(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明のインキ組成物は、耐候性に優れた顔料と、前記顔料を印刷媒体表面に強固に密着させるバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂を溶解する事のできる有機溶剤を含むような顔料インク組成物である。前記印刷媒体表面に対する密着性に優れたバインダー樹脂としては例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、塩化ビニル系樹脂等が使用できる。樹脂の具体例としては、三菱レイヨン社製のBR−50、BR−52、MB−2539、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、MB−2389、BR−80、BR−83、BR−87、BR−105、BR−106、BR−107、BR−110、BR−113、MB−2660、MB−2952、MB−3015、MB−7033、BR−115、MB−2478、BR−116、ウィルバー・エリス社製のA−12、A−21、B−38、B−60、B−65、B−66、B−67、B−99N、DM−55、ダウケミカルズ社製のユーカーソリューションビニル樹脂VYHD、VYHH、VMCA、VROH、VYLF−X、日信化学工業製のソルバイン樹脂CL、CNL、C5R、TA3、TA5R、ワッカー社製のビニル樹脂E15/45、H14/36、H40/43、E15/45M、E15/40M、荒川化学社製のスーパーエステル75、エステルガムHP、マルキッド 33、安原社製のYSポリスター T80、三井化学社製のHiretts HRT200X、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル58
6、サートマー社製SMA2625Pが挙げられる。
【0015】
樹脂はインキ中に0.1〜20重量%含まれることが好ましい。添加量がインキ中0.1重量%以下であると、印刷媒体表面への密着が悪く、塗膜の耐性が低下してしまい、20重量%以上になるとインキ粘度が高すぎるため、印刷適性が低下してしまうために好ましくない。印刷物の耐性の点からアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂が好ましく、乾燥性の点からアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。
【0016】
ところが、バインダー樹脂として用いられる前記樹脂は、重量平均分子量(Mw)が大きいと印刷物耐性・乾燥性は良好であるものの、インクジェットインキとして最も重要な性能である、インクジェットヘッドからのインキ吐出安定性が悪化してしまう。またバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)が小さいと、吐出安定性は良好であるものの、印刷物耐性・乾燥性は悪化してしまう。その為、これら3つの性能を全て向上させるインクジェットインキを開発する事が困難であった。
そこで本発明者らは、様々な検討を行った結果、重量平均分子量(Mw)が違うバインダー樹脂を2種類以上使用する事により、優れた印字安定性、印刷物性能、乾燥性を実現する事のできるインクジェット記録用の顔料インク組成物が作製できることを知り、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明では優れた印字安定性、印刷物耐性、乾燥性を実現する事のできるインクジェット記録用の顔料インク組成物を作製する為に、重量平均分子量(Mw)が異なるバインダー樹脂を2種類以上使用する。使用する2種類以上のバインダー樹脂は、重量平均分子量(Mw)が最も小さいバインダー樹脂Mwαと、Mwαよりも重量平均分子量(Mw)が大きいバインダー樹脂Mwβx(x=1,2,3・・・)を1種類以上含むことが好ましい。これは、インキ吐出安定性に優れている小さいバインダー樹脂(Mwα)と、印刷物性能・乾燥性に優れている大きいバインダー樹脂(Mwβx)を併用する事で、これら3つの性能を全て向上させる事が目的である。
【0018】
本発明で使用する2種類以上のバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)の関係が、Mwβx - Mwα ≧ 10,000であることが好ましく、より好ましくはMwβx
- Mwα ≧ 15,000であり、さらにMwβx - Mwα ≧ 20,000が特に好ましい。使用する2種類以上のバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)の関係がMwβx - Mwα ≧ 20,000の領域であると、吐出安定性,印刷物性能,
乾燥性が全て良好なインクを作製する事ができ、Mwβx - Mwα < 10,00
0の領域であると、これら3つの性能を全て向上させる事が困難となる。
【0019】
また、2種類以上のバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)の関係は、1,000<Mwα<30,000且つ、20,000<Mwβx<100,000の領域であることが好ましく、さらに5,000<Mwα<30,000且つ20,000<Mwβx<50,000の領域が特に好ましい。Mwα<1,000では印刷物となった場合に塗膜が脆く割れが発生してしまい、Mwα>30,000では吐出安定性が悪化する。また、Mwβx<20,000では優れた印刷物性能・乾燥性が実現できず、Mwβx>100,000ではインクジェットヘッドから吐出できなくなってしまう。
【0020】
