特許第5900120号(P5900120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000002
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000003
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000004
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000005
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000006
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000007
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000008
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000009
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000010
  • 特許5900120-紙葉類処理装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900120
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】紙葉類処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20160324BHJP
   G07D 3/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   G07D9/00 401E
   G07D3/00 401
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-86641(P2012-86641)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-218422(P2013-218422A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山縣 毅
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025456(JP,A)
【文献】 特開2009−120219(JP,A)
【文献】 特開2006−293907(JP,A)
【文献】 特開2008−114977(JP,A)
【文献】 特開2011−107980(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0166957(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0101467(US,A1)
【文献】 実開昭55−019281(JP,U)
【文献】 特開2008−287553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G07D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定枚数の結束対象紙葉類を進退動させながら結束材で結束させ、結束後の紙葉類を紙葉類放出口から放出させる紙葉類結束部を有する紙葉類処理装置において、
上記紙葉類放出口の扉開放、閉鎖を検出する扉状態検知手段と、
上記結束対象紙葉類を進動させた後に、上記扉状態検知手段が上記扉開放を検知しているときは、上記結束対象紙葉類を退動させることなく、上記紙葉類結束部の動作を停止させる特殊処理を起動させる閉鎖開放処理切分け手段と
を備えることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
上記閉鎖開放処理切分け手段は、上記結束対象紙葉類を進動させた後に行う退動前のタイミングで、上記扉状態検知手段による上記扉の開放、閉鎖の検知結果を確認し、上記結束対象紙葉類の退動か上記特殊処理の起動かを判断することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
上記閉鎖開放処理切分け手段は、上記結束対象紙葉類を進動させた後に行う退動前のタイミングで、上記扉が開放されていて、かつ、上記結束対象紙葉類の進動が終了したときから遡って第1の所定時間以上連続して開放されているか否かを確認し、上記結束対象紙葉類の退動か上記特殊処理の起動かを判断することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
上記閉鎖開放処理切分け手段は、上記結束対象紙葉類を進動させた後に行う退動前のタイミングで、上記結束対象紙葉類の進動が終了したときから遡って第1の所定時間以上連続して開放されているか否かを確認し、上記結束対象紙葉類の退動か上記特殊処理の起動かを判断することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
上記特殊処理の起動後に、上記扉状態検知手段の検知結果を確認し、上記扉が第2の所定時間以上連続して閉鎖しているか否かを判別する扉復帰確認手段を備え、
上記扉復帰確認手段が、上記扉が第2の所定時間以上連続して閉鎖している状態になったと判断することを条件として、停止状態の上記紙葉類結束部を再開させる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
紙葉類を装置内部に取込み、鑑別して複数の集積部に振分けて集積させ、いずれかの上記集積部の枚数が所定枚数に達したときに、集積されている紙葉類を結束対象紙葉類として紙葉類結束部に引き渡す取込・搬送・集積部を備え、
上記閉鎖開放処理切分け手段は、上記特殊処理を行い、紙葉類の装置内部への取込みを停止させる
ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
上記閉鎖開放処理切分け手段は、紙葉類の装置内部への取込みを停止させた段階で、いずれかの上記集積部に集積されていない搬送途中の紙葉類が残っていれば、それら紙葉類をいずれかの上記集積部に集積させた後、搬送構成を停止させることを特徴とする請求項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
上記特殊処理の起動後に、上記扉状態検知手段の検知結果を確認し、上記扉が第2の所定時間以上連続して閉鎖しているか否かを判別する扉復帰確認手段と、
上記扉復帰確認手段が、上記扉が第2の所定時間以上連続して閉鎖している状態になったと判断すること、及び、動作再開用のキー操作を、少なくとも条件として、停止された上記取込・搬送・集積部の動作を再開させる
ことを特徴とする請求項又はに記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
操作表示部を備え、
上記特殊処理を起動した際に、前記操作表示部に上記紙葉類放出口の扉が開放している旨を表示する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉類処理装置に関し、例えば、紙幣を金種別などに分類して計数し、計数した分類紙幣をそれぞれ一時集積部に集積し、一定枚数毎に結束して整理する紙幣結束整理装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
金融機関の本支店や大型小売店等の1日に多くの紙幣を取り扱う店舗において、紙幣結束整理装置が導入され、精査時等に回収した紙幣を一定枚数毎に束ねて整理することが行われている。また、複数の本支店や小売店から紙幣を回収するセンタにおいて、紙幣結束整理装置が導入され、各店舗から回収した紙幣を一定枚数毎に束ねて整理することが行われている。
【0003】
従来の紙幣結束整理装置において、投入部にセットされた多数枚の紙幣は、1枚ずつ鑑別部に搬送されて、金種や、正券又は損券等の鑑別が実行され、金種や正券又は損券などのオペレータによる予めの指定に基づいて、複数の一時集積部に分別されて集積され、集積枚数が所定枚数に達すると、その所定枚数の紙幣が紙テープ等の結束材により束ねられて放出される(特許文献1参照)。以下では、結束された後の紙幣を「紙幣束」と呼び、結束される前の紙幣を「結束対象紙幣」と呼び、呼称でも区別するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−113152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放出された紙幣束は、作業員によって必ずしも直ちに取り去られるとは限らず、複数の紙幣束が積み重ねられた状態になることもあり得る(放出された紙幣束の積み重ねであるため、その形状は規定できず山のようになることもある)。このような場合において、積み重ねられた紙幣束が放出の邪魔をして、新たに放出しようとした紙幣束が放出口を跨いで止まることがある。この場合、既にできている積重ねの形状の影響を受けて、止まった際の向きを規定することはできない。結束対象紙幣を結束材で束ねる機構は、結束対象紙幣を上下のベルトで挟持して進退動(以下、放出口に向かう移動を進動と呼び、その逆方向の移動を退動と呼ぶ)させながら結束材を巻き掛けるものである。放出口を跨いで止まった紙幣束が、上述した上下のベルトの少なくとも一方に接することもあり、接しているベルトの退動により紙幣束の一部の紙幣に抜き方向の力が働き、紙幣束の他の紙幣から位置がずれたり、最悪の場合には紙幣束から抜けてしまったりすることが、ごくごく稀ではあるが生じていた。
【0006】
そのため、放出した紙葉類束における一部の紙葉類の位置ずれや紙葉類束からの抜けを防止することができる紙葉類処理装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、本発明は、所定枚数の結束対象紙葉類を進退動させながら結束材で結束させ、結束後の紙葉類を紙葉類放出口から放出させる紙葉類結束部を有する紙葉類処理装置において、(1)上記紙葉類放出口の扉開放、閉鎖を検出する扉状態検知手段と、(2)上記結束対象紙葉類を進動させた後に、上記扉状態検知手段が上記扉開放を検知しているときは、上記結束対象紙葉類を退動させることなく、上記紙葉類結束部の動作を停止させる特殊処理を起動させる閉鎖開放処理切分け手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙葉類処理装置によれば、放出した紙葉類束における一部の紙葉類の位置ずれや紙葉類束からの抜けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の紙幣結束整理装置の内部構造を示す概略側面図(一方の側板を取り外して見た概略側面図)である。
図2図1における上部構造を拡大して示す拡大側面図である。
図3】実施形態に係る紙幣結束整理装置の外観を示す斜視図である。
図4】実施形態の紙幣結束整理装置における操作部を拡大して示す平面図である。
図5】実施形態の紙幣結束整理装置における集積機構の詳細を示す側面図である。
図6】実施形態の紙幣結束整理装置における紙幣結束機構の詳細を示す側面図である。
図7】実施形態に係る紙幣結束整理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図8】実施形態に係る紙幣結束整理装置の制御部による結束処理時における監視、制御動作の概要を示すフローチャートである。
図9】実施形態の紙幣結束整理装置が結束動作を停止、再開させた際の画面例を示す説明図である。
