特許第5900173号(P5900173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900173
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】シリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20160324BHJP
   A61M 5/34 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   A61M39/10 100
   A61M5/34 510
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-130822(P2012-130822)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-252355(P2013-252355A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】八木 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】安村 直朗
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−236567(JP,A)
【文献】 特許第4599875(JP,B2)
【文献】 米国特許第5620427(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 5/34
F16L 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オスルアーテーパーが先端部の外周面に設けられた筒状の口部を有するシリンジ本体と、
メスルアーテーパーが内周面に設けられた他部材と接続する際に用いられ、前記口部に着脱可能に取り付けられた接続具とを備えるシリンジであって、
前記口部の外周面には、凹部が設けられており、前記凹部の底面が軸方向から見て多角形状となっており、
前記接続具は、
前記口部と同軸であって、前記口部の少なくとも一部を内側に収容するように前記口部に装着される内筒部材と、
前記内筒部材と同軸であって、前記内筒部材の一端から前記内筒部材と嵌合されることによって前記内筒部材の少なくとも一部を内側に収容するように前記内筒部材に装着される外筒部材とを有しており、
前記内筒部材は、
メスネジが内周面に設けられた内筒本体と、
前記軸方向に前記メスネジよりも前記内筒部材の前記一端から離れた位置において前記内筒本体と接続され、前記凹部と係合する係合板とを有しているとともに、
前記内筒部材には、前記係合板が複数の係合片に分割され且つ前記内筒本体が前記複数の係合片に対応して部分的に区切られるように、前記係合板から前記内筒本体の一部にかけて前記軸に対して放射状に複数のスリットが形成されており、
前記凹部と前記係合板との係合によって、前記内筒部材の前記シリンジ本体に対する周方向および前記軸方向の移動が規制され、
前記内筒部材に前記外筒部材が装着されていない状態では、前記複数の係合片が拡径方向に変位可能であって、
前記内筒部材に前記外筒部材が装着された状態では、前記軸方向に関して前記複数のスリットの形成範囲内で前記外筒部材の内周面が前記内筒部材の外周面に当接することによって、前記複数の係合片の拡径方向の変位が規制されることを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
前記外筒部材の内周面が前記係合板の外周面に当接することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記外筒部材の内周面には、少なくとも1つの係合突起が設けられており、
前記内筒部材の外周面には、前記少なくとも1つの係合突起が係合される少なくとも1つの係合溝が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記係合溝は、周方向に沿って形成され、且つ、前記外筒部材が前記内筒部材に装着された状態において前記係合突起が配置される部分を含むことを特徴とする請求項3に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記係合溝には、径方向外側に突出し、前記外筒部材が前記内筒部材に装着された状態において前記係合突起と周方向に対向すると共に、前記外筒部材を前記内筒部材から緩める際に前記係合突起が接触して乗り越え可能な凸部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記係合溝が、前記軸方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記係合溝には、径方向外側に突出し、前記外筒部材が前記内筒部材に装着された状態において前記係合突起と軸方向に対向すると共に、前記外筒部材を前記内筒部材から緩める際に前記係合突起が接触して乗り越え可能な凸部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記複数の係合片によって囲まれた領域が、前記軸方向から見て前記多角形状をなしており、
