特許第5900532号(P5900532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5900532太陽電池のバックシート、太陽電池モジュール、及び、太陽電池パネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900532
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】太陽電池のバックシート、太陽電池モジュール、及び、太陽電池パネル
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20160324BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20160324BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20160324BHJP
   C09D 201/04 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   H01L31/04 562
   B32B27/36
   C09D133/04
   C09D201/04
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-87399(P2014-87399)
(22)【出願日】2014年4月21日
(62)【分割の表示】特願2012-257289(P2012-257289)の分割
【原出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-195085(P2014-195085A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2014年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-274918(P2011-274918)
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀人
(72)【発明者】
【氏名】午坊 健司
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 秀典
(72)【発明者】
【氏名】浅野 和哉
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 重仁
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 発明協会公開技報公技番号2010−500361
【文献】 特開2011−213799(JP,A)
【文献】 特開2004−204205(JP,A)
【文献】 特開昭61−217246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
B32B 27/36
C09D 133/00
C09D 201/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料から形成された硬化塗膜とからなり、
アクリルポリマーは、(ii)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有し、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる共重合体(アクリルポリマー(ii))であり、かつ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位の含有量が80重量%以下であり、
前記塗料は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーの合計量に対して、アクリルポリマーが1〜60質量%である
ことを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項2】
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位、及び、硬化性官能基を有する、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなり、前記共重合可能な単量体に基づく重合単位が全重合単位に対して40重量%以下である請求項1記載の太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項3】
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位、及び、硬化性官能基を有する、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなり、前記共重合可能な単量体に基づく重合単位が全重合単位に対して2重量%以上である請求項1又は2記載の太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項4】
アクリルポリマーの数平均分子量は、1000〜100000である請求項1、2又は3記載の太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項5】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーにおける硬化性官能基は、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。)、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基である請求項1、2、3又は4記載の太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項6】
基材シートは、ポリエステルからなるシートである請求項1、2、3、4又は5記載の太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項7】
太陽電池セルを内部に封止している封止材層と請求項1、2、3、4、5又は6記載のバックシートとを備える太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5又は6記載のバックシートを備える太陽電池パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池のバックシート、太陽電池モジュール、及び、太陽電池パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、通常、図6に示すように、太陽電池セル1を封止材層2で封止し、これをガラスや透明な樹脂などからなる表面層3とバックシート10で挟んで積層した構造である。上記封止材としては、一般的に、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられている。
【0003】
太陽電池モジュールにおけるバックシート10は、モジュールの機械的強度を高める役割を有し、更に、水分(水蒸気)が封止材層2に入らないように防止する役割も有している。
【0004】
バックシート10は、通常、図7に示すように、電気絶縁性、水蒸気バリヤー性を付与するための基材シート5と、その一方の面に樹脂シート8が貼り合わされた構成であり、基材シートの他方の面にも樹脂シート9が貼り合わされている。
【0005】
基材シート5の材料としては、通常、電気絶縁性、水不透過性に優れたポリエステルなどの樹脂が使用されており、通常は50〜250μmの膜厚とされている。
さらに防湿性を要求される場合は、さらに水不透過性に優れたSi蒸着ポリエステルや、アルミニウムやステンレススチールなどの金属が使用されており、通常は10〜20μmの膜厚とされている。
【0006】
樹脂シート8又は9には、耐候性、電気絶縁性、難燃性等の特性が求められており、ポリフッ化ビニル(PVF)のシートが使用されている。また、封止材層2側に用いられる樹脂シートとしては、ポリエチレンシート等も使用されている。