また、2種以上のバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の関係が1< Mw/Mn <3の領域であることが好ましく、より好ましくは1< Mw/Mn <2.5の領域であり、さらに1< Mw/Mn <2.3の領域が特に好ましい。2種以上のバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の関係が1< Mw/Mn <2.3の領域であると、溶剤に溶解しやすくインクジェットヘッドからのインキ吐出安定性を良化する事ができ、Mw/Mn >3の領域であると、バインダー樹脂が溶剤に溶解しにくくなる為、インキ吐出安定性が悪化してしまう。
【0021】
また、含まれる2種類以上のバインダー樹脂には、塩化ビニル系樹脂および/またはアクリル系樹脂を使用する事ができる。印刷物光沢や塗膜延伸性に優れている塩化ビニル系樹脂と、印刷物の乾燥性に優れているアクリル系樹脂を併用する事により、印刷速度の速いインクジェットプリンターでも裏写り(ブロッキング)無く優れた印刷物を得ることができる。
【0022】
本発明に使用する主溶剤は沸点150℃以上のものを使用するのが好ましい。沸点が低すぎると、インクジェットインキとして使用した際に、ノズル上での乾燥が速まり、詰まりの原因となる。更には引火点が61℃以上である事が好ましい。引火点が61℃未満であると、国際輸送関係法規における船舶輸送の場合の危険物において、高引火性液体に分類され、運搬、輸送時に制約を受ける。引火点が70℃以上である事が更に好ましい。70℃以上となると消防法上の危険物第4類、第3石油類に分類され、製造、運搬、輸送、貯蔵時の制約が少なくなる。
【0023】
このような溶剤としては、下記一般式(a)〜(d)で示される溶剤がある。
R
1CO(OR
2)
ZOR
3(a) R
4CO(OR
5)
ZOCOR
6 (b)
R
7(OR
8)
ZOR
9 (c) R
10COOR
11 (
d)
(式中、R
2、R
5、R
8、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基、R
1、R
3、
R
4、R
6はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、R
7、R
9はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、R
10は2−ヒドロキシエチル基、R
11は炭素数1〜8のアルキル基、Zは1〜4の整数を表す。)
【0024】
一般式(a)に該当する溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート類がある。
【0025】
一般式(b)に該当する溶剤としては、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールジブチレート等のグリコールジアセテート類がある。
【0026】
一般式(c)に該当する溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類がある。
【0027】
一般式(d)に該当する溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等のエステル類があげられる。
中でも、樹脂溶解性、ノズル上での乾燥性の観点から(ポリ)エチレングリコールジエーテル系溶剤、(ポリ)エチレングリコールモノエーテルモノエステル系溶剤が好ましい。具体的にはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。ジエチレングリコールジエチルエーテルは低臭気の観点より特に好ましい。
【0028】
また安全衛生性を考慮した場合、ジエチレングリコールジエチルエーテルを用いること、急性毒性、変異原性、発癌性、生殖毒性といった有害性の観点でも特に好ましい。
【0029】
また、本発明における有機溶剤である一般式(a)から(d)に追加して、含窒素系または含硫黄系またはラクトン系溶剤を添加すると、印刷媒体表面を溶解させることができるため定着性、耐候性等を向上させることができる。例としては、3−メチルオキサゾリジノン、3−エチルオキサゾリジノン、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。添加量としては1〜20%が良いが、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは3〜9%が良い。なお、これらの含窒素系またはラクトン系溶剤を過剰に用いると、プリンタ部材への侵食性の観点から不具合が生じるため好ましくない。
【0030】
本発明の印刷媒体としては、ポリ塩化ビニル樹脂シート、ポリオレフィン系シート、ガラス、金属等が挙げられ、特に好ましくはポリ塩化ビニル樹脂シートである。
【0031】
本発明に使用される顔料は、印刷インキ、塗料等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,149,168,177,178,179,206,207,209,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、213、ピグメントオレンジ36,43,51,55,59,61,71,74等があげられる。 また、カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。顔料はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが望ましい。
【0032】
本発明では、顔料の分散性およびインキの保存安定性を向上させるために分散剤を添加するのが好ましい。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。顔料は分散剤との相互作用で分散安定化しているため、顔料吸着サイトである塩基性基を含むものを使用することが好ましく、1級アミンまたは2級アミンのうち少なくとも1つを含む塩基性分散剤を用いることが更に好ましい。そのうちポリエステル系塩基性分散剤やアクリルウレタンウレア系塩基性分散剤が、溶剤への溶解性、分散液の保存安定性の面から最も好ましい。
