特許第5900410号(P5900410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900410
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
   B23K20/12 D
   B23K20/12 G
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-99544(P2013-99544)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-217866(P2014-217866A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 諒
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−125807(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/058086(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公告第1361435(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状を呈する一対の第一縦辺部と板状を呈する一対の第一横辺部とで構成され平面視矩形枠状の第一側壁部を備えた第一部材と、板状を呈する一対の第二縦辺部と板状を呈する一対の第二横辺部とで構成され平面視矩形枠状の第二側壁部を備えた第二部材とを準備する準備工程と、
前記第一縦辺部及び前記第一横辺部の端面と前記第二縦辺部及び前記第二横辺部の端面とをそれぞれ突き合せ、前記第一縦辺部の長手方向と平行に往復移動させて摩擦圧接する摩擦圧接工程と、を含み、
前記第一横辺部の前記端面の少なくとも一部と前記第二横辺部の前記端面の少なくとも一部とに、前記摩擦圧接工程の開始時において間隔をあけて対向する離間面を設けておき、前記摩擦圧接工程の進行に伴って、前記離間面同士が接触して摩擦圧接されることを特徴とする部材の接合方法。
【請求項2】
板状を呈する一対の第一縦辺部と板状を呈する一対の第一横辺部とで構成され平面視矩形枠状の第一側壁部を備えた第一部材と、第二部材とを準備する準備工程と、
前記第二部材によって前記第一縦辺部及び前記第一横辺部の端面と前記第一部材の開口を塞ぐとともに前記第一部材の前記端面と対向する対向面とを突き合せ、前記第一縦辺部の長手方向と平行に往復移動させて摩擦圧接する摩擦圧接工程と、を含み、
前記第一横辺部の前記端面の少なくとも一部と前記対向面の少なくとも一部とに、前記摩擦圧接工程の開始時において間隔をあけて対向する離間面を設けておき、前記摩擦圧接工程の進行に伴って、前記離間面同士が接触して摩擦圧接されることを特徴とする部材の接合方法。
【請求項3】
前記第一横辺部の端面及び前記第二横辺部の端面の少なくともいずれか一方に切欠き部を設けて前記離間面を形成することを特徴とする請求項1に記載の部材の接合方法。
【請求項4】
前記第一横辺部の端面及び前記対向面の少なくともいずれか一方に切欠き部を設けて前記離間面を形成することを特徴とする請求項2に記載の部材の接合方法。
【請求項5】
前記切欠き部の切欠き高さを0.15mm以上に設定することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の部材の接合方法。
【請求項6】
前記第一横辺部の端面及び前記第二横辺部の端面の少なくともいずれか一方の角部を面取りして前記離間面を形成することを特徴とする請求項1に記載の部材の接合方法。
【請求項7】
前記第一横辺部の端面及び前記対向面の少なくともいずれか一方の角部を面取りして前記離間面を形成することを特徴とする請求項2に記載の部材の接合方法。
【請求項8】
前記面取りの高さを1.0mm以上に設定することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の部材の接合方法。
【請求項9】
前記摩擦圧接工程の後に、摩擦圧接工程で発生したバリを溶加材として、摩擦圧接による接合部に沿って溶接を施す溶接工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には円筒状を呈する金属部材同士を摩擦圧接によって接合する方法が開示されている。この接合方法は、円筒状の金属部材の端面同士を押圧しつつ中心軸周りに高速回転させることで、接合面に摩擦熱を発生させて両部材を接合するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/010265号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属部材同士を突き合わせた突合せ部が平面視矩形枠状を呈する場合、金属部材同士を回転させて接合することができないため、金属部材同士を直線状に往復移動させて接合することが考えられる。図27は課題を説明するための図であって、(a)は接合前の分解斜視図、(b)は接合前の断面図、(c)は接合後の断面図である。
【0005】
図27の(a)に示すように、ここでは、第一部材101と第二部材110とを摩擦圧接によって接合する場合を例示する。第一部材101は、平面視矩形枠状の側壁部102と、側壁部102に等間隔で配設された仕切り部103とを有する。第二部材は、平面視矩形の底部111と、底部111に垂下する平面視矩形枠状の側壁部112とを有する。
【0006】
このような平面視長方形の部材に対して摩擦圧接を行う際には、図27の(b)に示すように、第一部材101の外側を固定治具120で移動不能に拘束しつつ、側壁部102の上端面と側壁部112の下端面同士を突き合わせる。そして、側壁部102の縦辺部105の長手方向と平行に第一部材101及び第二部材110を相対的に往復移動させて接合することが考えられる。
【0007】
図27の(c)に示すように、固定治具120で第一部材101の外側を固定しているため、摩擦圧接によって第一部材101の横辺部106に板厚方向の応力が作用すると、横辺部106の先端が内側に倒れ込み、接合不良となるという問題がある。また、第一部材101と第二部材110の外面が凹んでしまい、意匠性等にも悪影響を及ぼすという問題がある。
【0008】
また、例えば、側壁部102と仕切り部103とで囲まれた空間を流体の流路として利用する場合は、横辺部106の倒れ込みによって当該流路が閉塞されるという問題がある。また、摩擦圧接によって側壁部102,112の内面にバリが多く発生した場合においても当該流路が閉塞されるという問題がある。
【0009】
