(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の前記開口の前端の上に位置する部分における前記樹脂の密度は、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の前記開口の後端の上に位置する部分における前記樹脂の密度よりも高いことを特徴とする請求項1記載の便蓋。
前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の開口の上に位置する部分の厚みは、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の前記着座面の上に位置する部分の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の便蓋。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、断熱性と機械的強度とを両立させた便蓋
、この便蓋の製造方法およびこの便蓋を備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、加熱される便座の着座面の上を開閉自在に覆う天面部を備えた便蓋であって、前記天面部は、発泡可能な樹脂により形成され、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の開口の上に位置する部分における前記樹脂の密度は、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の前記着座面の上に位置する部分における前記樹脂の密度よりも高いことを特徴とする便蓋である。
【0008】
この便蓋によれば、便蓋の天面部のうちで、便座の着座面の上の部分における樹脂の発泡率が高く、より高い断熱性を有する。従って、便座からの熱の逃げを抑制し、保温効果や節電効果が得られる。しかし、発泡部は樹脂の密度が低下しているために、機械的な強度も低下する傾向がある。例えば、粘性や靱性、弾性率や破壊強度などは低下する傾向がある。これに対して、天面部の便座の開口の上の部分は、着座面の上の部分よりも樹脂の発泡が抑制され、密度が高い。こうすることにより、便蓋の機械的な強度を確保できる。その結果として、使用時の破損や故障などを防ぐことができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の前記開口の前端の上に位置する部分における前記樹脂の密度は、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の前記開口の後端の上に位置する部分における前記樹脂の密度よりも高いことを特徴とする。
【0009】
一般に、使用者が便座に座った状態において、使用者と着座面との接触面積は、前方よりも後方において、より大きい。つまり、使用者は便座の着座面のうちで、後方側においてより広く接触する。
これに対して、この便蓋によれば、使用者がより広く接触する便座の着座面の後方において、便蓋の天面部の樹脂の密度を低くしている。つまり、断熱性を高くし、便座の着座面を保温して、使用者の快適性を確保できる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の開口の上に位置する部分の厚みは、前記便蓋が閉じた状態において前記天面部のうちの前記便座の前記着座面の上に位置する部分の厚みよりも小さいことを特徴とする。
【0011】
この便蓋によれば、便座の着座面の上の部分の厚みを大きくすることで、断熱性をより高くし、さらに機械的な強度も高めることができる。従って、便座200からの熱の逃げをより効率的に抑制でき、機械的な強度の低下も抑制することが可能である。その結果として、便蓋の開閉動作をさらに安定させ、また便蓋の破損や破損をさらに確実に防止できる。
【0012】
第4の発明は、
第1〜第3のいずれか1つの発明に記載の便蓋の製造方法であって、前記便蓋が閉じた状態において前記便座の開口の上に対応する位置に設けられた
ゲートから金型に前記樹脂を注入することを特徴とする。
【0013】
この便蓋
の製造方法によれば、ゲートを開口の上に対応する位置に設けることにより、樹脂成形の過程で密度の分布を設けることが可能となり、金型を分割したり、温度を調節するなどの複雑な工程を必要とせず、断熱性と機械的な強度とが両立した便蓋を提供できる。
