(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突出部の先端位置は、前記コネクタ端子の前記嵌合穴側への突出方向の先端位置と同じ、または前記コネクタ端子の先端位置から突出している請求項1記載の電気コネクタ。
【背景技術】
【0002】
ハウジングに形成された端子収容室にコネクタ端子が収容される。このコネクタ端子は、端子収容室に形成されたランスに係止することで抜けが抑止される。しかし、電気コネクタは小型化が進んでおり、ランスだけではコネクタ端子の保持力が不足する傾向にある。そこで、ハウジングにリテーナを設け、コネクタ端子を二重係止することで、コネクタ端子の保持力の向上が図られている。
このようなコネクタ端子を二重係止する電気コネクタについて、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の「接続端子の取付構造」は、
図23に示すように、ハウジング1bの後方から前方に向けて設けられた接続端子2bと係合する繁止レバー部材3bと、ハウジング1bの後方から前方に向けて延出され、前方端が斜面を有する自由端9bとなった係止レバー部材8bとにより、接続端子2bを確実に固定するというものである。
【0004】
この「接続端子の取付構造」では、操作者が押し込み部材10bを把持して、係止レバー部材8bの間に挿入することで、押し込み部材10bの押圧端11bが、係止レバー部材8bを外側に拡開して、係止レバー部材8bの自由端9bが接続端子2bの係止爪7bと係合するように構成されている。
【0005】
特許文献2の「端子係止具付き雄コネクタ、雌コネクタ、及び電気コネクタ」は、
図24および
図25に示すように、雄ハウジング本体1020の外周面に周設されたホルダ収容室1022と、端子挿通孔1041を有し、且つホルダ収容室1022内で雄ハウジング本体1020に組み付けられる雌端子ホルダ105Aと、雄ハウジング本体1020側にスライド自在に係合され、端子導入口1034を有し、端子収容室1022内の雌端子102Aの挿入状態を検知する雌端子係止具104Aとを備えた端子係止具付き雄コネクタについて記載されている。
【0006】
この「端子係止具付き雄コネクタ」では、雄ハウジング本体1020の端子収容室1021に収容された雌端子102Aの可撓係止片1012が、端子挿通孔1041内に形成された係合段部1040cに係止(一次係止)されると共に、操作者が操作レバー1036を把持して雌端子係止具104Aをスライドすることにより、雌端子係止具104Aの垂直壁1033と、枠体31の垂直部1031aとが、雌端子102Aの肩部1019に係合して、雌端子102Aが係止(二次係止)される。
【0007】
特許文献3に記載の「コネクタ」は、
図26に示すように、L字型に形成されたサイドリテーナ1130をインナハウジング1120に開口して設けられた開口溝1122内に仮係止位置に嵌めた後、このインナハウジング1120をアウタハウジング1110の嵌合凹部1112内に前方から挿入して、嵌合凹部1112内に設けられたロック突部1113がインナハウジング1120のロック部1126に係合されてインナハウジング1120が取り付けられるというものである。
【0008】
この「コネクタ」では、サイドリテーナ1130を仮係止位置から雄側端子金具111を係合可能な本係止位置に移動させる際には、サイドリテーナ1130の前端に設けられ、嵌合凹部1112内に配される操作部1135を嵌合凹部1112内に挿入した治具などにより押圧することで行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の記載の「接続端子の取付構造」では、電気コネクタの小型化が進むと、ハウジングの嵌合穴が小さくなるため、押し込み部材10bを把持して、係止レバー部材8bの間に挿入することが困難になる。また、押し込み部材10bがハウジング1bに挿入されることで、係止レバー部材8bが接続端子2bの係止爪7bと係合しているため、接続端子2bが引き抜き方向に、強く引かれると、係止レバー部材8bの撓み度合いによっては、接続端子2bへの係止が外れるおそれがある。
