(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900219
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】電極の製造方法及び蓄電装置並びに二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20160324BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20160324BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20160324BHJP
H01G 11/22 20130101ALI20160324BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20160324BHJP
H01G 11/66 20130101ALI20160324BHJP
H01M 4/139 20100101ALN20160324BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/66 A
H01M4/70 Z
H01G11/22
H01G9/24 Z
H01G11/66
!H01M4/139
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-165891(P2012-165891)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-26816(P2014-26816A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 圭一
(72)【発明者】
【氏名】篠田 英明
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−073947(JP,A)
【文献】
特開平09−099269(JP,A)
【文献】
特開2001−327906(JP,A)
【文献】
特開2007−329050(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0015162(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0321945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/84
H01G 9/00、11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔の両面の対向する位置に活物質層を間欠的に形成する電極の製造方法であって、
両面にカーボンコート層を有する前記金属箔を使用し、前記金属箔の片面に活物質を含むスラリーを塗布して活物質層を間欠的に形成した状態で、他面に対して活物質を含むスラリーを塗布する際に、前記片面に間欠的に形成された各活物質層に対応して位置する印をセンサにより検出し、その位置を基準に前記片面に形成された活物質層の端部の位置を決め、前記他面に間欠的に塗布する前記スラリーの塗布位置を前記活物質層毎に決めて前記スラリーの塗布を行うことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記印は、前記金属箔の長手方向に延びる線状に形成されている請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記印は、前記金属箔の長手方向において間欠的に形成された前記活物質層の間及び隣り合う活物質層と反対側に位置する請求項1又は請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記印は、前記カーボンコート層にスリットとして形成されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記スリットは、前記金属箔に前記カーボンコート層を形成する際、カーボン塗布用の塗布器の吐出口の一部を板で覆った状態でカーボンの塗布を行うことにより形成される請求項4に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記活物質層が間欠的に形成された前記帯状の金属箔を、所定方向にタブが突出するように個々の電極に切り離す電極切り離し工程を備えている請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法及び蓄電装置並びに二次電池に係り、詳しくは金属箔に活物質層を有する電極の製造方法及びその製造方法で製造された電極を使用した電極組立体を備えた蓄電装置並びに二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。二次電池として、正極用のシート状の電極及び負極用のシート状の電極が、間にセパレータが介在する状態で積層された積層型の電極組立体を備えたものがある。また、帯状の正極及び帯状の負極が、間に帯状のセパレータが存在する状態で巻回された巻回型の電極組立体を備えたものもある。
