特許第5900488号(P5900488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5900488ガスケット付き電解質膜製造装置及びガスケット付き電解質膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900488
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】ガスケット付き電解質膜製造装置及びガスケット付き電解質膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20160324BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20160324BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20160324BHJP
【FI】
   H01M8/02 E
   H01M8/02 S
   !H01M8/10
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-505901(P2013-505901)
(86)(22)【出願日】2012年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2012056313
(87)【国際公開番号】WO2012128106
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-61197(P2011-61197)
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木内 脩治
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−503704(JP,A)
【文献】 特開2006−286430(JP,A)
【文献】 特開2009−64633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
B32B 37/00
B65H 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域に触媒層が設けられた電解質膜と、当該触媒層の領域形状に応じた形状の開口部が設けられたガスケットとを貼合してガスケット付き電解質膜を製造するガスケット付き電解質膜製造装置であって、
前記ガスケットに当接して前記電解質膜と前記ガスケットとを貼合する貼合ローラーを備え、
前記貼合ローラーの表面には前記ガスケットの開口部と嵌合する凸部が設けられ、
前記凸部と前記開口部とを嵌合させた状態で前記電解質膜と前記ガスケットとを貼合するよう前記貼合ローラーを動作させるローラー制御部を備えることを特徴とするガスケット付き電解質膜製造装置。
【請求項2】
前記貼合ローラーの凸部の平面視形状は前記ガスケット開口部形状と相似する形状を成すことを特徴とする、請求項1に記載のガスケット付き電解質膜製造装置。
【請求項3】
前記貼合ローラーの凸部の高さが、前記ガスケットの厚みと略同じであることを特徴とする請求項2に記載のガスケット付き電解質膜製造装置。
【請求項4】
前記貼合ローラーの凸部の材質を弾性体とすることを特徴とする、請求項3に記載のガスケット付き電解質膜製造装置。
【請求項5】
前記開口部は複数辺により囲まれた多角形状を成し、
前記貼合ローラーの凸部の平面視形状は、各辺の長さが前記開口部の対応する辺の長さより5μm以上100μm以下の範囲で短い多角形状を成すことを特徴とする、請求項2に記載のガスケット付き電解質膜製造装置。
【請求項6】
前記ガスケットは帯状を成し、
前記開口部は前記ガスケットに予め定められた第1の間隔毎に複数形成され、
前記貼合ローラーは円筒状を成し、
前記凸部は前記貼合ローラーの外周面上に前記第1の間隔に応じて予め定められた第2の間隔毎に複数形成され、
前記制御部は、前記貼合ローラーを回転させることにより、前記複数の凸部と前記複数の開口部とを各々連続的に嵌合させて前記電解質膜と前記ガスケットとを貼り合わせることを特徴とする、請求項1に記載のガスケット付き電解質膜製造装置。
【請求項7】
前記貼合ローラーを二つ対向するよう備え、
前記制御部は、前記電解質膜の表裏両面に前記ガスケットを同時に貼り合わせるよう前記二つの貼合ローラーを動作させることを特徴とする、請求項1に記載のガスケット付き電解質膜製造装置。
【請求項8】
所定領域に触媒層が設けられた電解質膜と、当該触媒層の領域形状に応じた形状の開口部が設けられたガスケットとを貼合してガスケット付き電解質膜を製造するガスケット付き電解質膜の製造方法であって、
前記ガスケットに当接して前記電解質膜と前記ガスケットとを貼合する貼合ローラーの表面に設けられた凸部と前記ガスケットの開口部と嵌合するステップと、