【0007】
また、軽量化の観点から、樹脂シートに代えて、樹脂塗料を用いた硬化塗膜を形成することが提案されている。例えば、特許文献1には、水不透過性シートと樹脂塗料から得られる層との接着性が優れた太陽電池のバックシートを提供することを目的として、水不透過性シートの少なくとも一方の面に硬化性官能基含有フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートが開示されている。
【0008】
更に、特許文献2には、基材シートの片側または両側に、フルオロオレフィン(a)に基づく繰り返し単位、架橋性基含有モノマー(b)に基づく繰り返し単位、および、4級炭素原子を含まない炭素数2〜20の直鎖または分岐アルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合によって連結されてなるアルキル基含有モノマー(c)に基づく繰り返し単位、を有する含フッ素ポリマー(A)を含む塗料の硬化塗膜層が形成された太陽電池モジュール用バックシートが開示されている。
【0009】
ところで、太陽電池のバックシートは、製造工程においてロール状に巻き取ったり、ロール状に巻き取った状態で保存されたりするが、図8に示すように、バックシートをロール状に巻き取ると、従来のバックシートでは、片面15と他方の面16とが圧着(ブロッキング)することがあり、耐ブロッキング性の観点で改善の余地があった。
【0010】
特許文献3には、テトラフルオロエチレン構造単位及び水酸基含有ビニルモノマー構造単位とからなる含フッ素共重合体と、アクリル樹脂とを含む塗料用組成物が開示されている。しかしながら、特許文献3には、上記塗料用組成物を太陽電池のバックシートに用いることも、耐ブロッキング性についても一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/010706号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/157449号パンフレット
【特許文献3】特開2004−204205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、耐ブロッキング性に優れる太陽電池のバックシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等が接触面に対する耐ブロッキング性を改善した太陽電池のバックシートについて鋭意検討したところ、特定の含フッ素ポリマーとアクリルポリマーとからなる塗料を架橋して得られた硬化塗膜を表面に有するバックシートが、接触面に対する優れた耐ブロッキング性を示すことが見いだされた。
【0014】
すなわち、本発明は、基材シートと、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料から形成された硬化塗膜とからなることを特徴とする太陽電池モジュールのバックシートである。
【0015】
本発明はまた、太陽電池セルを内部に封止している封止材層と上記バックシートとを備える太陽電池モジュールでもある。
【0016】
本発明は更に、上記バックシートを備える太陽電池パネルでもある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の太陽電池のバックシートは、耐ブロッキング性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の太陽電池モジュールの第1の形態を示す断面模式図である。
図2】本発明の太陽電池モジュールの第2の形態を示す断面模式図である。
図3】本発明の太陽電池モジュールの第3の形態を示す断面模式図である。
図4】本発明の太陽電池モジュールの第4の形態を示す断面模式図である。
図5】本発明の太陽電池モジュールの第5の形態を示す断面模式図である。
図6】従来の太陽電池モジュールの断面模式図である。
図7】従来の太陽電池モジュールの耐候性バックシートの概略断面図である。
図8】バックシートをロール状に巻き取った場合に生じる、バックシートの片面と他方の面との圧着を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の太陽電池のバックシートは、基材シートと、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の硬化塗膜とからなるため、製造工程や保存時にバックシートをロール状に巻き取ってもブロッキングしない。
また、硬化塗膜は硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料を硬化して得られるものであるため、太陽電池の封止材(例えば、エチルビニルアルコール樹脂等)との間で優れた密着性が得られる。更に、上記硬化塗膜を有することによって、良好な耐候性、電気絶縁性、難燃性も得られる。また、硬化塗膜を用いるものであるため、樹脂等からなるシートを基材シートに貼りつけた場合と比較して、軽量性にも優れる。
なお、ブロッキングとは、塗装製品を巻き取ったり積み重ねたりした場合に、接触面同士(塗装面と非塗装面、塗装面と別の塗装面等)が不必要に接着して剥離しにくくなったり、塗装面の塗膜が、該塗装面と接触している面に付着したりする現象をいう。
【0020】
上記硬化塗膜を形成するための塗料は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなるものである。
【0021】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ポリマーに硬化性の官能基を導入したポリマーがあげられる。なお、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーには明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
【0022】
含フッ素ポリマーに硬化性を与える官能基は、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択されるが、例えば、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、シアノ基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基等が挙げられる。なかでも、硬化反応性が良好な点から、水酸基、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、シアノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましく、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましく、水酸基、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基を有する単量体を共重合することにより含フッ素ポリマーに導入される。
【0023】
硬化性官能基含有単量体としては、例えば、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことが好ましい。また、上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことがより好ましい。
【0024】
硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、8〜30モル%であることが好ましい。より好ましい下限は10モル%であり、より好ましい上限は20モル%である。
【0025】
硬化性官能基含有単量体としては、たとえばつぎのものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。なお、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