【0003】
シート状の電極あるいは帯状の電極を形成する場合、一般に、長尺の帯状の金属箔上に活物質を含むスラリーを間欠的に塗布して活物質層を形成した後、ロールプレス等の処理を行い、その後、帯状の金属箔から目的とする電極を切断することにより電極が製造される。
【0004】
金属箔としてアルミ箔を使用する場合、活物質を含むスラリーあるいはペーストがアルミ箔を腐食するのを防止するために金属箔にカーボンコート層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、活物質と結着剤とからなる活物質塗工膜を、端子取り付け部を除いて集電体(金属箔)上に形成してなる非水電解液二次電池用電極板において、端子取り付け部の付近に、活物質塗工膜と同質の材料からなる識別記号が形成されている非水電解液二次電池用電極板が提案されている(特許文献2参照)。識別記号として、工程管理マーク、裁断用マーク、位置合わせ用マーク、製造ロット番号、バーコード等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−9276号公報
【特許文献2】特開平10−64525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
帯状の金属箔上に活物質を含むスラリーを間欠的に塗布して活物質層を形成すると、活物質層の周縁端部が厚くなるという問題がある。この原因としてスラリーの表面張力が考えられる。その対策として、予めカーボンコート層が設けられた金属箔上にスラリーを塗布すれば、スラリーには活物質とともにアセチレンブラック、黒鉛等のカーボン系導電材の粉末が含まれているため、スラリーの濡れ性が向上し、活物質層端部の盛り上がりが軽減されると考えられる。活物質層は金属箔の両面の対向する位置に正確に形成する必要があり、一方の面に活物質層が形成された金属箔に対して、他方の面にスラリーを塗布する場合は、一方の面に形成された活物質層の端部の位置をセンサで検出して、その情報に基づいて塗布位置が正確に対向するようにスラリーの塗布を制御している。しかし、カーボンコート層の色と、活物質層の色が非常に良く似ているため、間欠塗布を行う際に、センサで活物質層の端部の位置を直接検出することが難しいという問題がある。
【0008】
特許文献2には、金属箔上に活物質塗工膜と同質の材料からなる識別記号を設けることと、識別記号の一つとして位置合わせ用マークが挙げられている。しかし、位置合わせに関する記載は特になく、本願発明で問題としていることに関する記載もない。
【0009】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、帯状の金属箔上に活物質層を間欠的に形成しても活物質層の端部における厚さむらを防止することができ、金属箔の両面の対向する位置に精度良く活物質層を形成することができる電極の製造方法を提供することにある。また、他の目的はその製造方法で製造された電極を使用した電極組立体を備えた蓄電装置及び二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、帯状の金属箔の両面の対向する位置に活物質層を間欠的に形成する電極の製造方法である。そして、両面にカーボンコート層を有する前記金属箔を使用し、前記金属箔の片面に活物質を含むスラリーを塗布して活物質層を間欠的に形成した後、他面に対して活物質を含むスラリーを塗布する際に、前記片面に間欠的に形成された各活物質層に対応して位置する印をセンサにより検出し、その位置を基準に前記片面に形成された活物質層の端部の位置を決め、前記他面に間欠的に塗布する前記スラリーの塗布位置を前記活物質層毎に決めて前記スラリーの塗布を行う。ここで、「各活物質層に対応して位置する印」とは、一つの活物質層に対して一つずつ存在する印に限らず、複数の活物質層に対して一つの印が存在する場合も含む。
【0011】
この発明では、両面にカーボンコート層を有する帯状の金属箔に活物質を含むスラリーが塗布されて活物質層が間欠的に形成される。カーボンコート層を有さない金属箔上に活物質層を形成した場合は、活物質層の周縁端部の厚さが厚くなる。しかし、カーボンコート層上に活物質を含むスラリーが塗布される場合は、スラリーは一般にカーボン系導電材の粉末が含まれているため、金属箔に比べてカーボンコート層に対するスラリーの濡れ性が向上し、活物質層端部の盛り上がりが軽減されて活物質層は平坦になる。また、一方の面に活物質層が形成された金属箔に対して、他方の面にスラリーを塗布する場合は、一方の面に形成された活物質層の端部の位置をセンサで検出して、その情報に基づいて他方の面の塗布位置が一方の面の活物質層と正確に対向するようにスラリーの塗布を制御する。センサは、各活物質層に対応して位置する印を検出して、その位置を基準に片面に形成された活物質層の端部の位置を決めるため、カーボンコート層の色と非常に良く似ている活物質層の端部の位置を直接検出する場合と異なり、活物質層の端部の位置を正確に確認することができる。