【0033】
塩基性分散剤の具体例としては、ルーブリゾール社製のソルスパーズ11200、ソルスパーズ13240、ソルスパーズ16000、ソルスパーズ18000、ソルスパーズ20000、ソルスパーズ26000、ソルスパーズ28000、ソルスパーズ31845、ソルスパーズ32500、ソルスパーズ32550、ソルスパーズ32600、ソルスパーズ33000、ソルスパーズ34750、ソルスパーズ35100、ソルスパーズ35200、ソルスパーズ37500、ソルスパーズ38500、ソルスパーズ39000、ソルスパーズ53095が挙げられる。ポリエステル系塩基性分散剤の具体例としては、 ルーブリゾール社製のソルスパーズ13940、17000、24000、32000、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822、PB823、PB824、PB827等が挙げられる。これらを顔料、溶剤の種類にあわせて使用することができる。分散剤はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0034】
本発明のインキ組成物は可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0035】
本発明のインキ組成物の印刷方式としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられ、特に好ましくはインクジェット印刷方式である。
【0036】
本発明のインキ組成物は、まず始めにペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって、単一もしくは混合溶媒中に顔料を樹脂または分散剤によって分散し、得られた顔料分散体を本発明の溶剤で希釈して製造されるものである。
【0037】
[実施例]
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」を表す。また、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、TSKgelsuper HZM−Nカラム(東ソー社製)を2連で用い、GPC(東ソー社製、HLC−8220GPC)で流量を0.35ml/min.とし、展開溶媒にTHFを用いたときのポリスチレン換算分子量である。
【0038】
[製造例1]
(ビニル重合体:A−1の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 500部、チオグリセロール 18.5部と、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG) 518.5部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。
ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を添加して固形分50%に調整し、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A−1)溶液を得た。重量平均分子量(Mw)は5,800、数平均分子量(Mn)は3,700、Mw/Mnは1.57であった。
【0039】
[製造例2]
(ビニル重合体:A−2の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート 500部、チオグリセロール 3.2部と、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG) 503.2部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を90℃に加熱して、AIBN 0.50部を添加した後7時間反応した。
ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を添加して固形分50%に調整し、片末端領域に2つの遊離ヒドロキシル基を有するビニル重合体(A−2)溶液を得た。重量平均分子量(Mw)は39,000、数平均分子量(Mn)は19,000、Mw/Mnは2.17であった。
【0040】
[製造例3]
(ビニル重合体:A−3の製造)
反応容器にジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG) 100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら110℃に加熱して、同温度でメチルメタクリレート 100部、及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 6.0部の混合物を2
時間かけて滴下することにより重合反応を行った。
滴下終了後、さらに110℃で1時間反応させた後、AIBN 0.3部を1時間毎3回添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂の溶液を得た。
ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を添加して固形分50%に調整し、ビニル重合体(A−3)溶液を得た。重量平均分子量(Mw)は5,400、数平均分子量(Mn)は2,800、Mw/Mnは1.93であった。
【0041】
[製造例4]
