(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作卓は、前記放送対象外地域に設置されたスピーカの中で、前記放送対象内地域に音達範囲が重なるスピーカも選択し、かつ、選択したスピーカから出力可能な複数の音達範囲から前記放送対象内地域にあるスピーカの音達範囲と重ならないような音達範囲を選択することを特徴とする請求項1に記載の防災無線システム。
【背景技術】
【0002】
防災無線システムは、災害時には住民に対して避難指示等の情報を放送するものである。一方、通常時の防災無線システムは、市役所などの行政機関からのお知らせ(迷子や徘徊老人など)や時報やチャイムなどを、毎日住民に対して放送している。災害時、防災無線システムは屋内および屋外にいる全ての住民に避難指示を伝達する必要があるため、屋外に設置しているスピーカは市役所などの行政機関が管轄している地域に音声が届くように配置されている。
【0003】
しかし、通常時の防災無線システムは、特定の地域にだけ関係するお知らせなど、全ての住民に伝達する必要性がない情報を放送する場合がある。そのため、放送に関係のない地域の住民にとっては騒音になってしまう場合があった。
【0004】
そこで、上記の騒音の問題を解決する方法として、特許文献1がある。この特許文献1では、
図14、
図15、
図16に示すように、管轄している地域を複数の区域(I、II、III)に区分けし、区分けした区域毎でスピーカ232の音声を出力できる技術が開示されている。これにより、放送内容に関係のある区域だけに放送することができ、関係のない住民に音声が届いてしまう事がないため、騒音の問題を解決することができる。上記の特許文献1以外には、市役所の職員などの操作者がスピーカの音量を手動で調整する方法もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では放送したい地域が予め区分けされているため、例えば片側の川岸にある地域だけに放送しないなどの放送したい地域と予め区分けした地域が一致しない場合、お知らせを伝達したい地域の住民以外にも放送され、騒音の問題が発生するおそれがあった。また、操作者が手動でスピーカの音量を調整する場合、操作者が必要な音量を判断しないといけないため、操作者に負担がかかる問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するため、操作者の作業負担が少なく、適切な放送地域のみに音声が届くように、自動でスピーカを適宜選択しスピーカから出力された音声が届く範囲(所定の音量の音声が届く範囲。以下、音達範囲と記載)を調整する防災無線システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の防災無線システムは、表示装置の画面に表示された地図上で地域を囲むことで放送対象内地域を選択し、選択された放送対象内地域にあるスピーカを選択し、選択したスピーカから出力可能な複数の音達範囲の中から放送対象外地域に放送される範囲が小さくなるような音達範囲を選択する。
【0009】
また、前記放送対象外地域に設置されたスピーカの中で、前記放送対象内地域に音達範囲が重なるスピーカも選択し、かつ、選択したスピーカから出力可能な複数の音達範囲から放送対象内地域にあるスピーカの音達範囲と重ならないような音達範囲を選択する。
【0010】
または、表示装置の画面に表示された地図上で地域を囲むことで放送対象外地域を選択し、選択された放送対象外地域を除いた地域を放送対象内地域に設定し、設定した放送対象内地域にあるスピーカを選択し、選択したスピーカから出力可能な複数の音達範囲の中から放送対象外地域に放送される範囲が小さくなるような音達範囲を選択する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防災無線システムによれば、操作者が表示装置の画面上に表示されている地図の中から放送対象内地域または放送対象外地域を囲むだけで、放送対象内地域が選択でき、防災無線システムがスピーカの音達範囲を自動で調整して放送対象内地域に放送するため、操作者に負担かけずに、適切な放送対象内地域にのみ放送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明にかかる防災無線システムの構成図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる操作卓の構成図である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる防災無線システムの実施例1のフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明にかかる地図データを示した図である。
【
図5】
