特許第5900045号(P5900045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

特許5900045酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム
<>
  • 特許5900045-酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム 図000002
  • 特許5900045-酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム 図000003
  • 特許5900045-酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム 図000004
  • 特許5900045-酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム 図000005
  • 特許5900045-酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム 図000006
  • 特許5900045-酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900045
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20160324BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20160324BHJP
【FI】
   H01M8/04 J
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 N
   !H01M8/12
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-55021(P2012-55021)
(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-191316(P2013-191316A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】篠田 和伸
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−051061(JP,A)
【文献】 特開平06−260199(JP,A)
【文献】 特開2000−090954(JP,A)
【文献】 特開2003−178791(JP,A)
【文献】 特開2006−216241(JP,A)
【文献】 特開2007−317493(JP,A)
【文献】 特開2006−001540(JP,A)
【文献】 特開2005−206414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、前記酸化剤ガスを供給する供給装置とを連通して前記酸化剤ガスを前記燃電池に供給する酸化剤ガス供給用管部材であって、
前記酸化剤ガス供給用管部材は、
前記酸化剤ガスが流通する第1酸化剤ガス流路部と、
前記第1酸化剤ガス流路部の一端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部の一端と前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス流路部とを直結する第1連結部と、
前記第1酸化剤ガス流路部の他端側に設けられて、該前記第1酸化剤ガス流路部の他端と前記供給装置から供給される前記酸化剤ガスの流量を検出する流量計とを直結する第2連結部と、
前記第1酸化剤ガス流路部の途中に凹設されて、前記第1連結部側から流入する流体を溜めるトラップ部と、から構成され
前記第1酸化剤ガス流路部は、
管部材と、
前記管部材の一端が接続される第1接続部と、
前記管部材の他端が接続される第2接続部と、
前記第1接続部と前記第1連結部とを連通する第1連通部と、
前記第2接続部と前記第2連結部とを連通する第2連通部と、から構成され、
前記第1連結部、前記第1連通部、前記トラップ部および前記第2連通部は鉛直方向に沿って並べて配設されている酸化剤ガス供給用管部材。
【請求項2】
燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、前記酸化剤ガスを供給する供給装置とを連通して前記酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給用管部材であって、
前記酸化剤ガス供給用管部材は、
前記酸化剤ガスが流通する第1酸化剤ガス流路部と、
前記第1酸化剤ガス流路部の一端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部の一端と前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス流路部とを直結する第1連結部と、
前記第1酸化剤ガス流路部の他端側に設けられて、該前記第1酸化剤ガス流路部の他端と前記供給装置から供給される前記酸化剤ガスの流量を検出する流量計とを直結する第2連結部と、
前記第1酸化剤ガス流路部の途中に凹設されて、前記第1連結部側から流入する流体を溜めるトラップ部と、から構成され、
前記第1酸化剤ガス流路部は、
管部材と、
前記管部材の一端が接続される第1接続部と、
前記管部材の他端が接続される第2接続部と、
前記第1接続部と前記第1連結部とを連通する第1連通部と、
前記第2接続部と前記第2連結部とを連通する第2連通部と、から構成され、
前記第1連結部、前記第1連通部、前記トラップ部は鉛直方向に沿って並べて配設されており、前記第2連通部は前記第1連通部または前記トラップ部の横に配置されている酸化剤ガス供給用管部材。
【請求項3】
前記第2酸化剤ガス流路部は、前記燃料電池を囲むように配設されている請求項1又は2に記載の酸化剤ガス供給用管部材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載した酸化剤ガス供給用管部材を備えている燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤ガス供給用管部材およびそれを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、燃料電池システムは、燃料ガスと空気を用いて発電を行なう燃料電池と、原料と水とから水素リッチな燃料ガスを生成する改質部を有する水素生成器と、前記水素生成器で生成した燃料ガスを前記燃料電池に流通させる燃料ガス経路と、空気を供給する空気供給手段と、前記空気供給手段から供給された空気を前記燃料電池に流通させるカソード空気経路と、を備えている。
