特許第5900462号(P5900462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5900462移動体、移動体の移動方法、ロボットシステム、及び加工品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900462
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】移動体、移動体の移動方法、ロボットシステム、及び加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
   G05D1/02 J
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-225972(P2013-225972)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-87960(P2015-87960A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】識名 拓
(72)【発明者】
【氏名】中村 民男
(72)【発明者】
【氏名】河野 大
(72)【発明者】
【氏名】西邑 考史
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−217456(JP,A)
【文献】 特開2003−330538(JP,A)
【文献】 特開2003−330539(JP,A)
【文献】 特開2008−197922(JP,A)
【文献】 特開2010−140247(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102012100324(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部を移動させる移動機構部と、
前記本体部の周囲であって、第1閾値と前記第1閾値より大きい第2閾値との間にある対象物までの距離と方向とをレーザを走査して検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出結果に基づいて前記本体部の周囲に存在する第1ランドマークを認識する認識部と、
前記認識部で認識された前記第1ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動機構部を制御する第1移動調整部と、
認識された前記第1ランドマークまでの距離が予め設定された前記第1閾値よりも小さくなった場合、前記センサ部の検出結果に基づいて当該第1ランドマークから所定の距離だけ離して配置される第2ランドマークを認識する第2ランドマーク認識部と、
前記第2ランドマーク認識部で認識された前記第2ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動機構部を制御する第2移動調整部と、
を備えることを特徴とする移動体。
【請求項2】
前記第2移動調整部は、
前記第1ランドマークより小さい複数の前記第2ランドマークまでの距離に基づいて前記移動機構部を調整すること
を特徴とする請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記第2移動調整部は、
前記第1ランドマークの両側にそれぞれ配置された複数の前記第2ランドマークまでの距離に基づいて前記移動機構部を調整すること
を特徴とする請求項1または2に記載の移動体。
【請求項4】
前記第1移動調整部は、
平板状の前記第1ランドマークの表面までの距離に基づいて前記移動機構部を調整し、
前記第2移動調整部は、
平板状の前記第2ランドマークの表面までの距離に基づいて前記移動機構部を調整すること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の移動体。
【請求項5】
本体部を移動させる移動工程と、
前記本体部の周囲であって、第1閾値と前記第1閾値より大きい第2閾値との間にある対象物までの距離と方向とをレーザを走査して検出するセンサ工程と、
前記センサ工程の検出結果に基づいて前記本体部の周囲に存在する第1ランドマークを認識する認識工程と、
前記認識工程で認識された前記第1ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動工程を制御する第1移動調整工程と、
認識された前記第1ランドマークまでの距離が予め設定された前記第1閾値よりも小さくなった場合、前記センサ工程の検出結果に基づいて当該第1ランドマークから所定の距離だけ離して配置される第2ランドマークを認識する第2ランドマーク認識工程と、
前記第2ランドマーク認識工程で認識された前記第2ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動工程を制御する第2移動調整工程と、
を含むことを特徴とする移動体の移動方法。
【請求項6】
本体部と、
前記本体部を移動させる移動機構部と、