前記複数のスリットが、前記多角形状の角部に相当する位置を通るように設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ本体に接続具が着脱可能に取り付けられたシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、シリンジは、注射針、カテーテル、輸液セット等に接続されて使用される。このシリンジと相手方器具との接続方法としては、シリンジの口部を相手方器具の内側に挿入して、口部の先端部の外周面に形成されたオスルアーテーパーと、相手方器具の内周面に形成されたメスルアーテーパーとを嵌合させるだけで接続する方法と、このルアーテーパーによる接続に加えて、口部を内側に収容するようにシリンジに設けられた略筒状の接続具(ルアーロックアダプタ)の内周面に相手方器具を接続する方法(例えば接続具の内周面に設けられたメスネジを相手方器具のオスネジと螺合させる)がある。
【0003】
この2つの接続方法のどちらでも使用できるように、接続具がシリンジ本体に着脱可能に取り付けられたシリンジがある。例えば特許文献1のシリンジは、接続具に2本のアームが設けられており、このアームの先端の爪部が、シリンジ本体の外周面に設けられた凹部に係合することで、シリンジ本体に接続具が保持される。また、アームの後端を押圧してアームの先端を広げることで、接続具はシリンジ本体から取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4599875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシリンジの場合、アームの後端を手で摘んだり、アームの後端が他の器具等に接触したりすることで、誤って接続具が外れる虞がある。
また、アームは、細長い棒状の部材であって、外部に露出しているため、他の器具等との接触により破損する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、接続具の誤脱と破損を防止できるシリンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
第1の発明に係るシリンジは、オスルアーテーパーが先端部の外周面に設けられた筒状の口部を有するシリンジ本体と、メスルアーテーパーが内周面に設けられた他部材と接続する際に用いられ、前記口部に着脱可能に取り付けられた接続具とを備えるシリンジであって、前記口部の外周面には、凹部が設けられており、前記凹部の底面が軸方向から見て多角形状となっており、前記接続具は、前記口部と同軸であって、前記口部の少なくとも一部を内側に収容するように前記口部に装着される内筒部材と、前記内筒部材と同軸であって、前記内筒部材の一端から前記内筒部材と嵌合されることによって前記内筒部材の少なくとも一部を内側に収容するように前記内筒部材に装着される外筒部材とを有しており、前記内筒部材は、メスネジが内周面に設けられた内筒本体と、前記軸方向に前記メスネジよりも前記内筒部材の前記一端から離れた位置において前記内筒本体と接続され、前記凹部と係合する係合板とを有しているとともに、前記内筒部材には、前記係合板が複数の係合片に分割され且つ前記内筒本体が前記複数の係合片に対応して部分的に区切られるように、前記係合板から前記内筒本体の一部にかけて前記軸に対して放射状に複数のスリットが形成されており、前記凹部と前記係合板との係合によって、前記内筒部材の前記シリンジ本体に対する周方向および前記軸方向の移動が規制され、前記内筒部材に前記外筒部材が装着されていない状態では、前記複数の係合片が拡径方向に変位可能であって、前記内筒部材に前記外筒部材が装着された状態では、前記軸方向に関して前記複数のスリットの形成範囲内で前記外筒部材の内周面が前記内筒部材の外周面に当接することによって、前記複数の係合片の拡径方向の変位が規制されることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、接続具の最も外側に位置する外筒部材は、その内周面が内筒部材と嵌合することで内筒部材に取り付けられている。また、接続具を口部から取り外すには、外筒部材を内筒部材に対して軸方向に移動させる必要がある。また、内筒部材に外筒部材が装着された状態では、内筒部材の係合片の拡径方向の変位が規制されて、係合片と凹部との係合が維持されるため、内筒部材が口部から外れることはない。したがって、接続具を手で掴んだり、接続具が他の器具等と接触しただけでは、接続具は口部から外れることがないため、接続具の誤脱を防止できる。
また、外筒部材および内筒部材は、軸方向に突出する部分を有しないため、軸方向に延びるアームが設けられた従来の接続具に比べて破損しにくい。
【0009】
