特許第5900274号(P5900274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900274
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】誘導加熱乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 23/08 20060101AFI20160324BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20160324BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20160324BHJP
   H05B 6/06 20060101ALI20160324BHJP
   F26B 9/00 20060101ALI20160324BHJP
   F26B 3/347 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   F26B23/08 A
   H05B6/44
   H05B6/10 331
   H05B6/06
   F26B9/00 C
   F26B3/347
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-222210(P2012-222210)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-74541(P2014-74541A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 香織
(72)【発明者】
【氏名】坊野 久年
(72)【発明者】
【氏名】大津 義郎
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−069500(JP,A)
【文献】 特開2007−200813(JP,A)
【文献】 実開平02−079594(JP,U)
【文献】 特開2010−244870(JP,A)
【文献】 特開平06−243961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 23/08
F26B 3/347
F26B 9/00
H05B 6/06
H05B 6/10
H05B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに対して誘導加熱を行って、その表面を乾燥させる誘導加熱乾燥装置であって、
渦巻き形状に形成された複数の第1誘導加熱コイルが、上記車両ボディの形状に沿って、面方向に互いに隣接して板状に配列された第1誘導加熱コイル群と、
渦巻き形状に形成された複数の第2誘導加熱コイルが、上記第1誘導加熱コイル群に対して略平行に重なって、面方向に互いに隣接して板状に配列された第2誘導加熱コイル群と、を備えており、
互いに隣接する上記第1誘導加熱コイルは、互いに逆巻き方向に通電して、互いに対向する外周部分における同じ方向に電流を流して、該外周部分に、他の部分よりも強い磁力線を発生させるよう構成されており、
互いに隣接する上記第2誘導加熱コイルは、互いに逆巻き方向に通電して、互いに対向する外周部分における同じ方向に電流を流して、該外周部分に、他の部分よりも強い磁力線を発生させるよう構成されており、
上記第1誘導加熱コイル群において強い磁力線が発生する部位と、上記第2誘導加熱コイル群において強い磁力線が発生する部位とは、面方向において互いにずれており、
上記複数の第1誘導加熱コイルと上記複数の第2誘導加熱コイルとに異なるタイミングで通電を行うよう構成されており、
上記複数の第1誘導加熱コイル及び上記複数の第2誘導加熱コイルは、上記車両ボディの底部の外側面における略全面に配列されていることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱乾燥装置において、上記複数の第1誘導加熱コイルと上記複数の第2誘導加熱コイルとに交互に繰り返し通電を行うよう構成されていることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の誘導加熱乾燥装置において、上記第1誘導加熱コイル群は、四角の渦巻き形状に形成された複数の第1誘導加熱コイルを格子状に配列して形成されており、
