(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
端子表面に端子部を有する基板が嵌合されるコネクタとして、例えば特許文献1に記載のコネクタが知られている。
図18に示すように、このコネクタ100は、互いに嵌合可能に形成された基板側ハウジング101と電線側ハウジング102とから構成されている。基板側ハウジング101には、端部表面に端子部104を有する基板103が設けられている。電線側ハウジング102には、端子部104に接触可能な端子金具105が設けられている。
【0003】
端子金具105は、導電性板材を折り曲げて形成されており、その後端部には電線Wを接続可能な電線接続部111が設けられている。この電線接続部111の前方には、中空状の接続部116が形成されており、その接続部116の内側に、全体として回曲するように折り曲げられた弾性接触片109が設けられている。基板側ハウジング101の奥壁部106には、前方に向かって押圧部107が突設されている。押圧部107の先端内側には、端子金具105の弾性接触片109を押圧する案内面108が設けられている。
【0004】
このコネクタ100では、基板側ハウジング101の内側に、電線側ハウジング102を挿入するようにして嵌合操作を開始すると、
図19に示すように、基板103が基板挿入口112から電線側ハウジング102の内側に進入し、次に押圧部107が押圧部挿入口113から押圧部挿入空間114内に挿入される。そして、基板103が基板挿入口112の奥側に進入するとともに、
図20に示すように、案内面108が押圧受部115を押圧することで、弾性接触片109を基板103側に弾性変形させ、所定の位置まで嵌合操作が進行するとコネクタ100の組み付けが完了する。このとき、押圧部107が弾性接触片109の第1屈曲部117を基板103側に押圧することで、弾性接触片109が接触位置に至り、接点部118が端子部104に接触する。
【0005】
ところで、上記コネクタ100の弾性接触片109は、1枚の導電性板材を折り曲げることによって端子金具5の一部として形成されており、電線接続部111および接続部116と一体になっている。そのため、弾性接触片109と電線接続部111および接続部116とが同一の材料とならざるを得ないが、弾性接触片109は弾性変形することにより基板103との高い接触信頼性が要求される。そのため、弾性接触片109に合わせて端子金具105全体の材質が決定されるため、コストが高くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題を解決するためには、弾性接触片109と電線接続部111および接続部116とをそれぞれ別々の導電性板材により形成し、これらの導電性板材からなる2部品を一体化することが考えられる。2部品の一体化には、かしめや溶接等の様々な方法があるが、これらの2つの導電性板材からなる部品を接触させて固定する場合、平面同士が面接触することになるため、接触の信頼性が乏しいものとなる。
【0008】
そこで、本発明においては、第1端子部品と第2端子部品とを固定するに際し、接触信頼性を向上したコネクタ端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコネクタ端子は、導電性金属板を曲げ加工することにより形成された第1端子部品と、導電性金属板を曲げ加工することにより形成され、第1端子部品に固定されることにより導通接続される第2端子部品とを含み、第1端子部品または第2端子部品のうち、いずれかの固定される部分に、第2端子部品または第1端子部品に臨む突出部を有するものである。本発明のコネクタ端子によれば、第1端子部品と第2端子部品との接触部が、第1端子部品の表面と第2端子部品の表面との面接触ではなく、突出部による点接触となる。
【0010】
第1端子部品と第2端子部品との信頼性の高い接触を実現するためには、金属対金属の接触を保つことが重要である。金属同士の接触自体は、真の接点(金属表面の微細な突起同士)によって行われており、接触抵抗値を下げるためにはこの真の接点を増やすことが必要である。真の接点を増やすには、接触荷重を高くして、高密着させることが必要となる。面接触よりも点接触の方が全体の接触面積が小さくなるため、単位面積当たりの接触荷重が高くなり、真の接点を稼げるため、有効接触面積は点接触の方が高くなる。すなわち、本発明のコネクタ端子では、第1端子部品と第2端子部品とが突出部による点接触となるため、単位面積当たりの接触荷重が高くなり、接触信頼性が高くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1端子部品と第2端子部品との接触部が、第1端子部品の表面と第2端子部品の表面との面接触ではなく、突出部による点接触となるため、接触の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態におけるコネクタの組み立て斜視図である。
