特許第5900635号(P5900635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5900635変性共役ジエン系重合体の製造方法、重合体組成物の製造方法、架橋重合体の製造方法及びタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900635
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体の製造方法、重合体組成物の製造方法、架橋重合体の製造方法及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/00 20060101AFI20160324BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20160324BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160324BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
   C08C19/00
   C08L15/00
   C08K3/36
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-538421(P2014-538421)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2013075178
(87)【国際公開番号】WO2014050665
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-211348(P2012-211348)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川合 高弘
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 毅
(72)【発明者】
【氏名】谷 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 公二
(72)【発明者】
【氏名】田中 了司
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−344832(JP,A)
【文献】 特開平04−149236(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/070875(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/155326(WO,A1)
【文献】 特開2001−139633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08L7/00−21/02
C08K3/00−13/08
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して得られる共役ジエン系重合体を変性した変性共役ジエン系重合体の製造方法であって、
前記共役ジエン系重合体の骨格中及び側鎖の少なくともいずれかの不飽和結合部位と、周期表第4族又は第13族元素を有する第1の化合物と、を反応させる第1変性工程と、
前記第1の化合物による変性後の共役ジエン系重合体と、シリカと相互作用する官能基を有する第2の化合物と、を反応させる第2変性工程と、を含み、
前記共役ジエン系重合体が、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で重合して得られる重合体であり、
前記第1変性工程の前に、前記共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する第3の化合物と、を反応させる末端変性工程を更に含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の化合物が、チタン、ジルコニウム、ホウ素又はアルミニウムを有する化合物である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の化合物が、ホウ素−水素結合を有する化合物である、請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記第3の化合物は、
(I)下記式(1)で表される化合物(a−1)、
(II)分子中に、環状エーテル基及び(チオ)カルボニル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基(x1)と、窒素原子、リン原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有しかつ活性水素を有していない、前記官能基(x1)とは異なる基(x2)と、を有する化合物(a−2)、及び、
(III)分子中に、イソ(チオ)シアナート基を2つ以上有する化合物(a−3)
からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】
(式(1)中、Aは、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有さず、かつRに対して窒素原子、リン原子又は硫黄原子で結合する1価の官能基である。R及びRはヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、nは0〜2の整数である。但し、R及びRが複数存在する場合、複数のR及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体と、シリカと、架橋剤と、を混合する重合体組成物の製造方法
【請求項6】
請求項に記載の製造方法により得られる重合体組成物を架橋させる架橋重合体の製造方法
【請求項7】
請求項に記載の製造方法により得られる架橋重合体を、少なくともトレッド又はサイドウォールの材料として用いて製造するタイヤの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体の製造方法、重合体組成物の製造方法、架橋重合体の製造方法及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車タイヤ用ゴムとしては、従来、乳化重合法や溶液重合法によって得られる共役ジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体など)が知られている。また近年、自動車の低燃費性能の更なる向上を図ることが一層求められており、これを実現するべく種々の共役ジエン系重合体が提案されている。例えば、自動車タイヤ用ゴムとして、共役ジエン系重合体の末端を、アミノ基及びアルコキシシリル基を有する化合物を用いて変性した変性共役ジエン系重合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、重合体の主鎖を構成する炭素原子にケイ素原子が結合するとともに当該ケイ素原子にアミノ基が結合した変性共役ジエン系重合体、及びアミノ基を有するベンゼン環が結合された変性共役ジエン系重合体が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−171418号公報
【特許文献2】特開2010−77386号公報
【特許文献3】特開2011−195802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今におけるガソリンの価格高騰等の経済事情や、二酸化炭素の排出による地球温暖化等の環境事情の下、自動車タイヤ用ゴムとしては、低燃費性能において従来のものよりも更に優れた材料が望まれている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、自動車タイヤ等の用途において低燃費性能に優れたゴム組成物を得るための変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討し、特定の化合物を炭素−炭素二重結合に付加することを利用して共役ジエン系重合体の主鎖又は側鎖を変性することに着眼した。そして、この着眼点に基づき共役ジエン系重合体の変性を行うことにより上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を解決するに至った。具体的には、本発明により以下の変性共役ジエン系重合体の製造方法、重合体組成物、架橋重合体及びタイヤが提供される。
【0007】
本発明は一つの側面において、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して得られる共役ジエン系重合体を変性した変性共役ジエン系重合体の製造方法であって、前記共役ジエン系重合体の骨格中及び側鎖の少なくともいずれかの不飽和結合部位と、周期表第4族又は第13族元素を有する第1の化合物と、を反応させる第1変性工程を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0008】
本製造方法によれば、自動車タイヤ等の用途において、低燃費性能(低ヒステリシスロス特性)に優れた重合体組成物を得ることができる変性共役ジエン系重合体を製造することができる。また、本製造方法により製造した変性共役ジエン系重合体は、更にウェットスキッド抵抗性にも優れており、自動車タイヤ等の用途に好適に用いることができる。
【0009】
本発明は別の一つの側面において、上記の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体と、シリカと、架橋剤と、を含む重合体組成物を提供する。また、当該重合体組成物を架橋させてなる架橋重合体を提供する。また更に、当該架橋重合体を、少なくともトレッド又はサイドウォールの材料として用いたタイヤを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]変性共役ジエン系重合体及びその製造方法
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、共役ジエン系重合体の骨格中及び側鎖の少なくともいずれかの不飽和結合部位に対し変性処理を行う工程(第1変性工程)を含む。以下、第1変性工程及び必要に応じて実施されるその他の工程について説明する。
【0011】
