(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両空調用の圧縮機の場合、工場において圧縮機が生産された後、潤滑油を圧縮機内部に封入する。圧縮機のハウジングには、外部配管と接続される吸入口や吐出口が形成されている。潤滑油封入後、ポート閉塞装置としてのゴム製のシールキャップが吸入口や吐出口にそれぞれ圧入され、吸入口および吐出口はシールキャップにより閉塞される。吸入口および吐出口が閉塞された圧縮機内には検査用のガスが注入され、ガスの注入後に圧縮機の気密性を確認する気密性試験が行なわれる。気密性試験の後、シールキャップの装着により内部が密閉された圧縮機は出荷され、出荷先の自動車の組立工場等において吸入口や吐出口にシールキャップの付けた状態で車両に組み付けられる。
【0003】
通常、気密性試験では、まず、ガス注入用の注射針をシールキャップに刺し通し、注射針を通じてガスを圧縮機の内部に注入する。次に、ガスが注入された圧縮機を真空容器内に収容し、圧縮機からのガス漏れの有無を確認する。ガス漏れが認められない場合には、吸入口や吐出口に装着したシールキャップの気密性は十分であり、ガス漏れが認められる場合はシールキャップの気密性が不十分な可能性がある。
【0004】
従来のポート閉塞装置としては、例えば、特許文献1に開示された流路閉塞装置が知られている。この流路閉塞装置は、樹脂製の取付部材と、圧縮機のハウジングに形成された吸入ポートを閉塞する閉塞部材から構成されている。閉塞部材には吸入ポートを閉塞する閉塞部が形成されるほか、閉塞部材を取付部材から抜け落ちないようにする抜止部が形成されている。取付部材の一端には溝状切欠き部が形成されており、溝状切欠き部はハウジングが備えるスタッドボルトの挿入を可能としている。取付部材の他端側には抜止部の径より小さい孔径の圧入孔が形成されている。抜止部が圧入孔から飛び出るまで圧入孔に抜止部を圧入することにより、閉塞部材は取付部材に取り付けられる。
【0005】
閉塞部材が取り付けられた取付部材はハウジングに固定される。取付部材をハウジングに固定する際に、溝状切欠き部にスタッドボルトが挿入されつつ、閉塞部材が吸入ポートに圧入される。そして、スタッドボルトにナットをねじ込むことにより、取付部材はハウジングに固定される。
【0006】
別の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示された液圧制御機器などの入出力ポート仮閉塞用プラグを挙げることができる。特許文献2に開示された入出力ポート仮閉塞用プラグは、弾性を有する合成樹脂により形成されている。入出力ポート仮閉塞用プラグは、入出力ポートの開口部端面に密着する環状の突出面と、入出力ポートの内面に係合する円筒状の挿入部とから構成されている。また、入出力ポート仮閉塞用プラグの挿入部には、複数の軸方向スリットが設けられている。入出力ポート仮閉塞用プラグは環状の突出面により入出力ポートを閉塞するが、挿入部にスリットが形成されていることから入出力ポート仮閉塞用プラグの着脱が容易である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された流路閉塞装置は、圧縮機の気密性を確認する気密試験に関する記載はないものの、弾性部材からなる閉塞部材に注射針を貫通して、圧縮機にガスを注入することは可能である。閉塞部材から注射針が引き抜かれた後に閉塞部材に残る注射針痕は、閉塞部材の吸入ポートへの圧入により生じた閉塞部材の弾性力により閉じられる。このため、流路閉塞装置を圧縮機に装着したまま真空容器内に収容し、ガス漏れの有無を確認することが可能である。しかしながら、特許文献1に開示された流路閉塞装置は、外部配管とポートとの間のシールをポート内部の周面にて行うものに採用される構造である。シール部材としてはOリングが一般的であるが、近年求められている車両用空調装置の更なる冷媒漏れ対策には不充分であり、より広い領域でのシールが求められている。
【0009】