図10】実施形態の紙幣結束整理装置における効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による紙葉類処理装置を、紙幣結束整理装置に適用した一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態に係る紙幣結束整理装置の内部構造を示す概略側面図(一方の側板を取り外して見た側面図)である。図2は、図1における上部構造を拡大して示す拡大側面図である。図3は、実施形態に係る紙幣結束整理装置の外観を示す斜視図である。図4は、図3における操作部を拡大して示す平面図である。図1図4だけでなく後述する各図を含め、同一、対応部分には、同一、対応符号を付して示している。
【0012】
実施形態に係る紙幣結束整理装置100の正面上部には、紙幣の投入部1が設けられている。鑑別部2は、装置内に設けられており、投入部1から投入された紙幣の真偽(真券、偽券)、金種、正損(正券、損券)、表裏等の鑑別や計数を行うと共に、搬送異常の検出を行うものである。なお、鑑別部2が全ての鑑別処理を実行するものを示したが、鑑別処理の一部を外部接続された装置(例えばパソコン)が行うものであっても良い。鑑別された紙幣を搬送する搬送路3の詳細については、後述する。表裏反転部4は、鑑別部2の後段に位置するように設けられており、後述する制御部50の制御下で、紙幣の表裏反転を行うものである。
【0013】
オープンポケット5は、装置の上面に1又は複数設けられており、後述する制御部50の制御下で、そのときの動作モードやオペレータの指定などで定まる紙幣(例えば、集積、結束対象外の金種の紙幣)がこのオープンポケット5へ排出される。
【0014】
リジェクトポケット(リジェクト部)8は、基本的に、鑑別部2でリジェクト紙幣と鑑別された紙幣を集積するものである。リジェクトポケット8は、例えば、投入部1の上方に設けられており、このリジェクトポケット8に集積された紙幣にオペレータが直接アクセスできるものとなっている。リジェクトポケット8に排出可能な上限数は、所定枚数(例えば100枚)に定められている。これは、リジェクトポケット8から排出されたリジェクト紙幣が所定枚数を超えると、リジェクトポケット8から紙幣がこぼれて装置外に落ちる恐れがあるためである。例えば、所定枚数(後述する制御部50がソフト的なカウンタを用いて計数する)に達したときには、紙幣の投入を一時停止させ、リジェクト紙幣のリジェクトポケット8からの除去をオペレータに求めるメッセージを表示させることとしている。
【0015】
操作部7は、投入部1の一側(図示のものは右側)に設けられている。この操作部7には、紙幣の計数を指示する計数開始キー7a、計数及び結束処理の完了を指示する完了ボタン7b、装置の障害復旧時に装置を再稼働させるためのリセットボタン7cなどが設けられている。
【0016】
操作表示部13は、装置上面においてオープンポケット5の後方に位置するように設けられている。操作表示部13は、液晶ディスプレイとその表面に配置されたタッチパネルによって構成されている。オペレータは、この操作表示部13を操作して、モードの指定や、後述する一時集積部6a〜6dに集積する紙幣の金種、集積順序等を設定できるようになされている。また、この操作表示部13には、後述する制御部50の制御下で、鑑別部2で鑑別された紙幣の金種、正損、計数結果等が表示される。この実施形態の場合、操作表示部13は、後述する制御部50の制御下で、後述する紙幣束放出扉14が後述するタイミングで開放されている場合にその旨を表示するものである。
【0017】
集積機構6には、上下方向に1列に4つの一時集積部6a〜6dが並べられて装置内に設けられている。各一時集積部6a〜6dにはそれぞれ、後述する制御部50の制御下で、予め定められた枚数(例えば100枚)を上限とした指定種類の紙幣が集積できるようになっている。なお、一時集積部の数は4つに限定されるものではない。
【0018】
移送機構9は、一時集積部6a〜6dの集積紙幣(結束対象紙幣)を紙幣結束機構10に移送するものであり、紙幣結束機構10は、移送されてきた結束対象紙幣を紙テープ等の結束材により束ねるものであり、両者とも紙幣結束整理装置100内に設けられている。移送機構9及び紙幣結束機構10の詳細については後述する。紙幣束放出口11は、紙幣結束機構10の結束により形成された紙幣束を放出させる開口であり、通常時は、紙幣束放出扉14によって閉塞されている。紙幣束放出扉14の上部の装置正面に設けられた扉12は、開けることで、オペレータが集積機構6にアクセスできるものとなっている。
【0019】
次に、搬送路3について詳述する。搬送路3は、ローラや搬送ベルトや通過を検知するセンサ、駆動モータ等からなっているが、以下では、紙幣の経路という面から搬送路3を説明する。搬送路3は、図2に示すように、大きくは5つの部分(以下、部分に対しても搬送路と呼ぶこととする)3a〜3eに分かれている。
【0020】
搬送路3aは、投入部1から鑑別部2を経て分岐点Aに至る部分である。従って、投入された全ての紙幣が、搬送路3a上を搬送される。
【0021】
搬送路3bは、分岐点Aからリジェクトポケット8に至る部分である。従って、鑑別結果が、リジェクトポケット8に集積させるリジェクト紙幣が、搬送路3b上を搬送される。
【0022】
搬送路3cは、分岐点Aから分岐点Bに至る部分であり、その途中に表裏反転部4が設けられており、搬送路3cは、表裏反転部4を通過しないように紙幣を搬送することもできる。表裏反転部4は溝状のものであり、搬送されてきた紙片は、表裏反転部4に一端から挿入され、他端から引き出されることを通じて表裏が反転される。投入された紙幣のうち、リジェクトポケット8に向かった紙幣以外の紙幣が、搬送路3c上を搬送される。搬送路3c上に導入された紙幣のうち、表裏反転が必要と鑑別されたものは、表裏反転部4を経由する。
【0023】
搬送路3dは、分岐点Bから、最下段の一時集積部6dに至る部分である(図1参照)。鑑別部2によって、集積、結束対象と鑑別された紙幣が、搬送路3d上を搬送され、その紙幣が集積されるべき一時集積部6a〜6dに搬入される。
【0024】
