(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電流形電力変換装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[1.電流形電力変換装置]
図1は、実施形態に係る電流形電力変換装置の構成を示す図である。
図1に示すように、実施形態に係る電流形電力変換装置1は、電流形インバータ部10と、電流形インバータ部10を制御する駆動制御部20とを備える。
【0011】
[1.1.電流形インバータ部10]
電流形インバータ部10は、直流電流源2から供給される直流電力を交流電力へ変換して負荷のU相、V相およびW相へ出力する。負荷として、例えば、電動機などがある。なお、
図1に示す例では、直流電流源2を電流形インバータ部10外に設けているが、直流電流源2を電流形インバータ部10内に設けてもよい。
【0012】
電流形インバータ部10は、6つのスイッチング素子11a〜11fと、6つの整流素子12a〜12fと、スイッチング素子11a〜11fを駆動する6つの駆動回路13a〜13fとを備える。なお、以下において、スイッチング素子11a〜11fをスイッチング素子11と総称する場合がある。また、整流素子12a〜12fを整流素子12と総称する場合がある。
【0013】
かかる電流形インバータ部10では、直流電流源2の正極と負極との間に、2つのスイッチング素子11が直列接続されたブリッジ回路が3つ並列接続され、各スイッチング素子11に逆流防止用の整流素子12が直列に接続される。直列接続されたスイッチング素子11a、11b間にはU相端子Tuが接続される。直列接続されたスイッチング素子11c、11d間にはV相端子Tvが接続される。直列接続されたスイッチング素子11e、11f間にはW相端子Twが接続される。
【0014】
スイッチング素子11は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)など、スイッチ駆動信号によってオン/オフされるスイッチング素子である。なお、整流素子12およびスイッチング素子11に代えて、逆阻止形IGBTを用いることも可能である。
【0015】
駆動回路13a〜13fは、駆動制御部20から出力されるスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnに応じたスイッチ駆動信号を生成してスイッチング素子11a〜11fをオン/オフする。
【0016】
[1.2.駆動制御部20]
駆動制御部20は、駆動回路13a〜13fにそれぞれ入力するスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnを生成する。かかる駆動制御部20は、電圧検出部21と、電流指令発生部22と、駆動信号発生部23とを備える。
【0017】
電圧検出部21は、出力相であるU相、V相およびW相の瞬時電圧値Vu、Vv、Vw(以下、相電圧検出値Vu、Vv、Vwと記載する)を検出し、駆動信号発生部23へ出力する。
【0018】
電流指令発生部22は、U相、V相およびW相の各出力相に対応する相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*と、3つの異なる出力相間(UW相、VU相、WV相)に対応する線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*とを並行して出力する。相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*と、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*との関係は、例えば、下記式(1)〜(3)によって表わされる。
【0020】
図2は、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*と線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*との関係を示す図である。
図2では、各電流指令の1周期が電気角60度毎に領域A〜Fの6つの領域に分けて示されている。領域Aは相電流指令Iu
*が正側ピーク値を包含する領域、領域Bは相電流指令Iw
*が負側ピーク値を包含する領域、領域Cは相電流指令Iv
*が正側ピーク値を包含する領域である。また、領域Dは相電流指令Iu
*が負側ピーク値を包含する領域、領域Eは相電流指令Iw
*が正側ピーク値を包含する領域、領域Fは相電流指令Iv
*が負側ピーク値を包含する領域である。
【0021】
駆動信号発生部23は、
図1に示すように、電流指令発生部22から線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*および相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*を取得し、さらに、電圧検出部21から相電圧検出値Vu、Vv、Vwを取得する。駆動信号発生部23は、取得したこれらの情報に基づいて、空間ベクトル変調法を用いてスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnを生成する。
【0022】
図3は、空間ベクトル変調法を説明するための図である。
図3には、空間ベクトル変調における9つの電流ベクトルIuv、Iuw、Ivw、Ivu、Iwu、Iwv、Iuu、Ivv、Iwwが示される。駆動信号発生部23は、これらの電流ベクトルに応じたスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnを出力する。以下、便宜上、電流ベクトルに応じたスイッチ駆動信号を出力することを、電流ベクトルを出力すると記載する場合がある。
【0023】
9つの電流ベクトルのうち、電流ベクトルIuv、Iuw、Ivw、Ivu、Iwu、Iwvは、異なる出力相間を流れる電流に対応する電流ベクトルである。また、電流ベクトルIuu、Ivv、Iwwは、それぞれ一つの出力相に対応する電流ベクトルであり、大きさがゼロの電流ベクトルである。以下、異なる相間を流れる電流に対応する電流ベクトルを「有効ベクトル」と記載し、一つの出力相に対応する大きさがゼロの電流ベクトルを「ゼロベクトル」と記載する場合がある。
【0024】
駆動信号発生部23は、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*の位相状態が領域A〜F(
図2参照)のうちどの領域の状態であるかを判定する。そして、駆動信号発生部23は、判定した領域において隣接する2つの有効ベクトルとこれら有効ベクトルに隣接するゼロベクトルとを出力する。この出力状態は