【0014】
第5の発明は、
前記第4の発明において、前記開口の中心よりも前方に設けられた
前記ゲートから前記金型に前記樹脂を注入することを特徴とする。
【0015】
この便蓋
の製造方法によれば、ゲートを開口の中心よりも前方に設けることにより、樹脂成形の過程で、前方の樹脂の密度が高く、後方の樹脂の密度が低い分布を設けることが可能となり、金型を分割したり、温度を調節するなどの複雑な工程を必要とせず、断熱性と機械的な強度とが両立した便蓋を提供できる。
【0016】
第6の発明は、便座と、前記便座を加熱する加熱部と、上記いずれかの便蓋と、前記便座と前記便蓋とを軸支する本体部と、を備えたことを特徴とするトイレ装置である。
【0017】
このトイレ装置によれは、便蓋の天面部のうちで、便座の着座面の上の部分における樹脂の発泡率が高く、より高い断熱性を有する。従って、便座からの熱の逃げを抑制し、保温効果や節電効果が得られる。しかし、発泡部は樹脂の密度が低下しているために、機械的な強度も低下する傾向がある。例えば、粘性や靱性、弾性率や破壊強度などは低下する傾向がある。これに対して、天面部の便座の開口の上の部分は、着座面の上の部分よりも樹脂の発泡が抑制され、密度が高い。こうすることにより、便蓋の機械的な強度を確保できる。その結果として、使用時の破損や故障などを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、断熱性と機械的強度とを両立させた便蓋
、この便蓋の製造方法およびこの便蓋を備えたトイレ装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1及び
図2は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
図1に表したトイレ装置100は、洋式腰掛便器10の上に設けられている。トイレ装置100は、本体部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300は、本体部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
図1は、便座200が閉じて、便蓋300が開いた状態を表す。
図2は、便座200と便蓋300が、いずれも閉じた状態を表す。
図2に表したように、便蓋300は、閉じた状態において便座200の上を覆うことができる。
【0021】
便座200は、ヒータ(加熱部)210を内蔵する。このヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。つまり、ヒータ210は、便座200の表面(着座面)に伝えられる熱を発生する。ヒータ210の通電量(加熱量)の制御は、本体部400に内蔵された制御部410により実行される。制御部410は、例えば便座200に内蔵された図示しない温度検知手段などからの検知信号に基づいてヒータ210の通電量を制御することができる。
ただし、本実施形態において、制御部410は必須ではない。例えば、本体部400にこのような制御部が内蔵されず、本体部400が単に便座200と便蓋300を軸支するだけの構造体であってもよい。
【0022】
なお、
図1および
図2に表した便座200では、1本のヒータ210が往復するように設置されているが、ヒータ210の設置形態や設置数はこれだけに限定されず、例えば2本以上の複数のヒータ210が設置されていてもよい。
ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シーズヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
【0023】
ただし、便座200を加熱する手段は、ヒータ210に限定されるわけではない。
便座200を加熱するその他の手段として、例えば、通電されて磁界を発生する加熱コイルと、加熱コイルから発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する加熱板と、を有する誘導加熱手段を用いることができる。便座200を加熱する手段が誘導加熱手段である場合には、発熱部は加熱板である。このような加熱板(発熱部)としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体により形成された金属板が挙げられる。
