(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記織物の経方向に延在する経糸の質量M1を、前記織物の緯方向に延在する緯糸の質量M2で除した値(M1/M2)、またはその逆数(M2/M1)が、1.5〜5.0である請求項1〜4の何れか一項に記載の止水テープ。
防水性フィルムの一方の面に基布が積層され、前記防水性フィルムの他方の面に接着剤層が形成されている積層体を備える請求項1〜5の何れか一項に記載の止水テープを製造する方法であって、
単位面積当たりの質量が2g/m2〜10g/m2の織物を、樹脂Aによってドット状に目止した前記基布と、前記防水性フィルムの一方の面とを、熱可塑性樹脂Bとドット状の前記樹脂Aによって接着して積層する積層工程と、
前記防水性フィルムの他方の面に熱可塑性樹脂Cを塗布して前記接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
前記積層体を所望の幅に切断する切断工程と、を有する止水テープの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る止水テープの長手方向と交差する断面を拡大して示す概略断面図である。
図1に示す止水テープ10は、基布2と、防水透湿性フィルム3と、接着樹脂層4(接着剤層)とを有する積層体1を備えている。積層体1は、防水透湿性フィルム3の一方の面3aに基布2が積層され、防水透湿性フィルム3の他方の面3bに接着樹脂層4が形成されている。止水テープ10は、例えば、ウンドブレーカーやレインコートなどに使用され、衣料用基布11(
図4参照)の接合部分(例えば縫合線12)を覆うように配置され、接合部分をシールするテープ部材として使用可能なものである。
【0020】
基布2は、織物5が、樹脂A6によってドット状に目止めされたものである。止水テープ10の積層体1において、樹脂A6により、織物5の経糸51(
図2参照)及び/又は緯糸52がドット状に目止めされていると同時に、織物5と防水透湿性フィルム3がドット状に接着している。
【0021】
織物5と防水透湿性フィルム3とは、樹脂A6と熱可塑性樹脂B7とによって接着されている。
【0022】
また、接着樹脂層4は熱可塑性樹脂C8によって形成されている。熱可塑性樹脂C8は、止水テープ10が貼り合わされる衣料用基布11と防水透湿性フィルム3とを接着する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係る止水テープにおける基布を拡大して示す概略平面図である。基布2の織物5は、経糸51及び緯糸52からなり、単位面積当たりの質量が2g/m
2〜10g/m
2の薄物の織物である。このような織物5は質量が小さいので、軽量であると共に柔軟性に優れている。織物5は、単位面積当たりの質量が3g/m
2〜9g/m
2であることがより好ましく、単位面積当たりの質量が4g/m
2〜8g/m
2であることが更に好ましい。
【0024】
織物5は、単位面積当たりの質量が10g/m
2以下であれば、柔軟性(風合い)に優れており、軽量化が可能である。織物5は、単位面積当たりの質量が2g/m
2以上であれば、目曲りを抑制することができ、止水テープ10を衣料に用いた際、止水テープ10同士が重なり合う箇所があっても十分な接着性を確保することができる。
【0025】
織物5を構成する織り組織は、平織、綾織、朱子織などいずれの形態でもよいが、織物5の目曲がりの発生を防止する観点から、織物5は、平織であることが好ましい。
図2では、織り組織が平織である織物5を示している。なお、織物5は、樹脂A6によって経糸51及び/又は緯糸52が目止め処理されている。
【0026】
基布2の織物5の経糸51の番手及び緯糸52の番手は、5〜20dtexであることが好ましく、織物5の経糸51及び緯糸52の密度(K1、K2)は、それぞれ20〜150本/25.4mm(1インチ)であることが好ましい。また、経糸51の密度と緯糸52の密度の合計(K1+K2)は、110〜190本/25.4mm(1インチ)であることが好ましい。
【0027】
なお、単位面積当たりの質量が4g/m
2〜8g/m