第2の発明に係るシリンジは、第1の発明において、前記外筒部材の内周面が前記係合板の外周面に当接することを特徴とする。
【0010】
この構成によると、外筒部材の内周面が係合板の外周面に当接しているため、係合板と凹部を確実に係合させることができる。
【0011】
第3の発明に係るシリンジは、第1または第2の発明において、前記外筒部材の内周面には、少なくとも1つの係合突起が設けられており、前記内筒部材の外周面には、前記少なくとも1つの係合突起が係合される少なくとも1つの係合溝が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成によると、外筒部材の内周面を内筒部材に嵌合させると共に、外筒部材の係合突起を内筒部材の係合溝に係合させることで、外筒部材を内筒部材に取り付けているため、外筒部材を内筒部材に嵌合させるだけで外筒部材を内筒部材に取り付けている場合に比べて、外筒部材が内筒部材から外れにくくなり、外筒部材の誤脱を防止できる。
【0013】
第4の発明に係るシリンジは、第3の発明において、前記係合溝は、周方向に沿って形成され、且つ、前記外筒部材が前記内筒部材に装着された状態において前記係合突起が配置される部分を含むことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、外筒部材が内筒部材に装着された状態において、係合突起は、係合溝の周方向に沿って形成された部分に軸方向に挟まれるため、外筒部材は内筒部材に対する軸方向の移動が規制される。そのため、外筒部材を軸方向に引っ張っても内筒部材から外れることがなく、外筒部材の誤脱を防止できる。
【0015】
第5の発明に係るシリンジは、第4の発明において、前記係合溝には、径方向外側に突出し、前記外筒部材が前記内筒部材に装着された状態において前記係合突起と周方向に対向すると共に、前記外筒部材を前記内筒部材から緩める際に前記係合突起が接触して乗り越え可能な凸部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によると、外筒部材が内筒部材に装着された状態において、係合突起は、凸部と周方向に対向しているため、外筒部材は内筒部材に対して回転移動しにくくなっており、接続具の誤脱を防止できる。また、外筒部材を内筒部材から緩める際、係合突起は、まず凸部を乗り越えるため、使用者に操作感を与えることができる。
【0017】
第6の発明に係るシリンジは、第3の発明において、前記係合溝が、前記軸方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、外筒部材を内筒部材に対して軸方向に沿って移動させるだけで、外筒部材を内筒部材に脱着することができるため、脱着が容易である。
【0019】
第7の発明に係るシリンジは、第6の発明において、前記係合溝には、径方向外側に突出し、前記外筒部材が前記内筒部材に装着された状態において前記係合突起と軸方向に対向すると共に、前記外筒部材を前記内筒部材から緩める際に前記係合突起が接触して乗り越え可能な凸部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によると、外筒部材が内筒部材に装着された状態において、係合突起は凸部と軸方向に対向しているため、外筒部材は内筒部材に対して軸方向に移動しにくくなっており、接続具の誤脱を防止できる。また、外筒部材を内筒部材から緩める際、係合突起は、まず凸部を乗り越えるため、使用者に操作感を与えることができる。
【0021】
第8の発明に係るシリンジは、第1〜第7のいずれかの発明において、前記複数の係合片によって囲まれた領域が、前記軸方向から見て前記多角形状をなしており、前記複数のスリットが、前記多角形状の角部に相当する位置を通るように設けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、複数のスリットが、係合板の内周面がなす多角形状の角部に相当する位置を通るように設けられているため、係合片の内周面は、多角形状の一辺を構成する。したがって、係合片の内周面は、平坦状であるため、内筒部材を製造しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係るシリンジの斜視図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図1のIII−III線断面図である。
図4】シリンジの分解斜視図である。
図5】シリンジの分解斜視図である。
図6】内筒部材の斜視図である。
図7】接続具をシリンジ本体から取り外す途中の状態を示す断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るシリンジの断面図である。
