(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸部及び/又は凹部が、前記間接冷却区画内の、金属核が析出し始める位置より上流側の内壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末製造用プラズマ装置。
前記複数の凸部及び/又は凹部が、前記間接冷却区画内の内壁に、前記冷却管の長手方向に対して螺旋状に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の金属粉末製造用プラズマ装置。
前記間接冷却区画が、冷却用流体で前記冷却管の周囲を冷却し、当該流体を前記金属蒸気及び/又は金属粉末に直接接触させることなく、前記金属蒸気及び/又は金属粉末を冷却する区画であり、
前記直接冷却区画が、冷却用流体を前記金属蒸気及び/又は金属粉末に直接接触させて冷却する区画であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の金属粉末製造用プラズマ装置。
【背景技術】
【0002】
電子回路や配線基板、抵抗、コンデンサ、ICパッケージ等の電子部品の製造において、導体被膜や電極を形成するために導電性の金属粉末が用いられている。このような金属粉末に求められる特性や性状としては、不純物が少ないこと、平均粒径が0.01〜10μm程度の微細な粉末であること、粒子形状や粒径がそろっていること、凝集が少ないこと、ペースト中での分散性が良いこと、結晶性が良好であることなどが挙げられる。
近年、電子部品や配線基板の小型化に伴い、導体被膜や電極の薄層化やファインピッチ化が進んでいることから、さらに微細で球状かつ高結晶性の金属粉末が要望されている。
このような微細な金属粉末を製造する方法の一つとして、プラズマを利用し、反応容器内において金属原料を溶融・蒸発させた後、金属蒸気を冷却し、凝結させて多数の金属核を生成させ、これを成長させて金属粉末を得るプラズマ装置が知られている(特許文献1、2参照)。これらのプラズマ装置では、金属蒸気を気相中で凝結させるため、不純物が少なく、微細で球状かつ結晶性の高い金属粒子を製造することが可能である。
また、これらのプラズマ装置は共に長い管状の冷却管を備え、金属蒸気を含むキャリアガスに対して複数段階の冷却を行っている。例えば特許文献1では、前記キャリアガスに、予め加熱したホットガスを直接混合することによって冷却を行う第1冷却部と、その後、常温の冷却ガスを直接混合することにより冷却を行う第2の冷却部とを備えている。また、特許文献2のプラズマ装置では、管状体の周囲に冷却用の流体を循環させることにより、当該流体を前記キャリアガスに直接接触させることなく、キャリアガスを冷却する間接冷却区画(第1の冷却部)と、その後、キャリアガスに冷却用流体を直接混合することによって冷却を行う直接冷却区画(第2の冷却部)を備えている。
特に後者は、輻射による冷却が支配的な間接冷却を採用しているため、伝導や対流による冷却が支配的である他のプラズマ装置に比べて、金属蒸気からの金属核(以下、単に「核」という)の生成、成長及び結晶化を均一に行うことができ、粒径と粒度分布が制御された金属粉末を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、特許文献2に記載されている冷却管の構成を示す図である。
図7に示されるように、冷却管14は間接冷却区画34と直接冷却区画50とを備え、更に間接冷却区画34は、内管36と外管38の二重管で構成されている。そして、内管36の外壁と外管38の内壁との間の空間に冷却用流体を循環させることにより、反応容器からの金属蒸気、並びに当該金属蒸気が凝結して生成した金属粉末に対する間接冷却を行っている。これに続く直接冷却区画50では、キャリアガスに冷却用流体を混合して直接冷却を行う。また直接冷却区画50では、間接冷却区画34に比べて内径の大きい冷却管を採用することにより、間接冷却区画34を通ってきたキャリアガスを急激に膨張させ、冷却効率を高めている。
ところで、上記間接冷却区画34においては、高温のまま冷却管内に移送されたキャリアガス中の金属蒸気に対し、輻射冷却が行われるため、均一で安定的な核の生成、成長、結晶化が進行する。しかしながら、特許文献2に記載されている装置で金属粉末を製造する場合、本発明者等の研究によれば、従来のプラズマ装置に比べれば得られる金属粉末の粒度分布は改善されているものの、更にシャープな粒度分布を得ようとしても限界があった。
【0005】
