特許第5900068号(P5900068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900068
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】電池用組成物、電池用正極、及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20160324BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20160324BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20160324BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20160324BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20160324BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20160324BHJP
   C07C 245/06 20060101ALN20160324BHJP
   C07C 311/37 20060101ALN20160324BHJP
   C07D 235/26 20060101ALN20160324BHJP
   C07D 403/12 20060101ALN20160324BHJP
   C07D 239/62 20060101ALN20160324BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/04 Z
   H01M4/1397
   H01M4/58
   H01M4/02 Z
   H01M4/136
   !C07C245/06
   !C07C311/37
   !C07D235/26 B
   !C07D403/12
   !C07D239/62
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-63066(P2012-63066)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-196917(P2013-196917A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛士
(72)【発明者】
【氏名】廣田 尚久
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−061932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/02
H01M 4/04
H01M 4/13
H01M 4/139
C07D 235/26
C07C 245/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質と、下記一般式(1)または下記一般式(3)で表されるアゾ化合物と、溶剤と、導電助剤としての炭素材料と、バインダー樹脂とを含有してなることを特徴とする電池用組成物。

一般式(1)
【化1】
(式中、X1〜X5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、下記一般式(2)で表わされる基、−NHCONH−、及び−CONHCO−のいずれかを表す。また、X1〜X5は隣接する基が結合し、環を形成してもよい。
6〜X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルキルアミド基、−NHCONH−、及び−CONHCO−のいずれかを表す。また、X6〜X10は隣接する基が結合し、環を形成してもよい。)

一般式(2)
【化2】
(式中、Aは−CO−及び−SO2−のいずれかを表す。X11〜X15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。)

一般式(3)
【化3】
(式中、X16〜X20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、及び一般式(2)で表わされる基、−NHCONH−、及び−CONHCO−のいずれかを表す。また、X16〜X20は隣接する基が結合し、環を形成してもよい。)
【請求項2】
活物質が、リチウムと遷移金属との複合リン酸化物である請求項1記載の電池用組成物。
【請求項3】
集電体上に正極合材層を有する電池用正極であって、正極合材層が、請求項1または2記載の電池用組成物によって形成されてなる正極合材層である電池用正極。
【請求項4】
集電体上に負極合材を有する電池用負極と、電解質、及び請求項記載の正極とを具備してなる電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を構成する電極を作製するための電池用組成物、およびそれを用いた電池用正極と電池に関する。さらに詳しくは、電池に使用した際に放電容量や内部抵抗の特性に優れ、粘度安定性に優れた電池用組成物と、それを用いた電池用正極と電池に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラや携帯電話のような、小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきており、これらの電子機器に搭載される電池においては、小型、計量かつ大容量の電池が要求されている。また、定置用などの大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池が望まれている。近年では、資源枯渇や環境問題の観点から、ハイブリッド自動車や電気自動車などのように、二次電池を動力源として使用することが検討されている。
【0003】
これらの要求に応えるため、リチウム二次電池の開発が活発に行われている。リチウム二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質、導電助剤、及びバインダー樹脂などからなる電極合材を金属箔の集電体表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質、導電助剤、及びバインダー樹脂などからなる電極合材を金属箔の集電体表面に固着させた負極が使用される。
【0004】
一般的に、正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられているが、これらは電子伝導性が低く、単独での使用では十分な電池性能が得られない。そこで、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)やグラファイト(黒鉛)等の炭素材料を導電助剤として添加することで導電性を改善し、電極の内部抵抗を低減することが試みられている。
【0005】