(1−1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類などがあげられる。これらのなかでも、重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で、水酸基含有ビニルエーテル類が好ましく、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び、2ーヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が特に好ましい。
【0027】
他の水酸基含有単量体としては、たとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなども挙げられる。
【0028】
(1−2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば、式(II):
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、R、RおよびRは、同じかまたは異なり、水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基である。nは、0または1である。)で表わされる不飽和カルボン酸類(例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸等)、それらのエステル並びに酸無水物、及び、
式(III):
CH=CH(CHO(ROCO)COOH (III)
(式中、RおよびRは、同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖、分岐または環状のアルキレン基である。nは、0または1であり、mは、0または1である。)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
【0031】
上記カルボキシル基含有単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルなどがあげられる。それらのなかでも、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、及び、3−アリルオキシプロピオン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸が好ましい。
【0032】
式(III)で表されるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、たとえば、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などがあげられる。これらの中でも、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であることから、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸が好ましい。
【0033】
(1−3)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、たとえばCH=CH−O−(CH−NH(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH=CH−O−CO(CH−NH(x=1〜10)で示されるアリルアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどがあげられる。
【0034】
(1−4)シリル基含有単量体:
シリル基含有単量体としては、例えば、シリコーン系ビニル単量体が挙げられる。シリコーン系ビニル単量体としては、たとえばCH=CHCO(CHSi(OCH、CH=CHCO(CHSi(OC、CH=C(CH)CO(CHSi(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(OC、CH=CHCO(CHSiCH(OC、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(CH(OC)、CH=C(CH)CO(CHSi(CHOH、CH=CH(CHSi(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiCH(N(CH)COCH、CH=CHCO(CHSiCH〔ON(CH)C、CH=C(CH)CO(CHSiC〔ON(CH)Cなどの(メタ)アクリル酸エステル類;CH=CHSi[ON=C(CH)(C)]、CH=CHSi(OCH、CH=CHSi(OC、CH=CHSiCH(OCH、CH=CHSi(OCOCH、CH=CHSi(CH(OC)、CH=CHSi(CHSiCH(OCH、CH=CHSiC(OCOCH、CH=CHSiCH〔ON(CH)C、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物などのビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類などが例示される。
【0035】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を有することが好ましい。
【0036】
含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。
【0037】
含フッ素ビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性、共重合性及び耐薬品性等に優れている点で、TFE、CTFE及びVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、耐候性に優れ、更に耐湿性により優れている点で、TFE及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましく、TFEが最も好ましい。
【0038】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、カルボン酸ビニルエステル、アルキルビニルエーテル及び非フッ素化オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
カルボン酸ビニルエステルは、相溶性を改善する作用を有する。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
非フッ素化オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等が挙げられる。
【0039】
上記フッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位は、硬化性官能基含有ビニルモノマーに基づく重合単位、及び、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位以外の全重合単位を構成することが好ましい。
【0040】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、該ポリマーを構成する重合単位に応じて、たとえば次のものが例示できる。
【0041】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、例えば、(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー、(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー、(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー、(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー等が挙げられる。