<重合工程>
本発明における共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して得ることができる。
ここで、上記重合に用いる共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が好ましい。なお、共役ジエン化合物としては、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
また、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、t−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−t−ブチルスチレン、3−t−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。また、芳香族ビニル化合物としては、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレンなどの3級アミノ基含有ジフェニルエチレンを用いてもよい。芳香族ビニル化合物としては、これらの中でもスチレンが特に好ましい。なお、芳香族ビニル化合物としては、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
なお、上記で例示した共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物は、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることが可能である点において、いずれも同様の作用を有するものである。したがって、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0014】
本重合工程により得られる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物の単独重合体であってもよいが、ゴムの強度を高める観点から、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であることが好ましい。中でも、アニオン重合におけるリビング性が高い点において、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体であることが好ましい。
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体において、芳香族ビニル化合物の使用量は、タイヤ用途に適用した場合の低ヒステリシスロス特性とウェットスキッド抵抗性とのバランスを良好にする観点から、重合に使用する共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量に対して、3〜55質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0015】
重合に際しては、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物以外の他のモノマーを使用してもよい。他のモノマーとしては、例えばアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。他のモノマーの使用量は、重合に使用するモノマーの全体量に対して、25質量%未満であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
本発明における共役ジエン系重合体は、上記共役ジエン化合物を少なくとも含むモノマーを用いて、アニオン重合を行うことにより製造することができる。ここで、重合法としては、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれを用いてもよいが、溶液重合法が特に好ましい。また、重合形式としては、回分式及び連続式のいずれを用いてもよい。
溶液重合法を用いる場合、具体的な重合方法の一例としては、有機溶媒中において、共役ジエン化合物を含むモノマーを、重合開始剤及び必要に応じて用いられるランダマイザーの存在下で重合する方法が挙げられる。
【0017】
重合開始剤としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくともいずれかを用いることができる。アルカリ金属化合物等としては、アニオン重合の開始剤として通常用いるものを使用することができ、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、1,4−ジリチオブタン、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ナフチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、ジ−n−ブ チルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカリウム、ステアリン酸カルシウム等を挙げることができる。中でも、リチウム化合物が好ましい。
【0018】
また、重合開始剤としてのアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物としては、シリカと相互作用する官能基を有する化合物を用いることもできる。このような官能基含有の化合物(以下、化合物(R)とも言う。)の存在下で重合を行うことにより、共役ジエン系重合体の重合開始末端に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。なお、本明細書において「相互作用」とは、分子間で共有結合を形成するか、又は共有結合よりも弱い分子間力(例えば、イオン−双極子相互作用、双極子−双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等といった分子間に働く電磁気学的な力)を形成することを意味する。また、「シリカと相互作用する官能基」は、窒素原子、硫黄原子、リン原子、酸素原子などのシリカと相互作用する原子を少なくとも1つ有する基を示す。
【0019】
上記化合物(R)は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を有し、かつシリカと相互作用する官能基を有するものであれば特に限定しないが、中でもアルキルリチウム、芳香族リチウム等のリチウム化合物と、第2級アミン化合物等の窒素含有化合物との反応生成物であることが好ましい。当該窒素含有化合物の具体例としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ドデカメチレンイミン、N,N’−ジメチル−N’−トリメチルシリル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペリジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジアリルアミン、モルホリン、N−(トリメチルシリル)ピペラジン、N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン、1,3−ジトリメチルシリル−1,3,5−トリアジナン等が挙げられる。
【0020】
なお、化合物(R)の存在下で重合を行う場合、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する化合物とを予め混合することにより化合物(R)を調製し、その調製した化合物(R)を重合系中に添加してもよい。あるいは、重合系中に、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する化合物とを添加し、重合系中で両者を混合することにより化合物(R)を調製してもよい。化合物(R)の使用量は、重合に使用するモノマー100gに対して、0.2〜20mmolが好ましい。
【0021】
ランダマイザーは、ビニル結合(1,2−結合及び3,4−結合)の含有率(ビニル含量)の調整等を目的として用いることができる。ランダマイザーの例としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、2−(2−エトキシエトキシ)−2−メチルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
重合に使用する有機溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、例えば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などを用いることができる。中でも、炭素数3〜8の炭化水素が好ましく、その具体例としては、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロヘキセン等を挙げることができる。なお、有機溶媒としては、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
溶液重合を用いる場合、反応溶媒中のモノマー濃度は、生産性と重合コントロールの容易性のバランスを維持する観点から、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。重合反応の温度は、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。また、重合反応は、モノマーを実質的に液相に保つのに十分な圧力の下で行うことが好ましい。このような圧力は、重合反応に対して不活性なガスによって、反応器内を加圧する等の方法によって得ることができる。
【0024】
このようにして、重合開始剤としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属を有する化合物を用いることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができる。
本発明における共役ジエン系重合体のポリスチレン換算(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10〜2.0×10である。Mwが1.0×10よりも小さいと、本発明の変性共役ジエン系重合体を含む重合体組成物を用いて得られる架橋重合体において、低燃費性能及び耐摩耗性が低下しやすい傾向にあり、2.0×10よりも大きいと、重合体組成物の加工性が低下しやすい傾向にある。より好ましくは、1.5×10〜1.5×10であり、更に好ましくは、2.0×10〜1.0×10である。