2の範囲の織物5は、経糸51及び緯糸52によるカバーファクターは、400〜480にすることができ、十分に軽量化を図ることができ、柔軟性に富むと同時に、十分な接着力を確保し裏写し抑制を担保することができる。なお、裏写しとは、防水透湿性フィルムと織物を接着する際に織物側に樹脂Bがしみ出てくることをいう。なお、カバーファクターは、[経糸の番手(dtex)]
1/2×[経糸の密度(本/25.4mm)]+[緯糸の番手(dtex)]
1/2×[緯糸の密度(本/25.4mm)]で求めることができる。
【0028】
織物5は、経糸51の単位面積当たりの質量M1を、緯糸52の単位面積当たりの質量M2で除した値(質量比、M1/M2)、またはその逆数(質量比の逆数、M2/M1)が、1.5〜5.0であることが好ましい。質量比(M1/M2)又は質量比の逆数(M2/M1)が上記の範囲である織物5は、経糸の質量と緯糸の質量が同じ(M1=M2)織物に比較して、織物の質量が同じであれば、経糸と緯糸が交差する(経糸と緯糸が重なる)部分の面積が小さくなる。換言すれば、糸間の隙間面積を小さくすることができる。これにより、樹脂B7のしみ出しが抑制されるので、織物5と防水透湿性フィルム3との間の接着性を向上させることができる。
【0029】
なお、M1/M2が1.5〜5.0場合、織物5は、経糸の密度(単位長さ(幅)当たりの経糸の本数)K1を、緯糸の密度(単位長さ(幅)当たりの緯糸の本数)K2で除した値(密度比、K1/K2)は、2.0〜4.0であることが好ましい。なお、M2/M1が1.5〜5.0場合は、K2/K1が、2.0〜4.0であることが好ましい。
【0030】
M1/M2とK1/K2がこのような織物5を有する止水テープ10では、テープの膨らみを抑制しつつ薄物化ができるので、衣料用基布11に止水テープ10を貼り合せた際に、テープの形状が表地に影響すること(「基布アタリ」と呼ばれることもある)を抑制することができ、更に表地の風合いの点でも好ましい。
【0031】
ここで、織物5は、質量比(M1/M2)が、1.5〜5.0であることが好ましい。つまり、織物5は、経糸方向が緯糸方向より大きい(M1>M2)方が好ましい。
【0032】
さらに、織物5は、質量比(M1/M2)が、1.5〜5.0であり、且つ、密度比(K1/K2)が、2.0〜4.0であることが好ましい。すなわち、経糸及び緯糸の両方が同じ番手かほぼ同じ番手であり、且つ、経糸51の密度K1が緯糸52の密度K2より大きいほうが好ましい。この場合には、経糸51の密度K1が60〜140本/25.4mm(1インチ)、緯糸52の密度K2が30〜110本/25.4mm(1インチ)であることが好ましい。
【0033】
織物5は、高質量(M1>M2)であれば、止水テープ10の製造が完了するまでの工程において必要とされる経方向の強度を増すことができ、作業性を向上させることができる。また、このような織物5を備えた止水テープ10では、緯方向(縫製方向(縫合線12)と直交する方向)の柔軟性を確保することができるので、止水テープ10を衣料用基布11に貼り合せた際に、衣料の柔軟性の低下を小さくできる。この場合、経方向に高密度(K1>K2)であればより好ましい。
【0034】
織物5の経糸51及び緯糸52の材質としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどを使用することができる。
【0035】
次に、防水透湿性フィルム3について説明する。防水透湿性フィルム3としては、防水性及び透湿性を有するフィルムである。防水透湿性フィルム3は、例えば、表面からの雨水の浸入を防止可能にし、且つ水蒸気の透過を可能とするものである。
【0036】
防水透湿性フィルム3としては、親水性樹脂フィルムや疎水性樹脂からなる多孔質フィルムを使用することができる。親水性樹脂フィルムとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などを用いたものが挙げることができる。疎水性樹脂からなる多孔質フィルムとしては、含フッ素系樹脂、撥水処理したポリウレタン樹脂などを用いたものが挙げることができる。防水透湿性フィルム3としては含フッ素系樹脂からなる多孔質フィルムが好ましく、特に多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムが好ましい。
【0037】