図9】シリンジの分解斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態に係るシリンジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のシリンジ1は、シリンジ本体3と、シリンジ本体3に着脱可能に取り付けられた接続具2と、シリンジ本体3内で摺動可能なガスケット(図示省略)と、ガスケットを移動操作するプランジャー(図示省略)とを備えている。なお、以下のシリンジの説明において、シリンジ本体3の長手方向に沿った方向を「軸方向」という。また、図1〜3、7中の上方および下方を、前方および後方と称する。
【0025】
本実施形態のシリンジ1は、予め薬液等が充填されたプレフィルドシリンジやその他の用途のシリンジとして使用できる。シリンジ1は、メスルアーテーパーが内周面に設けられた他部材に接続されて使用される。
【0026】
シリンジ本体3は、合成樹脂やガラスで形成されており、有底円筒状の胴部4と、胴部4の底部の中央から突出する円筒状の口部5とを有する。プランジャー(図示省略)をシリンジ本体3の口部5側に移動させることによって、シリンジ本体3に収容された薬液等が口部5から排出される。
【0027】
図2および図3に示すように、口部5の先端部の外周面には、オスルアーテーパー6が設けられており、先細り状となっている。オスルアーテーパー6は、他部材の内周面に設けられたメスルアーテーパーと嵌合可能に形成されている。また、口部5は、オスルアーテーパー6より後方の外周面に、環状の凹部7を有する。図4に示すように、凹部7の底面は、軸方向から見て六角形状に形成されている。凹部7の底面は、対向する一辺間の距離がオスルアーテーパー6の後端の径よりも小さい。
【0028】
接続具2は、シリンジ本体3の口部5に着脱可能に取り付けられている。接続具2は、例えば、メスルアーテーパーが内周面に設けられ且つオスネジが外周面に設けられた他部材(図示省略)等にシリンジ1を接続する際に用いられる。接続具2が邪魔になる場合には、接続具2は取り外される。
【0029】
接続具2は、合成樹脂で形成されている。接続具2は、口部5の外周面に取り付けられる内筒部材10と、内筒部材10の外周面に取り付けられる外筒部材40とを有する。内筒部材10および外筒部材40は、口部5と同軸に配置される。
【0030】
内筒部材10は、口部5の先端近傍から凹部7までの軸方向範囲を内側に収容するように口部5に装着される。内筒部材10は、略円筒状の内筒本体20と、内筒本体20の後端に形成された係合板30で構成されている。内筒本体20の内周面には、他部材のオスネジと螺合可能なメスネジ21が設けられている。係合板30は、略環状であって、その内周端と外周端は、内筒本体20の内周面と外周面からそれぞれ突出している。
【0031】
図5に示すように、内筒部材10は、係合板30の後端から内筒本体20の一部(内筒部材10の全長の約3/4の領域)にかけて軸方向に延びる6つのスリット11を有する。6つのスリット11は、放射状に形成されている。そのため、この6つのスリット11によって、係合板30は6つの略扇形状の係合片31に分割され、内筒本体20の約3/4の領域は6つに区切られている。内筒部材10が口部5に装着されていない状態において、係合板30に径方向の力を加えると、内筒部材10が弾性変形することで、係合片31は拡径方向または縮径方向に変位する。
【0032】
係合板30の内周面は、6つの係合片31によって囲まれた領域が、軸方向から見て六角形状をなすように形成されている。6つのスリット11は、係合板30がなす六角形状の角部に相当する位置を通るように設けられている。外筒部材40が内筒部材10に装着されている状態において、係合板30の内周端部は、口部5の凹部7と係合する。係合板30の内周面がなす六角形状の大きさは、外筒部材40が内筒部材10に装着されている状態において、係合板30の最小内径が、凹部7の底面の最大径よりも小さければ、特に限定はない。
【0033】
係合板30が凹部7と係合することで、内筒部材10はシリンジ本体3に対して周方向および軸方向の移動が規制される。詳細には、六角形状をなす係合板30の内周面が、六角形状をなす凹部7の底面と嵌合していることで、周方向の移動が規制され、係合板30が凹部7の両側面に軸方向に挟まれていることで、軸方向の移動が規制される。周方向の移動が規制されることによって、内筒部材10のメスネジ21に他部材のオスネジを螺合させる際に、内筒部材10が空回りするのを防止できる。
【0034】
図6に示すように、内筒本体20の外周面には、2つの係合溝22が設けられている。2つの係合溝22は、180度ずれた位置に形成されている。2つの係合溝22には、外筒部材40の内周面の180度ずれた位置に設けられた2つの係合突起42がそれぞれ係合する。係合溝22は、第1溝部22aと第2溝部22bと第3溝部22cからなる。
【0035】
第1溝部22aは、内筒本体20の外周面の前端から軸方向に沿って形成されている(図3図6参照)。第2溝部22bは、第1溝部22aの後端から後方に向かう螺旋状に形成されている(図4図6参照)。第3溝部22cは、第2溝部22bの後端から周方向に沿って形成されている(図2図4参照)。第3溝部22cは、内筒本体20の外周面の後端に設けられており、係合板30の前面が第3溝部22cの側面の一方を構成している。外筒部材40が内筒部材10に装着された状態において、外筒部材40の係合突起42は、第3溝部22cに軸方向に挟まれて第3溝部22cと係合する。これにより、外筒部材40は内筒部材10に対して軸方向の移動が規制される。