この様に、とりわけ電極の内部抵抗を低減することは、大電流での放電を可能とすることや、充放電の効率を向上させる上で非常に重要な要素の一つとなっている。しかしながら、親水性の高い無機成分である正極活物質と、疎水性の高いカーボンブラック等の炭素材料は、粒子表面の物性が大きく異なるため、そのままでは均一に分散・混合させることが困難である。正極合材中において、正極活物質や導電助剤の分散が不十分であると、部分的な凝集によって電極板上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際に電流が集中し、部分的な発熱及び劣化が促進される等の不具合が生じることがある。
【0006】
また、金属箔などの電極集電体上に正極合材層を形成する場合、多数回充放電を繰り返すと、集電体と正極合材層の界面や、合材内部における活物質と導電助剤の界面で密着性が悪化し、電池性能が低下する問題がある。これは、充放電におけるリチウムイオンのドープ、脱ドープにより正極活物質および正極合材層が膨張、収縮を繰り返すために、電極合材層と集電体界面および、活物質と導電助剤界面に局部的なせん断応力が発生し界面の密着性が悪化するためと考えられている。この問題の場合についても、正極活物質や導電助剤の分散が不十分であると、密着性低下が著しくなる。これは正極活物質や導電助剤の部分的な凝集によって、応力が緩和されにくくなるためであると思われる。
【0007】
一般的に電池においては活物質と導電助剤である炭素材料の分散が重要なポイントの一つである。特許文献1では活物質及び導電助剤を分散する際に、分散剤としてヘテロ原子またはアシル基をもつ有機性分子、有機高分子などを用いる例が記載されている。これらの化合物を用いると活物質と導電助剤の分散について一定の効果があるものの、均一な混合としては十分でなく、分散が不十分であった。また、これらの合材ペーストから作製した正極は、放電容量も十分ではなかった。
【0008】
また、特許文献2、特許文献3には分散剤として各種酸性官能基をもつ有機色素誘導体を用いた例が記載されている。さらに特許文献4、特許文献5には分散剤として各種塩基性官能基をもつ有機色素誘導体を用いた例が記載されている。これら極性基をもつ有機色素誘導体を分散剤として用いると、活物質と導電助剤どちらに対しても分散剤として作用し、活物質と導電助剤が均一に混合された合材ペーストが得られる。しかし、合材ペーストの粘度が経時で変化し、合材ペーストの粘度安定性が不十分であった。合材ペーストの粘度安定性が不十分であると、合材ペーストの粘度に合わせて、集電体上に塗布するときの塗布条件を、その都度調製する必要が生じ、工程が煩雑になる。さらにこれらの合材ペーストから作製した正極は、大電流における放電容量が十分ではないため、電池を動力源として用いる場合には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開番号WO93/07648
【特許文献2】国際公開番号WO2008/108360
【特許文献3】特開2010−55968
【特許文献4】特開2009−26744
【特許文献5】特開2010−33957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、電池に使用した際に放電容量や内部抵抗の特性に優れ、粘度安定性に優れた電池用組成物を提供することである。また、この電池用組成物を使用することで、放電容量や内部抵抗の特性に優れた電池用正極と電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、活物質と下記一般式(1)または下記一般式(3)で表わされる特定構造のアゾ化合物と、溶剤と、導電助剤としての炭素材料と、バインダー樹脂とを含有してなる電池用組成物(以降、組成物と称する場合がある。)によって解決される。
【0012】
すなわち、本発明は、活物質と、下記一般式(1)または下記一般式(3)で表されるアゾ化合物と、溶剤と、導電助剤としての炭素材料と、バインダー樹脂とを含有してなることを特徴とする電池用組成物に関する。
【0013】
一般式(1)
【化1】
【0014】
(式中、X1〜X5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、下記一般式(2)で表わされる基、−NHCONH−、及び−CONHCO−のいずれかを表す。また、X1〜X5は隣接する基が結合し、環を形成してもよい。
6〜X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルキルアミド基、−NHCONH−、及び−CONHCO−のいずれかを表す。また、X6〜X10は隣接する基が結合し、環を形成してもよい。)
【0015】
一般式(2)
【化2】
【0016】
(式中、Aは−CO−及び−SO2−のいずれかを表す。X11〜X15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。)
【0017】
一般式(3)
【化3】
【0018】
(式中、X16〜X20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、及び一般式(2)で表わされる基、−NHCONH−、及び−CONHCO−のいずれかを表す。また、X16〜X20は隣接する基が結合し、環を形成してもよい。)
【0019】
また、本発明は、活物質が、リチウムと遷移金属との複合リン酸化物である上記電池用組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、集電体上に正極合材層を有する電池用正極であって、正極合材層が、上記電池用組成物によって形成されてなる正極合材層である電池用正極に関する。
【0023】
また、本発明は、集電体上に負極合材を有する電池用負極と、電解質、上記正極とを具備してなる電池に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電池用組成物を用いることにより、活物質や導電助剤の導電性を阻害せずに分散させ、さらに粘度安定性に優れる合材ペーストを得ることができ、これら電池用組成物を用いることにより、放電容量や内部抵抗の特性に優れた電池用正極と電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明における電池用組成物は、活物質と特定構造のアゾ化合物とを含有することを特徴とする。以下にその詳細を説明する。
【0026】
<活物質>
本発明の電池用組成物に用いられる活物質としては、正極活物質または負極活物質が挙げられる。
【0027】
正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウム二次電池に使用する場合、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーを使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0028】
