特許第5899557号(P5899557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5899557
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】パウチ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/06 20060101AFI20160324BHJP
   B65D 75/52 20060101ALI20160324BHJP
   B65D 33/36 20060101ALI20160324BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   B65D83/06 S
   B65D75/52
   B65D33/36
   B65D33/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-79753(P2012-79753)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209108(P2013-209108A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(72)【発明者】
【氏名】金光 広樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将仁
(72)【発明者】
【氏名】峪 純平
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−155081(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3110795(JP,U)
【文献】 特開平09−058706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/06
B65D 30/00−33/38
B65D 67/00−79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面部及び裏面部を構成する壁面シートを備え、該シートで囲まれた充填部に粉体乃至粒体(以下、粉体等という)が充填され、容器上部に粉体等の取り出し部が形成されるパウチ容器において、
前記取り出し部よりも下方に位置する前記表面部及び前記裏面部に展開可能に接合されたガゼットシートを備え、
前記ガゼットシートには、粉体等の取り出しをするためのガゼット開口部を形成する開口補助部が設けられており、
前記開口補助部を用いて前記ガゼット開口部を形成した際に、その開口縁部が、前記粉体等の摺り切り計量を可能とする摺り切り部になることを特徴とするパウチ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のパウチ容器において、
前記開口補助部は、
切断補助線及びスリットの少なくとも一方であり、
前記ガゼットシートの折り目線に交差して形成された第1の開口補助部と、
前記第1の開口補助部に交差して形成された第2の開口補助部と、
を有することを特徴とするパウチ容器。
【請求項3】
請求項2に記載のパウチ容器において、
前記ガゼットシートは、前記各開口補助部によって区切られた、前記ガゼット開口部を塞いでいる蓋部に、前記表面部及び前記裏面部の少なくとも一方と接合する接合部を有することを特徴とするパウチ容器。
【請求項4】
請求項3に記載のパウチ容器において、
前記接合部が、前記第2の開口補助部に沿って設けられていることを特徴とするパウチ容器。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のパウチ容器において、
前記第2の開口補助部は、その長手方向端部が前記第1の開口補助部との交点に設けられることを特徴とするパウチ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器に関し、より詳しくは、粉体乃至粒体(以下、粉体等という)が充填されるパウチ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、粉ミルクやプロテイン粉末などは、金属製の缶やパウチ容器に充填された状態で販売されている。図18に例示するように、粉ミルク等の粉体90を充填する缶100には、計量スプーン91で掬った粉体90を擦り切るための擦り切り部101が設けられている。擦り切り部101は、開口部102の一部を覆うように、缶100の径方向に張り出した板形状を有する。これにより、計量スプーン91の1杯あたりの粉体90の量を一定にでき、簡便な計量が可能になる。近年、粉ミルク等の粉体を充填するパウチ容器にも、当該擦り切り機能が求められている。
【0003】
このような状況に鑑みて、擦り切りバーを備えたパウチ容器が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、チャックテープの下方に、折り畳み可能な摺り切りバーが折り畳まれた状態で接合され、容器を開口させることにより摺り切りバーが直線状に開くパウチ容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−155081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粉体を擦り切るときには、擦り切りバーの端部に計量スプーンを押し当てるが、当該端部と計量スプーンとがなす角度が小さすぎる又は大きすぎると、うまく擦り切れない場合がある。