あるいは、便座200を加熱する手段としては、ランプヒータによる加熱や、温風を利用した加熱、温水を利用した加熱など、各種の手段を用いることができる。
【0024】
便蓋300は、天面部310と、袴部320と、ヒンジ部370と、を有する。
天面部310は、加熱される便座200の着座面の上を開閉自在に覆う。すなわち、天面部310は、便蓋300が閉じた状態(
図2参照)において、便座200の上を覆う部分である。袴部320は、天面部310の前方や左右側方において天面部310の周縁から便座の側に屈曲して延在し、便蓋300が閉じた状態(
図2参照)において、便座200の側方を覆う部分である。ただし、本実施形態において、袴部320は、必須ではない。
ヒンジ部370は、本体部400に軸支され、便蓋300の開閉の動作の支点となる部分である。すなわち、ヒンジ部370は、必要に応じて何らかの部材を介して本体部400と結合あるいは嵌合あるいは接続される部分であり、便蓋300の開閉動作の支点となる部分である。
【0025】
便蓋300は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)やPE(polyethlene:ポリエチレン)などの発泡可能な樹脂により一体に形成されている。
そして、本実施形態においては、本実施形態においては、便蓋300が閉じた状態において、天面部310のうちの便座200の開口204の上の部分における樹脂の密度は、便座200の着座面の上の部分における樹脂の密度よりも高いものとされている。
【0026】
このように部分毎に密度が異なる便蓋300は、例えば、発泡成形により製造できる。発泡成形の具体例としては、ガス注入・ガス溶解発泡成形、熱分解ガス発泡成形、超臨界流体溶解発泡成形、発泡射出プレス成形などの方法がある。ガス注入・ガス溶解発泡成形は、窒素ガスなどのガスを射出シリンダーで高圧注入して成型する方法である。熱分解ガス発泡成形は、樹脂と化学発泡剤とを射出シリンダー内で溶融混練し、発泡剤から分解発生したガスにより発泡させる方法である。超臨界流体溶解発泡成形は、二酸化炭素や窒素などのガスをシリンダー内で超臨界状態で溶解させて成型する方法である。発泡射出プレス成形は化学発泡剤を用いて賦型後、金型をコントロールして適切量だけキャビティを拡大させることにより発泡させる方法である。本実施形態においては、これらのいずれの方法を用いてもよい。
【0027】
以下、一例として、発泡射出プレス成形のうちのコアバック射出成形について説明する。
図3は、コアバック射出成形を説明するための模式図である。
図3(a)に表したように、金型800と金型810とを準備する。金型810は、金型800の中に入り込み、金型800との間にキャビティ840を形成する。金型800には、キャビティ840に溶融した樹脂を注入するためのゲート(注入口)802が設けられている。金型800と金型810とを嵌合させた状態で、ゲート802にシリンダー830をセットする。なお、ゲート802は、金型810の側に設けてもよい。
【0028】
そして、
図3(b)に表したように、溶融した樹脂900をキャビティ840に注入する。このとき、金型800、810は、例えば、40℃程度に保持する。樹脂900としては、例えば、PPを用いることができる。また、樹脂900には、発泡剤と、必要に応じて発泡助剤と、を混ぜておく。発泡剤は、熱分解してガスを発生する材料である。発泡剤としては、有機系発泡剤や無機型発泡剤を用いることができる。有機系発泡剤としては、例えばアゾジカルボン酸アミドなどを挙げることができる。無機系発泡剤としては、例えば重炭酸塩などを挙げることができる。
発泡助剤は、発泡剤の熱分解温度を調整したり、溶融樹脂の流動性や固結防止性などを調整する役割を有する。
【0029】
発泡剤や発泡助剤が添加された樹脂900を、例えば200℃程度で溶融した状態で、シリンダー830からゲート802を介してキャビティ840の中に注入する。このときに、キャビティ840の内部を溶融した樹脂900で充填するフルショット法を用いることができる。
【0030】
樹脂900を射出したら、
図3(c)に表したように、金型810を矢印Aの方向に後退させ(コアバック)、キャビティ840を拡大させる。すると、溶融した樹脂900において発泡が促進され、気泡910が形成される。樹脂900が固まったら、金型810をさらに後退させて開き、成形された樹脂を取り出す(離型)。
このようにして、発泡した樹脂を形成できる。
【0031】
なお、樹脂900を注入する前に、
