特許第5900556号(P5900556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900556
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】放射能測定装置および放射能測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20160324BHJP
   G01T 1/36 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   G01T1/167 C
   G01T1/36 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-166472(P2014-166472)
(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-148591(P2015-148591A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-2189(P2014-2189)
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397032389
【氏名又は名称】エヌエス環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】内田 英夫
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−014081(JP,A)
【文献】 特開2013−145148(JP,A)
【文献】 特開2013−079914(JP,A)
【文献】 特開平01−260389(JP,A)
【文献】 特開平03−123881(JP,A)
【文献】 特開平04−194772(JP,A)
【文献】 特開2009−069123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
G21F 9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下端部が閉塞された円筒状の密閉袋体内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定するための放射能測定装置であって、
側面が長方形状をなす箱状の支持枠と、この支持枠内に長手方向に間隔をおいて設けられた複数の取付部と、互いの検出部を一の上記側面側に向けて各々の上記取付部に設置された放射能検出器と、この放射能検出器の上記検出部側に当該検出部を覆って設けられた放射線の遮蔽部材からなる円筒状のコリメータと、上記放射能検出器により検出された検出信号から上記放射性廃棄物における上記放射能濃度を演算する演算手段とを備えてなり、かつ上記支持枠は、その上記側面が上記一の側面を除いて放射線を遮蔽する遮蔽部材により覆われることにより第1の遮蔽体を形成しているとともに、上記第1の遮蔽体の長手方向の一端部側に、放射線を遮蔽する遮蔽部材により有底箱状に形成され、かつ開口部が上記第1の遮蔽体の上記一の側面側に配置された第2の遮蔽体が当該第1の遮蔽体の長手方向に対して垂直に設けられているとともに、上記第2の遮蔽体内に、1つ以上の上記放射能検出器がその検出部を上記開口部側に向けて設置されていることを特徴とする放射能測定装置。
【請求項2】
上記演算手段は、上記放射能検出器により検出された検出信号を基にエネルギー別にカウントする多重波高分析装置と、放射能核種別ごとにピークを演算するピーク演算装置と、放射能濃度を演算する放射能演算装置とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の放射能測定装置。
【請求項3】
上下端部が閉塞された円筒状の密閉袋体内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を、請求項1または2に記載の放射能測定装置を用いて上記密閉袋体の外方から測定するための放射能測定方法であって、
上記放射能測定装置を、上記支持枠の長手方向を上記密閉袋体の軸線方向に沿わせるとともに上記放射能検出器の上記検出部を上記密閉袋体の外周面に臨ませて配置した後に、上記密閉袋体を上記軸線周りに回転させつつ、上記放射能検出器により上記放射性廃棄物から放出される放射線を上記密閉袋体の円周方向に沿って検出し、検出した信号および上記密閉袋体の重量から、上記演算手段によって上記円周方向に沿う放射線量を積算して上記重量で除算することにより上記放射能濃度を算出することを特徴とする放射能測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルコンテナバッグなどの円筒状の密閉袋体に収納された放射性廃棄物の放射能量を測定する放射能測定装置および放射能測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射能災害によって生じた放射性廃棄物を保管している地域においては、この放射性廃棄物の放射能量を測定し、その結果により通常の廃棄物として処分することが可能なのか、また放射能廃棄物として保管しなければならないのかを判断する必要がある。