特許文献1の擦り切りバーでは、計量スプーンが当接可能なバーの端部が容器の鉛直方向に向いているため、計量スプーンの角度が大幅に制限されて使い難いという問題がある。また、擦り切りバーが比較的細いことから、バーの材質がパウチ容器を構成するシート材と同様のプラスチックシートを用いた場合には、剛性に乏しく撓み易いことも操作性不良につながる。なお、この擦り切りバーには、撓みを抑制するための固定部が設けられているが、固定部の折り曲げ操作が別途必要となり不便である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパウチ容器は、少なくとも表面部及び裏面部を構成する壁面シートを備え、該シートで囲まれた充填部に粉体等が充填され、容器上部に粉体等の取り出し部が形成されるパウチ容器において、前記取り出し部よりも下方に位置する前記表面部及び前記裏面部に展開可能に接合されたガゼットシートを備え、前記ガゼットシートには、粉体等の取り出しをするためのガゼット開口部を形成する開口補助部が設けられており、前記開口補助部を用いて前記ガゼット開口部を形成した際に、その開口縁部が、前記粉体等の摺り切り計量を可能とする摺り切り部になることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、取り出し部の開口時に展開するガゼットシートを用いて、計量スプーンで掬った粉体等を擦り切ることができる。粉体等を擦り切るときには、ガゼットシートの幅方向端部に計量スプーンを押し当てるが、当該端部は、容器幅方向を向くため、当該端部と取り出し部から挿入される計量スプーンとがなす角度を擦り切りに好適な角度(例えば、90°±45°)に調整し易く、金属製の缶に設けられた摺り切り部と同様の使用感を得ることができる。
【0008】
さらに、上記構成によれば、ガゼットシートに開口補助部を設けたことにより、使用者はカッターナイフやハサミ等を用いることなく、ガゼット開口部及び摺り切り部を容易に形成することができる。また、粉体等の取り出しを可能とする大きな開口部(ガゼット開口部)が形成されていない剛性の高いガゼットシートを用いて容器を製造することができる。つまり、使い勝手を損なうことなく、製造時におけるガゼットシートの搬送性が改善され、生産性が向上する。
【0009】
本発明に係るパウチ容器において、前記開口補助部は、切断補助線及びスリットの少なくとも一方であり、前記ガゼットシートの折り目線に交差して形成された第1の開口補助部と、前記第1の開口補助部に交差して形成された第2の開口補助部とを有することが好適である。
当該構成によれば、ガゼット開口部及び摺り切り部をより簡単に形成することができる。なお、第2開口補助部は、ガゼット開口部を形成し、第1の開口補助部は、ガゼット開口部を拡大させると共に摺り切り部を形成する。
【0010】
また、前記ガゼットシートは、前記各開口補助部によって区切られた、前記ガゼット開口部を塞いでいる蓋部に、前記表面部及び前記裏面部の少なくとも一方と接合する接合部を有することが好適である。
当該構成によれば、取り出し部を開口する操作に伴って、ガゼット開口部を形成することができる。当該構成では、取り出し部の開口により、ガゼットシートの蓋部以外の部分が表裏面部から離反して展開しようとする。このとき、蓋部に対しても展開方向に力が作用するが、蓋部は表裏面部に固定されているため展開しない。ゆえに、かかる力は蓋部とその他の部分とを区切る各開口補助部に作用し、これにより、例えば、ガゼットシートが各開口補助部に沿って切断され、ガゼット開口部が形成される。したがって、当該構成によれば、使用者の手間を省いて利便性を高めることができる。
【0011】
また、前記接合部は、前記第2の開口補助部に沿って設けられることが好適である。
当該構成によれば、取り出し部の開口操作に伴う力が開口補助部に作用し易くなり、ガゼット開口部の形成がさらに容易となる。
【0012】
また、前記第2の開口補助部は、その長手方向端部が前記第1の開口補助部との交点に設けられることが好適である。当該構成によれば、第2の開口補助部が切り込まれていない剛性の高い摺り切り部を形成することができ、良好な摺り切り操作性を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るパウチ容器によれば、良好な擦り切り操作が可能になる。また、ガゼットシートの搬送性が改善され、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態であるパウチ容器の正面図である。
図2図1のA‐A断面を模式的に示す図である。
図3図1に示すパウチ容器に適用される下向きガゼットシートの展開図である。
図4】本発明の第1の実施形態であるパウチ容器の斜視図であって、取り出し口を開口した状態を示す図である。
図5図4に示す下向きガゼットシートを右側上方から見た図である。
図6】本発明の第1の実施形態であるパウチ容器の製造工程の一部を模式的に示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態であるパウチ容器の正面図であって、粉体を擦り切る様子を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態であるパウチ容器の上面図であって、粉体を擦り切る様子を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態であるパウチ容器の変形例を示す正面図である。
図10図9に示すパウチ容器に適用される下向きガゼットシートの展開図である。
図11】本発明の第2の実施形態であるパウチ容器の正面図である。
