の層5とを備える。第2の層3は、第1の層2の第1の表面2aに積層されている。第4の層5は、第2の層3の表面3aに積層されている。第2の層3は、中間層である。第1の層2及び第4の層5は、例えば、保護層であり、本実施形態では表面層である。第2の層3は、第1の層2と第4の層5との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜1Aは、第4の層5と第2の層3と第1の層2とがこの順で積層された多層構造を有する。
【0050】
第4の層5の第2の層3側とは反対側の表面5aは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。第1の層2の第2の層3側とは反対側の表面(第2の表面)2bは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。
【0051】
なお、第4の層5と第2の層3との間、及び、第2の層3と第1の層2との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第4の層5と第2の層3、及び、第2の層3と第1の層2とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を含む層、及びポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0052】
中間膜を用いた合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、第4の層5は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことが好ましい。但し、中間膜1Aは、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む。すなわち、中間膜1Aは、第4の層5、第2の層3及び第1の層2の内の少なくとも1層は、ポリビニルアセタール樹脂を含む。
【0053】
上記中間膜は、上記第1の層のみの単層の中間膜であってもよく、上記第1の層を含む多層の合わせガラス用中間膜であってもよい。上記中間膜は、上記第1の層と上記第2の層とを少なくとも備える中間膜(この中間膜は上記第3の層を備えるか又は備えていない、この中間膜は上記第4の層を備えるか又は備えていない)であってもよい。上記中間膜は、上記第1の層と上記第2の層と上記第3の層とを備えていてもよい。上記中間膜は、上記第1の層と上記第2の層と上記第4の層とを備えていてもよい。
【0054】
中間膜1では、第1の層2の両面に第2の層3と第3の層4とが1層ずつ積層されている。上記第1の層の上記第1の表面側に上記第2の層が配置されていればよい。上記第1の層の上記第1の表面側に上記第2の層が配置されており、かつ上記第1の層の上記第2の表面側に上記第3の層が配置されていなくてもよい。但し、上記第1の層の上記第1の表面側に上記第2の層が配置されており、かつ上記第1の層の上記第2の表面側に上記第3の層が配置されていることが好ましい。上記第1の層の上記第2の表面側に上記第3の層が配置されていることにより、中間膜の取扱い性、並びに合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。さらに、中間膜の両側の表面で、合わせガラス部材などに対する接着性を調整することができる。なお、上記第3の層が存在しない場合には、中間膜の上記第2
の層の外側の表面の合わせガラス部材に対する接着性を調整することができる。
【0055】
中間膜1Aでは、第2の層3の両面に第4の層5と第1の層2とが1層ずつ積層されている。第4の層5は、第1の層2と同一の層又は類似した層であってもよい。上記第1の層が中間膜の最外層である場合、中間膜の耐貫通性をより一層高くすることができる。更に、上記第1の層を中間膜の最外層とすることにより、上記第2の層のガラス転移温度を高くする必要がなくなるため、耐貫通性及び遮音性が高い中間膜が得られる。
【0056】
以下、本発明に係る合わせガラス用中間膜を構成する上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記第4の層の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記第4の層に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0057】
(ポリビニルアセタール樹脂)
上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第4の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(4)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%である。
【0059】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、好ましくは3000以下、より好ましくは2700以下、更に好ましくは2400以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0060】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、1500以上、3000以下であることが特に好ましい。
【0061】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0062】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3〜5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
【0063】
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の各含有率(水酸基量)は、好ましくは31.5モル%以上、より好ましくは32モル%以上、更に好ましくは32.5モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは39モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなり、かつ、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の各含有率が31.5モル%以上であると、合わせガラスの耐貫通性が効果的に高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。合わせガラスの耐貫通性をより一層高くし、中間膜の取り扱いがより一層容易になることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の各含有率(水酸基量)は、好ましくは33.5モル%以上、より好ましくは34モル%以上、好ましくは38モル%以下、より好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36モル%以下である。
【0065】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは28モル%以上、より好ましくは28.5モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは30.5モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記第1の層が中間膜の最外層であり、上記第1の層と上記第2の層とが積層されている場合、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率は、好ましくは16モル%以上、より好ましくは18モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは22モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは29モル%以下、更に好ましくは27モル%以下、特に好ましくは25モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上、及び、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性が高くなる。
【0066】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも高いことが好ましい。合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも高いことが好ましい。合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも高いことが好ましい。
【0067】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニル
アセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値、並びに上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値、並びに上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは8.5モル%以下である。
【0068】