図3における電流指令ベクトルI
out_rで表現される。駆動信号発生部23は、電流指令ベクトルI
out_rで表現される電流を出力するために、ゼロベクトルと2つの有効ベクトルを出力する時間を調整する。
【0025】
図3に示すベクトルIaは、電流指令ベクトルI
out_rのIuwベクトル方向成分を表わし、ベクトルIbは、電流指令ベクトルI
out_rのIuvベクトル方向成分を表わす。
図3に示す電流指令ベクトルI
out_rは、
図2に示すt1時点の電流指令ベクトルI
out_rである。電流ベクトルIuw、Ivw、Ivu、Iwu、Iwv、Iuvの大きさを直流電流源2の電流値と等しいとすると
図3に示すベクトルIaおよびIbの大きさは、
図2に示すスカラ量IaおよびIbと一致する。
【0026】
駆動信号発生部23においては、電流指令ベクトルI
out_rを生成するために、PWM(Pulse Width Modulation)手法が用いられる。例えば、PWMの制御周期をT、直流電流源2の電流値をIL、2つの有効ベクトルのうち一方を出力する時間をTaとし、他方を出力する時間をTbとした場合、Ta、Tbは、例えば、下記式(4)、(5)で決定される。
【0028】
駆動信号発生部23は、制御周期Tにおいて、一方の有効ベクトルを時間Ta、他方の有効ベクトルを時間Tbだけ出力し、制御周期Tの残り時間Tc(=T−Ta−Tb)はゼロベクトルを出力する。
【0029】
例えば、
図2に示すt1時点の電流指令ベクトルI
out_rの場合、駆動信号発生部23は、電流ベクトルIuwを時間Ta、電流ベクトルIuvを時間Tbだけ出力し、制御残り時間Tcはゼロベクトルを出力する。
【0030】
駆動信号発生部23は、電流指令ベクトルI
out_rを形成するゼロベクトルとして、コモンモード電圧の振幅が最も低くなるゼロベクトルを選択可能に構成される。これにより、電流形電力変換装置1が発生するコモンモード電圧の振幅を低減することができる。以下、コモンモード電圧の振幅の低減について具体的に説明する。
【0031】
電流形インバータ部10において、スイッチング素子11a〜11fを全てオフにすると、直流電流源2から負荷への電流が遮断される。直流電流源2は大きなインダクタンスを備えていることから、直流電流源2の電流を遮断した場合には、過電圧の発生を招くことになる。
【0032】
そこで、駆動信号発生部23は、有効ベクトルを出力する出力モードに加え、ゼロベクトルを出力する短絡モードを有しており、これにより、直流電流源2の電流通路を確保し、過電圧の発生を防止している。
【0033】
短絡モードは、出力モードに比べ、絶対値として大きなコモンモード電圧を発生する。したがって、電流形電力変換装置において、コモンモード電圧を低減するためには、短絡モードにおけるコモンモード電圧を低減することが有効である。かかる短絡モードでは、ゼロベクトルを出力する相がU相、V相およびW相のいずれであっても、電流形インバータ部10の出力電流には影響がない。そこで、電流形電力変換装置1では、ゼロベクトルを出力する相として、U相、V相およびW相のうち相電圧の絶対値が小さい相を選択する。
【0034】
具体的には、駆動信号発生部23は、電圧検出部21から入力される相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づき、相電圧の絶対値が最小の相を判定し、かかる最小の相に対応するゼロベクトルを選択する。これにより、短絡モードにおけるコモンモード電圧を低減することができ、短絡モードから出力モードに移る際のコモンモード電圧の変動を抑えることができる。
【0035】
また、駆動信号発生部23は、ゼロベクトルの出力周期が大きく変動しないように、スイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnを生成する。これにより、電流リップルの周波数変化を抑制できる。
【0036】
また、駆動信号発生部23は、電流形インバータ部10から出力する電圧(以下、出力電圧と記載する場合がある)に応じて、ゼロベクトルの選択処理を変えることができる。例えば、駆動信号発生部23は、出力電圧の振幅が相対的に大きければ、相電圧の絶対値が最も小さい相に対応するゼロベクトルを選択し、そうでなければ、空間ベクトル法で予め決定されるゼロベクトルを選択する。
【0037】
以下においては、出力電圧の振幅に応じてゼロベクトルの選択処理を変えるものとして説明するが、出力電圧の振幅にかかわらず、相電圧の絶対値が最も小さい相に対応するゼロベクトルを選択することもできる。
【0038】
[2.駆動信号発生部23]
以下、駆動信号発生部23についてさらに具体的に説明する。
図4は、駆動信号発生部23の構成例を示す図である。
【0039】
図4に示すように、駆動信号発生部23は、電流指令補正器31と、搬送波信号発生器32と、比較器33と、極性判定器34と、信号生成器35と、ゼロベクトル切換器36と、6つのオフディレイ回路37a〜37fとを備える。以下において、オフディレイ回路37a〜37fをオフディレイ回路37と総称する場合がある。なお、電流指令補正器31は、電流指令補正部の一例に相当し、信号生成器35は、信号生成部の一例に相当し、ゼロベクトル切換器36は、切換部の一例に相当する。
【0040】
[2.1.駆動信号発生部23による処理]
図5は、駆動信号発生部23によるスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnの生成の流れを示すフローチャートである。駆動信号発生部23の電流指令補正器31は、
図5に示すように、相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づき、出力電圧の振幅が第1の所定値以上であるか否かを判定する(ステップS10)。
【0041】
電流指令補正器31は、出力電圧の振幅が第1の所定値以上であると判定すると(ステップS10;Yes)、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*を増加または減少させる電流指令補正処理を行う(ステップS11)。
【0042】
かかる電流指令補正処理により、搬送波信号Vcのボトム値以上またはピーク値以下になる線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*が電流指令補正器31から比較器33へ出力される。これにより、ゼロベクトルの出力周期を搬送波信号Vcの周期と同様の周期にすることができ、電流リップルの周波数変化を抑制できる。
【0043】