搬送路3eは、分岐点Bからオープンポケット5に至る部分である。従って、鑑別結果が、オープンポケット5に集積させる紙幣である場合に、その紙幣が搬送路3e上を搬送される。
【0025】
なお、搬送路3上の分岐点A、Bのそれぞれの近傍には、紙幣の搬送方向を切替える図示しない切替えブレードが設けられ、後述する制御部50の制御下で切り替えられる。
【0026】
図5は、集積機構6の構成を図1より詳細に示す側面図である。集積機構6には、上述のように、4つの一時集積部6a〜6dが上下方向に並べて配置されている。これらの一時集積部6a〜6dは、同一の構造を有しているので、以下では、一時集積部6aを例にとって詳細を説明する。
【0027】
搬送路3dにより搬送されてきた紙幣は、一時集積部6aの振り分けゲート27により集積板21に向かって取り込まれ、これにより一時集積部6aに進入した紙幣は羽根車20により後部が叩かれて集積板21の上に集積されるようになされている。以降進入してくる紙幣に関しても、同様の動作で集積板21上に集積した紙幣の上に集積される。
【0028】
一時集積部6aに進入した紙幣は、一時集積部6aの一側(例えば、図5紙面法線方向の手前側)に設けられた図示しない長手整位機構により、紙幣の長手方向の位置が揃えられ、更に一時集積部6aの後端側に設けられた短手整位機構23により短手方向の位置が揃えられる。長手整位機構は、紙幣を反対側に設置された基準面に押しつけることで整位するものとなっている。また、短手整位機構23は、集積された紙幣を進入口側に付勢することにより整位するものとなっている。
【0029】
集積板21上に紙幣が集積して行き、その集積数(後述するカウン52a〜52dの値)が基準枚数を越えると、集積板21は自動的に下降して一時集積部6aの空間を広げ、この動作により皺や折り目等に起因する紙幣の状態によって集積高さが違っても安定して集積が行えるようになっている。集積板21の上方には押さえ板24が対向するように設けられ、この押さえ板24は集積板21上への紙幣の集積中は一時集積部6aの上端に待機しており、順次取り込まれる紙幣の進入の邪魔にならないようになっている。
【0030】
一時集積部6aの集積板21上に予め定められた所定枚数(例えば100枚)の紙幣が集積されると、ゲート振り分け機構27を、紙幣を取り込まない姿勢に動作させ、所定枚数目以降の紙幣は、例えば、他の一時集積部6b〜6dのいずれかへ集積するように制御される。
【0031】
紙幣の進入が停止した一時集積部6aでは集積板21を上昇させ、押さえ板24を下降させることにより紙幣を挟持する。この動作により皺等の紙幣の状態によって集積高さの異なる紙幣の厚みを一定にし、移送機構9への受渡しを容易にするようになっている。集積板21と押さえ板24により挟持された紙幣は、移送機構9の紙幣クランプ部30(図1参照)が短手整位機構23側から一時集積部6aに進入して引き抜かれるようになっている。
【0032】
なお、図示は省略しているが、一時集積部6a〜6dの各々の近傍に表示部が設けられており、制御部50の制御下で、各表示部に集積している金種や正損(正券、損券)の種別が表示されると共に、その時点での集積枚数が表示される。
【0033】
移送機構9は、図1に示すように、紙幣クランプ部30、クランプ部移動機構31、上下動機構32を備えている。移送機構9の構成を、動きを通して明らかにする。
【0034】
一時集積部6aに集積された紙幣を引き抜く場合を例に、移送機構9の一連の動きを説明する。上下動機構32により紙幣クランプ部30をクランプ部移動機構31と共に、一時集積部6aに係るポジションセンサの位置まで上昇させ、ポジションセンサがクランプ部移動機構31を検知した位置で上昇を停止させると同時に、図示しない係止手段によりクランプ部移動機構31を係止し、クランプ部移動機構31を一時集積部6aと対応する位置に固定する。この状態でクランプ移動機構31により紙幣クランプ部30のクランプ爪33a、33bを上下方向に開いて集積紙幣をクランプする準備を行い、更にクランプ移動機構31により紙幣クランプ部30を一時集積部6aの方向に押し出す。押し出された紙幣クランプ機構30のクランプ爪33a、33bは、一時集積部6aの短手整位機構23側に設けられている開口部に挿入され、集積板21と押さえ板24により挟持されている集積紙幣を上下から挟みつけて把持する。次に、集積板21と押さえ板24を開くことで、両者による集積紙幣の挟持を解除すると、これにより100枚の紙幣が紙幣クランプ部30に渡されたことになるので、クランプ爪33a、33bで集積紙幣を把持した紙幣クランプ部30をクランプ部移動機構31により引き戻す。紙幣クランプ部30が元の位置まで引き戻されると、クランプ部移動機構31の係止が解除され、紙幣を把持した紙幣クランプ部30と共にクランプ移動機構31が上下動機構32により移動経路の最下端に位置する紙幣結束機構10まで移動し、紙幣クランプ部30のクランプ爪33a、33bに把持された集積紙幣(結束対象紙幣)が紙幣結束機構10に引き渡される。
【0035】
紙幣結束機構10は、図6の側面図に示すように、上下の横方向のベルト、縦方向のベルト、各ベルトを走行させるために複数のローラ等からなる搬送手段40と、紙テープ等の結束用テープ41と、印刷手段42と、テープ41を供給するテープ供給手段43と、テープ41を所定の長さに切断するカッタ44と、図示しない結束手段を有し、以下のように紙幣を結束する。
【0036】
搬送手段40が移送機構9の紙幣クランプ部30から結束対象紙幣を一括して受け取り、結束位置に搬送する。テープ供給手段43は、テープ41を結束手段に供給し、その際、印刷手段42は、制御部50の制御下で、テープ41に結束する紙幣に係る情報等を印刷する。印刷されたテープ41は、所定の長さにカッタ44で切断され、この切断されたテープを、結束手段が結束位置に搬送された結束対象紙幣に巻き掛けて結束することにより紙幣束を作る。テープを結束対象紙幣に巻き掛ける際には、結束対象紙幣を第1の所定位置まで進動させる第1ステップと、結束対象紙幣を第1の所定位置から第2の所定位置まで退動させる第2ステップとがあり、このような進退動によって、テープを結束対象紙幣に巻き掛けられるようになされている。形成された紙幣束は、更に搬送手段40により搬送され、紙幣束放出扉14を押し開けて紙幣束放出口11から外部へ放出される。