このような観点から、本発明は、側壁部の倒れ込みを防ぐとともに、摩擦圧接により接合部に発生するバリを低減させることができる部材の接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために本発明は、板状を呈する一対の第一縦辺部と板状を呈する一対の第一横辺部とで構成され平面視矩形枠状の第一側壁部を備えた第一部材と、板状を呈する一対の第二縦辺部と板状を呈する一対の第二横辺部とで構成され平面視矩形枠状の第二側壁部を備えた第二部材とを準備する準備工程と、前記第一縦辺部及び前記第一横辺部の端面と前記第二縦辺部及び前記第二横辺部の端面とをそれぞれ突き合せ、前記第一縦辺部の長手方向と平行に往復移動させて摩擦圧接する摩擦圧接工程と、を含み、前記第一横辺部の前記端面の少なくとも一部と前記第二横辺部の前記端面の少なくとも一部とに、前記摩擦圧接工程の開始時において間隔をあけて対向する離間面を設けておき、前記摩擦圧接工程の進行に伴って、前記離間面同士が接触して摩擦圧接されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、板状を呈する一対の第一縦辺部と板状を呈する一対の第一横辺部とで構成され平面視矩形枠状の第一側壁部を備えた第一部材と、第二部材とを準備する準備工程と、前記第二部材によって前記第一縦辺部及び前記第一横辺部の端面と前記第一部材の開口を塞ぐとともに前記第一部材の前記端面と対向する対向面とを突き合せ、前記第一縦辺部の長手方向と平行に往復移動させて摩擦圧接する摩擦圧接工程と、を含み、前記第一横辺部の前記端面の少なくとも一部と前記対向面の少なくとも一部とに、前記摩擦圧接工程の開始時において間隔をあけて対向する離間面を設けておき、前記摩擦圧接工程の進行に伴って、前記離間面同士が接触して摩擦圧接されることを特徴とする。
【0012】
かかる方法によれば、摩擦圧接によって板厚方向の応力を受ける横辺部側において、摩擦圧接の開始時には離間し、摩擦圧接の進行に伴って接触する一対の離間面を設けている。これにより、当該一対の離間面は、他の部位よりも遅れて擦り合わされるため、横辺部に発生する摩擦熱やこの部位に作用する応力を小さくすることができる。よって、側壁部の倒れ込みを抑制するとともに接合部に発生するバリを少なくすることができる。
【0013】
また、前記第一横辺部の端面及び前記第二横辺部の端面の少なくともいずれか一方に切欠き部を設けて前記離間面を形成することが好ましい。また、前記第一横辺部の端面及び前記対向面の少なくともいずれか一方に切欠き部を設けて前記離間面を形成することが好ましい。
【0014】
かかる方法によれば、離間面を容易に形成することができる。
【0015】
また、前記切欠き部の切欠き高さを0.15mm以上に設定することが好ましい。
【0016】
かかる方法によれば、より確実に側壁部の倒れ込みを抑制するとともに接合部に発生するバリを少なくすることができる。
【0017】
また、前記第一横辺部の端面及び前記第二横辺部の端面の少なくともいずれか一方の角部を面取りして前記離間面を形成することが好ましい。また、前記第一横辺部の端面及び前記対向面の少なくともいずれか一方の角部を面取りして前記離間面を形成することが好ましい。
【0018】
かかる方法によれば、離間面を容易に形成することができる。
【0019】
また、前記面取りの高さを1.0mm以上に設定することが好ましい。
【0020】
かかる方法によれば、より確実に側壁部の倒れ込みを抑制するとともに接合部に発生するバリを少なくすることができる。
【0021】
また、前記摩擦圧接工程の後に、摩擦圧接工程で発生したバリを溶加材として、摩擦圧接による接合部に沿って溶接を施す溶接工程をさらに含むことが好ましい。
【0022】
かかる方法によれば、接合された部材の外面をきれいに仕上げることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る部材の接合方法によれば、側壁部の倒れ込みを防ぐとともに、摩擦圧接により接合部に発生するバリを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態に係る中空容器の分解斜視図である。
図2】第一実施形態に係る第一部材の拡大平面図である。
図3】第一実施形態に係る第二部材の端部周りの拡大図であって、(a)平面図であり、(b)は斜視図である。
図4】第一実施形態に係る中空容器の断面図である。
図5】第一実施形態に係る部材の接合方法の突合せ工程を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のI−I矢視図である。
図6】(a)は図5の(b)のII−II矢視図であり、(b)は図6の(a)のIII矢視図である。
図7】第二実施形態に係る中空容器の分解斜視図である。
図8】第三実施形態に係るフランジ付き筒状体の分解斜視図である。
図9】第三実施形態に係る第二部材を裏側から見た斜視図である。
図10】第三実施形態に係るフランジ付き筒状体を示す図であって、(a)は側断面図であり、(b)は(a)のIV−IV断面図である。
図11】第三実施形態に係る部材の接合方法の突合せ工程を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のV−V矢視図である。
図12】第四実施形態に係る中空容器を示す分解斜視図である。
図13】第五実施形態に係る中空容器を示す分解斜視図である。
図14】第五実施形態に係る部材の接合方法の突合せ工程を示す断面図である。
図15】第六実施形態に係るフランジ付き中空容器を示す分解斜視図である。
図16】第六実施形態に係る第二部材を裏側から見た斜視図である。
図17】第六実施形態に係る部材の接合方法の突合せ工程を示す側断面図である。
図18】第七実施形態に係る第二部材を裏側から見た斜視図である。
図19】実施例Aを示す図であって(a)は分解斜視図であり、(b)は突き合せた後の正面図である。
図20】実施例Aの変形量の測定方法を示す側断面図である。
図21】実施例Aの結果を示す表である。
図22】実施例Aの結果を示すグラフである。
図23】実施例Bを示す図であって、(a)は分解斜視図であり、(b)は突き合せた後の正面図である。
図24】実施例Bにおいて突き合せた後の側断面図である。
図25】実施例Bの結果を示す表である。
図26】実施例Bの結果を示すグラフである。
図27】課題を説明するための図であって、(a)は接合前の分解斜視図、(b)は接合前の断面図、(c)は接合後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る部材の接合方法について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の部材の接合方法では、金属部材同士を接合して中空容器1を製造する場合を例示する。中空容器1は、例えば、内部に流体を流して伝熱部材として用いられる。