したがって、帯状の金属箔上に活物質層を間欠的に形成しても活物質層の端部における厚さむらを防止することができ、金属箔の両面の対向する位置に精度良く活物質層を形成することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記印は、前記金属箔の長手方向に延びる線状に形成されている。センサは、帯状の金属箔の片面に形成された印を検出する。印は各活物質層に対応して設けられているため、金属箔の長手方向に沿って間欠的に形成される。したがって、印が金属箔の長手方向に延びる線状に形成されている場合は、印が金属箔の長手方向と直交する方向に延びる線状の場合や、面積の小さな形状の場合に比べて、センサは印の端部を精度良く確認し易くなり、印の位置から対向する活物質層の位置を精度良く決めることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記印は、前記金属箔の長手方向において間欠的に形成された前記活物質層の間及び隣り合う活物質層と反対側に位置する。この発明では、他面に活物質層を塗布する際に、他面に形成すべき活物質層の位置が塗布装置と対向する前に、片面に形成された各活物質層に一対一で対応する印を検出することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記印は、前記カーボンコート層にスリットとして形成されている。この発明では、印をスリットとしているため、カーボンコート層はスリットの部分に存在せず、金属箔をセンサで検出することが可能になり、良好な印として機能する。スリットは、例えば、カーボン層を形成する際に、一部にカーボンコート層を設けないようにすることで、カーボンコート層の形成時に同時に形成したり、カーボンコート層の形成後に、カーボンコート層の一部を削除したりすることで形成される。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記スリットは、前記金属箔に前記カーボンコート層を形成する際、カーボン塗布用の塗布器の吐出口の一部を板で覆った状態でカーボンの塗布を行うことにより形成される。この発明では、カーボン塗布用の塗布器の吐出口の一部を板で覆うという簡単な改造で、金属箔に形成されるカーボンコート層に、金属箔の長手方向に延びるスリットを簡単に形成することができる。なお、スリットは活物質層が形成される領域にも形成されるが、スリットが存在するカーボンコート層上にスラリーが塗布されても、活物質層は支障なく形成される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記活物質層が間欠的に形成された前記帯状の金属箔を、所定方向にタブが突出するように個々の電極に切り離す電極切り離し工程を備えている。積層型の電極組立体を構成する電極として、活物質層とタブとを有する積層単位毎の電極と、活物質層とタブとを有する組がつづら折り状に形成された電極とがあるが、この実施形態では、活物質層とタブとを有する積層単位毎の電極が、活物質層が間欠的に形成された帯状の金属箔から個々の電極に切り離して形成される。したがって、個々の電極の大きさに対応した金属箔に、それぞれ活物質の塗布を行って電極を形成する場合に比べて、効率良く電極を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明によれば、帯状の金属箔上に活物質層を間欠的に形成しても活物質層の端部における厚さむらを防止することができ、金属箔の両面の対向する位置に精度良く活物質層を形成することができる電極の製造方法を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】電極の製造手順を示し、(a)はカーボンコートされた金属箔の模式部分平面図、(b)は活物質層が片面に間欠的に形成された金属箔の模式平面図、(c)は(b)の模式側面図、(d)は(b)のスリットの部分で切断した拡大模式断面図。
【
図2】(a)は金属箔に対するカーボンコート工程の模式側面図、(b)はカーボン塗布用の塗布器の模式正面図。
【
図4】金属箔の裏面への活物質の塗布状態を示す模式側面図。
【
図5】(a)は活物質層が両面に形成された帯状の金属箔の模式側面図、(b)は帯状の電極中間体から切り離される個々の電極の形状を示す模式平面図。
【
図7】別の実施形態のカーボンコートされた金属箔の模式部分平面図。
【
図8】別の実施形態の電極中間体から切り離される電極の形状を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図6にしたがって説明する。
先ず、蓄電装置としての二次電池の積層型の電極組立体に使用される電極の製造方法について説明する。
【0022】
正極用の電極と負極用の電極とは金属箔の材料や活物質の材料が異なるが、電極の製造工程は基本的に同じである。正極用の電極の金属箔としては、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金が使用され、負極用の電極の金属箔としては、例えば、銅箔が使用される。
【0023】