合わせガラスの耐貫通性を高くし、かつ、遮音性をも高くする観点からは、上記第1の層が最外層であり、かつ少なくとも上記第1の層及び上記第2の層が積層されていることが好ましく、上記第1の層が最外層であり、かつ上記第2の層の第1の表面に上記第1の層が積層されており、かつ上記第2の層の上記第1の層(第1の表面)側とは反対の表面(第2の表面)に上記第4の層が積層されていることがより好ましい。更に、合わせガラスの耐貫通性を高くし、かつ、遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも高いことが好ましく、上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも高いことが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、並びに上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは5モル%以上、より好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは9.5モル%以上、好ましくは15モル%以下、より好ましくは14モル%以下、更に好ましくは13モル%以下、特に好ましくは12モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、並びに上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値が上記下限以上であると合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、上記上限以下であると合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0069】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、測定することにより求めることができる。
【0070】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の各アセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.3モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは0.8モル%以上、好ましくは8モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは2モル%以下、特に好ましくは1.8モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜の機械的強度がより一層高くなる。
【0071】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.3モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは2モル%以下、より好ましくは1.8モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。合わせガラスの耐貫通性を高くし、かつ、遮音性を高める観点からは、上記ポリビニルアセタール
樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、5モル%を超えることが好ましく、6モル%以上であることがより好ましく、7モル%以上であることが更に好ましく、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましい。
【0072】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0073】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは61.5モル%以上、より好ましくは61.7モル%以上、更に好ましくは62モル%以上、好ましくは68.2モル%以下、より好ましくは68モル%以下、更に好ましくは67モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度が68.2モル%以下であると、合わせガラスの耐貫通性が効果的に高くなる。
【0074】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは67モル%以上、より好ましくは67.2モル%以上、好ましくは71.7モル%以下、より好ましくは71.5モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。合わせガラスの耐貫通性を高くし、かつ、遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、5モル%を超えることが好ましく、6モル%以上であることがより好ましく、7モル%以上であることが更に好ましく、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましい。
【0075】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、算出され得る。
【0076】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396−92JIS K6728による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0077】
合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)に関しては、アセチル化度が5モル%未満であることが好ましく、アセチル化度が5モル%未満であり、かつ、水酸基の含有率が20モル%以上、40モル%以下であることがより好ましく、アセチル化度が3モル%以
下であり、かつ、水酸基の含有率が20モル%以上、40モル%以下であることが更に好ましく、アセチル化度が3モル%以下であり、かつ、水酸基の含有率が25モル%以上、35モル%以下であることが特に好ましい。
【0078】
合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、アセチル化度が5モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(B1)、アセタール化度が68モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(B2)、又は、上記ポリビニルアルコールを炭素数6以上のアルデヒドによりアセタール化することにより得られたポリビニルアセタール樹脂(B3)であることが好ましい。
【0079】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B1)のアセチル化度は5モル%以上であるため、ポリビニルアセタール樹脂(B)を含む層は、可塑剤をより多く含むことが可能である。従って、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。上記ポリビニルアセタール樹脂(B1)のアセチル化度はより好まくは7モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、特に好ましくは12モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは26モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0080】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B2)のアセタール化度は68モル%以上であるため、ポリビニルアセタール樹脂(B2)を含む層は、可塑剤をより多く含むことが可能である。従って、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。上記ポリビニルアセタール樹脂(B2)のアセタール化度はより好ましくは70モル%以上、更に好ましくは72モル%以上、特に好ましくは74モル%以上、最も好ましくは76モル%以上、好ましくは88モル%以下、より好ましくは86モル%以下、更に好ましくは84モル%以下、特に好ましくは82モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0081】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B3)は、上記ポリビニルアルコールを炭素数6以上のアルデヒドによりアセタール化することにより得られるので、上記ポリビニルアセタール樹脂(B3)を含む層を備える中間膜のガラス転移温度を容易に低くすることができる。上記炭素数6以上のアルデヒドとしては、例えば、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド及びn−デシルアルデヒド等が挙げられ、これらが好適に用いられる。
【0082】
(可塑剤)
上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第4の層は、可塑剤(以下、可塑剤(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤(1)と上記可塑剤(2)と上記可塑剤(3)と上記可塑剤(4)とは同一であってもよく、異なっていてもよい。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤
等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0084】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0085】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0086】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0087】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0088】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0089】
【化1】
【0090】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基であることが好ましく、炭素数6〜10の有機基であることがより好ましい。
【0091】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエートであることが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−
エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートであることがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートであることが更に好ましい。