また、特許文献2に記載の「端子係止具付き雄コネクタ」でも同様に、電気コネクタの小型化が進むと、操作レバー1036も小さくなるため、操作者が操作レバー1036を把持して雌端子係止具104Aをスライドすることが困難になる。
【0011】
更に、特許文献3に記載の「コネクタ」では、嵌合凹部1112内に挿入した治具などによりサイドリテーナ1130の操作部1135を押圧して、仮係止位置から本係止位置に移動させているが、治具をリテーナに挿入する際に、雄側端子金具111の接触部分やアウタハウジング1110の嵌合凹部1112の内面を傷付けるおそれがある。
【0012】
そこで本発明は、コネクタ端子を確実に係止すると共に、小型化が進んでも、リテーナを操作する際に、コネクタ端子やハウジングに傷付けることなく、確実に操作することができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、コネクタ端子と、前記コネクタ端子が
配置された端子収容室と、嵌合相手の電気コネクタが挿入される嵌合穴と、前記嵌合穴の奥壁に、前記コネクタ端子の挿抜方向と交差する方向に延び
るスライド用溝と
を有するハウジングと、前記端子収容室に
配置された前記コネクタ端子を係止して抜けを防止する突起部
を有し、前記突起部が前記コネクタ端子を係止する前の非ロック位置と、前記非ロック位置から前記スライド用溝に沿ってスライドし、前記突起部が前記コネクタ端子の抜け方向における前方に位置して、前記コネクタ端子を係止するロック位置との切り替えが操作されるリテーナとを備えた、電気コネクタであって、前記リテーナは、前記スライド用溝に収納されて、前記奥壁の位置から奥側に位置する基部と、前記基部から前記嵌合穴の開口部へ向かって突出
した突出部と、を備え、前記基部には、前記突起部と、前記非ロック位置および前記ロック位置を切り替えるリテーナ操作用治具
の挿入
用の操作用穴と
を有し、前記突出
部は、前記操作用穴への前記リテーナ操作用治具の挿入を案内する案内部
を有し、前記案内部は、前記リテーナ操作用治具のための挿入口から前記基部の前記操作用穴まで、前記リテーナ操作用治具の挿入方向に沿って、前記リテーナのスライド方向における一側と他側とに二分する切り欠き部を有する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の電気コネクタによれば、リテーナに形成された突起部が、ロック位置のときには、コネクタ端子の抜け方向における前方に位置して、コネクタ端子を係止するため、確実に、コネクタ端子を係止する。リテーナ操作用治具により操作されるリテーナの基部には、嵌合穴の開口部へ向かって突出した突出部が設けられている。そのため、操作者は、リテーナ操作用治具を、基部の操作用穴へ挿入するときに、突出部の案内部を通じて行えばよい。従って、ハウジングの嵌合穴からリテーナを操作しようとするときに、電気コネクタの小型化が進み、嵌合穴の開口部の間口が狭くても、コネクタ端子のタブ部やハウジングの嵌合穴の内壁面に、操作者の手や、リテーナ操作用治具が接触することを回避することができる。
【0015】
前記案内部には、前記リテーナ操作用治具が挿入される挿入口から前記基部の前記操作用穴まで、前記リテーナ操作用治具の挿入方向に沿って、
前記リテーナのスライド方向における一側と他側とに二分する切り欠き部
を有している。リテーナ操作用治具の強度を確保するために、リテーナ操作用治具を厚みや太さのある形状に形成したとしても、案内部の切り欠き部からリテーナ操作用治具をはみ出させることにより、リテーナの突出部の厚みを薄くすることができる。
【0016】
前記案内部は、前記基部のスライド方向または前記スライド方向と直交する方向における両端部が非対称
を成すことで、前記リテーナ操作用治具が正規の姿勢から、前記スライド方向における一側と他側とが入れ替わる反転姿勢の状態での前記操作用穴への挿入を規制することが望ましい。
リテーナを操作するときに、リテーナ操作用治具が正規な姿勢であれば、操作者は、案内部を通じて操作用穴に、リテーナ操作用治具を挿入することができる。しかし、スライド方向におけるリテーナ操作用治具の両端部が反転するような不正な姿勢では、案内部のスライド方向、またはスライド方向と直交する方向における両端部が非対称であるため、リテーナ操作用治具を案内部に入れることができない。従って、操作者は、リテーナ操作用治具を操作する際に、正規な姿勢か不正な姿勢かを、リテーナ操作用治具を突出部に挿入する段階で認識することができる。