その点、特許文献2に開示された入出力ポート仮閉塞用プラグは、ポート開口部周囲において外部配管とポートとの間のシールを行うことを前提としているので、ガスケットなどを用いて充分に広い領域でシールできる。しかし、入出力ポート仮閉塞用プラグの突出面付近はポート内に圧入されないので、ガスを注入し注射針が引き抜かれた後に入出力ポート仮閉塞用プラグに残る注射針痕は完全に塞がれる状態にない。このため、入出力ポート仮閉塞用プラグを圧縮機に装着したまま真空容器内に収容し、ガス漏れの有無を確認しようとしても、注射針痕からガスが漏洩する可能性が高く、入出力ポート仮閉塞用プラグによる気密性を確認することは不可能である。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、ポートの周囲と外部配管との間でシールする圧縮機においても、圧縮機の気密性試験を行うことができる圧縮機のポート閉塞装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、圧縮機のハウジングに設けられた冷媒ガスを導通させるポートを閉塞するパッキンと、前記パッキンを保持し、前記ハウジングに固定用ボルトによって固定されるキャップを備えた圧縮機のポート閉塞装置であって、前記パッキンは、一方の端部と、他方の端部と、前記一方および他方の端部の間に形成される周面部を備え、前記一方の端部は、前記ポートの周囲に形成された平面状の被シール面と当接する平面シール部を備え、前記キャップは、前記周面部に圧接して前記パッキンを保持するパッキン保持部と、前記他方の端部に当接して前記パッキンを押圧するパッキン押圧部と、該パッキン押圧部に形成され、前記他方の端部を外部に向けて開放する貫通孔を備え、
前記パッキンが、弾性変形された状態で、前記周面部と前記パッキン保持部とが互いに圧接されるように、前記パッキン保持部の内径は、前記パッキンの前記周面部の外周径よりも小さく設定され
ていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ポートの周囲に形成された平面状の被シール面は、パッキンの平面シール部と当接する。キャップが固定用ボルトによってハウジングに締結される際、パッキン押圧部がパッキンをポートに向けて押圧するので、ポートの周囲は充分にシールされる。パッキン押圧部に形成された貫通孔によってパッキンの一部は外部に開放されているので、圧縮機の気密試験において、注射針を貫通孔からパッキンに刺し通すことができる。パッキンの周面部はパッキン保持部により圧接されているため、注射針をパッキンに刺し通し、注射針を引き抜いても、パッキンの圧接による反力が注射針痕を隙間無く塞ぐ。このため、注射針痕が生じたパッキンを用いて流路を閉塞して圧縮機の気密性試験を実施することができる。
【0013】
また、本発明では、前記パッキンは、前記他方の端部に前記貫通孔を挿通する突起部を備える構成としてもよい。この場合、注射針を通すための貫通孔を利用してパッキンとキャップの組み付けを容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明では、上記の圧縮機のポート閉塞装置において、前記パッキンは、前記流路の内部に嵌合可能なポート嵌合部が形成されている構成としてもよい。この場合、例えば、キャップを1本の固定用ボルトを用いて圧縮機に固定するときに、ポート嵌合部が開口の中へ嵌合されることにより、パッキンおよびキャップが固定用ボルトと共回りすることを防止することができる。
【0016】
また、本発明では、上記の圧縮機のポート閉塞装置において、前記パッキンは、前記ポート嵌合部の脱着時に把持可能な前記周面部よりも径方向外側に突出した把持部を有する構成としてもよい。この場合、圧縮機からキャップを取り外す場合、パッキンのみポート嵌合部が流路に嵌合したままハウジングから外れなかったとしても、把持部を用いることにより圧縮機からパッキンを取り外しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポートの周囲と外部配管との間でシールする圧縮機においても、圧縮機の気密性試験を行うことができる圧縮機のポート閉塞装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るポート閉塞装置について図面を参照して説明する。本実施形態のポート閉塞装置は、車両に搭載される車両空調用の圧縮機のシールキャップである。
図1に示す圧縮機10のハウジング11の内部には、流体としての冷媒ガスを導通する冷媒ガス流路12が設けられている。
図1に示すように、ハウジング11の表面は、高低差のある第1表面14と第2表面15を有している。
【0020】
