(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昨今、車両の製造工程における部品の取り付け作業の容易化がますます強く要求されている。そのため、車両の内装パネルの裏側へ取り付けられるワイヤハーネス及び防音材についても、従来よりも容易に取り付けできることが望まれている。
【0008】
本発明は、電線を保護することができ、さらに、防音(吸音又は遮音など)が必要な場所への電線及び防音材の取り付けを容易化できるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係るワイヤハーネスは、電線と防音シートとを備える。防音シートは、上記電線に沿う状態で上記電線と一体に組み合わされたシート状の防音材からなる。上記防音シートには、上記電線の経路に沿う位置に複数の孔が形成されている。
また、前記電線を挟み込んだ状態で重なった2枚の前記防音シートを備え、複数の前記孔は、2枚の前記防音シートのうち少なくとも前記電線に対して車両の支持体側の反対側に配置される一方に形成されている。
【0010】
本発明の第2態様に係るワイヤハーネスは、第1態様に係るワイヤハーネスの一態様である。第2態様に係るワイヤハーネスは、それぞれ結束用のベルトを有する複数の結束具をさらに備える。この場合、上記防音シートにおける複数の上記孔は、上記電線の経路に沿う複数の箇所において上記電線の経路の両側に対に形成された複数対のベルト通し孔を含む。さらに、複数の上記結束具各々は、一対の上記ベルト通し孔に通された上記ベルトによって、上記電線と
少なくとも前記電線に対して前記支持体側の反対側に配置される上記防音シートにおける一対の上記ベルト通し孔の間の部分とを結束している。
【0011】
本発明の第3態様に係るワイヤハーネスは、第2態様に係るワイヤハーネスの一態様である。第3態様に係るワイヤハーネスにおいて、複数の上記結束具のうちの少なくとも一部は、ベルト付留め具である。このベルト付留め具は、上記電線及び上記防音シートを結束する上記結束用のベルトを有する結束部と、板状の支持体における取付孔の縁部に留められる留め部と、を有する。
また、前記ベルト付留め具における前記結束用のベルトは、2枚の前記防音シートの両方に形成された前記ベルト通し孔に通されて前記電線と2枚の前記防音シート各々の一部とを一括して結束している。
【発明の効果】
【0013】
上記各態様に係るワイヤハーネスは、電線と防音シートとが一体に組み合わされた構造を有している。そのため、防音シートが車両の内装パネルの裏側などの防音を要する場所に取り付けられるだけで、防音シートの取り付けと電線の取り付け(配線)とが完了する。従って、防音を要する場所への電線及び防音シートの取り付け作業が容易となる。
【0014】
さらに、上記各態様に係るワイヤハーネスにおいては、防音シートが、電線の保護部材を兼ねる。例えば、電線が内装パネルの裏側に配置された機器と接触することを防ぎたい場合が考えられる。この場合、上記各態様に係るワイヤハーネスは、電線が防音シートよりも内装パネル側に位置する状態で、内装パネルの裏面に取り付けられればよい。
【0015】
ところで、防音シートがステープラ又はスポット溶着などによって内装パネルの裏面に固定される場合、電線の位置を避けながら防音シートの固定位置を特定することが必要である。しかしながら、電線が防音シートよりも内装パネル側に位置する場合、ワイヤハーネスを取り付ける作業員から見れば、電線が防音シートの裏側に隠れている。この場合、防音シートの固定位置を特定することが難しい。
【0016】
一方、上記各態様に係るワイヤハーネスにおいては、複数の孔が、防音シートにおける電線の経路に沿う位置に形成されている。これら複数の孔は、作業者から見て防音シートの裏側に存在する電線の位置を示す目印として機能する。従って、上記各態様に係るワイヤハーネスが採用されれば、容易に防音シートの固定位置を特定することが可能となる。その結果、電線及び防音シートの取り付け作業が容易となる。
【0017】
また、防音シートにおける所望の位置に複数の孔を空けることは容易である。具体的には、防音シートは、防音材からなるシート状の母材に対する打ち抜き加工により、要求仕様に応じた形状で切り出される。その打ち抜き加工において、防音シートの複数の孔を防音シートの切り出し(裁断)と同時に形成することが可能である。このようにして複数の孔を形成することは、インクなどによってマークを描くことよりも遙かに容易である。
【0018】
また、第2態様においては、防音シートは、結束具によって電線と一体に組み合わされる。さらに、複数の結束具が、防音シートに沿う電線を予め定められた経路に沿う状態に保持する。そして、複数の結束具各々のベルトが通される複数対のベルト通し孔が、電線の位置を示す目印としての孔を兼ねる。