【0003】
このように構成された燃料電池システムにおいては、燃料電池システムの再起動時、停止中に空気流通経路に溜まった凝縮水によって流路が閉塞する場合があった。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の燃料電池システムにおいては、燃料電池に空気の供給を開始する際に、開閉弁を開放して燃料電池への空気の供給を行なうよう制御すると共に、所定流量以上の空気で空気流通流路に溜まった凝縮水をシステム系外に排出することで流路の圧力損失を正常に戻した後、燃料電池に供給する空気量を所定量になるように調整するようになっている。これによって、燃料電池システムの再起動時、停止中に空気流通経路に溜まった凝縮水による流路閉塞を回避することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−204430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載されている燃料電池システムにおいては、所定流量以上の空気で空気流通流路に溜まった凝縮水をシステム系外に排出することができる。しかし、配管系統内部の凝縮水を所定流量以上で押し流そうとする場合、極めて高い排圧をもったブロワを搭載する必要があり、ブロワ機器のサイズや重量、コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、燃料電池システムにおいて、システムの大型化・高コスト化を招くことなく、燃料電池への酸化剤ガス供給流路が溜まった水によって閉塞することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る酸化剤ガス供給用管部材の発明は、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、酸化剤ガスを供給する供給装置とを連通して酸化剤ガスを燃電池に供給する酸化剤ガス供給用管部材であって、酸化剤ガス供給用管部材は、酸化剤ガスが流通する第1酸化剤ガス流路部と、第1酸化剤ガス流路部の一端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部の一端と燃料電池に酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス流路部とを直結する第1連結部と、第1酸化剤ガス流路部の他端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部の他端と供給装置から供給される酸化剤ガスの流量を検出する流量計とを直結する第2連結部と、第1酸化剤ガス流路部の途中に凹設されて、第1連結部側から流入する流体を溜めるトラップ部と、から構成され第1酸化剤ガス流路部は、管部材と、管部材の一端が接続される第1接続部と、管部材の他端が接続される第2接続部と、第1接続部と第1連結部とを連通する第1連通部と、第2接続部と第2連結部とを連通する第2連通部と、から構成され、第1連結部、第1連通部、トラップ部および第2連通部は鉛直方向に沿って並べて配設されている。
【0009】
上記課題を解決するため、請求項2に係る酸化剤ガス供給用管部材の発明は、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、酸化剤ガスを供給する供給装置とを連通して酸化剤ガスを燃料電池に供給する酸化剤ガス供給用管部材であって、酸化剤ガス供給用管部材は、酸化剤ガスが流通する第1酸化剤ガス流路部と、第1酸化剤ガス流路部の一端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部の一端と燃料電池に酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス流路部とを直結する第1連結部と、第1酸化剤ガス流路部の他端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部の他端と供給装置から供給される酸化剤ガスの流量を検出する流量計とを直結する第2連結部と、第1酸化剤ガス流路部の途中に凹設されて、第1連結部側から流入する流体を溜めるトラップ部と、から構成され、第1酸化剤ガス流路部は、管部材と、管部材の一端が接続される第1接続部と、管部材の他端が接続される第2接続部と、第1接続部と第1連結部とを連通する第1連通部と、第2接続部と第2連結部とを連通する第2連通部と、から構成され、第1連結部、第1連通部、トラップ部は鉛直方向に沿って並べて配設されており、第2連通部は第1連通部またはトラップ部の横に配置されている。
【0013】
また請求項に係る発明は、請求項1又は2において、第2酸化剤ガス流路部は、燃料電池を囲むように配設されている。
【0014】
また請求項に係る燃料電池システムの発明は、請求項1乃至請求項の何れか一項に記載した酸化剤ガス供給用管部材を備えている。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、酸化剤ガスを供給する供給装置とを連通して酸化剤ガスを燃電池に供給する酸化剤ガス供給用管部材は、第1酸化剤ガス流路部の途中に凹設されて、第1連結部側から流入する流体を溜めるトラップ部が設けられている。これにより、第1連結部側すなわち燃料電池側から液体(例えば凝縮水)が流入しても、流入した液体はトラップ部に溜められる。よって、大型化・高コスト化を招くことなく、酸化剤ガス供給流路が閉塞することを抑制することができる。また、流入した液体が流量計に到達することを抑制することができる。さらに、酸化剤ガスが流通する第1酸化剤ガス流路部が設けられていることで、第1連結部から流量計までの距離を稼ぐことができるため、第1連結部から水蒸気が流入してもその水蒸気が流量計に到達することを抑制することができる。第1酸化剤ガス流路部は、管部材と、管部材の一端が接続される第1接続部と、管部材の他端が接続される第2接続部と、第1接続部と第1連結部とを連通する第1連通部と、第2接続部と第2連結部とを連通する第2連通部と、から構成されている。これにより、管部材の長さを変更するだけで第1酸化剤ガス流路部の長さを簡単に変更することができ、設計の自由度を向上させることができる。第1連結部、第1連通部、トラップ部および第2連通部は鉛直方向に沿って並べて配設されている。これにより、酸化剤ガスを供給する供給装置が燃料電池の下方に配置されている場合において、配管の取り回し性を向上させることができる。