【0037】
搬送手段40における紙幣束放出口11側に近い位置には、1対の発光素子及び受光素子でなる放出確認センサ45が設けられており、この放出確認センサ45の検知出力が後述する制御部50に与えられ、搬送手段40を放出搬送動作させたタイミングにおける放出確認センサ45の検知出力の変化に基づいて、制御部50が紙幣束の放出を確認し得るようになされている。
【0038】
この実施形態の場合、紙幣結束機構10は、放出確認センサ45に加え、紙幣束放出扉監視センサ46を有している。紙幣束放出扉14は、その上辺近傍に設けられた、図示しない軸受に遊挿された回転軸14aを中心に回動し得るものである。回転軸14aには、例えば、扇状の板部材(以下、遮光片と呼ぶ)14bが固着されている。紙幣束放出扉監視センサ46は、図6の紙面法線方向を光路としている一対の発光素子及び受光素子でなる光電センサから構成されており、紙幣束放出扉14の回動角が、紙幣束放出扉14が開放時にとり得る範囲にあるときに、紙幣束放出扉14の発光素子及び受光素子を結ぶ光路を、遮光片14bが遮断(遮光)するように、遮光片14bの形状と、遮光片14bの回転軸14aに対する取付位置が選定されている。すなわち、紙幣束放出扉監視センサ46の検知出力が遮光を表す論理レベルのときは、紙幣束放出扉14が、紙幣束放出口11を閉鎖できていないこと(紙幣束放出扉14が開放していること)を表している。紙幣束放出扉監視センサ46は、例えば、紙幣束放出扉14の開閉状態(開放、閉鎖)を常時監視している。
【0039】
投入部1にセットされた紙幣が全て投入され、最後の紙幣に対する処理(計数、集積)が終了したときに、一時集積部6a〜6bに結束されていない紙幣が残っていることが多い。このような残った端数の枚数については、上述した扉12を開けることにより、オペレータが取り出し可能となっている。
【0040】
図7は、実施形態に係る紙幣結束整理装置100の制御系の構成を示すブロック図である。
【0041】
図7において、制御部50は、例えば、主にマイクロコンピュータなどで構成されており、当該紙幣結束整理装置100全体の動作制御を行うものである。メモリ部51は、例えば、プログラムメモリやワーキングメモリや設定データメモリを有する。制御部50は、プログラムメモリに格納されているプログラム(後述する図8参照)や設定データメモリに設定されているデータに従い、ワーキングメモリを、情報を一時的に記憶するメモリとして用いながら、各部を制御する。また、メモリ部51は、投入紙幣から得た分類集計結果を記憶するものである。
【0042】
制御部50には、I/Oインタフェース回路52を介して、投入部1の構成要素(モータ、ソレノイドなどの駆動要素や、センサ要素など;図7では「構成要素」の用語を省略している;以下の説明においても「構成要素」の用語を省略する)、鑑別部2、搬送路3、表裏反転部4、集積機構6、操作部7、移送機構9、紙幣結束機構10、操作表示部13、カウンタ52a〜52dなどが接続されている。
【0043】
カウンタ52a〜52dはそれぞれ、一時集積部6a〜6dに1対1で対応しており、例えば、対応する一時集積部6a〜6dの所定位置に設けられているセンサが進入紙幣を検知する毎にカウントアップするものである。ここでは、カウンタ52a〜52dとしてハードウェアのカウンタを適用しているが、制御部50がメモリ部51を利用するソフトウェア的なカウンタを適用しても良い。
【0044】
(A−2)実施形態の動作
次に、上述した構成を有する実施形態に係る紙幣結束整理装置100の動作について説明する。
【0045】
紙幣結束整理装置100の電源が投入されると、制御部50は、操作表示部13に初期画面を表示させ、オペレータは、この初期画面に表示されているモード選択肢を指で押下して入金モード又は整理モードを選択する。入金モードは、投入された紙幣の入金取引を行って紙幣を計数し、取引の番号毎、指定した区分毎等に分類集計した結果をメモリ部51に記憶するモードであり、また、整理モードは、分類集計結果をメモリ部51に記憶しないモードしている。
【0046】
次に、選択された入金モード又は整理モードにおけるより詳細な動作モードを選択する。詳細動作モードには、単に紙幣の計数のみを行う計数モード、指定した金種の紙幣を正券、損券を区別することなく結束する指定金種結束モード、指定した金種の紙幣を分類しながら正券であるATMフィット券(官封券の状態からの使用頻度が少ない状態の券)と流通券(ATMに用いるには適さないが紙幣発行銀行に返却するほどは傷んでいない状態の券)とを区別して結束する正券分類結束モード、指定した金種の紙幣を分類しながらATMフィット券と流通券と損券とをそれぞれ区別して結束する正損券分類結束モードなどがあり、オペレータは、操作表示部13に表示された詳細動作モードの選択画面から、その中から1つを選択する。なお、ATMフィット券だけ結束する、流通券だけ結束するなど、正券でも、取り扱えを変えたモードが用意されていても良い。また、ATMフィット券及び流通券を分類することなく正券を結束するようにしても良い。
【0047】
計数モードが選択されたときは、制御部50は、リジェクトポケット8へ偽券を排出させるか否かを指定した上で動作開始の指示をオペレータに求める画面を操作表示部13に表示させ、リジェクトポケット8へ偽券を排出させるか否かが指定された上で、操作部7の計数開始キー7aがオペレータによって操作されたときに、計数モードでの動作を開始する。
【0048】