一方、負極活物質としては、特に限定はされないが、リチウム二次電池に使用する場合、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属Li、またはその合金、スズ合金、シリコン合金負極、LiXFe23、LiXWO2、Li4Ti512等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、メソフェーズカーボン、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が用いられる。
【0029】
上記の活物質の内、本発明の電池用組成物に使用する活物質は、正極活物質を用いた場合に好適である。正極活物質の内、特に、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、またはオリビン構造のリン酸鉄リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合リン酸化物が好適に使用できる。とりわけ、リン酸鉄リチウムは特に好適である。
【0030】
<アゾ化合物>
本発明の電池用組成物に用いられるアゾ化合物は、上記一般式(1)および上記一般式(3)で表わされる特定構造のアゾ化合物(以下、単に「アゾ化合物」と称する場合がある)である。以下、これらのアゾ化合物について説明する。
【0031】
一般式(1)中のX1〜X10、一般式(2)中のX11〜X15、及び一般式(3)中のX16〜X20におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
一般式(1)中のX1〜X10、一般式(2)中のX11〜X15、及び一般式(3)中のX16〜X20における置換基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、3−フルオロフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものが挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。上記の内、好ましくは、無置換のアルキル基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1〜4の無置換のアルキル基が挙げられる。
【0033】
一般式(1)中のX1〜X10、一般式(2)中のX11〜X15、及び一般式(3)中のX16〜X20における置換基を有していてもよいアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものが挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。上記の内、好ましくは、無置換のアルコキシル基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1〜4の無置換のアルコキシル基が挙げられる。
【0034】
一般式(1)中のX1〜X5、一般式(2)中のX11〜X15、及び一般式(3)中のX16〜X20における置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものが挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。上記の内、好ましくは、無置換のアルコキシカルボニル基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数2〜4の無置換のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0035】
一般式(1)中のX1〜X5、及び一般式(3)中のX16〜X20におけるパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基等が挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。上記の内、好ましくは、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が挙げられる。
【0036】
一般式(1)中のX6〜X10における置換基を有していてもよいアルキルアミド基(−NHCOR;ただしRは置換基を有していてもよいアルキル基)としては、−NHCOCH3、−NHCOC25、−NHCOC37等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものが挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。上記の内、好ましくは、無置換のアルキルアミド基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数2〜4の無置換のアルキルアミド基が挙げられる。
【0037】
一般式(1)中のX1〜X10、一般式(2)中のX11〜X15、及び一般式(3)中のX16〜X20における隣接する基が結合し形成する環としては、炭素原子以外に、窒素原子、酸素原子または硫黄原子などのヘテロ原子を構成原子とする環が挙げられ、芳香族性を有していても有していなくても良い。さらにこれらの環は、単環であっても縮合環であっても良い。そのような環としては、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環、脂肪族複素環、芳香族複素環が挙げられる。例えば、脂肪族炭化水素環としては、シクロペンタン環、シクロヘプタン環、ノルボルニル環、ボルニル環等が挙げられ、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、脂肪族複素環としては、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオフェン環、モルホリン環等が挙げられ、芳香族複素環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、フラン環、ピラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、インドール環、キノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等が挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。上記の内、好ましい環としては、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。また、環を構成する原子数は5〜7が好ましく、従って5員環〜7員環の環が好ましい。
【0038】
上記一般式(1)または上記一般式(3)で表わされるアゾ化合物は公知の方法で合成することができる。例えば、芳香族アミンのジアゾ化物を、アセトアセトアニリド化合物またはバルビツール酸を含んだスラリー中に添加する方法が挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。
【0039】
<溶剤>
本発明の電池用組成物に用いても良い溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、比誘電率が15以上の極性溶剤を使用することが好ましい。比誘電率は、溶剤の極性の強さを表す指標のひとつであり、浅原ほか編「溶剤ハンドブック」((株)講談社サイエンティフィク、1990年)等に記載されている。