図12図11のB‐B断面を模式的に示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態であるパウチ容器の斜視図であって、取り出し口を開口した状態を示す図である。
図14図13に示す上向きガゼットシートを右側上方から見た図である。
図15】本発明の第3の実施形態であるパウチ容器の正面図である。
図16図15に示すパウチ容器に適用される上向きガゼットシートの展開図である。
図17】本発明の第3の実施形態であるパウチ容器の上面図であって、取り出し口を開口した状態を示す図である。
図18】擦り切り部を備えた缶において、粉体を擦り切る様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図10は、第1の実施形態であるパウチ容器10を、図11図14は、第2の実施形態であるパウチ容器50を、図15図17は、第3の実施形態であるパウチ容器70をそれぞれ示す。
【0016】
なお、本明細書において、「取り出し部」の用語は、容器外部と容器内部空間である充填部とを連通させる開口部だけでなく、シート材が切断される等して当該開口部が形成される部分(即ち、開口部形成予定部)も含むことを意図する。実施形態では、前者を取り出し口18、後者を取り出し口形成予定部18zと称して説明する。
【0017】
実施形態では、パウチ容器に充填される「粉体乃至粒体」を、粉ミルクやプロテイン粉末などを意図する粉体90として説明する。但し、「粉体乃至粒体」は、計量スプーン91で掬って擦り切ることができるものであれば、特に限定されず、砂糖、塩等の調味料や小麦粉など、又は粒径がより大きなコーヒー豆や茶葉なども含まれる。
【0018】
また、実施形態では、取り出し口18が設けられる部分を容器の「上部」とし、上部に対向する部分を容器の「下部」とする。また、各シート材が積層される方向を容器の「表裏方向」とし、上下方向及び表裏方向に直交する方向を容器の「幅方向」とする。以下では、単に、上下方向、表裏方向、幅方向という場合がある。
【0019】
また、実施形態では、蓋部に接合部を設けて、取り出し口18の開口によりガゼット開口部が形成されるものとして説明するが、パウチ容器は接合部を有さない形態であってもよい。この場合、ガゼット開口部を形成する方法として、蓋部を指等で押さえながらガゼットシートを展開する方法、或いは切断補助線を計量スプーン91等で押してガゼットシートを切断する方法などが例示できる。
【0020】
<第1の実施形態>
まず、図1及び図2を参照して、パウチ容器10の構成を説明する。
図1は、粉体90が充填された未開封状態のパウチ容器10を示し、図2は、下向きガゼットシート30及びその近傍を上下方向に切断した断面を示す。
【0021】
パウチ容器10は、表面シート11と、裏面シート12と、底ガゼットシート13と、を備え、内容物の充填により自立可能なスタンディングパウチである。表面シート11及び裏面シート12は、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ構成するシート材であり、底ガゼットシート13は、表面部と裏面部との間に折り込まれて挿入され、粉体90の充填により展開する底ガゼット部を構成するシート材である。底ガゼットシート13は、上方に向かって山折りされている(図1参照)。
【0022】
パウチ容器10は、互いに重ね合わされた表面シート11と裏面シート12との間に、底ガゼットシート13を容器下端側から挿入した状態で各シート材の端縁同士を接合するシール部を形成し、シート材で囲まれた容器内部空間を密閉した構造である。この容器内部空間が、粉体90が充填される充填部15となる。表面シート11及び裏面シート12は、いずれも上下方向にやや長く延びた略矩形状を呈する。底ガゼットシート13も略矩形状を呈し、例えば、表面シート11及び裏面シート12の下端から1/4程度の範囲に設けられる。
【0023】
さらに、パウチ容器10は、表面シート11及び裏面シート12に展開可能に接合された下向きガゼットシート30を備える。そして、下向きガゼットシート30により計量スプーン91による粉体90の擦り切り計量を可能とする擦り切り部が形成される。より詳しくは、下向きガゼットシート30の展開により、粉体90の取り出しを可能とするガゼット開口部37が形成され、その開口縁部が摺り切り部となる。
【0024】
下向きガゼットシート30は、充填部15上を覆って設けられたガゼットシートであって、下方に向かって山折りされている(図1,2参照)。なお、パウチ容器10では、下向きガゼットシート30にかからない範囲で粉体90が充填されている。以下、下向きガゼットシート30よりも下方を充填部15と称する。
【0025】
パウチ容器10を構成する各シート材は、通常、単層又は複層の樹脂フィルムから構成される。シート材を構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、上記シール部は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シート材には、ヒートシール性も要求される。シート材としては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シート材が好適であり、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。
【0026】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。
【0027】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0028】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0029】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0030】