計数モードにおいては、投入1にセットされた紙幣が鑑別部2に搬送され、金種鑑別及び計数が実行される。そして、偽券をリジェクトポケット8に排出することがオペレータによって選択されていない場合には、全ての投入紙幣をオープンポケット5に排出させ、一方、偽券をリジェクトポケット8に排出することがオペレータによって選択されている場合には、偽券以外の紙幣をオープンポケット5に排出させ、偽券をリジェクトポケット8に排出させる。
【0049】
指定金種結束モード、正券分類結束モード、正損券分類結束モードなどにおいては、制御部50が、指定された金種や経時変化状態などに応じて一時集積部6a〜6dに集積させる金種や経時変化状態を自動的に定めることもあり、また、オペレータが、一時集積部6a〜6dに対して、個別に、集積させる金種や経時変化状態を指定することもできる。一時集積部6a〜6dに集積させる紙幣の情報は、メモリ部51に記憶される。
【0050】
制御部50は、一時集積部6a〜6dに集積させる紙幣情報を記憶させた後、オープンポケット5及びリジェクトポケット8への集積、結束対象外の紙幣の排出方法をオペレータに指示させる画面を操作表示部13に表示させ、オペレータによって排出方法を指示させる。
【0051】
集積、結束対象外の紙幣の排出方法を指定した後に、オペレータは、紙幣を投入部1にセットし(紙幣のセットのタイミングはこのタイミングより前であっても良い)、操作部7の計数開始キー7aを操作して、計数及び集積、結束動作を開始させる。これにより、投入部1から1枚ずつ紙幣が分離されて搬送路3aにより鑑別部2に搬送され、鑑別部2で、紙幣の真偽、金種、表裏、正損等の鑑別と計数、及び、搬送異常の有無の検出が行われる。鑑別部2の結果が与えられた制御部50は、その紙幣が集積機構6に集積させるもの(真券であって、正損の面からの分類も該当している紙幣)であれば、搬送路3cにより表裏反転部4に搬送され、この表裏反転部4によって表裏が揃えられた後、搬送路3dにより集積機構6に搬送されて一時集積部6a〜6dに集積される。鑑別部2の結果が与えられた制御部50は、その紙幣が集積対象外であれば、その紙幣をオープンポケット5又はリジェクトポケット8に搬送させる。
【0052】
搬送路3dにより集積機構6に搬送されてきた紙幣は、該当する一時集積部6a〜6dの振り分けゲート(27)により集積板(21)に向かって取り込まれ、集積板の上に集積される。一時集積部6a〜6dの集積板上に予め定められた所定枚数(例えば100枚)の紙幣が集積されると、ゲート振り分け機構を、紙幣を取り込まない姿勢に動作させた後、集積板を上昇させ、押さえ板(24)を下降させることにより紙幣を挟持する。集積板と押さえ板により挟持された紙幣は、移送機構9の紙幣クランプ部30が短手整位機構23側から一時集積部6a〜6dに進入して引き抜かれる。集積紙幣を把持した紙幣クランプ部30と共にクランプ移動機構31が上下動機構32により移動経路の最下端に位置する紙幣結束機構10まで移動し、紙幣クランプ部30のクランプ爪33a、33bに把持された集積紙幣(結束対象紙幣)が紙幣結束機構10に引き渡される。
【0053】
搬送手段40が移送機構9の紙幣クランプ部30から結束対象紙幣を一括して受け取り、結束位置に搬送する。テープ供給手段43は、テープ41を結束手段に供給し、その際、印刷手段42は、制御部50の制御下で、テープ41に結束する紙幣に係る情報等を印刷する。印刷されたテープ41は、所定の長さにカッタ44で切断され、この切断されたテープを、結束手段が結束位置に搬送された結束対象紙幣に巻き掛けて結束することにより紙幣束を作る。テープを結束対象紙幣に巻き掛ける際には、結束対象紙幣を進動させた後、退動させ、このような進退動によって、テープ41を結束対象紙幣に巻き掛ける。形成された紙幣束は、更に搬送手段40により搬送され、紙幣束放出扉14を押し開けて紙幣束放出口11から外部へ放出される。
【0054】
図8は、制御部50による実施形態の特徴動作(結束処理時における監視、制御動作)の概要を示すフローチャートである。
【0055】
いずれかの一時集積部に所定枚数の紙幣が集積され、結束、放出が必要となると、制御部50は、結束対象紙幣を紙幣結束機構10に移動させ(ステップS1)、テープ41を結束対象紙幣に巻き掛けるため、結束対象紙幣を進動させる(ステップS2)。結束対象紙幣の進動が終了したときには、制御部50は、紙幣束放出扉監視センサ46の検知出力に基づいて、結束対象紙幣の進動が終了したときに紙幣束放出扉14が開放されていて、かつ、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間(例えば5秒)以上連続して開放されている、エラー処理への移行条件が成立するか否かを判断する(ステップS3)。
【0056】
結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間(例えば5秒)以上連続して開放されているか否かを、制御部50は、例えば、以下のように判断する。上述したように、紙幣束放出扉監視センサ46は、紙幣束放出扉14の開閉状態(開放、閉鎖)を常時監視している。制御部50は、所定周期(例えば100ms)毎に、紙幣束放出扉監視センサ46の検知出力を取込んで、取り込んだ検知出力に応じて開状態フラグを操作する。開状態フラグは、当該装置の電源が投入された際のデフォルト値は「閉鎖」を表すOFFである。制御部50は、開状態フラグがOFFのときには、紙幣束放出扉監視センサ46からの検知出力が50回連続して開放を表しているか否かを判別し、開放を表している検知出力が50回(50周期)連続したときに、開状態フラグを「開放」を表すONに変更させる。また、制御部50は、開状態フラグがONのときには、紙幣束放出扉監視センサ46からの検知出力が10回連続して閉鎖を表しているか否かを判別し、閉鎖を表している検知出力が10回(10周期)連続したときに、開状態フラグをOFFに変更させる。制御部50は、結束対象紙幣の進動が終了したときに、開状態フラグの値を確認することにより、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間(例えば5秒)以上連続して開放されているか否かを判別する。