織物5と防水透湿性フィルム3との層間で、樹脂A6の占有率Aは1%〜20%であることが好ましく、織物5と防水透湿性フィルム3との層間で、樹脂B7の占有率Bは5%〜60%であることが好ましい。ここでいう樹脂A6の占有率Aは、織物5の単位面積当たりの樹脂A6の面積割合である(占有率A=樹脂A6が占める面積/織物5の面積)。樹脂B7の占有率Bは、防水透湿性フィルム3の単位面積当たりの樹脂B7の面積割合である(占有率B=樹脂B6が占める面積/防水透湿性フィルム3の面積)。織物5と防水透湿性フィルム3との層間では、樹脂A6と樹脂B7が一部重なり合っていることがある。
【0038】
なお、占有率Aを防水透湿性フィルム3の単位面積当たりの樹脂A6の面積割合、占有率Bを織物5の単位面積当たりの樹脂B7の面積割合としても、同じであるが、上記のように定めたほうが占有率を確認しやすい。
【0039】
樹脂A6と樹脂B7の占有率が、この範囲であれば織物5と防水透湿性フィルム3の接着性に優れ、柔軟性や透湿性に優れた積層体1を備えた止水テープ10を得ることができる。
【0040】
また、防水透湿性フィルム3の他方の面では、熱可塑性樹脂である樹脂C8により接着剤層を形成している。樹脂C8の接着剤層は、10g/m
2〜300g/m
2であることが好ましく、20g/m
2〜200g/m
2であることが更に好ましい。
【0041】
なお、樹脂A6、樹脂B7、及び樹脂C8については、後述する本発明の実施形態に係る止水テープ10の製造方法についての説明の欄で説明する。
【0042】
次に、織物の経糸及び緯糸の質量(M1、M2)、番手、密度(打込本数、K1、K2)の測定、算出方法について説明する。止水テープ10における織物5の質量を測定することが実際上困難であるので、樹脂Aによる目止め処理前(当然に防水透湿性フィルム3に貼り合せる前)の織物5について質量を測定し、測定された質量を基に止水テープ10の織物5に関して質量を算出する。貼り合せる時に織物に張力をかけるので、貼り合せ後の質量は、貼り合せ前の質量より若干減少する(例えば1〜5%程度減少する)。
【0043】
経糸及び緯糸の番手の測定(tex)は、「JIS L 1013 8.3.1 繊度 (b)B法(簡便法)」に準拠し測定することができる。
【0044】
経糸及び緯糸の密度(D1、D2)の測定は、「JIS L 1096 8.6.1 密度」に準拠し測定することができる。なお、経糸、緯糸の区間はそれぞれ5cmとし、25.4mm(1インチ)当たりの糸本数で表す。
【0045】
織物の質量の測定は、「JIS L 1096 8.4.1 単位面積当たりの質量(正量)の測定方法」に準拠し測定することができる。経糸及び緯糸の質量(M1、M2)の測定では、織物の質量の測定に用いた試験片の経糸と緯糸を解し、経糸、緯糸のそれぞれの質量を測定する。
【0046】
防水透湿性フィルム3に織物5を貼り合せた積層体の織物5の質量の算出については、まず、糸密度として、止水テープ10の幅方向(緯方向)の区間当たりの糸本数を経糸の密度とし、経方向のこれと同じ区間当たりの密度を緯糸の密度とし、25.4mmあたりの本数で表す。次に、防水透湿性フィルムに貼り合わせる前の織物5の密度との比例計算を適用し、止水テープ10の織物5(防水透湿性フィルム3に織物5を貼り合せた後)についてそれぞれ経方向の経糸の質量、緯方向の緯糸の質量とする。
【0047】
次に本発明の実施形態に係る止水テープ10体の製造方法について説明する。
【0048】
図3は、本発明の実施形態に係る止水テープの製造方法を示す概略図である。
図3は、積層工程における加熱加圧処理を示す図である。このように、積層工程による加熱加圧処理を実行し、基布2と防水透湿性フィルム3を接着させている。
【0049】
積層工程の加熱加圧処理前の基布2は、織物5が樹脂(a)61(樹脂A)で目止め処理されている。樹脂(a)61は、未硬化若しくは半硬化の熱硬化性樹脂(a1)、又は熱可塑性樹脂(a2)である。なお、樹脂(a)61の融点は80℃〜160℃である。ここで、本発明において融点とは、DSCなどの熱分析で観測される吸熱ピークの最高温度としている。
【0050】
樹脂(a)61は、織物5の目止め処理の作業の効率性などの観点から、熱可塑性樹脂(a2)であることが好ましく、さらに織物5と防水透湿性フィルム3との接着性の観点から加熱により架橋する熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような樹脂として、架橋型アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0051】