【0016】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池と、酸化剤ガスを供給する供給装置とを連通して酸化剤ガスを燃料電池に供給する酸化剤ガス供給用管部材は、第1酸化剤ガス流路部の途中に凹設されて、第1連結部側から流入する流体を溜めるトラップ部が設けられている。これにより、第1連結部側すなわち燃料電池側から液体(例えば凝縮水)が流入しても、流入した液体はトラップ部に溜められる。よって、大型化・高コスト化を招くことなく、酸化剤ガス供給流路が閉塞することを抑制することができる。また、流入した液体が流量計に到達することを抑制することができる。さらに、酸化剤ガスが流通する第1酸化剤ガス流路部が設けられていることで、第1連結部から流量計までの距離を稼ぐことができるため、第1連結部から水蒸気が流入してもその水蒸気が流量計に到達することを抑制することができる。第1酸化剤
ガス流路部は、管部材と、管部材の一端が接続される第1接続部と、管部材の他端が接続される第2接続部と、第1接続部と第1連結部とを連通する第1連通部と、第2接続部と第2連結部とを連通する第2連通部と、から構成されている。これにより、管部材の長さを変更するだけで第1酸化剤ガス流路部の長さを簡単に変更することができ、設計の自由度を向上させることができる。第1連結部、第1連通部、トラップ部は鉛直方向に沿って並べて配設されており、第2連通部は第1連通部またはトラップ部の横に配置されている。これにより、酸化剤ガス供給用管部材の上下方向(鉛直方向)を短縮することができるので、上下方向の省スペース化を図ることができる。
【0020】
上記のように構成した請求項に係る発明においては、請求項1又はにおいて、第2酸化剤ガス流路部は、燃料電池を囲むように配設されている。これにより、第2酸化剤ガス流路部が燃料電池を囲むように配設されているタイプの燃料電池システムにおいて、第2酸化剤ガス流路部で凝縮水が発生する場合に、その発生した凝縮水を酸化剤ガス供給用管部材に設けたトラップ部に溜めることができる。
【0021】
上記のように構成した請求項に係る発明においては、上述した請求項1乃至請求項の作用効果を発揮できる燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による燃料電池システムの一実施形態の概要を示す概要図である。
図2図1に示す燃料電池モジュールおよびカソードエア供給流路を示す断面概要図である。
図3図2に示すカソードエア供給用管部材を示す拡大断面図である。
図4】(a)は図3に示す固定金具を示す正面図であり、(b)は図3に示す固定金具を示す断面図である。
図5】(a)は図2に示すカソードエア供給用管部材の一の変形例を示す拡大断面図であり、(b)は図2に示すカソードエア供給用管部材の一の変形例を示す上面図である。
図6】(a)は図2に示すカソードエア供給用管部材の他の変形例を示す拡大断面図であり、(b)は図2に示すカソードエア供給用管部材の他の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による燃料電池システムの実施形態の一つである第1実施例について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは、箱状の筐体11、燃料電池モジュール20、排熱回収システム30、インバータ装置50および制御装置60を備えている。
【0024】
筐体11は、筐体11内を区画して第1室R1および第2室R2を形成する仕切部材12を備えている。第1室R1は第1空間を形成し、第2室R2は第2空間を形成する。仕切部材12は筐体11を上下に区画する部材であり、第1室R1および第2室R2は連通するようになっている。
【0025】
燃料電池モジュール20は、第1室R1内に該第1室R1の内壁面から空間をおいて収納されている。燃料電池モジュール20は、ケーシング21、燃料電池24を少なくとも含んで構成されるものである。本実施形態では、燃料電池モジュール20は、ケーシング21、蒸発部22、改質部23および燃料電池24を備えている。
【0026】
ケーシング21は、断熱性材料で箱状に形成されている。ケーシング21は、第1室R1内に該第1室R1の内壁面から空間をおいて図示しない支持構造を介して仕切部材12に設置されている。ケーシング21内には、蒸発部22、改質部23、燃料電池24および第1燃焼部26である燃焼空間R3が配設されている。このとき、蒸発部22、改質部23が燃料電池24の上方に位置するように配設されている。
【0027】
蒸発部22は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部22は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料を混合して改質部23に供給するものである。改質用原料としては天然ガス、LPガスなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料があり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。
【0028】
この蒸発部22には、一端(下端)が水タンク13内に配設された給水管41の他端が接続されている。給水管41には、改質水ポンプ41aが設けられている。改質水ポンプ41aは、蒸発部22に改質水を供給するとともにその改質水供給量(供給流量(単位時間あたりの流量))を調整するものである。
【0029】
また、蒸発部22には、改質用原料の供給源(以下、供給源という。)Gsからの改質用原料が改質用原料供給管42を介して供給されている。供給源Gsは、例えば都市ガスのガス供給管、LPガスのガスボンベである。改質用原料供給管42には、上流から順番に遮断弁42a、脱硫器42b、流量センサ42c、バッファタンク42d、原料ポンプ42eおよび逆止弁42fが設けられている。遮断弁42a、脱硫器42b、流量センサ42c、バッファタンク42d、原料ポンプ42eおよび逆止弁42fは、筺体11内に収納されている。
【0030】
遮断弁42aは改質用原料供給管42を制御装置60の指令によって開閉自在に遮断する弁(2連弁)である。脱硫器42bは改質用原料中の硫黄分(例えば、硫黄化合物)を除去するものである。流量センサ42cは、燃料電池24に供給されている燃料(改質用原料)の流量すなわち単位時間あたりの流量を検出するものであり、その検出結果を制御装置60に送信している。バッファタンク42dは、原料ポンプ42eの気体流れを整流するものである。原料ポンプ42eは、燃料電池24に燃料(改質用原料)を供給する供給装置であり、制御装置60からの制御指令値にしたがって供給源Gsからの燃料供給量(供給流量(単位時間あたりの流量))を調整するものである。この原料ポンプ42eは、改質用原料を吸入し改質部23に圧送する圧送装置である。逆止弁42fは、原料ポンプ42eと燃料電池モジュール20(蒸発部22)との間に配設されており、原料ポンプ42eから燃料電池モジュール20への流れを許容するがその反対方向の流れを禁止するものである。