本発明者等はその原因について研究を進めたところ、間接冷却区画において、冷却管の内壁に近い領域と中央(軸)に近い領域とでは、キャリアガスの流速や温度、金属蒸気の濃度等に差異が生じていることを見出した。従って、定かではないが、当該差異により冷却管内の内壁に近い領域と中央に近い領域とでは核の生成タイミングが異なり、早いタイミングで析出した核は粒成長、特に合一によって大きくなるのに対し、遅れて析出した核は合一する前に直接冷却区画に達して急冷され、粒度分布に影響を及ぼしている可能性が考えられる。しかも、上述した差異は冷却管の内径が小さいほど顕著になる。
そこで本発明者等は、
図7の間接冷却区画34の内管36の内径を、直接冷却区画50と同程度にまで広げてみたところ、生産効率が著しく低下した。これは間接冷却区画34でのキャリアガス中に含まれる金属蒸気の濃度(密度)が下がったため、間接冷却区画34において核が十分に生成しなくなったためと考えられる。しかもキャリアガスの流速が遅くなることから、析出したばかりの核が内管36の内壁に付着しやすくなるという新たな問題も生じることが分かった。
本発明は、これらの問題を解決し、粒度分布の狭い金属粉末を得ることができ、より生産効率の良い金属粉末製造用プラズマ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、金属原料が供給される反応容器と、
前記反応容器内の金属原料との間でプラズマを生成し、前記金属原料を蒸発させて金属蒸気を生成するプラズマトーチと、
前記金属蒸気を搬送するためのキャリアガスを前記反応容器内に供給するキャリアガス供給部と、
前記キャリアガスにより前記反応容器から移送される前記金属蒸気を冷却して金属粉末を生成する冷却管を備える金属粉末製造用プラズマ装置であって、
前記冷却管が、前記反応容器から前記キャリアガスによって移送される前記金属蒸気及び/又は金属粉末を間接的に冷却する間接冷却区画と、前記間接冷却区画に続き、前記金属蒸気及び/又は金属粉末を直接的に冷却する直接冷却区画とを備え、
前記間接冷却区画の内壁の少なくとも一部に、凸部及び/又は凹部が設けられていることを特徴とする金属粉末製造用プラズマ装置が提供される。
【0007】
請求項2の発明によれば、前記凸部及び/又は凹部が、前記間接冷却区画内の、金属核が析出し始める位置より上流側の内壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末製造用プラズマ装置が提供される。
【0008】
請求項3の発明によれば、複数の前記凸部及び/又は凹部が前記間接冷却区画内の内壁に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属粉末製造用プラズマ装置が提供される。
【0009】
請求項4の発明によれば、前記複数の凸部及び/又は凹部が、前記間接冷却区画内の内壁に、前記冷却管の長手方向に対して螺旋状に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の金属粉末製造用プラズマ装置が提供される。
請求項5の発明によれば、前記間接冷却区画が、冷却用流体で前記冷却管の周囲を冷却し、当該流体を前記金属蒸気及び/又は金属粉末に直接接触させることなく、前記金属蒸気及び/又は金属粉末を冷却する区画であり、
前記直接冷却区画が、冷却用流体を前記金属蒸気及び/又は金属粉末に直接接触させて冷却する区画であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の金属粉末製造用プラズマ装置が提供される。
請求項6の発明によれば、請求項1乃至5の何れか一項に記載の金属粉末製造用プラズマ装置の前記反応容器に前記金属原料を供給する工程と、
前記プラズマトーチと前記反応容器内の前記金属原料との間でプラズマを生成し、前記金属原料を蒸発させて前記金属蒸気を生成する工程と、
前記反応容器から前記キャリアガスによって移送される前記金属蒸気及び/又は金属粉末を前記冷却管の前記間接冷却区画で間接的に冷却し、その後、前記冷却管の前記直接冷却区画で直接的に冷却する工程とを有し、
前記冷却する工程では、前記間接冷却区画の内壁の少なくとも一部に設けられた前記凸部及び/又は凹部の存在により、前記キャリアガスと前記金属蒸気の混合ガスが攪拌されることを特徴とする金属粉末の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属粉末製造用プラズマ装置によれば、間接冷却区画におけるキャリアガスの流速や温度、金属蒸気の濃度等を均一にすることができるため、生産効率を低下させることなく、粒度分布の狭い金属粉末を得ることができる。