【0092】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(4)100重量部に対する上記可塑剤(4)の含有量(以下、含有量(4)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは20重量部以上、より好ましくは25重量部以上、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。上記含有量(1)及び上記含有量(4)がそれぞれ上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)及び上記含有量(4)がそれぞれ上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなり、かつ合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。特に、上記含有量(1)及び上記含有量(4)がそれぞれ35重量部以下であると、合わせガラスの耐貫通性が効果的に高くなる。
【0093】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは37重量部以上、より好ましくは38重量部以上、好ましくは42重量部以下、より好ましくは41重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)がそれぞれ上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)がそれぞれ上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。合わせガラスの遮音性を向上できることから、上記含有量(2)及び上記含有量(3)はそれぞれ、好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、特に好ましくは60重量部以上、最も好ましくは65重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、特に好ましくは85重量部以下、最も好ましくは80重量部以下である。
【0094】
合わせガラスの耐貫通性を高める観点からは、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも少ないことが好ましい。合わせガラスの耐貫通性を高める観点からは、上記含有量(4)は上記含有量(2)よりも少ないことが好ましい。合わせガラスの耐貫通性を高める観点からは、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも少ないことが好ましい。
【0095】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値、上記含有量(1)と上記含有量(3)との差の絶対値、並びに上記含有量(4)と上記含有量(2)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは2重量部以上、より好ましくは5重量部以上、更に好ましくは8重量部以上である。上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値、上記含有量(1)と上記含有量(3)との差の絶対値、並びに上記含有量(4)と上記含有量(2)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、特に好ましくは25重量部以下、最も好ましくは22重量部以下である。
【0096】
(他の成分)
上記第1の層、上記第2の層、上記第3の層及び上記第4の層はそれぞれ、必要に応じて酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0097】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
本発明に係る合わせガラス用中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに
遮熱性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0098】
また、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、該中間膜の厚みが薄くても、耐貫通性を高めることができる。また、中間膜の厚みが薄いほど、合わせガラスを軽量化できる。耐貫通性を高く維持しつつ、合わせガラスをより一層軽量化する観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは700μm以下、より好ましくは600μm以下である。
【0099】
中間膜の厚みをTとする。合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記第1の層及び上記第4の層の各厚みは、好ましくは0.14T以上、より好ましくは0.16T以上、好ましくは0.72T以下、より好ましくは0.67T以下である。
【0100】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、中間膜が上記第4の層と上記第1の層とを備える場合に、上記第4の層と上記第1の層との合計の厚みは、好ましくは0.8T以上、より好ましくは0.84T以上、好ましくは0.96T以下、より好ましくは0.94T以下である。
【0101】
中間膜の柔軟性を高め、中間膜の取扱性を容易にする観点からは、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.14T以上、より好ましくは0.16T以上、好ましくは0.43T以下、より好ましくは0.42T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0102】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、中間膜が上記第2の層と上記第3の層とを備える場合に、上記第2の層と上記第3の層との合計の厚みは、好ましくは0.28T以上、より好ましくは0.33T以上、好ましくは0.86T以下、より好ましくは0.84T以下である。また、上記第2の層と上記第3の層との合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0103】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法としては特に限定されないが、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、例えば、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0104】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第4の層と上記第1の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第4の層と上記第1の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第4の層と上記第1の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0105】
(合わせガラス)
図3に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に断面図で示す。
【0106】
図3に示す合わせガラス11は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜1とを備える。中間膜1は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0107】
中間膜1の第1の表面1aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。中間膜1の第2の層3の外側の表面3aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第3の層4の外側の表面4aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0108】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上記第1の合わせガラス部材と第2の合わせガラス部材との間に配置された中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明の合わせガラス用中間膜である。
【0109】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスは、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方として、ガラス板を備えることが好ましい。
【0110】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0111】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0112】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0113】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルー
フガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。
【0114】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0115】
以下の実施例及び比較例で用いたポリビニルブチラール(PVB)樹脂に関しては、ブチラール化度(アセタール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396−92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0116】
(合成例1)