例えば、メチルアルコール(比誘電率:33.1)、エチルアルコール(23.8)、2−プロパノール(18.3)、1−ブタノール(17.1)、1,2−エタンジオール(38.66)、1,2−プロパンジオール(32.0)、1,3−プロパンジオール(35.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、ジエチレングリコール(31.69)、2−メトキシエタノール(16.93)、2−エトキシエタノール(29.6)、2−アミノエタノール(37.7)、アセトン(20.7)、メチルエチルケトン(18.51)、ホルムアミド(111.0)、N−メチルホルムアミド(182.4)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.71)、N−メチルアセトアミド(191.3)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78)、N−メチルプロピオンアミド(172.2)、N−メチルピロリドン(32.0)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(29.6)、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)、アセトニトリル(37.5)、プロピオニトリル(29.7)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
とりわけ、比誘電率が15以上、200以下、好ましくは15以上、100以下、更に好ましくは、20以上、100以下の極性溶剤を使用することが、活物質や導電助剤の分散性に優れており好ましい。
【0042】
また、溶剤の選択は、活物質との反応性、及びバインダー樹脂に対する溶解性等を鑑みつつ行う。分散性が高く、活物質との反応性が低く、バインダー樹脂の溶解性の高い溶剤を選択することが好ましい。
【0043】
更に、環境負荷軽減や経済的有利性等から、電極製造工程において排出される溶剤を回収・再利用する場合は、混合溶剤ではなく、単一溶剤での使用が好ましい。
【0044】
これら、比誘電率、活物質との反応性、及びバインダー樹脂の溶解性を満たし、単一使用での汎用性を有する溶剤としては、アミド系溶剤が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド系非プロトン性の非水系溶剤の使用が好ましい。
【0045】
<導電助剤(炭素材料)>
本発明の電池用組成物に用いても良い導電助剤として炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば、特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックが好ましい。
【0046】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料として燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0047】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール残基、キノン残基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程、カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンが好ましい。
【0048】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下、好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0049】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、下記方法により透過型電子顕微鏡(TEM)で測定された平均一次粒子径である。
まず、被測定物にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、樹脂型分散剤としてDisperbyk−161を少量添加し、超音波洗浄機の水浴中で1分間分散処理して測定用試料を調製した。次いで、この試料を透過型電子顕微鏡(TEM)により、200個以上の一次粒子が観察出来る写真を5〜10万倍で6葉(6視野分)撮影し、任意に1000個の一次粒子の大きさを測定した。具体的には、個々の粒子の一次粒子の短軸径と長軸径を1nm単位で計測し、その平均値を個々の粒子の一次粒子径とした。
【0050】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、Enasaco250G、Enasaco350G、SUPER P−Li、C−NERGY SUPER C65、C−NERGY SUPER C45等(TIMCAL社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
<バインダー樹脂>
本発明の電池用組成物に用いても良い電池用組成物には、更に、バインダー樹脂を含有させることが好ましい。バインダー樹脂としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
【0052】
また、これらバインダー樹脂の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。
【0053】
<電池用組成物および電極合材ペースト>
本発明の電池用組成物は、正極合材または負極合材として好適に使用することができる。正極合材または負極合材に用いる場合は、上記アゾ化合物、活物質、及び溶剤を含む組成物に、更に導電助剤としての炭素材料、バインダー樹脂を含有してなる電極合材ペースト(正極合材ペーストまたは負極合材ペースト)として好適に使用することができる。
【0054】
電極合材ペースト中の総固形分に占める活物質の割合は、70重量%以上、98.5重量%以下が好ましく、80重量%以上、95重量%以下がより好ましい。
【0055】
また、電極合材ペースト中の総固形分に占めるアゾ化合物の割合は、0.05重量%以上、3.0重量%以下が好ましく、0.2重量%以上、2.0重量%以下がより好ましい。
【0056】
また、電極合材ペースト中の相固形分に占める導電助剤の割合は、0.5重量%以上、20重量%以下が好ましく、2.0重量%以上、10.0重量%以下がより好ましい。
【0057】
また、電極合材ペースト中の総固形分に占めるバインダー樹脂の割合は、1重量%以上、10重量%以下が好ましい。また、電極合材ペーストの粘度は、電極合材ペーストの塗工条件によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0058】
本発明の電極合材ペースト中に含まれるアゾ化合物は、正・負極活物質だけでなく、導電助剤としての炭素材料粒子の分散性にも効果がある。正・負極活物質および、導電助剤を溶剤に混合・分散する際のエネルギーが、各粒子に効率よく伝わり、分散性を向上させることができるものと思われる。