【0003】
とくに、東日本大震災以降、上記放射能災害廃棄物が、フレキシブルコンテナバッグなどの密閉袋体に収納され大量に存在しているが、放射能量に応じた分別作業が進まずに、一時保管場所などに放置されているのが現状である。
【0004】
そのため、放射性廃棄物の放射能量の測定精度も重要であるが、放射能量の測定が行われずに、大量に放置されている現状を考えると、大量に存在する放射性廃棄物を迅速に測定し、放射能量に応じて仕分け処理のスピードを上げることが、次の対策のためにも必要になってきている。
【0005】
ところで、従来、放射性廃棄物の放射能量を測定する装置としては、下記特許文献1において、溶融したガラスと放射性廃棄物の混合物がキャニスターに注入されて成るガラス固化体を検査する検査装置であって、前記ガラス固化体を垂立支持する回転自在な回転支持部材と、前記回転支持部材を回転駆動する回転駆動手段と、前記回転支持部材へのガラス固化体の載置空間に隣接して立設された検知手段支持柱部材と、前記支持柱部材に所定間隔で配設された複数の検知手段とを備え、前記回転支持部材にガラス固化体を載置し、前記回転支持部材を前記回転駆動手段によって回転させて、前記検知手段によって前記ガラス固化体の周方向全域を検知し得るように構成されているガラス固化体の検査装置が提案されている。
【0006】
上記従来の検査装置は、溶融したガラスと放射性廃棄物とを混合したガラス固化体を回転支持部材に載置した後に、このガラス固化体の軸線方向に複数配設された検査手段によって、当該回転支持部材を回転させながら円周方向に沿って検査を行うものである。
【0007】
しかしながら、上記従来の検査装置は、建屋内に設けられた検査室で行うため、この建屋内に上記ガラス固化体を運搬する必要があるとともに、運搬された上記ガラス固化体を上記回転支持部材に載置する必要があるため、手間が掛かり迅速に測定することが難しいという問題がある。また、上記検査装置が設置された上記建屋が、放射能災害地域や一時保管場所と離れていた場合、運搬コストも嵩むという問題もある。
【0008】
また、放射性核種分析による放射能量の測定を行う場合、測定器などの周囲から受けるバックグランド放射能の影響を排除する必要があるため、上記測定器は鉛や鉄を材料とする重厚な遮蔽体で遮蔽することになる。しかし、この重厚な遮蔽体が放射性核種のオンサイト分析を行う場合の障害となってしまい、放射能廃棄物が大量に保管された場所での測定および仕分け作業が難しいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−235100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、放射性廃棄物が収納された密閉袋体を保管している場所において、迅速にかつ周囲の環境に影響されることなく放射能量を測定することが可能な放射能測定装置および放射能測定方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上下端部が閉塞された円筒状の密閉袋体内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定するための放射能測定装置であって、側面が長方形状をなす箱状の支持枠と、この支持枠内に長手方向に間隔をおいて設けられた複数の取付部と、互いの検出部を一の上記側面側に向けて各々の上記取付部に設置された放射能検出器と、この放射能検出器の上記検出部側に当該検出部を覆って設けられた放射線の遮蔽部材からなる円筒状のコリメータと、上記放射能検出器により検出された検出信号から上記放射性廃棄物における上記放射能濃度を演算する演算手段とを備えてなり、かつ上記支持枠は、その上記側面が上記一の側面を除いて放射線を遮蔽する遮蔽部材により覆われることにより第1の遮蔽体を形成しているとともに、上記第1の遮蔽体の長手方向の一端部側に、放射線を遮蔽する遮蔽部材により有底箱状に形成され、かつ開口部が上記第1の遮蔽体の上記一の側面側に配置された第2の遮蔽体が当該第1の遮蔽体の長手方向に対して垂直に設けられているとともに、上記第2の遮蔽体内に、1つ以上の上記放射能検出器がその検出部を上記開口部側に向けて設置されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記演算手段は、上記放射能検出器により検出された検出信号を基にエネルギー別にカウントする多重波高分析装置と、放射能核種別ごとにピークを演算するピーク演算装置と、放射能濃度を演算する放射能演算装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