前記本体部の周囲であって、第1閾値と前記第1閾値より大きい第2閾値との間にある対象物までの距離と方向とをレーザを走査して検出するセンサ部と、
前記センサ部の検出結果に基づいて前記本体部の周囲に存在する第1ランドマークを認識する認識部と、
前記認識部で認識された前記第1ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動機構部を制御する第1移動調整部と、
認識された前記第1ランドマークまでの距離が予め設定された前記第1閾値よりも小さくなった場合、前記センサ部の検出結果に基づいて当該第1ランドマークから所定の距離だけ離して配置される第2ランドマークを認識する第2ランドマーク認識部と、
前記第2ランドマーク認識部で認識された前記第2ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動機構部を制御する第2移動調整部と、
を備える移動体と、
前記本体部に設置され、前記本体部に積載された物品を移動するロボットと
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項7】
ロボットが設置された本体部を移動させる移動工程と、
前記本体部の周囲であって、第1閾値と前記第1閾値より大きい第2閾値との間にある対象物までの距離と方向とをレーザを走査して検出するセンサ工程と、
前記センサ工程の検出結果に基づいて前記本体部の周囲に存在する第1ランドマークを認識する認識工程と、
前記認識工程で認識された前記第1ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動工程を制御する第1移動調整工程と、
認識された前記第1ランドマークまでの距離が予め設定された前記第1閾値よりも小さくなった場合、前記センサ工程の検出結果に基づいて当該第1ランドマークから所定の距離だけ離して配置される第2ランドマークを認識する第2ランドマーク認識工程と、
前記第2ランドマーク認識工程で認識された前記第2ランドマークまでの距離と方向とに基づいて前記本体部を目標位置へ移動させるように前記移動工程を制御する第2移動調整工程と、
を含み、前記第1ランドマーク及び前記第2ランドマークの近傍に設置される作業ステーションに接近する接近工程と、
前記ロボットおよび前記作業ステーションのいずれか一方または双方が被加工品を加工する加工工程と
を含むことを特徴とする加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、移動体、移動体の移動方法、ロボットシステム、及び加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体を自立的に走行させるために、移動体が移動する環境にランドマークを設置し、移動体に搭載したレーザスキャナセンサでランドマークの位置を検出し、検出位置に基づいて移動体を走行させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4962742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ランドマークを検出して移動体を自律的に走行させる場合、ランドマークと移動体との相対位置によってはランドマークを安定して検出できないケースがあり移動体の運用上の課題となっている。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、より運用自由度を向上させた移動体、移動体の移動方法、ロボットシステム、及び加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る移動体は、本体部と、移動機構部と、センサ部と、認識部と、第1移動調整部と、第2ランドマーク認識部と、第2移動調整部と、を備える。移動機構部は、本体部を移動させる。センサ部は、本体部の周囲であって、第1閾値と第1閾値より大きい第2閾値との間にある対象物までの距離と方向とをレーザを走査して検出する。認識部は、センサ部の検出結果に基づいて本体部の周囲に存在する第1ランドマークを認識する。第1移動調整部は認識部で認識された第1ランドマークまでの距離と方向とに基づいて本体部を目標位置へ移動させるように移動機構部を制御する。第2ランドマーク認識部は、認識された第1ランドマークまでの距離が予め設定された第1閾値よりも小さくなった場合、前記センサ部の検出結果に基づいて当該第1ランドマークから所定の距離だけ離して配置される第2ランドマークを認識する。第2移動調整部は、第2ランドマーク認識部で認識された第2ランドマークまでの距離と方向とに基づいて本体部を目標位置へ移動させるように移動機構部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、より運用自由度を向上させた移動体、移動体の移動方法、ロボットシステム、及び加工品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る移動体の斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る移動体が移動する環境を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るランドマークを示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る移動体の構成を示すブロック図である。