【0042】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー
パーフルオロオレフィン系ポリマーは、パーフルオロオレフィン系ポリマーの全重合単位に対して、パーフルオロオレフィン単位が20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、若しくは、TFEと、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などとの共重合体、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体などがあげられる。
【0043】
上記共重合可能な他の単量体としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系単量体などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0044】
パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマーの中でも、顔料分散性や耐候性、共重合性及び耐薬品性に優れる点で、TFE単位を主体とするTFE系ポリマーが好ましい。TFE系ポリマーは、TFE系ポリマーの全重合単位に対して、TFE単位が20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。
【0045】
パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、例えば、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられ、特に、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、及び、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。このような硬化性ポリマーの塗料としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフル(登録商標)GKシリーズなどが例示できる。
【0046】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー
CTFE単位を主体とするCTFE系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。CTFE系ポリマーの硬化性ポリマー塗料としては、たとえば旭硝子(株)製のルミフロン(登録商標)、大日本インキ製造(株)製のフルオネート(登録商標)、セントラル硝子(株)製のセフラルコート(登録商標)、東亜合成(株)製のザフロン(登録商標)などが例示できる。
【0047】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー
VdF単位を主体とするVdF系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0048】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー
フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばCFCF(CFCFCHCHOCOCH=CH(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体などがあげられる。フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、たとえばダイキン工業(株)製のユニダイン(登録商標)やエフトーン(登録商標)、デュポン社製のゾニール(登録商標)などが例示できる。
【0049】
上記(1)〜(4)の中でも、耐候性及び防湿性の観点から、硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましく、TFE単位を主体とするTFE系ポリマーがより好ましい。
【0050】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、例えば、特開2004−204205号公報に開示される方法により製造することができる。
【0051】
上記の硬化塗膜を形成するための塗料は、更にアクリルポリマーからなる。
【0052】
アクリルポリマーは、アクリル基を有する単量体に基づく重合単位が、全重合単位に対して、5重量%以上であることが好ましい。より好ましくは、10重量%以上である。更に好ましくは、20重量%以上である。また、密着性、耐候性及び耐薬品性に優れる点から、98重量%以下であることが好ましく、96重量%以下であることがより好ましく、90重量%以下であることが更に好ましく、80重量%以下であることが特に好ましい。
【0053】
耐ブロッキング性を向上させる観点、及び、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとの相溶性が良好である点から、硬化塗膜を形成するための塗料は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーの合計量に対して、アクリルポリマーが1〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜55質量%であり、更に好ましくは、1〜50質量%であり、特に好ましくは、1〜40質量%である。
【0054】
アクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる重合体であることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、例えば、1〜10である。
なお、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」は、アクリル酸アルキルエステル、及び、メタクリル酸アルキルエステルを含むものである。
【0055】
アクリルポリマーは、バックシートの耐ブロッキング性、溶剤溶解性、耐候性、耐水性、耐薬品性、及び、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとの相溶性に優れることから、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位の含有量が5重量%以上であることが好ましい。より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは、20重量%以上である。また、密着性、耐候性及び耐薬品性に優れる点から、98重量%以下であることが好ましく、96重量%以下であることがより好ましく、90重量%以下であることが更に好ましく、80重量%以下であることが特に好ましい。
【0056】
アクリルポリマーは、例えば、(i)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有さない、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる重合体(以下、アクリルポリマー(i)ともいう。)、並びに、(ii)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる共重合体(以下、アクリルポリマー(ii)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。耐溶剤性の観点からは、アクリルポリマー(i)が好ましく、耐ブロッキング性がより優れる点からは、アクリルポリマー(ii)が好ましい。
【0057】
アクリルポリマー(i)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位からなる重合体が好ましい。アクリルポリマー(i)は、これらの単量体のみからなる重合体であってもよいし、更に、これらの単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に基づく重合単位からなる共重合体でもよい。