ポリビニルアセタール樹脂A(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.1モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を17℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド154gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、60℃に加熱し、66℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Aを得た。
【0117】
得られたポリビニルアセタール樹脂Aに関しては、ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度1700、水酸基の含有率34.4モル%、アセチル化度0.8モル%、アセタール化度(ブチラール化度)64.8モル%、半値幅274.8cm−1)であった。
【0118】
(合成例2)
ポリビニルアセタール樹脂B(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.1モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を17℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド165gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸240gを添加し、55℃に加熱し、58℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Bを得た。
【0119】
なお、実施例1〜4及び比較例1で用いたポリビニルアセタール樹脂Bはそれぞれ、異なる日に、別々に合成した。実施例1〜4及び比較例1で用いたポリビニルアセタール樹脂Bのそれぞれに関しては、ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度1700、水酸基の含有率30.0モル%、アセチル化度0.9モル%、アセタール化度(ブチラール化度)69.1モル%、半値幅239.3cm−1)であった。但し、実施例1〜4及び比較例1で用いたポリビニルアセタール樹脂Bのガラス転移温度はそれぞれ、表2に示す値であった。
【0120】
(合成例3)
ポリビニルアセタール樹脂C(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.3モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶
液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド161.2gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸173gを添加し、57℃に加熱し、60℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Cを得た。
【0121】
(合成例4)
ポリビニルアセタール樹脂D(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.1モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド159gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸173gを添加し、57℃に加熱し、63℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Dを得た。
【0122】
(合成例5)
ポリビニルアセタール樹脂E(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド159gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸173gを添加し、60℃に加熱し、66℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Eを得た。
【0123】
(合成例6)
ポリビニルアセタール樹脂F(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド163gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸173gを添加し、57℃に加熱し、63℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Fを得た。
【0124】
(合成例7)
ポリビニルアセタール樹脂G(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド154gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、60℃に加熱し、66℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Gを得た。
【0125】
(合成例8)
ポリビニルアセタール樹脂H(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド160gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、57℃に加熱し、63℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Hを得た。
【0126】
(合成例9)
ポリビニルアセタール樹脂I(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド161gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、57℃に加熱し、63℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Iを得た。
【0127】
(合成例10)
ポリビニルアセタール樹脂J(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド155gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、60℃に加熱し、66℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Jを得た。
【0128】
(合成例11)
ポリビニルアセタール樹脂K(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド158gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、60℃に加熱し、66℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Kを得た。
【0129】
(合成例12)
ポリビニルアセタール樹脂L(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14
℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド169gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、57℃に加熱し、63℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Lを得た。
【0130】
(合成例13)
ポリビニルアセタール樹脂M(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド163gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、54℃に加熱し、60℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Mを得た。
【0131】
(合成例14)
ポリビニルアセタール樹脂N(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド161gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、40℃に加熱し、45℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Nを得た。
【0132】
(合成例15)
ポリビニルアセタール樹脂O(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35.5重量%塩酸21gを添加し、温度を14℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド160gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、35.5重量%塩酸172gを添加し、40℃に加熱し、46℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Oを得た。
【0133】
(合成例16)
ポリビニルアセタール樹脂P(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3314ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド163.7gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Pを得た。
【0134】
(合成例17)
ポリビニルアセタール樹脂Q(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3288ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド176.7gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Qを得た。
【0135】
(合成例18)
ポリビニルアセタール樹脂R(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3279ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド181.5gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Rを得た。