なお、出力電圧の振幅が第1の所定値以上ではない場合、電流指令補正器31は、電流指令補正処理を停止し、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*をそのまま出力する。なお、以下においては、説明の便宜上、電流指令補正器31から出力される線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*を補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**と記載する。
【0044】
ステップS10において、出力電圧の振幅が第1の所定値以上ではないと判定した場合(ステップS10;No)、または、ステップS11の処理が終了した場合、比較器33は、比較処理を行う(ステップS12)。かかる比較処理において、比較器33は、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**と搬送波信号Vcとを比較してPWMパルス信号Suw、Svu、Swvを生成する。
【0045】
また、極性判定器34は、極性判定処理を行う(ステップS13)。かかる極性判定処理において、極性判定器34は、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*の極性を判定し、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*の極性に応じた相電流極性信号Iud、Ivd、Iwdをそれぞれ生成する。
【0046】
ステップS12、S13の処理が終了すると、信号生成器35は、第1のスイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*、Svp
*、Svn
*、Swp
*、Swn
*を生成する信号生成処理を行う(ステップS14)。なお、以下において、第1のスイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*、Svp
*、Svn
*、Swp
*、Swn
*を、第1のスイッチ駆動信号S
*と総称する場合がある。
【0047】
かかる信号生成処理において、信号生成器35は、PWMパルス信号Suw、Svu、Swvと、相電流極性信号Iud、Ivd、Iwdに基づいて、第1のスイッチ駆動信号S
*を生成する。信号生成器35は、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**の全てが搬送波信号Vcより小さい状態である場合と大きい状態である場合とで短絡モードの対象となる出力相が異なるように第1のスイッチ駆動信号S
*を生成する。
【0048】
また、ゼロベクトル切換器36は、相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づき、出力電圧の振幅が第2の所定値以上であるか否かを判定する(ステップS15)。ゼロベクトル切換器36は、出力電圧の振幅が第2の所定値以上であると判定すると(ステップS15;Yes)、ゼロベクトル切換処理を行う(ステップS16)。
【0049】
かかるゼロベクトル切換処理において、ゼロベクトル切換器36は、第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行する駆動信号である場合、第2のスイッチ駆動信号Sup
**、Sun
**、Svp
**、Svn
**、Swp
**、Swn
**を生成する。なお、以下において、第2のスイッチ駆動信号Sup
**、Sun
**、Svp
**、Svn
**、Swp
**、Swn
**を第2のスイッチ駆動信号S
**と総称する場合がある。
【0050】
第2のスイッチ駆動信号S
**は、相電圧の絶対値が最小である出力相に対して短絡モードを実行する。ゼロベクトル切換器36は、信号生成器35から出力される第1のスイッチ駆動信号S
*を第2のスイッチ駆動信号S
**に切り換えて、オフディレイ回路37を介して第2のスイッチ駆動信号S
**を電流形インバータ部10へ出力する。
【0051】
一方、ゼロベクトル切換器36は、第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行する駆動信号でない場合、信号生成器35から出力される第1のスイッチ駆動信号S
*を電流形インバータ部10へオフディレイ回路37を介して出力する。また、ステップS15において出力電圧の振幅が第2の所定値以上ではないと判定した場合(ステップS15;No)も、ゼロベクトル切換器36は、第1のスイッチ駆動信号S
*を電流形インバータ部10へオフディレイ回路37を介して出力する。
【0052】
このように、駆動信号発生部23は、第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行する駆動信号である場合に、相電圧の絶対値が最小である出力相に対して短絡モードを実行する第2のスイッチ駆動信号S
**を電流形インバータ部10へ出力する。これにより、相電圧の絶対値が最小である出力相に対して短絡モードが実行されることから、コモンモード電圧の振幅を低減することができる。
【0053】
以下、電流指令補正器31、搬送波信号発生器32、比較器33、極性判定器34、信号生成器35、ゼロベクトル切換器36およびオフディレイ回路37について具体的に説明する。なお、駆動信号発生部23の各部位は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0054】
また、駆動信号発生部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含むこともできる。この場合、CPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、電流指令補正器31、搬送波信号発生器32、比較器33、極性判定器34、信号生成器35、ゼロベクトル切換器36およびオフディレイ回路37として機能する。
【0055】
[2.2.電流指令補正器31]
電流指令補正器31は、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*を、相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づいて増加または減少させ、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**を生成する。電流指令補正器31は、電流指令発生部22から線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*を取得し、電圧検出部21から相電圧検出値Vu、Vv、Vwを取得する。また、電流指令補正器31は、相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づき、出力電圧の振幅が第1の所定値よりも低いと判定した場合、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*を補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**として比較器33へ出力する。