【0026】
中空容器1は、第一部材2と、第二部材3とで構成される。第一部材2及び第二部材3の材料は、摩擦圧接が可能な金属又は樹脂であれば特に制限されないが、本実施形態ではいずれもアルミニウム合金を用いている。また、第一部材2及び第二部材3の耐力も特に制限されないが、本実施形態では、第一部材2の耐力よりも第二部材3の耐力の方が大きくなるように設定している。つまり、後記する摩擦圧接工程の際に、第一部材2よりも第二部材3の方が軟化しにくくなっている。まず、接合する前の第一部材2と第二部材3の構成について説明する。
【0027】
第一部材2は、平面視矩形の底部11と、底部11に立設された平面視矩形枠状の第一側壁部12と、第一側壁部12の内部に形成された複数の仕切り部13とで構成されている。第一部材2の成形方法は特に制限されないが、本実施形態では押出成形によって第一側壁部12と仕切り部13とを一体成形した後、当該成形品の端部に底部11を接合している。
【0028】
第一側壁部12は、第一縦辺部14,14と、第一横辺部15,15とで構成されている。第一縦辺部14,14は、板状を呈し互いに離間して平行に配置されている。第一横辺部15,15は、板状を呈し互いに離間して平行に配置されている。第一縦辺部14は、第一横辺部15に対して垂直になっている。第一縦辺部14の上端面14aと第一横辺部15の上端面15aは面一になっている。図2に示すように、第一縦辺部14の仮想の境界面(側端面)14bは、第一横辺部15の仮想の境界面(側面)15eに接続されている。
【0029】
図1に示すように、上端面15aは3つの領域に分けられる。後記する突合せ工程において下端面25aと接触する面を上端面15a,15aとし、下端面25aと離間する面を上端面15aとする。
【0030】
仕切り部13は、板状を呈し第一縦辺部14,14に対して垂直に連結されている。仕切り部13は、等間隔で複数枚配設されている。第一側壁部12と仕切り部13とで形成された複数の空間は、流体が流れる流路P,P・・・として用いられる。仕切り部13の上端面13aは、上端面14a,15aと面一になっている。
【0031】
図1に示すように、第二部材3は、平面視矩形の底部21と、底部21から垂下した平面視矩形枠状の第二側壁部22とで構成されている。第二部材3の内部には、底部21と第二側壁部22とで構成された凹部Qが形成されている。第二部材3の成形方法は特に制限されないが、本実施形態ではダイキャストによって一体成形されている。
【0032】
第二側壁部22は、第二縦辺部24,24と、第二横辺部25,25とで構成されている。第二縦辺部24,24は、板状を呈し互いに離間して平行に配置されている。第二横辺部25,25は、板状を呈し互いに離間して平行に配置されている。第二縦辺部24は、第二横辺部25に対して垂直になっている。第二縦辺部24の長さ及び板厚は、第一縦辺部14の長さ及び板厚とそれぞれ同等になっている。また、第二横辺部25の長さ及び板厚は、第一横辺部15の長さ及び板厚と同等になっている。図3の(a)に示すように、第二縦辺部24の仮想の境界面(側端面)24bは、第二横辺部25の仮想の境界面25eに接続されている。
【0033】
図3の(a)、(b)に示すように、第二横辺部25の下端面25aにおいて、左右方向中央には、断面矩形状に凹設された切欠き部26が形成されている。切欠き部26は、底面26aと、底面26aに対して垂直な側面26b,26bで構成されている。切欠き部26の幅は第二横辺部25の板厚と同等になっている。切欠き部26の長さは、第二縦辺部24,24間長さと同等になっている。切欠き部26の高さは、第二部材3の材料や摩擦圧接工程の条件によって適宜設定される。例えば、本実施形態では切欠き部26の高さが0.15mmになっている。第二縦辺部24の下端面24aと第二横辺部25の下端面25aは面一になっている。
【0034】
図4は、第一実施形態に係る中空容器の断面図である。図4に示すように、中空容器1は、第一部材2と第二部材3とを摩擦圧接によって接合されている。第一部材2と第二部材3との接合部には、その外周に亘って溶接金属W1が形成されている。溶接金属W1はレーザー溶接によって形成される部位である。
【0035】
次に、本実施形態に係る部材の接合方法について説明する。本実施形態に係る部材の接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、摩擦圧接工程と、溶接工程とを行う。
【0036】
図1に示すように、準備工程は、第一部材2と第二部材3とを用意する工程である。第一部材2及び第二部材3の成形方法は特に制限されるものではない。
【0037】
図5の(a)及び(b)に示すように、突合せ工程は、第一部材2と第二部材3とを突き合わせる工程である。突合せ工程では、第一部材2の上端面14a,14aと第二部材3の下端面24a,24aとを面接触させる。また、第一部材2の上端面15a,15aと第二部材3の下端面25a,25aとを面接触させる。また、第一部材2の第一側壁部12の外周面と第二部材3の第二側壁部22の外周面とを面一にする。これにより、突合せ部J1(図5の(b)のハッチングの部分)が形成される。
【0038】
図6の(a)、(b)に示すように、突合せ工程では、第二部材3の第二横辺部25に切欠き部26が形成されているため、上端面15aと底面26aとはわずかな隙間をあけて対向する。底面26a及びこの底面26aに対向する上端面15aは、特許請求の範囲の「離間面」に相当する。
【0039】
なお、本実施形態の摩擦圧接工程では、第一部材2を固定して第二部材3を相対移動させるため、突合せ工程では、第一部材2の第一側壁部12の周囲を固定治具で移動不能に拘束する。
【0040】
摩擦圧接工程は、摩擦工程と圧接工程とを行って、第一部材2と第二部材3とを接合する工程である。摩擦工程では、突き合わされた第一部材2と第二部材3とを互いに近接する方向に押圧する。そして、本実施形態では、第一縦辺部14の長手方向と平行に第一部材2及び第二部材3を相対的かつ直線的に往復移動させる。本実施形態では、第一部材2は移動させず、第二部材3のみを直線的に往復移動させる。
【0041】
本実施形態に係る摩擦工程では、まず、上端面14aと下端面24a及び上端面15aと下端面25a(突合せ部J1)とが擦り合わされて摩擦熱が発生し、軟化した母材が外部に排出されることで、第一側壁部12及び第二側壁部22のうち擦り合わされている部位の高さが徐々に小さくなる。そして、続けて往復移動させることにより、上端面14aと下端面24a及び上端面15aと下端面25aに加えて上端面(離間面)15aと底面(離間面)26aとが擦り合わされて摩擦熱が発生する。つまり、離間面同士の摩擦工程は、上端面14aと下端面24a及び上端面15aと下端面25aとの摩擦工程よりも少し遅れて行われる。