また、ビニル含量は、30〜65質量%であることが好ましく、33〜62質量%であることがより好ましく、35〜60質量%であることが更に好ましい。ビニル含量が30質量%未満であると、グリップ特性が低くなりすぎる傾向があり、65質量%を超えると、耐摩耗性が悪化しやすくなる傾向にある。なお、ビニル含量は、H−NMRによって測定した値である。
【0025】
<末端変性工程>
本発明の製造方法は、上記重合により得られた共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(第3の化合物、以下「末端変性剤」ともいう。)と、を反応させて重合体末端を変性する末端変性工程を含んでいてもよい。同工程により、共役ジエン系重合体の重合終了末端に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。
【0026】
末端変性剤としては、シリカと相互作用する官能基を有し、かつ重合活性末端と反応し得る化合物であれば特に限定しない。末端変性剤の好ましい具体例としては、下記(I)〜(III)
(I)下記式(1)で表される化合物(a−1);
【化1】
(式(1)中、Aは、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有さず、かつRに対して窒素原子、リン原子又は硫黄原子で結合する1価の官能基である。R及びRはヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、nは0〜2の整数である。但し、R及びRが複数存在する場合、複数のR及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【0027】
(II)分子中に、環状エーテル基及び(チオ)カルボニル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基(x1)と、窒素原子、リン原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子(但し、窒素原子、リン原子及び硫黄原子は、少なくとも一部が3置換のヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。)を有し、かつ活性水素を有していない、上記官能基(x1)とは異なる基(x2)と、を各々1つ以上有する化合物(a−2);
(III)分子中に、イソ(チオ)シアナート基を2つ以上有する化合物(a−3);
等が挙げられる。末端変性剤としては、これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、(チオ)カルボニル基はカルボニル基及びチオカルボニル基を示し、イソ(チオ)シアナート基はイソシアナート基及びイソチオシアナート基を示す。
【0028】
[化合物(a−1)]
上記式(1)において、R及びRのヒドロカルビル基としては、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
は、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基又は炭素数6〜20のアリーレン基であることが好ましい。
nは、共役ジエン系重合体との反応性を高める観点から、0又は1が好ましい。
は、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有しており、これらの原子を介してRに結合している。また、Aが有する窒素原子、リン原子又は硫黄原子は、活性水素と結合しておらず、例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等で保護されていてもよい。なお、本明細書における「活性水素」とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、好ましくはポリメチレンの炭素−水素結合よりも結合エネルギが低いものを指す。
【0029】
としては、中でも、オニウム塩生成剤によってオニウムイオンになり得る基であることが好ましい。末端変性剤がこのような基(A)を有することにより、変性共役ジエン系重合体に対して優れた形状保持性を付与することができる。
の具体例としては、例えば1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、3級アミノ基、イミノ基、ピリジル基、1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、及び、チオール基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基等が挙げられる。これらの中でも、シリカとの親和性が良好である観点から、窒素原子を有する基であることが好ましい。なお、「保護基」とは、Aを不活性な官能基に変換しておく官能基であり、例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等が挙げられる。
【0030】
上記化合物(a−1)の具体例としては、1級アミンの2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミンの1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、又は3級アミノ基と、アルコキシシリル基とを有する化合物として、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(メチルジメトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−p−フェニレンジアミン、3−〔3−(トリメチルシリルエチルアミノ)−1−ピロリジニル〕−プロピル−メチルジエトキシシラン、N−〔3−(ジエトキシメチルシリル)−プロピル〕−N−エチル−N’−(2−エトキシエチル)−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルメチルジメトキシシラン、N−トリメチルシリル−N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−イミダゾリジン、2−{3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチルジメチルアミン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ジエチルピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル−ジメチルアミン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、及び上記化合物中のアルキル基、アルカンジイル基を、各々炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルカンジイル基に置き換えた化合物等を挙げることができる。
【0031】
中でも、好ましい化合物の例として、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−トリメチルシリル−N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン等が挙げられる。
【0032】
イミノ基又はピリジル基と、アルコキシシリル基とを有する化合物としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリメトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジメトキシシラン、並びに上記化合物中のアルキル基、アルカンジイル基を、各々炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルカンジイル基に置き換えた化合物等が挙げられる。
中でも、好ましい化合物の例として、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール等が挙げられる。
【0033】
1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、又はチオール基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基と、アルコキシシリル基とを有する化合物としては、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルメリルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及び上記化合物中のアルキル基、アルカンジイル基を、各々炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルカンジイル基に置き換えた化合物等を挙げることができる。
中でも、好ましい化合物の例として、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
その他、末端変性剤としては、例えば3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソチオシアナトプロピルトリメトキシシラン等のイソ(チオ)シアナート基を有する化合物等を挙げることができる。
【0034】
[化合物(a−2)]
上記化合物(a−2)は、上記官能基(x1)と上記基(x2)とを有する。ここで、上記官能基(x1)の環状エーテル基としては、三員環又は四員環であることが好ましく、三員環であることがより好ましい。また、上記基(x2)は、活性水素と結合していない窒素原子を含む基であることが好ましく、三置換の窒素原子であることが好ましい。
上記化合物(a−2)において、上記基(x2)が有する窒素原子、リン原子、酸素原子及び硫黄原子は、官能基(x1)と直接結合していてもよいし、2価の有機基を介して官能基(x1)結合していてもよい。当該2価の有機基としては、例えば炭素数1〜30のヒドロカルビレン基などが挙げられる。