この実施形態の製造方法は、一般に使用される帯状の金属箔ではなく、帯状の金属箔の両面にカーボンコート層を有する金属箔上に活物質層が形成される。そのため、先ず、カーボンコート層形成工程において、
図1(a)に示すように、帯状の金属箔11上に所定幅でカーボンコート層12が形成される。カーボンコート層12は金属箔11の両面に形成されるが、片面に形成されるカーボンコート層12には、
図1(a)に示すように、略中央にスリット13が金属箔11の長手方向に沿って延びるように形成される。
【0024】
カーボンコート層形成工程では、
図2(a)に示すように、押出型の塗布器14を用いて、カーボン粒子を含むカーボンペーストの塗布を行う。
図2(b)に示すように、塗布器14は幅広の吐出口14aを有し、吐出口14aの一部を板15で覆うことが可能に構成されている。そして、スリット13を有するカーボンコート層12を形成する際は、吐出口14aの一部を板15で覆った状態でカーボンペーストの塗布が行われ、吐出口14aから押し出されたカーボンペーストは金属箔11上にスリット13を有する状態で塗布される。金属箔11は、塗布器14と対応して配置されたガイドロール16に案内されて、塗布器14の吐出口14aと対向する位置を通過する間にカーボンペーストが塗布される。また、スリット13を有さないカーボンコート層12を形成する際は、吐出口14aの一部を覆った板15を取り外した状態でカーボンペーストの塗布が行われる。
【0025】
活物質塗布工程では、
図3に示すように、ローラ式塗布装置50により、コーティングロール(転写ロール)51を用いて活物質を含むスラリーSのドラフトを行う。詳述すると、活物質を含むスラリーSを供給するスラリー供給部52及びコンマロール53がコーティングロール51の上側に配置されており、コーティングロール51の側方近傍にはバックロール54が配設されている。コーティングロール51及びバックロール54は同方向(
図3の時計方向)へ回転されるようになっている。バックロール54は表面がラバーで被覆されている。そして、コーティングロール51の回転によりスラリーSが所定の厚さでコーティングロール51の表面に付着されて、バックロール54と対向する位置へ移送される。また、バックロール54の回転により、帯状の金属箔11がコーティングロール51側へ押圧された状態でバックロール54との対向位置を下側から上側へ通過した後、移動方向を変更して図示しないガイドローラに案内されて図示しない巻き取りロールに巻き取られるようになっている。帯状の金属箔11がコーティングロール51とバックロール54との対向位置を通過する間に、活物質を含むスラリーSが金属箔11上の所定位置に塗布される。なお、
図3ではカーボンコート層12の図示を省略している。
【0026】
その結果、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、金属箔11の片面においてカーボンコート層12上に間欠的に活物質層17が形成される。
図1(b)に示すように、スリット13の一部は活物質層17に覆われるが、隣り合う活物質層17の間及び隣り合う活物質層17と反対側に、金属箔11の長手方向に沿って延びる線状の印18として残る。また、
図1(d)に示すように、各活物質層17は一部がスリット13内に進入した状態で形成されるが、表面は平坦に形成される。
【0027】
そして、片面に活物質層17が間欠的に形成された金属箔11は、他面に対するスラリーSの塗布が、片面に形成された活物質層17と対向する位置に間欠的に行われる。このとき、
図4に示すように、片面に形成された活物質層17がバックロール54と係合する状態で金属箔11が他面に対して活物質を含むスラリーSを塗布する際に、片面に間欠的に形成された各活物質層17に対応して位置する印18をセンサ19により検出する。そして、検出した印18の位置を基準に片面に形成された活物質層17の端部の位置を決め、他面に間欠的に塗布するスラリーSの塗布位置を活物質層17毎に決めてスラリーSの塗布を行う。具体的には、図示しない制御装置がセンサ19の検出信号を入力して、バックロール54の回転速度及びコーティングロール51の回転速度を制御して、金属箔11の他面の、片面に形成された活物質層17と対向する位置にスラリーSが塗布されて、活物質層17が形成される。なお、
図4ではカーボンコート層12の図示を省略するとともに、図示の都合上、隣り合う活物質層17の間隔を拡げた状態で図示している。
【0028】
その結果、
図5(a)に示すように、両面の対向する位置に活物質層17が間欠的に精度良く形成された金属箔11が、帯状の電極中間体として得られる。両面に活物質層17が間欠的に形成された金属箔11は、必要に応じて活物質層17の高密度化を行うためのロールプレスを行った後、電極切り離し工程で個々の電極に切り離される。
【0029】
電極切り離し工程では、
図5(b)に示すように、個々の電極20は、タブ21が活物質層17の一辺から突出する形状となるように、例えば、打ち抜きにより形成される。なお、個々の電極20を切り離す前に、帯状の金属箔11のカーボンコート層12が形成されていない幅方向の両側部分の切断除去を行ってもよい。