次いで、請求項3に記載の発明は、上下端部が閉塞された円筒状の密閉袋体内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を、請求項1または2に記載の放射能測定装置を用いて上記密閉袋体の外方から測定するための放射能測定方法であって、上記放射能測定装置を、上記支持枠の長手方向を上記密閉袋体の軸線方向に沿わせるとともに上記放射能検出器の上記検出部を上記密閉袋体の外周面に臨ませて配置した後に、上記密閉袋体を上記軸線周りに回転させつつ、上記放射能検出器により上記放射性廃棄物から放出される放射線を上記密閉袋体の円周方向に沿って検出し、検出した信号および上記密閉袋体の重量から、上記演算手段によって上記円周方向に沿う放射線量を積算して上記重量で除算することにより上記放射能濃度を算出することを特徴とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜のいずれかに記載の本発明によれば、支持枠の長手方向に配置された複数の放射能検出器を、密閉袋体の軸線方向に配置するとともに、これら放射能検出器の検出部を遮蔽部材からなる円筒状のコリメータで覆っているために、上記コリメータによって上記密閉袋体に収納された放射性廃棄物から放出される放射線(γ線)の内、斜め方向から入射する放射線を遮蔽することができる。
【0017】
この結果、周囲の放射線量が高くない地域においては、装置全体としての放射能の遮蔽性能を簡略化させることができる。
また、高放射線地域で上記測定を行う場合には、上記支持枠の側面を、上記検出部が配置されている面を除いて放射線を遮蔽する遮蔽部材によって覆って第1の遮蔽体を形成することが好ましい。この場合にも、上記コリメータの効果によって上記遮蔽部材の厚さ寸法を極力小さくして軽量化を図ることが可能になる。
【0018】
このように、本発明に係る放射能測定装置によれば、斜め方向から入射する放射線やバックグランド放射能の影響を受けることなく、放射能濃度の測定精度を向上させることができる。これにより、上記放射性廃棄物が収納された上記密閉袋体が多数保管されている場所であっても、また、放射能により汚染された環境であっても、正確な測定を行うことができる。
【0019】
さらに、上記第1の遮蔽体の長手方向の一端部側に第2の遮蔽体を垂直に設け、この第2の遮蔽体内に1つ以上の放射能検出器を設置しているために、第2の遮蔽体の放射能検出器を上記密閉袋体の底面部側に臨ませることにより、上記密閉袋体の外周部だけでなく、当該密閉袋体の底面部側の放射線を検出して、放射能量を測定することにより、測定の精度を向上させることができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、上記演算手段を、上記放射能検出器により検出した検出信号からエネルギー別にカウントする多重波高分析装置と、放射能核種別ごとにピークを演算するピーク演算装置と、放射能濃度を演算する放射能演算装置とを備えた構成をしているために、上記放射能検出器によって検出された検出信号を基に、密閉袋体における単位重量当たりの放射能量(Bq/kg)、すなわち上記密閉袋体全体の放射能濃度を簡便に算出することができる。
【0021】
したがって、請求項に記載の発明によれば、その外周面に放射能検出器を臨ませて、当該密閉袋体を軸線周りに回転させつつ、上記密閉袋体の円周方向に沿って連続的に得られる放射線の検出結果から、演算手段によって放射能核種(セシウム等)のピーク値を積算することにより上記放射性廃棄物の放射能量を算出し、これを上記放射性廃棄物の重量で除算することにより、単位重量あたりの放射能量(Bq/kg)、すなわち上記密閉袋体内における放射性廃棄物の平均化された放射能濃度を容易に得ることができる。
【0022】
この際に、上記密閉袋体を軸線周りに回転させることにより、当該密閉袋体内に乱雑に収納された上記放射性廃棄物がある程度整頓されるため、上記密閉袋体の形態を整えることができる。これにより、上記密閉袋体の外周面に放射能検出器の検出部に臨ませる前に、当該密閉袋体を回転させることによって、上記放射能検出器の検出部と、回転する上記密閉袋体との距離を一定にして、測定精度を向上させることができる。
【0023】
この結果、上記放射性廃棄物が収納された上記密閉袋体が複数保管された場所などの放射能汚染地域においても、バックグランド放射能の影響を受けることなく、容易に、かつ高い精度で上記放射性廃棄物の放射能濃度を測定することができる。これにより、屋外などで、上記放射性廃棄物が一般廃棄物として処理し得るものであるか、あるいは放射性廃棄物として処理すべきものであるかを、オンサイト解析によって行うことができる。