上記第2誘導加熱コイル群は、四角の渦巻き形状に形成された複数の第2誘導加熱コイルを格子状に配列して形成されており、
上記複数の第2誘導加熱コイルの配列ピッチは、上記複数の第1誘導加熱コイルの配列ピッチと同じであり、
上記複数の第2誘導加熱コイルは、上記複数の第1誘導加熱コイルに対して略半ピッチ分だけ一方向にずれて配列されていることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導加熱乾燥装置において、上記複数の第1誘導加熱コイルと上記複数の第2誘導加熱コイルとは、所定の周波数の交流電圧を印加して通電を行う通電時と、該通電を停止して待機する待機時とを、交互に繰り返し実行するよう構成されていることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディに対して誘導加熱を行って、その表面を乾燥させる誘導加熱乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両ボディに塗装を行った後には、この車両ボディを乾燥炉内へ搬送し、乾燥炉内において、バーナの燃焼を行って発生させた熱風をファンによって送風して、車両ボディを加熱して乾燥させている。
一方、乾燥炉を用いて乾燥を行う際には、乾燥炉内の温度分布が不均一になったり、塗膜の外面が内面よりも先に乾くことによって塗装の品質に影響が生じたり、塗装面に埃が付着したりする問題が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1の誘導加熱乾燥装置においては、車両ボディの各部の外板に対して誘導加熱を行って、各部の外板の表面を乾燥させることが開示されている。この誘導加熱乾燥装置においては、固有抵抗値の異なる複数の金属板を、誘導加熱コイルの通電条件を異ならせて誘導加熱することにより、各部の外板を安定して略均一に加熱して乾燥させている。
【0004】
また、例えば、特許文献2の誘導加熱装置は、ワークの上面に対向して所定のピッチで複数配置される上側コイル群と、ワークの下面に対向して上側コイル群の配置ピッチと同じピッチで複数配置される下側コイル群とを備えている。上側コイル群の各コイルの中心位置は、下側コイル群の各コイルの中心位置と半ピッチずれて配置されており、上側コイル群へ通電する位相と、上側コイル群へ通電する位相とを90°ずらしている。そして、ワークを挟む上下コイルによる誘導加熱において、ワークの温度分布を均一化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−69500号公報
【特許文献2】特開2007−200813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両ボディ等の大きな構造体になると、金属板の両面から誘導加熱することができず、構造体の全体を均一に加熱するためには更なる工夫が必要とされる。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、車両ボディにおける広範囲の部分を、均一に加熱することができる誘導加熱乾燥装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両ボディに対して誘導加熱を行って、その表面を乾燥させる誘導加熱乾燥装置であって、
渦巻き形状に形成された複数の第1誘導加熱コイルが、上記車両ボディの形状に沿って、面方向に互いに隣接して板状に配列された第1誘導加熱コイル群と、
渦巻き形状に形成された複数の第2誘導加熱コイルが、上記第1誘導加熱コイル群に対して略平行に重なって、面方向に互いに隣接して板状に配列された第2誘導加熱コイル群と、を備えており、
互いに隣接する上記第1誘導加熱コイルは、互いに逆巻き方向に通電して、互いに対向する外周部分における同じ方向に電流を流して、該外周部分に、他の部分よりも強い磁力線を発生させるよう構成されており、
互いに隣接する上記第2誘導加熱コイルは、互いに逆巻き方向に通電して、互いに対向する外周部分における同じ方向に電流を流して、該外周部分に、他の部分よりも強い磁力線を発生させるよう構成されており、
上記第1誘導加熱コイル群において強い磁力線が発生する部位と、上記第2誘導加熱コイル群において強い磁力線が発生する部位とは、面方向において互いにずれており、
上記複数の第1誘導加熱コイルと上記複数の第2誘導加熱コイルとに異なるタイミングで通電を行うよう構成されており、