【0136】
(合成例19)
ポリビニルアセタール樹脂S(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3244ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド199gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、65℃に加熱し、67.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Sを得た。
【0137】
(合成例20)
ポリビニルアセタール樹脂T(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3299ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド171.3gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Tを得た。
【0138】
(合成例21)
ポリビニルアセタール樹脂U(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3279ml、平均重合度1700、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を8℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド181.5gを添加したところ、白色
粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Uを得た。
【0139】
(合成例22)
ポリビニルアセタール樹脂V(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3279ml、平均重合度2300、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド181.5gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Vを得た。
【0140】
(合成例23)
ポリビニルアセタール樹脂W(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2418ml、平均重合度1700、けん化度98.5モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸24.9gを添加し、温度を8℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド174.9gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸105.8gを添加し、55℃に加熱し、58℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Wを得た。
【0141】
(合成例24)
ポリビニルアセタール樹脂X(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3744ml、平均重合度1700、けん化度93.8モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47gを添加し、温度を8℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド199.8gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸140.3gを添加し、65℃に加熱し、67.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Xを得た。
【0142】
(合成例25)
ポリビニルアセタール樹脂Y(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2418ml、平均重合度2300、けん化度98.5モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸24.9gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド174.9gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸105.8gを添加し、55℃に加熱し、58℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Yを得た。
【0143】
(合成例26)
ポリビニルアセタール樹脂Z(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3744ml、平均重合度2300、けん化度93.8モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド199.8gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸140.3gを添加し、65℃に加熱し、67.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂Zを得た。
【0144】
(合成例27)
ポリビニルアセタール樹脂AA(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3294ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド173.9gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂AAを得た。
【0145】
(合成例28)
ポリビニルアセタール樹脂AB(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3267ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド187.1gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂ABを得た。
【0146】
(合成例29)
ポリビニルアセタール樹脂AC(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3285ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド178.4gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂ACを得た。
【0147】
(合成例30)
ポリビニルアセタール樹脂AD(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3523ml、平均重合度3000、けん化度75.0モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸45.5gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド145.9gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%
硝酸145.3gを添加し、60℃に加熱し、62.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂ADを得た。
【0148】
(合成例31)
ポリビニルアセタール樹脂AE(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水4440ml、平均重合度3000、けん化度85.8モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸50.2gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド165.8gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸197.8gを添加し、65℃に加熱し、67.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂AEを得た。
【0149】
(合成例32)
ポリビニルアセタール樹脂AF(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水4435ml、平均重合度3000、けん化度82.7モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸50.2gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド168.8gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸197.8gを添加し、65℃に加熱し、67.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂AFを得た。
【0150】
(合成例33)
ポリビニルアセタール樹脂AG(PVB樹脂)の合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3292ml、平均重合度3000、けん化度88.2モル%のポリビニルアルコール300gを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸47.3gを添加し、温度を10℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド174.7gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから20分後に、60重量%硝酸144gを添加し、55℃に加熱し、57.5℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂AGを得た。
【0151】