前記凸部と前記開口部とを嵌合させた状態で前記電解質膜と前記ガスケットとを貼合するよう前記貼合ローラーを動作させるステップとを備えることを特徴とするガスケット付き電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット付き電解質膜の製造装置および製造方法に関し、より特定的には電解質膜にガスケット部材を貼り合わせるガスケット付き電解質膜製造装置及びガスケット付き電解質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池等に用いられるガスケット付き触媒塗工電解質膜(以下、単にCCMという)が開発されている。ガスケット付きCCMは、電解質膜の両面に電極触媒層およびガスケットが形成されて成る。ガスケット付きCCMを製造する技術としては、たとえば、下記の特許文献1に示す電解質ガスケット付きCCMの製造方法が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている製造方法では、帯状の電解質膜に所定間隔で触媒層を形成して成る触媒層塗工電解質膜(CCM)を原反ロールから巻き戻して搬送し、当該CCMに、開口部が設けられたガスケットを一対のロールによって圧着してガスケット付きCCMを形成する。このような構成の製造方法によれば、帯状の触媒層塗工電解質膜から複数のガスケット付きCCMを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−180031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の製造方法では、電解質膜に形成される触媒層の形成領域とガスケットの開口部との位置を合わせる必要がある。しかしながら、従来の技術では、このような触媒層の形成領域およびガスケットの開口部について位置ずれが発生するという問題があった。このような触媒層の位置ずれを見込んでガスケットの開口部を大きめに形成する方法が考案されているが、このような方法ではガスケットに覆われていない電解質膜があり、耐久性が低下する問題があった。更に、ガスケットの厚みは一般的に数十μm程度と非常に薄く、かつ形状が額縁状になっているため、形状保持が非常に難しく、精度良く貼合できないという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、ガスケットを電解質膜の所定の位置に精度良く貼り合わせ可能とするガスケット付き電解質膜の製造装置およびガスケット付き電解質膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本願は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、所定領域に触媒層が設けられた電解質膜と、当該触媒層の領域形状に応じた形状の開口部が設けられたガスケットとを貼合してガスケット付き電解質膜を製造するガスケット付き電解質膜製造装置であって、ガスケットに当接して電解質膜とガスケットとを貼合する貼合ローラーを備え、貼合ローラーの表面にはガスケットの開口部と嵌合する凸部が設けられ、凸部と開口部とを嵌合させた状態で電解質膜とガスケットとを貼合するよう貼合ローラーを動作させるローラー制御部を備えることを特徴とするガスケット付き電解質膜製造装置である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、貼合ローラーの凸部の平面視形状はガスケット開口部形状と相似する形状を成すことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、貼合ローラーの凸部の高さが、ガスケットの厚みと略同じであることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、貼合ローラーの凸部の材質を弾性体とすることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第2の発明において、開口部は複数辺により囲まれた多角形状を成し、貼合ローラーの凸部の平面視形状は、各辺の長さが開口部の対応する辺の長さより80μm以上120μm以下の範囲で短い多角形状を成すことを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1の発明において、ガスケットは帯状を成し、開口部はガスケットに予め定められた第1の間隔毎に複数形成され、貼合ローラーは円筒状を成し、凸部は貼合ローラーの外周面上に第1の間隔に応じて予め定められた第2の間隔毎に複数形成され、制御部は、貼合ローラーを回転させることにより、複数の凸部と複数の開口部とを各々連続的に嵌合させて電解質膜とガスケットとを貼り合わせることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第1の発明において、貼合ローラーを二つ対向するよう備え、制御部は、電解質膜の表裏両面にガスケットを同時に貼り合わせるよう二つの貼合ローラーを動作させることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、所定領域に触媒層が設けられた電解質膜と、当該触媒層の領域形状に応じた形状の開口部が設けられたガスケットとを貼合してガスケット付き電解質膜を製造するガスケット付き電解質膜の製造方法であって、ガスケットに当接して電解質膜とガスケットとを貼合する貼合ローラーの表面に設けられた凸部とガスケットの開口部と嵌合するステップと、凸部と開口部とを嵌合させた状態で電解質膜とガスケットとを貼合するよう貼合ローラーを動作させるステップとを備えることを特徴とするガスケット付き電解質膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、貼合ロールに設けられた凸部とガスケットの開口部とを嵌合させつつガスケットと電解質膜とを貼り合わせることによって、ガスケットを電解質膜の所定の位置に容易に精度良く貼り合わせることができる。すなわち、ガスケットの開口部と触媒層塗工電解質膜の触媒層部分との位置ズレを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る触媒層塗工電解質膜10の平面図