図5図5は、移動体がランドマークを認識する方法を説明する図である。
図6図6は、移動体がランドマークを認識する方法を説明する図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る移動処理を説明するフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態に係るロボットシステムを示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る移動体の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する移動体、移動体の移動方法、ロボットシステム、及び加工品の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る移動体100の斜視図である。図1に示す移動体100は、目標位置が第1ランドマークに近すぎて第1ランドマークがセンサ部の不感帯に位置する状態であっても第2ランドマークに基づいて移動を行う。これにより、移動体100は目標位置に接近することができるようになる。
【0011】
従って、第1,第2ランドマークを移動体100の目標位置近傍に設置することができるようになり、ランドマークの設置自由度を向上させることができる。また、移動体100がよりランドマークに接近できるため移動体100の移動範囲を広げることができ、移動体100の運用自由度をより向上させることができる。
【0012】
以下、図1に示す移動体100の詳細について説明する。本実施形態に係る移動体100は、本体部101と、センサ部102と、移動機構部103とを備える。
【0013】
本体部101は、例えば金属やプラスチック等で構成された筐体であり、内部にセンサ部102及び移動機構部103の制御等を行う制御機構を収納する。制御機構の詳細については後述する。また、本体部101は、物品を積載するようにしてもよい。例えば、本体部101の内部に物品を収納できるようにしてもよく、上部に物品を積載できる積載台(図示せず)を備えるようにしてもよい。
【0014】
次に、センサ部102は、本体部101の側面に設置される。また、センサ部102は、本体部101の周囲にある対象物までの距離と方向とを検出する。センサ部102は、例えば半導体レーザ等のレーザ発信装置を有するレーザ距離センサ(距離方向検出装置)である。
【0015】
移動機構部103は、本体部101を移動させる移動機構である。図1の例では、移動体100は、移動機構部103として、複数の車輪103−1,103−2,・・・を備える。
【0016】
なお、本実施形態では、移動機構部103は、複数の車輪103−1,103−2,・・・であるとしたが、車輪は1つでもよく、また車輪以外の移動機構を用いてもよい。車輪以外の移動機構としては、例えばクローラや脚などがあげられる。
【0017】
次に、図2を用いて移動体100が移動する環境について説明する。図2は、第1の実施形態に係る移動体100が移動する環境を示す図である。なお、図2は、上記した環境の上面図に相当する。
【0018】
図2に示すように、移動体100が移動する環境には、作業ステーション300と複数のランドマーク401,402−1,402−2が設置される。複数のランドマーク401,402−1,402−2をまとめてランドマーク400とも称する。
【0019】
移動体100は、センサ部102で複数のランドマーク401,402−1,402−2の少なくとも1つまでの距離と方向とを検出し、検出結果に基づき、作業ステーション300に接近するよう移動する。具体的には、移動体100は、図2に示す矢印の方向に移動し、目標位置200に到達すると停止する。
【0020】
図2及び図3を用いて複数のランドマーク401,402−1,402−2の詳細について説明する。図3は、ランドマーク400を示す図である。なお、図3は、各ランドマークの側面図に相当する。
【0021】
図3に示すように、第1ランドマーク401は、平板状であり、所定の高さと幅の表面を有する。また、第1ランドマーク401の表面は、例えば紙や樹脂等、センサ部102から照射されるレーザの入射方向によらずあらゆる方向に光を反射する素材を用いて構成される。また、第1ランドマーク401は、図2に示すように作業ステーション300の壁面に貼り付けられる。
【0022】
図3に戻り、各ランドマークの説明をつづける。第1ランドマーク401の両側には、所定の距離だけ離して複数の第2ランドマーク402−1,402−2がそれぞれ配置される。なお、複数の第2ランドマーク402−1,402−2をまとめて第2ランドマーク402とも称する。
【0023】