【0024】
加えて、密閉袋体を軸線周りに回転させつつ、上記密閉袋体の円周方向に沿って連続的に放射性廃棄物から放出される放射線を検出しているために、演算手段によって得られた放射能核種(セシウム等)のピーク値から、上記密閉袋体内において高い放射線量の放射性廃棄物が点在あるいは偏在している場合にも、その値や位置を正確に把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】吊したフレキシブルコンテナバッグの放射能量を測定するための本発明の放射能測定装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
図2図1の放射能測定装置を示す正面図である。
図3図2の平面図である。
図4】本発明の放射能測定装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
図5図4の放射能測定装置を示す平面断面図である。
図6図4の放射能測定装置に設けられた放射能検出器の縦断面図である。
図7】フレキシブルコンテナバッグの外周面の位置と放射能量の関係を示すグラフである。
図8】放射能検出器の検出結果と周辺放射能との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1図3は、放射性廃棄物を収納したフレキシブルコンテナバッグtの放射能濃度を測定するための本発明の放射能測定装置の第1の実施形態を示すものである。
これらの図において、この放射能測定装置20は、支持枠21と、この支持枠内に互いの検出部5aを一の側面側に向けて設置された放射能検出器5と、この放射能検出器の先端の検出部5a外周に設けられたコリメータ6と、放射能検出器5により検出された検出信号から上記放射性廃棄物における放射能濃度を演算する演算手段7から概略構成されたものである。ちなみに、フレキシブルコンテナバッグtは、高さ1m、直径1m程度のフレキシブルコンテナバッグtである。
【0027】
ここで、支持枠21は、等辺アングル鋼材によって側面が長方形状をなす箱状に形成されたもので、一側面21aを除いて、他の側面は薄肉鋼板22によって覆われている。また、支持枠21の内部には、長手方向(使用形態では高さ方向)に等間隔をおいて3つの取付部23が設けられており、各々の取付部23に放射能検出器5がそれぞれの検出部5aを上記一側面21a側に向けて設置されている。そして、この一側面21aには、検出部5aを保護するための透明なアクリル板24が取り付けられている。
【0028】
さらに、放射能検出器5の検出部5aの外周に、当該検出部5aを覆うコリメータ6が設けられている。このコリメータ6は、鉛等の放射線を遮蔽する遮蔽部材により円筒状に形成されたもので、図3に示すように、放射能検出器5の検出部5a側に一部が挿通され、かつ検出部5a側から軸線方向外方に突出して嵌合されている。そして、放射能検出器5は、ケーブルにより各々が演算手段7に接続されている。
【0029】
この演算手段7は、エネルギー別にカウント数を測定する多重波高分析装置(MCA)8と、放射能核種別に分けてピークを演算するピーク演算装置9と、放射能濃度を演算する放射能演算装置10と、モニターなどの出力装置11とを備えている。
【0030】
次に、以上の構成による放射能測定装置20を用いて、例えば、フレキシブルコンテナバッグtに収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定するための本発明に係る放射能測定方法の一実施形態に付いて説明する。
【0031】
先ず、クレーン装置を備えたトラック等の車両によって、放射性廃棄物を収納したフレキシブルコンテナバッグtが保管されている場所に、放射能測定装置20および演算手段7を運び込む。ここで、このクレーン装置は、フレキシブルコンテナバッグtを吊すフック14と、このフック14に接続されたワイヤー15と、このワイヤー15に設けられた回転措置12および重量測定装置13とを備えている。
【0032】
この回転装置12は、フック14に吊したフレキシブルコンテナバッグtを軸線周りに回転させるためのものである。また、重量測定装置13は、フック14に吊したフレキシブルコンテナバッグtの重量を測定するためのものであり、上記トラック自体に重量測定機能付きクレーン装置が装備されている場合には、クレーン装置自体に重量測定装置が内蔵されていて重量が確認可能であるために不要である。
【0033】