【0017】
前記基
部は、前記リテーナが前記非ロック位置と前記ロック位置とのそれぞれに位置したときに、前記ハウジング
の凸部または凹部と嵌合する凹部または凸部
を有していることが望ましい。リテーナの凸部または凹部と、ハウジングの凹部または凸部とが嵌合するときの振動が、リテーナ操作用治具を介して操作者に伝わったり、嵌合するときの音が、操作者に伝わったりする。従って、操作者は、この振動や嵌合音により、リテーナが目的位置へスライドして、操作が完了したことを認識することができる。
【0018】
前記突出部を前記嵌合穴の開口部から見たときの輪郭の大きさは、スライド方向、またはスライド方向と直交する方向のいずれか一方、または両方が、前記基部より小さ
いことが望ましい。基部に比べて突出部を小さく形成することができるので、嵌合穴の空間が狭い電気コネクタであっても、突出部が基部から突出したリテーナを採用することができる。
【0019】
前記突出部の先端位置は、前記コネクタ端子の前記嵌合穴側への突出方向の先端位置と同じ、または前記コネクタ端子の先端位置から突出していることが望ましい。異物が混入したり、嵌合相手の電気コネクタが傾斜した状態で嵌合穴の奥まで入り込んだりしようとしても、コネクタ端子に接触する前に、突出部が、その接触を阻止する。従って、コネクタ端子や、嵌合相手の電気コネクタのハウジングが、傷付いたり変形したりすることを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電気コネクタは、リテーナ操作用治具により操作されるリテーナの基部に、コネクタ端子を係止する突起部が形成されていると共に、嵌合穴の開口部へ向かって突出した突出部が設けられているため、嵌合穴の開口部の間口が狭くても、コネクタ端子のタブ部やハウジングの嵌合穴の内壁面に、操作者の手や、リテーナ操作用治具が接触することを回避することができる。従って、本発明の電気コネクタは、コネクタ端子を確実に係止すると共に、小型化が進んでも、リテーナを操作する際に、コネクタ端子やハウジングを傷付けることなく、確実に操作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る電気コネクタを図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においての「前後」という表現は、嵌合相手側の電気コネクタに挿入する側を「前」とし、その反対方向を「後」として表現したものである。
【0025】
図1および
図2に示す電気コネクタ10は、防水性を有する電気コネクタである。電気コネクタ10は、コネクタ端子20と、ハウジング30と、リテーナ40とを備えている。
図7から
図10に示すように、コネクタ端子20は、雄型の端子である。コネクタ端子20は、タブ部21と、筒部22と、段差部23と、ワイヤバレル部24と、インシュレーションバレル部25とを備えている。
【0026】
タブ部21は、先端が先鋭な針状に形成されており、嵌合相手の電気コネクタの雌型のコネクタ端子に挿入されて接触する。筒部22は、板材が巻かれるようにして角筒状に形成されている。筒部22には、タブ部21に向うに従って徐々に細くなる先細り部22aが形成されている。リテーナ40と向き合う筒部22の周囲面には、リテーナ40に係止される凸部22bが形成されている。筒部22の後端部には、筒部22を形成する板材が段差部23の開口部23aに向かって垂下するように折り曲げられたランス受け部22cが形成されている。段差部23は、筒部22の軸線と直交する方向の半分が除去されたような形状によって、筒部22との段差が形成されている。
【0027】
ワイヤバレル部24は、配線Wの外皮部材を除去することで露出した芯線を、導通接触した状態で圧着固定するものである。ワイヤバレル部24は、コネクタ端子20の軸線に対して両側に突出した突出片を芯線側に折り曲げることで形成される。インシュレーションバレル部25は、芯線を被覆する外皮部材を、圧着固定するものである。インシュレーションバレル部25は、コネクタ端子20の軸線に対して両側に突出した突出片を芯線側に折り曲げることで形成される。