【0056】
図6は、電流指令補正器31の構成例を示す図である。
図6に示す電流指令補正器31は、領域判定器41と、ゼロベクトル判定器42と、大小判定器43と、最大判定器44と、最小判定器45と、減算器46と、加算器47、52〜54と、切換器48と、乗算器49〜51とを備える。なお、大小判定器43が出力振幅判定部の一例に相当する。
【0057】
領域判定器41は、領域A〜領域F(
図2参照)のうち、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*の位相状態に対応する領域を判定する。領域判定器41は、かかる領域の判定を線間電流指令Iuw
*の位相に基づいて判定する。なお、領域判定器41における領域の判定は、線間電流指令Ivu
*、Iwv
*および相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*のうちいずれかの指令の位相や電流指令ベクトルI
out_rの位相θ
Iout(
図3参照)に基づいて行うこともできる。
【0058】
ゼロベクトル判定器42は、内部に設定された判定テーブルに基づき、領域判定器41によって判定された領域に対応する2つのゼロベクトルを判定し、判定結果を大小判定器43へ通知する。ゼロベクトル判定器42は、2つのゼロベクトルとして第1ゼロベクトルおよび第2ゼロベクトルを判定する。
【0059】
第1ゼロベクトルおよび第2ゼロベクトルは、第1のスイッチ駆動信号S
*により設定される短絡モードの対象候補となるゼロベクトルである。具体的には、第1ゼロベクトルは、後述する搬送波信号Vcが全ての補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**よりも小さい状態である場合に選択されるゼロベクトルである。また、第2ゼロベクトルは、搬送波信号Vcが全ての線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**よりも大きい状態である場合に選択されるゼロベクトルである。
【0060】
図7は、判定テーブルの一例を示す図である。ゼロベクトル判定器42は、例えば、領域判定器41によって判定された領域が領域Aである場合、
図7に示す判定テーブルに基づき、第1ゼロベクトルは電流ベクトルIvvであり、第2ゼロベクトルは電流ベクトルIwwであると判定する。なお、ここでは判定テーブルを用いてゼロベクトルを判定する例を説明したが、例えば、ロジック回路などによって、ゼロベクトルを判定してもよい。
【0061】
大小判定器43は、相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づく判定結果Kaを切換器48および乗算器49〜51へ出力する。大小判定器43は、相電圧の振幅が第1の所定値未満である場合、判定結果Kaとして「0」を出力する。なお、相電圧の振幅は、相電圧検出値Vu、Vv、Vwのうち少なくともいずれか一つに基づいて検出する。
【0062】
一方、大小判定器43は、相電圧の振幅が第1の所定値以上である場合、相電圧検出値Vu、Vv、Vwのうち、第1ゼロベクトルおよび第2ゼロベクトルに対応する相の相電圧検出値の大きさの大小関係を判定する。大小判定器43は、第1ゼロベクトルに対応する相電圧検出値の大きさが第2ゼロベクトルに対応する相電圧検出値の大きさ未満である場合、判定結果Kaとして「+1」を出力し、そうでない場合には、判定結果Kaとして「−1」を出力する。
【0063】
例えば、第1ゼロベクトルが電流ベクトルIvvで、第2ゼロベクトルが電流ベクトルIwwである場合、第1ゼロベクトルに対応する相はV相で、第2ゼロベクトルに対応する相はW相である。この場合、大小判定器43は、相電圧検出値Vvの大きさが相電圧検出値Vwの大きさ未満であれば、判定結果Kaとして「+1」を出力し、そうでない場合には、判定結果Kaとして「−1」を出力する。
【0064】
最大判定器44は、電流指令発生部22から入力される線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*のうち値が最大の線間電流指令(以下、最大線間電流指令と記載する)を選択して出力する。例えば、領域Aでは、
図2に示すように、最大線間電流指令は線間電流指令Iuw
*であり、最大判定器44は、線間電流指令Iuw
*を最大線間電流指令として選択して出力する。
【0065】
減算器46は、最大判定器44から出力される最大線間電流指令を電流値Idc/2から減算して第1オフセット量ΔIs1を生成する。減算器46は、かかる第1オフセット量ΔIs1を切換器48へ出力する。なお、電流値Idc/2は、直流電流源2の電流値Idcを1/2にした値である。
【0066】
最小判定器45は、電流指令発生部22から入力される線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*のうち値が最小の線間電流指令(以下、最小線間電流指令と記載する)を選択して出力する。例えば、領域Aでは、
図2に示すように、最小線間電流指令は線間電流指令Ivu
*であり、最小判定器45は、線間電流指令Ivu
*を最小線間電流指令として選択して出力する。
【0067】
加算器47は、最小判定器45から出力される最小線間電流指令に、電流値Idc/2を加算して第2オフセット量ΔIs2を生成する。加算器47は、かかる第2オフセット量ΔIs2を切換器48へ出力する。
【0068】
図8は、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*と、第1オフセット量ΔIs1と、第2オフセット量ΔIs2との関係を説明するための図である。線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*が
図8に示す状態である場合、最大線間電流指令は線間電流指令Iuw
*である。
【0069】
したがって、第1オフセット量ΔIs1は、電流値Idc/2から線間電流指令Iuw
*を減算した値である。また、最小線間電流指令は線間電流指令Ivu
*である。したがって、第2オフセット量ΔIs2は、線間電流指令Ivu
*に電流値Idc/2を加算した値である。
【0070】