第1表面14は、第2表面15と比較して低く設定された表面であり、第1表面14には冷媒ガス流路12の開口としての断面円形のポート13が形成されている。ポート13の周囲には環状の環状平坦面16が形成されており、環状平坦面16は第1表面14からハウジング11の内側の段差面となるように形成されている。環状平坦面16は、シールキャップ20と接触する平面状の被シール面に相当する。ハウジング11の第2表面15は第1表面14と比較して高く設定された表面であり、第2表面15にはねじ孔17が形成され形成されている。ねじ孔17は、シールキャップ20をハウジング11に固定するための固定用ボルト18の螺入を可能としている。ねじ孔17は圧縮機10の気密性試験を終え、シールキャップ20をハウジング11から取り外した後にポート13と接続される冷媒配管(図示せず)を固定するときに利用される。
【0021】
本実施形態のシールキャップ20は、パッキン21とキャップ22を備えており、キャップ22にパッキン21が装着される。パッキン21は弾性材料であるゴム系材料により形成されており、外部からの力を加えることにより弾性変形が可能である。パッキン21は、略円柱状の本体部23と、本体部23の一方の端部に形成された環状のリブ24と、本体部23の他方の端部において本体部23と一体形成された突起部25を備えている。本体部23は、一方の端面26と、他方の端面27と、一方の端面26と他方の端面27との間に形成される周面部28を備えている。周面部28はパッキン21の一方の端部と他方の端部の間に形成されていると言える。本実施形態では、リブ24の先端部がパッキン21の一方の端部に相当し、本体部23の他方の端面27がパッキン21の他方の端部に相当する。周面部28はキャップ22に保持される部位である。
【0022】
リブ24は本体部23の一方の端面において突出して形成されており、リブ24の内側にはリブ側凹部29が形成されている。リブ24の先端は平面シール部30を形成する。平面シール部30は、シールキャップ20が圧縮機10に装着された状態ではハウジング11の環状平坦面16に当接してポート13を閉塞する。従って、本実施形態のパッキン21の平面シール部30は冷媒ガス流路12の内部に入り込まず、ポート13の外側でポート13を閉塞する。
【0023】
本体部23の他方の端面27側に形成された突起部25は、本体部23よりも径が小さく設定されている。突起部25の本体部23側から突起部25の先端側へ向かい、突起部25の突出長さの半分程度までは突起部25の径が最大となるように最大径部31が設定され、最大径部31から突起部25の先端側へ向かうと径が小さくなるように設定されている。突起部25の端面には本体部23側へ向けて窪んだ突起部側凹部32が形成されている。突起部側凹部32の内径はポート13および冷媒ガス流路12の内径よりも小さく設定されている。リブ側凹部29と突起部側凹部32がパッキン21に形成されていることで、リブ側凹部29と突起部側凹部32との間となるパッキン21の肉厚が他の部位よりも小さく設定されている。
【0024】
次に、キャップ22について説明する。キャップ22は樹脂により形成されている。キャップ22には、一方の端面側にパッキン21に対応する凹部33が形成されており、凹部33を形成する内壁はパッキン保持部34Aとパッキン押圧部34Bを形成する。パッキン保持部34Aの内径は、パッキン21の本体部23における周面部28の外周径よりも小さく設定されている。パッキン21が弾性変形可能なゴム系材料により形成されているため、パッキン21の本体部23を凹部33に押し込むことができる。従って、パッキン保持部34Aの内径は、パッキン21の本体部23を凹部33に押し込むことが可能な内径に設定される必要がある。因みに、本実施形態では、
図2に示すように、パッキン保持部34Aの内径と周面部28の外周径との寸法差S1が設定されている。パッキン保持部34Aは凹部33に押し込まれたパッキン21の周面部28に圧接してパッキン21を保持する。パッキン押圧部34Bは凹部33に押し込まれたパッキン21の他方の端面27と当接する。
【0025】
キャップ22にはパッキン押圧部34Bから他方の端面へ貫通形成された貫通孔35を備えている。貫通孔35は、パッキン21の突起部25を挿通可能とする孔であり、パッキン21の他方の端面27に設けた突起部25を外部に向けて開放している。貫通孔35の孔径は、突起部25の最大径よりも小さく設定されている。パッキン21の突起部25が弾性変形可能なゴム系材料により形成されているため、貫通孔35は突起部25の最大径部31を通すことができる。このため、貫通孔35の孔径は、パッキン21の突起部25の最大径部31を通すことが可能な孔径に設定される必要がある。因みに、本実施形態では、