【0042】
摩擦工程における条件は適宜設定すればよいが、例えば、周波数を100〜260Hz、振幅を1.0〜2.0mm、摩擦圧力を20〜60MPaに設定する。また、摩擦工程の時間を5〜10秒程度に設定する。摩擦工程が終了したら、直ちに圧接工程に移行する。
【0043】
圧接工程では、第一部材2及び第二部材3を相対移動させずに互いに近接する方向に押圧する。圧接工程における条件は適宜設定すればよいが、例えば、アップセット圧力を60〜80MPa、時間を3〜5秒程度に設定する。
【0044】
摩擦工程によって接合部に摩擦熱が発生した後、往復移動を停止させ、圧接工程によってアプセット圧力を付与すると、接合部に分子間引力が働き第一部材2と第二部材3とが結合する。なお、摩擦工程の際には、軟化した母材が接合部の内側及び外側に押し出されることによってバリが発生する。
【0045】
溶接工程は、第一部材2及び第二部材3の接合部の外面に形成されたバリを溶加材として溶接を行う。溶接の種類は特に制限されないが、本実施形態ではレーザー溶接を行う。溶接工程では、アーク溶接等他の種類の溶接方法で行ってもよい。以上により、中空容器1が形成される。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る部材の接合方法によれば、摩擦圧接工程の際に、第一縦辺部14の長手方向と平行に往復移動させるため、第一横辺部15及び第二横辺部25は、その板厚方向に応力を受ける。第二横辺部25には、切欠き部26が形成されているため、上端面(離間面)15aと切欠き部26の底面(離間面)26aとの摩擦工程は、上端面14aと下端面24a及び上端面15aと下端面25aとの摩擦工程よりも遅れて行われる。そのため、切欠き部26が無い場合と比べて第二横辺部25に発生する摩擦熱及び第二横辺部25に作用する応力を小さくすることができる。これにより、第二横辺部25の倒れ込みを抑制するとともに接合部に発生するバリを少なくすることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、直線状に往復移動させても第一部材2と第二部材3とを確実に接合することができ、中空容器1の密閉性を高めることができる。
【0048】
また、摩擦圧接工程の移動方向は、第一横辺部15の長手方向と平行でもよいし、第一縦辺部14に対して斜めに移動させてもよいが、本実施形態のように第一縦辺部14の長手方向と平行に往復移動させることで、第一横辺部15の長手方向と平行に往復させる場合と比べて、第一部材2と第二部材3との接触面積を大きく確保できるため安定して摩擦圧接を行うことができる。
【0049】
また、溶接工程によれば、中空容器1の外面をきれいに仕上げることができる。また、バリを溶加材として用いるため、材料費を抑えることができる。
【0050】
なお、第一実施形態に係る部材の接合方法では、前記した形態に限定されずに適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態の第一側壁部12及び第二側壁部22はアスペクト比の大きな形状としたが、アスペクト比の小さな長方形でもよいし、正方形であってもよい。
【0051】
また、本実施形態では第一部材2及び第二部材3ともに金属部材を用いたが、いずれか一方が樹脂部材でもよいし、両方樹脂部材でもよい。また、本実施形態では、第二部材3のみに切欠き部26を設けたが、第一部材2及び第二部材3の両方に切欠き部を設けてもよいし、第一部材2のみに切欠き部を設けてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、断面矩形状の切欠き部26を設けることで、摩擦圧接工程の摩擦の進行に伴って接触する一対の離間面を設けたが、これに限定されるものではない。離間面は、摩擦圧接の際に板厚方向の応力を受ける部位において、摩擦圧接の開始時は端面同士が接触せず、摩擦の進行に伴って接触するようであればどのような形状であってもよい。また、摩擦圧接の往復移動を第一横辺部15の長手方向と平行に設定する場合は、第一縦辺部14の上端面14a及び第二縦辺部24の下端面24aに離間面を設ければよい。
【0053】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る部材の接合方法ついて説明する。図7に示すように、本実施形態に係る部材の接合方法は、第二部材3Aの幅方向全体に切欠き部26Aを形成している点で第一実施形態と相違する。本実施形態に係る部材の接合方法の説明では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0054】
第一部材2は、第一実施形態と同等の構成である。第二部材3Aは、平面視矩形の底部21と、底部21から垂下した平面視矩形枠状の第二側壁部22とで構成されている。第二部材3の内部には、底部21と第二側壁部22とで構成された凹部Qが形成されている。
【0055】
第二側壁部22は、第二縦辺部24,24と、第二横辺部25,25とで構成されている。第二横辺部25の長手方向(左右方向)には全体に亘って切欠き部26Aが形成されている。切欠き部26Aは、底面26Aaと底面26Aaに対して垂直な側面26Ab,26Abとで構成されている。
【0056】
次に、第二実施形態に係る部材の接合方法について説明する。本実施形態に係る部材の接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、摩擦圧接工程と、溶接工程とを行う。
【0057】
準備工程は、第一実施形態と同等である。突合せ工程では、第一部材2と第二部材3とを突き合せる。突合せ工程では、第一縦辺部14の上端面14a,14aと第二縦辺部24の下端面24a,24aとを面接触させる。一方、突合せ工程では、第一横辺部15の上端面15aと第二横辺部25の底面26Aaとがわずかな隙間をあけて対向する。上端面15aと底面26Aaは、特許請求の範囲の「離間面」に相当する。
【0058】
摩擦圧接工程は、摩擦工程と圧接工程とを行って、第一部材2と第二部材3Aとを接合する工程である。摩擦工程では、第一部材2と第二部材3Aとを突き合わせつつ、互いに近接する方向に押圧する。本実施形態では、第一縦辺部14の長手方向と実質的に平行に第一部材2及び第二部材3Aを相対的かつ直線的に往復移動させる。本実施形態では、第一部材2は移動させず、第二部材3Aのみを直線的に往復移動させている。