図6に戻って、電流指令補正器31の構成についての説明を続ける。切換器48は、大小判定器43から入力される判定結果Kaに基づいて、第1オフセット量ΔIs1および第2オフセット量ΔIs2のうち一方を選択する。切換器48は、選択したオフセット量をオフセット量ΔIsとして乗算器49〜51へ出力する。
【0071】
具体的には、切換器48は、大小判定器43から入力される判定結果Kaが「+1」である場合、第1オフセット量ΔIs1を乗算器49〜51へ出力する。一方、切換器48は、大小判定器43から入力される判定結果Kaが「−1」である場合、第2オフセット量ΔIs2を乗算器49〜51へ出力する。
【0072】
乗算器49〜51は、切換器48から入力されるオフセット量ΔIsと、大小判定器43から入力される判定結果Kaとを乗算し、かかる乗算結果Kb(=Ka×ΔIs)を加算器52〜54へ出力する。例えば、乗算器49〜51は、大小判定器43から判定結果Kaとして「+1」が入力される場合、第1オフセット量ΔIs1と同値の乗算結果Kb(=ΔIs1)を出力する。
【0073】
一方、乗算器49〜51は、大小判定器43から判定結果Kaとして「−1」が入力される場合、第2オフセット量ΔIs2の正負(極性)を反転させた乗算結果Kb(=−ΔIs2)を出力する。また、乗算器49〜51は、大小判定器43から判定結果Kaとして「0」が入力される場合、ゼロ値の乗算結果Kbを出力する。
【0074】
加算器52〜54は、電流指令発生部22から入力される線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*に対して、乗算器49〜51から出力される乗算結果Kbを加算し、加算結果を補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**として比較器33へ出力する。具体的には、加算器52は、線間電流指令Iuw
*に対して、乗算器49から出力される乗算結果Kbを加算して補正線間電流指令Iuw
**を生成し、比較器33へ出力する。
【0075】
また、加算器53は、線間電流指令Ivu
*に対して、乗算器50から出力される乗算結果Kbを加算して補正線間電流指令Ivu
**を生成し、比較器33へ出力する。また、加算器54は、線間電流指令Iwv
*に対して、乗算器51から出力される乗算結果Kbを加算して補正線間電流指令Iwv
**を生成し、比較器33へ出力する。
【0076】
図9Aおよび
図9Bは、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*と、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**との関係を示す図である。大小判定器43における判定結果Kaが「+1」である場合、
図9Aに示すように、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**は線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*に第1オフセット量ΔIs1を加算した値である。このように、電流指令補正器31は、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*のうち最大の値となる線間電流指令が搬送波信号Vcのピーク値と一致するまで線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*を増加させて補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**を生成する。
【0077】
また、大小判定器43における判定結果Kaが「−1」である場合、
図9Bに示すように、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**は線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*から第2オフセット量ΔIs2を減算した値である。このように、電流指令補正器31は、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*のうち最小の値となる線間電流指令が搬送波信号Vcのボトム値と一致するまで線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*を減少させて補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**を生成する。
【0078】
一方、相電圧の振幅が第1の所定値未満である場合、大小判定器43における判定結果Kaは「0」であり、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**は線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*と同値である。
【0079】
[2.3.搬送波信号発生器32および比較器33]
図4に戻って、駆動信号発生部23の構成について説明を続ける。搬送波信号発生器32は、搬送波信号Vcを生成して、比較器33へ出力する。比較器33は、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**と搬送波信号Vcとを比較してPWMパルス信号Suw、Svu、Swvを生成する。
【0080】
比較器33は、生成したPWMパルス信号Suw、Svu、Swvを信号生成器35へ出力する。なお、ここでは、搬送波信号Vcを三角波信号とするがこれに限定されず、例えば、のこぎり波であってもよい。
【0081】
図10は、比較器33の構成例を示す図である。
図10に示すように、比較器33は、比較器61〜63を備える。比較器61は、補正線間電流指令Iuw
**が搬送波信号Vcの値以上でHigh、補正線間電流指令Iuw
**が搬送波信号Vcの値未満でLowのPWMパルス信号Suwを出力する。
【0082】
また、比較器62は、補正線間電流指令Ivu
**が搬送波信号Vcの値以上でHigh、補正線間電流指令Ivu
**が搬送波信号Vcの値未満でLowのPWMパルス信号Svuを出力する。また、比較器63は、補正線間電流指令Iwv
**が搬送波信号Vcの値以上でHigh、補正線間電流指令Iwv
**が搬送波信号Vcの値未満でLowのPWMパルス信号Swvを出力する。
【0083】
[2.4.極性判定器34]
図4に戻って、駆動信号発生部23の構成について説明を続ける。極性判定器34は、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*の極性を判定し、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*の極性に応じた相電流極性信号Iud、Ivd、Iwdをそれぞれ生成する。そして、極性判定器34は、相電流極性信号Iud、Ivd、Iwdを信号生成器35へ出力する。