基布2は、例えば、樹脂(a)61を含有する水系液を、スクリーン転写により織物5の表面にドット状に転写し、樹脂(a)61が変質しない程度の温度で加熱乾燥又は自然乾燥することにより、事前に目止め処理しておく。樹脂(a)61が転写される表面は、防水透湿性フィルム3と貼り合わされる側の表面である。基布2は、樹脂(a)61によって、基布2の織物5の経糸51及び緯糸52の動きが拘束され、防水透湿性フィルム3と貼りあわされる積層工程前及び積層工程中において基布2の目曲がりを防止することができる。
【0052】
なお、基布2の織物5の表面に微細粒子状(ドット状)に転写して付着した樹脂(a)61、及び、後述する防水透湿性フィルム3又は基布2に転写されて付着した樹脂(b)71の付着形状を、合わせてドットと記す。また、このドットの面積に相当する面積を有する円の直径を粒子径と記す。粒子径はマイクロスコープで撮影したドッドの画像から計測した面積から求めることができる。
【0053】
積層工程の加熱加圧処理の実行前においての樹脂A、即ち目止め処理に用いた樹脂(a)61のドットの粒子径は、0.1mm〜2.0mmであることが好ましく、0.15mm〜1.0mmであることがより好ましい。また、目止め処理に用いた樹脂(a)61の単位面積当たりのドットの個数は、基布2の1平方センチメートル当たり、60個〜400個であることが好ましく、100個〜300個であることがより好ましい。
【0054】
なお、織物5と防水透湿性フィルム3との間の樹脂A、即ち樹脂(a)61の質量は、0.5g/m
2〜10g/m
2であることが好ましい。
【0055】
樹脂(a)61のドットの個数、粒子径がこのような範囲であれば、確実に織物5の目止めをすることができ、しかも織物5と防水透湿性フィルム3の接着性も向上し、積層体1の柔軟性や透湿性とも両立することができる。
【0056】
積層工程では、基布2と防水透湿性フィルム3の少なくともいずれか一方に、樹脂(b)71を転写する。作業性の観点から防水透湿性フィルム3に樹脂(b)71を転写することが好ましい。
【0057】
樹脂(b)71の転写は、粉末又は溶融状態の樹脂(b)71をグラビア転写などで防水透湿性フィルム3にドット状に転写する。基布2と防水透湿性フィルム3との層間で、樹脂(b)71の単位面積あたりのドットの個数は、防水透湿性フィルム3の1平方センチメートル当たり、60個〜400個であることが好ましく、70個〜200個であることがより好ましい。
【0058】
防水透湿性フィルム3と織物5との間の樹脂B、即ち樹脂(b)71の質量は、5g/m
2〜60g/m
2であることが好ましい。
【0059】
また、積層工程の加熱加圧処理の実行前においての樹脂B7、即ち樹脂(b)71のドットの粒子径は、0.1mm〜2.0mmであることが好ましく、0.5mm〜1.5mmであることがより好ましい。樹脂(b)71のドットの個数、粒子径がこの範囲であれば、基布2と防水透湿性フィルム3の接着性と積層体1の柔軟性を両立することができる。
【0060】
なお、積層工程において、樹脂(b)71をドット状に転写しなくてもよい。即ち積層工程において、基布2と防水透湿性フィルム3の少なくともいずれか一方に、樹脂(b)71を全面にわたり転写してもよい。また、基布2と防水透湿性フィルム3の少なくともいずれか一方に、樹脂(b)を塗布してもよい。
【0061】
樹脂(b)71は、通常、アクリル系、ウレタン系などのホットメルト接着剤として用いられる熱可塑性樹脂である。樹脂(b)71は吸湿又は加熱により一部架橋する熱可塑性樹脂であってもよい。
【0062】
樹脂(b)71の融点は、60℃〜150℃であることが好ましく、70℃〜140℃であることがより好ましい。
【0063】
さらに、樹脂(b)71の融点は、織物5の目止め処理に用いた樹脂(a)61の融点より5℃〜40℃低いことが好ましい。
【0064】
樹脂(a)61と樹脂(b)71の融点の差が5℃以下である場合には、積層工程において目曲がりの発生を十分防止することができなくなることがある。樹脂(a)61と樹脂(b)71の融点の差が40℃を超過する場合には、樹脂A6による基布2と防水透湿性フィルム3との接着力が低下することがある。
【0065】
積層工程において、基布2及び/又は防水透湿性フィルム3に樹脂(b)71を転写した後、基布2と防水透湿性フィルム3は加熱加圧処理される。加熱加圧処理はローラープレス型のプレス機9などで実行される。