複数の第2ランドマーク402−1,402−2は、平板状であり、それぞれ第1ランドマーク401より小さい表面を有する。第2ランドマーク402の表面は、例えば紙や樹脂等、センサ部102から照射されるレーザの入射方向によらずあらゆる方向に光を反射する素材を用いて構成される。また、第2ランドマーク402は、図2に示すように作業ステーション300の壁面に貼り付けられる。
【0024】
なお、図2に示すランドマーク400は所定の厚さを有するが、紙等の薄い素材で構成することでランドマーク400の厚さをより薄くするようにしてもよい。
【0025】
また、第1ランドマーク401と複数の第2ランドマーク402−1,402−2それぞれの間に、ランドマーク400とは異なる複数の第3ランドマークをそれぞれ設置してもよい。複数の第3ランドマークは、平板状であり、第1ランドマーク401より小さい表面を有する。複数の第3ランドマークの表面は、例えば光を鏡面反射させる素材で構成される。また、複数の第3ランドマークは、作業ステーション300の壁面に貼り付けられる。
【0026】
この場合、各ランドマークを一体として構成してもよい。例えば、紙などシート状の平板に印刷することで各ランドマークを一体形成してもよい。また紙など同一素材の平板に第3のランドマークとして鏡面反射させる平板状の素材を貼付することで各ランドマークを一体形成してもよい。
【0027】
続いて、図4を用いて本実施形態にかかる移動体100の詳細を説明する。図4は、移動体100の構成を示すブロック図である。移動体100は、本体部101の内部に、制御機構として認識部104、第1移動調整部105、第2ランドマーク認識部106、第2移動調整部107、及び駆動部108を備える。
【0028】
認識部104は、センサ部102の検出結果に基づいて本体部101の周囲に存在する第1ランドマーク401を認識する。また、認識部104は、認識した第1ランドマーク401までの距離と方向とを第1移動調整部105に通知する。
【0029】
また、認識部104は、第1ランドマーク401までの距離が第1閾値TH1より小さい場合、第2ランドマーク認識部106に第1ランドマーク401までの距離が第1閾値TH1より小さくなったと通知する。
【0030】
第1移動調整部105は、認識部104で認識された第1ランドマーク401までの距離と方向とに基づいて本体部101を目標位置200へ移動させるように移動機構部103を制御する。具体的には、第1移動調整部105は、本体部101の移動方向と移動距離を駆動部108へ通知する。このように、第1移動調整部105は、駆動部108を介して移動機構部103を制御する。
【0031】
第2ランドマーク認識部106は、認識部104で認識された第1ランドマーク401までの距離が予め設定された第1閾値TH1よりも小さくなった場合、第1ランドマーク401とは別の第2ランドマーク402を認識する。
【0032】
具体的には、第2ランドマーク認識部106は、認識部104から第1ランドマーク401までの距離が第1閾値TH1より小さくなった旨の通知を受け取った場合、センサ部102の検出結果を取得する。
【0033】
第2ランドマーク認識部106は、センサ部102の検出結果に基づき、第2ランドマーク402を認識する。また、第2ランドマーク認識部106は、認識した第2ランドマーク402までの距離と方向とを第2移動調整部107に通知する。
【0034】
第2移動調整部107は、第2ランドマーク認識部106で認識された第2ランドマーク402までの距離と方向とに基づいて本体部101を目標位置200へ移動させるように移動機構部103を制御する。
【0035】
具体的には、第2移動調整部107は、本体部101の移動方向と移動距離を駆動部108へ通知する。このように、第2移動調整部107は、駆動部108を介して移動機構部103を制御する。
【0036】
駆動部108は、複数の車輪103−1,103−2,・・・を駆動するモータ(図示せず)を備えている。駆動部108は、第1移動調整部105または第2移動調整部107から通知される本体部101の移動方向と移動距離に基づき複数の車輪103−1,103−2,・・・を駆動する。
【0037】
次に、図5乃至図7を用いて移動体100の動作について説明する。図5は、移動体100がランドマーク400を検出する方法を示す図である。
【0038】
センサ部102は、レーザ距離センサであり、レーザを照射し、物体に反射して戻ってくるまでの時間から物体までの距離を検出する。また、センサ部102は、レーザを照射した方向から物体までの方向を検出する。
【0039】
センサ部102は、水平方向に所定の角度ごと(例えば0.5度ごと)にレーザを照射することで、所定の探索角度範囲内の物体までの距離及び方向を検出する。また、センサ部102は、レーザを走査して第1閾値TH1と第2閾値TH2(TH1<TH2)との間にある物体までの距離及び方向を検出する。
【0040】
従って、センサ部102の有効な探索範囲(距離と方向との検出が有効である範囲)は、探索角度を中心角としてセンサ部102が設置された面(水平)に対して平行な扇形の平面となる。
【0041】
また、センサ部102は、第1閾値TH1より近くにある物体までの距離及び方向を有効に検出できない。このように、センサ部102は、第1閾値TH1を半径、探索角度を中心角としてセンサ部102が設置された面(水平)に対して平行な扇形の不感地帯を有する。