図2】本発明の第1の実施形態に係る触媒層塗工電解質膜10の断面図
図3】本発明の実施形態に係るガスケット13の平面図
図4】本発明の第1の実施形態に係るガスケット付き電解質膜14の平面図
図5】本発明の第1の実施形態に係るガスケット付き電解質膜14の断面図
図6】本発明の第1の実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置1の概略図
図7】本発明の第1の実施形態に係る凸部付き圧着ローラー21の概略図
図8】本発明の第2の実施形態に係るガスケット付き電解質膜34の断面図
図9】本発明の第2の実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置2の概略図
図10】本発明の第2の実施形態に係る触媒層塗工電解質膜30の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置1およびガスケット付き電解質膜の製造方法について説明する。
【0018】
先ず、本発明に係るガスケット付き電解質膜製造装置1によって製造されるガスケット付き電解質膜14について説明する。ガスケット付き電解質膜14は、ガスケット付き電解質膜製造装置1によって、触媒層塗工電解質膜10にガスケット13が貼り合わせられることによって形成される。
【0019】
触媒層塗工電解質膜10の構成について図1および図2を参照して説明する。図1は、触媒層塗工電解質膜10の平面図である。図2は、図1に示した触媒層塗工電解質膜10のA−A断面図である。図1図2に示すように、触媒層塗工電解質膜10は、固体高分子電解質膜(単に電解質膜ともいう)12に触媒層11を設けて成る部材である。より詳細には、触媒層塗工電解質膜10は、湿潤状態で良好なプロトン導電性を示す固体高分子電解質膜12上に、白金又は白金と他の金属との合金からなる触媒を担持した粉末カーボンと樹脂により触媒層11を形成したものである。本実施形態においては、帯状の固体高分子電解質膜12の表面において、所定間隔毎に触媒層11が平面視矩形状に形成されている場合を例として説明する。
【0020】
ここで、固体高分子電解質膜12及び触媒層11を構成する材料の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0021】
固体高分子電解質膜12を構成する高分子材料としては、具体的には、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質を用いることができる。フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製Nafion(登録商標)、旭硝子(株)製Flemion(登録商標)、旭化成(株)製Aciplex(登録商標)、ゴア社製Gore Select(登録商標)などを用いることができる。炭化水素系高分子電解質膜としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどの電解質膜を用いることができる。中でも、高分子電解質膜としてデュポン社製Nafion(登録商標)系材料を好適に用いることができる。炭化水素系高分子電解質膜としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレンなどの電解質膜を用いることができる。固体高分子電解質膜12の厚みは、10μm以上300μm以下程度である。
【0022】
触媒層11を構成する樹脂としては、上記高分子材料と同様のものを用いることができる。また、触媒層11を構成する触媒としては、具体的には、白金、又は白金とパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素のほか、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属との合金のほか、これらの酸化物、複酸化物などを用いることもできる。また、触媒の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下するため、0.5nm以上20nm以下が好ましい。
【0023】
また、触媒層11を構成する粉末カーボンとしては、微粒子状で導電性を有し、触媒に侵さないものであれば特に限定されない。具体的には、カーボンブラックやグラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを用いることができる。粉末カーボンの粒径は、触媒より小さい10nm以上100nm以下程度が好適に用いられる。