上記化合物(a−2)の具体例としては、環状エーテル基を有する化合物として、例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル(4,4’−メチレンビスアニリン)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン等のエポキシアミン化合物などを;
(チオ)カルボニル基を有する化合物として、例えば4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の(ジヒドロカルビルアミノ)ベンゾフェノン;4−N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、α−(1H−イミダゾール−1−イル−アセトフェノン等の4−アミノアセトフェノン;1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等のビス(ジヒドロカルビルアミノアルキル)ケトン:2−ジメチルアミノエチルアクリレート、3−ジメチルアミノプロピルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のジヒドロカルビルアミノアルキル(メタ)アクリレート;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン等のヒドロカルビルイミダゾリジノン;1−フェニル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン等のN−ヒドロカルビルピロリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム等のN−ヒロドカルビルカプトラクタム;N,N−ジエチルホルムアミド等のN−ジヒドロカルビルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド等のN,N−ジヒドロカルビルアセトアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)チオベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)チオベンゾフェノン等のチオケトンなどを;それぞれ挙げることができる。
【0035】
[化合物(a−3)]
上記化合物(a−3)が有するイソ(チオ)シアナート基は2つ以上であればよく、2〜6つであることが好ましく、2〜4つであることがより好ましい。上記化合物(a−3)において、イソ(チオ)シアナート基以外の構造は、例えば炭素数1〜30の2価のヒドロカルビレン基などが挙げられる。
上記化合物(a−3)の具体例としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェート、キシレンジイソシアナート、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、ナフタレン−1,2,5,7−テトライソシアナート、1,4−フェニレンジイソチオシアナートなどを挙げることができる。
【0036】
末端変性剤としては、シリカとの親和性が強い点において、化合物(a−1)及び化合物(a−2)からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、化合物(a−1)を用いることが特に好ましい。また、末端変性剤としてシラン化合物(a−1)を用いる場合、変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度を調整する目的で、シラン化合物(a−1)と共に、四塩化ケイ素、エポキシ含有化合物(例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンなど)などを用いてもよい。なお、上記例示の末端変性剤は、重合終了末端が変性された変性共役ジエン系重合体を得ることが可能である点において、いずれも同様の作用を有するものである。したがって、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0037】
上記の末端変性反応は、例えば溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、上記重合工程における重合反応の終了後の未反応モノマーを含む溶液をそのまま用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる共役ジエン系重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。また、末端変性反応は、回分式及び連続式のいずれを用いて行ってもよい。このとき、末端変性剤の添加方法は特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられる。
【0038】
末端変性反応に使用する末端変性剤の量は、反応に使用する化合物の種類に応じて適宜設定すればよいが、共役ジエン系重合体の活性部位に対し、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.3モル当量以上である。0.1モル当量以上とすることにより、変性反応を十分に進行させることができ、シリカの分散性を好適に改良することができる。また、後述する第1変性工程の反応阻害とならないようにする点において、共役ジエン系重合体の活性部位に対し、1.2モル当量以下とすることが好ましい。
末端変性反応の温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。変性反応の温度が低いと、変性共役ジエン系重合体溶液の粘度が上昇する傾向がある。一方、変性反応の温度が高いと、重合活性末端が失活しやすくなる。変性反応の反応時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。
【0039】
<第1変性工程>
本発明における第1変性工程は、上記重合反応により得られた共役ジエン系重合体の骨格中及び側鎖の少なくともいずれかの不飽和結合部位と、周期表第4族又は第13族元素(以下、特定元素ともいう。)を有する第1の化合物と、を反応させる工程である。この反応により、共役ジエン系重合体の骨格中及び側鎖の少なくともいずれかに存在する不飽和結合部位、具体的には、共役ジエン化合物に基づく構成単位中のビニル結合部位に、シリカと相互作用可能な特定元素を付加させる。なお、「骨格中」とは、重合体の一方の末端と他方の末端との間の中間部を意味し、重合体主鎖のうち末端とは異なる部位を指す。
【0040】
[第1の化合物]
第1の化合物が有する第4族元素としては、チタン、ジルコニウム及びハフニウムを例示することができる。また、第13族元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム及びタリウムを例示することができる。第1の化合物が有する特定元素としては、中でも、チタン、ジルコニウム、ホウ素又はアルミニウムであることが好ましく、二重結合との反応性が高い点や、シリカとの相互作用がより強く、ヒステリシスロス特性及びウェットスキッド特性を良好にできる点において、ホウ素であることが特に好ましい。
【0041】
第1の化合物が第4族元素を有する場合、第1の化合物はメタロセン系化合物又はインデニル系化合物であることが好ましい。その具体例としては、チタンを有する化合物として、例えばビス(シクロペンタジエニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジハイドライドなどを;
ジルコニウムを有する化合物として、例えばビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライドなどを;
ハフニウムを有する化合物として、例えばビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジハイドライドなどを;それぞれ挙げることができる。
【0042】
また、第1の化合物が第13族元素を有する場合、第1の化合物はホウ素−水素結合を有する化合物又はアルミニウム−水素結合を有する化合物であることが好ましい。中でも、二重結合との反応性が高い点や、シリカとの相互作用が強く、ヒステリシスロス特性及びウェットスキッド特性を良好にできる点において、ホウ素−水素結合を有する化合物であることが特に好ましい。なお、ホウ素は空軌道を有しており、この空軌道の存在によって、シリカと金属(ホウ素)間との相互作用が強く働いているものと推察される。
このような第1の化合物の好ましい例としては、ホウ素−水素結合を有する化合物として、例えば9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ジシアミルボラン、テキシルボラン、ジイソピノカンフェイルボラン等のアルキルボラン:ピナコールボラン、カテコールボラン等のアルコキシボラン:H−BX(但し、Xは、水素原子、塩素原子又は臭素原子であり、少なくとも1つは塩素原子又は臭素原子である。)などのハロゲン化物:モノボラン、ジボランなどを;
アルミニウム−水素結合を有する化合物として、例えばアルミニウムリチウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジ−n−プロピルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどを;それぞれ挙げることができる。
【0043】
共役ジエン系重合体と第1の化合物との反応は、溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、アルコールや末端変性剤等の重合停止剤の添加により上記重合反応を終了させた後の反応溶液をそのまま用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。また、当該反応は、回分式及び連続式のいずれを用いて行ってもよい。このとき、第1の化合物の添加方法は特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられる。なお、第1の化合物との反応に用いる共役ジエン系重合体は、重合開始末端及び重合終了末端の少なくともいずれかが変性剤(化合物(R)、末端変性剤)で変性されていてもよく、重合開始末端及び重合終了末端が共に変性されていなくてもよい。