【0057】
進動の終了後において、紙幣束放出扉14が紙幣束放出口11を閉鎖していると捉えられる場合など、エラー処理への移行条件が成立していない場合には(ステップS3で否定結果)、制御部50は、結束対象紙幣を退動させてテープ41の結束対象紙幣に対する巻掛け(結束)を完成させ(ステップS4)、その後、得られた紙幣束を紙幣束放出口11から外部へ放出させる(ステップS5)。
【0058】
結束対象紙幣の進動が終了したときに紙幣束放出扉14が開放されていて、かつ、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間(例えば5秒)以上連続して開放されていると(エラー処理への移行条件が成立すると)、制御部50は、結束処理から抜け出て(エラー処理を開始し)、紙幣結束機構10の動作を停止させ(ステップS6)、投入1にセットされた紙幣の取込みを停止させ(ステップS7)、さらに、エラー処理の開始時点で搬送路3上に存在する全ての紙幣を鑑別結果に応じて、オープンポケット5、一時集積部6a〜6d又はリジェクトポケット8に搬送させ(ステップS8;搬送後に搬送のための構成を停止する)、最後に、操作表示部13に、紙幣束放出扉14が紙幣束のために開いているので取り除くことを求めるメッセージを表示させる(ステップS9)。図9(A)は、この際の表示例を示しており、計数動作時用の表示画面(図9(A)では省略)の上に、上記メッセージを含むウィンドウ画面を重ねて表示させている。
【0059】
なお、紙幣束放出扉14が開放されていることをエラー音で報知するようにしても良いが、この実施形態では、紙幣結束機構10の動作の停止や、投入1にセットされた紙幣の取込み停止などで、当該紙幣結束整理装置100が発する音が急激に小さくなっていて作業者が変化に気付くため、エラー音を報知することは行っていない。
【0060】
制御部50は、上述のように、当該紙幣結束整理装置100を半停止状態にしたときには、紙幣束放出扉14が所定時間(例えば1秒)以上連続して閉鎖されている状態に遷移することを監視する(ステップS10)。具体的には、例えば、制御部50は、上述した開状態フラグがOFFに遷移することを監視する。
【0061】
制御部50は、紙幣束放出扉14が閉鎖されている状態に戻ると(ステップS10で肯定結果)、紙幣結束機構10の動作を再開させ、結束対象紙幣の結束を行う(ステップS11)。制御部50は、紙幣結束機構10の動作を再開と共に、計数開始キー7aを操作することを求めるメッセージを操作表示部13に表示させて、計数開始キー7aの操作を待ち受ける(ステップS12)。そして、計数開始キー7aが操作されると、制御部50は、投入1にセットされた紙幣の取込み、鑑別、搬送、集積などを再開させて(ステップS13)、通常の動作状態に戻す。つまり、制御部50は、紙幣束放出扉14が閉鎖されていると判断した場合、紙幣結束機構10の動作は直ちに再開させるが、投入1にセットされた紙幣の取込み、鑑別、搬送、集積などの動作は計数開始キー7aが操作されるまで再開させない。図9(B)は、紙幣結束機構10の動作を再開させた直後の表示例を示しており、紙幣結束動作を再開した旨と計数開始キー7aの操作を促す旨のメッセージが表示される。図9(B)の表示例は、計数動作時用の表示画面(図9(B)では省略)の上に、上記メッセージを含むウィンドウ画面を重ねて表示させる例である。紙幣の取込み、鑑別、搬送、集積などが再開された場合には、図示は省略するが、通常の動作における表示内容が表示される。
【0062】
(A−3)実施形態の効果
上記実施形態の紙幣結束整理装置によれば、紙幣束放出扉14を開けた状態では、結束対象紙幣の退動を実行しないようにしたので、放出した紙幣束における一部の紙幣の位置ずれや紙幣束からの抜けを防止することができるようになる。
【0063】
例えば、図10のように、直前に放出した紙幣束MD1が、それまでに放出された複数の紙幣束の山に接して放出し切らず、紙幣束放出扉14を開けた状態で紙幣束放出口11に跨った場合には、従来であれば、結束中の結束対象紙幣MD0を退動させるための搬送手段40の運動により、直前に放出した紙幣束MD1から1、2枚の紙幣BILが引き出され、位置を変えたり、紙幣束から抜ける恐れがある。実施形態では、結束中の結束対象紙幣MD0を退動させる直前のタイミングで、紙幣束放出扉14が開いていれば、紙幣結束機構10の動作を停止させ、紙幣束放出口11に跨った紙幣束MD1の除去を待ち受けるので、放出した紙幣束の一部の紙幣の位置ずれや紙幣束からの抜けを防止することができる。
【0064】
なお、放出確認センサ45を紙幣束放出扉14に近接させることで、紙幣束が紙幣束放出口11に跨ったことを検出することもできる。しかしながら、紙幣束放出口11の長手方向(図10の紙面法線方向)の長さは紙幣の長手方向の長さより長く、紙幣束の紙幣束放出口11の跨り方も様々である。放出確認センサ45は1点だけを監視するため、紙幣束が紙幣束放出口11に跨っていても跨り方によっては、跨っていることを検出できない恐れがある。これを回避しようとすると、紙幣束放出口11の長手方向に沿って複数の放出確認センサ45を設けなければならず、紙幣結束整理装置を複雑、高価なものにしてしまう。
【0065】
すなわち、実施形態のような紙幣束放出扉監視センサ46を適用する構成は、簡易、安価な構成によって、上述した効果を引き出させるものとなっている。
【0066】
また、上記実施形態では、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間(例えば5秒)以上連続して開放されていることを、エラー処理への移行の条件としており、エラー処理への移行を早めることができる。例えば、結束対象紙幣の進動が終了したときに、その時点から所定時間(例えば5秒)以上連続して開放されていることをエラー処理の移行条件とすることもできるが(本発明の他の実施形態となる)、この場合、エラー処理へ移行する時点が、上記実施形態の場合より遅くなってしまう。
【0067】