下向きガゼットシート30については、上述の単層又は複層の樹脂フィルムからなるシート材が用いられ、上述のシーラント層を構成する樹脂フィルムのみであってもよい。また、例えば、後述するサイドシール部22及び接合部42の形成を容易にするため、複層のシーラント層を有する両面ヒートシール性の樹脂フィルムを用いることが好適である。そして、折り畳まれた下向きガゼットシート30の内面(表側半部30aと裏側半部30bとが対向する面)に設けられる第1のシーラント層は、その外面(表面シート11及び裏面シート12に対向する面)に設けられる第2のシーラント層よりも溶融軟化温度を高く設定することが好ましい。具体例としては、第2のシーラント層にLDPEを用いた場合、第1のシーラント層にはLLDPEやHDPEを用いることが好ましい。これにより、接合部42の形成時に内面同士が接合することを防止でき、接合部42の形成が容易になる。
【0031】
なお、接合部42の形成時に下向きガゼットシート30の内面同士の接合を防止する方法としては、上記方法の他にも、対向する第1のシーラント層の間に鉄板等の非溶融性板状部材を挟んだ状態で接合部42を形成する方法、接合部42の内面側に第1のシーラント層を覆うオーバーコート層を形成する方法などが例示できる。かかるオーバーコート層は、第1のシーラント層よりも高い溶融軟化温度を有する樹脂(例えば、EPやCPP、ON等)から構成される。
【0032】
各シート材、特に表面シート11及び裏面シート12には、内容物の商品名や原材料・使用上の注意事項等の商品説明、その他各種デザインなどを表示するための印刷層(図示せず)を設けることが好適である。印刷層は、例えば、グラビア印刷等の公知の方法により、ベースフィルム層の内側の面に形成できる。
【0033】
パウチ容器10は、上記シール部として、上縁シール部20と、下縁シール部21と、サイドシール部22とを有する。上縁シール部20は、例えば、粉体90の充填後に形成されるシール部であって、表面シート11及び裏面シート12の上縁同士を接合して形成される。下縁シール部21は、底ガゼットシート13の端縁に形成されるシール部であり、底ガゼットシート13と表面シート11及び裏面シート12とが接合されて形成される。また、底ガゼットシート13には、幅方向両端に切欠き14が形成されており、切欠き14を通して表面シート11と裏面シート12とが直接接合されている。サイドシール部22は、容器幅方向両端部において、表面シート11と裏面シート12とを直接接合して形成される。また、サイドシール部22は、その一部において、表面シート11と下向きガゼットシート30、下向きガゼットシート30の内面同士、及び下向きガゼットシート30と裏面シート12がそれぞれ接合して形成される。
【0034】
また、パウチ容器10には、上縁シール部20の近傍に、チャック16と、ノッチ17とが設けられている。チャック16は、下向きガゼットシート30よりも上方に設けられ、ノッチ17は、チャック16よりも上方に設けられる。
【0035】
チャック16は、例えば、凸条部付きの第1のシートと、凸条部に嵌合する凹条部付きの第2のシートとを対向配置して構成される。例えば、第1のシートが表面シート11の内面に接合され、第2のシートが裏面シート12の内面に接合される。
【0036】
ノッチ17は、表面シート11及び裏面シート12を切断して開封するための切断起点となる切り込みであり、左右のサイドシール部22にそれぞれ設けることができる。ノッチ17からシート材を幅方向に沿って切断すると、上縁シール部20が除去されて、容器外部と充填部15とを連通させる取り出し口18(図4参照)が形成される。なお、図1のノッチ17から延びる二点鎖線は、開封時に切断されて取り出し口18となる取り出し口形成予定部18zを示す。開封後はチャック16により取り出し口18を開閉できる。
【0037】
以下、下向きガゼットシート30の構成について、さらに詳説する。
ここでは、図3図5を適宜参照する。図3は、下向きガゼットシート30を抜き出して展開した様子を示す。図4は、取り出し口18を開口した様子を示す(チャック16を省略し、一部のシール部のみにハッチングを付する)。図5は、図4に示す下向きガゼットシート30を右側上方から見た図である。
【0038】
下向きガゼットシート30は、取り出し口18が閉じられた状態において、下方に向かって凸となるように折り目線31で折り畳まれたガゼットシートである。下向きガゼットシート30は、取り出し口18が開口された状態において、ガゼット開口部37及び摺り切り部が形成されるように展開して擦り切り機能を発現する。なお、折り目線31よりも表面シート11側に位置する部分(以下、表側半部30aとする)と、折り目線31よりも裏面シート12側に位置する部分(以下、裏側半部30bとする)との上下方向長さが略等しいことが好適である。
【0039】
下向きガゼットシート30は、取り出し口18を開閉するチャック16よりも下方に位置する表面シート11の内面及び裏面シート12の内面にそれぞれ接合されている。具体的には、表側半部30aの上端部が表面シート11にヒートシールされ、裏側半部30bの上端部が裏面シート12にヒートシールされて、2本のライン状の接合部33が形成されている。チャック16及び下向きガゼットシート30は、生産性や意匠性の観点から、いずれも容器幅方向に沿って互いに略平行に、且つ容器の全幅に亘って設けられることが好適である。また、下向きガゼットシート30は、充填部15の大容量化等の観点から、チャック16に近接して設けられることが好ましい。
【0040】