本発明は、特に、間接冷却区画における冷却管内において、金属核が析出し始める領域より上流側に凸部及び/又は凹部を設けることによって、間接冷却のメリットを減ずることなく、緩やかで、より安定的、均一的な雰囲気で核の生成、成長、結晶化を進行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態に基づきながら本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、前記特許文献2と同様の移行型アークプラズマ装置に本発明を適用した金属粉末製造用プラズマ装置100(以下、単にプラズマ装置と言う)の一例を示しており、反応容器102の内部で金属原料を溶融・蒸発させ、生成された金属蒸気を冷却管103内で冷却して凝結させることにより金属粒子を生成する。
【0013】
なお、本発明において金属原料としては、目的とする金属粉末の金属成分を含有する導電性の物質であれば特に制限はなく、純金属の他、2種以上の金属成分を含む合金や複合物、混合物、化合物等を使用することができる。金属成分の一例としては、銀、金、カドミウム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ等を挙げることができる。特に制限はないが、取扱い易さから、金属原料としては数mm〜数十mm程度の大きさの粒状や塊状の金属材料又は合金材料を使用することが好ましい。
以下においては理解容易のため、金属粉末としてニッケル粉末を製造し、金属原料として金属ニッケルを用いる例で説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
金属ニッケルは、予め、装置の稼働を開始する前に、反応容器102内に所定量を準備しておき、装置の稼働開始後は、金属蒸気となって反応容器102内から減少した量に応じて、随時、フィードポート109から反応容器102内に補充される。そのため本発明のプラズマ装置は、長時間連続して金属粉末を製造することが可能である。
反応容器102の上方にはプラズマトーチ104が配置され、図示しない供給管を介してプラズマトーチ104にプラズマ生成ガスが供給される。プラズマトーチ104は、カソード106を陰極、プラズマトーチ104の内部に設けられた図示しないアノードを陽極としてプラズマ107を発生させた後、陽極をアノード105に移行することにより、カソード106とアノード105との間でプラズマ107を生成し、当該プラズマ107の熱により反応容器102内の金属ニッケルの少なくとも一部を溶融させ、ニッケルの溶湯108を生成する。さらにプラズマトーチ104は、プラズマ107の熱により、溶湯108の一部を蒸発させ、ニッケル蒸気(本発明の金属蒸気に相当する)を発生させる。
キャリアガス供給部110は、ニッケル蒸気を搬送するためのキャリアガスを反応容器102内に供給する。キャリアガスとしては、製造する金属粉末が貴金属の場合は特に制限はなく、空気、酸素、水蒸気等の酸化性ガスや、窒素、アルゴン等の不活性ガス、これらの混合ガス等を使用することができ、酸化しやすいニッケル、銅等の卑金属を製造する場合は不活性ガスを用いることが好ましい。特に断らない限り、以下の説明においては、キャリアガスとして窒素ガスを使用する。
【0015】
なお、キャリアガスには、必要に応じて水素、一酸化炭素、メタン、アンモニアガスなどの還元性ガスや、アルコール類、カルボン酸類などの有機化合物を混合してもよく、その他、金属粉末の性状や特性を改善・調整するために、酸素や、その他、リンや硫黄等の成分を含有させても良い。なお、プラズマの生成に使用されたプラズマ生成ガスも、キャリアガスの一部として機能する。
【0016】
反応容器102内で発生したニッケル蒸気を含むキャリアガスは、冷却管103に移送される。
冷却管103は、キャリアガスに含まれるニッケル蒸気及び/又はニッケル粉末を間接的に冷却する間接冷却区画ICと、キャリアガスに含まれるニッケル蒸気及び/又はニッケル粉末を直接的に冷却する直接冷却区画DCを備える。
間接冷却区画ICでは、冷却用流体や外部ヒータ等を用いて、冷却管103(内管120)の周囲を冷却又は加熱し、間接冷却区画ICの温度を制御することによって冷却を行う。冷却用流体としては、前述したキャリアガスやその他の気体を用いることができ、また水、温水、メタノール、エタノール或いはこれらの混合物等の液体を用いることもできる。但し、冷却効率やコスト的な観点からは、冷却用流体には水又は温水を用い、これを冷却管103の周囲を循環させて冷却管103を冷却することが望ましい。