反応に使用する第1の化合物の量は、特に制限されるものではないが、重合体1当量に対して、0.1〜20モル当量となる割合が好ましく、1〜10モル当量となる割合がより好ましい。反応温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが更に好ましい。反応時間は、好ましくは1分〜3時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。この変性反応により、共役ジエン系重合体の骨格中及び側鎖の少なくともいずれかに存在する不飽和結合部位に特定原子が付加した本発明の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0044】
<第2変性工程>
本発明の製造方法は、第1の化合物による変性後の共役ジエン系重合体の反応部位と、シリカと相互作用する官能基を有する第2の化合物と、を反応させる工程(第2変性工程)を更に含んでいてもよい。同工程により、共役ジエン系重合体の骨格中及び側鎖の少なくともいずれかに、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。
【0045】
[第2の化合物]
第2の化合物としては、シリカと相互作用する官能基を有し、かつ上記第1変性工程により形成した共役ジエン系重合体の反応部位と反応し得る化合物であれば特に限定しない。第2の化合物の好ましい例としては、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選択される少なくとも一種の原子を有し、かつ活性水素を有する化合物を挙げることができる。中でも、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有する化合物であることが好ましい。
【0046】
第2の化合物は、低分子化合物及び高分子化合物(重合体)のいずれであってもよい。第2の化合物が低分子化合物である場合、その好ましい例としては、例えばアルコキシシリル基を有する化合物、2つ以上の窒素原子を有する化合物、多価アルコール、多価カルボン酸、アミノ酸化合物等を挙げることができる。
それらの具体例としては、アルコキシシリル基含有化合物として、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−[2−[3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N−[2−[3−(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミンなどを;
2つ以上の窒素原子を有する化合物として、例えばエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどを;
多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどを;
多価カルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などを;
アミノ酸化合物として、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、グルタミン酸、チロシン、システインなどを;それぞれ挙げることができる。
【0047】
また、第2の化合物が高分子化合物である場合、その好ましい例としては、例えばポリシロキサン構造を有する化合物、ポリエーテル構造を有する化合物、ポリイミン構造を有する化合物等を挙げることができる。このような高分子化合物により変性処理を行うことにより、共役ジエン系重合体に対し、相溶化剤としての効果を付与することができる。
第2の化合物である高分子化合物の具体例としては、ポリシロキサン構造を有する化合物として、例えばKF−859、KF−393、KF−860、KF−880、KF−8004、KF−8002、KF−8005、KF−867、X−22−3820W、KF−869、KF861、KF−868、KF−865、KF−864、X−22−3939A、PAM−E、KF−8010、X22−161A、X−22−161B、KF8012、KF−8008、KF−857、KF−8001、KF−862、X−22−9192(以上、信越化学工業社製)等のアミノ基含有ポリシロキサン;X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−21−5841、KF−9701、X−22−1821、X−22−170BX、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176F(以上、信越化学工業社製)等の水酸基含有ポリシロキサン;などを;
ポリエーテル構造を有する化合物として、例えばMPG−130(日本乳化剤社製)、SR−8EG、SR−TPG、SR−4PG(以上、阪本薬品工業社製)等の水酸基含有ポリエーテル化合物などを;
ポリイミン構造を有する化合物として、例えばエポミンSP−003、同SP−006、同SP−012、同SP−018(以上、日本触媒社製)、Lupasolシリーズ(BASF社製)等のアミノ基含有ポリイミンなどを;それぞれ挙げることができる。なお、第2の化合物としては、上記のものを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
なお、上記例示の第1の化合物及び第2の化合物は、重合体の主鎖又は側鎖が変性された変性共役ジエン系重合体を得ることが可能である点において、いずれも同様の作用を有するものである。したがって、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0049】
第1の化合物による変性後の共役ジエン系重合体と第2の化合物との反応は、溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、上記第1変性工程による変性反応後の反応溶液をそのまま用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。また、当該反応は、回分式及び連続式のいずれを用いて行ってもよい。このとき、第2の化合物の添加方法は特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられる。
【0050】
当該反応における第2の化合物の使用割合は、重合体1当量に対して、第2の化合物の官能基部位が0.1〜20モル当量となる割合が好ましく、1〜10モル当量となる割合がより好ましい。また、反応温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。反応時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。
このようにして、上記第1の化合物による変性後の共役ジエン系重合体(変性共役ジエン系重合体)と第2の化合物とを反応させる。該反応によって、重合体が有する特定元素と、第2の化合物の官能基部分(アミノ基、水酸基)とを結合させることにより、重合体の主鎖及び側鎖の少なくともいずれかを第2の化合物によって変性させた変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0051】
[その他の工程]
本発明の製造方法は、末端変性剤を用いて共役ジエン系重合体の末端変性を行った場合、第1変性工程又は第2変性工程による変性反応の終了後において、変性共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤とを混合する工程を含んでいてもよい。該工程によって、共役ジエン系重合体にオニウム構造が導入されることにより、変性共役ジエン系重合体の形状保持性を高めることができる。
【0052】
上記工程で用いるオニウム塩生成剤としては、例えばハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ジルコニウム化合物、ハロゲン化ゲルマニウム化合物、ハロゲン化ガリウム化合物、ハロゲン化亜鉛化合物等のハロゲン化金属化合物;硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステル、硝酸エステル等の無機酸のエステル;弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸等の無機酸;フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の無機酸塩;カルボン酸(例えばマレイン酸)、スルホン酸等の有機酸等が挙げられる。オニウム塩生成剤の好ましい具体例としては、例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、ジエチルアルミニウムクロライド、塩化亜鉛、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム、硫酸ジエチル、リン酸トリメチル、炭酸ジメチル、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸等を挙げることができる。
【0053】
共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤とを混合する処理は、例えば溶液中で行うことができる。該処理における共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤との使用割合は、共役ジエン系重合体の活性部位に対し、オニウム塩生成剤の量が、0.5モル当量以上であることが好ましく、1.0モル当量以上であることがより好ましい。
共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤とを混合する際の温度は、通常、共役ジエン系重合体の重合温度と同じであり、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20〜100℃である。
共役ジエン系重合体におけるオニウム塩構造の形成は、水の存在下で行われる。具体的には、例えば、(i)共役ジエン系重合体を含む溶液中に、水とオニウム塩生成剤とを直接添加して混合する方法、(ii)共役ジエン系重合体を含む溶液中に、水に溶解可能な有機溶剤(例えばアルコール等)に水を溶解させてなるものと、オニウム塩生成剤とを添加して混合する方法、(iii)共役ジエン系重合体を含む溶液とオニウム塩生成剤とを混合した後、スチームストリッピングによる脱溶媒を利用して系内に水を存在させる方法、などが挙げられる。好ましくは、(iii)の方法である。