【0084】
図11は、極性判定器34の構成例を示す図である。
図11に示すように、極性判定器34は、3つの比較器64〜66を備え、各比較器64〜66によって相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*とゼロ電圧V
0とを比較する。
【0085】
比較器64は、相電流指令Iu
*がゼロ電圧V
0以上でHigh、相電流指令Iu
*がゼロ電圧V
0未満でLowの相電流極性信号Iudを出力する。比較器65は、相電流指令Iv
*がゼロ電圧V
0以上でHigh、相電流指令Iv
*がゼロ電圧V
0未満でLowの相電流極性信号Ivdを出力する。比較器66は、相電流指令Iw
*がゼロ電圧V
0以上でHigh、相電流指令Iw
*がゼロ電圧V
0未満でLowの相電流極性信号Iwdを出力する。
【0086】
[2.5.信号生成器35]
図4に戻って、駆動信号発生部23の構成について説明を続ける。信号生成器35は、PWMパルス信号Suw、Svu、Swvと、相電流極性信号Iud、Ivd、Iwdに基づいて、第1のスイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*、Svp
*、Svn
*、Swp
*、Swn
*を生成する。
【0087】
第1のスイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*は、それぞれ、U相のスイッチング素子11a、11bを駆動するための信号である。また、第1のスイッチ駆動信号Svp
*、Svn
*は、それぞれ、V相のスイッチング素子11c、11dを駆動するための信号である。また、第1のスイッチ駆動信号Swp
*、Swn
*は、それぞれ、W相のスイッチング素子11e、11fを駆動するための信号である。
【0088】
図12は、信号生成器35の構成例を示す図である。
図12に示すように、信号生成器35は、ロジック回路部71〜76を備える。ロジック回路部71〜73の内部ロジックは、下記式(6)で表わされる。また、ロジック回路部74〜76の内部ロジックは、下記式(7)で表わされる。なお、下記の式(6)および式(7)において、「バー」の記号は、反転を意味する。
【0090】
ロジック回路部71は、例えば、
図13に示す回路によって構成することができる。
図13は、ロジック回路部71の構成例を示す図である。また、ロジック回路部72、73もロジック回路部71と同様の回路によって構成することができる。
図13に示すロジック回路部71では、NOT回路と、AND回路と、OR回路とによって上記式(6)で表わされる内部ロジックが構成される。
【0091】
ロジック回路部74は、例えば、
図14に示す回路によって構成することができる。14は、ロジック回路部74の構成例を示す図である。また、ロジック回路部75、76もロジック回路部74と同様の回路によって構成することができる。
図14に示すロジック回路部74では、NOT回路と、AND回路と、OR回路とによって上記式(7)で表わされる内部ロジックが構成される。
【0092】
[2.6.ゼロベクトル切換器36]
図4に戻って、駆動信号発生部23の構成について説明を続ける。ゼロベクトル切換器36は、第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行するスイッチ駆動信号である場合に、相電圧の絶対値が最小である出力相に対して短絡モードを実行する第2のスイッチ駆動信号S
**を第1のスイッチ駆動信号S
*に切り換えて出力する。一方、ゼロベクトル切換器36は、信号生成器35により生成される第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行するスイッチ駆動信号でない場合、第1のスイッチ駆動信号S
*を出力する。
【0093】
以下においては、説明の便宜上、ゼロベクトル切換器36から出力されるスイッチ駆動信号をスイッチ駆動信号Sup1
*、Sun1
*、Svp1
*、Svn1
*、Swp1
*、Swn1
*と記載する。また、スイッチ駆動信号Sup1
*、Sun1
*、Svp1
*、Svn1
*、Swp1
*、Swn1
*をスイッチ駆動信号Sup1と総称する場合がある。
【0094】
図15は、ゼロベクトル切換器36の構成例を示す図である。ゼロベクトル切換器36は、
図15に示すように、ゼロベクトル検出器80と、相電圧判定器81と、動作制御器82と、ディレイ回路83a〜83f(以下、ディレイ回路83と総称する場合がある)と、スイッチ駆動信号切換器84とを備える。
【0095】
ゼロベクトル検出器80は、第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行するスイッチ駆動信号か否かを判定する。かかるゼロベクトル検出器80は、第1のスイッチ駆動信号S
*がU相、V相およびW相のいずれかのゼロベクトルを実行する駆動信号の場合、Highレベルのゼロベクトル検出信号Zdetを出力する。一方、U相、V相およびW相のいずれのゼロベクトルも実行する駆動信号でない場合、ゼロベクトル検出器80は、Lowレベルのゼロベクトル検出信号Zdetを出力する。
【0096】
具体的には、ゼロベクトル検出器80は、AND回路100〜102と、OR回路103とを備える。AND回路100は、スイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*を入力し、スイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*が共にHighレベルの場合に、Highレベルの信号を出力する。AND回路101は、スイッチ駆動信号Svp
*、Svn
*を入力し、スイッチ駆動信号Svp
*、Svn
*が共にHighレベルの場合にHighレベルの信号を出力する。AND回路102は、スイッチ駆動信号Swp
*、Swn
*を入力し、スイッチ駆動信号Swp
*、Swn
*が共にHighレベルの場合にHighレベルの信号を出力する。OR回路103は、AND回路100〜102のいずれかからHighレベルの信号が出力されると、Highレベルのゼロベクトル検出信号Zdetを出力する。なお、ゼロベクトル検出器80は、
図15に示す構成に限定されず、第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行するスイッチ駆動信号か否かを判定することができればよい。
【0097】