【0030】
前記のようにして製造された正極用の電極及び負極用の電極は、両者の間にセパレータが介在する状態で積層されて電極組立体を構成する。そして、
図6に示すように、電極組立体31は、電解液32と共にケース33に収容されて蓄電装置としての二次電池34が構成される。電極組立体31は、正極用のタブ21の積層体21pが正極用の導電部材22を介して正極端子23に電気的に接続されており、負極用のタブ21の積層体21nが負極用の導電部材24を介して負極端子25に電気的に接続されている。積層体21pは導電部材22に溶接され、積層体21nは導電部材24に溶接されている。なお、正極端子23及び負極端子25は、ケース33と電気的に絶縁されている。
【0031】
次に前記のように構成された二次電池34の作用を説明する。
二次電池34は、単体でも使用されるが、一般には複数の二次電池34が直列あるいは並列に接続されて構成された組電池として使用される。そして、二次電池34は種々の用途に使用されるが、例えば、車両に搭載されて走行用モータの電源や他の電気機器の電源としても使用される。
【0032】
電極組立体31を構成する電極20は、活物質層17が金属箔11上に形成されたカーボンコート層12上に形成されている。そのため、活物質層17を形成するために塗布するスラリーSがアルカリ性であっても金属箔11の耐蝕性が向上する。
【0033】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)帯状の金属箔11の両面の対向する位置に活物質層17を間欠的に形成する電極の製造方法において、両面にカーボンコート層12を有する帯状の金属箔11を使用する。そのため、スラリーSの塗布面に対する濡れ性が向上し、活物質層17の端部の盛り上がりが軽減されて活物質層17は平坦になる。
【0034】
(2)金属箔11の片面に活物質を含むスラリーSが塗布されて活物質層17が間欠的に形成された状態で、他面に対して活物質を含むスラリーSを塗布する際に、片面に間欠的に形成された各活物質層17に対応して位置する印18をセンサ19により検出する。そして、その位置を基準に片面に形成された活物質層17の端部の位置を決め、他面に間欠的に塗布するスラリーSの塗布位置を活物質層17毎に決めてスラリーSの塗布を行う。カーボンコート層12の色と非常に良く似ている活物質層17の端部の位置を直接検出するのではなく、各活物質層17に対応して位置する印18をセンサ19により検出して、その位置を基準に片面に形成された活物質層17の端部の位置を決めるため、活物質層17の端部の位置を正確に確認することができる。したがって、帯状の金属箔11上に活物質層17を間欠的に形成しても活物質層17の端部における厚さむらを防止することができ、しかも、金属箔11の両面の対向する位置に精度良く活物質層17を形成することができる。
【0035】
(3)印18は、金属箔11の長手方向に延びる線状に形成されている。センサ19は、帯状の金属箔11の片面に形成された印18を検出し、印18は、各活物質層17に対応して設けられているため、金属箔11の長手方向に沿って間欠的に形成される。したがって、印18が金属箔11の長手方向に延びる線状に形成されている場合は、印18が金属箔11の長手方向と直交する方向に延びる線状の場合や、面積の小さな形状の場合に比べて、センサ19は活物質層17の端部を精度良く確認し易くなり、印18の位置から対向する活物質層17の位置を精度良く決めることができる。
【0036】
(4)印18は、カーボンコート層12にスリット13として形成されている。印18は、カーボンコート層12を形成する際に、一部にカーボンコート層12を設けないようにすることで、カーボンコート層12の形成に伴って形成される。したがって、印18を設けるために専用の工程を設ける必要がない。
【0037】
(5)印18は、金属箔11の長手方向において間欠的に形成された活物質層17の間及び隣り合う活物質層17と反対側に位置する。したがって、他面に活物質層17を塗布する際に、他面に形成すべき活物質層17の位置が塗布装置と対向する前に、片面に形成された各活物質層17に一対一で対応する印18を検出することができる。
【0038】
(6)スリット13は、金属箔11にカーボンコート層12を形成する際、カーボン塗布用の塗布器14の吐出口14aの一部を板15で覆うことにより形成される。したがって、カーボン塗布用の塗布器14の吐出口14aの一部を板15で覆うという簡単な改造で、金属箔11に形成されたカーボンコート層12に、金属箔11の長手方向に延びるスリット13を簡単に形成することができる。なお、スリット13は活物質層17が形成される領域にも形成されるが、スリット13が存在するカーボンコート層12上にスラリーSが塗布されても、活物質層17は支障なく形成される。
【0039】
(7)電極の製造方法は、活物質層17が間欠的に形成された帯状の金属箔11を、所定方向にタブ21が突出するように個々の電極20に切り離す電極切り離し工程を備えている。したがって、個々の電極の大きさに対応した金属箔に、それぞれ活物質の塗布を行って電極を形成する場合に比べて、効率良く電極20を形成することができる。