【0066】
加熱加圧処理条件は、樹脂(a)61と樹脂(b)71の種類にもよるが、一般的には80℃〜120℃で加熱することが好ましい。加熱加圧処理において加圧する圧力は、0.01MPa〜2.0MPaであることが好ましい。この加熱加圧処理により、樹脂(a)61が未硬化又は半硬化の熱硬化性樹脂(a1)であれば熱硬化が進行し、熱可塑性樹脂(a2)であれば場合によって架橋し、樹脂A6として基布2の経糸と緯糸の少なくとも一方を目止めしたまま、同時に織物5と防水透湿性フィルム3を接着する。さらに、この加熱加圧処理により、樹脂(b)71が溶融し、樹脂B7として織物5と防水透湿性フィルム3を接着する。
【0067】
ここで、樹脂(a)61の融点が樹脂(b)71の融点より高ければ、樹脂(b)71が溶融した温度でも樹脂(a)61により十分に基布2の経糸及び/又は緯糸を目止めしているので、積層工程において織物5の目曲がりの発生を十分に抑制できる。さらに、樹脂(a)61の融点が樹脂(b)71の融点より5〜40℃高ければ、樹脂Aによる基布2と防水透湿性フィルム3との接着力を向上させることができる。
【0068】
接着剤層形成工程において、防水透湿性フィルム3に、樹脂(c)81を塗布する。接着樹脂層4の樹脂Cの質量は、10g/m
2〜300g/m
2であることが好ましく、20g/m
2〜200g/m
2であることがより好ましい。また、樹脂Cは樹脂Bより質量が大きくなるように樹脂(c)81を塗布することが好ましい。樹脂C樹脂(c)の塗布方法としては、ナイフコーターによるラミネーティングなどがある。
【0069】
樹脂(c)81は、通常、アクリル系、ウレタン系などのホットメルト接着剤として用いられる熱可塑性樹脂である。
【0070】
樹脂(c)としては、止水テープ10を衣料用基布11(繊維製品)の継目や縫目などの接合部に生じた隙間を充填可能なものであればよい。熱風、超音波、高周波などを用いて、樹脂(c)を加熱溶融して接着力を発現するホットメルト接着剤が、止水テープ10を貼り合せる際の取扱い性が良好であり好適である。
【0071】
また、加熱加圧処理前の樹脂(c)81の融点は60℃〜150℃であることが好ましく、70℃〜140℃であることがより好ましい。さらに織物5の目止め処理に用いた樹脂(a)61の融点より5℃〜40℃低いことが好ましい。
【0072】
樹脂(c)は、樹脂(b)と同一の樹脂組成でも異なった樹脂組成でもよいが、樹脂(b)と異なっており、樹脂(c)の融点は、樹脂(b)の融点よりも低いことが好ましい。樹脂(b)と樹脂(c)を比較すると、樹脂(b)の量が少ないので、織物5と防水透湿性フィルム3を貼り合せる際でも樹脂(b)のしみ出しが発生するなどの問題が発生するおそれがない。すなわち、止水テープ10を衣料用基布11に接着させる(後述する接着工程)際に樹脂(b)が溶融しないできれいに接着させることや、作業上の安定性を考慮すると、接着工程においては、樹脂Cは樹脂Bより融点が5℃〜40℃低いことが好ましい。
【0073】
なお、樹脂(b)が、吸湿又は加熱により一部架橋する熱可塑性樹脂であれば、樹脂(b)の融点が樹脂(c)の融点と同じか若干低くても、積層工程以降で樹脂(b)は架橋が進行しているので、止水テープ10を衣料用基布11に接着させる際に樹脂(b)が溶融しないので、きれいに接着することができる。
【0074】
接着剤層形成工程の後、切断工程を実行する。切断工程では、公知の方法で積層体1を所望の幅に切断する。止水テープ10の幅は、例えば5mm〜30mm程度である。このようにして、止水テープ10を得ることができる。
【0075】
次に、止水テープ10の接着について説明する。止水テープ10は、例えば衣料用基布11同士の継目12を覆うように接着される。例えば、プレス機やアイロンなどを用いて加熱加圧処理を実行することで、衣料用基布11に対して、止水テープ10を接着することができる。これにより、止水テープ10の防水透湿性フィルム3の他方の面3bと他の生地を接着する(接着工程)。
【0076】
この接着工程での加熱加圧処理条件は、樹脂(c)81の種類にもよるが、ホットエアシーラー(例えば、クインライト社 LHA―101)により熱風(600〜800℃程度)で樹脂を溶解させ、付属するローラーにより圧着するのが望ましい。この加熱加圧処理により、樹脂(c)81が溶融し、場合によっては溶融後一部架橋し、樹脂C8として衣料用基布11と防水透湿性フィルム3を接着する。