【0054】
反応溶液に含まれる変性共役ジエン系重合体を単離するには、例えばスチームストリッピング等の公知の脱溶媒方法及び熱処理等の乾燥の操作によって行うことができる。こうして得られた変性共役ジエン系重合体は、必要に応じて伸展油等を添加することによりムーニー粘度を調整してもよい。この処理により、加工性を良好にすることができる。伸展油としては、例えばアロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。伸展油の配合量は、重合に用いるモノマー等に応じて適宜設定すればよいが、例えば変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10〜50質量部である。
【0055】
[2]重合体組成物
(重合体成分)
本発明の重合体組成物は、重合体成分として、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体(以下、特定重合体ともいう。)を含む。
本重合体組成物中における重合体成分の含有割合は、重合体組成物の全体量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。該割合が20質量%以上であることにより、架橋重合体の引張強さや引張伸び等の機械的特性、耐亀裂成長性、及び耐摩耗性をより良好なものとすることができる。
本発明の重合体組成物は、重合体成分として、上記の特定重合体以外のその他の重合体を含んでいてもよい。かかる他の重合体としては、例えば天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、変性ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、変性スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、及び、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、並びにこれらの混合物等を挙げることができる。
重合体成分として、上記その他の重合体を含有する場合、特定重合体の含有割合は、重合体組成物中に含まれる重合体成分の全体に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。この割合が5質量%以上であることにより、低ヒステリシス特性、耐摩耗性、加工性などの各種特性をより良好なものとすることができる。
【0056】
(補強剤)
本発明の重合体組成物は、補強剤としてシリカを含む。シリカの具体例としては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらのうち、耐破壊特性の改良効果や、ウェットグリップ性と低転がり抵抗性との両立効果の観点から、湿式シリカが特に好ましい。また、高分散型(High Dispersible Type)のシリカを使用することも、重合体組成物中における分散性を良好にできるとともに物性及び加工性を向上できる観点から好ましい。なお、シリカは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
また、本発明の重合体組成物は、補強剤として、シリカと共に、必要に応じてカーボンブラックを含んでいてもよい。
カーボンブラックの具体例としては、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF−LSに代表されるファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等のほか、グラファイト繊維、フラーレン等の各グレードのカーボンブラックなどを挙げることができる。また、中でも、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上であり、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることにより、架橋重合体のグリップ性能及び耐破壊特性の改良効果が大きくなる。なお、架橋重合体の耐摩耗性を向上させる観点から、上記の中でも、HAF、ISAF、SAFが特に好ましい。なお、カーボンブラックは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
本発明の重合体組成物中におけるシリカ及びカーボンブラックの合計量は、該組成物中に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、好ましくは20〜130質量部、より好ましくは25〜110質量部である。補強剤の量が少ないと、耐破壊特性等の向上効果が不十分となる傾向にあり、補強剤の量が多いと、重合体組成物の加工性が低下する傾向にあるためである。また、本発明の重合体組成物中にカーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラー(Dual Phase Filler)を配合することにより、シリカとカーボンブラックとを併用したときと同様の優れた利点を得ることができる。カーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーは、カーボンブラックの表面にシリカを化学結合させた、いわゆるシリカ・コーティング・カーボンブラックであり、キャボット社から商品名CRX2000、CRX2002、CRX2006として販売されている。カーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーの配合量は、重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜95質量部である。
【0059】
(シランカップリング剤)
本発明の重合体組成物に、補強剤としてシリカを含有させる場合、補強効果を更に向上させるために、シランカップリッグ剤を配合することが好ましい。このシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、特開2006−249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物などを挙げることができる。
市販品としては、例えば、モメンティブ パーフォーマンス マテリアルズ社製の商品名「NXT シラン」、「NXT Z シラン」、「NXT−Low−V シラン」、「NXT Ultra Low−V シラン」、デグザ社製の商品名「VP Si363」、gelest社製の商品名「11−MERCAPTOUNDECYLTRIMETHOXYSILANE」などを挙げることができる。
これらのうち、補強性の改善効果等の点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、特開2006−249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物が好適である。なお、これらのシランカップリング剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類等により異なるが、重合体組成物に含まれるシリカ100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部である。シランカップリング剤の配向量が1質量部未満であると、カップリング剤としての効果が十分に得られ難い傾向にあり、20質量部を超えると、重合体成分がゲル化し易くなる傾向にあるためである。
【0060】
(相溶化剤)
本発明の重合体組成物の調製に際し、混練り時の加工性の改良や、ウェットスキッド抵抗性と低ヒステリシスロス特性と耐摩耗性とのバランスを更に向上させる目的で、相溶化剤を混練り時に添加することができる。相溶化剤の好ましい例としては、エポキシ基含有化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、水酸基含有化合物及びアミノ基含有化合物から選択される有機化合物、並びに、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物及びアミノシラン化合物から選択されるケイ素化合物等が挙げられる。
相溶化剤のうち、上記有機化合物の具体例としては、エポキシ基含有化合物として、例えばブチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、酸化プロピレン、ネオペンチルグリコールシグリシジルエーテル、エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸エステルなどを;カルボン酸化合物として、例えばアジピン酸、オクチル酸、メタクリル酸などを;カルボン酸エステル化合物として、例えばアクリル酸エステル、アクリル酸ジエチレン、メタクリル酸エチル、オルト酢酸エステル、アセト酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、ジメチルカーボネート、p−ヒドロキシフェニル酢酸、ポリエステル系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤などを;ケトン化合物として、例えばメチルシクロヘキサノン、アセチルアセトンなどを;エーテル化合物として、例えばイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどを;アルデヒド化合物として、例えばウンデシレンアルデヒド、デシルアルデヒド、バニリン、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、クミンアルデヒドなどを;アミノ基含有化合物として、例えばイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、イソプロパノールアミン、N−エチルエチレンジアミン、エチレンイミン、ヘキサメチレンジアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、アミノフェノール、アニリン、3−イソプロポキシアニリン、フェニレンジアミン、アミノピリジン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、塩酸エチルアミン、塩酸−n−ブチルアミンなどを;水酸基含有化合物として、例えばイソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、オクタンジオール、エチレングリコール、メチルシクロヘキサノール、2−メルカプトエタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1−オクタデカノール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、トリエチレングリコールなどを;挙げることができる。中でも、エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、水酸基含有化合物が好ましい。