【0031】
改質部23は、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部22から供給された混合ガス(改質用原料、水蒸気)から改質ガスを生成して導出するものである。改質部23内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気が反応して水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)は燃料電池24の燃料極に導出されるようになっている。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。このように、改質部23は改質用原料と改質水とから燃料である改質ガスを生成して燃料電池24に供給する。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。
【0032】
燃料電池24は、燃料極、空気極(酸化剤極)、および両極の間に介装された電解質からなる複数のセル24aが図1の左右方向(図2の鉛直方向)に積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池24の燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガスなどが供給される。動作温度は400〜1000℃程度である。水素だけではなく天然ガスや石炭ガスなども直接燃料として用いることが可能である。この場合、改質部23は省略することができる。
【0033】
セル24aの燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路24bが形成されている。セル24aの空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路24cが形成されている。
【0034】
燃料電池24は、図2にも示すように、マニホールド25上に設けられている。マニホールド25には、改質部23からの改質ガスが改質ガス供給管43を介して供給される。燃料流路24bは、その下端(一端)がマニホールド25の燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。空気流路24cの下端には、カソードエア供給流路44を構成するモジュール内カソードエア流路44aが連通されており、モジュール内カソードエア流路44aから供給されたカソードエアが空気流路24cの下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0035】
カソードエア供給流路44は、図2に示すように、モジュール内カソードエア流路44a(第2酸化剤ガス流路部)、カソードエア供給用管部材44bおよびカソードエア供給管44cから構成されている。カソードエア供給流路44は、一端がカソードエアブロワ44dに接続されており、カソードエアブロワ44d(カソードエア供給装置)によって送出されたカソードエアはカソードエア供給流路44を介して空気流路24cに供給されるようになっている。
【0036】
モジュール内カソードエア流路44aは、ケーシング21の内周壁に沿って設けられている外周流路44a1と、カソードエアを燃料電池24の空気流路24cに導入する導入流路44a2とから構成されている。
外周流路44a1は、上壁流路44a1a、左側壁流路44a1b、右側壁流路44a1c、接続流路44a1d、および導入口44a1eから構成されている。
【0037】
上壁流路44a1aは、ケーシング21の上壁の内壁面に沿って設けられている。本実施形態では、上壁流路44a1aは、ケーシング21の上壁の内壁面全面とほぼ等しい面積を有しており、流路内は仕切りで仕切られていない構造となっている。
【0038】
左側壁流路44a1bは、ケーシング21の左壁の内壁面に沿って設けられて上壁流路44a1aの左端と上端にて接続する。本実施形態では、左側壁流路44a1bは、ケーシング21の左壁の内壁面全面とほぼ等しい面積を有しており、流路内は水平方向に折り返す折り返し構造となっている。
【0039】
右側壁流路44a1cは、ケーシング21の右壁の内壁面に沿って設けられて上壁流路44a1aの右端と上端にて接続する。本実施形態では、右側壁流路44a1cは、ケーシング21の右壁の内壁面全面とほぼ等しい面積を有しており、流路内は水平方向に折り返す折り返し構造となっている。
【0040】
導入口44a1eは、左右側壁流路44a1b,44a1cの各下端が接続流路44a1d,44a1dを介して接続されている。導入口44a1eの開口端には、連結部44a1fが形成されている。
【0041】
導入流路44a2は、上壁流路44a1aの左右方向中央位置から垂下して設けられている。導入流路44a2は、燃料電池24を構成する一対の電池ユニットの間に挿入されて配置されている。導入流路44a2の下端部には、導出部44a2aが燃料電池24に向けて延設されており、一対の導出部44a2aから空気流路24cの下端にカソードエアが導入されるようになっている。
【0042】
なお、上述したモジュール内カソードエア流路44aは、蒸発部22、改質部23、燃料電池24および第1燃焼部26を囲むように配設されている。燃料電池モジュール20内部、すなわちモジュール内カソードエア流路44aで囲まれる空間は、導入流路44a2によって左右に分けられている。左半分には蒸発部22および燃料電池24を構成する一対の電池ユニットの一方が配置されるとともに右半分には改質部23および燃料電池24を構成する一対の電池ユニットの他方が配置されている。
【0043】
カソードエア供給用管部材44bは、燃料電池24とカソードエアブロワ44d(カソードエア供給装置)とを連通してカソードエアを燃電池24に供給するカソードエア供給用管部材(酸化剤ガス供給用管部材である)70である。
【0044】
カソードエア供給用管部材70は、第1酸化剤ガス流路部71、第1連結部72、第2連結部73およびトラップ部74を一体化して構成されている。