【0058】
アクリルポリマー(i)は、溶剤溶解性、耐候性、密着性、及び、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとの相溶性が優れる点から、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位からなる重合体が好ましく、更に、これらの単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に基づく重合単位からなる共重合体がより好ましい。
【0059】
イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、たとえば、芳香族基を有する(メタ)アクリレート類、α位にフッ素原子または塩素原子を有する(メタ)アクリレート類、アルキル基がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのオレフィン類、フマル酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどがあげられる。
【0060】
アクリルポリマー(i)の市販アクリル共重合体としては、たとえばヒタロイド(登録商標)1005、ヒタロイド1206、ヒタロイド2330−60、ヒタロイド4001、ヒタロイド1628Aなど(いずれも日立化成工業(株)製。商品名);ダイヤナール(登録商標)LR−1065、ダイヤナールLR−90など(いずれも三菱レイヨン(株)製。商品名);パラロイド(登録商標)B−44、パラロイドA−21、パラロイドB−82など(いずれもローム&ハース社製。商品名);ELVACITE2000など(デュポン社製。商品名);アルマテックス(登録商標)L1044P(三井化学(株)製。商品名)などが挙げられる。
【0061】
アクリルポリマー(ii)は、側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する。硬化性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シアノ基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基等が挙げられ、なかでも、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、グリシジル基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましく、水酸基、アミノ基、及び、グリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましく、硬化反応性が良好な点から水酸基が特に好ましい。
【0062】
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる共重合体であり、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜10であることが好ましい。
【0063】
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位、及び、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなり、該共重合可能な単量体は、硬化性官能基を有するものであることが好ましい。
硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位の含有量は、耐水性、溶剤溶解性、耐薬品性、耐候性、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとの相溶性、密着性が優れることから、50重量%以下が好ましく、より好ましくは40重量%以下である。また耐水性、耐薬品性、密着性、耐候性が優れる点から、2重量%以上が好ましく、より好ましくは4重量%以上である。
【0064】
アクリルポリマー(ii)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
【0065】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能である硬化性官能基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、及び、2−アミノプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
【0066】
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能である硬化性官能基を有する単量体に基づく重合単位、及び、これらの単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に基づく重合単位からなる共重合体であってもよい。
【0067】
アクリルポリマー(ii)において、上記エチレン性不飽和単量体としては、溶剤溶解性、耐薬品性、密着性などに優れる点から、芳香族基を有する(メタ)アクリレート類、α位にフッ素原子または塩素原子を有する(メタ)アクリレート類、アルキル基がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのオレフィン類、フマル酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。
【0068】
アクリルポリマー(ii)の市販品としては、ヒタロイド3004、ヒタロイド3018、ヒタロイド3046C、ヒタロイド6500B、ヒタロイド6500など(いずれも日立化成工業(株)製。商品名);アクリディック(登録商標)A810−45、アクリディックA814、アクリディック47−540など(いずれも大日本インキ化学工業(株)製。商品名);ダイヤナールLR−620、ダイヤナールSS−1084、ダイヤナールSS−792など(いずれも三菱レイヨン(株)製。商品名);オレスター(登録商標)Q166、オレスターQ185、オレスターQ612、オレスターQ723など(いずれも三井化学(株)製。商品名);ハリアクロン8360G−55、ハリアクロン8360HS−130、ハリアクロン8160(いずれもハリマ化成(株)製。商品名)などがある。
【0069】
アクリルポリマーの数平均分子量は、1000〜200000が好ましい。より好ましくは2000〜100000である。数平均分子量が大きくなり過ぎると相溶性が低下する傾向にあり、小さくなり過ぎると耐侯性に問題が生じる傾向にある。
【0070】
上記塗料における上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーの合計含有量は、塗料中の不揮発分の総量100質量%に対し、20〜95質量%であることが好ましい。
【0071】
上記塗料は、溶剤型塗料、水性型塗料、粉体型塗料等の形態に、常法により調製することができる。なかでも成膜の容易さ、硬化性、乾燥性の良好さ等の点からは溶剤型塗料の形態が好ましい。
【0072】
溶剤型塗料における溶剤としては、有機溶剤が好ましく、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;キシレン、トルエン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類;カルビトールアセテート等のジエチレングリコールエステル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;これらの混合溶剤等が挙げられる。
中でも、エステル類がより好ましく、酢酸ブチルが更に好ましい。
【0073】
上記塗料を溶剤型塗料とする場合、塗料の総量100質量%に対する硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーの合計量を5〜95重量%とすることが好ましく、10〜70重量%とすることがより好ましい。