【0028】
図1および
図2に示すハウジング30は、絶縁性樹脂により形成された成形品である。ハウジング30は、コネクタ端子20が配置される本体部31と、嵌合相手の電気コネクタが挿入される嵌合穴321を囲うように、本体部31の周囲面311が嵌合方向F1に延びるように形成された周囲壁部32とを備えている。
【0029】
図7から
図10に示すように、本体部31には、ハウジング30の後端部からコネクタ端子20が挿入される端子収容室312が形成されている。端子収容室312は、一列に配列された5本を一組として、リテーナ40を挟んで両側に二組配置されたコネクタ端子20に対応させて形成されている。本体部31の端子収容室312の後方には、コネクタ端子20に接続される配線Wと水密的に被覆するパッキン部33が配置されている。
コネクタ端子20が配置される端子収容室312には、コネクタ端子20の後部となるワイヤバレル部24の位置から嵌合穴321に向かって、可撓片313が形成されている。可撓片313には、コネクタ端子20のランス受け部22cに向かって突出するランス313aが形成されている。
【0030】
図2および
図5に示すように、ハウジング30の嵌合穴321における奥壁321aには、コネクタ端子20の挿抜方向F2と交差する方向に延びるようにスライド用溝314が形成されている。
スライド用溝314は、リテーナ40の後述する基部が収納されてスライドする基部用溝314aと、リテーナ40のスライド方向F3における両端部に位置する取付部用溝314bとにより、嵌合穴321側から見たときにH字状に形成されている。
【0031】
図14および
図15に示すように、リテーナ40がスライド用溝314に挿入されて突き当たる基部用溝314aの溝底壁314cには、リテーナ40の挿入位置と、リテーナ40がスライドしたときのロック位置を位置決めする突出壁315が、スライド方向F3における一側S1に形成されている。また、溝底壁314cには、リテーナ40がロック位置または非ロック位置にあるときに、リテーナ40の後述する凸部に嵌合する凹部314d1,凹部314d2が一対形成されている。
取付部用溝314bは、基部用溝314aより溝幅が広く形成されている。また、取付部用溝314bのスライド方向F3の長さは、リテーナ40がロック位置と非ロック位置との間でスライドするスライド幅を有している。
図4に示すように、取付部用溝314bの向き合う溝面のそれぞれには、溝幅を狭める取付用突起部314e(
図4参照)が一対形成されている。
【0032】
図2に示すように、スライド方向F3における一側S1に位置する取付部用溝314bには、取付部用溝314bの開口部314fの一部を閉じる閉鎖部314gが、取付部用溝314bの溝幅が狭くなるように形成されている。閉鎖部314gが、リテーナ40における後述する取付部の挿入位置を規制することで、スライド用溝314に挿入されたリテーナ40を、まずは非ロック位置に挿入させるように、位置決めするものである。
【0033】
図5および
図6に示すように、リテーナ40は、嵌合穴321の奥壁321aに形成されたスライド用溝314に装着される。リテーナ40は、スライド用溝314に収納されて、奥壁321aの位置から奥側に位置する基部410と、基部410から嵌合穴321の開口部321bへ向かって突出して形成された突出部420とを備えている。また、リテーナ40は、リテーナ40をハウジング30に装着する取付部430を備えている。
【0034】
リテーナ40をスライド用溝314に挿入したときに奥側に位置する基部410の後部は、前部より厚みが薄いことで段差ができる薄肉部412が形成されている。
薄肉部412には、コネクタ端子20を係止する突起部413が、コネクタ端子20に対応させて、スライド方向F3に沿って形成されている。
基部410の後端面には、両端部が固定された状態で、両端部の間が可撓する架橋部414aと、架橋部414aから後方に向かって突出した凸部414bとを備えた嵌合凸部414が形成されている。
基部410には、非ロック位置およびロック位置を切り替えるリテーナ操作用治具(後述する)が挿入される操作用穴415が形成されている。