さらに、上記実施形態では、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間(例えば5秒)以上連続して開放されていることを、エラー処理への移行の条件としているため、エラー処理へ誤って移行させることを未然に防止することができる。例えば、結束対象紙幣の進動が終了した1時点で紙幣束放出扉14が開放されていることをエラー処理の移行条件とすることもできるが(本発明の他の実施形態となる)、この場合、紙幣束が紙幣束放出扉14に挟まっていない状態で、室内のドアや窓などを通過してきた風などによって紙幣束放出扉14が開いたとしても、エラー処理へ移行されるが、上記実施形態の場合は期間(所定時間)で開放を監視しているため、このような誤動作を防止することができる。
【0068】
(B)他の実施形態
上記実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を上げることができる。
【0069】
紙幣束放出扉監視センサは、上記実施形態のものに限定されず、紙幣束放出扉14の開放、閉鎖を検出できるものであれば他の構成のものを適用しても良い。例えば、光電センサを適用する場合において、紙幣束放出扉14の内面に光の反射領域を設け、紙幣束放出扉14の閉鎖時に、発光素子からの光線が反射領域で反射されて受光素子に到達するようにしておくことで、紙幣束放出扉14の開放、閉鎖を検出できるようにしても良い。またリミットスイッチを適用し、紙幣束放出扉14に固定された突起などが、リミットスイッチのアクチュエータを操作するか否かで、紙幣束放出扉14の開放、閉鎖を検出できるようにしても良い。
【0070】
上記実施形態では、1つの結束対象紙幣を結束するために、進動と退動とが1回ずつ行われるものを示したが、2回以上ずつ行うものであっても良く、この場合において、各退動毎に紙幣束放出扉14の開放を確認するようにしても良く、また、最初の退動時のみ、紙幣束放出扉14の開放を確認するようにしても良い。
【0071】
上記実施形態においては、結束対象紙幣を退動させる直前で、結束対象紙幣の進動が終了したときに紙幣束放出扉14が開放されていて、かつ、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間以上連続して開放されているというエラー処理への移行条件が成立した場合に、紙幣結束機構10の動作を停止させるだけでなく、紙幣の取込み、鑑別、搬送、集積なども停止させるものを示したが、エラー処理への移行条件が成立した場合でも、いずれかの一時集積部6a〜6dの集積枚数が結束枚数になるまでは、紙幣の取込み、鑑別、搬送、集積などを継続して実行させるようにしても良い。
【0072】
上記実施形態においては、結束対象紙幣の進動が終了したときに紙幣束放出扉14が開放されていて、かつ、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間以上連続して開放されているか否かでエラー処理への移行の要否を判断するとしたが、結束対象紙幣の進動が終了したときに、紙幣束放出扉14が開放されているか否かのみでエラー処理への移行の要否を判断するようにしても良い。また、結束対象紙幣の進動が終了したときに、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間以上連続して開放されているか否かでエラー処理への移行の要否を判断するようにしても良い。
【0073】
上記実施形態においては、結束対象紙幣の進動が終了したときに紙幣束放出扉14が開放されていて、かつ、結束対象紙幣の進動が終了したときから遡って所定時間以上連続して開放されているか否かを判断し、ここで肯定結果が得られると、制御部50は、エラー処理を開始するとしたが、結束対象紙幣の進動が終了したときに上記判断を行うのではなく、紙幣束放出扉監視センサ46が、所定時間(例えば1秒間)以上連続して紙幣束放出扉14の開放状態を検知したときに、制御部50は、エラー処理を開始するようにしても良い。
【0074】
上記実施形態では、停止させた紙幣の取込み、鑑別、搬送、集積などの再開は、計数開始キー7aの操作を条件としたが、これに加え、閉鎖状態に復帰してから、計数開始キー7aが操作されることなく所定時間(例えば2分)経過したときには停止させた紙幣の取込み、鑑別、搬送、集積などを再開させるようにしても良い。
【0075】
上記実施形態では、形成された紙幣束の搬送で紙幣束放出扉14を押し開けて紙幣束放出口11から外部へ放出させるものを示したが、紙幣束放出扉14の開閉をモータの動力を伝達して行うものであっても良い。例えば、形成された紙幣束の搬送に同期して、モータの動力で紙幣束放出扉14を開いて紙幣束を通過させ、開いた時点から、通過に十分な所定時間だけ経過した後にモータの動力で紙幣束放出扉14を閉じる。この場合には、モータのトルクの監視で紙幣束放出扉14の異常な開放を捉えることができ、扉監視センサ46としてモータのトルクを検出するものを適用するようにしても良い。
【0076】
上記実施形態では紙幣結束整理装置に本発明を適用したものを示したが、本発明の適用装置は、紙幣結束整理装置に限定されない。要は、紙幣を結束して、扉付きの放出口から放出させる構成を備える装置であれば、本発明を適用することができる。
【0077】
上記実施形態では、紙幣を扱う紙幣結束整理装置に本発明を適用したものを示したが、本発明が適用し得る紙葉類は、紙幣に限らず、小切手、商品券などの他の紙葉類であっても良い。
【符号の説明】
【0078】
1…投入部、2…鑑別部、3…搬送路、6…集積機構、7…操作部、9…移送機構、10…紙幣結束機構、11…紙幣束放出口、13…操作表示部、14…紙幣束放出扉、14b…遮光片、50…制御部、40…紙幣結束機構10における搬送手段、41…結束用テープ、46…紙幣束放出扉監視センサ、100…紙幣結束整理装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10