【0074】
上記塗料には、更に、要求特性に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、硬化促進剤、硬化遅延剤、顔料、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等が挙げられる。
【0075】
硬化剤としては、硬化性ポリマーの官能基に応じて選択され、たとえば水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用される。
硬化剤は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマー中の硬化性官能基1当量に対して、0.1〜5モル当量となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モル当量である。
【0076】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマー中の硬化性官能基の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析、中和滴定を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0077】
硬化促進剤としては、例えば有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛等が挙げられる。
【0078】
硬化促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の配合割合は硬化性官能基含有含フッ素ポリマー100重量部に対して1.0×10−6〜1.0×10−2重量部程度が好ましく、5.0×10−5〜1.0×10−3重量部程度がより好ましい。
【0079】
上記塗料は、更に顔料を含むことが好ましい。これにより、得られる硬化塗膜がUV遮蔽性に優れたものとなる。また、太陽電池モジュールの外観を美麗にする点からも、顔料を添加することが強く望まれている。
顔料として具体的には、白色顔料である酸化チタン、炭酸カルシウムや、黒色顔料であるカーボンブラック、Cu−Cr−Mn合金等の複合金属類等の無機顔料;フタロシアニン系、キナクリドン系又はアゾ系等の有機顔料等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0080】
顔料の添加量は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーの合計量100重量部に対して、0.1〜200重量部とすることが好ましく、0.1〜160重量部とすることがより好ましい。
【0081】
上記塗料は、更に紫外線吸収剤を含むことが好ましい。太陽電池は、紫外線の強い屋外で長期間使用されるため、バックシートの紫外線による劣化の対策が求められる。上記塗料に紫外線吸収剤を添加すれば、硬化塗膜層に紫外線吸収の機能を付与することができる。
紫外線吸収剤としては、有機系、無機系のいずれの紫外線吸収剤も用いることができる。有機化合物系では、例えばサリチル酸エステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等があげられ、無機系では酸化亜鉛、酸化セリウム等のフィラー型無機系紫外線吸収剤等が好ましい。
【0082】
紫外線吸収剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤の量は、塗料中の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの総量100質量%に対して0.1〜15質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の量が少なすぎる場合には、耐光性の改良効果が充分に得られず、また、多すぎても効果が飽和する。
【0083】
上記硬化塗膜は、上記塗料を塗装して形成した塗膜を硬化させたものである。硬化塗膜の膜厚は、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、特に好ましくは20μm以上である。上限は、余り厚くすると軽量化効果が得られなくなるので、1000μm程度が好ましく、100μmがより好ましい。膜厚としては、特に10〜40μmが好ましい。
【0084】
上記塗料から得られる硬化塗膜は、太陽電池モジュールの封止材として一般的なEVAとの密着性に優れるだけでなく、巻き取り時の耐ブロッキング性にも優れるものであるため、一般に巻き取り工程を経て製造される太陽電池モジュールのバックシートのコーティングに特に好適に適用できる。
太陽電池モジュールのバックシートのコーティングに用いる場合、上記塗膜は水不透過性シート等の基材の片面又は両面に形成される。
本発明の塗料から得られる塗膜が基材の片面に形成され、かつ該基材の他方の面が非塗装面である場合には、該塗膜は、巻き取り工程において、基材の非塗装面と接触することになる。一方、上記塗膜が基材の片面に形成され、かつ該基材の他方の面に他の塗料からなる塗膜(後述する硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、ポリエステル塗料の塗膜、プライマー層等)や他のシートが設けられている場合には、本発明の塗料から得られる塗膜は、巻き取り工程において、基材上の他の塗料からなる塗膜や他のシートと接触することになる。また、本発明の塗料から得られる塗膜が基材の両面に形成されている場合には、該塗膜は、巻き取り工程において、基材の他方の面に形成された同じ種類の塗膜と接触することになる。
本発明の塗料から得られる塗膜は、これらのいずれの場合にも、接触する面に対して優れた耐ブロッキング性を発揮することができる。
【0085】
基材シートは、通常、水が実質的に透過しない材料からなるシートであり、封止材であるEVAや太陽電池セルに水分が透過しないように設けられるものである。重量や価格、可撓性などの点から、ポリエステルからなるシート、又は、金属シートが好ましい。より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシートである。基材シートの厚さは特に限定されないが、通常50〜250μm程度である。防湿性が必要な場合は、特にSi蒸着PETシートがよく用いられており、厚さは10〜20μmである。
【0086】
ポリエステルからなるシートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及び、ポリエーテルニトリル(PEN)からなる群より選択される少なくとも1種からなるシートであることが好ましい。より好ましくは、PETからなるシートである。例えば、太陽電池のバックシートには、Si蒸着PETシート、PETシート等がよく用いられている。
【0087】
金属シートとしては、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属からなる薄シートがよく用いられている。
【0088】
本発明の太陽電池のバックシートは、基材シートと、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の硬化塗膜とを有する。耐ブロッキング性の観点からは、上記硬化塗膜を表面に有することが好ましい。
【0089】
本発明の太陽電池のバックシートは、基材シートと上記硬化塗膜の二層構造であってもよいし、基材シートと上記硬化塗膜とその他の層を有する三層又は四層以上の構造であってもよい。
【0090】