【0059】
本実施形態に係る摩擦工程では、まず、上端面14aと下端面24aと(突合せ部)が擦り合わされて摩擦熱が発生し、軟化した母材が外部に排出されることで、第一側壁部12及び第二側壁部22のうち擦り合わされている部位の高さが小さくなる。そして、続けて往復移動させることにより、上端面14aと下端面24aに加えて上端面(離間面)15aと底面(離間面)26Aaとが擦り合わされて摩擦熱が発生する。つまり、離間面同士の摩擦工程は、上端面14aと下端面24aとの摩擦工程よりも少し遅れて行われる。
【0060】
摩擦工程が終了したら、直ちに圧接工程に移行する。圧接工程は、第一実施形態と同等である。また、溶接工程も第一実施形態と同等である。
【0061】
以上のように説明した第二実施形態に係る部材の接合方法によれば、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第二実施形態のように、切欠き部26Aを第二部材3Aの左右方向の全体に設けてもよい。
【0062】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る部材の接合方法について説明する。第三実施形態に係る部材の接合方法では、図8に示すように、第一部材2B及び第二部材3Bの形状が第一実施形態と相違する。第三実施形態では、第一部材2Bと第二部材3Bとを摩擦圧接により接合して、フランジ付き筒状体1Bを形成する。
【0063】
第一部材2Bは、平面視矩形枠状の第一側壁部12と複数の仕切り部13とで構成されている。第一部材2Bは、底部11を備えていない点で第一実施形態と相違する。つまり、第一部材2Bは上下方向に連通している。
【0064】
第二部材3Bは、平面視矩形枠状の第二側壁部22Bと、第二側壁部22Bの外面から外側に向けて張り出したフランジ27を備えている点で第一実施形態と相違する。第二部材3の内部には上下方向に連通する連通孔Rが形成されている。連通孔Rは、平面視矩形になっている。第二側壁部22Bは、第二縦辺部24B,24Bと、第二横辺部25B,25Bとで構成されている。第二横辺部25Bは、第二縦辺部24B,24Bの仮想の境界面(側端面)に接続されている。
【0065】
図9は、第三実施形態に係る第二部材を裏から見た斜視図である。図9に示すように、第二縦辺部24Bの下端面24Ba,24Ba(図9では上端面になっている)は、同一平面上に位置している。第二横辺部25Bの下端面には、切欠き部26Bが形成されている。切欠き部26Bは、第二横辺部25Bの下端面全体に亘って形成されている。切欠き部26Bは、下端面24Baよりも一段上がった位置(図9では下がった位置)に形成されている。切欠き部26Bは、底面26Baと、底面26Baに対して垂直な側面26Bbとで構成されている。
【0066】
図8及び図9に示すように、フランジ27は、左右方向に張り出した第一フランジ27a,27aと、前後方向に張り出した第二フランジ27b,27bとで構成されている。
【0067】
第一フランジ27aは、板状を呈し第二縦辺部24Bの外面から左右方向外側に向けて張り出している。第一フランジ27aは、本体部31と、本体部31の前後端に形成された薄板部32,32とで構成されている。本体部31の上端面と薄板部32の上端面は面一になっている。薄板部32の下端面は、切欠き部26Bの底面26Baと面一になっており、本体部31の下端面よりも一段上がった位置に形成されている。
【0068】
第二フランジ27bは、板状を呈し第二横辺部25Bの外面及び薄板部32から前側及び後側に張り出している。第二フランジ27bの板厚は、薄板部32の板厚と同等になっている。
【0069】
図10の(a)、(b)は、第三実施形態に係るフランジ付き筒状体1Bの断面図である。図10に示すように、フランジ付き筒状体1Bは、第一部材2Bと第二部材3Bとが摩擦圧接によって接合されている。第一部材2Bと第二部材3Bとの接合部には、その外周に亘って溶接金属W2が形成されている。溶接金属W2はレーザー溶接によって形成される部位である。
【0070】
なお、本実施形態では、第一部材2Bに底部を設けずに筒状としているが、底部を設ける形態であってもよい。
【0071】
次に、第三実施形態に係る部材の接合方法について説明する。本実施形態に係る部材の接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、摩擦圧接工程と、溶接工程とを行う。
【0072】
図8に示すように、準備工程は、第一部材2Bと第二部材3Bとを用意する工程である。第一部材2Bは、押出成形によって形成されている。第二部材3Bは、ダイキャストによって一体成形されている。なお、第二部材3は、素形材の下端面を切削して切欠き部26Bを形成するようにしてもよい。
【0073】
図11(a)及び(b)に示すように、突合工程は、第一部材2Bと第二部材3Bとを突き合わせる工程である。突合せ工程では、第一部材2Bの上端面14a,14aと第二部材3Bの下端面24Ba,24Baとを接触させて突合せ部J2を形成する。図11の(b)中のハッチングの部分が突合せ部J2である。
【0074】
図11の(a)に示すように、突合せ工程では、第二部材3には切欠き部26Bが形成されているため、上端面15aと切欠き部26Bの底面26Baとはわずかな隙間をあけて対向する。上端面15a及び底面26Baは、特許請求の範囲の「離間面」に相当する。
【0075】
摩擦圧接工程は、摩擦工程と圧接工程とを行って第一部材2Bと第二部材3Bとを接合する工程である。摩擦工程では、第一部材2Bと第二部材3Bとを突き合わせつつ、互いに近接する方向に押圧する。本実施形態では、第一縦辺部14の長手方向と実質的に平行に第一部材2B及び第二部材3Bとを相対的かつ直線的に往復移動させる。本実施形態では第一部材2Bは移動させず、第二部材3Bのみを直線的に往復移動さている。
【0076】
本実施形態に係る摩擦工程では、まず、上端面14aと下端面24Ba(突合せ部J2)とが擦り合わされて摩擦熱が発生し、軟化した母材が外部に排出されることで、第一側壁部12及び第二側壁部22Bのうち擦り合わされている部位の高さが小さくなる。そして、続けて往復移動させることにより、上端面14aと下端面24Baに加えて上端面(離間面)15aと底面(離間面)26Baとが擦り合わされて摩擦熱が発生する。つまり、離間面同士の摩擦工程は、上端面14aと下端面24Baとの摩擦工程よりも少し遅れて行われる。
【0077】
摩擦工程が終了したら、直ちに圧接工程に移行する。圧接工程は、第一実施形態と同等である。また、溶接工程も第一実施形態と同等である。
【0078】