【0036】
第1溝部22aには、径方向外側に突出する凸部23aおよび凸部23bが軸方向に並んで形成されており(図3図6参照)、第3溝部22cの第2溝部22bに近い方の端部には、径方向外側に突出する凸部23cが形成されている(図4図6参照)。凸部23aは、軸方向に沿った断面が略三角形状であって、その後面は軸方向にほぼ直交している。凸部23bおよび凸部23cは、凸部23aよりも突出高さが低い。凸部23bは、軸方向に沿った断面が先細りの略台形状であって、その両側面は軸方向に直交する方向に対して傾斜している。凸部23cは、周方向に沿った断面が略台形状であって、その両側面は径方向に対して傾斜している。
【0037】
外筒部材40は、内筒部材10の係合板30の内周端部が凹部7から外れるのを防止するために設けられている。外筒部材40は、内筒部材10の前端から内筒部材10に装着される。
【0038】
外筒部材40の後端部は、内筒部材10の係合板30の外周面に嵌合する。外筒部材40の内周面のうち、係合板30の外周面と当接する部分を当接面41とする。当接面41が係合板30の外周面に当接することで、係合片31の拡径方向の変位が規制されるため、係合板30が凹部7から外れるのを防止できる。その結果、接続具2が口部5から外れにくくなり、接続具2の誤脱を防止できる。
【0039】
当接面41の径が、外筒部材40が装着されていない状態における内筒部材10の係合板30の外径よりも小さい場合には、外筒部材40を内筒部材10に装着した状態では、当接面41によって係合板30は径方向に押圧される。これにより、内筒部材10は弾性変形するため、内筒部材10の弾性復元力によって、外筒部材40と内筒部材10とを強固に取り付けることができる。なお、当接面41の径は、外筒部材40が装着されていない状態における内筒部材10の係合板30の外径と同じであってもよい。
【0040】
図2および図5に示すように、外筒部材40の内周面には、内筒部材10の2つの係合溝22に係合する2つの係合突起42が設けられている。係合突起42は、外筒部材40の当接面41より前方に設けられている。係合突起42は、径方向に沿った断面の形状および軸方向に直交する断面の形状がともに略台形状である。係合突起42の前面は軸方向に対してほぼ直交しており、係合突起42の前面以外の側面は、係合突起42が先細り状となる方向に傾斜している。
【0041】
また、外筒部材40の外周面には、複数のリブ43が軸方向に沿って設けられている。このリブ43は、外筒部材40を指で把持する際の滑りを防止する機能を有する。
【0042】
次に、接続具2をシリンジ本体3から取り外す手順について説明する。
まず、係合突起42が凸部23c側に移動するように、外筒部材40を内筒部材10および口部5に対して回転させる。係合突起42は、凸部23cを乗り越えて、第2溝部22bに配置される。次に、係合突起42が第2溝部22bに沿って移動するように、外筒部材40を前方に向かって螺旋状に回転させる。
【0043】
係合突起42が第1溝部22aの後端まで移動して、第1溝部22aに接触すると、外筒部材40を前方に移動させる。係合突起42は凸部23bを乗り越えた後、凸部23aに当たって止まり、図7に示す状態となる。したがって、外筒部材40は内筒部材10から外れない。また、このとき、係合突起42の後方には凸部23bがあるため、外筒部材40から手を放しても、係合突起42が第2溝部22bに戻ることがない。
【0044】
係合突起42が凸部23aと凸部23bとの間に保持された状態で、外筒部材40または内筒部材10に前方向の力を加えることで、内筒部材10が弾性変形して係合板30の内周端部が凹部7から外れて、内筒部材10および外筒部材40が口部5から取り外される。
【0045】
また、シリンジ1の製造時に、接続具2をシリンジ本体3に取り付ける際には、まず、シリンジ本体3の口部5を、内筒部材10の係合板30の中央の孔に挿入して、内筒部材10を口部5に対して後方に移動させる。係合片31は、口部5の外周面によって径方向に押圧されて拡径方向に変位した後、凹部7に配置される。
【0046】
次に、外筒部材40の係合突起42の後面を、内筒部材10の係合溝22の凸部23aの前面に接触させるように、外筒部材40を配置した後、外筒部材40に後方向の力を加える。これにより、係合突起42は凸部23aを乗り越え、凸部23aと凸部23bの間に配置される。その後は、接続具2の取り外し時と逆の手順を行う。
【0047】
本実施形態のシリンジ1は、以下の効果を奏する。
接続具2の最も外側に位置する外筒部材40は、その内周面が内筒部材10と嵌合することで内筒部材10に取り付けられている。また、接続具2を口部5から取り外すには、外筒部材40を内筒部材10に対して軸方向に移動させる必要がある。また、内筒部材10に外筒部材40が装着された状態では、内筒部材10の係合片31の拡径方向の変位が規制されて、係合片31と凹部7との係合が維持されるため、内筒部材10が口部5から外れることはない。したがって、接続具2を手で掴んだり、接続具2が他の器具等と接触しただけでは、接続具2は口部5から外れることがないため、接続具2の誤脱を防止できる。