3層構造のバックシートとしては、例えば、(1)基材シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の硬化塗膜を有する構造のバックシート、(2)基材シートの片面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の硬化塗膜を有し、他方の面に他の硬化塗膜又はシートを有する構造のバックシート(図4又は図5に示す形態)でもよい。上記他の硬化塗膜又はシートとしては、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー以外の含フッ素ポリマーからなる塗料の塗膜、ポリエステル塗料の塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシート等が挙げられる。
【0091】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマー以外の含フッ素ポリマーからなる塗料の硬化塗膜としては、たとえば特開2004−214342号公報に記載されているPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配合した塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/CTFE共重合体とアルコキシシラン単位含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/HFP共重合体と水酸基含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/HFP共重合休にアミノシランカップリング剤を配合した塗料の硬化塗膜などがあげられる。膜厚は通常、5〜300μm、さらには10〜100μm、特に10〜50μmとすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。この場合も、プライマー層などを介してもよい。
【0092】
含フッ素ポリマーシートとしては、PVdFシート、PVFシート、PCTFEシート、TFE/HFP/エチレン共重合体シート、TFE/HFP共重合体(FEP)シート、TFE/PAVE共重合体(PFA)シート、エチレン/TFE共重合体(ETFE)シート、エチレン/CTFE共重合体(ECTFE)シートなど、現在のバックシートに使用されている含フッ素ポリマーシートがあげられる。膜厚は、通常、5〜300μmであり、耐候性が良好な点から、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜50μmである。
【0093】
ポリエステルシートとしては、従来のバックシートで使用されているものがそのまま使用でき、その基材シートへの接着はアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤などによって行うことができる。膜厚は、通常5〜300μmであり、耐候性、コスト、透明性が良好な点から、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜50μmである。
【0094】
ポリエステル塗料としては、多価カルボン酸と多価アルコールなどを用いた飽和ポリエステル樹脂を用いたもの、無水マレイン酸、フマル酸などのグリコール類を用いた不飽和ポリエステル樹脂を用いたものなどがあげられ、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、タイコートなどの塗装方法により塗膜を形成できる。膜厚は、通常5〜300μmであり、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜50μmである。この場合も、プライマー層などを介してもよい。
【0095】
本発明のバックシートの製造方法は限定されるものではないが、例えば、下記製造方法により得ることができる。
【0096】
本発明のバックシートは、基材シート又は基材シート上に形成されたプライマー層上に、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料を塗装する工程、塗装された塗料を硬化させて硬化塗膜を形成する工程、及び、基材シートと、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の硬化塗膜とからなるシートをロール状に巻き取る工程を含む製造方法により得られるものであることが好ましい。
本発明は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の硬化塗膜とからなるシートが巻き取られた太陽電池モジュール用バックシートの巻物でもある。
【0097】
基材シートと硬化塗膜との接着性を向上させる観点から、基材シート表面に、従来公知の表面処理を行ってもよい。表面処理としては、たとえばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、金属シートの場合はブラスト処理などが例示できる。
【0098】
プライマー層上に硬化塗膜を形成する場合、上記製造方法は、基材シート上にプライマー層を形成する工程を含んでもよい。
【0099】
プライマー層の形成は、従来公知のプライマー用塗料を用いて、常法により行う。プライマー用の塗料としては、たとえばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが代表例としてあげられる。
【0100】
塗装温度は、塗装の形態に応じて、通常の温度条件で行えばよい。
【0101】
硬化及び乾燥は、溶剤型塗料の場合、10〜300℃、通常は100〜200℃で、30秒から3日間行う。したがって基材シートとして、Si蒸着PETシートのような高温での処理を避けたい材料も問題なく使用できる。
硬化及び乾燥させた後、養生してもよく、養生は、通常、20〜300℃にて1分間〜3日間で完了する。
【0102】
本発明のバックシートは、硬化塗膜を形成したあと、ロール状に巻き取られ、その後、保存される。巻き取り方法としては、ロール等を用いた通常の巻き取り方法が採用される。
【0103】
つぎに本発明の太陽電池モジュールについて説明する。
【0104】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セルを内部に封止している封止材層と上記太陽電池のバックシートとを備える。
【0105】
太陽電池セルは、特に限定されず、一般的な太陽電池セルを用いることができる。
【0106】
封止材層は、太陽電池セルを内部に封止するものであり、一般的にはエチレン/酢酸ビニルアルコール共重合体(EVA)が用いられている。
【0107】
図1は、本発明の太陽電池モジュールの第1の形態を示す断面模式図である。図1において、1は太陽電池セルであり、封止材層2に封止されており、表面層3と耐侯性バックシート4で挟まれている。耐侯性バックシート4はさらに基材シート5と硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の硬化塗膜6とから構成されている。この第1の実施形態では硬化塗膜6は封止材(EVA)層2側に設けられている。
【0108】
この実施形態では、硬化塗膜6がEVAと接するので、EVAとの共架橋により界面接着性が向上する。
また、上記塗膜と封止材層との接着性をさらに向上させるために、上記塗膜に従来公知の表面処理を行ってもよい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、ブラスト処理等が例示できる。
【0109】
図2は、本発明の太陽電池モジュールの第2の形態を示す断面模式図である。図2において、硬化塗膜6は封止材(EVA)層2と反対側に設けられている。この場合、硬化塗膜6を設けることにより耐候性の点で優れたものになる。また、基材シート5の封止材(EVA)層2側を表面処理しておくことが密着性の改善の点から好ましい。また、必要に応じて、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などを使用してもよい。
【0110】
本発明の太陽電池モジュールは、上記の基材シート5の片面のみに硬化塗膜6が形成されている2層構造のバックシートを備えるもの(図1及び図2)であってもよいし、上述した3層構造のバックシートを備えるもの(図3図4及び図5)であってもよい。