図2に示すように、貫通孔35の孔径と突起部25の最大径部31の外周径との寸法差S2が設定されている。パッキン21の突起部25が貫通孔35を通った状態では、突起部25がキャップ22の他方の端面側に係止され、パッキン21のキャップ22からの離脱が防止される。また、突起部25が貫通孔35を通った状態となることで、キャップ22にパッキン21が装着されていることを視覚的に把握することができる。
【0026】
キャップ22は、凹部33および貫通孔35と離れた位置に形成したボルト挿通孔36を備えている。ボルト挿通孔36は、ハウジング11に設けたねじ孔17に螺入される固定用ボルト18の軸部を挿通可能とする。シールキャップ20が圧縮機10に装着された状態では、ねじ孔17に螺入された固定用ボルト18によりキャップ22はハウジング11の第2表面15と当接され、パッキン21は被シール面である環状平坦面16と当接する。キャップ22とハウジング11の第2表面15との当接領域は、シールキャップ20を取り外した後に、冷媒ガス流路12のポート13に取り付けられる冷媒配管のフランジ部の当接領域と対応している。
【0027】
ところで、キャップ22の他方の端面は、シールキャップ20を圧縮機に装着した状態ではキャップ表面となる。
図3に示すように、キャップ表面は、貫通孔35を形成した突起部側キャップ表面37と、ボルト挿通孔36を形成したボルト挿通孔側キャップ表面38と、突起部側キャップ表面37とボルト挿通孔側キャップ表面38を繋ぐ傾斜キャップ表面39を有する。キャップ22の表面は、突起部側キャップ表面37とボルト挿通孔側キャップ表面38とにより形成される段差を有する。キャップ22の裏面44から突起部側キャップ表面37までの距離は、キャップ22の裏面44からボルト挿通孔側キャップ表面38までの距離より小さく設定されている。そして、キャップ22の裏面44から突起部25の先端部までの距離は、キャップ22の裏面44からボルト挿通孔側キャップ表面38までの距離より小さく設定されている。このため、突起部側キャップ表面37から突出している突起部25の先端はボルト挿通孔側キャップ表面38を越えない位置となる。つまり、
図1に示すように、シールキャップ20を固定用ボルト18にてハウジング11に固定した状態において、ボルト挿通孔側キャップ表面38が最もハウジング11表面から離れた面となっている。
【0028】
図3に示すように、キャップ22のボルト挿通孔36側の側面には、凹部40とテーパー面41とにより形成されるキャップ把持部42が設けられている。キャップ把持部42は、シールキャップ20を圧縮機10から取り外す際に取り外しやすくする機能を有する。例えば、作業者は凹部40に指先を入れるようにしてキャップ把持部42をつまむとシールキャップ20の取り外しが容易である。なお、上記のように構成されたキャップ22は少ない材料にも関わらず強度に優れた形状を有している。
【0029】
パッキン21とキャップ22はそれぞれ別に製作される。パッキン21をキャップ22の凹部33に押し込みつつ突起部25を貫通孔35に通すことにより、パッキン21とキャップ22が一体化され、ポート閉塞装置としてのシールキャップ20が形成される。
【0030】
圧縮機10が製造されると、シールキャップ20は固定用ボルト18を介して圧縮機10のハウジング11に装着される。シールキャップ20を装着する際、圧縮機10の冷媒ガス流路12のポート13を閉塞するように、パッキン21の平面シール部30を環状平坦面16に当接させるとともに、キャップ22のボルト挿通孔36とハウジング11のねじ孔17との位置を合わせる。次に固定用ボルト18をボルト挿通孔36に通し、固定用ボルト18をねじ孔17に螺入して、固定用ボルト18の頭部をボルト挿通孔側キャップ表面38に当接させて、キャップ22をハウジング11に締結する。固定用ボルト18の締結によりパッキン押圧部34Bがパッキン21を押し付け、これによりリブ24の平面シール部30がハウジング11に押し付けられてポート13を閉塞する。
【0031】
パッキン21が凹部33に押し込まれる際、凹部33の内径よりも大きな外周径を有する周面部28は、本体部23の径方向の中心側へ圧縮されて弾性変形する。弾性変形により本体部23の周面部28とパッキン保持部34Aとは互いに圧接される状態となる。本体部23の周面部28とパッキン保持部34Aとの圧接により、パッキン21はより強固にキャップ22に保持される。また、貫通孔35に通った突起部25はキャップ22により係止される状態であり、キャップ22からのパッキン21の脱落が防止される。なお、冷媒ガス流路12の吐出口(図示せず)にも吐出口用のシールキャップを装着して吐出口を閉塞し、冷媒ガス流路12と圧縮機10の外部とを遮断する。