間接冷却区画ICとしては、特願2011−263165に記載されているように、内径の異なる2以上の区画で構成されているものであってもよい。特に、間接冷却区画ICが、反応容器から前記ニッケル蒸気を含むキャリアガスが移送される第1の間接冷却区画と、当該第1の間接冷却区画と前記直接冷却区画との間に配置される第2の間接冷却区画とを備え、第1の間接冷却区画の内径が前記第2の間接冷却区画の内径よりも小さいものであることが好ましい。このような装置では、第1の間接冷却区画において金属蒸気の濃度が高い状態で間接冷却を行うことにより核を十分に析出させた後、第2の間接冷却区画で金属蒸気の濃度を下げた状態で引き続き間接冷却を行い、その後直接冷却を行うので、より均一な雰囲気中で金属粉末の成長、結晶化を行うことができ、粒度分布のより狭い金属粉末を得ることが可能になる。
【0017】
間接冷却区画ICにおいては、高温のまま冷却管103内に移送されるキャリアガス中のニッケル蒸気は輻射により比較的緩やかに冷却され、安定的且つ均一的に温度制御された雰囲気中で核の生成、成長、結晶化が進行することで、キャリアガス中に粒径の揃ったニッケル粉末が生成される。
【0018】
直接冷却区画DCでは、間接冷却区画ICから移送されてきたニッケル蒸気及び/又はニッケル粉末に対し、図示しない冷却流体供給部から供給される冷却用流体を噴出又は混合して、直接冷却を行う。なお、直接冷却区画DCで使用する冷却用流体は、間接冷却区画ICで使用した冷却用流体と同じものでも異なるものでも良いが、取扱いのし易さやコスト的な観点から、前記キャリアガスと同じ気体(以下の実施形態においては窒素ガス)を使用することが好ましい。気体を使用する場合、前述したキャリアガスと同様に、必要に応じて還元性ガスや有機化合物、酸素、リン、硫黄等の成分を混合して用いても良い。また、冷却用流体が液体を含む場合は、当該液体は噴霧された状態で冷却管103(内管160)内へ導入される。
【0019】
なお、本明細書の図面において、間接冷却区画IC及び直接冷却区画DCの具体的な冷却機構は省略されているが、本発明の作用効果を妨げない限り、公知のものを使用することができ、例えば前記特許文献2に記載されたものも適宜使用することもできる。
【0020】
間接冷却区画IC内のキャリアガス中には、ニッケル蒸気とニッケル粉末が混在しているが、その上流側に比べ、下流側のニッケル蒸気の比率は低くなる。また、装置によっては、直接冷却区画DC内のキャリアガス中においても、ニッケル蒸気とニッケル粉末は混在し得る。但し、上述したように、核の生成、成長、結晶化は間接冷却区画IC内で進行し、完了していることが好ましく、よって直接冷却区画DC内のキャリアガス中にはニッケル蒸気が含まれないことが好ましい。
【0021】
金属粉末を含むキャリアガスは、冷却管103から更に下流に向けて搬送され、図示しない捕集器において金属粉末とキャリアガスとに分離され、金属粉末が回収される。なお、捕集器で分離されたキャリアガスは、キャリアガス供給部110で再利用するように構成しても良い。
【0022】
キャリアガス中の金属蒸気は、反応容器102から間接冷却区画ICに導入された時点では濃度も高く、温度も数千K(例えば3000K)であるが、間接冷却(輻射冷却)されることにより、温度は金属の沸点近くまで降下し、間接冷却区画IC内の或る位置でほぼ同時に多くの核が析出し始める。核が析出し始める位置は、目的とする金属の種類や金属蒸気の濃度、キャリアガスの流量、金属蒸気やキャリアガスの温度、管内の温度分布等々に応じて変わるものであり、特定の位置を示すものではないが、ここでは理解を容易にするため、図中の仮想面180で示される位置で核が析出し始めるものとする。
【0023】
図2Aに示す例において、冷却管103は、間接冷却区画ICの内管120の内壁であって、仮想面180より上流側の互いに対向する2箇所に凸部170を備える。この凸部170が存在することにより、冷却管103内においてキャリアガスと金属蒸気の混合ガスの流れが乱れ、攪拌されるため、前述の冷却管103の内壁に近い領域と中央に近い領域との間のキャリアガスの温度や流速、金属蒸気濃度の不均一性を抑えることができ、これによって核が析出するタイミングを揃えることができる。
【0024】
本発明において、凸部の大きさ、形状、個数、配置等については、キャリアガスと金属蒸気の混合ガスが適度に攪拌され冷却管の内壁に近い領域と中央に近い領域とで不均一を生じにくくするようなものであれば特に限定はない。例えば、凸部の大きさは、目的とする金属の種類や金属蒸気の濃度、キャリアガスの流量、金属蒸気やキャリアガスの温度、管内の温度分布等に応じて適宜決めるものであるが、仮に大き過ぎる場合には冷却管内の金属濃度(金属蒸気と核を含む濃度)の不均一性が増大して粒度分布に悪影響を与え、小さ過ぎる場合は、本発明の作用効果を得ることができなくなる。それ故、好適な凸部の大きさ、形状、個数、配置等は、事前に、上述の因子を考慮したシミュレーションを行うことにより適宜設計することができる。
【0025】
図3Aに示されるように、凸部171はリング状でも良い。なお、