図5は、本発明にかかる実施例1の放送対象内地域を選択した図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる実施例1の放送対象内地域に放送する状態を示した図である。
【
図7】
図7は、本発明にかかる実施例1の放送対象内地域に放送するスピーカを選択する方法が異なる場合を示した図である。
【
図8】
図8は、本発明にかかる防災無線システムの実施例2のフロー図である。
【
図9】
図9は、本発明にかかる実施例2の放送対象内地域を選択した図である。
【
図10】
図10は、本発明にかかる実施例2の放送対象内地域に放送する状態を示した図である。
【
図11】
図11は、本発明にかかる防災無線システムの実施例3のフロー図である。
【
図12】
図12は、本発明にかかる実施例3の放送対象外地域を選択した図である。
【
図13】
図13は、本発明にかかる実施例3の放送対象内地域に放送する状態を示した図である。
【
図14】
図14は、従来発明にかかる防災無線システムの構成図である。
【
図15】
図15は、従来発明にかかる防災無線システムの構成図である。
【
図16】
図16は、従来発明にかかる防災無線システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる防災無線システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明による構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0014】
本発明にかかる防災無線システム100の構成について
図1を基に説明する。防災無線システム100は、親局10と複数の屋外子局20で構成されている。なお、上記構成に加えて、親局10からの通信を屋外子局20に中継する中継局を設置しても良い。屋外子局20は
図4に示すように子局A、子局B、子局C、子局Dのように複数ある子局のことである。
【0015】
親局10は、例えば行政機関である市役所に設置される。この親局10は、無線部11、操作卓12、表示装置14および記憶部15を設けている。無線部11は、親局10から屋外子局20に放送内容などの情報を送信するためのものである。操作卓12は、操作者が防災無線システム100に情報を入力するための操作部13と、防災無線システム100の動作を制御する制御部16とを備えている。本発明の操作部13は、タッチパネルやマウス、キーボードなどから構成され、放送対象内地域の選択などの情報を入力することができる。この操作卓12は、操作部13より入力された情報を制御部16で処理している。また、操作卓12は表示装置14と接続され、操作部13より入力された放送対象内地域を表示装置14に表示させ、さらに、表示装置14には、管轄地域内にある道路および建物などを示した地図と屋外子局20とこの屋外子局20にあるスピーカの音達範囲(音達範囲Aa〜音達範囲Dd)とが表示される。記憶部15には、
図4に示すような、表示装置14に表示される地図データ上に表示される、子局(子局A、子局B、子局C、子局D)にあるスピーカの音達範囲に関するデータが記憶されており、操作卓12は記憶部15に記憶されているデータを読み出すことができる。
【0016】
記憶部15に記憶されているデータについて
図4を基に説明する。記憶部15には、防災無線システム100の管轄地域の地図データと、その地域内に設置されている屋外子局20(子局A、子局B、子局C、子局D)の位置と、各子局に設置され四方に向けられたスピーカが音声を伝達できる範囲である音達範囲(音達範囲Aa、音達範囲Ab、・・・、音達範囲Dc、音達範囲Dd)が記憶されている。また、各スピーカの出力する音量(大、中、小)に対応する音達範囲が記憶部15に記憶されている。音達範囲はスピーカの出力値に対して比例しており、
図4に示すように、音量「大」の音達範囲は外側の楕円で示す範囲となり、音量「小」の音達範囲は内側の楕円で示す範囲となり、音量「中」の音達範囲は音量「大」と音量「小」との間にある楕円で示す範囲となる。なお、本発明のスピーカの音達範囲が楕円形状しているのは指向性スピーカなどスピーカの特性によるものであり、本発明は楕円形状の音達範囲に限定したものではなく、防災無線システム100の設計仕様に応じて、円形状や他の形状をした音達範囲を持つスピーカを用いても良い。
【0017】
各子局には4つのスピーカが各々四方に向けられた状態で設置され、親局10の無線部11から送信された信号を受信し、受信した信号を音声信号に変換して、親局10より設定された音量でスピーカから拡声音声を出力して地域住民に知らせている。
【0018】
次に、防災無線システム100の動作について、以下に説明する。