以上のように説明した第三実施形態に係る部材の接合方法によれば、横辺部の長手方向全体に切欠き部を設ける第二実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、上下方向に連通するフランジ付き筒状体1Bを形成することができる。第二部材3Bにフランジ27を設けることにより、第二部材3Bに組み付けられる付帯部材との組付けの自由度を向上させることができる。
【0079】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る部材の接合方法について説明する。図12に示すように、本実施形態に係る接合方法は、第二部材3Cが板状を呈する点で第一実施形態と相違する。本実施形態に係る部材の接合方法の説明では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0080】
第二部材3Cは、平面視矩形の底部11と、底部11に立設する平面視矩形枠状の第一側壁部12とを有する。第二部材3Cの内部には、底部11と第一側壁部12とで構成された中空部が形成されている。
【0081】
第一側壁部12は、第一縦辺部14,14と、第一横辺部15,15とで構成されている。第一縦辺部14の上端面14aと、第一横辺部15の上端面15aとは同一平面上に位置している。
【0082】
第二部材3Cは、平面視矩形の板状を呈する。第二部材3Cは、第一側壁部12の開口を塞ぐ部材である。第二部材3Cは、第一部材2Cの上端面14a,15aと対向する対向面を備えている。第二部材3Cは、第一側壁部12の外縁と略同等の大きさになっている。第二部材3Cのうち、第一部材2Cの第一横辺部15に対応する位置には切欠き部26Cが形成されている。切欠き部26Cは、断面視矩形を呈し、底面26Caと、底面26Caに垂直な側面26Cb,26Cbが形成されている。
【0083】
次に、第四実施形態に係る部材の接合方法について説明する。本実施形態に係る部材の接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、摩擦圧接工程と、溶接工程とを行う。第四実施形態に係る部材の接合方法は、第一実施形態と略同等であるため説明を省略する。
【0084】
第四実施形態に係る部材の接合方法によれば、第一部材2Cと第二部材3Cとを摩擦圧接することで中空容器1Cを製造することができる。切欠き部26Cを備えているため、第一実施形態と同じ原理で第一部材2Cの第一横辺部15の倒れ込みが抑制できるとともに、バリも少なくすることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、第一部材2Cを板状にしているが、第一側壁部12の開口を塞ぐものであればどのような形状であってもよい。また、本実施形態では、第一側壁部12の上端面に第二部材3Cを対向させているが、第一側壁部12の下端面に第二部材3Cを対向させてもよい。
【0086】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る部材の接合方法について説明する。図13に示すように、本実施形態に係る部材の接合方法は、第二部材3Dに面取り部26Dを形成している点で第一実施形態と相違する。本実施形態に係る部材の接合方法の説明では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0087】
第一部材2Dは、第一実施形態と同等の構成である。上端面15aは2つの領域に分けられる。後記する突合せ工程において下端面25Daと接触する面を上端面15aとし、下端面25Daと離間する面を上端面15aとする。
【0088】
第二部材3Dは、平面視矩形の底部21Dと、底部21Dから垂下した平面視矩形枠状の第二側壁部22Dとで構成されている。第二部材3Dの内部には、底部21Dと第二側壁部22Dとで構成された凹部Qが形成されている。
【0089】
第二側壁部22Dは、第二縦辺部24D,24Dと、第二横辺部25D,25Dとで構成されている。第二横辺部25Dのうち、下端面25Daと外面25Dcとで構成される角部にはC面取りによって形成された面取り部26Dが形成されている。面取り部26Dの面取り面26Daは、第二横辺部25の長手方向(左右方向)の全長に亘って設けられている。
【0090】
次に、第五実施形態に係る部材の接合方法について説明する。本実施形態に係る部材の接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、摩擦圧接工程と、溶接工程とを行う。
【0091】
準備工程は、面取り加工を施すことを除いては第一実施形態と同等である。面取り部26Dは、ダイキャストによって一体成形してもよいし、素形材に対してC面取り加工を施して形成してもよい。
【0092】
突合せ工程では、図14に示すように、第一部材2Dと第二部材3Dとを突き合わせる。突合せ工程では、第一縦辺部14の上端面14aと第二縦辺部24Dの下端面24Daとが面接触するとともに、第一横辺部15の上端面15aと第二横辺部25Dの下端面25Daとが面接触して突合せ部J3が形成される。
【0093】
また、第二部材3Dには、面取り部26Dが形成されているため、突合せ工程では、上端面15aと面取り面26Daとは隙間を開けて対向する。面取り面26Da及びこの面取り面26Daに対向する上端面15aは、特許請求の範囲の「離間面」に相当する。
【0094】
摩擦圧接工程は、第一実施形態と同等の方法で行う。摩擦工程では、まず、上端面14aと下端面24Da及び上端面15aと下端面25Da(突合せ部J3)が擦り合わされて摩擦熱が発生し、軟化した母材が外部に排出されることで、第一側壁部12及び第二側壁部22Dのうち擦り合わされている部位の高さが徐々に小さくなる。摩擦工程を進めることにより、上端面(離間面)15aと面取り面(離間面)26Daとが擦り合わされて、第一部材2Dと第二部材3Dとの接触面積は徐々に大きくなる。
【0095】
摩擦工程は、上端面15aと全ての面取り面26Daとが接触するまで行ってもよいが、本実施形態では上端面15aと面取り面26Daの半分程度が接触するまで摩擦工程を行う。そして、第一実施形態と同等の方法で圧接工程を行う。
【0096】
溶接工程では、摩擦圧接工程によって接合部の周囲に排出されたバリを溶加材として接合部に沿ってレーザー溶接を行う。これにより、中空容器1Dが形成される。
【0097】
以上説明した第五実施形態のように、面取り部26Dを形成しても第一実施形態と同等の効果を得ることができる。第五実施形態における摩擦圧接工程では、第一部材2Dよりも第二部材3Dの方が耐力が大きく軟化しにくいため、第二部材3Dの下端面25Daが、第一部材2Dの上端面15aに入り込むようにして摩擦圧接される。このため、第一横辺部15の倒れ込みをより防ぐことができる。また、摩擦圧接工程によってバリが排出された場合、上端面15aと面取り部26Dとの間にバリを収納できるため、バリが中空容器1Dの外面に膨出するのを防ぐことができる。