【0032】
シールキャップ20が圧縮機10に装着されると、圧縮機10の気密状態を検査するために、圧縮機10内に気密性試験用のガスが注入され、気密性試験が行なわれる。
図4に示すように、検査用のガスを注入するとき、ガス注入用の注射針43を突起部側凹部32からリブ側凹部29へ貫通させる。突起部側凹部32は、ポート13および冷媒ガス流路12の内径よりも小さく設定されているため、突起部側凹部32に通した注射針43はハウジング11に当接するおそれは小さい。注射針43をパッキン21に貫通させた後、気密試験用のガスを注射針43を通じて冷媒ガス流路12に注入し、ガスの注入完了後に注射針43をパッキン21から引き抜く。
【0033】
パッキン21の周面部28とキャップ22のパッキン保持部34Aが圧接され、パッキン21には径方向の圧縮力が作用するから、パッキン21の圧接による反力が注射針43の貫通により形成されたパッキン21の注射針痕を隙間無く塞ぐ。従って、注射針43を引き抜いた後でも、注射針痕から検査用のガスは漏れない。
【0034】
次に、検査用のガスが注入された圧縮機10を真空容器(図示せず)内に収容し、ガスの漏洩の有無を確認して、気密性試験を行う。パッキン21の平面シール部30とハウジング11の環状平坦面16とのシール状態に問題がなければガスの漏洩は発生せず、環状平坦面16の加工不良によってシール状態に不具合があればガスの漏洩が生じる。
【0035】
本実施形態のシールキャップは以下の作用効果を奏する。
(1)冷媒ガス流路12のポート13の周囲に形成された環状平坦面16は、パッキン21の平面シール部30により閉塞される。ハウジング11に固定されるキャップ22は、パッキン21の周面部28に圧接してパッキン21を保持する。パッキン21の周面部28は保持されるキャップ22により圧接されているため、注射針43をパッキン21に刺し通し、注射針43を引き抜いても、パッキン21の圧接による反力が注射針痕を隙間無く塞ぐ。このため、注射針痕が生じたパッキン21を用いて冷媒ガス流路12を閉塞された圧縮機10の気密性試験を実施することができる。
(2)キャップ22設けた貫通孔35からパッキン21が外部へと開放されることで、ポート13を閉塞したまま、キャップ22に注射針43を刺し通すことができる。
【0036】
(3)圧縮機10からキャップ22およびパッキン21を取り外す場合、キャップ把持部42を用いることにより圧縮機10からキャップ22およびパッキン21をより取り外しやすくなる。因みに、ポート13の周囲の環状平坦面16と平面シール部30が当接して冷媒ガス流路12を閉塞するから、例えば、冷媒ガス流路12内にシール部材を圧入して冷媒ガス流路12を閉塞する場合と比較してシールキャップをハウジング11から取り外しやすい。
(4)突起部25を貫通孔35に通すことによって、簡単にパッキン21をキャップ22に組み付ける事ができる。パッキン21の突起部25が貫通孔35を通った状態では、突起部25がキャップ22の他方の端面側に係止され、パッキン21のキャップ22からの離脱が防止される。また、凹部33の内径よりも大きな外周径を有する周面部28は、本体部23の径方向の中心側へ圧縮されて弾性変形するから、パッキン21の周面部28とキャップ22のパッキン保持部34Aとは互いに圧接される状態となる。その結果、突起部25による係止と相まって、より強固にキャップ22にパッキン21を保持することができる。
【0037】
(5)突起部25が貫通孔35を通った状態となることで、キャップ22にパッキン21が装着されていることが視覚的に把握することができる。
(6)突起部側凹部32は、ポート13および冷媒ガス流路12の内径よりも小さく設定されているため、突起部側凹部32に通した注射針43はハウジング11に接触するおそれは小さい。このため、ハウジング11と注射針43との接触による注射針43の破損や冷媒ガス流路12内への異物混入を防止することができる。
【0038】
(7)キャップ22はハウジング11の表面におけるパッキン21の周囲およびねじ孔17の周囲を覆う。キャップ22とハウジング11の表面との当接領域は、シールキャップ20を取り外した後に、冷媒ガス流路12のポート13に取り付けられる冷媒配管のフランジ部の当接領域と対応している。このため、冷媒配管のフランジ部が当接されるハウジング11の表面をキャップ22により保護することができる。