図3(a)に表した状態において、キャビティ840を窒素などのガスで予め加圧してもよい(カウンター・プレッシャー法)。こうすると、射出した樹脂900の表面の発泡を抑制できる。樹脂900を射出し、金型800、810に接触した樹脂900の表面部分が固化してスキン層が形成されたタイミングで加圧を解除すると、樹脂900は発泡する。その結果として、成形後の樹脂の表面における発泡が抑制され、スワールマークなどが抑制され、外観が良好で内部のみが発泡している成形樹脂が得られる。
【0032】
図4は、このようにして形成される便蓋300における発泡部の形成を表す模式断面図である。
図4(a)は、
図3(b)に表したように、金型810を後退させる前の溶融した樹脂900の断面を表す。この状態においては、樹脂900の中で発泡はあまり進んでいない。
【0033】
図4(b)は、
図3(c)に表したように、金型810を後退させてキャビティ840を拡大させて成形した便蓋300の模式断面を表す。なお、
図4(b)において、金型810の後退方向は、向かって下方である。
キャビティ840の拡大により、発泡が促進された天面部310と、その側方において発泡があまり進まなかった袴部320と、が形成される。袴部320において発泡があまり進まないのは、
図3から分かるように、キャビティ840の拡大の効果が少ないからである。また、ゲート802から注入された樹脂900が袴部320に到達するまでに温度が低下し、固化する時間が短いこともある。
【0034】
図5は、コアバック射出成形により成形された便蓋300の天面部310の断面写真である。
天面部310のうちの発泡部においては、表面に形成されたスキン層312と、これらスキン層312の間に設けられたコア層314と、が設けられている。スキン層312は、溶融した樹脂900が射出されて金型800、810に接触し、発泡が進まない状態で固化した部分である。コア層314は、キャビティ840の中で、スキン層312に挟まれて溶融した状態のままコアバックにより発泡が促進され、その後固化した部分である。コア層314の密度は、スキン層312の密度よりも低い。
【0035】
樹脂としてポリプロピレン(PP)を用いた場合、スキン層312の密度は、例えば、0.90〜1.00程度である。また、コア層314の密度は、例えば、0.20〜0.50程度である。
【0036】
図6は、コアバック射出成形により成形した便蓋300の外観を例示する写真である。
【0037】
コアバック射出成形における金型の温度や、コアバックの速度とタイミング、カウンタープレッシャーの圧力や減圧のタイミングを調節することにより、発泡させた天面部310においても、その表面は密度が高く緻密で光沢があり、表面は平滑であり、内部は発泡している便蓋を成形することが可能である。すなわち、外観は良好で、内部は発泡して高い断熱特性を有する便蓋を成形できる。
【0038】
図7は、本実施形態の便蓋300を表す模式図である。すなわち、
図7(a)は、便蓋300の模式平面図であり、
図7(b)及び(c)は、そのA−A線方向及びB−B線方向における天面部310の樹脂の密度の分布を模式的に表すグラフ図である。
【0039】
ここで、A−A線は、便座200の開口204の前端204Aと後端204Bとを結ぶ直線である。また、B−B線は、開口204の左端204Cと右端204Dとを結ぶ直線である。本願明細書においては、A−A線とB−B線との交点201を便座200の開口204の中心と定義する。
【0040】
本実施形態においては、便蓋300が閉じた状態において、天面部310のうちの便座200の開口204の上の部分における樹脂の密度は、便座200の着座面の上の部分における樹脂の密度よりも高いものとされている。
樹脂の密度は、前後方向及び左右方向に沿って、
図7(b)に表したように連続的に変化してもよく、あるいは
図7(c)に表したようにややステップ的に変化してもよい。
【0041】
天面部301のうちで、樹脂の密度が低い部分は、
図3などに関して前述した発泡成形により発泡率が高い部分である。つまり、樹脂の密度が低い部分は、気泡を多く含み、断熱性が高い。
【0042】
図8は、
図7のB−B線に沿った模式断面図である。
本実施形態によれば、便蓋300の天面部310のうちで、便座200の着座面の上の部分310Aにおける樹脂の密度が、便座200の開口204の上の部分310Bにおける樹脂の密度よりも低い。つまり、便蓋300の着座面の上の部分310Aにおける樹脂の発泡率が高く、より高い断熱性を有する。従って、便座200からの熱の逃げを抑制し、保温効果や節電効果が得られる。