第1酸化剤ガス流路部71は、カソードエアが流通するものである。第1酸化剤ガス流路部71は、本実施形態においては、管部材71aと、管部材71aの一端が接続される第1接続部71bと、管部材71aの他端が接続される第2接続部71cと、第1接続部71bと第1連結部72とを連通する第1連通部71dと、第2接続部71cと第2連結部73とを連通する第2連通部71eと、から構成されている。なお、第1酸化剤ガス流路部71は、一体的に成形されるものでもよい。
【0045】
また、管部材71aはU字状に形成されている。管部材71aは金属、樹脂、ゴム等で管状に形成された部材である。管部材71aの一端はバンド75によって第1接続部71bに締め付け固定されている。管部材71aの他端はバンド75によって第2接続部71cに締め付け固定されている。
【0046】
第1酸化剤ガス流路部71の流路長は、燃料電池システムを停電などにより緊急停止する際であって燃料電池モジュール20内に存在する蒸気がカソードエア供給用管部材44bに逆流した場合に、その蒸気が流量計44eまで到達しない距離に設定されるのが好ましい。これにより、蒸気により流量計44eの故障を抑制することができる。また、第1酸化剤ガス流路部71の配管温度が第1酸化剤ガス流路部71の管内結露温度より大きくなるように、第1酸化剤ガス流路部71の流路長を設定するのが好ましい。これにより、流量計44eの流路44e2内ひいてはセンサ部44e5が結露するのを抑制し、流量計44eの故障を抑制することができる。
【0047】
第1連結部72は、第1酸化剤ガス流路部71の一端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部71の一端と燃料電池24にカソードエアを供給するモジュール内カソードエア流路44aとを直結(固定)する。第1連結部72は、モジュール内カソードエア流路44aの導入口44a1eに形成された連結部44a1fと連結されている。第1連結部72と連結部44a1fとの間には、Oリング72aが介装されており、第1連結部72と連結部44a1fとの間の気密性が確保されている。
【0048】
第1連結部72と連結部44a1fとは、固定金具80によって固定されている。固定金具80は、図4に示すように、断面C字状に形成されており、第1連結部72と連結部44a1fとを同時に挟持する一対の挟持部81,81、両挟持部81の一端(基端)を接続する接続部82、および両挟持部81の他端(自由端)にそれぞれ設けられて外側に向けて拡開する拡開部83が一体的に形成されている。
【0049】
固定金具80は、金属製の細長い板部材を曲げて形成されている。非装着時には、固定金具80の内径は、第1連結部72と連結部44a1fの外径より小さくなっている。装着時には、可逆的に弾性変形し挟持部81が互いに接近する方向に付勢されて第1連結部72と連結部44a1fに密着している。
【0050】
各挟持部81には周方向に沿って長孔81aが形成されている。長孔81aは、第1連結部72のフランジ72bと連結部44a1fのフランジ44a1gとが当接した状態で両フランジ72b,44a1gと係合するようになっている。
【0051】
第2連結部73は、第1酸化剤ガス流路部71の他端側に設けられて、該第1酸化剤ガス流路部71の他端と流量計44eとを直結(固定)する。第2連結部73は、流量計44eの連結部44e3と連結されている。第2連結部73と連結部44e3との間には、Oリング73aが介装されており、第2連結部73と連結部44e3との間の気密性が確保されている。第2連結部73と連結部44e3とは、第1連結部72と連結部44a1fとの固定と同様に固定金具80によって固定されている。
【0052】
また、第2連結部73は、水平方向に延在するように設けられている。よって、流量計44eが第2連結部73に取り付けられると、流量計44eの流量を検出するセンサ部44e5が水平となる。
【0053】
トラップ部74は、第1酸化剤ガス流路部71の途中に下方に向けて凹設されて、第1連結部72側から流入する流体を溜めるものである。本実施形態では、トラップ部74は、第1連通部71dに設けられている。トラップ部74の容積は、燃料電池システムの停止運転時に燃料電池モジュール20で生じる凝縮水を収容できる値に設定されている。トラップ部74の内径はカソードエア供給流路44の内径とほぼ同じ値に設定されるのが好ましい。起動運転時または定常運転時にカソードエアが供給される際に、トラップ部74に溜まっている凝縮水を気化(蒸発)させるためである。
【0054】
なお、上述した第1連結部72、第1連通部71d、第1接続部71b、トラップ部74、第2接続部71c、第2連通部71eおよび第2連結部73は成形などによって一体的に形成されている。この一体成型体は、合成樹脂で形成するようにすればよい。
【0055】
また、第1連結部72、第1連通部71d、トラップ部74および第2連通部71eは鉛直方向に沿って並べて配設されている。第1連結部72、第1連通部71d、およびトラップ部74は直線状(円筒状)に形成され、鉛直方向に沿って延設されている。この第1直線状体の途中から第1接続部71bが垂直方向(水平方向)に延設されている。第2接続部71c、第2連通部71eおよび第2連結部73も直線状(円筒状)に形成され、水平方向に沿って延設されている。この第2直線状体は、前述した第1直線状体の下端に一体的に接続されている。
【0056】
流量計44eは、カソードエアブロワ44dから供給されるカソードエアの流量を検出するものである。流量計44eは、本実施形態では、いわゆる熱式質量流量計である。流量計44eは合成樹脂製の本体44e1を備えており、本体44e1内に流路44e2が形成されている。流路44e2の一端(カソードエア供給用管部材70側端)には連結部44e3が本体44e1と一体的に形成されている。流路44e2の他端(カソードエアブロワ44d側端)には連結部44e4が本体44e1と一体的に形成されている。流路44e2の内周上壁面には、流路44e2を流れる流体の流量を検出するセンサ部44e5が設けられている。
【0057】
センサ部44e5は、ガスが流れる方向(流路が延在する方向)に沿って2つの温度センサが配置され、それら温度センサの間にヒータが配置されている。このセンサ部44e5は、検出対象ガスが流れると、2つの温度センサの間に質量流量に対応した温度差が生じることを利用して、温度センサによって検出された温度に基づいて流量を検出するものである。
【0058】
このように構成されているセンサ部44e5は水平に配設されるのが好ましい。水平に配置することで、検出精度を高く維持することができる。また、センサ部44e5は流路44e2の内周上壁面に配設されているため、万一第1酸化剤ガス流路部71が結露して発生した凝縮水またはトラップ部74から溢れた凝縮水が流量計44eに流入してもセンサ44e5が浸水することを抑制することができる。