【0042】
続いて、上述したセンサ部102の検査結果に基づいて移動体100が移動する方法について説明する。
【0043】
まず、図5に示すように、移動体100と目標位置200が離れており、第2ランドマーク402までの距離が第2閾値TH2以上であり、第1ランドマーク401までの距離が第2閾値TH2より小さい場合について説明する。
【0044】
この場合、第1ランドマーク401がセンサ部102の有効な探索範囲に含まれており、第2ランドマーク402が有効な探索範囲に含まれていないため、移動体100の認識部104は、第1ランドマーク401を認識する。そこで、移動体100は、第1ランドマーク401までの距離と方向とに基づき目標位置200まで移動する。
【0045】
次に、移動体100が第1ランドマーク401に基づき移動することで、ランドマーク400に接近した結果、ランドマーク400がセンサ部102の有効な探索範囲内に入った場合について説明する。この場合、移動体100は、第1ランドマーク401を認識し、第1ランドマーク401までの距離と方向とに基づき目標位置200まで移動する。
【0046】
続いて、図6を用いて移動体100がさらにランドマーク400に接近した場合について説明する。移動体100が第1ランドマーク401に基づき移動すると、ランドマーク400にさらに接近する。
【0047】
その結果、第1ランドマーク401とセンサ部102との距離が第1閾値より小さくなる。そうすると、第1ランドマーク401がセンサ部102の不感帯に入ってしまい、移動体100が第1ランドマーク401を認識できなくなる。しかしながら、移動体100は、目標位置200に到達していないため、目標位置200まで移動する必要がある。
【0048】
そこで、本実施形態では、第1ランドマーク401がセンサ部102の不感帯に入ってしまい、第1ランドマーク401が認識できなくなると、移動体100は、第2ランドマーク402を認識し、第2ランドマーク402に基づいて移動するようにする。
【0049】
このように、移動体100は、第2ランドマーク402を認識できない場合であっても、第1ランドマーク401を認識できる場合は、第1ランドマーク401に基づいて目標位置200まで移動することができる。また、第1ランドマーク401を認識できない場合であっても、第2ランドマーク402を認識できる場合は、第2ランドマーク402に基づいて目標位置200まで移動することができる。
【0050】
なお、第1ランドマーク401とセンサ部102との距離が第2閾値TH2以上離れており、移動体100がランドマーク400を認識できない場合は、図示しない別のランドマークに基づき移動体100が移動するようにしてもよい。あるいは、図示しない別のセンサを移動体100に搭載し、かかるセンサで検出した情報に基づき移動体100をランドマーク400に近接するよう移動させるようにしてもよい。
【0051】
続いて、図4及び図7を用いて、ランドマーク400を用いた移動体100の移動方法について説明する。図7は、移動体の移動処理を説明するフローチャートである。
【0052】
まず、移動体100のセンサ部102は、レーザを走査し、探索範囲内にある物体までの距離と方向とを検出する(ステップS101)。次に、移動体100の認識部104は、センサ部102の検出結果に基づき、第1ランドマーク401を検出したか否か判定する(ステップS102)。
【0053】
認識部104が、第1ランドマーク401を検出したと判定した場合(ステップS102,Yes)、認識部104は、第1ランドマーク401を認識したとして、認識した第1ランドマーク401までの距離と方向とを求める(ステップS103)。認識部104は、求めた距離と方向とを第1移動調整部105に通知する。
【0054】
次に、第1移動調整部105は、認識部104から受け取った第1ランドマーク401までの距離と方向とに基づき、移動体100の進行方向と移動距離を決定する(ステップS104)。第1移動調整部105は、決定した進行方向と移動距離を駆動部108に通知する。
【0055】
駆動部108は、第1移動調整部105から受け取った進行方向及び移動距離に基づき、複数の車輪103−1,103−2,・・・の向きを変え、複数の車輪103−1,103−2,・・・を駆動させ、本体部101を移動させる(ステップS105)。
【0056】
一方、ステップS102で、認識部104が第1ランドマーク401を検出していないと判定した場合(ステップS102,No)、認識部104は、第1ランドマーク401までの距離が第1閾値TH1より小さくなったと判定する。次に、認識部104は、第2ランドマーク認識部106に第1ランドマーク401までの距離が第1閾値TH1より小さくなった旨を通知する。
【0057】
第2ランドマーク認識部106は、認識部104から第1ランドマーク401までの距離が第1閾値TH1より小さくなった旨の通知を受け取った場合、センサ部102の検出結果を取得する。第2ランドマーク認識部106は、センサ部102の検出結果に基づき、第2ランドマーク402を検出したか否か判定する(ステップS106)。