しかし、発泡部は樹脂の密度が低下しているために、機械的な強度も低下する傾向がある。例えば、粘性や靱性、弾性率や破壊強度などは低下する傾向がある。これに対して、本実施形態においては、天面部310の便座200の開口204の上の部分310Bは、着座面の上の部分310Aよりも樹脂の発泡が抑制され、密度が高い。こうすることにより、便蓋300の機械的な強度を確保できる。その結果として、使用時の破損や故障などを防ぐことができる。
なお、便蓋300の袴部320(
図1参照)の密度を天面部310の部分310Aの密度よりも高くすると、袴部320の機械的な強度を高くでき、便蓋300の強度を高くできる。また、袴部320の密度を高くすることにより、ある程度の重量を持たせると、便蓋300の慣性重量を増加させて、開閉動作をばたつかせることなく、安定して実行させることが可能となる。
【0043】
このような本実施形態の便蓋300は、
図3に関して前述した発泡成形により形成できる。
図9は、発泡成形におけるゲートの位置を説明するための模式平面図である。
例えば、
図3に関して前述したようなコアバック射出成形において、発泡剤が添加された樹脂900をゲート802から注入すると、少しずつ発泡しながらキャビティ840(
図3参照)の中を流れていく。従って、ゲート802から遠い部分のほうが、発泡が進行する。ゲート802を、便座200の開口204の上に対応する位置に設けた場合、注入された樹脂900が
図9に矢印Aで表した方向に流れていくに従って発泡が進行する。その結果として、金型810をコアバックさせると、天面部310において外周端に近づくほど、発泡率が高くなり、樹脂の密度が低下する。
【0044】
つまり、天面部310の外周端に向かって発泡率が
上昇し、密度が
低下する分布が便蓋300に形成される。樹脂としてポリプロピレン(PP)を用いた場合、ゲート802の近傍における密度は、例えば、0.30〜0.40程度とすることができ、天面部310の前方の先端付近における密度は、例えば、0.20〜0.35程度とすることができる。
【0045】
このようにしても、便座200の着座面の上の部分310Aにおいては断熱性を高くして、便座200からの熱の逃げを抑制できる。そして、便座200の開口204の上の部分310Bにおいて機械的な強度も確保できる。従って、機械的な信頼性を高くすることができる。つまり、便蓋300の破損や破損を防止できる。
【0046】
図10は、ゲート802の位置をさらに詳しく説明するための模式平面図である。
本実施形態の便蓋300を製造するためには、ゲート802は、便座200の開口204の上にあることが望ましい。
またさらに、便座200の開口204の中心201と、便座200の開口204の前端204Aと、の中点を204Eとし、便座200の開口204の中心201と、便座200の開口204の後端204Bと、の中点を204Fとし、便座200の開口204の中心201と、便座200の開口204の左端204Cと、の中点を204Gとし、便座200の開口204の中心201と、便座200の開口204の右端204Dと、の中点を204Hとしたとき、これら4つの中点204E、204F、204G、204Hにより囲まれる開口204の中央領域206の上に、ゲート802があることがさらに望ましい。こうすれば、便座200の開口204の上においては天面部310の樹脂の密度を高くし、便座200の着座面の上においては天面部310の樹脂の密度を低くすることがより確実となる。
【0047】
また、
図9及び
図10に関して前述した発泡成形において、金型800、810の温度に分布を設けると、密度の分布をさらに大きくすることも可能である。例えば、金型810の外周端の温度をゲート802付近の温度よりも高めに保持すると、注入された樹脂900が固化するまでの時間が長くなる。その結果として、外周端における樹脂の発泡が促進され、樹脂の密度をさらに低くできる。
【0048】
図11は、本実施形態の便蓋300における樹脂の密度の分布の他の具体例を表すグラフ図である。
本具体例においては、天面部310の樹脂の密度は、便座200の開口204の中心204からみて、前方側よりも後方側において低い。より詳しくは、便蓋300が閉じた状態において天面部310のうちの便座200の開口204の前端204Aの上に位置する部分における樹脂の密度は、天面部310のうちの便座200の開口304の後端204Bの上に位置する部分における樹脂の密度よりも高い。天面部310の樹脂の密度の分布のピークは、便座200の開口204の中心201よりも前方側に位置する。