【
図3】
図1のコネクタを分解した状態の側断面図である。
【
図4】
図3の電線側コネクタハウジングを示す側断面図である。
【
図7】
図3の端子本体の鞘状部を示す側断面図である。
【
図10】
図6の端子本体を形成する金属板を示す斜視図である。
【
図12】端子本体への組み込み前のばね片の状態を示す斜視図である。
【
図13】金属板の上にばね片を重ねて配置した状態を示す斜視図である。
【
図14】コネクタ端子の組み立ての様子を示す斜視図である。
【
図15】
図14の状態からキャリアをカットした状態を示す斜視図である。
【
図16A】コネクタ端子のコネクタハウジングへの組み付け操作開始の様子を示す側断面図である。
【
図16B】コネクタ端子のコネクタハウジングへの組み付け操作途中の様子を示す側断面図である。
【
図16C】コネクタ端子のコネクタハウジングへの組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
【
図17A】コネクタへの基板の組み付け操作開始の様子を示す側断面図である。
【
図17B】コネクタへの基板の組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
【
図18】従来のコネクタの両ハウジングを嵌合する前の側断面図である。
【
図19】
図18の両ハウジングの嵌合操作の様子を示す側断面図である。
【
図20】
図18の両ハウジングの嵌合操作を完了したときの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および
図2に示すように、本発明の実施の形態におけるコネクタ1は、端部表面に端子部Tを有する基板Bが嵌合される、いわゆるカードエッジコネクタである。基板Bは、ハウジングHに保持されている。コネクタ1は、コネクタハウジング2内に、基板Bの端子部Tが接触するコネクタ端子3が収容されたものである。コネクタ端子3には、電線Cが接続される。
【0015】
図3〜
図5に示すように、コネクタハウジング2は、基板Bの嵌合側が開口されてハウジングHが嵌合されるフード部20と、フード部20に接続され、ハウジングHに保持された基板Bが嵌合される嵌合部21と、コネクタ端子3が収容される端子収容室22とを有する。嵌合部21は、端子収容室22に隣接して形成されている。また、嵌合部21を挟んでコネクタハウジング2のフード部20の反対側には、端子収容室22へコネクタ端子3を挿入するための端子挿入口23が形成されている。
【0016】
コネクタ端子3は、
図6に示す第1端子部品としての端子本体4と、
図9に示す第2端子部品としてのばね片5とから構成される。端子本体4は、コネクタ端子3の挿入方向の前方(ハウジングH側)が開口(
図6に示す開口部40)されている。ばね片5は、コネクタ端子3の挿入方向の前方を開口部50として折り返された形状である。ばね片5は、この開口部50が端子本体4の開口(開口部40)に臨んで端子本体4内に収容される。なお、以下の説明において、コネクタハウジング2の端子収容室22に対するコネクタ端子3の挿入方向(
図3に示す矢線X方向)を「前」とし、その反対方向を「後」として表現する。
【0017】
コネクタ端子3は、端子挿入口23から端子収容室22内に挿入されて収容される。なお、複数のコネクタ端子3は、嵌合部21を上下に挟んで対向するように収容されており、かつ、コネクタハウジング2に上下2段に分かれて千鳥状となるよう収容されている。コネクタハウジング2における端子収容室22内には、このコネクタ端子3の前方に、端子収容室22内に挿入される端子本体4のばね片5の開口部50に向かって突出した突起部24を有する。突起部24の先端は、嵌合部21から遠い側が端子挿入口23に近くなるように斜めに形成された斜面24aとなっている。また、端子収容室22と嵌合部21との間には、ばね片5の一部が嵌合部21に突出可能な突出用開口25が形成されている。
【0018】
端子本体4は、
図10に示すように打ち抜かれた導電性の良好な金属板4aを曲げ加工することにより形成されたものである。なお、
図10には1つの端子本体4を構成する部分のみ示しているが、実際には複数の端子本体4を構成する部分が、その両端部のキャリア6a,6bによって繋げられた状態となっている。