【0039】
(
参考例)
参考例として、
図5に示すパッキンを用いたポート閉塞装置としてもよい。
参考例のポート閉塞装置も、車両に搭載される車両空調用の圧縮機のシールキャップであるが、パッキンの構成のみが先の実施形態と異なる。パッキン以外の構成は、先の実施形態の説明を援用する。また、第1の実施形態の符号を共通して用いる。
【0040】
図5に示すように、パッキン保持部34Aの内径と周面部28の外周径との寸法差S3が設定されている。パッキン保持部34Aの内径は周面部28の外周径よりも大きいので、キャップ22とパッキン21とは、周面部28とパッキン保持部34Aとの間に間隙が生じる。よって、パッキン21がキャップ22に組み付けられた非押圧状態では、パッキン保持部34Aはパッキン21の周面部28に圧接しない。
【0041】
その一方で、キャップ22が固定用ボルト18によってハウジング11に締結される際、パッキン押圧部34Bがパッキン21をポート13に向けて押圧するので、パッキン21は押圧方向に対して垂直に膨張変形し、結果として、周面部28はパッキン保持部34Aにより圧接されることができる。
【0042】
参考例のシールキャップは、第1の実施形態の(1)〜(7)の作用効果を奏しながらも、キャップ22をパッキン21に組み付ける際に特別な力を必要としない。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るポート閉塞装置について説明する。本実施形態のポート閉塞装置も、車両に搭載される車両空調用の圧縮機のシールキャップであるが、パッキンの構成のみが先の実施形態と異なる。パッキン以外の構成は、先の実施形態の説明を援用して共通の符号を用いる。
【0044】
図6に示すシールキャップ50のパッキン51は、弾性材料であるゴム系材料により形成されており、外部からの力を加えることにより弾性変形が可能である。パッキン51は、略円柱状の本体部52と、本体部52の一方の端部に形成された環状のリブ53と、ポート嵌合部54と、本体部52の他方の端部に形成された突起部55と、リブ53の外周面から側方へ延在する把持部としてのパッキン把持部56を備えている。本体部52は、一方の端面57と、他方の端面58と、一方の端面57と他方の端面58との間に形成される周面部59を備えている。周面部59はパッキン51の一方の端部と他方の端部の間に形成されていると言える。リブ53の先端部がパッキン51の一方の端部に相当し、本体部52の他方の端面58がパッキン51の他方の端部に相当する。周面部59はキャップ22により保持される部位である。
【0045】
リブ53の内側にはリブ側凹部60が形成され、リブ53の先端は平面シール部61を形成する。ポート嵌合部54は、リブ53から突出する棒状体であり、シールキャップ50がハウジング11に装着された状態では、冷媒ガス流路12の内部にポート嵌合部54の先端が嵌合される。ポート嵌合部54は、固定用ボルト18の締結時に、固定用ボルト18とシールキャップ50が一緒に回転しないようにする共回り防止の機能を有する。
【0046】
図7はパッキン51をリブ53側から見た図であり、2点差線は冷媒ガス流路12を示す。
図7に示すように、ポート嵌合部54は、冷媒ガス流路12を閉塞せず冷媒ガス流路12を形成するハウジング11の内壁と当接可能な規制面62を有する。
図7における矢印Yは固定用ボルト18の締結の回転方向である。従って、固定用ボルト18の締結時に、固定用ボルトとシールキャップ50が共に矢印Yの方向に回転しようとしても、ポート嵌合部54の規制面62がハウジング11の内壁とほぼ全周にわたって当接するため、シールキャップ50は回転しない。なお、ポート嵌合部54が冷媒ガス流路12に嵌合された状態でも、規制面62とハウジング11の内壁との間には僅かな隙間が存在し、ポート嵌合部54は冷媒ガス流路12を密閉することはないため、ポート嵌合部54は平面シール部61による閉塞状態に影響を与えない。
【0047】
リブ53の外周面から側方へ延在する板状のパッキン把持部56はハウジング11の表面に露出されて設けられ、かつ、周面部59よりも径方向外側に突出している。パッキン把持部56は、ポート嵌合部54の脱着時に把持可能であり、例えば、シールキャップ50を圧縮機10から取り外す際に、パッキン51のみポート嵌合部54が冷媒ガス流路12に嵌合したままハウジング11から外れなかったとしても、パッキン51をより確実にハウジング11から分離し易くする。パッキン把持部56は引っ張っても千切れない程度の肉厚が設定されている。