(ポリカーボネートウレタン樹脂:A−4の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにクラレポリオールC−590(2官能ポリカーボネートジオール、株式会社クラレ製) 100.0部、イソホロンジイソシアネート(商品名:IPDI、エボニックデグサジャパン株式会社製) 38.7部、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG) 138.7部、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.014部を仕込み、100℃まで徐々に昇温し2時間反応を行った。
この反応溶液は無色透明で固形分50%のポリカーボネートウレタン樹脂(A−4)であり、重量平均分子量(Mw)は62,300、数平均分子量(Mn)は28,300、Mw/Mnは2.20であった。
【0042】
[製造例5]
(ポリエステルウレタン樹脂:A−5の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにクラレポリオールP−510(2官能ポリエステルジオール、株式会社クラレ製) 100.0部、イソホロンジイソシアネート(商品名:IPDI、エボニックデグサジャパン株式会社製) 38.7部、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG) 138.7部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.014部を仕込み、100℃まで徐々に昇温し2時間反応を行った。
この反応溶液は無色透明で固形分50%のポリエステルウレタン樹脂(A−5)であり、重量平均分子量(Mw)は62,000、数平均分子量(Mn)は27,700、Mw/Mnは2.24であった。
【0043】
[製造例6]
(ポリエーテルウレタン樹脂:A−6の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにPP−400(2官能ポリエーテルジオール、三洋化成工業株式会社製) 100.0部、イソホロンジイソシアネート(商品名:IPDI、エボニックデグサジャパン株式会社製) 48.3部、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG) 148.3部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.015部を仕込み、100℃まで徐々に昇温し2時間反応を行った。
この反応溶液は無色透明で固形分50%のポリエーテルウレタン樹脂(A−6)であり、重量平均分子量(Mw)は64,100、数平均分子量(Mn)は29,200、Mw/Mnは2.24であった。
【0044】
[製造例7]
(分散剤:B−1の合成方法)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ビニル重合体(A−1)の固形分50%溶液 1037部と、イソホロンジイソシアネート 76.0部と、ジエチレングリコールジエチルエーテル 75.8部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート 0.22部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、3時間反応した後、40℃まで冷却して、メチルイミノビスプロピルアミン 35.9部、ジエチレングリコールジエチルエーテル 876.6部の混合液に30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、室温まで冷却して反応を終了した。固形分を30%に調整し、分散剤(B−1)の淡黄色透明溶液を得た。分散剤(B−1)のアミン価48.0mg
KOH/gであった。
【0045】
(市販品バインダー樹脂の分子量測定)
実施例、比較例にて使用されるバインダー樹脂として、市販されているバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、Mw/Mnを算出したものを表1に記載する。
【0046】
【表1】
【0047】
まず、下記のような配合で顔料分散体Aを作成した。この分散体は有機溶剤中に顔料および分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散して作成した。
・LIONOL BLUE FG−7400G(東洋インキ製造社製 フタロシアニン
顔料)35.00部
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製 顔料分散剤)12.50部
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート 52.50部
【0048】
更に、下記のような配合で製造例1と同様に、顔料分散体Bを作成した。
・Fastogen Super Magenta RG(DIC社製 キナクリドン顔料)32.0部
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製 顔料分散剤)12.8部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 55.2部
【0049】
更に、下記のような配合で製造例1と同様に、顔料分散体Cを作成した。
・YELLOW PIGMENT E4GN(ランクセス社製 ニッケル錯体アゾ顔料) 30.00部
・ソルスパーズ24000GR(ルーブリゾール社製 顔料分散剤)16.50部
・ ジエチレングリコールエチルメチルエーテル 53.50部
【0050】
更に、下記のような配合で製造例1と同様に、顔料分散体Dを作成した。
・ELFTEX 415(キャボット社製 カーボンブラック)35.00部
・分散剤:B−1(固形分30% DEDGワニス) 46.67部
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル 18.33部