下向きガゼットシート30は、未開封状態において、充填部15上の全域を覆って設けられている。即ち、未開封状態における下向きガゼットシート30には、ガゼット開口部37が形成されていない。また、擦り切り部も形成されていない。下向きガゼットシート30は、取り出し口18の開口に伴って、ガゼット開口部37が形成されることを特徴とするものであり、ガゼット開口部37を形成するための開口補助部を有する。なお、かかる開口補助部を用いてガゼット開口部37を形成した際に、その開口縁部が、摺り切り部になる。
【0041】
図3に示すように、本実施形態における開口補助部は、下向きガゼットシート30の折り目線31に交差して形成されたミシン目線40a,40b(第1の開口補助部)と、ミシン目線40a,40bに交差して形成されたミシン目線41(第2の開口補助部)とを有する。なお、ミシン目線41は、ガゼット開口部37を形成するための切断補助線であり、ミシン目線40a,40bは、ガゼット開口部37を拡大させると共に摺り切り部を形成するための切断補助線である。ミシン目線40a,40bとミシン目線41とは、擦り切り性等の観点から、互いに略直交し、且つミシン目線40a,40bが折り目線31に略直交して形成されることが好適である。即ち、ミシン目線41は、折り目線31に沿って形成されることが好適である。
【0042】
なお、各ミシン目線は、貫通孔又は凹状部が所定のピッチで線状に並んで形成されており、貫通孔等の寸法やピッチは特に限定されない。例えば、貫通孔等の寸法は0.1mm〜1mm程度、ピッチは0.1mm〜2mm程度であって、各ミシン目線の交点P7,P8から所定の長さ(例えば、1mm〜10mm程度)の切り込みが形成されていてもよい。切断補助線としては、ミシン目線の代わりに又はミシン目線と共に、ハーフカット線を用いてもよい。
【0043】
下向きガゼットシート30では、ミシン目線41が折り目線31上に形成されている。そして、ミシン目線41は、下向きガゼットシート30の幅方向中央部に形成されており、ミシン目線41の両側にミシン目線40a,40bがそれぞれ形成されている。これにより、開口寸法が大きく見栄えの良いガゼット開口部37を形成することができる。図3に例示する形態では、ミシン目線40a,40bと、ミシン目線41との交点P7,P8が、ミシン目線41の両端にそれぞれ位置する。即ち、ミシン目線41は、ミシン目線40a,40bよりも幅方向外側には形成されていない。これにより、擦り切り部に切り込みが入らず剛性の高い摺り切り部を得ることができる。
【0044】
また、下向きガゼットシート30では、ミシン目線40a,40bの中点に交点P7,P8がそれぞれ位置する。ミシン目線41は折り目線31上に形成されているため、ミシン目線40a,40bは、表側半部30a及び裏側半部30bにおいて同じ長さで形成されている。つまり、下向きガゼットシート30(抜き出して展開した場合)には、ミシン目線40a,40b,41が平面視略Iの字に形成されている。
【0045】
さらに、下向きガゼットシート30には、各ミシン目線によって区切られた蓋部43に接合部42が設けられている。蓋部43は、ガゼット開口部37となる部分に対応する部分(図3の網目ハッチングを付した部分)であって、ガゼット開口部37を塞いでいる部分といえる。接合部42は、下向きガゼットシート30と表面シート11及び裏面シート12の少なくとも一方とを接合するポイントシール部である。好ましくは、表側半部30a及び裏側半部30bの外面にそれぞれ接合部42が設けられ、各外面と表裏面シートの内面とを接合する(図3には接合部42の形成予定部を示す)。つまり、蓋部43は表裏面シートに固定されており展開しない非展開部となる。これにより、取り出し口18の開口時に下向きガゼットシート30に作用する力を利用して、蓋部43とその他の部分とを区切る各ミシン目線で下向きガゼットシート30が切断され、ガゼット開口部37の形成が可能となる。
【0046】
接合部42は、ミシン目線41に沿って設けられている。より詳しくは、図3に示すように、各ミシン目線の交点P7,P8に近接する4箇所に設けられている。これにより、取り出し口18の開口操作に伴う力が各ミシン目線が形成された部分に作用し易くなり、ガゼット開口部37の形成が容易になる。なお、接合部42の形成パターンは、図3に示す平面視円形状に限定されず、平面視四角形状や三角形状、ライン状(後述の図9等参照)であってもよい。
【0047】
図4に示すように、パウチ容器10では、各ミシン目線で下向きガゼットシート30が切断されて、容器幅方向中央部にガゼット開口部37が形成される。また、ガゼット開口部37を幅方向両側から挟むように、充填部15上の一部を覆って展開する2つの本体部32a,32bが形成される。下向きガゼットシート30の展開状態において、蓋部43は、ミシン目線41で2つに分離されて表裏面シートの内面にそれぞれ接合されており、第2端部35a,35bよりも下方に位置している。
【0048】
本体部32a,32bは、その幅方向一端部である第1端部34a,34bがサイドシール部22により表裏面シートに接合されており、表裏面シートに接合されずガゼット開口部37側に向いた幅方向他端部である第2端部35a,35bが粉体90の擦り切り計量に利用される。つまり、ガゼット開口部37の縁部である第2端部35a,35bが摺り切り部として機能する。
【0049】
本体部32a,32bは、例えば、いずれも同じ寸法を有する。本体部32a,32bの各々の幅方向長さは、擦り切り性や粉体90の取り出し性等の観点から、パウチ容器10の幅方向長さの10%〜40%程度が好ましく、15%〜30%程度がより好ましい。換言すると、ガゼット開口部37の幅方向長さは、パウチ容器10の幅方向長さの20%〜80%程度が好ましく、30%〜60%程度がより好ましい。