【0048】
パッキンの突起部55は、第1の実施形態における突起部25と同一であり、突起部55には最大径部63が設定されているほか、突起部側凹部64が形成されている。
【0049】
本実施形態のシールキャップ50は、第1の実施形態の(1)〜(7)の作用効果を奏するほか、固定用ボルト18の締結時に、固定用ボルト18とシールキャップ50が一緒に回転しないように共回りを防止することができる。また、ハウジング11の表面に露出されるパッキン把持部56を使ってパッキン51を圧縮機から確実に取り外すこともできる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る流路閉塞装置について
図8(a)〜
図8(c)を参照して説明する。
図8(a)は本実施形態に係る圧縮機のハウジングの要部を示す平面図あり、
図8(b)は本実施形態に係るシールキャップの側面図であり、
図8(c)はシールキャップの平面シール部側から見た底面図である。本実施形態のポート閉塞装置も、車両に搭載される車両空調用の圧縮機のシールキャップである。本実施形態は、キャップの構成のみが第1の実施形態と異なるが、本実施形態のキャップの基本形態は第1の実施形態のキャップを同じである。従って、キャップ71のパッキン保持部34A、ボルト挿通孔36、突起部側キャップ表面37、ボルト挿通孔側キャップ表面38、傾斜キャップ表面39、キャップ把持部42は同じ符号を用いる。
【0051】
図8(a)に示すように、本実施形態のハウジング11の第2表面15には、ねじ孔17と離れて有底孔19が設けられている。
図8(b)および
図8(c)に示すように、キャップ71の第2表面15と当接する面には、有底孔19に嵌合可能なハウジング嵌合部72が形成されている。ハウジング嵌合部72は、固定用ボルト18の締結時に、固定用ボルト18とシールキャップ50が一緒に回転しないようにする共回り防止の機能を有する。シールキャップ50がハウジング11に装着された状態では、有底孔19にハウジング嵌合部72の先端が嵌合される。
【0052】
本実施形態のシールキャップ70は、第1の実施形態の(1)〜(7)の作用効果を奏するほか、固定用ボルト18の締結時に、固定用ボルト18とシールキャップ70が一緒に回転しないように共回りを防止することができる。
【0053】
なお、上記の実施形
態は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0054】
○ 上記の実施形態では、圧縮機の冷媒ガス流路の吸入口となるポートに装着されるポート閉塞装置について説明したが、上記の実施形態にて例示したポート閉塞装置を冷媒ガス流路の吐出口となるポートに適用してもよい。つまり、圧縮機のポートは吸入口や吐出口であってもよい。
○ 上記の実施形態では、パッキンの本体部やキャップの凹部が断面円形になるように形成されたが、パッキンの本体部やキャップの凹部の断面形状は円形に限定されない。パッキンの本体部やキャップの凹部の断面形状は、例えば、楕円、長円、多角形であってもよいし、不定形であってもよい。また、パッキンの周面部とキャップのパッキン保持部が全周にわたって圧接されなくてもよく、例えば、パッキンが3点でキャップに保持されるように、パッキンの周面部とキャップのパッキン保持部を形成してもよい。
○ 上記の実施形態では、パッキンの突起部がキャップの貫通孔に挿通されていたが、パッキンは突起部を有していなくてもよい。この場合、キャップに装着されたパッキンの他方の端部は外部に向けて開放される。
○ 上記の第3の実施形態では、第1の実施形態のパッキンを用いたが、第1の実施形態のパッキンに代えて第2の実施形態のパッキンを用いるようにしてもよい。
○ 上記の第2の実施形態では、ポート嵌合部54の規制面62が、平面シール部61による閉塞状態に影響を与えない程度に、冷媒ガス流路12の内壁とほぼ全周にわたって当接可能としたが、固定用ボルト18とシールキャップ50との共回り防止効果が発揮されるならば、一部だけ当接していてもよい。
○ 上記の実施形態では、固定用ボルト18として頭部とねじ部が一体化された一般的なものを用いたが、他の締結部材でもよい。例えばスタッドボルトとナットを組み合わせても良い。