【0019】
従って、第2態様に係るワイヤハーネスが採用されれば、以下に示される効果が得られる。まず、電線と防音シートとを結束具を用いて容易に一体に組み合わせることが可能となる。さらに、電線の位置を示す目印としての孔が、ベルト通し孔を兼ねるため、防音シートに電線を取り付けるための加工を施す工程が簡略化される。
【0020】
また、第3態様においては、複数の前記結束具のうちの少なくとも一部は、ベルト付留め具である。この場合、ベルト付留め具が内装パネルに留められることにより、電線の荷重は主としてベルト付留め具によって支えられる。また、防音シート自体は非常に軽量である。従って、ステープラ又はスポット溶着などによって防音シートを内装パネルに固定する作業を簡略化することができる。
【0021】
また、
第1態様においては、2枚の防音シートが、電線を挟み込んだ状態で重なっている。この場合、電線における内装パネルに対向する側の面とその反対側の面との両方が、2枚の防音シート各々によって保護される。また、内装パネル側の防音シートが、電線と内装パネルとの接触による異音(衝突音)の発生を防ぐ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される各実施形態におけるワイヤハーネスは、例えば、車両における乗員室の内壁をなすインスツルメントパネルなどの内装パネルの裏側に配置される。
【0024】
<第1実施形態>
まず、
図1,2を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス10について説明する。
図1に示されるように、ワイヤハーネス10は、複数の電線9を含む電線束90と2枚の防音シート1A,1Bとを備えている。
【0025】
<電線>
2枚の防音シート1A,1Bによる保護の対象となる電線束90は、複数の電線9の束である。電線9は、長尺な導体である芯線と、その芯線の周囲を覆う絶縁体である絶縁被覆とを有する絶縁電線である。電線9の芯線は、例えば、銅又はアルミニウムを主成分とする金属の線材である。また、電線9の絶縁被覆は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フッ素樹脂又はポリエステルなどの合成樹脂からなる絶縁体である。
図1に示される例では、電線9の端部にコネクタが設けられている。
【0026】
<防音シート>
2枚の防音シート1A,1B各々は、防音材からなるシート状の部材である。2枚の防音シート1A,1Bは、電線9における両端部の間の中間領域に沿って配置されている。さらに、2枚の防音シート1A,1Bは、電線9の中間領域に沿う状態で電線9と一体に組み合わされている。
【0027】
本実施形態において、2枚の防音シート1A,1Bは、電線9の中間領域を挟み込んだ状態で重なっている。なお、防音材は、吸音材、遮音材及び制振材でもある。
【0028】
以下の説明において、重なった2枚の防音シート1A,1Bのことを防音シート対1と称する。さらに、2枚の防音シート1A,1Bのうち、電線9に対して車両の内装パネル側の反対側に配置されるものを第一防音シート1Aと称し、電線9に対して車両の内装パネル側に配置されるものを第二防音シート1Bと称する。
【0029】
防音シート対1は、二次元状に広がって形成されている。防音シート対1は、要求仕様に応じた形状及び厚みで形成されている。例えば、防音シート対1の形状は、防音シート対1が配置されるスペースの形状に応じて定められる。
図1,2に示される例では、防音シート対1は五角形状に形成されている。また、防音シート対1の厚みは、要求される防音性能の高さと、防音シート対1が配置されるスペースの厚みとに応じて定められる。
【0030】
2枚の防音シート1A,1B各々は、柔軟性及び弾性を有するシート状の防音材からなる。防音シート1A,1Bは、例えば不織布からなる。なお、防音材は、制振材又は防音材と換言可能である。例えば、防音シート1A,1Bは、約20mmないし約40mm程度の厚みの不織布である。
【0031】
ここで、不織布について説明する。防音シート1A,1Bとして採用される不織布は、例えば、絡み合う基本繊維とバインダと称される接着樹脂とを含む。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、約110[℃]から約150[℃]の融点)を有する熱可塑性樹脂である。このような不織布は、基本繊維の融点よりも低く、かつ、接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱されることにより、接着樹脂が溶融して基本繊維の隙間に溶け込む。その後、不織布の温度が、接着樹脂の融点よりも低い温度まで下がると、接着樹脂は、周囲に存在する基本繊維を結合した状態で硬化する。これにより、不織布の形状は、加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時に型枠によって成形された形状で維持される。