操作者が操作卓12の操作部13を操作して、管轄地域の地図を表示装置14に表示させ、表示させた地図の中から、指でタッチパネルを操作して、放送対象内地域を囲む。この操作で操作卓12は、放送対象内地域が選択されたと判断する。なお、本発明の防災無線システムでは、表示装置14がタッチパネルを備え、操作者が画面を指で触れて放送対象内地域を囲んでいるが、本発明はこれに限定したものではなく、マウスを操作してマウスポインタで放送対象内地域を囲んでも良い。また、本発明の防災無線システムは、上記のように放送対象内地域を囲むだけなく、操作者が放送対象外地域を囲むことで、操作卓12が放送対象外地域を除いた地域を放送対象内地域として設定するようにしても良い。
【0019】
操作卓12は、放送対象内地域にある子局に設置されているスピーカを放送対象のスピーカとして選択する。次に、操作卓12は、記憶部15から選択したスピーカの音達範囲に関するデータを読み出す。読み出したデータを基に、各スピーカの複数の音達範囲の内、放送対象外地域に伝達する範囲を最小にするように各スピーカの音達範囲を選択する。放送対象外地域に伝達する範囲を最小にする方法の一例としては、放送対象外地域まで広がる音達範囲の中で、最小の音達範囲を選択する。なお、本発明はこれに限定したものではなく、
図7に示すようにスピーカの音達範囲が放送対象内地域に完全に収まる音量の音達範囲だけを選択するなど、防災無線システム100の運用に適宜合わせて変更しても良い。
【0020】
操作卓12は、選択したスピーカに、選択した音達範囲に対応する音量で放送するように、無線部11を介して選択したスピーカを備える各子局に指示する。これにより、放送対象内地域には必要な音量で放送でき、放送対象外地域には出来るだけ音声が届かないようにすることができる。
【実施例1】
【0021】
防災無線システム100の管轄地域の中で、
図5に示すように、太線枠内を放送対象内地域30とした場合を実施例1として、
図3のフロー図を基に以下に説明する。
【0022】
操作者が、操作卓12に備えられている操作部13であるタッチパネルを操作して、表示装置14に表示されている地図上に、
図5に示すように、放送対象内地域30を指で触れて囲むことで、操作卓12は、操作者の指が触れた箇所を太線で表示し、放送対象内地域30が選択されたと判断する(S101−YES)。
【0023】
次に、操作卓12内にある制御部16は選択された放送対象内地域30にある子局A、子局Bに備わっているスピーカを放送対象のスピーカとして選択する(S102)。
【0024】
操作卓12は放送対象に選択したスピーカの音達範囲(音達範囲Aa、音達範囲Ab、音達範囲Ac、音達範囲Ad、音達範囲Ba、音達範囲Bb、音達範囲Bc、音達範囲Bd)を記憶部15より読み出す(S103)。
【0025】
操作卓12は、選択された放送対象内地域30に収まるように各スピーカの音達範囲を選択する(S104)。操作卓12は子局Aにあるスピーカの音達範囲Aaの音量「大」、「中」、「小」の各音達範囲の外枠が放送対象内地域30の太枠と交差しているか否かを判断する。音達範囲Aaは
図6に示すように交差する音達範囲は無いので、操作卓12は「大」、「中」、「小」の音達範囲全てが放送対象内地域30に収まっていると判断する。そして、操作卓12は収まっている音達範囲の中で、最大の音量である音量「大」の音達範囲を選択する。
【0026】
次に、操作卓12は音達範囲Abの音量「大」、「中」、「小」の各音達範囲が放送対象内地域30の太枠と交差するか否かを判断する。音達範囲Abは
図6に示すように音量「大」の音達範囲が放送対象内地域30の太枠と交差する。よって、操作卓12は交差する音量の中で最小の音量である音量「大」の音達範囲を選択する。操作卓12は他の音達範囲Adおよび音達範囲Ba、音達範囲Bb、音達範囲Bc、音達範囲Bdも上記の音達範囲(Aa、Ab)と同様に音達範囲を選択する。実施例1では、操作卓12は、音達範囲Acには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Adには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Baには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Bbには音量「小」の音達範囲を選択し、音達範囲Bcには音量「小」の音達範囲を選択し、音達範囲Bdには音量「中」の音達範囲を選択する。
【0027】
選択した各スピーカで放送される音量の音達範囲の選択が完了した後、操作卓12は選択したスピーカに対して、各スピーカで選択した音達範囲に対応する音量で放送するように、無線部11を介して操作卓12が子局Aと子局Bに指示する(S105)。
【実施例2】
【0028】
防災無線システム100の管轄地域の中で、
図9に示すように、太線枠内を放送対象内地域40とした場合を実施例2として、
図8のフロー図を基に以下に説明する。
【0029】
実施例1と同様に、操作者は、操作卓12に備えられている操作部13であるタッチパネルを操作して、表示装置14に表示されている地図上に、