【0024】
ガスケット13の構成について図3を参照して説明する。図3はガスケット13の平面図である。ガスケット13は、例えば、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等の高分子部材を基材として形成されたシート部材である。図3に示すように、ガスケット13には、所定間隔(第1の間隔)毎に開口部131が形成されている。開口部131が形成される間隔は、上述触媒層11の間隔に応じて予め定められる。触媒層11の間隔は、目的のMEAサイズによって定められる。また、開口部131の形状は上述触媒層11の平面視形状(例えば複数変により囲まれた多角形状)および大きさに応じたものとすることが好ましい。本実施形態においては、開口部131は平面視矩形状に形成されている。
【0025】
ガスケット付き電解質膜14の構成について図4および図5を参照して説明する。図4は、ガスケット付き電解質膜14の平面図である。図5は、図4に示したガスケット付き電解質膜14のB−B断面図である。ガスケット付き電解質膜14は、図4および5に示すように、固体高分子電解質膜12の表面にガスケット13が接着されて成る。この際、固体高分子電解質膜12の触媒層11がガスケット13の開口部131内に位置するよう、すなわち、触媒層11の周囲を囲むようにガスケット13が配置される。なお、ガスケット13は、例えばシリコーン系やエポキシ系などの接着剤15を介して固体高分子電解質膜12と接着される。
【0026】
次に、本発明の第1の実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置1について説明する。図6は、本発明の第1の実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置1の概略図である。ガスケット付き電解質膜製造装置1は、巻き出しローラー19a、巻き出しローラー19b、凸部付き圧着ローラー21、圧着ローラー22、加圧装置23、および制御装置(図示せず)を備える。
【0027】
巻き出しローラー19aは、予めロール状に巻かれているガスケット13を巻き出す装置である。ガスケット13には予め触媒層塗工電解質膜10と接触する面に接着剤15が塗工されている。巻き出しローラー19bは、予めロール状に巻かれている触媒層塗工電解質膜10を巻き出す装置である。圧着ローラー22は、凸部付き圧着ローラー21と共に触媒層塗工電解質膜10とガスケット13を加圧する装置である。加圧装置23は、圧着ローラー22と接続され、凸部付き圧着ローラー21および圧着ローラー22の間に圧力を作用させる装置である。制御装置は、巻き出しローラー19a、巻き出しローラー19b、凸部付き圧着ローラー21a、圧着ローラー22、および加圧装置23の動作を制御する装置である。制御装置は、典型的にはCPU等の情報処理装置やメモリ等の記憶装置、およびインターフェース回路を備え、予め記憶されたプログラムに従い巻き出しローラー19a、巻き出しローラー19b、凸部付き圧着ローラー21a、圧着ローラー22、および加圧装置23を制御する。
【0028】
凸部付き圧着ローラー21は、ガスケット13に当接して前記電解質膜と前記ガスケットとを貼合するための装置である。凸部付き圧着ローラー21は、図7に示すように円筒状の本体部24の外周面上にガスケットの開口部の所定間隔(第1の間隔)に応じた所定間隔(第2の間隔)毎に複数の凸部25が設けられて成る。図7は、第1の実施形態に係る凸部設置ローラー21の概略図である。凸部25は、ガスケット13の開口部131と嵌合するよう、当該開口部131の形状に応じた平面視形状とすることが好ましい。具体的には、凸部25の平面視形状が、開口部131の形状と相似する形状を成すことが好ましい。本実施形態においては、凸部25は平面視矩形状の突起として形成されている。凸部25の各辺の長さは、ガスケット13の開口部131の各辺より80μm以上120μm以下の範囲で短くなるよう形成されている。なお、凸部25の各辺の長さは、ガスケット13の開口部131の各辺より90μm以上110μm以下の範囲で短くなるよう形成されていることがより好ましく、ガスケット13の開口部131の各辺より100μm短くなるよう形成されていることがさらに好ましい。また、本体部24表面から凸部25の頂部までの高さ(以下、凸部の高さと称する)は、ガスケット13の厚みと略同じ大きさとすることが好ましい。具体的には、凸部25の高さが、ガスケット13の厚みよりおおよそ0.1μm以上50μm以下の範囲で薄いことが好ましい。凸部25は、例えば本体部24の表面を切削することにより作製される。凸部付き圧着ローラー21および圧着ローラー22は互いに対向するよう配置される。
【0029】
以下、上述したガスケット付き電解質膜製造装置1の動作工程について説明する。先ず、制御装置は、凸部付き圧着ローラー21の凸部がガスケットの開口部131に挿入できるように、また、凸部付き圧着ローラー21の凸部と触媒層塗工電解質膜10の触媒層部分が重なるように、凸部付き圧着ローラー21、巻き出しローラー19a、および巻き出しローラー19bを同期して回転させる。このような処理により、巻き出されたガスケット13の開口部131部分に凸部25が挿入された状態で搬送される。この際、上述の通り凸部25の各辺がガスケット13の開口部131の各辺より5μm以上100μm以下の範囲で小さく設計されているため、巻き出しローラー19aから巻き出されてきたガスケット13の開口部131に凸部25を好適に挿入できる。