【0059】
カソードエア供給管44cは、一端が流量計44eの連結部44e4に接続されるとともに他端がカソードエアブロワ44dに接続されている。カソードエア供給管44cは、金属、樹脂、ゴム等で形成されている。
【0060】
カソードエアブロワ44d(カソードエア供給装置)は、図1に示すように、第2室R2内に配設されている。カソードエアブロワ44dは、第2室R2内の空気を吸入し燃料電池24の空気極に吐出するものであり、その吐出量は調整制御(例えば燃料電池24の負荷電力量(消費電力量)に応じて制御)されるものである。
【0061】
燃料電池24においては、燃料極に供給された燃料と空気極に供給された酸化剤ガスによって発電が行われる。すなわち、燃料極では、下記化1および化2に示す反応が生じ、空気極では、下記化3に示す反応が生じている。すなわち、空気極で生成した酸化物イオン(O2−)が電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。したがって、燃料流路24bおよび空気流路24cからは、発電に使用されなかった改質ガスおよび酸化剤ガス(空気)が導出する。
(化1)
+O2−→HO+2e
(化2)
CO+O2−→CO+2e
(化3)
1/2O+2e→O2−
【0062】
そして、燃料流路24bおよび空気流路24cから導出した、発電に使用されなかった改質ガス(アノードオフガス)は、燃料電池24と蒸発部22(改質部23)の間の燃焼空間R3にて、発電に使用されなかった酸化剤ガス(カソードオフガス)によって燃焼され、その燃焼ガス(火炎27)によって蒸発部22および改質部23が加熱される。さらには、燃料電池モジュール20内を動作温度に加熱している。
【0063】
このように、燃焼空間R3が、燃料電池24からのアノードオフガスと燃料電池24からのカソードオフガスとが燃焼されて改質部23を加熱する第1燃焼部26である。すなわち、第1燃焼部26は、燃料電池24からの未使用の燃料を含む可燃性ガスを導入し酸化剤ガスで燃焼して燃焼ガスを導出する燃焼部である。
【0064】
第1燃焼部26(燃焼空間R3)では、アノードオフガスが燃焼されて火炎27が発生している。第1燃焼部26には、アノードオフガスを着火させるための一対の着火ヒータ26a1,26a2が設けられている。
【0065】
燃焼空間R3で生じた燃焼ガスは、その後は排気口21aから燃料電池モジュール20の外に排気される。具体的には、図2に示すように、燃料電池モジュール20内には、モジュール内排気流路46aが設けられている。
モジュール内排気流路46aは、左側壁流路46a1、右側壁流路46a2、接続流路46a3、および排気口21aから構成されている。
【0066】
左側壁流路46a1は、左側壁流路44a1bの内壁面に沿って設けられており、左側壁流路46a1の上端は燃料電池モジュール20の内側空間の上部に開口している(開口は蒸発部22の上方位置であるのが好ましい)。本実施形態では、左側壁流路46a1は、左側壁流路44a1bの内壁面全面とほぼ等しい面積を有しており、流路内は水平方向に折り返す折り返し構造となっている。左側壁流路46a1の折り返し流路は、左側壁流路44a1bの折り返し流路と対向して配設され流れる流体が互いに反対方向に流れるようになっている(対向流式)。これにより、カソードエアと燃焼排ガスとが効率よく熱交換する。
【0067】
右側壁流路46a2は、右側壁流路44a1cの内壁面に沿って設けられており、右側壁流路46a2の上端は燃料電池モジュール20の内側空間の上部に開口している(開口は改質部23の上方位置であるのが好ましい)。本実施形態では、右側壁流路46a2は、右側壁流路44a1cの内壁面全面とほぼ等しい面積を有しており、左側壁流路46a1と同様に流路内は水平方向に折り返す折り返し構造となっている。
【0068】
排気口21aは、左右側壁流路46a1,46a2の各下端が接続流路46a3,46a3を介して接続されている。なお、上述したモジュール内排気流路46aは、蒸発部22、改質部23、燃料電池24および第1燃焼部26を囲むように配設されている。
【0069】
排熱回収システム30は、燃料電池24の排熱と貯湯水との間で熱交換することで排熱を貯湯水に回収して蓄える排熱回収系である。排熱回収システム30は、貯湯水を貯湯する貯湯槽31と、貯湯水が循環する貯湯水循環ライン32と、燃料電池モジュール20からの燃焼排ガスと貯湯水との間で熱交換が行われる熱交換器33と、が備えられている。
【0070】
貯湯槽31は、1つの柱状容器を備えており、その内部に温水が層状に、すなわち上部の温度が最も高温であり下部にいくにしたがって低温となり下部の温度が最も低温であるように貯留されるようになっている。貯湯槽31の柱状容器の下部には水道水などの水(低温の水)が補給され、貯湯槽31に貯留された高温の温水が貯湯槽31の柱状容器の上部から導出されるようになっている。
【0071】
貯湯水循環ライン32の一端は貯湯槽31の下部に、他端は貯湯槽31の上部に接続されている。貯湯水循環ライン32上には、一端から他端に向かって順番に貯湯水循環手段である貯湯水循環ポンプ32a、第1温度センサ32b、熱交換器33、および第2温度センサ32cが配設されている。貯湯水循環ポンプ32aは、貯湯槽31の下部の貯湯水を吸い込んで貯湯水循環ライン32を図示矢印方向へ通水させて貯湯槽31の上部に吐出するものであり、その流量(送出量)が制御されるようになっている。貯湯水循環ポンプ32aは、第2温度センサ32cの検出温度(貯湯水の貯湯槽31の入口温度)が所定の温度または温度範囲となるように、送出量が制御されるようになっている。
【0072】
第1温度センサ32bは、熱交換器33の貯湯水導入側の貯湯水循環ライン32であって熱交換器33と貯湯槽31との間に配設されている。第1温度センサ32bは、貯湯水の熱交換器33の入口温度すなわち貯湯水の貯湯槽31の出口温度を検出するものであり、その検出結果を制御装置60に送信するようになっている。
【0073】
第2温度センサ32cは、熱交換器33の貯湯水導出側の貯湯水循環ライン32に配設されている。第2温度センサ32cは、貯湯水の熱交換器33の出口温度すなわち貯湯水の貯湯槽31の入口温度を検出するものであり、その検出結果を制御装置60に送信するようになっている。
【0074】
熱交換器33は、燃料電池モジュール20から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽31からの貯湯水が供給され燃焼排ガスと貯湯水が熱交換する熱交換器である。この熱交換器33は、筐体11内に配設されている。本実施形態では、熱交換器33は、燃料電池モジュール20の下部に設けられており、少なくとも熱交換器33の下部は仕切部材12を貫通して第2室R2に突出されて配設されている。