図6に示すように、端子本体4は、ばね片5が収容される鞘状部41と、電線Cを圧着固定するための結束部42とを有する。結束部42は、電線Cの外部絶縁体の外周を保持する外被かしめ部42aと、電線Cを保持して鞘状部41と導通接続する導体かしめ部42bとにより構成されている。
【0019】
また、鞘状部41の前方には、ばね片5を鞘状部41内に固定して鞘状部41と導通接続する通電接続部43を有する。通電接続部43は、ばね片5に臨む突出部44aと、端子本体4の側面を切り欠いて形成されたかしめ片44bとから構成されている。かしめ片44bは、ばね片5の直線部53(
図13参照。)に対して、両側から挟み込むように折り曲げて、かしめるためのものである(
図14参照。)。ばね片5は、端子本体4の突出部44aとかしめ片44bとの間に、かしめにより固定される。一方、鞘状部41の後方には、ばね片5の折り返された部分の後退を規制する受け部45を有する。受け部45は、端子本体4の側面を切り欠いて、内側へ略直角に折り曲げることにより形成されている。また、鞘状部41の通電接続部43の対面側には、ばね片5が突出用開口25を通じて嵌合部21に突出可能な位置に開口部46が形成されている。
【0020】
なお、本実施形態における突出部44aは、金属板4aに打ち出し加工することにより形成している。また、突出部44aは、端子本体4ではなく、ばね片5に備えた構成としても良い。要するに、ばね片5または端子本体4のうち、いずれかの固定される部分に、端子本体4、または、ばね片5に臨む突出部44aを有する構成とすれば良い。なお、端子本体4とばね片5との固定は、かしめ以外の方法、例えば溶接等の方法により行うことも可能である。
【0021】
図9に示すように、ばね片5は、コネクタ端子3の前方を開口部50として折り返された形状であり、この折り返された部分はコネクタ端子3の後方に向かって凸曲面状に形成された曲面部51となっている。また、通電接続部43によって端子本体4に固定される一端部5aと反対側の端部5bには、摺接部52が形成されている。摺接部52は、端子収容室22内にコネクタ端子3が挿入される際に突起部24を滑る状態で接触するように、ばね片5の内側に向かって凸曲面状に形成されている。
【0022】
また、ばね片5は、通電接続部43によって端子本体4に固定される部分は、端子本体4に沿うように直線部53となっている。また、直線部53には、前述のようにかしめ片44bを両側から挟み込むように折り曲げてかしめる際に、かしめ片44bによる挟み込み位置を規制するための規制部53aが設けられている。規制部53aは、直線部53に幅広の部分を設けて、かしめ片44bに対応する凹状の切欠きを形成したものである。また、端子本体4に固定される一端部5aと折り返された部分である曲面部51との間には、端子本体4から離れるように屈曲部54が形成されている。さらに、曲面部51と摺接部52との間には、ばね片5の外側に向かって凸曲面状の接点部55が形成されている。
【0023】
上記コネクタ端子3は、以下の手順により形成される。
図12は端子本体4への組み込み前のばね片5の状態を示す斜視図、
図13は金属板4aの上にばね片5を重ねて配置した状態を示す斜視図、
図14はコネクタ端子3の組み立ての様子を示す斜視図、
図15は
図14の状態からキャリアをカットした状態を示す斜視図である。
【0024】
ばね片5は、導電性の良好な金属板を打ち抜いて、事前に
図12に示す状態に曲げ加工される。なお、前述の端子本体4と同様、
図12には1つのばね片5を構成する部分のみ示しているが、実際には複数のばね片5を構成する部分が、キャリア7によって繋げられた状態となっている。そして、この
図12に示す状態のばね片5を
図10に示す金属板4a上に重ねた後(
図13参照。)、端子本体4の各部を折り曲げて、キャリア6a,6b,7に繋がったままのコネクタ端子3を形成する(
図14参照。)。このとき、ばね片5の規制部53aは、かしめ片44bの折り曲げの際のガイドとして機能するとともに、かしめ片44bは、ばね片5の規制部53aによってその位置が規制される。したがって、端子本体4上に重ねられたばね片5の位置が正しい位置に規制され、かしめによってばね片5が端子本体に対して正しい位置で固定される。その後、キャリア6a,6b,7をカットする。
【0025】
これにより、
図15に示すように、ばね片5と端子本体4とが一体化されたコネクタ端子3が得られる。このコネクタ端子3では、ばね片5のかしめ位置が端子本体4の開口部40の近くにあるので、ばね片5の組み付け作業性が良く、ばね片5を組み込んだ後にばね片5のキャリアをカットすることが可能である。また、このコネクタ端子3では、ばね片5と端子本体4との接触部が、ばね片5の表面と端子本体4の表面との面接触ではなく、突出部44aの先端部による点接触となるため、接触の信頼性が向上している。