【0040】
(8)蓄電装置としての二次電池34は、前記の製造方法により製造された電極20を使用した電極組立体31を備えている。したがって、電極組立体31に使用される電極20の製造方法が有する効果と同様の効果を有する。
【0041】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ スリット13は、金属箔11の長手方向全長にわたって延びる構成に限らず、例えば、
図7に示すように、2点鎖線で示す活物質層17を形成すべき範囲の端部に跨るように、各活物質層17の帯状の金属箔11の長手方向における両端部と対応するように、間欠的に設けてもよい。このように、スリット13を間欠的に形成する場合。板15を吐出口14aの所定位置を覆うスリット形成位置と、スリット形成位置から退避した退避位置とに移動配置可能とし、板15を間欠的にスリット形成位置に配置してカーボンコート層12を形成する。
【0042】
○ スリット13は、必ずしも活物質層17とカーボンコート層12との境目を跨ぐ状態で形成せずに、境目から離れた状態で形成してもよいが、境目にある方が活物質層17の端部の検出精度が高くなり、金属箔11の他面に形成される活物質層17の位置精度が高くなる。
【0043】
○ 印18はスリット13に限らず、カーボンコート層12の活物質層17が形成される以外の領域にカーボンコート層12の一部がない状態で形成される三角形、四角形等の多角形や円、楕円等の任意の形状の図形であってもよい。
【0044】
○ 印18としてスリット13やスリット13以外の任意の形状の図形を、カーボンコート層12の活物質層17が形成される以外の領域にカーボンコート層12の一部がない状態で設ける場合、カーボンコート層12を形成した後にカーボンコート層12の一部を除去して形成してもよい。
【0045】
○ 印18は、カーボンコート層12の活物質層17が形成される以外の領域にカーボンコート層12の一部がない状態で設けられた構成に限らず、カーボンコート層12上に白色等の目立つ色の物質を塗布して形成してもよい。
【0046】
○ 帯状の電極中間体としての金属箔11からタブ21を有する個々の電極20を切り離す場合、タブ21の突出方向は、金属箔11の長手方向と平行に限らない。例えば、
図8に示すように、タブ21が金属箔11の長手方向と直交する方向に突出するように、タブ21が活物質層17の幅方向の両側に存在するカーボンコート層12から切り離すように、電極20の切断形状を変更してもよい。
【0047】
○ 積層型の電極組立体31を構成する電極として、正極用及び負極用の電極20が個々に独立した単独構成ではなく、金属箔11がつづら折り状の状態で連続し、その金属箔11上の重なる領域にそれぞれ正極用の活物質層17がそれぞれ独立して形成された構成、あるいは負極用の活物質層17がそれぞれ独立して形成された構成であってもよい。この場合、電極組立体31を構成するセパレータもつづら折り状のものが使用される。
【0048】
○ カーボンコート層12は、両側にカーボンが塗布されない部分を設けずに、金属箔11の全体に形成してもよい。
○ 積層型の電極組立体31を構成する電極に限らず、巻回型の電極組立体31を構成する電極の製造に適用してもよい。
【0049】
○ 印18は帯状の金属箔11の片面に設けられていれば、他面に対して活物質を含むスラリーSを塗布する際に、その印18をセンサにより検出し、他面に間欠的に塗布するスラリーSを片面に形成された活物質層17の位置に精度良く対向した位置に塗布することができる。しかし、印18は帯状の金属箔11の両面に設けてもよい。印18を帯状の金属箔11の両面に設ける構成では、例えば、印18としてスリット13を形成する場合、両面とも同じ条件でスラリーSの塗布を行うことができる。あるいは、両面に活物質層17を形成後、各面の印18の位置を検出して、活物質層17の位置ずれの有無を確認することができる。
【0050】
○ スラリーSの塗布はローラを用いる方法に限らず、例えば、押出型の塗布器を用いてもよい。
○ 電極の製造工程として、帯状の金属箔11にカーボンコート層12を形成するカーボンコート層形成工程を一連の工程の一工程として設けずに、カーボンコート層が形成された帯状の金属箔11を購入して、その金属箔に印18を形成する段階から電極の製造工程を始めてもよい。また、スリットを有するカーボンコート層12が形成された帯状の金属箔11を購入して、活物質塗布工程から電極の製造工程を始めてもよい。
【0051】
○ 蓄電装置(二次電池34)は、電極組立体31がケース33に収容された構成ではなく、電極組立体31が電気的絶縁材からなる包装材に収容された構成としてもよい。
○ 蓄電装置は、二次電池34に限らず、例えば、リチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
S…スラリー、11…金属箔、12…カーボンコート層、13…スリット、14…塗布器、14a…吐出口、15…板、17…活物質層、18…印、19…センサ、20…電極、21…タブ、31…電極組立体、34…蓄電装置としての二次電池。