【0051】
表2のような配合で実施例1〜14、比較例1〜12のインキを作成した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の略号
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL:ガンマ−ブチロラクトン
ε−CL:イプシロンカプロラクトン
MOZ:3−メチル−2−オキサゾリジノン
EOZ:3−エチル−2−オキサゾリジノン
DMSO:ジメチルスルホキシド
BGAc:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
MEDG:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
DMTeG:テトラエチレングリコールジメチルエーテル
【0054】
下記の表3から明らかのように、インク中のバインダー樹脂の選定を本発明にて特定したもののみ使用した実施例1〜14のインク組成物は、印字安定性、印刷物性能、乾燥性とも全て優れる。これに対し、比較例1,6,12は重量平均分子量(Mw)が小さいもののみを1〜2種類併用しているだけである為、印字安定性は良好であるものの、印刷物性能や乾燥性は劣る結果となった。比較例5,8,9,10,11は重量平均分子量(Mw)が大きすぎるものや、Mn/Mwが3以上の樹脂を使用していることから、印刷物性能や乾燥性は良好であるものの、印字安定性が劣る結果となった。比較例2,3,4,7は、重量平均分子量(Mw)が39000のビニル重合体A−2と重量平均分子量(Mw)が48000の樹脂3(VYHD)など重量平均分子量(Mw)が大きいバインダー樹脂を単独で使用していることから、低温低湿時の印字安定性にて抜けが発生してしまい、印字安定性が劣る結果となった。
評価方法について下記に示す。
【0055】
<印刷安定性>
実施例1〜14、比較例1〜12で得られたインキ組成物について、25℃環境下にて、(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Painter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに50時間連続印刷し、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生頻度を評価した。この際、印刷時の環境温度,湿度を管理し、中温中湿=気温:23度,湿度:60〜70% 低温低湿=気温:15℃以下 湿度:40%以下の2つの環境にて実験を行った。表には、50時間連続印刷後ノズルチェックパターンを印字し、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りが何箇所あるかを確認し、その数を記載した。
【0056】
<耐アルコール性>
実施例1〜14、比較例1〜12で得られたインキ組成物について、(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Pai
nter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、
印刷面をラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)にて耐アルコール性を評価。評価条件としては試験用布片(金巾3号)にてエタノール/水=70/30で希釈した
液を1滴たらし加重200g、50往復で実施し、塗布面が全く剥ぎ取られなかったものを5、試験用布片に着色が見られたが、印刷面には目立った変化の見られないものを4、試験片が着色、印刷面にも若干の色落ちが見られるものを3、剥ぎ取られたが基材が見えたものを2、インキが剥ぎ取られ、基材が半分以上見えるものを1と評価した。
【0057】
<耐ガソリン性>
実施例1〜14、比較例1〜12で得られたインキ組成物について、(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Pai
nter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、
印刷面をラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)にて耐ガゾリン性を評価。評価条件としては試験用布片(金巾3号)にてガゾリンを1滴たらし加重200g、10往復で実施し、塗布面が全く剥ぎ取られなかったものを5、試験用布片に着色が見られたが、印刷面には目立った変化の見られないものを4、試験片が着色、印刷面にも若干の色落ちが見られるものを3、剥ぎ取られたが基材が見えたものを2、インキが剥ぎ取られ、基材が半分以上見えるものを1と評価した。
【0058】
<光沢>
実施例1〜14、比較例1〜12で得られたインキ組成物について、(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Pai
nter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、
60°光沢計にて光沢を評価した。
【0059】
<乾燥性>
実施例1〜14、比較例1〜12で得られたインキ組成物について、25℃環境下にて、(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Painter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートにCyan,Magenta,Yellowの3色印字にて印字率100,200,300%のベタ印刷を行い、40℃で乾燥するまでの時間を計測した。具体的には、10秒毎に触手試験を行い、手にインキが付着しなくなる時間を計測した。
【0060】
【表3】