【0050】
本体部32a,32bは、第2端部35a,35b側において、最大で表側半部30aと裏側半部30bとが略平行になるまで展開する。大きく展開した本体部32a,32bでは、略三角形状を呈する上面36a,36bが形成される。図5に示すように、例えば、上面36aの三角形は、サイドシール部22に接する頂点P1を下端とし、接合部33に接する頂点P2,P3を上端とする傾斜した二等辺三角形であり、第2端部35aが上辺となる。このように、展開した本体部32aは、上面36aの各頂点P1〜P3に対応する部分で安定に支持されている。
【0051】
なお、本体部32a,32bには、サイドシール部22に接する頂点P1の位置に粉体回収孔を形成してもよい。これにより、本体部32a,32b上に存在する粉体90を充填部15に戻すことができ、上面36a,36bが衛生的に保たれる。
【0052】
次に、図6を参照しながら、上記構成を備えるパウチ容器10の製造方法の一例について説明する。図6は、パウチ容器10の製造工程のうち、各シート材の長尺体を積層し、各シール部を形成する工程を模式的に示す(図面の明瞭化のため粉体90を省略する)。ここでは、長尺体の長手方向をMD方向とし、長尺体の幅方向をTD方向とする。
【0053】
図6に示すように、まず、表面シート11、裏面シート12、底ガゼットシート13、チャック16を構成するシート(例えば、凸条部付きの第1のシート及び凹条部付きの第2のシート)、及び下向きガゼットシート30の長尺体(以下、長尺体11z,12z,13z,16z,30zとする)をそれぞれ準備して互いに積層する。長尺体13z,30zは、積層前において、いずれもMD方向に沿った一端側に向かって山折りされる。また、長尺体30zには、ダイカットロール等によりミシン目線40a,40b,41が形成される。なお、少なくともミシン目線41は、長尺体30zが折り畳まれる前に折り目線31に沿って、その上に形成されることが好適である。
【0054】
本製造例において、長尺体30zは、他の長尺体と同様に、大きな開口部(抜き部分)を有さないため剛性が高く、搬送性が良好である。具体的には、長尺体30zが製造ライン上で捻れたり切断されたりすることを抑制できる。特に、折り目線31に交差して形成される開口補助部に切断補助線(ミシン目線40a,40b)を用いることで、より良好な搬送性を実現できる。また、大きな開口部を有さない長尺体30zによれば、後述のヒートシール工程においてシール位置の規制が容易となる。
【0055】
各長尺体の積層工程では、まず、長尺体11zと長尺体12zとを重ね合わせ、長尺体11z及び長尺体12zの下端に長尺体13zを挿入し、長尺体11z及び長尺体12zの上部に長尺体16z,30zをそれぞれ挿入する。このとき、長尺体30zを長尺体16zよりも下端側に挿入する。なお、長尺体16zよりも上端側の部分には、後の工程でノッチ17等が形成される。
【0056】
積層工程を経た上記長尺体には、ヒートシール工程で各シール部が形成される。ヒートシール工程では、例えば、上記長尺体の上縁、下縁、及びTD方向に沿った所定部位をヒートシールして、上縁シール部20、下縁シール部21、及びサイドシール部22(2つの容器分の幅広シール部)を形成する。また、ヒートシール工程では、長尺体16z,30zを長尺体11z及び長尺体12zにそれぞれ接合する。長尺体30zの上端部には、MD方向に沿った接合部33が形成される。
【0057】
さらに、ヒートシール工程では、長尺体30zの蓋部43に接合部42を形成する。具体的には、長尺体30zの第1のシーラント層(内面側)にLLDPEを用い、第2のシーラント層(外面側)にLDPEを用いた場合、ヒートシール温度Tを、LLDPEの融点>T≧LDPEの融点に設定する。これにより、長尺体30zの内面同士が接合することなく接合部42が形成される。
【0058】
続いて、ダイカットロール等を用いて、例えば、サイドシール部22の仮想線Xに沿って上記長尺体をカットし、個々の容器サイズに分割する。このとき、サイドシール部22にノッチ17を形成できる。こうして、パウチ容器10が得られる。なお、粉体90の充填方法は、特に限定されないが、粉体90は容器上端から充填されることが好適である。したがって、接合部33及び上縁シール部20を形成する前に粉体90を充填することが好適である。
【0059】
次に、図7及び図8を参照し、下向きガゼットシート30を用いて粉体90を擦り切る様子を例示しながら、上記構成を備えるパウチ容器10の作用効果について詳説する。なお、図4及び図5を適宜参照する。図7は、パウチ容器10の正面図、図8は、パウチ容器10の上面図であって、いずれも粉体90を擦り切る様子を示す。
【0060】
図4等に示すように、充填部15から粉体90を取り出すときには、ノッチ17を用いて取り出し口18を形成した後、チャック16を開放することにより取り出し口18を開口する。そして、取り出し口18を大きく開口することにより、容器上部において、表面シート11及び裏面シート12が互いに離反し、下向きガゼットシート30の蓋部43以外の部分(即ち、本体部32a,32bとなる部分)が表裏面シートから離反して展開しようとする。このとき、蓋部43に対しても展開方向に力が作用するが、蓋部43は表裏面シートに固定されているため展開しない。ゆえに、かかる力は蓋部43と本体部32a,32bを区切る各ミシン目線に作用し、これにより、下向きガゼットシート30が各ミシン目線に沿って切断され、ガゼット開口部37が形成される。そして、その開口縁部が擦り切り部(第2端部35a,35b)となる。
【0061】