【0077】
接着工程の加熱加圧処理の条件は、積層工程の加熱加圧処理条件と同一でも異なっていてもよい。
【0078】
なお、積層工程において基布2を目止め処理している樹脂(a)61の粒子径は、積層工程程及び接着工程における加熱加圧処理の実行後においてもさほど変化せず、0〜5%程度大きくなるだけである。また、積層工程において防水透湿性フィルム3に転写される樹脂(b)71の粒子径は、積層工程及び接着工程の加熱加圧処理の実行後において、0〜50%程度大きくなる。
【0079】
本実施形態の止水テープ10によれば、単位面積当たりの質量が2g/m
2〜10g/m
2の織物5が、樹脂A6によって目止めされているので、織物5の目曲りの発生を抑制することができる。止水テープ10は、織物5を目止めしている樹脂A6と、それとは別の熱可塑性樹脂B7とによって織物5と防水透湿性フィルム3とが、接着されているので、織物5と防水透湿性フィルム3との間の接着力が向上されている。
【0080】
本実施形態の止水テープを製造する方法によれば、樹脂Aによって目止め処理された織物5を、防水透湿性フィルム3に接着して積層する積層工程を実行するので、止水テープ10の製造時において織物5の目曲りの発生を抑制することができる。例えば、薄物の織物5を採用しても、織物5と防水透湿性フィルム3との接着力は、十分に確保されている。
【0081】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば
図3において、樹脂(b)71は防水透湿性フィルム3に転写しているが、基布2に転写してもよい。また、積層工程と接着剤層形成工程の加熱加圧処理を同時に実行してもよい。また、接着剤形成工程の前に切断工程を実行してもよい。また、樹脂Cによる接着剤層は、防水性や接着性の機能が低下しない範囲であれば、防水透湿性フィルムの片面に全面にわたって形成されていなくてもよい。
【0082】
図5は、本発明の第2実施形態に係る積層体を拡大して示す概略断面図である。
図1に示す積層体1では、樹脂A6に加え、樹脂B7が基布2と防水透湿性フィルム3との間でドット状に接着していることを示しているが、織物5と防水透湿性フィルム3との間で樹脂B7からなる接着層が全面にわたり形成されている積層体1でもよく(
図5参照)、ほとんど全面にわたり接着層が形成されているものでもよい。すなわち、占有率Bが60%〜100%であってもよい。この場合、樹脂B7の質量は、10g/m
2〜60g/m
2であることが好ましい。
【0083】
本発明の実施形態に係る止水テープは、例えば、レインコート、ウインドブレーカー、スポーツ用衣類、雨具、テント、寝袋、鞄などの生地に接着して使用することができる。止水テープを生地の継ぎ目を覆うように接着することで、継目からの雨水の浸入を防止することができる。
【0084】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0085】
[実施例1]
(織物)
公称(12dtex 12f)(フィラメント数12本、番手12dtex)のポリエステル繊維糸を経糸及び緯糸として平織り組織で製織した織物を、水酸化ナトリウム液に浸漬して減量化処理(減量化率約35%)し、実施例1の織物とした。減量化処理で得られた織物は、経糸本数101本/25.4mmで、緯糸本数66本/25.4mmで、経糸番手は7.9dtexで緯糸番手は7.8dtexであった。
【0086】
(織物の目止め処理、実施例共通)
この織物に融点110℃のアクリル樹脂を樹脂(a)とする水系液をスクリーン転写し、自然乾燥し、目止め処理した。アクリル樹脂のドットの個数は、250個/cm
2であり、平均粒子径は0.2mmであった。なお、樹脂(a)の質量は2g/m
2であった。
【0087】
(防水性フィルム、実施例、比較例共通)
厚さ50μmの透湿性を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを防水性フィルムとした。
【0088】
(積層工程、実施例1−5、7、8、比較例1、2共通、実施例6を除く)
防水性フィルムに吸湿により架橋する溶融状態のウレタン系ホットメルト接着剤(融点90℃)を樹脂(b)としてグラビア転写した。
【0089】
