(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900295
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20160324BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C33/42
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-248362(P2012-248362)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-94538(P2014-94538A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】栗木 大次
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄樹
(72)【発明者】
【氏名】篭橋 良治
(72)【発明者】
【氏名】武藤 雅信
(72)【発明者】
【氏名】笹田 有
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正憲
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 敏久
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−192637(JP,A)
【文献】
特開2004−358662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38
B29C 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用装飾部品を形成するための形成面を備える金型の同形成面に、前記車両用装飾部品の表面に装飾を施すための凹凸を形成する金型の製造方法において、
車両用装飾部品の表面に施される装飾の二次元での加工パターンを前記表面に対応した三次元のデザインモデルに補正展開した後、そのデザインモデルに基づく三次元レーザ加工機でのレーザ加工を通じて前記金型の形成面に、隣り合う凹部同士の間隔が20〜500μmの範囲内の値であり、且つ、その凹部の深さが前記間隔の0.2〜2倍の範囲内の値である前記凹凸を形成し、
前記レーザ加工は、前記形成面に対する前記三次元レーザ加工機からのレーザの放射方向を変化させつつ前記凹凸を形成する
ことを特徴とする金型の製造方法。
【請求項2】
前記レーザ加工に合わせて、前記金型の回転、前記三次元レーザ加工機が備えるレーザの放射装置の回転、及び前記金型と前記放射装置との相対位置の変更が行われる
請求項1記載の金型の製造方法。
【請求項3】
前記形成面に形成される凹凸は、前記隣り合う凹部同士の間隔が20〜100μmの範囲内の値であり、且つ、その凹部の深さが前記間隔の0.5〜2倍の範囲内の値である
請求項1又は2記載の金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の製造方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用装飾部品を形成する形成面を備える金型においては、形成後の車両用部品の表面に装飾を施すための凹凸が、特許文献1に示されるようなエッチング工法を通じて上記形成面に形成される。こうしたエッチング工法では、金型の形成面に上記凹凸の凸部に対応して耐酸皮膜(レジスト)を形成し、その状態で形成面における上記凹凸の凹部に対応した部分を腐食剤により腐食させる。その後、上記形成面に形成されたレジストを除去することにより、その形成面に上記凹凸が形成されるようになる。そして、このように凹凸の形成された形成面を備える金型を用いて車両用装飾部品を形成することにより、形成後の同車両用形成部品の表面に上記形成面の凹凸に対応した凹凸状の装飾が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−263973公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記エッチング工法を通じて形成面に凹凸が形成された金型の場合、その凹凸における凹部同士の間隔を狭くすること、及び、その間隔に対する凹部の深さを大きく(深く)することには限界がある。このため、上記金型による形成後の車両用装飾部品の表面に上記凹凸による凹凸状の装飾を施すにしても、その装飾の凹凸に基づく触感や光沢による装飾の表現に制限が生じることは否めない。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、表面に施される装飾の凹凸における凹部の幅をより狭く且つ凹部の深さをより深くすることができ、上記装飾の凹凸に基づく触感や光沢による従来にない装飾の表現を実現できる車両用装飾部品、及び、その車両用装飾部品を形成するための金型の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する金型の製造方法によれば、車両用装飾部品を形成するための形成面を備える金型の同形成面に、車両用装飾部品の表面に装飾を施すための凹凸が次のように形成される。すなわち、上記装飾の二次元での加工パターンを車両用装飾部品の表面に対応した三次元のデザインモデルに補正展開した後、そのデザインモデルに基づく三次元レーザ加工機でのレーザ加工を通じて上記金型の形成面に、隣り合う凹部同士の間隔が