【0030】
巻き出しローラー19a、19bから各々巻き出された触媒層塗工電解質膜10およびガスケット13は、凸部付き圧着ローラー21と圧着ローラー22との間に引き込まれ貼合される。この際、凸部25の頂面の中心と触媒層11の形成領域の面中心が貼合時に一致するよう、制御装置は凸部付き圧着ローラー21、巻き出しローラー19a、および巻き出しローラー19bを同期して制御する。
【0031】
次いで、制御装置は、加圧装置23によって凸部付き圧着ローラー21と圧着ローラー22間に圧力を作用させる。加圧装置23によって作用させる圧力は、0.1MPa以上100MPa以下の範囲内で設定された圧力になるよう調節される。そして、制御装置は、触媒層塗工電解質膜10とガスケット13が貼合される際に、圧力が均等に作用するよう加圧装置23を制御する。このような制御により、触媒層塗工電解質膜10とガスケット13が貼合する際の変形を抑制することができる。
【0032】
なお、圧力については、10MPa以上100MPa以下の範囲より低い場合、接着力が足りずにガスケット付き電解質膜14aが作製できず、10MPa以上100MPa以下の圧力範囲より高い場合、高圧力によってガスケット付き電解質膜14aが劣化してしまう場合がある。このようにして作製されたガスケット付き電解質膜14aは巻き取りローラー20によって巻き取られる。
【0033】
以上説明した本実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置1、及びガスケット付き電解質膜の製造方法によれば、ガスケット13の開口部131及び触媒層塗工電解質膜10の触媒層部を凸部付き圧着ローラー21aの凸部と位置を合わせるように回転を同期させることにより、ガスケット付き電解質膜14aの触媒層とガスケット開口部131の位置ズレを抑制することができる。
【0034】
また、ガスケット13の開口部131に凸部付き圧着ローラー21aの凸部25を挿入し、触媒層塗工電解質膜10と貼合を行うことで、触媒層塗工電解質膜10への圧力が均一になり、ガスケットの形状を保ちながら連続的に良好な形状のガスケット付き電解質膜14を作製することができる。
【0035】
なお、上述した凸部付き圧着ローラー21aと圧着ローラー22の間に作用する圧力の大きさは一例であり、上記に限らず触媒層塗工電解質膜10やガスケット13の材料に応じた圧力を適宜設定してよい。
【0036】
また、本実施形態であるガスケット付き電解質膜製造装置1では、凸部25の各辺の長さをガスケット13の開口部131の各辺より5μm以上100μm以下の範囲で短くする例について説明したが、ガスケット13の材料の強度を考慮して上記以外の寸法に調節してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、本体部24表面を切削して凸部25を作製する例を示しているが、凸部25を本体部24の表面に貼り付け、凸部付き圧着ローラー21を構成してもよい。凸部25の素材は、ゴムやスポンジなどの弾性体や、異種金属など任意に選択してよい。凸部25を弾性体とすれば、凸部25の高さを適当に調整することが可能となり、ガスケット13と触媒層塗工電解質膜10の貼合時の圧力を均一にすることができ、ガスケット付き電解質膜14に皺が形成されるのを防ぐことができる。
【0038】
また、本実施形態であるガスケット付き電解質膜製造装置1では、加圧により触媒層塗工電解質膜10とガスケット13との貼合を行う例について説明したが、ガスケット13や触媒層塗工電解質膜10の材料構成によっては、凸部つき圧着ローラー21と圧着ローラー22の両方、またはどちらか一方の内部に加熱装置を備え、熱圧着による貼合を行ってもよい。
【0039】
また、本実施形態であるガスケット付き電解質膜製造装置1では、ガスケット13に接着剤15を予め塗工して貼合を行っているが、材料の構成によっては、触媒層塗工電解質膜10に接着剤15を塗工してもよい。
【0040】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ガスケット付き電解質膜製造装置1が触媒層塗工電解質膜10の一方の面にガスケット13を接合してなるガスケット付き電解質膜14aを製造するものとしたが、本発明は、図8に示すような触媒層塗工電解質膜10の両面に各々ガスケット13a、13bを接合してなるガスケット付き電解質膜34を製造可能な態様としても実施可能である。なお、図8は、第2の実施形態に係るガスケット付き電解質膜34の断面図である。
【0041】
図9は、第2の実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置2の概略図である。なお、第1の実施形態にて説明した構成と同様の構成については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。ガスケット付き電解質膜製造装置2は、巻き出しローラー19cをさらに備え、圧着ローラー22に代えて凸部付き圧着ローラー21bを備える。なお、凸部付き圧着ローラー21aは上述凸部付き圧着ローラー21と同様の装置である。また、加圧装置23は凸部付き圧着ローラー21bと接続される。凸部付き圧着ローラー21a、21bは互いに対向するよう配置される。