【0032】
接着樹脂は、例えば、粒状の樹脂又は繊維状の樹脂などである。また、接着樹脂は、芯繊維の周囲を覆うように形成されることも考えられる。このように、芯繊維が接着樹脂で被覆された構造を有する繊維は、バインダ繊維などと称される。芯繊維の材料は、例えば、基本繊維と同じ材料が採用される。
【0033】
また、基本繊維は、接着樹脂の融点において繊維状態が維持されればよく、樹脂繊維の他、各種の繊維が採用され得る。また、接着樹脂は、例えば、基本繊維の融点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂繊維が採用される。不織布を構成する基本繊維と接着樹脂との組合せとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)を主成分とする樹脂繊維が基本繊維として採用され、PET及びPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂が接着樹脂として採用されることが考えられる。そのような不織布において、基本繊維の融点は概ね250[℃]であり、接着樹脂の融点は約110[℃]から約150[℃]の間の温度である。
【0034】
接着樹脂を含む不織布は、熱可塑性樹脂を含む他の部材と密着した状態で加熱されることにより、加熱された部分が他の部材に溶着する。
【0035】
また、不織布は、ホットプレス成形により成形可能である。ホットプレス成形は、加工対象である不織布を金型などの加熱体の間に挟み込んで加圧しつつ、その不織布を加熱することにより、不織布を加熱体の内面形状に成形することである。
【0036】
不織布は、ホットプレス成形において、型枠内で約110[℃]から約250[℃]までの範囲内の温度に加熱された後に冷却される。これにより、接着樹脂が溶融して周囲の基本繊維を結合する。そのため、不織布は、型枠の内面に沿う形状に成形されるとともに、加熱体に接触した面が硬化する。
【0037】
不織布がホットプレス成形によって硬化した部材は、その部材自体ある程度の可撓性を有している。しかしながら、不織布の硬化部材は、ホットプレス成形が施される前の不織布に比べ、一定の形状を保持する硬さが強化される。
【0038】
2枚の防音シート1A,1Bは、電線9を挟み込んだ状態で接合されている。
図1,2に示される例では、防音シート対1には、溶着によって接合された部分である溶着部3が形成されている。本実施形態においては、溶着部3は、比較的小さな領域に局所的に形成されたスポット溶着部である。
【0039】
なお、溶着部3のスポット形状は円形には限られない。例えば、溶着部3のスポット形状が、四角形などの多角形、楕円形又はその他の異形であることも考えられる。
【0040】
溶着部3は、スポット加熱を行う加熱体が防音シート対1の一部に押し当てられることによって形成される。スポット加熱用の加熱体としては、例えば、ヒータ内蔵の金属棒、又は超音波ホッチキスなどの超音波溶着機における溶接ホーンなどが考えられる。
【0041】
また、2枚の防音シート1A,1Bのうちの少なくとも一方における電線9に対向する側の表面に、不図示の粘着層が形成されていることが考えられる。この場合、粘着層は、2枚の防音シート1A,1Bを、それらが相互に対向する面全体に亘る範囲において接着する。これにより、接着層は、2枚の防音シート1A,1Bの間において電線9の位置がずれることを防止する。
【0042】
2枚の防音シート1A,1Bが粘着層で接着されている場合、溶着部3は、より強固に、かつ、高い耐久性をもって、2枚の防音シート1A,1Bを接合する役割を果たす。
【0043】
また、2枚の防音シート1A,1Bのうちの少なくとも一方の外縁部に、外側へ張り出した張出部11が形成されている。張出部11は、2枚の防音シート1A,1Bのうちの少なくとも一方の外縁部における電線9が通過する部分に形成されている。張出部11は、粘着テープなどの結束材5によって電線9とともに結束されている。
【0044】
図1に示される例では、張出部11は第一防音シート1Aの外縁部に形成されている。しかしながら、張出部11が第二防音シート1Bの外縁部に形成されること、又は、張出部11が第一防音シート1Aの外縁部及び第二防音シート1Bの外縁部の両方に形成されることも考えられる。