パウチ容器10では、第2端部35a,35bのいずれを擦り切り計量に使用してもよい。以下では、本体部32aの第2端部35aを使用するものとして説明する。本体部32aは、上記のように、第1端部34aは展開せず、第2端部35a側で表側半部30aと裏側半部30bとが互いに略平行な板状となるように展開する。そして、サイドシール部22に接する頂点P1を下端、接合部33に接する頂点P2,P3を上端とする傾斜した略三角形状の上面36aが形成される(図5参照)。
【0062】
図7及び図8に示すように、パウチ容器10では、本体部32aの展開により、第2端部35aに粉体90を掬った計量スプーン91の皿部を押し当てることが可能となる。そして、第2端部35aに皿部を押し当てながら計量スプーン91を上方に引くことにより余分な粉体90を擦り切ることができる。こうして、計量スプーン91の1杯あたりの粉体90の量を一定にでき、簡便な計量が可能になる。
【0063】
また、パウチ容器10では、第1端部34aがサイドシール部22により固定され、展開した本体部32aが上面36aの各頂点P1〜P3に対応する部分で安定に支持されているため、計量スプーン91を押し当てたときに本体部32aが撓み難く、操作性が良好である。さらに、下向きガゼットシート30では、上面36aが第2端部35aに向かって上方に傾斜し、後述する上向きガゼットシート60の場合よりも第2端部が容器上方に位置する。このため、第2端部35aと取り出し口18との距離が近くなるから、計量スプーン91をより操作し易くなる。
【0064】
さらに、パウチ容器10は、使い勝手を損なうことなく、製造時における下向きガゼットシート30の良好な搬送性を実現でき、優れた生産性(量産性)を有する。即ち、パウチ容器10によれば、ミシン目線40a,40b,41、及び接合部42を設けた下向きガゼットシート30を用いることにより、製造時にはガゼット開口部37を有さず、使用時にガゼット開口部37を形成することができる。なお、取り出し口18を開口するだけでガゼット開口部37を容易に形成することができるため、使用者に手間をかけない。
【0065】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
例えば、上記では、スタンディングパウチを例示したが、自立性を有さない平パウチなど、他のパウチ形態に本発明の構成を適用してもよい。
【0066】
また、上記では、ミシン目線40a,40bと、ミシン目線41との交点P7,P8が、ミシン目線41の両端にそれぞれ位置する形態を例示したが、交点P7,P8のいずれか一方をミシン目線41の中途部に位置させた形態としてもよい。この場合(交点P8がミシン目線41の中途部に位置する場合)、例えば、一方の本体部32bに折り目線31に沿った切り込みが形成される。そして、かかる切り込みに計量スプーン91の柄を挿通し、スプーン保持部として利用することができる。
【0067】
また、図9及び図10に示すように、ミシン目線41の代わりにスリット41xを形成してもよい。スリット41xは、例えば、容器幅方向中央部において、折り目線31が形成される部分を切り欠いて形成されている。即ち、本体部32a,32bに形成される折り目線31の延長線上にスリット41xが位置する。
【0068】
スリット41xは、下向きガゼットシート30xを切り抜いた開口部であるが、ガゼット開口部37のように粉体90の取り出しが可能な開口部ではない。スリット41xは、例えば、4mm×75mm程度の小さな開口寸法を有する、ガゼット開口部37を形成するための開口補助部である。したがって、スリット41xにより下向きガゼットシート30xの搬送性が損なわれることはない。この場合、下向きガゼットシート30xには、それが折り畳まれた状態において、スリット41xに対応する小さな平面視凹状部が形成される。スリット41xは、例えば、下向きガゼットシート30xを折り畳んだ状態で容易に形成することができる。
【0069】
また、上記では、開口補助部をミシン目乃至スリットにより設けたが、下向きガゼットシート30の剛性を損なわずに良好な搬送性を維持できる範囲であれば切込線や孔等により設けることもでき、さらには、これらを組み合わせて形成することもできる。要は、ガゼット開口部37を容易に形成できるものであれば特に限定されない。
【0070】
また、図9及び図10に示すように、接合部42の代わりにスリット41xに沿ってライン状の接合部42xを形成してもよい。
【0071】
また、上記では、取り出し口18を開口するだけでガゼット開口部37を容易に形成すべく接合部42を設けたが、接合部42は無くてもよい。接合部42が無くとも開口補助部が設けられているため、使用時にスプーン等で押し破ることにより、容易にガゼット開口部37を形成することができる。
【0072】
<第2の実施形態>
図11図14を参照しながら、パウチ容器50について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点を主に説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成には同じ名称、図番を援用して重複する説明を省略する。
図11は、粉体90が充填された未開封状態のパウチ容器50を示し、図12は、上向きガゼットシート60及びその近傍を上下方向に切断した断面を示す。図13及び図14は、取り出し口18を開口した様子を示す。
【0073】
パウチ容器50は、擦り切り部を形成する上向きガゼットシート60を備える。図11及び図12に示すように、上向きガゼットシート60は、取り出し口18が閉じられた状態において、上方に向かって凸となるように折り目線61で折り畳まれている。即ち、上向きガゼットシート60は、折り目線61と接合部63との位置関係が、下向きガゼットシート30の場合と上下逆である。