【0042】
ガスケット付き電解質膜製造装置2においては、図10に示すような固体高分子電解質膜12の表裏両面に触媒層11a、11bを各々設けて成る触媒層塗工電解質膜30を用いてガスケット付き電解質膜34を製造する。図10は、第2の実施形態に係る触媒層塗工電解質膜30の断面図である。第2の実施形態に係る巻き出しローラー19bは、このような触媒層塗工電解質膜30を巻き出す。また、巻き出しローラー19aは、ガスケット13aを巻き出す。また、巻き出しローラー19bは、ガスケット13bを巻き出す。
【0043】
制御装置は、これらの巻き出しローラー19a、19b、19c、および凸部付き圧着ローラー21a、21bを同期するよう動作させる。具体的には、ガスケット13は、ガスケット13aの開口部131内に凸部付き圧着ローラー21aの凸部25が挿入されるよう、またガスケット13bの開口部131内に凸部付き圧着ローラー21bの凸部25が挿入されるよう、各ローラーの動作を制御しつつガスケット13a、13bを巻き出す。さらに、制御装置は、触媒層塗工電解質膜30の触媒層11aの形成領域の中心と凸部付き圧着ローラー21aの凸部25の位置が一致するように、また触媒層塗工電解質膜30の触媒層11bの形成領域の中心と凸部付き圧着ローラー21bの凸部25の位置が一致するように各ローラーの動作を制御する。
【0044】
上記のように巻き出されたガスケット13a、13bは各々開口部131に凸部付き圧着ローラー21a、21bの凸部25を挿入された状態で、凸部付き圧着ローラー21a、および21bの間に引き込まれる。次いで、制御装置は、加圧装置23を制御することにより、凸部付き圧着ローラー21a、および21bの間に圧力を発生させ、触媒層塗工電解質膜10とガスケット13aとを、また触媒層塗工電解質膜10とガスケット13bとを各々貼り合わせる。
【0045】
上記のような圧着により製造されたガスケット付き電解質膜34は、巻き取りローラー20によってロール状に巻き取られる。
【0046】
以上説明した第2の実施形態に係るガスケット付き電解質膜製造装置2によれば、触媒層塗工電解質膜10の両面にガスケット13、13bが良好な形状で接合されたガスケット付き電解質膜34を製造することができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0048】
まず、ガスケット付き電解質膜製造装置1に触媒層塗工電解質膜10と、接着剤が塗工されたガスケット13を設置した。ここで、触媒層塗工電解質膜10の固体高分子電解質膜12としては、ナフィオン212(ナフィオン:登録商標Dupont社)を用いた。また、触媒層11は白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液(ナフィオン:登録商標、Dupont社製)とを、水、エタノールの混合溶媒で混合した後、遊星型ボールミルで分散処理を行い、調製したものをインクとして使用し、転写法により形成した。また、接着剤が塗工されたガスケット13としては、パナック社製、ST38を打ち抜き機によって裁断して開口部131を形成したものを用いた。また、触媒層11の平面視形状は縦横50mmの正方形とし、ガスケット13の開口部131は52mm四方の正方形とした。
【0049】
続いて、上記ガスケット付き電解質膜製造装置1を、凸部付き圧着ローラー21および圧着ローラー22のロール温度24℃、搬送速度0.05m/min、貼合圧力20MPaの条件に設定して、ガスケット付き電解質膜14を10枚製造した。その後、作製したガスケット付き電解質膜14のガスケット開口部131の中心座標と触媒層の中心座標のズレを算出し、従来用いていた円柱型のローラーを用いたガスケット付き電解質膜貼合装置で製造したガスケット付き電解質膜10枚の上記ズレを比較したところ、位置ズレが改善されていることを確認した。また、不良品率が改善されていることも確認できた。
【0050】
なお、本発明の実施態様は、上述の各実施形態および実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の実施形態の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、優れた品質のガスケット付き電解質膜を効率的に製造可能なガスケット付き電解質膜製造装置および方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0052】
1、2 ガスケット付き電解質膜製造装置
10、30 触媒層塗工電解質膜(CCM)
11、11a、11b 触媒層
12 固体高分子電解質膜
13、13a、13b ガスケット
14、34 ガスケット付き電解質膜
15 接着剤
19a、19b、19c 巻き出しローラー
20 巻き取りローラー
21、21a、21b 凸部付き圧着ローラー
22 圧着ローラー
23 加圧装置
24 本体部
25 凸部
131 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10