【0111】
3層構造のバックシートを備える太陽電池モジュールの形態(第3の形態)を図3に示す。第3の形態は、基材シート5の両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の架橋物からなる硬化塗膜6が形成されてなる3層構造のバックシートを有するものである。
【0112】
この第3の形態は、バックシートの膜厚の観点からは多少後退するが、上記の第1の実施形態および第2の実施形態の利点を併せもったものである。
【0113】
3層構造のバックシートを備える太陽電池モジュールとしては、また、上述の基材シートの片面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー及びアクリルポリマーからなる塗料の架橋物からなる硬化塗膜を有し、他方の面に他の硬化塗膜又はシートを有する構造のバックシートを備えるもの(図4及び図5)が挙げられる。
【0114】
第4の形態(図4)は、第1の実施形態の封止材(EVA)層2と反対側に他の硬化塗膜(又はシート)7が形成されている構造であり、第5の形態(図5)は、第2の実施形態の封止材(EVA)層2側に他の硬化塗膜(又はシート)7が形成されている構造である。
【0115】
第4および第5のいずれの形態においても、他の硬化塗膜(又はシート)7を構成する材料は、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜でも、含フッ素ポリマーシートでも、ポリエステルシートでも、ポリエステル塗料の塗膜でもよい。
【0116】
つぎに本発明の太陽電池パネルについて説明する。
本発明の太陽電池パネルは、前記太陽電池モジュールを備えている。太陽電池パネルには、太陽電池モジュールが縦方向、横方向または放射状にマトリクス状に並べられた構成をとる他、その他公知の形態をとることができ、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0117】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0118】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0119】
(耐ブロッキング性試験)
JIS K5600−3−5に準じて行なった。50mm×100mmのPETフィルムに調製した塗料を塗装し、120℃で2分間、乾燥機(エスペック社製、SPHH−400)内で加熱乾燥した。その後、試験片を取り出して室温まで放冷した。ついで、試験片の塗装面と未塗装面が50mm×50mmの面積で重なるように、フィルム同士をガラスで挟み込んだ。そこへ20kgのおもりを乗せ、フィルム同士の接触面に0.08MPaの圧力が掛かるようにしたまま、40℃で24時間保持した。
【0120】
評価は、2枚のフィルムを室温まで放冷し、2枚のフィルムを左右に引っ張って、その時の様子でバックシートA1とPETとの剥離性と塗膜の乱れの度合いを目視で観察し、5段階で評価した。
評価基準は次のとおりである。
5:自然と離れる。
4:ごくわずかな力で2枚が離れる。
3:力を加えると剥がれ、塗膜の表面がわずかに乱れる。
2:力を加えると剥がれ、塗膜の表面が乱れる。
1:力を加えても剥がすことができない。
【0121】
(膜厚)
JIS C−2151に準じて、マイクロメーター(ミツトヨ社製)で測定した。
【0122】
実施例1
水酸基含有TFE系共重合体塗料(固形分65質量%、ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570)485質量部に、白色顔料として酸化チタン(堺化学工業(株)製のD918)263質量部、酢酸ブチル167質量部、架橋性アクリルポリマー溶液(固形分:50質量%、三井化学(株)製のオレスター(登録商標)Q612)33質量部、及び、イソシアネート硬化剤(住化バイエル(株)製のN3300)を64質量部(硬化性TFE系共重合体及び架橋性アクリルポリマー中の硬化性官能基1当量に対して1.0当量に相当)配合して、硬化性塗料を調製した。
【0123】
基材シートとしてPETフィルム(東レ(株)製のルミラーS10、厚さ250μm。シートA)を使用し、このシートAの片面に、調製した硬化性塗料を乾燥膜厚が10μmとなるようにコーターにて塗装し、120℃で2分間の加熱により、硬化及び乾燥して2層構造のバックシートA1を作製した。このサンプルについて、耐ブロッキング性を調べた。結果を表1に示す。
ついでこのバックシートA1を、40℃で48時間養生し、この塗膜面上にEVA樹脂シート(三井化学ファブロ(株)製のソーラーエバ。厚さ600μm)、さらにEVA樹脂シート上にガラス(3.2mm厚)を載せ、圧力100g/cmにて150℃で圧着して3層構造のサンプルA1(図1に示す態様)を作製した。
【0124】
実施例2〜8及び比較例1
架橋性アクリルポリマー溶液の種類、水酸基含有TFE系共重合体塗料と架橋性アクリルポリマー溶液との配合割合、及び、硬化剤の配合量を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で硬化性塗料を調製した。その後、実施例1と同じ方法でバックシートを作製し、耐ブロッキング性を測定した。結果を表1に示す。また、ガラス/EVA/バックシート接着サンプルを作製した。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例9
水酸基含有TFE系共重合体塗料(固形分65質量%、ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570)485質量部に、白色顔料として酸化チタン(堺化学工業(株)製のD918)263質量部、酢酸ブチル167質量部、非架橋性アクリルポリマー溶液(三井化学(株)製のアルマテックス(登録商標)L1044P)37質量部、及び、イソシアネート硬化剤(住化バイエル(株)製のN3300)を62質量部(硬化性TFE系共重合体中の硬化性官能基1当量に対して1.0当量に相当)配合して、硬化性塗料を調製した。
【0127】
上記の方法で調製して得られた硬化性塗料を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法でバックシートを作製し、耐ブロッキング性を測定した。結果を表2に示す。
また、ガラス/EVA/バックシート接着サンプルを作成した。
【0128】
実施例10〜12及び比較例2
水酸基含有TFE系共重合体塗料と非架橋性アクリルポリマー溶液との配合割合、及び、硬化剤の配合量を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例9と同じ方法で硬化性塗料を調製した。その後、実施例9と同じ方法でバックシートを作製し、耐ブロッキング性を測定した。結果を表2に示す。また、ガラス/EVA/バックシート接着サンプルを作製した。
【0129】
【表2】
【0130】
表1及び2における略称は以下のとおりである。
GK570:ダイキン工業(株)製の水酸基含有TFE系共重合体塗料、ゼッフルGK570
Q612:三井化学(株)製の架橋性アクリルポリマー溶液、オレスターQ612
Q723:三井化学(株)製の架橋性アクリルポリマー溶液、オレスターQ723
D918:堺化学工業(株)製の白色顔料、D918
N3300:住化バイエル(株)製のイソシアネート硬化剤、N3300
L1044P:三井化学(株)製の非架橋性アクリルポリマー溶液、アルマテックスL1044P
【符号の説明】
【0131】
1 太陽電池セル
2 封止材層
3 表面層
4 耐侯性バックシート
5 基材シート
6 硬化塗膜
7 シートまたは塗膜
8、9 樹脂シート
10 バックシート
15 片面
16 他方の面
17 シートまたは塗膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8