【0074】
上記相違点に起因して、上向きガゼットシート60の展開形態も下向きガゼットシート30の場合と異なる。図13及び図14に示すように、本体部62a,62bは、擦り切り部として機能する第2端部65a,65b側において、最大で表側半部60aと裏側半部60bとが略平行になるまで展開する。図14に示すように、例えば、本体部62aが展開すると、サイドシール部22に接する頂点P4を上端とし、接合部63に接する頂点P5,P6を下端とする傾斜した二等辺三角形状の上面66aが形成される。これにより、良好な擦り切り操作性を実現できると共に、擦り切り後に上面66a,66bに残存する粉体90は、その傾斜に沿って充填部15内に滑落し、上面66a,66bが衛生的に保たれる。
【0075】
また、上向きガゼットシート60は、ガゼット開口部67を形成するための開口補助部として、ミシン目線51a,51b(第1の開口補助部)、ミシン目線52(第2の開口補助部)、及び接合部53を有する。各ミシン目線は、下向きガゼットシート30の場合と同様に、互いに略直交して平面視Iの字状(上向きガゼットシート60を抜き出して展開した場合)に形成されている。ミシン目線52は、折り目線61に沿って上向きガゼットシート60の上端に形成され、接合部53もミシン目線52に沿って蓋部54の上端近傍に形成される。そして、上向きガゼットシート60には、取り出し口18に伴って、ガゼット開口部67が形成され、その開口縁部(第2端部65a,65b)が摺り切り部となる。これにより、使い勝手を損なうことなく、製造時における上向きガゼットシート60の良好な搬送性を実現できる。なお、蓋部54は、上向きガゼットシート60の展開状態において、第2端部65a,65bよりも上方に位置している。
【0076】
<第3の実施形態>
図15図17を参照しながら、パウチ容器70について説明する。ここでは、上記実施形態との相違点を主に説明するものとし、上記実施形態と同様の構成には同じ名称、図番を援用して重複する説明を省略する。
図15は、粉体90が充填された未開封状態のパウチ容器70を示す。図16は、上向きガゼットシート80を抜き出して展開した様子を示す。図17は、取り出し口18を開口した状態を示す図である。
【0077】
パウチ容器70は、上向きガゼットシート80を備える。図15及び図16に示すように、上向きガゼットシート80は、ガゼット開口部87を形成するための開口補助部として、ミシン目線71(第1の開口補助部)、ミシン目線72(第2の開口補助部)、及び接合部73を有する。パウチ容器70では、折り目線81に交差して形成される開口補助線がミシン目線71の1本のみであり、各ミシン目線が互いに略直交して平面視Tの字状(上向きガゼットシート80を抜き出して展開した場合)に形成される点で上記実施形態と異なる。ミシン目線72は、折り目線81に沿って、その上に形成されており、一端がミシン目線71の中点に、他端が上向きガゼットシート80の幅方向端部にそれぞれ位置している。
【0078】
上向きガゼットシート80には、取り出し口18に伴って、ガゼット開口部87が形成される。図17に示すように、パウチ容器70には、取り出し口18の開口状態において、三角形状の上面86を呈するように展開した1つの本体部82が形成される。本体部82は、上記実施形態の場合と同様に、第1端部84がサイドシール部22により固定され、ガゼット開口部87側に向いた開口縁部である第2端部85が擦り切り部として機能する。なお、蓋部74は、ミシン目線72に沿ってライン状に形成された接合部73により表裏面シートに固定されている。パウチ容器70によれば、上記実施形態よりもガゼット開口部87の開口寸法を大きくすることが容易であり、粉体90の取り出し性に優れる。
【0079】
また、パウチ容器70には、表面シート11及び裏面シート12と上向きガゼットシート80との間に粉体回収部88が設けられている。粉体回収部88は、本体部82の下端部のうち、第2端部85の近傍を除く部分に接合部83を形成しないことによって設けられた隙間である。パウチ容器50では、本体部の全幅に亘って下端部が表裏面シートに接合されているため、本体部と表裏面シートとの間に粉体90が溜まり易いが、パウチ容器70によれば、粉体回収部88を設けたことでこの問題を改善できる。これにより、パウチ容器70は、例えば、見栄えが良く、上向きガゼットシート80の衛生面が向上した容器となる。
【符号の説明】
【0080】
<第1の実施形態>
10 パウチ容器、11 表面シート、12 裏面シート、13 底ガゼットシート、14 切欠き、15 充填部、16 チャック、17 ノッチ、18 取り出し口、18z 取り出し口形成予定部、20 上縁シール部、21 下縁シール部、22 サイドシール部、30 下向きガゼットシート、30a 表側半部、30b 裏側半部、31 折り目線、32a,32b 本体部、33,42 接合部、34a,34b 第1端部、35a,35b 第2端部、36a,36b 上面、37 ガゼット開口部、40a,40b,41 ミシン目線、43 蓋部、90 粉体、91 計量スプーン、P1,P2,P3 頂点。
【0081】
<第2,3の実施形態>
50,70 パウチ容器、51a,51b,52,71,72 ミシン目線、53,63,73,83 接合部、54,74 蓋部、60,80 上向きガゼットシート、60a 表側半部、60b 裏側半部、61,81 折り目線、62a,62b,82 本体部、64a,64b,84 第1端部、65a,65b,85 第2端部、66a,66b,86 上面、67,87 ガゼット開口部、88 粉体回収部、P4,P5,P6 頂点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図18