上記複数の第1誘導加熱コイル及び上記複数の第2誘導加熱コイルは、上記車両ボディの底部の外側面における略全面に配列されていることを特徴とする誘導加熱乾燥装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記誘導加熱乾燥装置は、渦巻き形状の複数の第1誘導加熱コイルによる第1誘導加熱コイル群と、渦巻き形状の複数の第2誘導加熱コイルによる第2誘導加熱コイル群とを略平行に重ねて形成されている。
互いに隣接する第1誘導加熱コイルに互いに逆巻き方向に通電することにより、第1誘導加熱コイルの互いに対向する外周部分には同じ方向に電流が流れ、他の部分よりも強い磁力線が発生する。また、互いに隣接する第2誘導加熱コイルに互いに逆巻き方向に通電することにより、第2誘導加熱コイルの互いに対向する外周部分には同じ方向に電流が流れ、他の部分よりも強い磁力線が発生する。また、第1誘導加熱コイル群において強い磁力線が発生する部位と、第2誘導加熱コイル群において強い磁力線が発生する部位とが面方向において互いにずれており、複数の第1誘導加熱コイルと複数の第2誘導加熱コイルとに、タイミングをずらして通電を行う。
【0010】
これにより、各第1誘導加熱コイルによって強い磁力線が発生する部位に対向する車両ボディの部分には、強い渦電流が発生し、この強い渦電流が発生した部位が強く加熱される。また、各第1誘導加熱コイルによって強く加熱されなかった車両ボディの部分は、各第2誘導加熱コイルによって発生する強い渦電流によって強く加熱される。
それ故、上記誘導加熱乾燥装置によれば、車両ボディにおける広範囲の部分を、均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例にかかる、車両ボディの底部に誘導加熱乾燥装置を配置した状態を、側方から見た状態で模式的に示す説明図。
図2】実施例にかかる、車両ボディの底部に誘導加熱乾燥装置を配置した状態を、後方から見た状態で模式的に示す説明図。
図3】実施例にかかる、第1誘導加熱コイル群(又は第2誘導加熱コイル群)を平面的に配列した状態を示す説明図。
図4】実施例にかかる、第1誘導加熱コイル群及び第2誘導加熱コイル群によって加熱される車両ボディの底部の加熱状態を模式的に示す説明図。
図5】実施例にかかる、第1誘導加熱コイル群及び第2誘導加熱コイル群の配列状態を側方から見た状態で模式的に示す説明図。
図6】実施例にかかる、誘導加熱乾燥装置の電気的構成を模式的に示す説明図。
図7】実施例にかかる、横軸に時間をとり、縦軸に印加電圧をとって、第1誘導加熱コイル群と第2誘導加熱コイル群とに通電を行うタイミングを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した誘導加熱乾燥装置における好ましい実施の形態につき説明する。
上記誘導加熱乾燥装置において、上記面方向とは、上記車両ボディの形状に沿った面の方向のことをいう。
上記誘導加熱乾燥装置は、上記複数の第1誘導加熱コイルと上記複数の第2誘導加熱コイルとに交互に繰り返し通電を行うよう構成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、車両ボディにおける広範囲の部分を、より均一に安定して加熱することができる。
【0013】
また、上記第1誘導加熱コイル群は、四角の渦巻き形状に形成された複数の第1誘導加熱コイルを格子状に配列して形成されており、上記第2誘導加熱コイル群は、四角の渦巻き形状に形成された複数の第2誘導加熱コイルを格子状に配列して形成されており、上記複数の第2誘導加熱コイルの配列ピッチは、上記複数の第1誘導加熱コイルの配列ピッチと同じであり、上記複数の第2誘導加熱コイルは、上記複数の第1誘導加熱コイルに対して略半ピッチ分だけ一方向にずれて配列されていてもよい(請求項3)。
【0014】
この場合には、第1誘導加熱コイル及び第2誘導加熱コイルの渦巻き形状が簡単で適切であり、車両ボディにおける広範囲の箇所を均一に効果的に加熱することができる。
なお、略半ピッチ分だけ一方向にずれていることが意味するものは、完全な半ピッチ分だけ一方向にずれている場合だけでなく、例えば、1/3〜2/3のピッチ分だけ一方向にずれている場合も含むものとする。
【0015】
また、上記本発明の一態様において、上記複数の第1誘導加熱コイル及び上記複数の第2誘導加熱コイルは、上記車両ボディの底部の外側面における略全面に配列されてい
これにより、使用される鋼板が厚くて熱容量が大きい、車両ボディの底部を、短時間で効果的に加熱することができる。