樹脂(b)のドットの個数は、100個/cm
2であり、平均粒子径は0.7mmであった。また、樹脂(b)の質量は、30g/m
2であった。
【0090】
樹脂(b)が間に挟まれるように、また、目止め処理した面を防水性フィルム側にして目止め処理した基布の織物と防水性フィルムを110℃、0.02MPaで加熱加圧処理し、両者を接着し、2層の積層体を得た。
【0091】
(接着剤層形成工程、実施例、比較例共通)
防水性フィルムの他方の面に溶融状態のウレタン系ホットメルト接着剤(融点80℃)を樹脂(c)として、防水性フィルムの片面に全面にわたり40g/m
2になるように塗布した。これにより、片面に接着剤層を有する2層の積層体1を得た。
【0092】
(切断工程、実施例、比較例共通)
積層体1を経糸方向に沿って幅(経糸と交差する方向の長さ)1.5cmとして切断し止水テープ10を得た。
【0093】
(衣料用基布、実施例、比較例共通)
衣料用基布11は、止水テープ10が接着される生地である。防水性フィルムの両面に樹脂(b)を30g/m
2塗布し、ポリエステル繊維製平織り組織布地(質量60g/m
2)を、防水性フィルムの両面に貼り合せた布地を2枚用意し、一部重ね合わせて2枚の布地を縫製し、衣料用基布を得た。
【0094】
(接着工程、実施例、比較例共通)
衣料用基布の縫製箇所の一方面に、実施例、比較例のそれぞれの止水テープを、ホットエアシーラーで貼り付けた。
【0095】
[実施例2]
公称(12dtex 12f)(フィラメント数12本、番手12dtex)のポリエステル繊維糸を経糸及び緯糸として平織り組織で製織した織物を、水酸化ナトリウム液に浸漬して減量化処理(減量化率約10%)し、実施例2の織物とした。減量化処理で得られた織物は、経糸本数98本/25.4mmで、緯糸本数42本/25.4mmで、経糸番手は10.6dtexで緯糸番手は10.8dtexであった。その他(織物の目止め処理、防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0096】
[実施例3]
公称(12dtex 12f)(フィラメント数12本、番手12dtex)のポリエステル繊維糸を経糸及び緯糸として平織り組織で製織した織物を、水酸化ナトリウム液に浸漬して減量化処理(減量化率約10%)し、実施例3の織物とした。減量化処理で得られた織物は、経糸本数100本/25.4mmで、緯糸本数46本/25.4mmで、経糸番手は10.7dtexで緯糸番手は10.8dtexであった。その他(織物の目止め処理、防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0097】
[実施例4]
公称(7.8dtex 12f)(フィラメント数12本、番手7.8dtex)のポリエステル繊維糸を経糸及び緯糸として平織り組織で製織した織物を、減量化処理をしないで、実施例4の織物とした。得られた織物は、経糸本数99本/25.4mmで、緯糸本数61本/25.4mmで、経糸番手及び緯糸番手は7.8dtexであった。その他(織物の目止め処理、防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0098】
[実施例5]
公称(12dtex 12f)(フィラメント数12本、番手12dtex)のポリエステル繊維糸を経糸及び緯糸として平織り組織で製織した織物を、減量化処理をしないで、実施例5の織物とした。得られた織物は、経糸本数98本/25.4mmで、緯糸本数42本/25.4mmで、経糸番手は12.3dtexで緯糸番手は12.5dtexであった。その他(織物の目止め処理、防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0099】
[実施例6]
実施例1と同じ織物を、実施例6の織物とした。減量化処理で得られた織物は、実施例1と同じであり、経糸本数101本/25.4mmで、緯糸本数66本/25.4mmで、経糸番手は7.9dtexで緯糸番手は7.8dtexであった。
【0100】
(積層工程、実施例6)
防水性フィルムに、実施例1と同じ溶融状態のウレタン系ホットメルト接着剤(融点80℃)を樹脂(b)として、防水性フィルムの片面に全面にわたり塗布した。
【0101】
樹脂(b)の質量は、40g/m
2であった。
【0102】