【0026】
次に、上記構成のコネクタ端子3のコネクタハウジング2の組み付けについて説明する。
図16Aはコネクタ端子3のコネクタハウジング2への組み付け操作開始の様子を示す側断面図、
図16Bは組み付け操作途中の様子を示す側断面図、
図16Cは組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
【0027】
コネクタ端子3を、コネクタハウジング2の端子挿入口23から端子収容室22内に挿入すると、
図16Aに示すように、コネクタハウジング2の突起部24が、コネクタ端子3の挿入方向の前方の開口部40からコネクタ端子3内に進入し、突起部24の先端がコネクタ端子3内のばね片5の開口部50に対峙する。この状態からコネクタ端子3を押し進めると、
図16Bに示すように、ばね片5の摺接部52がコネクタハウジング2の突起部24の先端の斜面24aに接触し、この斜面24aに沿って嵌合部21側へ押されていく。
【0028】
これにより、ばね片5の接点部55が、端子収容室22から突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されていく。そして、
図16Cに示すように、ばね片5の摺接部52が突起部24の先端の斜面24aの下端を超えて、突起部24の下面24bに達すると、突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されて突出したばね片5の接点部55が、嵌合部21に嵌合される基板Bの端子部Tに接触可能となる。
【0029】
次に、上記のように構成されたコネクタ1への基板Bの組み付けについて説明する。
図17Aはコネクタ1への基板Bの組み付け操作開始の様子を示す側断面図、
図17Bは組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
【0030】
上記のようにコネクタ端子3が収容されたコネクタ1のフード部20に対し、基板Bが保持されたハウジングHを嵌合すると、
図17Aに示すように、基板Bがコネクタハウジング2の嵌合部21内に進入し、突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されて突出したばね片5の接点部55が、
図17Bに示すように、基板Bの端子部Tに接触する。
【0031】
すなわち、本実施形態におけるコネクタ端子3は、コネクタハウジング2の端子挿入口23から端子収容室22内に挿入した際、ばね片5の接点部55が、端子収容室22から突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されて突出し、嵌合部21に嵌合される基板Bの端子部Tに接触可能となり、嵌合部21に基板Bが嵌合された際には基板Bの端子部Tに接触するようになるため、端子本体4内にばね片5を格納する空間のみを確保すれば、コネクタハウジング2の突起部24を挿入する空間がその内側に確保されることになり、コネクタ端子3およびこれを収容するコネクタ1のサイズを小さくすることができる。
【0032】
上記のように、本実施形態におけるコネクタ1では、基板Bがコネクタハウジング2の嵌合部21内に嵌合されると、突出用開口25を通じて嵌合部21に突出したばね片5の接点部55が突出用開口25側に押されることにより、ばね片5の曲面部51が弾性変形するため、その復元力によりばね片5の接点部55と基板Bの端子部Tとの高い接触荷重を得ることができる。このとき、ばね片5の内部応力は、接点部55と曲面部51と屈曲部54との3箇所に分散されるので、ばね片5の塑性変形が抑制され、コネクタ端子3の耐久性が向上する。なお、屈曲部54がない場合、端子本体4の内面に直線部53が密着するため、ばね片5の内部応力が接点部55と曲面部51との2箇所に集中することになり、屈曲部54がある場合と比べて最大応力値が大きくなる。
【0033】
また、基板Bがコネクタハウジング2の嵌合部21内に嵌合される際、ばね片5は
図17Aに示す状態から
図17Bに示す状態へ接点部55が嵌合部21から端子収容室22側へ、すなわち突出用開口25側に押される。これにより、ばね片5の折り返された部分である曲面部51は端子挿入口23側へ後退しようとするが、本実施形態におけるコネクタ端子3では鞘状部41の後方に有する受け部45によって、このばね片5の曲面部51の後退が規制されている。そのため、基板Bの嵌合により、ばね片5の端部5bと摺接部52とが嵌合部21内に引きずり込まれて座屈変形することが防止され、コネクタ端子3の接続信頼性が向上している。