【0016】
また、上記複数の第1誘導加熱コイルと上記複数の第2誘導加熱コイルとは、所定の周波数の交流電圧を印加して通電を行う通電時と、該通電を停止して待機する待機時とを、交互に繰り返し実行するよう構成されていてもよい(請求項)。
この場合には、誘導加熱乾燥装置においては、第1電源装置によって印加する交流電圧の位相と、第2電源装置によって印加する交流電圧の位相とをずらすのではなく、第1誘導加熱コイルに通電を行う時間帯と、第2誘導加熱コイルに通電を行う時間帯とをずらす。そのため、第1誘導加熱コイル群による車両ボディの底部の誘導加熱と、第2誘導加熱コイル群による車両ボディの底部の誘導加熱とを別々に繰り返し行って、第1電源装置及び第2電源装置に必要とされる電力のピーク値を抑えることができる。
【実施例】
【0017】
以下に、上記誘導加熱乾燥装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の誘導加熱乾燥装置1は、図1図2に示すごとく、車両ボディ3に対して誘導加熱を行って、その表面を乾燥させるものである。誘導加熱乾燥装置1は、渦巻き形状に形成された複数の第1誘導加熱コイル21Aが、車両ボディ3の形状に沿って、面方向に互いに隣接して板状に配列された第1誘導加熱コイル群2Aと、渦巻き形状に形成された複数の第2誘導加熱コイル21Bが、第1誘導加熱コイル群2Aに対して略平行に重なって、面方向に互いに隣接して板状に配列された第2誘導加熱コイル群2Bとを備えている。
【0018】
図3に示すごとく、互いに隣接する第1誘導加熱コイル21Aは、互いに逆巻き方向に通電して、互いに対向する外周部分211における同じ方向に電流Iを流して、この外周部分211に、他の部分よりも強い磁力線を発生させるよう構成されている。互いに隣接する第2誘導加熱コイル21Bは、互いに逆巻き方向に通電して、互いに対向する外周部分211における同じ方向に電流Iを流して、この外周部分211に、他の部分よりも強い磁力線を発生させるよう構成されている。
【0019】
図4図5に示すごとく、第1誘導加熱コイル群2Aにおいて強い磁力線が発生する部位と、第2誘導加熱コイル群2Bにおいて強い磁力線が発生する部位とは、面方向において互いにずれている。そして、図6図7に示すごとく、誘導加熱乾燥装置1は、複数の第1誘導加熱コイル21Aと複数の第2誘導加熱コイル21Bとに、通電するタイミングをずらして交互に繰り返し通電を行うよう構成されている。
【0020】
以下に、本例の誘導加熱乾燥装置1につき、図1図7を参照して詳説する。
図1図2は、車両ボディ3の底部31に誘導加熱乾燥装置1を配置した状態を模式的に示し、図1は、側方から見た状態、図2は、後方から見た状態で示す。同各図に示すごとく、本例の誘導加熱乾燥装置1は、電着塗装等の塗装を行った後の車両ボディ(メインボディ)3の底部31の外側面(下面)311を加熱し、底部31を構成する鋼板における塗装膜を加熱して乾燥させるために用いる。車両ボディ3は、搬送ラインによって、車両ボディ3に塗装が行われる塗装工程から、誘導加熱乾燥装置1によって車両ボディ3の乾燥を行う乾燥工程まで搬送されるようになっている。第1誘導加熱コイル群2A及び第2誘導加熱コイル群2Bによる誘導加熱乾燥装置1は、乾燥工程を形成する搬送ラインの床面に設置されている。そして、車両ボディ3は、誘導加熱乾燥装置1の上方に配置される。
【0021】
図6は、誘導加熱乾燥装置1の電気的構成を模式的に示す。同図に示すごとく、複数の第1誘導加熱コイル21Aは、その全体が直列に接続されており、本例の複数の第2誘導加熱コイル21Bは、その全体が直列に接続されている。複数の第1誘導加熱コイル21Aは、交流電圧を印加する第1電源装置22Aに接続されており、複数の第2誘導加熱コイル21Bは、交流電圧を印加する第2電源装置22Bに接続されている。
【0022】
複数の第1誘導加熱コイル21A及び複数の第2誘導加熱コイル21Bは、車両ボディ3の底部31における鋼板の厚み・形状等に応じて、部位によって加熱量を異ならせるために、所定数ごとに分割した分割組として接続することができる。この場合には、第1電源装置22A及び第2電源装置22Bを、分割組を構成する複数の第1誘導加熱コイル21A及び複数の第2誘導加熱コイル21Bごとに接続し、各第1電源装置22A及び各第2電源装置22Bごとに、印加電圧値、通電電流値、通電時間、周波数等の通電条件を設定することができる。
【0023】