【0045】
防音シート1A,1Bの張出部11と電線9とが結束されることにより、電線9における防音シート対1から外側へ延び出た部分の長さが一定に維持される。さらに、防音シート対1の外縁部における電線9の通過位置がずれることが防止される。
【0046】
なお、
図1において、複数の張出部11のうちの一部の図示が省略されている。
【0047】
図1,2に示されるように、複数の孔4が第一防音シート1Aに形成されている。これら複数の孔4は、第一防音シート1Aにおける電線9の経路に沿う位置に形成されている。
図1,2に示される例では、複数の孔4は、その孔4を通じて電線9が見える位置に形成されている。しかしながら、複数の孔4の位置は、
図1,2に示される位置に限られない。複数の孔4は、第一防音シート1Aにおける電線9に対向する面に対し反対側の面から見て、電線9の経路を特定できる位置に形成されていればよい。
【0048】
<効果>
ワイヤハーネス10は、電線9と防音シート1A,1Bとが一体に組み合わされた構造を有している。そのため、防音シート1A,1Bが車両の内装パネルの裏側などの防音を要する場所に取り付けられるだけで、防音シート1A,1Bの取り付けと電線9の取り付け(配線)とが完了する。従って、防音を要する場所への電線9及び防音シート1A,1Bの取り付け作業が容易となる。
【0049】
さらに、ワイヤハーネス10においては、防音シート1A,1Bが、電線9の保護部材を兼ねる。例えば、電線9が内装パネルの裏側に配置された機器と接触することを防ぎたい場合が考えられる。この場合、ワイヤハーネス10は、電線9が第一防音シート1Aよりも内装パネル側に位置する状態で、内装パネルの裏面に取り付けられればよい。
【0050】
また、ワイヤハーネス10においては、2枚の防音シート1A,1Bが、電線9を挟み込んだ状態で重なっている。この場合、電線9における内装パネルに対向する側の面とその反対側の面との両方が、2枚の防音シート1A,1B各々によって保護される。また、内装パネル側の第二防音シート1Bが、電線9と内装パネルとの接触による異音(衝突音)の発生を防ぐ。
【0051】
ところで、防音シート1A,1Bがステープラ又はスポット溶着などによって内装パネルの裏面に固定される場合、電線9の位置を避けながら防音シート1A,1Bの固定位置を特定することが必要である。しかしながら、ワイヤハーネス10を取り付ける作業員から見れば、電線9が第一防音シート1Aの裏側に隠れている。この場合、防音シート1A,1Bの固定位置を特定することが難しい。
【0052】
一方、ワイヤハーネス10においては、複数の孔4が、第一防音シート1Aにおける電線9の経路に沿う位置に形成されている。これら複数の孔4は、作業者から見て第一防音シート1Aの裏側に存在する電線9の位置を示す目印として機能する。従って、ワイヤハーネス10が採用されれば、容易に防音シート1A,1Bの固定位置を特定することが可能となる。その結果、電線9及び防音シート1A,1Bの取り付け作業が容易となる。
【0053】
また、第一防音シート1Aにおける所望の位置に複数の孔4を空けることは容易である。具体的には、防音シート1A,1Bは、防音材からなるシート状の母材に対する打ち抜き加工により、要求仕様に応じた形状で切り出される。その打ち抜き加工において、第一防音シート1Aの複数の孔4を第一防音シート1Aの切り出し(裁断)と同時に形成することが可能である。このようにして複数の孔4を形成することは、インクなどによってマークを描くことよりも遙かに容易である。
【0054】
<第2実施形態>
次に、
図3〜5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス10Aについて説明する。
図3はワイヤハーネス10Aの斜視図である。
図4はワイヤハーネス10Aにおける電線固定部の分解斜視図である。
図5はワイヤハーネス10Aにおける電線固定部の正面図である。
【0055】
ワイヤハーネス10Aは、
図1,2に示されるワイヤハーネス10と比較して、電線9の中間領域を防音シート1A,1Bに固定する構造が異なる。
図3〜5において、
図1,2に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス10Aにおけるワイヤハーネス10と異なる点についてのみ説明する。
【0056】
ワイヤハーネス10Aは、ワイヤハーネス10と同様に、複数の電線9を含む電線束90と、電線束90の中間領域に沿う2枚の防音シート1A,1Bとを備えている。2枚の防音シート1A,1Bは、電線9の中間領域に沿う状態で電線9と一体に組み合わされている。さらに、ワイヤハーネス10Aは複数の結束具8を備えている。