そして、正極合材ペーストでは、正極活物質の周りに導電助剤である炭素材料粒子を均一に配位・付着することができ、正極合材層に優れた導電性を付与できる。また、導電性が向上することにより、導電助剤としての炭素材料の添加量を減らすことができるため、正極活物質の添加量を相対的に増やすことができる。さらに導電性が向上することで、大電流における容量低下を抑制する効果があると思われる。
【0059】
<電池用組成物の製造方法>
次に、本発明の電池用組成物の製造方法について説明する。本発明の組成物は、例えば、上記一般式(1)または上記一般式(3)で表されるアゾ化合物、正極活物質または負極活物質を溶剤に分散し、該分散体に、必要に応じて導電助剤である炭素材料またはバインダー樹脂を混合することにより製造することができる。各成分の添加順序などについては、これに限定されるわけではない。また、必要に応じて更に溶剤を追加しても良い。
【0060】
上記製造方法は、アゾ化合物を溶剤中に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に活物質を添加、混合することで、これら分散剤を活物質に吸着させつつ、溶剤に分散するものである。このときの分散体中における活物質の濃度は、50重量%以上、90重量%以下が好ましく、60重量%以上、80重量%以下がより好ましい。
【0061】
アゾ化合物の添加量は、用いる活物質の一次粒子径により決定されるが、活物質100重量部に対して、アゾ化合物を0.1重量部以上、5重量部以下、好ましくは0.3重量部以上、3重量部以下、さらに好ましくは、0.5重量部以上、1重量部以下である。
【0062】
また、上記活物質を分散するための装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、プライミクス社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの分散機は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらに、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0063】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーターおよびベッセルがセラミック製または樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーターおよびベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズや、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0064】
バインダー樹脂の添加方法としては、上記アゾ化合物の存在下、活物質を溶剤に分散してなる分散体(以下、活物質分散体と称する場合がある)を攪拌しつつ、固形のバインダー樹脂を添加し、溶解させる方法が挙げられる。また、予めバインダー樹脂を溶剤に溶解した溶液を作製しておき、上記分散体と混合する方法が挙げられる。また、バインダー樹脂を上記分散体に添加した後に、上記分散装置で再度分散処理を行っても良い。さらに上記アゾ化合物の存在下、活物質を溶剤に分散するときに、バインダー樹脂の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。
【0065】
導電助剤の添加方法としては、上記活物質分散体を攪拌しつつ、導電助剤を添加し、分散させる方法が挙げられる。また、上記アゾ化合物の存在下、活物質を溶剤に分散するときに、導電助剤の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。また、このときの混合、分散を行うための装置としては、通常の顔料分散等に用いられている上述の分散機が使用できる。
【0066】
本発明の電池用組成物は、上述するように、通常は溶剤を含む分散体(液)、ペーストなどとして、製造、使用される。これは、導電助剤や活物質と分散剤を乾燥粉体の状態で混合しても、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることはできず、液相法で、分散剤の存在下、導電助剤や活物質を溶剤に分散することにより、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることができるからである。また、以下に説明するように、集電体に電極合材層を形成する場合には、液状の分散体をできるだけ均一に塗布してこれを乾燥させることが好ましいからである。
しかしながら、例えば、液相法で作製した分散体を、運搬コストなどの理由から、一度溶剤を除去して乾燥粉体とすることも考えられる。そして、この乾燥粉体を適当な溶剤で再分散させて、電極合材層の形成に用いることも考えられる。したがって、本発明の組成物は、液状の分散体に限られず、このような、乾燥粉体の状態の組成物であってもよい。
【0067】
<電池>
次に、本発明の電池用組成物を用いた電池について説明する。本発明の電池用組成物を用いた電池としては、リチウム二次電池、アルカリ二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、鉛電池、燃料電池、アルカリマンガン電池、キャパシタなどに用いることができるが、特に二次電池、より好適にはリチウム二次電池に用いることができる。
【0068】
リチウム二次電池は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備する。前記正極合材層と前記集電体との間や、前記負極合材層と前記集電体との間には、電極下地層が形成されていてもよい。
【0069】
電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅の使用が好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、およびメッシュ状のものも使用できる。
【0070】
集電体上に電極合材層を形成する方法としては、集電体上に上述の電極合材ペーストを直接塗布し乾燥する方法、および集電体上に電極下地層を形成した後に電極合材ペーストを塗布し乾燥する方法などが挙げられる。また、電極下地層の上に電極合材層を形成する場合、集電体上に電極下地ペーストを塗布した後、湿潤状態のうちに電極合材ペーストを重ねて塗布し、乾燥を行っても良い。電極合材層の厚みとしては、一般的には1μm以上、500μm以下が好ましく、10μm以上、300μm以下がより好ましい。
【0071】
塗布方法については、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、静電塗装法等が挙げられる。また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
【0072】
<電解液>