また、外筒部材40および内筒部材10は、軸方向に突出する部分を有しないため、軸方向に延びるアームが設けられた従来の接続具に比べて破損しにくい。
【0048】
また、外筒部材40の内周面が係合板30の外周面に当接しているため、係合板30と凹部7を確実に係合させることができる。
【0049】
また、外筒部材40の内周面を内筒部材10に嵌合させると共に、外筒部材40の係合突起42を内筒部材10の係合溝22に係合させることで、外筒部材40を内筒部材10に取り付けているため、外筒部材40を内筒部材10に嵌合させるだけで外筒部材40を内筒部材10に取り付けている場合に比べて、外筒部材40が内筒部材10から外れにくくなり、外筒部材40の誤脱を防止できる。
【0050】
また、外筒部材40が内筒部材10に装着された状態において、係合突起42は、周方向に沿って形成された第3溝部22cに軸方向に挟まれるため、外筒部材40は内筒部材10に対する軸方向の移動が規制される。そのため、外筒部材40を軸方向に引っ張っても内筒部材10から外れることがなく、外筒部材40の誤脱を防止できる。
【0051】
また、外筒部材40が内筒部材10に装着された状態において、係合突起42は、凸部23cと周方向に対向しているため、外筒部材40は内筒部材10に対して回転移動しにくくなっており、接続具2の誤脱を防止できる。また、外筒部材40を内筒部材10から緩める際、係合突起42は、まず凸部23cを乗り越えるため、使用者に操作感を与えることができる。
【0052】
また、接続具2を取り外す際に、係合突起42が凸部23aと凸部23bとの間に保持されることで、係合突起42が第2溝部22bに戻るのを防止できる。そのため、係合片31が拡径方向に変位するのに外筒部材40が邪魔になることがない。
【0053】
また、本実施形態の接続具2では、6つのスリット11が、係合板30の内周面がなす六角形状の角部に相当する位置を通るように設けられているため、係合片31の内周面は、六角形状の一辺を構成する。したがって、係合片31の内周面は、平坦状であるため、内筒部材10を製造しやすい。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。但し、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
図8および図9に示すように、本実施形態のシリンジ101は、接続具の内筒部材の構成が第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態の内筒部材110は、略円筒状の内筒本体120と、内筒本体120の後端に形成された係合板30とで構成されている。内筒部材110には、第1実施形態と同様に、6つのスリット11が設けられている。
【0056】
内筒本体120の外周面には、2つの係合溝122が設けられている。2つの係合溝122は、180度ずれた位置に形成されている。係合溝122は、内筒本体120の外周面の前端から軸方向に沿って形成されている。2つの係合溝122には、外筒部材40の内周面に設けられた2つの係合突起42がそれぞれ係合する。
【0057】
係合溝122には、径方向外側に突出する3つの凸部123a、123b、123cが軸方向に並んで設けられている。凸部123aは、第1実施形態の凸部23aと同じ形状である。凸部123b、123cは、第1実施形態の凸部23bと同じ形状である。外筒部材40が内筒部材110に装着された状態において、外筒部材40の係合突起42は、凸部123cと係合片31の上面との間に配置される。そのため、外筒部材40は内筒部材110に対して軸方向の移動が規制される。
【0058】
接続具102をシリンジ本体3から取り外す際には、外筒部材40に前方向の力を加える。係合突起は、凸部123cを乗り越えて、凸部123bと凸部123aの間に配置される。その後、外筒部材40または内筒部材110に前方向の力を加えることで、内筒部材110が弾性変形して係合板30の内周端部が凹部7から外れて、内筒部材110および外筒部材40が口部5から取り外される。
【0059】
本実施形態のシリンジ101は、第1実施形態のシリンジ1と同様に、接続具102を手で掴んだり、接続具102が他の器具等と接触しただけでは、接続具102は口部5から外れることがなく、接続具102の誤脱を防止できる。また、接続具102は、軸方向に突出する部分を有しないため、軸方向に延びるアームが設けられた従来の接続具に比べて破損しにくい。
【0060】
また、係合溝122が軸方向に沿って形成されているため、外筒部材40を内筒部材110に対して軸方向に沿って移動させるだけで、外筒部材40を内筒部材110に脱着することができるため、脱着が容易である。
【0061】