【0057】
図4に示されるように、複数の結束具8各々は、結束用のベルト81と、ベルト81を環状に保持するベルト保持部82とを有する。ベルト81の一端は予めベルト保持部82に固定された固定端であり、ベルト81の他端は自由端である。
【0058】
ベルト保持部82には、ベルト81の自由端が挿入される貫通孔が形成されている。そして、ベルト保持部82は、ベルト81の長手方向における任意の位置の一部分を貫通孔内に保持する引っ掛かり機構を備えている。ベルト保持部82が、ベルト81の一部分を保持することにより、ベルト81が環状に保持される。
【0059】
また、ワイヤハーネス10Aにおける第一防音シート1Aには、結束具8のベルト81が通される複数対のベルト通し孔4Aが形成されている。これら複数のベルト通し孔4Aは、第一防音シート1Aにおける電線9の経路に沿う複数の箇所に形成されている。また、複数のベルト通し孔4Aは、電線9の経路に沿う複数の箇所において、電線9の経路の両側に対に形成されている。
【0060】
図4,5に示されるように、複数の結束具8各々は、一対のベルト通し孔4Aに通された81ベルトによって、電線9と第一防音シート1Aにおける一対のベルト通し孔4Aの間の部分12とを結束している。ベルト保持部82は、ベルト81を、電線9と一対のベルト通し孔4Aの間の部分12とを結束する環状に保持する。
【0061】
換言すれば、電線9は、結束具8によって第一防音シート1Aにおける一対のベルト通し孔4Aの間の部分12と結束されている。これにより、電線9は、第一防音シート1Aと一体に組み合わされている。また、電線9は、結束具8によって第一防音シート1Aにおける予め定められた位置に固定される。
【0062】
複数対のベルト通し孔4Aは、結束具8のベルト81が通される孔である。さらに、複数対のベルト通し孔4Aは、第一防音シート1Aの裏側に存在する電線9の位置を示す目印として機能する孔でもある。
【0063】
即ち、ワイヤハーネス10Aにおいて、第一防音シート1Aにおける複数対のベルト通し孔4Aは、ワイヤハーネス10の第一防音シート1Aにおける複数の孔4に相当する。
図3に示される例では、電線9の位置を示す目印として機能する複数の孔は、全てベルト通し孔4Aである。しかしながら、電線9の位置を示す目印として機能する複数の孔が、ワイヤハーネス10における孔4とワイヤハーネス10Aにおけるベルト通し孔4Aとを含むことも考えられる。
【0064】
ワイヤハーネス10Aが採用されれば、ワイヤハーネス10が採用される場合と同様の効果が得られる。さらに、ワイヤハーネス10Aが採用されれば、以下に示される効果も得られる。
【0065】
まず、電線9と第一防音シート1Aとを結束具8を用いて容易に一体に組み合わせることが可能となる。さらに、電線9の位置を示す目印としての孔が、ベルト通し孔4Aを兼ねるため、防音シート1A,1Bに電線9を取り付けるための加工を施す工程が簡略化される。
【0066】
<第3実施形態>
次に、
図6を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス10Bについて説明する。
図6はワイヤハーネス10Bの斜視図である。
【0067】
ワイヤハーネス10Bは、
図3〜5に示されるワイヤハーネス10Aと比較して、第二防音シート1Bが省略された構成を有している。
図6において、
図1〜5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス10Bにおけるワイヤハーネス10Aと異なる点についてのみ説明する。
【0068】
ワイヤハーネス10Bは、複数の電線9を含む電線束90と、電線束90の中間領域に沿う第一防音シート1Aと、複数の結束具8とを備えている。第一防音シート1Aは、電線9の中間領域に沿う状態で、複数の結束具8によって電線9と一体に組み合わされている。また、電線9は、結束具8によって第一防音シート1Aにおける予め定められた位置に固定される。
【0069】
従って、ワイヤハーネス10Bにおける第一防音シート1Aには、結束具8のベルト81が通される複数対のベルト通し孔4Aが形成されている。これら複数のベルト通し孔4Aは、第一防音シート1Aにおける電線9の経路に沿う複数の箇所に形成されている。また、複数のベルト通し孔4Aは、電線9の経路に沿う複数の箇所において、電線9の経路の両側に対に形成されている。
【0070】
即ち、ワイヤハーネス10Bは、ワイヤハーネス10Aの構成から第二防音シート1Bが除かれた構成を有している。