図7は、横軸に時間tをとり、縦軸に印加電圧Vをとって、第1誘導加熱コイル群2Aと第2誘導加熱コイル群2Bとに通電を行うタイミングを示す。同図に示すごとく、第1誘導加熱コイル群2Aと第2誘導加熱コイル群2Bとは、所定の周波数の交流電圧を印加して通電を行う通電時T1と、この通電を停止して待機する待機時T2とを、交互に繰り返し実行するよう構成されている。同図においては、通電時T1に交流電圧を印加することを示す。
【0024】
誘導加熱乾燥装置1においては、第1電源装置22Aによって印加する交流電圧の位相と、第2電源装置22Bによって印加する交流電圧の位相とをずらすのではなく、第1誘導加熱コイル群2Aに通電を行う時間帯と、第2誘導加熱コイル群2Bに通電を行う時間帯とをずらしている。そのため、第1誘導加熱コイル群2Aによる車両ボディ3の底部31の誘導加熱と、第2誘導加熱コイル群2Bによる車両ボディ3の底部31の誘導加熱とを切り分けて、第1電源装置22A及び第2電源装置22Bに必要とされる電力のピーク値を抑えることができる。
【0025】
図1図2に示すごとく、本例の誘導加熱乾燥装置1においては、第1誘導加熱コイル群2Aを車両ボディ3の底部31に近い側に配置し、第2誘導加熱コイル群2Bを車両ボディ3の底部31から遠い側に配置する。各誘導加熱コイル群2A,2Bに同じ通電を行うと、第1誘導加熱コイル群2Aに比べて第2誘導加熱コイル群2Bの方が底部31からの距離が遠くなる分、車両ボディ3の底部31を誘導加熱する量は、第1誘導加熱コイル群2Aに比べて第2誘導加熱コイル群2Bの方が少なくなる。そのため、第1誘導加熱コイル群2Aに対する印加電圧値、通電電流値、通電時間、周波数等の通電条件に比べて、第2誘導加熱コイル群2Bに対する印加電圧値、通電電流値、通電時間、周波数等の通電条件を高くすることができる。これにより、車両ボディ3の底部31の全体をより均一に加熱することができる。
【0026】
図3は、第1誘導加熱コイル群2A(又は第2誘導加熱コイル群2B)を平面的に配列した状態を示す。同図に示すごとく、第1誘導加熱コイル群2Aは、四角の渦巻き形状に形成された複数の第1誘導加熱コイル21Aを格子状に配列して形成されている。また、第2誘導加熱コイル群2Bは、四角の渦巻き形状に形成された複数の第2誘導加熱コイル21Bを格子状に配列して形成されている。
【0027】
各誘導加熱コイル21A,21Bは、中心部分212から外周部分211に向かうに従って、四角形状が順次大きくなる渦巻き形状に形成され、中心部分212と最外周部分211とからコイル端部215,216が引き出されている。各コイル端部215,216同士が接続されて、第1誘導加熱コイル群2A又は第2誘導加熱コイル群2Bが形成されている。各誘導加熱コイル21A,21Bは、外周側のコイル端部215から通電するものと、中心側のコイル端部216から通電するものとが、面方向の縦方向及び横方向に向けて、交互に配列されている。
【0028】
直線平板形状を有する、車両ボディ3の底部31に対向する位置においては、端に位置するものを除いて、各第1誘導加熱コイル21A同士及び各第2誘導加熱コイル21B同士は、それぞれ同じ大きさに形成することができ、各第1誘導加熱コイル21Aと各第2誘導加熱コイル21Bとは、同じ大きさに形成することができる。
また、屈曲平板形状(立体的形状)を有する、車両ボディ3の底部31に対向する位置においては、底部31の屈曲平板形状に合わせて、各第1誘導加熱コイル21A同士及び各第2誘導加熱コイル21B同士の大きさを適宜異ならせることができ、各第1誘導加熱コイル21Aと各第2誘導加熱コイル21Bとの大きさも、適宜異ならせることができる。
【0029】
図5は、第1誘導加熱コイル群2A及び第2誘導加熱コイル群2Bの配列状態を側方から見た状態で模式的に示す。同図に示すごとく、複数の第2誘導加熱コイル21Bの配列ピッチPは、複数の第1誘導加熱コイル21Aの配列ピッチPと同じである。複数の第2誘導加熱コイル21Bは、複数の第1誘導加熱コイル21Aに対して略半ピッチP/2分だけ一方向にずれて配列されている。なお、各第2誘導加熱コイル21Bが、各第1誘導加熱コイル21Aに対して一方向にずれる量は、特に車両ボディ3の底部31が立体的形状を有する部位においては、略半ピッチP/2とならず、1/3〜2/3Pとなることがある。
【0030】