20〜500μm
の範囲内の値であり、且つ、その凹部の深さが前記間隔の0.2
〜2倍の
範囲内の値である凹凸が形成され
、前記レーザ加工は、前記形成面に対する前記三次元レーザ加工機からのレーザの放射方向を変化させつつ前記凹凸を形成する。こうした凹凸を形成した形成面を備える金型を用いて車両用装飾部品を形成することにより、同車両用装飾部品の表面に凹部の幅がより狭く且つ凹部の深さがより深い凹凸による装飾を施すことができ、その凹凸に基づく触感や光沢による従来にない装飾の表現を実現することができる。
なお、
前記レーザ加工に合わせて、前記金型の回転、前記三次元レーザ加工機が備えるレーザの放射装置の回転、及び前記金型と前記放射装置との相対位置の変更が行われることが好ましい。
【0007】
また、上記金型の形成面に形成される凹凸に関しては、凹部同士の間隔が20〜
100μmの範囲内の値であり、且つ、その凹部の深さが上記間隔の
0.5〜2倍の範囲内の値であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】同部品の表面に施される装飾の加工パターンを二次元上で示す略図。
【
図4】同部品を形成する際に用いられる金型を示す略図。
【
図6】金型の形成面に凹凸を形成するための三次元レーザ加工機を示す略図。
【
図7】同形成面に対するレーザによる切削態様を示す略図。
【
図8】同形成面のレーザによる切削後の形状を示す略図。
【
図9】エッチング工法によって形成可能な形成面の凹凸における溝の間隔と溝の深さとの組み合わせ、及び、レーザ加工によって形成可能な上記凹凸における溝の間隔と溝の深さとの組み合わせを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両用装飾部品、及び、その形成に用いられる金型の製造方法の一実施形態について、
図1〜
図9を参照して説明する。
図1に示される車両用装飾部品1は立体的に湾曲した表面2を有しており、その表面2には凹凸状の装飾が施されている。
【0012】
図2は、上記表面2に施された装飾の加工パターンを二次元上で表したものである。同図から分かるように、上記装飾の加工パターンでは、複数の溝4が平行に形成されて凹凸状をなす区画5が、図中の左右方向及び上下方向に並んでいる。この区画5の図中左右方向の列は、左から右に向かう区画ほど左右方向に対する各溝4の傾斜角が10°ずつずれており、左右方向に並ぶ合計17個の区画5が一つの組となっている。この17個の区画5の組は左右方向に複数並ぶとともに上下方向にも複数並んでいる。なお、上下方向に並ぶ上記17個の区画5の組は、互いに左右方向について一定の数だけずれて配置されている。
【0013】
図3は、
図1の車両用装飾部品1における凹凸状の装飾が施された表面2を概略的に示したものである。この表面2の凹凸状の装飾は、
図2に示す加工パターンに対応しており、その加工パターンの各区画5における複数の溝4を表面2に形成することによって実現される。上記凹凸状の装飾における溝4(凹部)の幅W1は、500μm以下となっており、且つ、その溝4の深さh1は上記幅W1の0.2倍以上となっている。なお、溝4の幅W1は20〜100μmの範囲内の値であることがより好ましく、溝4の深さh1は上記幅W1の0.5〜2倍の範囲内の値であることがより好ましい。
【0014】
図4は、車両用装飾部品1を形成する際に用いられる金型6,7を概略的に示している。車両用装飾部品1は、熱可塑性の樹脂を加熱した状態で金型6,7の対向する形成面6a,7a間に射出することによって形成される。また、金型6の形成面6aには、形成後の車両用装飾部品1の表面に凹凸状の装飾を施すための凹凸、すなわち
図2の加工パターンに対応する凹凸が三次元レーザ加工機によるレーザ加工を通じて形成されている。
【0015】
図5は、このように形成された形成面6aの凹凸を概略的に示したものである。この形成面6aの凹凸の形成は、
図2の加工パターンに対応して複数の溝8(凹部)を形成面6aに形成することによって実現される。上記凹凸における溝8同士の間隔W2は、車両用装飾部品1の表面2に施される凹凸状の装飾における溝4に対応して500μm以下となっており、且つ、上記溝8の深さh2は上記溝4に対応して上記間隔W2の0.2倍以上となっている。なお、溝8同士の間隔W2は20〜100μmの範囲内の値であることがより好ましく、溝8の深さh2は上記間隔W2の0.5〜2倍の範囲内の値であることがより好ましい。
【0016】
従って、上記凹凸が形成された形成面6aを備える金型6を用いて車両用装飾部品1を形成することにより、形成後の車両用装飾部品1の表面2に上記凹凸に対応した凹凸状態の装飾が施される。
【0017】
次に、上記金型6の製造方法について説明する。