次いで、上記クレーン装置によって搬送した放射能測定装置20および演算手段7を測定場所に降ろして設置した後に、フック14によって保管場所に保管されているフレキシブルコンテナバグtの一つを吊り上げる。このときに、上記クレーン装置に設けられた重量測定装置13等により、当該フレキシブルコンテナバッグtの重量を計測する。
【0034】
なお、フレキシブルコンテナバッグtに上記放射性廃棄物が乱雑に収納されて、当該フレキシブルコンテナバッグtの形態が歪になっていた場合には、予め、吊した状態で上記クレーン装置に設けられた回転装置12を作動させて、フレキシブルコンテナバッグtを軸線周りに回転させることにより、当該フレキシブルコンテナバッグtの形態を整える。
【0035】
次いで、上記クレーン装置によりフレキシブルコンテナバッグtを移動させて放射能測定装置20に臨ませ、放射能検出器5の検出部5aがフレキシブルコンテナバッグtの外周面に対向する位置に設置する。
【0036】
次に、上記クレーン装置に設けられた回転装置12を作動させて、フレキシブルコンテナバッグtを軸線周りに回転させる。そして、このフレキシブルコンテナバッグtの回転に伴って、支持枠21に設置されている3つの放射能検出器5により、フレキシブルコンテナバッグtに収納された放射性廃棄物から放出される放射線(γ線)を円周方向に沿って連続的に検出する。
【0037】
その際、各々の放射能検出器5の検出部5aは、当該検出部5aの外周を覆う遮蔽部材からなるコリメータ6によって、フレキシブルコンテナバッグtに収納された放射性廃棄物から径方向に直線的に放出される放射線のみを検出する。
【0038】
これにより、各々の放射能検出器5で検出した信号が、演算手段7に送信される。
そして、演算手段7では、まず、上記検出信号が多重波高分析装置8に送信され、エネルギー別にカウント数が測定される。
【0039】
次に、多重波高分析装置8のデータを基に、ピーク演算装置9においてピークが演算され、その結果、放射能核種別ごとに放射能演算装置10により放射能の濃度が計算される。具体的には、各放射能検出器5毎に計測されたピークを円周方向に連続的に積算することにより、放射性廃棄物全体の放射能量を算出し、得られた放射能量をフレキシブルコンテナバッグtの重量で除算することにより、単位重量(例えば、1kg)あたりの放射能量、すなわち放射線濃度を算出して、モニターやプリンターなどの出力装置11により出力する。
【0040】
このように、保管されている複数のフレキシブルコンテナバッグtの各々の放射能濃度を計測して、その結果から、一般の廃棄物と共に廃棄処分可能か、また放射性廃棄物として一定期間保管するかを判断して仕分ける。
【0041】
以上説明したように、上記構成からなる放射能測定装置20によれば、支持枠21の長手方向に配置された3つの放射能検出器5の検出部5aを、それぞれ遮蔽部材からなる円筒状のコリメータ6で覆っているために、当該コリメータ6によってフレキシブルコンテナバッグtに収納された放射性廃棄物から放出される放射線の内、斜め方向から入射する放射線を遮蔽することができる。
【0042】
この結果、周囲の放射線量が高くない地域においては、装置全体としての放射能の遮蔽性能を簡略化させることができ、よって支持枠21の軽量化を図ることができる。また、これにより、放射性廃棄物が収納されたフレキシブルコンテナバッグtが、多数保管されている場所であっても、放射線量が中程度以下の地域であれば、容易に所望とする誤差範囲内の測定を行うことができる。
【0043】
また、演算手段7を、放射能検出器5により検出した検出信号からエネルギー別にカウントする多重波高分析装置8と、この多重波高分析装置8のデジタルデータを基にピークを演算するピーク演算装置9と、このピーク演算装置9において得られた所定の放射能核種別のピークを円周方向に連続的に積算することにより、放射性廃棄物全体の放射能量を算出し、得られた放射能量をフレキシブルコンテナバッグtの重量で除算することにより、放射能濃度を算出する放射能演算装置10によって構成しているために、放射能検出器5によって検出された検出信号を基に、フレキシブルコンテナバッグtにおける単位重量当たりの放射能量(Bq/kg)、すなわち上記密閉袋体全体の放射能濃度を簡便に算出することができる。
【0044】
したがって、上記放射能測定装置20を用いた放射能測定方法によれば、フレキシブルコンテナバッグtをクレーン等のワイヤー15によって吊るし、その外周面に放射能検出器20に臨ませて、回転装置12によってフレキシブルコンテナバッグtを軸線周りに回転させつつ、放射能検出器5によりフレキシブルコンテナバッグtの円周方向に沿って連続的に得られる放射線を検出し、演算手段7によってフレキシブルコンテナバッグt内における放射性廃棄物の平均化された放射能濃度を容易に得ることができる。
【0045】