樹脂(b)が間に挟まれるように、また、目止め処理した面を防水性フィルム側にして目止め処理した基布の織物と防水性フィルムを110℃、0.02MPaで加熱加圧処理し、両者を接着し、2層の積層体を得た。
【0103】
その他(織物の目止め処理、防水性フィルム、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0104】
[実施例7]
公称(12dtex 12f)(フィラメント数12本、番手12dtex)のポリエステル繊維糸を経糸及び緯糸として平織り組織で製織した織物を、水酸化ナトリウム液に浸漬して減量化処理(減量化率約35%)し、実施例7の織物とした。減量化処理で得られた織物は、経糸本数80本/25.4mmで、緯糸本数80本/25.4mmで、経糸番手は7.8dtexで緯糸番手は7.9dtexであった。その他(織物の目止め処理、防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0105】
[実施例8]
公称(12dtex 12f)(フィラメント数12本、番手12dtex)のポリエステル繊維糸を経糸及び緯糸として平織り組織で製織した織物を、水酸化ナトリウム液に浸漬して減量化処理(減量化率約10%)し、実施例8の織物とした。減量化処理で得られた織物は、経糸本数70本/25.4mmで、緯糸本数70本/25.4mmで、経糸番手は10.9dtexで緯糸番手は10.9dtexであった。その他(織物の目止め処理、防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0106】
[比較例1]
実施例1と同じ織物を、比較例1の織物とした。比較例1では、織物の目止め処理は実行しなかった。その他(防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1と同様である。
【0107】
[比較例2]
実施例5と同じ織物を、比較例2の織物とした。比較例2では、織物の目止め処理は実行しなかった。その他(防水性フィルム、積層工程、接着剤層形成工程、切断工程、衣料用基布、接着工程)は実施例1(実施例5)と同様である。
【0108】
(外観評価)
実施例1−8、及び比較例1、2について、外観評価を実施した。外観の評価では、止水テープを織物側から目視で観察し、織物の目曲りを観察した。外観評価の結果について、「全く問題ない場合」を「A」とし、「実用上問題になる程度ではないが、目曲りの発生が認められる場合」を「B」とし、「実用上問題になる程度の目曲りの発生が認められる場合」を「C」とした。外観評価の結果を
図6に示した。実施例1−8については、外観評価の結果は、全て「A」だった。比較例1は、「C」であり、比較例2は、「B」または「C」だった。
【0109】
(風合い評価)
実施例1−8、及び比較例1、2について、風合い評価を実施した。風合いの評価では、止水テープを衣料用基布に貼り合せた後の衣料用基布の縫製部分の柔軟性を判定した。風合い評価の結果について、「実用上薄物の防水性の衣料として全く問題ない場合」を「A」とし、「実情上問題にはならない程度であるが、さらなる柔軟性が求められる程度の柔軟性である場合」を「B」とし、「薄物防水性衣料として実用上問題になる程度の硬さがある場合(柔軟性に劣る場合)」を「C」とした。風合い評価の結果を
図6に示した。実施例1−4については、外観評価の結果は、「A」だった。実施例5−8及び比較例2は、「B」であり、比較例1は、「A」または「B」だった。比較例1では織物の目曲がりが目立っていたため、風合いの評価でも実施例1に比較して悪化したと考えられる。
【0110】
(接着性の評価)
止水テープにおける織物と防水性フィルムとの接着性、及び止水テープと衣料用基布との接着性は、各実施例、比較例とも実用上問題にならない程度であった。ただし、比較例1は実施例1に対して、比較例2は実施例5に対して、若干劣っていた。
【0111】
なお、実施例1−8、比較例2において、積層工程後の加熱加圧処理後は樹脂(a)の融点が正確に測定できなくなり、樹脂(a)が一部架橋していることが確認できた。また、樹脂(b)として用いたウレタン系ホットメルト接着剤は、積層体作製直後では融点は大きな変化はなかったが、1週間経過後では融点は正確に測定できず、架橋していることが確認できた。これは樹脂(b)が吸湿により架橋するタイプのウレタン系ホットメルト接着剤であったためと考えられる。