相電圧判定器81は、相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づき、出力電圧の振幅が第2の所定値未満であるか否かを判定する。相電圧判定器81は、出力電圧の振幅が第2の所定値未満である場合、Lowレベルの制御信号Contを動作制御器82へ出力し、出力電圧の振幅が第2の所定値以上である場合、Highレベルの制御信号Contを動作制御器82へ出力する。なお、相電圧判定器81は、出力電圧の振幅が第2の所定値未満であるか否かの判定は、電流指令補正器31の大小判定器43の判定結果に基づいて行うこともできる。
【0098】
また、相電圧判定器81は、出力電圧の振幅が第2の所定値以上である場合、相電圧検出値Vu、Vv、Vwに基づき、相電圧の絶対値が最小となる相を判定する。相電圧判定器81は、ゼロベクトル指令Suu
*、Svv
*、Sww
*のうち相電圧の絶対値が最小となる相に対応するゼロベクトル指令をHighレベルにして動作制御器82へ出力する。
【0099】
具体的には、相電圧判定器81は、相電圧の絶対値が最小となる相がU相であると判定した場合、Highレベルのゼロベクトル指令Suu
*を出力する。相電圧判定器81は、相電圧の絶対値が最小となる相がV相であると判定した場合、Highレベルのゼロベクトル指令Svv
*を出力する。相電圧判定器81は、相電圧の絶対値が最小となる相がW相であると判定した場合、Highレベルのゼロベクトル指令Sww
*を出力する。
【0100】
動作制御器82は、ゼロベクトル検出信号Zdet、ゼロベクトル指令Suu
*、Svv
*、Sww
*、制御信号Contおよびイネーブル信号Zenbに基づいて、第1のスイッチ駆動信号S
*を第2のスイッチ駆動信号S
**に切り換えるか否かを判定する。動作制御器82は、ゼロベクトル検出信号Zdet、イネーブル信号Zenbおよび制御信号ContがHighレベルである場合に、ゼロベクトル指令Suu
*、Svv
*、Sww
*をスイッチ駆動信号切換器84へ出力する。イネーブル信号Zenbは、第1のスイッチ駆動信号S
*から第2のスイッチ駆動信号S
**への切り換えの実行と停止を制御する所定の制御信号の一例であり、例えば、駆動制御部20が備える設定部(不図示)が内部に設定されたパラメータに基づいて生成する。
【0101】
具体的には、動作制御器82は、AND回路110〜114と、NOT回路115とを備える。AND回路110は、制御信号Contおよびイネーブル信号Zenbを入力し、制御信号Contおよびイネーブル信号Zenbが共にHighレベルの場合に、Highレベルの信号を出力する。AND回路111は、ゼロベクトル検出信号ZdetがHighレベルであり、かつ、AND回路110からの出力がHighレベルである場合に、Highレベルの信号を出力する。
【0102】
AND回路112〜114は、AND回路111からHighレベルの信号が出力された場合に、ゼロベクトル指令Suu
*、Svv
*、Sww
*をそれぞれスイッチ駆動信号切換器84へ出力する。一方、AND回路112〜114は、AND回路111からLowレベルの信号が出力された場合に、Lowレベルの信号をスイッチ駆動信号切換器84へ出力する。NOT回路115は、AND回路111からHighレベルの信号が出力された場合に、Lowレベルの信号を出力し、AND回路111からLowレベルの信号が出力された場合に、Highレベルの信号を出力する。
【0103】
ディレイ回路83は、第1のスイッチ駆動信号S
*を遅延させてスイッチ駆動信号切換器84へ出力する。具体的には、ディレイ回路83aはスイッチ駆動信号Sup
*を遅延させ、ディレイ回路83bはスイッチ駆動信号Svp
*を遅延させ、ディレイ回路83cはスイッチ駆動信号Swp
*を遅延させる。また、ディレイ回路83dはスイッチ駆動信号Sun
*を遅延させ、ディレイ回路83eはスイッチ駆動信号Svn
*を遅延させ、ディレイ回路83fはスイッチ駆動信号Swn
*を遅延させる。
【0104】
このように、ディレイ回路83によって第1のスイッチ駆動信号S
*を遅延させることにより、ゼロベクトル検出器80および動作制御器82によって生じる遅延を相殺することができる。なお、ゼロベクトル検出器80や動作制御器82によって生じる遅延が問題にならない場合、ディレイ回路83は設けなくてもよい。
【0105】
スイッチ駆動信号切換器84は、第1のスイッチ駆動信号S
*が短絡モードを実行する駆動信号である場合、相電圧の絶対値が最小である出力相に対して短絡モードを実行する第2のスイッチ駆動信号S
**を第1のスイッチ駆動信号S
*に代えて出力する。
【0106】
具体的には、スイッチ駆動信号切換器84は、AND回路120〜125と、OR回路130〜135とを備える。AND回路120〜125は、NOT回路115からの出力信号とディレイ回路83からの第1のスイッチ駆動信号S
*とを入力する。かかるAND回路120〜125は、NOT回路115からHighレベルの信号が入力された場合、第1のスイッチ駆動信号S
*を出力し、NOT回路115からLowレベルの信号が入力された場合、Lowレベルの信号を出力する。
【0107】
OR回路130〜135は、AND回路120〜125からの出力信号と、動作制御器82からの出力信号とに基づいて、第1のスイッチ駆動信号S
*または第2のスイッチ駆動信号S
**を出力する。NOT回路115からHighレベルの信号が入力される場合、AND回路112〜114からLowレベルの信号が出力されるため、OR回路130〜135は、第1のスイッチ駆動信号S
*をスイッチ駆動信号S1
*として出力する。一方、NOT回路115からLowレベルの信号が入力される場合、AND回路112〜114からゼロベクトル指令Suu
*、Svv
*、Sww
*が出力され、AND回路120〜125からLowレベルの信号が出力される。そのため、OR回路130〜135は、第2のスイッチ駆動信号S
**をスイッチ駆動信号S1
*として出力する。
【0108】
[2.7.オフディレイ回路37a〜37f]
図4に戻って、駆動信号発生部23について説明を続ける。オフディレイ回路37a〜37fは、信号生成器35から入力される第1スイッチ駆動信号S
*または第2のスイッチ駆動信号S
**を遅延させたスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnを生成する。オフディレイ回路37a〜37fは、生成したスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnを駆動回路13a〜13fへ出力する。
【0109】