本発明の電池をリチウム二次電池に使用する場合、電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、LiBPh4等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
非水系の溶剤としては、特に限定はされないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のグライム類、メチルフォルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、アセトニトリル等のニトリル類、が挙げられる。またこれらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0074】
更に上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持し、ゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本発明の電池の構造や形状については、特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型など、使用する形態に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例に基づき、本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中、特に断りの無い限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」をそれぞれ表す。尚、正極活物質分散体は、本発明の電池用組成物の一形態であって、正極活物質、アゾ化合物、溶剤を含有してなる電池用組成物である。また、正極合材ペーストは、本発明の電池用組成物の一形態であって、正極活物質、アゾ化合物、溶剤、導電助剤としての炭素材料、バインダー樹脂を含有してなる電池用組成物である。
【0077】
[正極活物質分散体及び正極合材ペーストの粒度及び粘度測定]
正極活物質分散体の粒度は、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず)より求めた。また、正極活物質分散体及び正極合材ペーストの粘度は、E型粘度計(東機産業社製:RE80型粘度計)を用い、25℃における、回転速度50rpmにて測定した。
【0078】
[実施例1](正極活物質分散体Aの調製)
容器に、表1のアゾ化合物−01 0.2部、及び溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 19.8部をそれぞれ仕込み、撹拌混合してアゾ化合物−01を一部溶解させた。次に、正極活物質としてリン酸鉄リチウムLiFePO4(TIANJIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)80.0部を加え、メディアレス分散機であるフィルミックス(プライミクス社製)を用い、周速20m/sで30秒間分散し、正極活物質分散体Aを得た。
【0079】
[実施例2〜15、比較例1〜3](正極活物質分散体B〜Rの調製)
実施例1で使用したアゾ化合物−01および溶剤を、表5に挙げたアゾ化合物もしくは分散剤、および溶剤の種類と組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、正極活物質分散体B〜Rをそれぞれ得た。表1〜4に使用したアゾ化合物および分散剤の構造を示す。
【0080】
<正極活物質分散体A〜Rの評価>
得られた正極活物質分散体A〜Rについて、粒度と粘度の測定を行った結果を表5に示した。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
<正極活物質分散体A〜Rの評価>
得られた正極活物質分散体A〜Rについて、粒度と粘度の測定を行った結果を表5に示した。表5より、本発明の正極活物質分散体は、いずれも粒度が小さく、低粘度であることから、活物質が均一に分散さていることが明らかとなった。
【0086】
【表5】
【0087】
[実施例16](正極合材ペーストAの調製)
容器に、正極活物質分散体A 53.1部、導電助剤としてデンカブラックHS−100 4.5部、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン 64.5部を加え、混合撹拌した。さらにこの混合物を、メディアレス分散機であるフィルミックス(プライミクス社製)を用い、周速20m/sで30秒間分散し、正極合材ペーストAを得た。
【0088】
[実施例17](正極合材ペーストBの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体B 60.7部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.7部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を57.1部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストBを得た。
【0089】
[実施例18](正極合材ペーストCの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体C 60.7部、デンカブラックHS−100 4.5部の代わりにSuper−P Li 4.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.8部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を57.0部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストCを得た。
【0090】
[実施例19](正極合材ペーストDの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体D 64.3部、デンカブラックHS−100 4.5部の代わりにFX−35 2.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.0部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を56.2部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストDを得た。
【0091】
[実施例20](正極合材ペーストEの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体E 56.3部、デンカブラックHS−100 4.5部を2.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を1.7部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部の代わりにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 64.6部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストEを得た。