図6は、金型6の形成面6aに上記凹凸を形成するための三次元レーザ加工機9を示している。この三次元レーザ加工機9は、金型6を固定するテーブル10、及び、同テーブル10に固定された金型6の形成面6aにレーザを放射する放射装置11を備え、テーブル10と放射装置11との相対位置を図中の左右方向、上下方向、及び前後方向(紙面と直交する方向)に変化させることが可能となっている。また、上記テーブル10は図中の上下方向に延びる中心線周りに回転可能となっており、上記放射装置11は図中の前後方向(紙面と直交する方向)に延びる中心線周りに回転可能となっている。三次元レーザ加工機9では、テーブル10の回転、放射装置11の回転、及び、テーブル10と放射装置11との上記相対位置の変化を通じて、金型6の形成面6aに対する放射装置11からのレーザの放射方向を適宜変化させつつ、同装置11からパルス状のレーザを放出して形成面6aの切削を行う。
【0018】
金型6の形成面6aには、上記三次元レーザ加工機9によるレーザ加工(切削)を通じて上記凹凸が形成される。詳しくは、車両用装飾部品1の表面2に施される装飾の二次元での加工パターン、すなわち
図2に示す加工パターンを三次元のデザインモデルに補正展開した後、そのデザインモデルに基づき三次元レーザ加工機9を動作させて金型6の形成面6aをレーザ加工することにより、その形成面6aに上記デザインモデルに対応した凹凸が形成される。すなわち、金型6の形成面6aに上記デザインモデルに対応した凹凸が形成されるよう、三次元レーザ加工機9の放射装置11からのパルス状のレーザの放射が行われるとともに、それに合わせてテーブル10の回転、放射装置11の回転、及び、テーブル10と放射装置11との相対位置の変更が行われる。なお、
図7は形成面6aに対するレーザの放射が行われたときの同形成面6aの切削態様を示しており、
図8は上記レーザの放射による形成面6aの切削後の形状を示している。
【0019】
次に、上記金型6の製造方法を採用することによる作用、及び、その金型6によって形成された車両用装飾部品1の作用について説明する。
三次元レーザ加工機9(
図6)でのレーザ加工を通じて金型6の形成面6aに上記凹凸を形成することにより、その凹凸における隣り合う溝8(凹部)同士の間隔W2を500μm以下、且つ、その溝8の深さh2を上記間隔W2の0.2倍以上とすることができる。なお、上記金型6の形成面6aに形成される凹凸に関して、より好ましくは、溝8同士の間隔W2が20〜100μmの範囲内の値とされ、且つ、その溝8の深さh2が上記間隔W2の0.5〜2倍の範囲内の値とされる。そして、上記凹凸を形成した形成面6aを備える金型6を用いて車両用装飾部品1を形成することにより、同車両用装飾部品1の表面2に溝4(凹部)の幅W1が500μm以下、且つ、溝4の深さh1が上記幅W1の0.2倍以上となる凹凸による装飾が施される。なお、車両用装飾部品1の表面2の装飾の凹凸に関して、より好ましくは、溝4の幅W1が20〜100μmの範囲内の値とされ、且つ、その溝4の深さh1が上記幅W1の0.5〜2倍の範囲内の値とされる。
【0020】
図9において、領域Bは従来のエッチング工法によって形成可能な形成面6aの凹凸における溝8の間隔W2(溝4の幅W1に対応)と溝8の深さh2(溝4の深さh1に対応)との組み合わせを表しており、領域Aは本実施形態のレーザ加工によって形成可能な上記凹凸における溝8の間隔W2と溝8の深さh2との組み合わせを示している。同図からわかるように、三次元レーザ加工機9によるレーザ加工によって上記凹凸を形成した場合、従来のエッチング工法で形成した場合と比較して、上記凹凸における溝8の間隔W2をより狭く且つ溝8の深さh2をより深くすることができる。こうした凹凸を形成した形成面6aを備える金型6を用いて車両用装飾部品1を形成することにより、同車両用装飾部品1の表面2に溝4の幅W1がより狭く且つ溝4の深さh1がより深い凹凸による装飾を施すことができ、その凹凸に基づく触感や光沢による従来にない装飾の表現を実現することができる。
【0021】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)三次元レーザ加工機9によるレーザ加工を通じて、車両用装飾部品1の形成に用いられる金型6の形成面6aに、隣り合う溝8同士の間隔W2が500μm以下、且つ、その溝8の深さh2が上記間隔W2の0.2倍以上となる凹凸が形成される。こうした凹凸を形成した形成面6aを備える金型6を用いて車両用装飾部品1を形成することにより、形成後の車両用装飾部品1の表面2に、溝4の幅W1がより狭く且つ溝4の深さh1がより深い凹凸による装飾を施すことができる。詳しくは、上記装飾の凹凸における溝4の幅W1を500μm以下と狭く、且つ、溝4の深さh1を上記幅W1の0.2倍以上と深くすることができる。こうして車両用装飾部品1の表面2に、溝4の幅W1がより狭く且つ溝4の深さh1がより深い凹凸による装飾が施されるため、その凹凸に基づく触感や光沢による従来にない装飾の表現を実現することができるようになる。
【0022】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・車両用装飾部品1を熱可塑性の樹脂以外の材料で形成してもよい。
・車両用装飾部品1の表面に施される装飾の加工パターンを適宜変更してもよい。この場合、上記加工パターンの変更に合わせて、金型6の形成面6aに形成される凹凸の形状や配置も変更される。
【符号の説明】
【0023】
1…車両用装飾部品、2…表面、4…溝、5…区画、6…金型、6a…形成面、7…金型、7a…形成面、8…溝、9…三次元レーザ加工機、10…テーブル、11…放射装置。