このように遅延させたスイッチ駆動信号Sup、Sun、Svp、Svn、Swp、Swnによって、スイッチング素子11のターンオフを遅らせることができる。そのため、スイッチング素子11のターンオン動作遅れなどに起因して、直流電流源2の出力が開放状態となることを抑制できる。
【0110】
[2.7.駆動信号発生部23の動作]
以上のように構成された駆動信号発生部23の動作例について説明する。
図16〜
図18は、補正線間電流指令Iuw
**、Ivu
**、Iwv
**、搬送波信号Vcおよび第1のスイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*、Svp
*、Svn
*、Swp
*、Swn
*の関係を示す図である。
図2に示すt1時点の電流指令ベクトルI
out_rの方向成分IaおよびIbは、それぞれ
図16〜
図18におけるベクトルIaおよびベクトルIbの大きさとして表される。
【0111】
出力電圧の振幅が第1の所定値未満の場合、電流指令補正器31において線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*の補正が行われずにそのまま出力される。この場合、搬送波信号Vcの1周期の間に出力される電流ベクトルの順番は、各領域A〜Fにおいて下記のように表わされる。
【0113】
このように、各領域A〜Fでは、それぞれ2つの有効ベクトルと2つのゼロベクトルとが搬送波信号Vcの1周期の間に出力される。例えば、領域Aにおいて、出力電圧の振幅が第1の所定値未満の場合、第1のスイッチ駆動信号Sup
*、Sun
*、Svp
*、Svn
*、Swp
*、Swn
*は
図16に示すようになる。
【0114】
一方、出力電圧の振幅が第1の所定値以上の場合、電流指令補正器31において線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*の補正が行われる。この場合、各領域A〜Fでは、それぞれ2つの有効ベクトルと1つのゼロベクトルとが搬送波信号Vcの1周期の間に出力される。搬送波信号Vcの1周期の間に出力される電流ベクトルの順番は、各領域A〜Fにおいて下記のように表わされる。
【0116】
例えば、領域Aにおいて、出力電圧の振幅が第1の所定値以上で、かつ、ゼロベクトルIvvに対応する相電圧検出値Vvの大きさがゼロベクトルIwwに対応する相電圧検出値Vwの大きさ未満であるとする。この場合、
図17に示すように、ゼロベクトルIvvに対応する第1のスイッチ駆動信号S
*が信号生成器35から搬送波信号Vcの周期毎に出力される。この場合、ゼロベクトルIvvが相電圧の絶対値が最小の相に対応するゼロベクトルに対応しなければ、ゼロベクトル切換器36は、ゼロベクトル切換器36によりゼロベクトルIuuを実行する第2のスイッチ駆動信号S
**に第1のスイッチ駆動信号S
*を切り換える。これにより、スイッチ駆動信号Sup、SunがHighレベルになって、ゼロベクトルIuuが出力される一方、ゼロベクトルIvv、Iwwは出力されない。
【0117】
また、領域Aにおいて、出力電圧の振幅が第2の所定値以上で、かつ、ゼロベクトルIwwに対応する相電圧検出値Vwの大きさがゼロベクトルIvvに対応する相電圧検出値Vvの大きさ未満であるとする。この場合、
図18に示すように、ゼロベクトルIwwに対応する第1のスイッチ駆動信号S
*が信号生成器35から搬送波信号Vcの1周期毎に出力される。この場合、ゼロベクトルIwwが相電圧の絶対値が最小の相に対応するゼロベクトルに対応しなければ、ゼロベクトル切換器36は、ゼロベクトル切換器36によりゼロベクトルIuuを実行する第2のスイッチ駆動信号S
**に第1のスイッチ駆動信号S
*を切り換える。これにより、スイッチ駆動信号Sup、SunがHighレベルになって、ゼロベクトルIuuが出力される一方、ゼロベクトルIvv、Iwwは出力されない。
【0118】
このように、駆動信号発生部23は、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*の補正を行うことで、各領域A〜Fにおいて搬送波信号Vcの周期毎にゼロベクトルを出力する。これにより、課題であったゼロベクトルの出力周期の変化が抑制されるため、電流リップルの周波数成分が大きく変化することが抑制される。また、駆動信号発生部23は、相電圧の絶対値が最小の相に対応するゼロベクトルのみを出力する。これにより、コモンモード電圧の振幅を低減することができ、短絡モードから出力モードに移る際のコモンモード電圧の変動を抑えることができる。
【0119】
以上のように、電流形電力変換装置1は、線間電流指令Iuw
*、Ivu
*、Iwv
*の補正を行うことで、ゼロベクトルの出力周期の変化を抑制し、短絡モードにおいて、3つのゼロベクトルのうち相電圧の絶対値が最小の相に対応するゼロベクトルを選択する。そのため、電流リップルの周波数成分の変動を抑制しつつ、短絡モード時におけるコモンモード電圧の振幅を低減することができ、短絡モードから出力モードに移る際のコモンモード電圧の変動を抑えることができる。
【0120】
また、電流形電力変換装置1の信号生成器35は、2つのゼロベクトルのうち対応する相電圧検出値の絶対値の大きさが小さいゼロベクトルが出力されるように線間電流指令を補正する。これにより、ゼロベクトルと有効ベクトルとの切り換えの際に、オン/オフ制御するスイッチング素子11の数を抑制することができる。例えば、相電流指令Iu
*、Iv
*、Iw
*の位相状態が領域A(
図2、
図3参照)にあり、Vw<Vvであるとする。この場合、ゼロベクトルと有効ベクトルとの切り換えは、Iww→Iuw、または、Iuw→Iwwであることから、2つのスイッチング素子11a、11eのオン/オフが切り換えられる。そのため、例えば、Ivv→Iuw、または、Iuw→Ivvとなる場合に比べて、オン/オフ制御するスイッチング素子11の数を抑制することができる。
【0121】
なお、上述においては、線間電流指令を直接補正することで、短絡モード時におけるコモンモード電圧の振幅を低減することとしたが、搬送波信号Vcに対して線間電流指令を補正すればよく、搬送波信号Vcを増減する補正であってもよい。
【0122】
また、上述においては、出力電圧の振幅が所定値以上か否かで、領域毎に規定された2つのゼロベクトルを使用する処理と、相電圧の絶対値が最小となる相に対応する1つのゼロベクトルを使用する処理とを切り換えるようにした。このように処理を切り換えるのは、出力電圧の振幅が小さい場合には、コモンモード電圧も小さいためである。しかし、第1および第2の所定値を零にすることで出力電圧の振幅の大きさにかかわらず、相電圧の絶対値が最小となる相に対応する1つのゼロベクトルを使用する処理を行うこともできる。
【0123】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。