【0092】
[実施例21](正極合材ペーストFの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体F 64.3部、デンカブラックHS−100 4.5部を2.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を1.9部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を56.4部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストFを得た。
【0093】
[実施例22](正極合材ペーストGの調製)
容器に、正極活物質分散体G 60.7部、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部、導電助剤としてデンカブラックHS−100 4.5部をそれぞれ仕込み、プラネタリーミキサーを用い60rpmで1時間混練した後に、溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 56.9部を加え、更に、プラネタリーミキサーで混合し、正極合材ペーストGを得た。
【0094】
[実施例23](正極合材ペーストHの調製)
正極活物質分散体G 60.7部の代わりに正極活物質分散体H 75.0部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.1部、デンカブラックHS−100 4.5部を2.5部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 56.9部の代わりにN−メチル−2−ピロリドン 45.4部、とした以外は実施例22と同様の方法で調製し、正極合材ペーストHを得た。
【0095】
[実施例24](正極合材ペーストIの調製)
容器に、正極活物質としてリン酸鉄リチウムLiFePO4(TIANJIN STL ENERGY TECHNOLOGY社製)42.5部、導電助剤として、Super−P Li 4.5部、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部、表1記載のアゾ化合物−09 0.09部、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン 35.0部をそれぞれ仕込み、プラネタリーミキサーを用い60rpmで1時間混練した後に、N−メチル−2−ピロリドン 40.0部を加え、更にプラネタリーミキサーで混合し、正極合材ペーストIを得た。
【0096】
[実施例25](正極合材ペーストJの調製)
リン酸鉄リチウムLiFePO4 42.5部を45.0部、Super−P Li 4.5部の代わりに、FX−35 2.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製)2.9部を2.3部、アゾ化合物−09 0.09部の代わりに表2記載のアゾ化合物−10 0.20部とした以外は、実施例24と同様の方法で調製し、正極合材ペーストJを得た。
【0097】
[実施例26](正極合材ペーストKの調製)
リン酸鉄リチウムLiFePO4 42.5部を43.5部、Super−P Li 4.5部の代わりに、デンカブラックHS−100 3.5部、アゾ化合物−09 0.09部の代わりに表2記載のアゾ化合物−11 0.10部、更に、使用した溶剤をN−メチル−2−ピロリドンの代わりにN,N−ジメチルホルムアミドとした以外は、実施例24と同様の方法で調製し、正極合材ペーストKを得た。
【0098】
[実施例27](正極合材ペーストLの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体I 64.3部、デンカブラックHS−100 4.5部を2.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.4部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を55.8部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストLを得た。
【0099】
[実施例28](正極合材ペーストMの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体J 64.3部、デンカブラックHS−100 4.5部を2.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.3部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を55.9部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストMを得た。
【0100】
[実施例29](正極合材ペーストNの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体K 60.7部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を56.9部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストNを得た。
【0101】
[実施例30](正極合材ペーストOの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体L 70.8部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部の代わりにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 46.7部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストOを得た。
【0102】
[実施例31](正極合材ペーストPの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体M 60.7部、デンカブラックHS−100 4.5部の代わりにSuper−P Li 4.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.1部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を57.7部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストPを得た。
【0103】
[実施例32](正極合材ペーストQの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体N 70.8部、デンカブラックHS−100 4.5部の代わりにFX−35 4.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を1.9部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を47.7部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストQを得た。