図3に示すごとく、第1誘導加熱コイル群2Aにおいて、最も外側に位置する第1誘導加熱コイル21Aを除く残りの各第1誘導加熱コイル21Aは、4方向の外周部分211が隣接する第1誘導加熱コイル21Aの外周部分211と対向している。第1誘導加熱コイル21Aは、整列配置される面方向における縦方向及び横方向に順次隣接して配列されている。各第1誘導加熱コイル21Aは、縦方向の一方側又は両側に隣接する第1誘導加熱コイル21A及び横方向の一方側又は両側に隣接する第1誘導加熱コイル21Aと、外周側のコイル端部215から通電するか、中心側のコイル端部216から通電するかが異なり、通電方向が逆になっている。そして、各第1誘導加熱コイル21Aの外周部分211には、縦方向の一方側又は両側に隣接する第1誘導加熱コイル21Aの外周部分211及び横方向の一方側又は両側に隣接する第1誘導加熱コイル21Aの外周部分211と、同じ方向に電流Iが流れる。
【0031】
第2誘導加熱コイル群2Bにおいて、最も外側に位置する第2誘導加熱コイル21Bを除く残りの各第2誘導加熱コイル21Bは、4方向の外周部分211が隣接する第2誘導加熱コイル21Bの外周部分211と対向している。第2誘導加熱コイル21Bは、整列配置される面方向における縦方向及び横方向に順次隣接して配列されている。各第2誘導加熱コイル21Bは、縦方向の一方側又は両側に隣接する第2誘導加熱コイル21B及び横方向の一方側又は両側に隣接する第2誘導加熱コイル21Bと、外周側のコイル端部215から通電するか、中心側のコイル端部216から通電するかが異なり、通電方向が逆になっている。そして、各第2誘導加熱コイル21Bの外周部分211には、縦方向の一方側又は両側に隣接する第2誘導加熱コイル21Bの外周部分211及び横方向の一方側又は両側に隣接する第2誘導加熱コイル21Bの外周部分211と、同じ方向に電流Iが流れる。
【0032】
図1図2に示すごとく、複数の第1誘導加熱コイル21A及び複数の第2誘導加熱コイル21Bは、車両ボディ3の底部31の外側面(下面)311における略全面に配列されている。車両ボディ3の底部31の外側面311は、特にホイールハウス32が設けられた4箇所が上方に窪んでおり、凹凸形状を有している。複数の第1誘導加熱コイル21A及び複数の第2誘導加熱コイル21Bは、底部31の外側面311における凹凸に倣い、この凹凸に対して所定の隙間を空けて配置されている。
【0033】
図4は、第1誘導加熱コイル群2A及び第2誘導加熱コイル群2Bによって加熱される車両ボディ3の底部31の加熱状態を模式的に示す。同図においては、各第1誘導加熱コイル21Aを破線の四角で簡略的に示し、各第2誘導加熱コイル21Bを実線の四角で簡略的に示す。そして、各第1誘導加熱コイル21Aによって高温に加熱される部位Xを薄いグレーチングで示し、各第2誘導加熱コイル21Bによって高温に加熱される部位Yを濃いグレーチングによって示す。
【0034】
図3図4に示すごとく、本例の誘導加熱乾燥装置1においては、各誘導加熱コイル21A,21Bの外周部分211が互いに対向する位置の近傍に強い磁力線が発生して、この位置の近傍に対向する車両ボディ3の底部31の部分に強い渦電流Iが発生し、この底部31の部分が高温に加熱される。これに対し、各誘導加熱コイル21A,21Bの中心部分212の近傍及び各誘導加熱コイル21A,21Bの角部分213の近傍には強い磁力線は発生せず、これらの部分212,213の近傍に対向する車両ボディ3の底部31の部分には弱い渦電流Iが発生し、この底部31の部分は低温に加熱される。
【0035】
そして、複数の第2誘導加熱コイル21Bは、複数の第1誘導加熱コイル21Aに対して略半ピッチP/2分だけ一方向にずれて配列されている。また、複数の第1誘導加熱コイル21Aにおける各中心部分212の近傍及び各角部分213の近傍に対して、複数の第2誘導加熱コイル21Bにおける外周部分211が互いに対向する部分を重ねるように合わせている。これにより、各第1誘導加熱コイル21Aによって強く加熱されなかった車両ボディ3の部分を補うように各第2誘導加熱コイル21Bによって強く加熱することができる。
それ故、本例の誘導加熱乾燥装置1によれば、車両ボディ3の底部31の全体を、均一に加熱することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 誘導加熱乾燥装置
2A 第1誘導加熱コイル群
21A 第1誘導加熱コイル
2B 第2誘導加熱コイル群
21B 第2誘導加熱コイル
211 外周部分
3 車両ボディ
31 底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7