【0075】
熱交換器33は、ケーシング33aを備えている。ケーシング33aの上部には、燃料電池モジュール20のケーシング21の下部に設けられ燃焼排ガスが導出される導出口21aに連通しいている。ケーシング33aの下部には、第1排気口11aに接続されている排気管46bが接続されている。ケーシング33aの底部には、純水器14に接続されている凝縮水供給管47が接続されている。ケーシング33a内には、貯湯水循環ライン32に接続されている熱交換部(凝縮部)33bが配設されている。
【0076】
このように構成された熱交換器33においては、燃料電池モジュール20からの燃焼排ガスは、導出口21aを通ってケーシング33a内に導入され、貯湯水が流通する熱交換部33bを通る際に貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは排気管46bを通って第1排気口11aから外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管47を通って純水器14に供給される(自重で落水する)。一方、熱交換部33bに流入した貯湯水は、加熱されて流出される。
【0077】
ケーシング21の導出口21aには、第2燃焼部28が設けられている。第2燃焼部28は、第1燃焼部26から排気されるガスである第1燃焼部オフガス、すなわち、第1燃焼部26から排気される未使用の可燃性ガス(例えば、水素、メタンガス、一酸化炭素など)を導入し燃焼して導出するものである。第2燃焼部28は、可燃性ガスを燃焼する触媒である燃焼触媒(例えばセラミックハニカムまたは、メタルハニカムと貴金属の触媒である。)で構成されている。第2燃焼部28には、燃焼触媒を触媒の活性温度まで加熱して可燃性ガスを燃焼させるための燃焼触媒ヒータ28aが設けられている。燃焼触媒ヒータ28aは制御装置60の指示によって加熱されるものである。
【0078】
また、燃料電池システムは、水タンク13および純水器14を備えている。水タンク13および純水器14は第2室R2内に配設されている。水タンク13は、純水器14から導出された純水を貯めておくものである。純水タンク13には、純水タンク13内の純水量を検出する図示しない水量センサ(水位センサ)が設けられている。水量センサは例えばフロート式、静電容量式などの水位計である。水量センサは制御装置60に検出信号を送信するようになっている。
【0079】
純水器14は、活性炭とイオン交換樹脂を内蔵しており、例えばフレーク状の活性炭と粒状のイオン交換樹脂を充填している。また被処理水の状態によっては、中空糸フィルタを設置しても良い。純水器14は、熱交換器33からの凝縮水を活性炭とイオン交換樹脂によって純水化するものである。純水器14は、配管48を介して純水タンク13に連通しており、純水器14内の純水は配管48を通って純水タンク13に導出される。
【0080】
また、燃料電池システムは、第2室R2を形成する筐体11に形成された空気導入口11bと、第1室R1を形成する筐体11に形成された空気導出口11cと、空気導入口11bに設けられた換気用空気ブロワ15と、を備えている。換気用空気ブロワ15は、筐体11内を換気する換気装置である。この換気用空気ブロワ15が作動すると、外気が空気導入口11bを介して換気用空気ブロワ15に吸い込まれ、第2室R2に送出される。さらに、第2室R2内の気体(主として空気)は仕切部材12を通って第1室R1に流れ、第1室R1内の気体は空気導出口11cを介して外部に排出される。
【0081】
さらに、燃料電池システムは、インバータ装置50を備えている。インバータ装置50は、燃料電池24から出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して交流の系統電源51および外部電力負荷53に接続されている電源ライン52に出力する第1機能と、系統電源51からの交流電圧を電源ライン52を介して入力し所定の直流電圧に変換して補機や制御装置60に出力する第2機能と、を有している。
【0082】
系統電源(または商用電源)51は、該系統電源51に接続された電源ライン52を介して電力負荷53に電力を供給するものである。燃料電池24はインバータ装置50を介して電源ライン52に接続されている。電力負荷53は、交流電源で駆動される負荷であり、例えばドライヤ、冷蔵庫、テレビなどの電化製品である。
【0083】
補機は、燃料電池モジュール20に改質用原料、水、空気を供給するためのモータ駆動のポンプ41a,42e、換気用空気ブロワ15およびカソードエアブロワ44dなどから構成されている。この補機は直流電圧にて駆動されるものである。
【0084】
さらに、燃料電池システムは、制御装置60を備えている。制御装置60には、上述した温度センサ32a,32c、流量センサ42c、流量計44e、各ポンプ32a,41a,42e、および各ブロワ15,44dが接続されている。
【0085】
次に、上述した燃料電池システムの作動について説明する。停電などによって燃料電池システムが緊急停止する際においては、改質用燃料、改質水およびカソードエアの供給は停止され、第1燃焼部26での燃焼は停止される。停止後しばらくの間、燃料電池モジュール20内は高温状態でありかつ改質部23で水蒸気生成は継続しているため、内部に存在する水蒸気を含む気体は燃料電池モジュール20の外部に流出する。このとき、流出経路は、排気経路(モジュール内排気流路46a、第2燃焼部28、熱交換器33および排気管46bから構成されている。)とカソードエア供給経路(モジュール内カソードエア流路44a、カソードエア供給用管部材44bおよびカソードエア供給管44cから構成されている。)である。
【0086】
このとき、カソードエア供給経路を水蒸気が逆流しても、その水蒸気は流量計44eまで到達しない。カソードエア供給用管部材44bの第1酸化剤ガス流路部71の流路長は、燃料電池システムを停電などにより緊急停止する際であって燃料電池モジュール20内に存在する蒸気がカソードエア供給用管部材44bに逆流した場合に、その蒸気が流量計44eまで到達しない距離に設定されているからである。
【0087】
すなわち、カソードエア(酸化剤ガス)が流通する第1酸化剤ガス流路部71が設けられていることで、第1連結部72から流量計44eまでの距離を稼ぐことができるため、第1連結部72から水蒸気が流入してもその水蒸気が流量計44eに到達することを抑制することができる。これにより、蒸気により流量計44eの故障を抑制することができる。
【0088】