図9に示すように、放送対象内地域40を指で触れて囲むことで、操作卓12は、操作者の指が触れた箇所を太線で表示し、放送対象内地域40が選択されたと判断する(S201−YES)。
【0030】
次に、操作卓12は選択された放送対象内地域40にある子局A、子局Bを選択する。そして、操作卓12は選択した子局に備わっているスピーカを放送対象のスピーカとして選択する(S202)。さらに、実施例2では、
図10の音達範囲Daに示すように、操作卓12は放送対象外地域にある子局の中で、放送対象内地域40と一部が重なる音達範囲Daを持つスピーカも放送対象のスピーカとして選択する(S203)。
【0031】
操作卓12は放送対象に選択したスピーカの音達範囲(音達範囲Aa、音達範囲Ab、音達範囲Ac、音達範囲Ad、音達範囲Ba、音達範囲Bb、音達範囲Bc、音達範囲Bd、音達範囲Da)に関するデータを記憶部15より読み出す(S204)。
【0032】
操作卓12は、選択された放送対象内地域40に収まるように各スピーカの音達範囲を選択する(S205)。操作卓12は子局Aと子局Bにあるスピーカの音達範囲Aa〜Bdは実施例1と同様に音達範囲を選択する。実施例2では、操作卓12は、音達範囲Aaには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Abには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Acには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Adには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Baには音量「大」の音達範囲を選択し、音達範囲Bbには音量「小」の音達範囲を選択し、音達範囲Bcには音量「小」の音達範囲を選択し、音達範囲Bdには音量「大」の音達範囲を選択する。
【0033】
音達範囲Daは放送対象外地域にあるスピーカの音達範囲より、操作卓12は音達範囲Daが放送対象内地域40にあるスピーカの音達範囲(Aa〜Bd)と重ならない範囲で、放送対象内地域40と重なる範囲が広くなる音量の音達範囲を選択する。実施例2では、操作卓12は
図10に示すように、音達範囲Daには音量「大」の音達範囲を選択する。
【0034】
選択した各スピーカで放送される音量の音達範囲の選択が完了した後、操作卓12は選択したスピーカに対して、各スピーカで選択した音達範囲に対応する音量で放送するように、無線部11を介して操作卓12が選択したスピーカを備える子局Aと子局Bと子局Dに指示する(S206)。実施例2では、この音達範囲Daにより、子局Aと子局Bが放送音を伝達できない範囲に放送音を伝達することができる。
【0035】
以上より、実施例1、実施例2の防災無線システム100では、操作者は簡単な操作で、放送対象内地域(30、40)に対しては必要な音量で放送でき、放送対象内地域(30、40)外には最小限の範囲で放送することで、騒音の問題を解決することができる。
【実施例3】
【0036】
実施例1、実施例2では、操作者が放送対象内地域(30、40)を囲んだ場合について説明したが、
図12に示すように操作者が放送対象外地域50を囲んだ場合を実施例3として、
図11のフロー図を基に以下に説明する。
【0037】
操作者が、操作卓12に備えられている操作部13であるタッチパネルを操作して、表示装置14に表示されている地図上に、
図12に示すように、放送対象外地域50を指で触れて囲むことで、操作卓12は、操作者の指が触れた箇所を太線で表示し、放送対象外地域50が選択されたと判断する(S301−YES)。操作卓12は、選択された放送対象外地域50を除く防災無線システム100が管轄する領域を放送対象内地域51と設定する。(S302)
【0038】
以下は実施例1と同様に、操作卓12が、放送対象内地域51にあるスピーカを放送対象のスピーカとして選択し(S303)、選択した各スピーカの音達範囲を記憶部から読み出し(S304)、
図13に示すように選択された放送対象内地域51に収まるように各スピーカの音達範囲を選択し(S305)、無線部11を介して選択したスピーカに選択した音達範囲に対応する音量で放送するように指示する(S306)。
【0039】
以上より、本実施例の防災無線システム100では、操作者は簡単な操作で、放送対象内地域51には必要な音量で放送でき、放送対象外地域50に対しては最小限の範囲で放送することで、騒音の問題を解決することができる。
【0040】
なお、本発明の防災無線システム100は、選択した放送対象内地域(30、40、51)又は放送対象外地域51を記憶部15に記憶させ、再度放送する時に記憶させた放送対象内地域を読み出すことで再度放送対象内地域又は放送対象外地域を選択する手間を省いても良い。また、読み出す時に記憶させた複数の放送対象内地域又は放送対象外地域を同時に読み出して、複数の放送対象内地域又は放送対象外地域を組み合わせても良い。