【0098】
なお、本実施形態では、第二部材3Dにのみに面取り部26Dを形成したが、第一部材2Dのみに設けてもよいし、第一部材2D及び第二部材3Dの両方に設けてもよい。また、本実施形態では、第一部材2D及び第二部材3Dの外側のみに面取り部26Dを設けたが、内側のみに設けてもよいし、外側と内側の両方に設けてもよい。
【0099】
また、第四実施形態のように、第二部材が板状を呈する場合において、第一部材及び第二部材の少なくともいずれか一方の角部に面取り部を設けてもよい。
【0100】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態に係る部材の接合方法について説明する。第六実施形態に係る部材の接合方法は、図15に示すように、第三実施形態に近い形態であって、フランジ付き中空容器1Eを製造するものである。本実施形態は、切欠き部26Eの構成が、第三実施形態と相違する。
【0101】
第一部材2Eは、平面視矩形の底部11と、平面視矩形枠状の第一側壁部12と、複数の仕切り部13とで構成されている。
【0102】
第二部材3Eは、平面視矩形枠状の第二側壁部22Eと、第二側壁部22Eの外面から外側に向けて張り出したフランジ27とを備えている。第二部材3Eの内部には、上下方向に連通する連通孔Rが形成されている。連通孔Rは、平面視矩形になっている。第二側壁部22Eは、第二縦辺部24E,24Eと、第二横辺部25E,25Eとで構成されている。第二横辺部25Eは、第二縦辺部24E,24Eの仮想の境界面(側端面)に接続されている。
【0103】
図16は、第六実施形態に係る第二部材を裏から見た斜視図である。図16に示すように、第二縦辺部24Eの下端面24Ea,24Ea(図9では上端面になっている)と第二横辺部25Eの下端面25Ea,25Eaとは同一平面上に位置している。第二横辺部25Eの下端面25Eaの中央には、切欠き部26Eが形成されている。
【0104】
切欠き部26Eは、底面26Eaと、切欠き面26Ebと、側面26Ec,26Ecとで構成されている。底面26Eaは、下端面25Eaよりも一段上がった位置(図16では下がった位置)に形成されている。切欠き面26Ebは、下端面25Eaから底面26Eaに亘って第一部材2E側に凸となる曲面で形成されている。側面26Ec,26Ecは、底面26Eaに対して垂直に形成されている。
【0105】
図16に示すように、フランジ27は、左右方向に張り出した第一フランジ27a,27aと、前後方向に張り出した第二フランジ27b,27bとで構成されている。切欠き部26Eは、第二フランジ27bの中央を縦断して形成されている。
【0106】
次に、第六実施形態に係る部材の接合方法について説明する。本実施形態に係る部材の接合方法では、準備工程と、突合せ工程と、摩擦圧接工程と、溶接工程とを行う。
【0107】
図15に示すように、準備工程は、第一部材2Eと第二部材3Eとを用意する工程である。図17に示すように、突合せ工程では、第一部材2Eと第二部材3Eとを突き合せる。突合せ工程では、上端面14a,14aと下端面24Ea,24Ea及び上端面15a,15aと下端面25Ea,25Eaとを面接触させて突合せ部J4を形成する。
【0108】
また、第二部材3Eには、切欠き面26Ebが形成されているため、突合せ工程では、上端面15aと切欠き面26Ebとは隙間を開けて対向する。切欠き面26Eb及びこの切欠き面26Ebに対向する上端面15aは、特許請求の範囲の「離間面」に相当する。
【0109】
摩擦圧接工程は、第一実施形態と同等の方法で行う。摩擦工程は、まず、上端面14aと下端面24Ea及び上端面15aと下端面25Ea(突合せ部J4)が擦り合わされて摩擦熱が発生し、軟化された母材が外部に排出されることで、第一側壁部12及び第二側壁部22Eのうちの擦り合わされている部位の高さが徐々に小さくなる。摩擦工程を進めることにより、上端面(離間面)15aと切欠き面26Eb(離間面)とが擦り合わされて、第一部材2Eと第二部材3Eとの接触面積は徐々に大きくなる。そして、第一実施形態と同等の方法で圧接工程を行う。
【0110】
溶接工程では、摩擦圧接工程によって接合部の周囲に排出されたバリを溶加材として接合部に沿ってレーザー溶接を行う。これにより、フランジ付き中空容器1Eが形成される。
【0111】
以上説明した第六実施形態のように、切欠き部26Eの切欠き面26Ebを曲面としても第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0112】
[第七実施形態]
次に、本発発明の第七実施形態に係る部材の接合方法について説明する。図18に示すように、本実施形態に係る部材の接合方法は、第二部材3Fの切欠き部26Fの構成が第六実施形態と相違する。本実施形態に係る部材の接合方法の説明では、第六実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0113】
図16で示した第六実施形態の切欠き部26Eは、第二横辺部25E及び第二フランジ27bの左右方向の中央のみに設けたが、図18に示す第七実施形態の切欠き部26Fのように、第二横辺部25F、第一フランジ27a及び第二フランジ27bの左右方向の全体に亘って形成してもよい。切欠き部26Fは、底面26Faと切欠き面26Fbとで構成されている。切欠き面26Fbは、底面26Faから第二横辺部25Fの下端面25Faまで曲面で構成されている。
【0114】
第七実施形態のように、切欠き部26Fを第二部材3Fの幅方向(左右方向)に亘って曲面で設けても第六実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0115】
なお、摩擦圧接工程において、摩擦工程又は圧接工程の時間を長く設定したり、摩擦圧力、アップセット圧力を高く設定したりする場合は、接合部にバリが多く発生する。このような場合は、縦辺部にも「離間面」を設けてもよい。これにより、縦辺部の摩擦熱を低くすることができるため、縦辺部に発生するバリを少なくすることができる。
【実施例】
【0116】
次に、実施例について説明する。実施例では、切欠き部の形状を変えて二種類の実施例A,Bを行った。
【0117】
[実施例A]
実施例Aでは、図19の(a)に示すように、第一部材2Gと第二部材3Gとを摩擦圧接によって接合して中空容器1Gを製造し、接合後の変形量を測定した。
【0118】