【0071】
ワイヤハーネス10Bが採用されれば、ワイヤハーネス10,10Aが採用される場合と同様の効果が得られる。但し、ワイヤハーネス10Bは、電線9と内装パネルとが接触することを防ぐ構造を有していない。
【0072】
<第4実施形態>
次に、
図7を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス10Cについて説明する。
図7はワイヤハーネス10Cにおける電線固定部の断面図である。
【0073】
ワイヤハーネス10Cは、
図6に示されるワイヤハーネス10Bの構成に対し、複数の結束具8の少なくとも一部がベルト付留め具6に置き換えられた構成を有している。
図7は、第一防音シート1Aにおける、ベルト付留め具6による電線固定部の断面図である。
【0074】
ベルト付留め具6は、電線9を板状の支持体7に留めるために用いられる周知の用具である。ベルト付留め具6は、結束部61と留め部62とを備える。支持体7は、例えば、インスツルメントパネルなどの内装パネルである。なお、
図7において支持体7が仮想線(二点鎖線)で描かれている。取付孔7Aは、板状の支持体7に形成された貫通孔である。
【0075】
ベルト付留め具6は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリアミド(PA)などの熱可塑性樹脂の部材である。本実施形態において、ベルト付留め具6は、それ全体が一体に成形された部材である。
【0076】
結束部61は、結束用のベルト81と、ベルト81を環状に保持するベルト保持部82とを有している。本実施形態において、結束部61のベルト81は、第一防音シート1Aにおける一対のベルト通し孔4Aに通される。結束部61は、一対のベルト通し孔4Aに通された81ベルトによって、電線9と第一防音シート1Aにおける一対のベルト通し孔4Aの間の部分12とを結束している。
【0077】
即ち、結束部61は、ワイヤハーネス10A,10Bが備える結束具8に相当する。結束部61を備えるベルト付留め具6は、結束具8の一例である。
【0078】
留め部62は、板状の支持体7における取付孔7Aの縁部に留められる部分である。留め部62は、結束部61に繋がったフランジ部621と、フランジ部621から起立して形成された挿入部622とを有している。
【0079】
フランジ部621は、取付孔7Aを塞ぐ部分である。そのため、フランジ部621は、取付孔7Aの面積よりも大きな面積の皿状に形成されている。
【0080】
挿入部622は、支持体7に形成された取付孔7Aに挿入される部分である。挿入部622は、支持体7の取付孔7Aに挿入されると、その一部がフランジ部621の反対側から支持体7における取付孔7Aの縁部に引っ掛かる。そして、フランジ部621と挿入部622が、支持体7における取付孔7Aの縁部を挟持する。これにより、留め部62は、支持体7における取付孔7Aの縁部に留まる。
【0081】
また、ワイヤハーネス10Cにおいては、複数の結束具8のうちの少なくとも一部は、ベルト付留め具6である。この場合、ベルト付留め具6が内装パネルなどの支持体7に留められることにより、電線9の荷重は主としてベルト付留め具6によって支えられる。また、第一防音シート1A自体は非常に軽量である。
【0082】
従って、ステープラ又はスポット溶着などによって第一防音シート1Aを内装パネルに固定する作業を簡略化することができる。例えば、ステープラ又はスポット溶着などによる第一防音シート1Aの固定箇所を少なくすることが可能となる。
【0083】
<その他>
図3〜5に示されるワイヤハーネス10Aにおいて、結束具8が、第一防音シート1Aの一部と電線9と第二防音シート1Bの一部とを一括して結束することも考えられる。この場合、複数対のベルト通し孔4Aは、第一防音シート1A及び第二防音シート1Bの両方に形成される。
【0084】
さらに、結束具8が、第一防音シート1Aの一部と電線9と第二防音シート1Bの一部とを一括して結束する場合において、複数の結束具8の少なくとも一部がベルト付留め具6であることも考えられる。
【0085】
ワイヤハーネス10,10A,10B,10Cにおいて、防音シート1A,1Bが不織布以外のシート状の防音材であることも考えられる。例えば、防音シート1A,1Bがシート状の発泡樹脂の部材であることなども考えられる。
【0086】
なお、本発明に係るワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態を自由に組み合わせること、或いは各実施形態を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。