【0104】
[実施例33](正極合材ペーストRの調製)
正極活物質分散体G 60.7部の代わりに正極活物質分散体O 62.1部、デンカブラックHS−100 4.5部を3.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を1.8部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF) 56.9部の代わりにN−メチル−2−ピロリドン 57.6部、とした以外は実施例22と同様の方法で調製し、正極合材ペーストRを得た。
【0105】
[実施例34](正極合材ペーストSの調製)
Super−P Li 4.5部の代わりに、デンカブラックHS−100 4.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.8部、アゾ化合物−09 0.09部の代わりに表3記載のアゾ化合物−19 0.24部、更に、使用した溶剤をN−メチル−2−ピロリドンの代わりにN,N−ジメチルホルムアミドとした以外は、実施例24と同様の方法で調製し、正極合材ペーストSを得た。
【0106】
[実施例35](正極合材ペーストTの調製)
リン酸鉄リチウムLiFePO4 42.5部を45.0部、Super−P Li 4.5部の代わりに、デンカブラックHS−100 2.5部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.0部、アゾ化合物−09 0.09部の代わりに表3記載のアゾ化合物−20 0.50部とした以外は、実施例24と同様の方法で調製し、正極合材ペーストTを得た。
【0107】
[比較例4](正極合材ペーストUの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体P 60.7部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.7部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を57.1部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストUを得た。
【0108】
[比較例5](正極合材ペーストVの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体Q 60.7部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.7部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を57.1部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストVを得た。
【0109】
[比較例6](正極合材ペーストWの調製)
正極活物質分散体A 53.1部の代わりに正極活物質分散体R 60.7部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、KFポリマーW#11000、クレハ社製) 2.9部を2.7部、N−メチル−2−ピロリドン 64.5部を57.1部とした以外は、実施例16と同様の方法で調製し、正極合材ペーストWを得た。
【0110】
<正極合材ペーストA〜Wの評価>
得られた正極合材ペーストA〜Wについて、粘度の測定を行った結果を表6に示した。合材を調製した直後の粘度を「初期」の粘度とし、各種正極合材ペーストをねじ口瓶中に密閉し、50℃で3日間保存した後の粘度を「50℃3日後」の粘度とした。50℃3日後の粘度を初期粘度で除したものを「粘度変化率」とした。
表6に示した通り、本発明の正極合材ペーストは、比較例の正極合材ペーストよりも粘度変化率が小さいことから、粘度安定性に優れる正極合材ペーストであることが明らかとなった。
【0111】
【表6】
【0112】
<リチウム二次電池用正極の作製>
先に調製した正極合材ペーストA〜Wを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、120℃、0.01MPaで2時間減圧加熱乾燥した。次いで、卓上テストプレス(テスター産業社製)を用いて合材層の厚さが50μmになるまで圧延し、正極A〜Wを作製した。
【0113】
<リチウム二次電池用正極評価用セルの作製>
先に作製した正極A〜Wを、直径9mmに打ち抜き、作用極とした。一方、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製、#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを重量比1:1に混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解質液)を満たして二極密閉式金属セル(宝仙社製、HSフラットセル)を作製した。セルの作製は、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行い、セル作製後、以下に示す電池評価を行った。
【0114】
[実施例36〜55、比較例7〜9]
<リチウム二次電池用正極の特性評価>
先に作製した正極評価用セル(電池)を、室温(25℃)において、充電レート0.2Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.5V)で満充電とし、放電レート0.2Cの定電流で放電下限電圧2.0Vまで放電を行った。これによって得られた放電容量を、0.2Cにおける放電容量とした。次に充電レート0.2Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.5V)で満充電とし、放電レート5.0Cの定電流で放電下限電圧2.0Vまで放電を行い、5.0Cにおける放電容量とした。5.0Cにおける放電容量を0.2Cにおける放電容量で除したものを容量維持率とした。各放電容量及び、容量維持率の結果を表7に示した。
【0115】
<直流内部抵抗測定>
先に作製した電池評価用セル(電池)を、室温(25℃)において、充電レート0.2Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.5V)で満充電とし、0.1C、0.2C、0.5C、1.0Cの各レートの定電流で5秒間放電後、電池電圧を測定した。電流値に対し、電圧値をプロットし、得られた直線の傾きを内部抵抗とし、結果を表7に示した。ただし、実施例36の内部抵抗を100%とした時の相対値(%)で示した。
【0116】
【表7】
【0117】
表7に示した通り、本発明の正極合材ペーストを用いて作製した正極および電池は、比較例に比べて、大電流における放電容量に優れ、内部抵抗が低下していることが明らかとなった。