【0061】
また、ケイ素化合物の具体例としては、アルコキシシラン化合物として、例えばトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどを;シロキサン化合物として、例えばジメチルシロキサンオリゴマー、シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイルなどを;アミノシラン化合物として、例えばヘキサメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、アニリトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、トリエチルアミノシランなどを;挙げることができる。中でも、シラザン化合物、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシランが好ましい。
【0062】
(加硫剤)
本発明の重合体組成物は加硫剤(架橋剤)を含む。加硫剤としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。加硫剤としては、通常、硫黄が使用される。硫黄の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0063】
本発明の重合体組成物は、所望により、ゴム工業界で通常用いられている各種の薬品や添加剤等を含んでいてもよい。このような薬品又は添加剤の例としては、加硫助剤、加工助剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を挙げることができる。
ここで、加硫助剤及び加工助剤としては、通常、ステアリン酸が用いられる。加硫助剤及び加工助剤の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、通常、0.5〜5質量部である。
加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えばスルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、チオウレア系、チアゾール系、ジチオカルバミン酸系、キサントゲン酸系の化合物が挙げられ、好ましくは2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビスグアニジンなどが挙げられる。加硫促進剤の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部であり、好ましくは0.4〜4質量部である。
【0064】
本発明の重合体組成物は、重合体成分、シリカ及び架橋剤の他、必要に応じて配合される成分を、開放式混練機(例えば、ロール)、密閉式混練機(例えば、バンバリーミキサー)等の混練機を用いて混練することによって製造することができる。また、本発明の重合体組成物は、成形加工後に架橋(加硫)することによって、架橋重合体として各種ゴム製品に適用可能であり、例えばタイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途;防振ゴム、防舷材、ベルト、ホース、その他の工業品等の用途に適用できる。中でも、低燃費性能を与える観点から、特に、タイヤトレッド用ゴムとして好適に使用できる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、変性共役ジエン系重合体の各種物性値の測定方法は以下のとおりである。
・結合スチレン含量[%]:500MHzのH−NMRによって測定した。
・ビニル含量[%]:変性前に、500MHzのH−NMRによって測定した。
・変性前の重量平均分子量:以下の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「HLC−8120GPC」、東ソー社製)を使用して得られたGPC曲線の最大ピークの頂点に相当する保持時間からポリスチレン換算で求めた。
カラム:商品名「GMHXL」(東ソー社製)2本
カラム温度:40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/分
サンプル濃度;10mg/20ml
【0066】
[実施例1A]
<変性共役ジエン系重合体A1の合成>
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン2,500g、ビニル含量調整剤として2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(化合物A)2.45mmol、モノマーとしてスチレン125g及び1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を10℃に調整した後、重合開始剤としてn−ブチルリチウム5.20mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点(重合開始から22分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、さらに3分間重合させた後、重合停止剤としてイソプロパノール5.20mmolを添加し、反応を停止させた。その後、第1の化合物(変性剤1)としてピナコールボラン(化合物F)13.4mmolを加えて15分間反応を行った。
得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体A1を得た。
【0067】
[実施例2A〜5A]
<変性共役ジエン系重合体A2〜A5の合成>
使用する第1の化合物として、下記表1に示すとおり、化合物Fを化合物G〜Jに変更した以外は、実施例1Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A2〜A5を得た。
[実施例6A]
<変性共役ジエン系重合体A6の合成>
重合開始前のオートクレーブ反応器に更にピペリジン4.20mmolを仕込んだ以外は、上記実施例1Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A6を得た。
【0068】
[実施例7A]
<変性共役ジエン系重合体A7の合成>
上記実施例1Aと同様の方法により重合反応を行うとともに、重合停止剤としてイソプロパノール5.20mmolを添加し、反応を停止させた。その後、第1の化合物として化合物F13.4mmolを加えて15分間反応を行った。次いで、得られた重合体溶液に、第2の化合物(変性剤2)としてN−[2−[3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン(化合物K)13.4mmolを加えて15分間反応を行った。
得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体A7を得た。
[実施例8A]
<変性共役ジエン系重合体A8の合成>
使用する化合物F及び化合物Kの量を下記表1のとおり変更した以外は、実施例7Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A8を得た。
[実施例9A]
<変性共役ジエン系重合体A9の合成>
使用する第2の化合物として、下記表1に示すとおり、化合物Kを化合物Lに変更した以外は、実施例7Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A9を得た。
[実施例10A、11A]
<変性共役ジエン系重合体A10、A11の合成>
使用する第2の化合物として、下記表1、表2に示すとおり、化合物Kを化合物M5.0g又は化合物N5.0gにそれぞれ変更した以外は、実施例7Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A10、A11を得た。
【0069】
[実施例12A]
<変性共役ジエン系重合体A12の合成>
上記実施例1Aと同様にして重合を開始するとともに1,3−ブタジエンの追添を行った後、イソプロパノールの代わりに、末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(化合物C)4.46mmolを加えて15分間反応を行った。次いで、第1の化合物として化合物F13.4mmolを加えて15分間反応を行い、得られた重合体溶液に、第2の化合物として化合物K13.4mmolを加えてさらに15分間反応を行った。得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体A12を得た。
【0070】
[実施例13A、14A]
<変性共役ジエン系重合体A13、A14の合成>
使用する末端変性剤として、下記表2に示すとおり、化合物Cを化合物D又は化合物Eにそれぞれ変更した以外は、実施例12Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A13、A14を得た。
[実施例15A]
<変性共役ジエン系重合体A15の合成>
上記実施例12Aにおいて、末端変性剤として化合物C4.46mmolを加えて15分間反応を行う代わりに、末端変性剤として四塩化ケイ素0.56mmolを加えて5分間反応を行い、次いで、末端変性剤として化合物C2.23mmolを加えて15分間反応を行った以外は、実施例12Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A15を得た。
[実施例16A]
<変性共役ジエン系重合体A16の合成>
使用する第2の化合物として、下記表2に示すとおり、化合物Kを化合物M5.0gに変更した以外は、実施例12Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A16を得た。