【0058】
第2ランドマーク認識部106が、第2ランドマーク402を検出したと判定した場合(ステップS106,Yes)、第2ランドマーク認識部106は、第2ランドマーク402を認識したとして、認識した第2ランドマーク402までの距離と方向とを求める(ステップS107)。
【0059】
一方、第2ランドマーク認識部106が、第2ランドマーク402を検出していないと判定した場合(ステップS106,No)、第2ランドマーク認識部106は、ランドマーク400を認識していないとして移動処理を終了する。
【0060】
ランドマーク400を認識せずに移動処理を終了した場合、移動体100は例えばランドマーク400とは別のランドマークに基づいて移動を行う処理を実行するようにしてもよい。
【0061】
図7に戻る。ステップS107で第2ランドマーク402までの距離と方向とを求めた第2ランドマーク認識部106は、求めた距離と方向とに基づき目標位置200に到達したか否か判定する(ステップS108)。
【0062】
第2ランドマーク認識部106が目標位置200に到達していないと判定した場合(ステップS108,No)、第2ランドマーク認識部106は、第2ランドマーク402までの距離と方向とを第2移動調整部107に通知する。
【0063】
第2移動調整部107は、第2ランドマーク認識部106から受け取った第2ランドマーク402までの距離と方向とに基づき、移動体100の進行方向と移動距離を決定する(ステップS109)。第2移動調整部107は、決定した進行方向と移動距離を駆動部108に通知する。
【0064】
駆動部108は、第2移動調整部107から受け取った進行方向及び移動距離に基づき、複数の車輪103−1,103−2,・・・の向きを変え、複数の車輪103−1,103−2,・・・を駆動させ、本体部101を移動させる(ステップS110)。
【0065】
一方、第2ランドマーク認識部106が目標位置200に到達したと判定した場合(ステップS108,Yes)、移動処理を終了し、移動体100は停止する。
【0066】
移動体100は、移動処理を繰り返し実行し目標位置200まで移動する。なお、図7に示す移動処理では、目標位置200に到達したか否かを第2ランドマーク402までの距離と方向とを求めてから判定しているが、ステップS110で移動体100が移動した後に判定するようにしてもよい。
【0067】
上述したように、第1の実施形態に係る移動体100は、第1ランドマーク401がセンサ部102の不感帯に入った場合であっても第2ランドマーク402に基づいて移動することで、ランドマーク400に近接した目標位置200まで移動することができる。
【0068】
これにより、作業ステーション300近傍にランドマーク400を設置した場合であっても移動体100を作業ステーション300に接近させることができる。また、移動体100は、センサ部102が不感帯を有している場合であってもランドマーク400に近接した目標位置200まで移動することができる。
【0069】
このように、本実施形態に係る移動体100の運用自由度を向上させることができる。
【0070】
また、第1ランドマーク401を複数の第2ランドマーク402−1,402−2のそれぞれより大きくすることで、第1ランドマーク401までの距離や方向の検出精度を向上させることができる。
【0071】
さらに、第2ランドマーク402を複数配置することで、第2ランドマーク402が第1ランドマーク401より小さくても、第2ランドマーク402までの距離や方向の検出精度を向上させることができる。
【0072】
また、平板状のランドマーク400を作業ステーション300の側面に貼付することで、ランドマーク400が移動体100の移動を妨げることなく、移動体100が作業ステーション300に接近することができる。
【0073】
ただし、第1ランドマーク401及び第2ランドマーク402−1,402−2の形状および大きさは必ずしも限定されるものでない。移動体100が第1ランドマーク401を検出できないほど近距離に達した状態で第2ランドマーク402−1,402−2を検出できるものであればよい。ランドマーク400の形状も平板に限定されるものでもない。
【0074】
なお、本実施形態では、第2ランドマーク402を認識しているか否かにかかわらず、第1ランドマーク401までの距離が第1閾値TH1以上の場合は、第1ランドマーク401に基づいて移動体100は移動を行っている。しかしながら、第1ランドマーク401及び第2ランドマーク402の両方を認識できる場合は、2つのランドマーク401,402に基づいて移動体100が移動するようにしてもよい。
【0075】
この場合、例えば第2ランドマーク認識部106が、認識部104からの通知によらず第2ランドマーク402を検出したか否か判定を行うようにすればよい。また、移動調整部を設け、移動調整部が、認識部104及び第2ランドマーク認識部106が求めたランドマーク400の距離と方向とに基づき本体部101を目標位置200へ移動させるように移動機構部103を制御するようにすればよい。
【0076】
このように、第1ランドマーク401、第2ランドマーク402の両方を用いて移動体100を移動させることで、移動体100の移動精度を向上させることができる。