停止後しばらくすると、燃料電池モジュール20ひいては内部の気体の温度は低下する。モジュール内カソードエア流路44a内の温度も低下して、特に外周流路44a1の外側壁面はケーシング21に接触しているため、外周流路44a1の温度は低下する。このため、外周流路44a1では外周流路44a1中の水蒸気が結露する。この結露によって発生した凝縮水は、上壁流路44a1a、左壁流路44a1bまたは右壁流路44a1c、接続流路44a1dを経て導入口44a1eから流出する。
【0089】
本実施形態によれば、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池24と、酸化剤ガスを供給するカソードエアブロワ44dとを連通して酸化剤ガスを燃電池24に供給するカソードエア供給用管部材44bは、第1酸化剤ガス流路部71の途中に凹設されて、第1連結部72側から流入する液体を溜めるトラップ部が設けられている。これにより、第1連結部72側すなわち燃料電池24側から液体(例えば凝縮水)が流入しても、流入した液体はトラップ部に溜められる。よって、大型化・高コスト化を招くことなく、カソードエア供給流路(酸化剤ガス供給流路)44が閉塞することを抑制することができる。また、流入した液体が流量計44eに到達することを抑制することができる。

【0090】
また、第1酸化剤ガス流路部71は、管部材71aと、管部材71aの一端が接続される第1接続部71bと、管部材71aの他端が接続される第2接続部71cと、第1接続部71bと第1連結部72とを連通する第1連通部71dと、第2接続部71cと第2連結部73とを連通する第2連通部71eと、から構成されている。これにより、管部材71aの長さを変更するだけで第1酸化剤ガス流路部71の長さを簡単に変更することができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0091】
また、第1連結部72、第1連通部71d、第1接続部71b、トラップ部74、第2接続部71c、第2連通部71eおよび第2連結部73は一体的に形成されている。これにより、管部材71aを除いた第1酸化剤ガス流路部71の部分は、一体成型することが可能となり、軽量化・低コストを図り、組立性を向上させることができる。
【0092】
また、第1連結部72、第1連通部71d、トラップ部74および第2連通部71eは鉛直方向に沿って並べて配設されている。これにより、カソードエア(酸化剤ガス)を供給するカソードエアブロワ44dが燃料電池24の下方に配置されている場合において、配管の取り回し性を向上させることができる。
【0093】
また、流量計44eは熱式質量流量計であり、流量を検出するセンサ部44e5が水平となるように流量計44eが配置されている。これにより、流量計44eの検出精度を高く維持することができる。
【0094】
また、モジュール内カソードエア流路44a(第2酸化剤ガス流路部)は、燃料電池24を囲むように配設されている。これにより、モジュール内カソードエア流路44aが燃料電池24を囲むように配設されているタイプの燃料電池システムにおいて、モジュール内カソードエア流路44aで凝縮水が発生する場合に、その発生した凝縮水をカソードエア供給用管部材44bに設けたトラップ部74に溜めることができる。
【0095】
また、上述したカソードエア供給用管部材44bの作用効果を発揮できる燃料電池システムを提供することができる。
【0096】
なお、上述した燃料電池システムにおいては、カソードエア供給用管部材44bを、図5に示すように、第1連結部72、第1連通部71d、トラップ部74を鉛直方向に沿って並べて配設するとともに、第2連通部71eを第1連通部71d(またはトラップ部74)の横に配置するようにしてもよい。このとき、第2連通部71eは接続部71fを介して第1連通部71dに一体的に接続されている。これにより、カソードエア供給用管部材44bの上下方向(鉛直方向)を短縮することができるので、上下方向の省スペース化を図ることができる。
【0097】
また、上述した燃料電池システムにおいては、図6に示すように、第1連結部72および第1連通部71dを鉛直方向に沿って並べて配設し、第2連通部71eを第1連通部71dの横に配置するとともに、トラップ部74を第2連通部71eの下に配置するようにしてもよい。このとき、第2連通部71eは接続部71fを介して第1連通部71dに一体的に接続されるとともに、トラップ部74は第2連通部71eの下部に一体的に接続されている。これにより、前述したように上下方向の省スペース化を図ることができるのに加えて、万一第1酸化剤ガス流路部71内で結露が発生しても、その凝縮水はトラップ部74にて溜まるため流量計44eに到達するのを抑制でき、流量計44eをより確実に凝縮水から保護することができる。
なお、流量計44eは熱式質量流量計以外の流量計を採用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
11…筐体、11a…第1排気口、11b…空気導入口、11c…空気導出口、12…仕切部材、13…水タンク、14…純水器、15…換気用空気ブロワ、20…燃料電池モジュール、21…ケーシング、21a…導出口、22…蒸発部、23…改質部、24…燃料電池、24a…セル、24b…燃料流路、24c…空気流路、25…マニホールド、26…燃焼空間(第1燃焼部)、27…火炎、28…第2燃焼部(燃焼触媒)、28b…燃焼触媒ヒータ、30…排熱回収システム、31…貯湯槽、32…貯湯水循環ライン、32a…貯湯水循環ポンプ、32b,32c…温度センサ、33…熱交換器、42a…遮断弁、42b…脱硫器、42c…流量センサ、42d…バッファタンク、42e…原料ポンプ、42f…逆止弁、44…カソードエア供給流路、44a…モジュール内カソードエア流路(第2酸化剤ガス流路部)、44a1…外周流路、44a2…導入流路、44a1a…上壁流路、44a1b…左側壁流路、44a1c…右側壁流路、44a1d…接続流路、44a1e…導入口、44a2a…一対の導出部、44b…カソードエア供給用管部材(酸化剤ガス供給用管部材)、44c…カソードエア供給管、44d…カソードエアブロワ(供給装置)、44e…流量計、44e5…センサ部、46a…モジュール内排気流路、50…インバータ装置、51…系統電源、52…電源ライン、53…外部電力負荷、60…制御装置、71…第1酸化剤ガス流路部、72…第1連結部、73…第2連結部、74…トラップ部、71a…管部材、71b…第1接続部、71c…第2接続部、71d…第1連通部、71e…第2連通部、80…固定金具、R1…第1室、R2…第2室、R3…燃焼空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6