また、外筒部材40が内筒部材110に装着された状態において、係合突起42の前面は、凸部123cと軸方向に対向しているため、外筒部材40は内筒部材110に対して軸方向に移動しにくくなっており、接続具102の誤脱を防止できる。また、外筒部材40を内筒部材110から緩める際、係合突起42は、まず凸部123cを乗り越えるため、使用者に操作感を与えることができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0063】
上記第1および第2実施形態では、凹部7の底面は、軸方向から見て六角形状に形成されているが、六角形以外の多角形状に形成されていてもよい。
【0064】
上記第1および第2実施形態では、係合板30は、6つの係合片31によって囲まれた領域が、軸方向から見て、凹部7の底面と同じ六角形状をなすように形成されているが、係合板30の内周面の形状は、凹部7に嵌合可能であれば、凹部7の底面と異なる形状であってもよい。
【0065】
上記第1および第2実施形態では、係合板30は、内筒部材10、110の後端に設けられているが、係合板30は、メスネジ21より後方であれば、内筒部材10、110の軸方向の途中に設けられていてもよい。
【0066】
上記第1および第2実施形態では、係合板30の外周端が、内筒本体10、110の外周面から突出しているが、例えば図10に示すように、係合板230の外周端が、内筒本体220の外周面から突出していなくてもよい。
【0067】
上記第1および第2実施形態では、外筒部材の内周面は、内筒部材の係合板の外周面に当接しているが、外筒部材と内筒部材との接触面は、軸方向に関してスリット11の形成範囲内であればよい。
例えば、図10に示すように、外筒部材240の内周面のほぼ全面が、内筒部材210との外周面と当接するようになっていてもよい。
また、例えば、内筒部材の外周面のうち、軸方向に関して係合板と異なる位置に、環状の突出部を設けて、この突出部の先端面を外筒部材の内周面と当接させてもよい。
【0068】
上記第1および第2記実施形態では、スリット11は、係合板30の内周面がなす六角形状の角部に相当する位置を通るように6本設けられているが、スリット11の数および配置位置は上記実施形態に限定されるものではない。スリット11は、軸方向から見て放射状に形成されていればよい。
【0069】
凸部23b、123bは設けなくてもよい。
【0070】
上記第1および第2実施形態では、接続具2、102を取り外す際に、係合突起42が凸部23a、123aに当たって止まることで、外筒部材40は内筒部材10、110から外れないようになっているが、外筒部材が内筒部材から外れるように構成されていてもよい。つまり、凸部23a、123aを設けなくてもよい。この場合、凸部23b、123bも設けなくてもよい。
【0071】
上記第1および第2実施形態では、外筒部材40が内筒部材10、110に装着された状態において、係合突起42と対向する凸部23c、123cが係合溝22、122に設けられているが、凸部23c、123cは設けなくてもよい。例えば、係合突起42と係合溝22の第3溝部22cの上下方向長さをほぼ同じにして、係合突起42を第3溝部22に嵌め込むようにしてもよい。これにより、凸部23cを設けなくても、接続具2を外れにくくできる。
【0072】
図10に示すように、軸方向に延びる係合溝222に凸部を設けない場合、外筒部材240の係合突起242の軸方向長さを、係合溝222の軸方向長さとほぼ同じにしてもよい。
【0073】
上記第1および第2実施形態では、係合溝22、122の数は2つであるが、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0074】
上記第1実施形態では、係合溝22は、軸方向に延びる第1溝部22aと、螺旋状に延びる第2溝部22bと、周方向に延びる第3溝部22cで構成されているが、周方向に延びる部分より前方の溝部の形状は、第1実施形態の形状に限定されない。例えば、係合溝は、軸方向に延びる部分と、その後端から周方向に延びる部分とだけで構成されていてもよい。また、例えば、係合溝は、螺旋状に延びる部分と、その後端から周方向に延びる部分とだけで構成されていてもよい。外筒部材が内筒部材に装着された状態において、係合溝の周方向に延びる部分には係合突起42が配置される。
【0075】
係合突起42および係合溝22、122は設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、101 シリンジ
2、102 接続具
3 シリンジ本体
4 胴部
5 口部
6 オスルアーテーパー
7 凹部
10、110、210 内筒部材
11 スリット
20、120、220 内筒本体
21 メスネジ
22、122、222 係合溝
22a 第1溝部
22b 第2溝部
22c 第3溝部
23a、23b、23c、123a、123b、123c 凸部
30 係合板
31 係合片
40、240 外筒部材
41 当接面
42、242 係合突起
43 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10