【0049】
一般に、使用者が便座200に座った状態において、使用者と着座面との接触面積は、前方よりも後方において、より大きい。つまり、使用者は便座200の着座面のうちで、後方側においてより広く接触する。
【0050】
これに対して、本具体例によれば、使用者がより広く接触する便座200の着座面の後方において、便蓋300の天面部310の樹脂の密度を低くしている。つまり、断熱性を高くし、便座200の着座面を保温して、使用者の快適性を確保できる。
【0051】
図11に表したような天面部310の樹脂の密度の分布を実現するためには、ゲート802の位置を前方寄りにすればよい。すなわち、
図9及び
図10に関して前述したように、ゲート802から遠い部分のほうが、樹脂の発泡が進行する。そこで、ゲート802を、便座200の開口204の中心201よりも前方側に設けることにより、
図11に表したような樹脂の密度の分布を実現できる。
【0052】
また、前述したように、金型800、810の温度に分布を設けても、
図11に表したような密度の分布を形成することが可能である。例えば、金型810の後方の温度を、前方の温度よりも高めに保持すると、注入された樹脂900が後方において固化するまでの時間が長くなる。その結果として、後方における樹脂の発泡が促進され、樹脂の密度を低くできる。
【0053】
図12は、本実施形態の便蓋300を製造するもうひとつの方法を表す模式図である。すなわち、
図12は、
図3に関して前述した金型810の模式平面図である。
天面部310の一部のみの樹脂の密度を下げるためには、金型810を分割して、そのうちの一部のみをコアバックさせればよい。
【0054】
図12に表したように、金型810を、便座200の開口204の上に対応する部分810Bと、その周囲の部分810Aと、に分割する。そして、部分810Aのみをコアバックさせると、天面部310のうちで、便座200の着座面の上の部分310Aに発泡部を形成し樹脂の密度を下げることができる。
【0055】
図13は、この方法により形成した便蓋300を表す模式断面図である。
天面部310は、便座200の着座面の上にコアバックされて厚みが増すとともに発泡が促進し樹脂の密度が低い部分310Aを有する。そして、便蓋300は、便座200の開口204の上に、コアバックされず厚みが薄く樹脂の密度が高い部分310Bを有する。
【0056】
このようにしても、便座200の着座面の上の部分310Aにおいては断熱性を高くして、便座200からの熱の逃げを抑制できる。そして、便座200の開口204の上においては、樹脂の密度を高くし、粘性や靱性の低下を防ぐことにより、便蓋300の機械的な強度も確保できる。従って、機械的な信頼性をさらに高くすることができる。また、便座200の着座面の上の部分310Aの厚みを増やすことにより、断熱効果をさらに高くすることができ、また、密度は下げつつ機械的な強度の低下も抑制することが可能である。その結果として、便蓋300の破損や破損をさらに確実に防止できる。
【0057】
図14は、本実施形態の便蓋300の他の具体例を表す模式断面図である。
本具体例においても、天面部310は、便座200の着座面の上に厚みが大きく樹脂の密度が低い部分310Aと、便座200の開口204の上に厚みが薄く樹脂の密度が高い部分310Bと、を有する。
このようにしても、便座200の着座面の上の部分においては断熱性を高くして、便座200からの熱の逃げを抑制できる。そして、便座200の開口204の上においては、樹脂の密度を高くし、粘性や靱性、弾性率や破壊強度の低下を防ぐことにより、便蓋300の機械的な強度も確保できる。従って、機械的な信頼性をさらに高くすることができる。また、便座200の着座面の上の部分310Aの厚みを増やすことにより、断熱効果をさらに高くすることができ、また、密度は下げつつ機械的な強度の低下も抑制することが可能である。その結果として、便蓋300の破損や破損をさらに確実に防止できる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、便蓋300や本体部400などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。