しかも、吊したフレキシブルコンテナバッグtを軸線周りに回転させることにより、フレキシブルコンテナバッグt内に乱雑に収納された放射性廃棄物がある程度整頓されるため、フレキシブルコンテナバッグtの形態を整えることができる。これにより、放射能検出器5の検出部5aと、回転するフレキシブルコンテナバッグtとの距離を一定にして、測定精度を向上させることができる。
【0046】
この結果、放射性廃棄物が収納されたフレキシブルコンテナバッグtが複数保管された場所などの放射能汚染地域においても、バックグランド放射能の影響を受けることなく、容易に、かつ高い精度で上記放射性廃棄物の放射能濃度を測定することができる。これにより、屋外などで、上記放射性廃棄物が一般廃棄物として処理し得るものであるか、あるいは放射性廃棄物として処理すべきものであるかを、オンサイト解析によって行うことができる。
【0047】
加えて、フレキシブルコンテナバッグtを軸線周りに回転させつつ、フレキシブルコンテナバッグtの円周方向に沿って連続的に放射性廃棄物から放出される放射線を検出しているために、演算手段によって得られた放射能核種(セシウム等)のピーク値から、フレキシブルコンテナバッグt内において高い放射線量の放射性廃棄物が点在あるいは偏在している場合にも、その値や位置を正確に把握することが可能になる。
【0048】
(第2の実施形態)
図4図6は、本発明の放射能測定装置の第2の実施形態を示すもので、図1図3に示したものと同一構成部分に付いては、同一符号を付してその説明を簡略化する。
本実施形態の放射能測定装置1は、有底箱状の遮蔽体2と、この遮蔽体2に配置された複数(図では4つ)の放射能検出器5と、この放射能検出器5の検出部5a側に設けられたコリメータ6と、放射能検出器5からの検出信号を演算する演算手段7とから概略構成されている。
【0049】
ここで、遮蔽体2は、第1の実施形態における支持枠21の外面に一の側面21a(開口部3)を除いて鉛等の放射線を遮蔽する遮蔽部材を設けた第1の遮蔽体3と、この第1の遮蔽体3の長手方向の一端部側に、鉛等の放射線を遮蔽する遮蔽部材により有底箱状に形成され、かつ開口部4aが第1の遮蔽体3の開口部3a側に配置された第2の遮蔽体4とを備えたものであり、第2の遮蔽体4は、第1の遮蔽体3の長手方向に対して垂直に配置され一体に設けられている。
【0050】
以上の構成からなる放射能測定装置1においては、フレキシブルコンテナバッグt内の放射性廃棄物の放射性濃度を測定するに際して、遮蔽体2を、第1の遮蔽体3の3つの放射能検出器5がフレキシブルコンテナバッグtの外周面に対向して軸線方向に沿って配置され、第2の遮蔽体4内の放射能検出器5が、フレキシブルコンテナバッグtの底部に対向して配置されるように設置されて用いられる。
【0051】
そして、この放射能測定装置1によっても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果が得られるとともに、さらに、上記支持枠の側面を、上記検出部が配置されている面を除いて放射線を遮蔽する遮蔽部材によって覆って第1の遮蔽体としているために、高放射線地域において上記測定を行う場合にも、バックグランド放射能の影響を受けることなく、所望とする誤差範囲内において放射性廃棄物の放射能濃度を測定することができる。
【0052】
また、放射能検出器5の検出部5aを覆うコリメータ6を用いているために、遮蔽体2を形成するための遮蔽部材の厚さ寸法を極力小さくして軽量化を図ることもできる。加えて、第2の遮蔽体4の放射能検出器5をフレキシブルコンテナバッグtの底面部側に臨ませることにより、フレキシブルコンテナバッグtの外周部だけでなく底面部側の放射線を検出して、放射能量を測定することにより、測定の精度を向上させることができる。
【実施例】
【0053】
放射能検出器5の検出部5aをコリメータ6によって覆うことにより、測定精度が向上することを実証するために、以下の実験を行った。
先ず、この実験では、直径が1mのフレキシブルコンテナバッグtを用意して、この中に放射性物質を収納するとともに、この際に、表面側の一部の場所に他の場所よりも10倍程度の濃度の放射能物質が偏在した状態になるように収納した。そして、放射能検出器5として、図3および図6に示すような検出部5a側に鉛製の円筒状のコリメータ6を設けたものとを用意した。
【0054】
そして、フレキシブルコンテナバッグtを吊した状態のまま軸線周りに一回転させつつ、コリメータ6を設けた放射能検出器5により、当該フレキシブルコンテナバッグtの円周方向に沿って放射線を検出して演算手段7によって放射能濃度を算出し、次いで比較例として、放射能検出器5の検出部5a側にコリメータ6を取り付けずに、同様にフレキシブルコンテナバッグtを吊した状態のまま軸線周りに一回転させるとともに、放射能検出器5により、当該フレキシブルコンテナバッグtの円周方向に沿って放射線を検出し、演算手段7によって放射能濃度を算出した。
【0055】