【0077】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態に係る移動体100にロボット500を設置することで、作業ステーション300でロボット500による作業が行えるロボットシステム1について説明する。
【0078】
図8は、第2の実施形態に係るロボットシステム1を示す図である。なお、第1の実施形態と同じ構成要素には同一符号を付し説明を省略する。
【0079】
ロボットシステム1は、移動体600と、移動体600の本体部601上部に設置されるロボット500とを備える。ロボット500は、胴体部501と、第1アーム502と、第1ハンド504と、第2アーム503と、第2ハンド505とを備える。
【0080】
第1アーム502、第2アーム503は、それぞれ基部が胴体部501に接続される。第1アーム502、第2アーム503は、サーボモータによって動作制御される複数の関節とリンク部を有する多自由度のアームである。
【0081】
第1ハンド504、第2ハンド505は、それぞれ第1アーム502、第2アーム503の先端部に設置される。図8では、第1ハンド504、第2ハンド505としてグリッパを用いているが、例えば多指関節ハンドであってもよく、また後述する作業を行うためのハンドであってもよい。
【0082】
図9に示すように、移動体600の本体部601は、内部に制御機構として認識部104、第1移動調整部105、第2ランドマーク認識部106、第2移動調整部107、駆動部108を備える。また、本体部601は、内部にロボット500の各関節の動作及び第1ハンド504、第2ハンド505の動作を制御するロボット動作制御部609を備える。
【0083】
ロボット動作制御部609は、予め入力されたロボット500の動作指令プログラムを格納するメモリ部610と、前記メモリ部に記憶された動作指令プログラムに基づいてロボット500の各サーボモータの動作態様を演算する演算部611を有する。また、ロボット動作制御部609は、演算部611の演算結果に基づいて各サーボモータに動作指令を送出する動作司令部612を有している。
【0084】
また、ロボット動作制御部609は、移動体600の本体部601の内部に設けているが、ロボット500の内部、例えば胴体部501の内部に設けてもよい。
【0085】
ロボットシステム1は、移動体600によって作業ステーション300に接近するように移動し、ロボット500によって作業を行う。作業の一例としては、移動体600の本体部601に積載される物品を作業ステーション300に移動する作業があげられる。
【0086】
また、ほかの作業として、ロボット500によって作業ステーション300にて被加工品を加工する例があげられる。あるいは、ロボットシステム1によって運搬される被加工品を作業ステーション300が加工してもよく、作業ステーション300が加工した加工品をロボットシステム1が運搬してもよい。
【0087】
ロボットシステム1が作業ステーション300で作業を行う場合、ロボットシステム1が作業ステーション300に接近し、十分に高精度な位置に停止する必要がある。本実施形態にかかるロボットシステム1は、第1実施形態と同様に、第1ランドマーク401、第2ランドマーク402の両方を用いて移動体600を移動させることで、作業ステーション300に接近し、十分に高精度な位置に停止することができる。
【0088】
ロボット動作制御部609はメモリ部610に記憶された動作指令プログラムと移動体600が実際に停止した位置との誤差を修正する機能を有する。そのため、移動体600が十分に高精度に位置決めされていれば、ロボット動作制御部609は別の位置にある作業ステーション300であっても作業を行える。
【0089】
具体的には、ロボット動作制御部609は、別の位置にある作業ステーション300近傍に停止した移動体600の位置の微差を修正し、例えば同じ作業であれば同じ動作指令プログラムに基づいてロボット500を動作させて作業を行うことができる。このとき、図9に示すように、ロボット動作制御部609は、移動体600の停止位置を駆動部108から受け取るようにすればよい。
【0090】
なお、本実施形態では、ロボット500は双腕ロボットとしたがアームが1つの片腕ロボットであってもよい。
【0091】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
100、600 移動体
101、601 本体部
102 センサ部
103 移動機構部
104 認識部
105 第1移動調整部
106 第2ランドマーク認識部
107 第2移動調整部
108 駆動部
200 目標位置
300 作業ステーション
401 第1ランドマーク
402 第2ランドマーク
500 ロボット
501 胴体部
502 第1アーム
503 第2アーム
504 第1ハンド
505 第2ハンド
609 ロボット動作制御部
610 メモリ部
611 演算部
612 動作司令部
1 ロボットシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9