第一部材2Gは、平面視矩形の底部11と、平面視矩形枠状の第一側壁部12とで構成されている。第一側壁部12は、第一縦辺部14,14と第一横辺部15,15とで構成されている。第一部材2Gには、底部11と第一側壁部12で構成された流路Pが形成されている。第一部材2Gは、長さが150mm、幅が10mm、高さが10mmになっている。
【0119】
第一部材2Gの第一縦辺部14の板厚t1は1.6mm、第一横辺部15の板厚t2は2.8mmになっている。第一部材2Gは、アルミニウム合金A1050−H112(JIS)を用いている。
【0120】
JIS:A1050は、Si;0.25%以下、Fe;0.40%以下、Cu;0.05%以下、Mn;0.05%以下、Mg;0.05%以下、Zn;0.05%以下、V;0.05%以下、Ti;0.03%以下、Al;99.50%以上で構成されている。H112とは、展伸材においては積極的な加工硬化を加えずに、製造したままの状態で機械的性質の保証がされたものを意味する。
【0121】
第二部材3Gは、平面視矩形の底部21と、平面視矩形枠状の第二側壁部22とで構成されている。第二側壁部22は、第二縦辺部24,24と第二横辺部25,25とで構成されている。第二部材3Gには、底部21と第二側壁部22とで構成された凹部Qが形成されている。第二部材3Gは、長さが150mm、幅が10mm、高さが10mmになっている。
【0122】
第二部材3Gの第二縦辺部24の板厚t1は1.6mm、第二横辺部25の板厚t2は2.8mmになっている。第二部材3Gは、アルミニウム合金ADC12(JIS)を用いている。第二部材3Gの材料は、第一部材2Gの材料に比べて大きな耐力となるように設定されている。
【0123】
JIS:ADC12は、Cu;1.5〜3.5%、Si;9.6〜12.0%、Mg;0.3%以下、Zn;1.0%以下、Fe;1.3%以下、Mn;0.5%以下、Ni;0.5%以下、Ti;0.3%以下、Pb;0.2%以下、Sn;0.2%以下、Al;残部で構成されている。
【0124】
図19の(a)及び(b)に示すように、第二横辺部25の中央には、断面矩形の切欠き部26が形成されている。切欠き部26は、底面26aと、底面26aに対して垂直な側面26b,26bで構成されている。実施例Aでは、第二部材3の切欠き高さ(側面26bの高さ)h1を0.10mm、0.15mm、0.20mmに設定した第二部材3Gを3種類用意してそれぞれ接合した。
【0125】
中空容器1Gの製造方法では、準備工程、突合せ工程、摩擦圧接工程を行った。各工程は、第一実施形態と同等である。図20に示すように、実施例Aでは、摩擦圧接工程が終了した後の内面の変形量M1と外面の変形量M2を測定した。内面の変形量M1は、摩擦圧接前における第二横辺部25の内面(基準面)25dから摩擦圧接後のバリSの先端までの距離である。つまり、変形量M1は、バリSの高さと第一横辺部15の倒れ込み量との和を意味する。
【0126】
外面の変形量M2は、摩擦圧接前における第二横辺部25の外面(基準面)25cから摩擦圧接後のバリSの先端までの距離である。つまり、変形量M2は、バリSの高さと第一横辺部15の倒れ込み量との和を意味する。変形量は、外面25c及び内面25dよりも凸であればプラスとし、凹であればマイナスとした。つまり、プラス、マイナスに関わらず、0に近い数値であることは変形量が小さいことを意味する。本実施例では、変形量が±0.5mmを閾範囲とした。
【0127】
図21は、実施例Aの結果を示す表である。図22は、実施例Aの結果を示すグラフである。図21及び図22に示すように、比較例であると、内面の変形量M1が閾範囲を超えていることがわかった。つまり、切欠き高さh1が0.10mmであると第一横辺部15の変形量が大きくなり、中空容器1Gの流路(空間)を狭める傾向にある。
【0128】
一方、実施例1,2であると、内面の変形量M1及び外面の変形量M2ともに閾範囲内であることがわかった。つまり、切欠き部26の切欠き高さh1が0.15mm以上であると、第一横辺部15の倒れ込みが少なく、かつ、バリSの発生も少なくなっている。
【0129】
なお、第一部材2G及び第二部材3Gの両方に切欠き部を設ける場合は、各切欠き部の高さの和が0.15mm以上であることが好ましい。
【0130】
[実施例B]
実施例Bでは、図23の(a)及び(b)に示すように、第一部材2Hと第二部材3Hとを摩擦圧接によって接合して中空容器1Hを製造し、接合後の変形量を測定した。
【0131】
第一部材2Hは、実施例Aの第一部材2Gと同等である。第二部材3Hは、平面視矩形の底部21と、平面視矩形枠状の第二側壁部22とで構成されている。第二側壁部22は、第二縦辺部24,24と第二横辺部25,25とで構成されている。第二部材3Hには、底部21と第二側壁部22とで構成された凹部Qが形成されている。
【0132】
第二部材3Hは、長さが150mm、幅が10mm、高さが10mmになっている。第二部材3Hはアルミニウム合金ADC12(JIS)を用いている。
【0133】
第二横辺部25の下端面25aと外面25cとの角部にはC面取りによる面取り部26Dが形成されている。図24に示すように、第一部材2Hと第二部材3Hとを突き合わせると、第一部材2Hの上端面15aと第二部材3Hの下端面25aとが接触し、上端面15aと面取り面26Daとが隙間を開けて対向する。上端面15aと面取り面26Daとのなす角度は約40°になっている。実施例Bでは、面取り部26Dの切欠き高さh2を0.5mm、0,8mm、1.0mmに設定した第二部材3Hを3種類用意してそれぞれ接合した。切欠き高さh2は、下端面25aから面取り部26Dの外側の端部までの高さを意味する。
【0134】
中空容器1Hの接合方法は、実施例Aと同等である。実施例Bでは、摩擦圧接工程が終了した後の内面の変形量M1と外面の変形量M2を測定した。変形量の測定方法は、実施例Aと同等である。
【0135】
図25及び図26に示すように、比較例1,2であると内面の変形量M1が閾範囲を超えている。つまり、切欠き高さh2が0.8mm以下であると第一横辺部15の変形量が大きくなり、中空容器1Hの流路(空間)を狭める傾向にある。
【0136】
一方、実施例1であると、内面の変形量M1及び外面の変形量M2ともに比較例に比べて小さくなり、閾範囲に含まれる。つまり、切欠き高さh2が、1.0mm以上になると、第一横辺部15の倒れ込みが少なく、かつ、バリSの発生も少なくなっている。
【符号の説明】
【0137】
1 中空容器
2 第一部材
3 第二部材
11 底部
12 第一側壁部
13 仕切り部
14 第一縦辺部
15 第一横辺部
21 底部
22 第二側壁部
24 第二縦辺部
25 第二横辺部
26 切欠き部
図1
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