図7は、その結果を示すものであり、縦軸が放射能濃度を示し、横軸が高濃度放射能の中心から、それぞれ半回転した位置をラジアンで示している。また、太い実線は、コリメータ6で遮蔽した場合の検出信号を多重波高分析装置8、ピーク演算装置9および放射能演算装置10で算出した放射能量を示し、細かい破線は、太い実線の放射能量を平均化した放射能量を示す。一方、細い実線は、コリメータ6で遮蔽しない場合の検出信号を多重波高分析装置8、ピーク演算装置9および放射能演算装置10で算出した放射能量を示し、粗い破線は、細い実線の放射能量を平均化した放射能量を示す。
【0056】
この図7のグラフでは、細い実線で示す、斜め方向から入射する放射線を遮蔽しない場合の放射能量が、高濃度箇所付近において見かけ上濃度が高くなっている。このため、全周に亘る放射能量を平均した場合、斜め方向から入射する放射線を遮蔽した放射能量の平均に対して、2倍程度の濃度を示してしまう。
【0057】
これは、本発明の実施例においては、コリメータ6を設けて斜め方向から入射する放射線を遮蔽することにより、測定対象放射能物質が検出器の直前位置にある場合のみ正しく測定し、周囲に散乱した放射線を見かけの放射能として誤って計測しなくなるからである。なお、この場合の全周に亘る放射能量の平均の大きさを示すことにより、この平均が全放射能量の平均を示すことになる。
【0058】
さらに、図7のグラフから、フレキシブルコンテナバッグtの側面部の一箇所のみ測定した場合には、測定する場所によっては、最大10倍程度の放射能濃度が異なった値になることが分かる。したがって、フレキシブルコンテナバッグtを軸線周りに回転させて、全周に亘り測定することが、測定精度の向上に必要であることが実証された。
【0059】
次いで、放射能検出器5の検出部5aを、肉厚寸法が20mmの鉛製のコリメータ6によって覆うことを前提にして、フレキシブルコンテナバッグt内に収納された放射性廃棄物の放射能濃度を測定するに際して、周囲の放射線量の高さが測定結果に与える誤差(比率)の程度を検証した。
【0060】
図8は、その条件および結果を示すものであり、検出器と周辺放射能の距離とは、上記放射能検出器5が設置されている位置と、周囲の放射線量に影響を与える対象物との間の距離を示すものである。また、この種の放射能濃度の検出作業では、バックグランド誤差は概ね10%未満を想定する。
【0061】
図8に見られるように、高線量地域においは、上記コリメータ6に加えて、放射能検出器5の全体を図4図6に示した第2の実施形態のように支持枠の外周面および底面を鉛シート(遮蔽部材)で覆った遮蔽体2内に配置することにより、確実に上記放射能濃度の検出誤差を10%未満にすることができることが判る。また、遮蔽体2が無い場合においても、当該放射線量に影響を与える対象物からの距離を5m以上とすることにより、上記誤差を10%未満にすることが可能になる。
【0062】
これに対して、中線量地域においては、遮蔽体2を設けることなく、図1図3に示した第1の実施形態の放射線測定装置によっても、上記誤差を10%以下にすることができることが判る。
【0063】
なお、上記第2の実施形態においては、放射能検出器5を遮蔽体2の第1の遮蔽体3および第2の遮蔽体4に設けて、フレキシブルコンテナバッグtの側面側および底面側部の放射能量を測定する場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、遮蔽体2の第1の遮蔽体3のみ放射能検出器5を設けて、フレキシブルコンテナバッグtの側面側のみ放射能量を測定しても対応可能である。
【0064】
また、本発明に係る放射能測定装置は、上述したフレキシブルコンテナバッグtをクレーン装置等によって吊した状態で軸線回りに回転させつつ、円周方向に連続的に放射線を測定する方法の他、例えばフレキシブルコンテナバッグtを一旦ターンテーブル上に載置して、当該ターンテーブルを回転させつつ、円周方向に連続的に放射線を測定する方法にも用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
放射性廃棄物を収納したフレキシブルコンテナバッグなどが保管されている場所で利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、20 放射能測定装置
2 遮蔽体
3 第1の遮蔽体
3a 開口部
4 第2の遮蔽体
4a 開口部
5 放射能検出器
5a 検出部
6 コリメータ
7 演算手段
8 多重波高分析装置
9 ピーク演算装置
10 放射能演算装置
11 出力装置
12 回転装置
13 重量測定装置
21 支持枠
21a 一の側面
23 取付部
t フレキシブルコンテナバッグ(密閉袋体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8