[実施例17A]
<変性共役ジエン系重合体A17の合成>
使用する第2の化合物として、下記表2に示すとおり、化合物Kを化合物M5.0gに変更した以外は、実施例15Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A17を得た。
【0071】
[実施例18A]
<変性共役ジエン系重合体A18の合成>
重合開始前のオートクレーブ反応器に更にピペリジン4.20mmolを仕込んだ以外は、実施例12Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A18を得た。
[実施例19A]
<変性共役ジエン系重合体A19の合成>
使用するピペリジンをN−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン(化合物B)に変更した以外は、実施例18Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A19を得た。
[実施例20A]
<変性共役ジエン系重合体A20の合成>
使用する第2の化合物として、下記表2のとおり、化合物Kを化合物M5.0gに変更した以外は、実施例18Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A20を得た。
[実施例21A]
<変性共役ジエン系重合体A21の合成>
実施例19Aにおいて、第2の化合物を加えて15分間反応を行った後、更にオニウム塩生成剤として、四塩化ケイ素16.8mmolを添加した以外は、実施例19Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A21を得た。
[実施例22A]
<変性共役ジエン系重合体A22の合成>
オニウム塩生成剤として、下記表3のとおり、四塩化ケイ素をマレイン酸13.6mmolに変更した以外は、実施例20Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体A22を得た。
【0072】
[比較合成例1]
<共役ジエン系重合体B1の合成>
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン2,500g、ビニル含量調整剤として化合物A2.45mmol、モノマーとしてスチレン125g及び1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を10℃に調整した後、重合開始剤としてn−ブチルリチウム5.20mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点(重合開始から22分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、さらに3分間重合させた後、重合停止剤としてイソプロパノール5.20mmolを添加し、反応を停止させた。
得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて得られた重合体を乾燥させ、共役ジエン系重合体B1を得た。
【0073】
[比較合成例2]
<変性共役ジエン系重合体B2の合成>
重合開始前のオートクレーブ反応器に更にピペリジン4.20mmolを仕込んだ以外は、比較合成例1と同様の操作を行うことにより変性共役ジエン系重合体B2を得た。
[比較合成例3]
<変性共役ジエン系重合体B3の合成>
上記比較合成例1と同様にして重合を開始するとともに1,3−ブタジエンの追添を行った後、イソプロパノールの代わりに、末端変性剤として化合物C4.46mmolを加えて15分間反応を行った。得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体B3を得た。
[比較合成例4]
<変性共役ジエン系重合体B4の合成>
上記比較合成例3において、末端変性剤として化合物C4.46mmolを加えて15分間反応を行う代わりに、末端変性剤として四塩化ケイ素0.56mmolを加えて5分間反応を行い、次いで、末端変性剤として化合物C2.23mmolを加えて15分間反応を行った以外は、比較合成例3と同様の方法により変性共役ジエン系重合体B4を得た。
[比較合成例5]
<変性共役ジエン系重合体B5の合成>
重合開始前のオートクレーブ反応器に更にピペリジン4.20mmolを仕込んだ以外は、比較合成例3と同様の方法により変性共役ジエン系重合体B5を得た。
【0074】
上記の重合処方を、得られた重合体の各種物性値の測定結果とともに下記表1〜表3に示す。
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表1〜表3中、化合物の略称は以下の通りである。
化合物A;2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン
化合物B;N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン
化合物C;N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン
化合物D;S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン
化合物E;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン
化合物F;ピナコールボラン
化合物G;9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン
化合物H;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド
化合物I;ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド
化合物J;ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド
化合物K;N−[2−[3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン
化合物L;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン
化合物M;KF−393(信越化学社製)
化合物N;MPG−130(日本乳化剤社製)
【0078】
<重合体組成物及び架橋重合体の製造>
[実施例1B]
上記変性共役ジエン系重合体A1を用いて、下記表4に示す配合処方により各成分を配合し、これを混練りすることによって重合体組成物を製造した。混練りは以下の方法で行った。温度制御装置を付属したプラストミル(内容量:250ml)を使用し、まず一段目の混練りとして、充填率72%、回転数60rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体A、ポリブタジエンゴム、伸展油、シリカ、カーボンブラック、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤及び酸化亜鉛を配合して混練りした。次いで、二段目の混練りとして、上記で得た配合物を室温まで冷却後、硫黄及び加硫促進剤を配合し混練りした。これを成型し、160℃で所定時間、加硫プレスにて加硫して、架橋重合体(加硫重合体)を得た。
【0079】
【表4】
【0080】
表4中、各成分について、使用した商品名は以下の通りである。
*1:JSR社製 BR01、*2:ジャパンエナジー社製 JOMOプロセスNC−140、*3:ローディア社製 ZEOSIL 1165MP、*4:三菱化学社製 ダイアブラックN339、*5:エボニック社製 Si75、*6:精工化学社製 オゾノン6C、*7:大内新興化学工業社製 ノクセラーD、*8:大内新興化学工業社製 ノクセラーCZ。
【0081】
[実施例2B〜22B、比較例1B〜5B]
使用する変性共役ジエン系重合体の種類を下記表5〜表8のとおり変更した以外は、上記実施例1Bと同様にして重合体組成物及び架橋重合体を得た。なお、比較例1Bでは、変性共役ジエン系重合体A1の代わりに未変性の共役ジエン系重合体B1を使用した。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
【表8】
【0086】
<評価>
上記実施例1B〜22B及び比較例1B〜5Bのそれぞれの重合体組成物及び架橋重合体について、以下に示すとおりタイヤ性能を表す特性評価を実施した。その評価結果を上記表5〜表8に示す。
(1)ムーニー粘度(配合ムーニー粘度)
加硫前の重合体組成物を測定用試料とし、JIS K6300−1に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。数値が小さいほど加工性が良好であることを示す。
(2)0℃tanδ
架橋重合体を測定用試料とし、ARES−RDA(TA Instruments社製)を使用し、剪断歪0.1%、角速度100ラジアン毎秒、0℃の条件で測定した。測定結果は、末端変性を行っていない実施例1B〜11B及び比較例2Bについては比較例1Bを、末端変性を行った実施例12B〜22B及び比較例4B,5Bについては比較例3Bを100とした指数で示した。数値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が良好であることを示す。
(2)70℃tanδ
架橋重合体を測定用試料とし、ARES−RDA(TA Instruments社製)を使用し、剪断歪1.0%、角速度100ラジアン毎秒、70℃の条件で測定した。測定結果は、末端変性を行っていない実施例1B〜11B及び比較例2Bについては比較例1Bを、末端変性を行った実施例12B〜22B及び比較例4B,5Bについては比較例3Bを100とした指数で示した。数値が大きいほどエネルギーロスが小さく、低ヒステリシスロス特性が良好であることを示す。
【0087】
表5及び表6に示すように、実施例1B〜11Bでは、比較例1B,2Bに比べて、低ヒステリシスロス特性及びウェットスキッド抵抗性がいずれも良好であった。また、表7及び表8に示すように、実施例12B〜22Bでは、比較例3B〜5Bに比べて、低ヒステリシスロス特性及びウェットスキッド抵抗がいずれも良好であった。また、変性剤(第2の化合物)として化合物M、Nを使用したもの(実施例10B,11B,16B,17B,20B,22B)について見ると、相溶化剤(濡れ剤)として十分に高い効果を発現することが分かった。