図3Aの例における凸部171は、
図3Bに示されるように、その断面が上流側に傾斜を有する楔形のものを用いることで、より効果的な攪拌を行うことを可能にしている。
図4に示されるように、凸部172は、冷却管103の長手方向(軸方向)に沿って配置されたものであっても良く、本例では凸部172が各4個ずつ、上流側と下流側の2箇所に並設されている。また、凸部172は、断面が矩形状をなしている。
図5Aに示されるように、凸部173が、冷却管103の長手方向に対して螺旋状に並設されていても良い。本例では、間接冷却区間ICの全域にわたって
図5Bに示されるような断面が略三角形の凸部173を複数、螺旋状に配設したことにより、キャリアガスが冷却管103内で回転しながら下流側に進む旋回流を生成する。凸部173は、先端部分173aが内管120の中央を向くように配置されている。なお、
図5Aでは2本の螺旋状となっているが、1本の螺旋でもまた3本以上であっても良い。また、
図5Aでは複数の凸部173が間隔をあけて配設されているが、1本の帯状であってもよい。
【0026】
なお、本発明において、冷却管の内壁に近い領域と中央に近い領域とでキャリアガスと金属蒸気の混合ガスが適度に攪拌される限り、凸部の代わりに内壁に凹部を配設しても良く、また凸部と凹部の両方を形成しても良い。
凹部を配設した例として挙げた
図6では、間接冷却区画ICの内管120の内壁であって、仮想面180より上流側の互いに対向する2箇所に、凹部174が形成されている。凹部174は、断面が矩形状をなしている。この凹部174により、冷却管103の内壁に近い領域と中央に近い領域との間のキャリアガスの温度や流速、金属蒸気濃度の不均一性を抑えることで、核が析出するタイミングを揃えることができる。
凸部及び/又は凹部は、少なくとも間接冷却区画IC内の、金属核が析出し始める位置(前記仮想面180)より上流側に配設されていれば良いものであり、
図5Aで示した例のように、仮想面180より下流側にも連なって配設されていることを除外するものではない。
一例として、凸部の高さ及び/又は凹部の深さは、1〜100mmの範囲内とすることが望ましい。
【実施例】
【0027】
〔実施例1〕
図2A及び
図2Bに記載の凸部170が配設された冷却管103を備える、
図1に記載のプラズマ装置100で、ニッケル粉末の製造を行った。冷却管103は、内径8cm、長さ115cmの内管120(間接冷却区画IC)と内径18cm、長さ60cmの内管160(直接冷却区画DC)とを組合せたものであり、間接冷却区画ICの内管120の内壁には、内管120の上流端から20cmの位置に、高さ(h)が1cm、幅(w)が1cm、長さ(l)が5cmの凸部170が2個配設されている。
冷却管103を通過するキャリアガスは毎分300Lとし、金属濃度が2.1〜14.5g/m
3の範囲となるよう制御した。
得られたニッケル粉末について、レーザ式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布の重量基準の積算分率10%値、50%値、90%値(以下、それぞれ「D10」「D50」「D90」という)から、粒度分布の指標としてSD=(D90−D10)/(D50)で表されるSD値を求めた。
実施例1で得られたニッケル粉末は、D50=0.40μm、SD=1.28という、粒度分布の狭いものであった。
【0028】
〔比較例1〕
凸部170を配設しない以外は実施例1と同様の装置、同様の条件でニッケル粉末を製造した。
比較例1で得られたニッケル粉末は、D50=0.47μm、SD=1.36であった。
【0029】
〔実施例2〕
図5A及び
図5Bに記載の凸部173が配設された冷却管103を用いた以外は、実施例1と同様にしてニッケル粉末を製造した。凸部173としては、断面が底辺(w)1cm、高さ(h)1cmの略二等辺三角形形状で、長さ(l)が3cmのブロックを複数個準備した。そして内管120の内壁に、凸部173の長手方向が冷却管103の長手方向(軸方向)に対して45°の角度となるように、複数の凸部173を間接冷却区画IC全域に渡って2本の螺旋状に配設した。
実施例2で得られたニッケル粉末は、D50=0.44μm、SD=1.10という、粒度分布の狭いものであった。
【0030】
以上の結果より、実施例1〜2で得られたニッケル粉末は、比較例1で得られたニッケル粉末に比べて、粒度分布の狭いものであった。
【0031】
なお、本発明において、間接冷却区画や直接冷却区画における内管の内径や長さは、目的とする金属の種類や金属蒸気の濃度、キャリアガスの流量、金属蒸気やキャリアガスの温度、管内の温度分布等々に応じて適宜設定されるべきものであり、上述した例に限定されるものではない。