(実施例1)
第1の層を形成するための組成物Xの作製:
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルアセタール樹脂A)100重量部と、可塑剤(3GO)30重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを混合し、第1の層を形成するための組成物Xを得た。
【0152】
第2の層及び第3の層を形成するための組成物Yの作製:
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルアセタール樹脂B)100重量部と、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを混合し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物Yを得た。
【0153】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物Xと、第2の層及び第3の層を形成するための組成物Yとを、共押出機を用いて共押出しすることにより、第2の層(厚み100μm)/第1の層(厚み300μm)/第3の層(厚み100μm)の積層構造を有する中間膜(厚み500μm)を作製した。
【0154】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜(多層)を、縦100cm×横100cmに切り出した。次に、2枚のクリアガラス(縦100cm×横100cm×厚み2mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0155】
(実施例2〜4及び比較例1)
ポリビニルアセタール樹脂の種類及び含有量、並びに、可塑剤の種類及び含有量を下記の表2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0156】
(実施例5)
第1の層及び第4の層を形成するための組成物Xの作製:
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルアセタール樹脂C)100重量部と、可塑剤(3GO)43重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.22重量部と、酸化防止剤(BHT)0.22重量部とを混合し、第1の層及び第4の層を形成するための組成物Xを得た。なお、第1の層及び第4の層中のマグネシウム濃度が60ppmとなるように、酢酸マグネシウムと2−エチル酪酸マグネシウムとの混合物(酢酸マグネシウム:2−エチル酪酸マグネシウム=50重量%:50重量%)を添加した。
【0157】
第2の層を形成するための組成物Yの作製:
ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルアセタール樹脂P)100重量部と、可塑剤(3GO)60重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.3重量部と、酸化防止剤(BHT)0.3重量部とを混合し、第2の層を形成するための組成物Yを得た。
【0158】
中間膜の作製:
第1の層及び第4の層を形成するための組成物Xと、第2の層を形成するための組成物Yとを、共押出機を用いて共押出しすることにより、第1の層(厚み330μm)/第2の層(厚み100μm)/第4の層(厚み330μm)の積層構造を有する中間膜(厚み760μm)を作製した。
【0159】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜(多層)を、縦100cm×横100cmに切り出した。次に、2枚のクリアガラス(縦100cm×横100cm×厚み2mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0160】
(実施例6〜37及び比較例2〜9)
ポリビニルアセタール樹脂の種類及び含有量、並びに、可塑剤の種類及び含有量を下記の表3〜7に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0161】
(評価)
(1)中間膜の両側の表面のガラス転移温度
実施例及び比較例における最外層に相当する層の各組成、即ち第1の層、第2の層、第
3の層及び第4の層の各組成を有する混練物を用意した。得られた混練物をプレス成型機でプレス成型して、厚みが0.35mmである樹脂膜Aを得た。得られた樹脂膜Aを25℃及び相対湿度30%の条件で2時間放置した。2時間放置した後に、TAINSTRUMENTS社製「ARES−G2」を用いて、粘弾性を測定した。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用いた。3℃/分の降温速度で100℃から−10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定を行った。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。
【0162】
また、得られた中間膜を温度23℃、及び湿度30%で1ヶ月以上保管した後に、表面層を剥がすことによって単離し、単離された表面層をプレス成型機でプレス成型した成形物のTgをTAINSTRUMENTS社製「ARES−G2」を用いて測定してもよい。測定は前段落に記載した条件と同じ条件で行った。
【0163】
(2)中間膜の引張破断エネルギー
中間膜を幅10mm、長さ8cmの試験片に切断し(JIS K6732)、引張試験機にチャック間距離40mmで試験片を取り付け、引張速度200mm/分、及びサンプリング間隔20μmで引張試験を行った。得られた応力―歪み曲線より、破断エネルギーYを求めた。破断エネルギーYは応力―歪み曲線とX軸で囲まれた部分の面積を求めることによって算出することができる。面積は隣り合うデータの応力の平均値と隣り合うデータ間の歪み値の積の和で計算することができる。破断エネルギーZは破断エネルギーYと試験片の断面積の積で計算することができる。
【0164】
(3)合わせガラスのパンメル値の測定
得られた合わせガラスを−18℃±0.6℃の温度に16時間調整し、この合わせガラスの中央部(縦150mm×横150mmの部分)を頭部が0.45kgのハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕し、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を測定し、下記表5によりパンメル値を求めた。なお、パンメル値とは、合わせガラス用中間膜とガラス板との接着力の度合いを調べる値であり、合わせガラスを−18℃±0.6℃の温度に16時間調整し、この合わせガラスの中央部(縦150mm×横150mmの部分)を頭部が0.45kgのハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕し、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度(面積%)により規定した値であり、表1で定義される。すなわち、パンメル値が高いほど、中間膜とガラスとの接着力が高いことを意味する。
【0165】
【表1】
【0166】
(4)耐貫通性
得られた合わせガラス(縦30cm×横30cm)を、表面温度が23℃となるように調整した。次いで、JIS R3212:1998に準拠して、4mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させた。6枚の合わせガラス全てについて、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった合わせガラスが3枚以下であった場合は不合格とした。4枚の場合には、新しく6枚の合わせガラスの耐貫通性を評価した。5枚の場合には、新しく1枚の合わせガラスを追加試験し、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。同様の方法で、4.0m、4.5m、5.0m、5.5m、6.0m、6.5m、及び7.0mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させ、合わせガラスの耐貫通性を評価した。
【0167】
結果を下記の表2〜7に示す。
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
【表7】
【符号の説明】
【0174】
1,1A…中間膜
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第1の層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…第2の層
3a…外側の表面
4…第3の層
4a…外側の表面
5…第4の層
5a…外側の表面
11…合わせガラス
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31…合わせガラス用中間膜
【要約】
【課題】合わせガラスの耐貫通性を高めることができる合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1の層のみを備えるか、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む第1,第2の層を備え、前記第1の層に含まれる前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が31.5モル%以上であり、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が異なる場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度のうち、低い方のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度が同一である場合、中間膜の両側の2つの表面のガラス転移温度℃をXとし、中間膜の引張破断エネルギーJ/mmをYとしたときに、Xが20℃以上、50℃以下であり、Yが(0.043X+0.83)J/mm以上である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4