【0035】
突出部420は、板状に形成されている。突出部420は、ハウジング30に装着された状態で、基部410との接続面416に、スライド方向F3における他側S2に寄った位置に設けられている。
突出部420は、操作用穴415へのリテーナ操作用治具の挿入を案内する案内部421が、スライド方向F3における中心位置に形成されている。案内部421には、リテーナ操作用治具が挿入される挿入口421aから、基部410の操作用穴415まで、リテーナ操作用治具の挿入方向F4に沿って、切り欠き部421bが形成されている。
案内部421の円筒状の内壁面を有する貫通孔は、スライド方向F3と直交する直径方向で向き合う内壁面を切り欠き部421bによって取り除くことで、スライド方向F3における一側S1と他側S2とに二分されている。
挿入口421aは、突出部420の先端部に向うに従って開口面積が拡がるように形成されている。
突出部420は、
図2に示すように、嵌合穴321の開口部321bから見たときの輪郭の大きさが、基部410より、スライド方向F3およびスライド方向F3と直交する方向のいずれも、基部410より小さく形成されている。突出部420は、
図18に示すように、コネクタ端子20の嵌合穴321側への突出方向F5の先端と同じ位置となるように形成されている。
【0036】
図4および
図6に示すように取付部430は、基部410の幅方向(スライド方向F3と同じ方向)における両端部に形成されている。取付部430は、基端から先端に向けて間隔が徐々に拡がるV字状の腕部431と、それぞれの腕部431の先端部に、互いが反対方向に向く爪部432が形成されている。
【0037】
ここで、リテーナ40を操作するリテーナ操作用治具について図面に基づいて説明する。
図11および
図12に示すように、リテーナ操作用治具50は、操作棒510と、取手520とを備えている。
操作棒510は、円形棒状に形成されている。操作棒510は、取手520の長手方向の一端面であって、スライド方向F3における一側S1より他側S2に片寄った一端面の位置から垂直に突出している。操作棒510の長さは、リテーナ40の突出部420の先端から、嵌合穴321の開口部321bまでの距離に合わせて形成されている(
図14参照)。
また、操作棒510は、取手520の厚み方向F6の一面側から見たときに、
図12に示すように、リテーナ操作用治具50の操作方向と同じ方向となる、スライド方向F3における取手520の中心位置から他側S2に寄った位置に配置されている。
取手520は、操作棒510の基端に設けられている。取手520は、厚みのある板状に形成されている。操作棒510が突出した側とは反対となる取手520の端面には、操作方向を案内する文字が刻印されている。
【0038】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る電気コネクタの組み立て方法を図面に基づいて説明する。
まず、
図7および
図8に示すように、コネクタ端子20をハウジング30の端子収容室312へ、ハウジング30の後端部から挿入する。コネクタ端子20は、端子収容室312に挿入されるときに、コネクタ端子20の筒部22が、端子収容室312に形成された可撓片313に当接する。
可撓片313のランス313aは、筒部22の先細り部22aの傾斜面に乗って可撓片313が撓み、ランス313aが筒部22を乗り越えると、可撓片313が弾性復帰することでランス313aがランス受け部22cに係止する。
ランス313aがランス受け部22cを係止することで、コネクタ端子20のハウジング30への挿入が完了する。
【0039】
次に、リテーナ40をハウジング30に装着する。
図5に示すように、リテーナ40をハウジング30に装着するときには、リテーナ40の突出部420を、突出部420の厚み方向F7の両側から自動機のチャックで挟み込むことで、スライド用溝314へ挿入することができる。
また、ハウジング30の外で、操作者が、
図11および
図12に示すリテーナ操作用治具50の操作棒510を、
図5に示す案内部421を通じて操作用穴415へ挿入して、取手520を把持して操作棒510でリテーナ40を支持しながら、ハウジング30のスライド用溝314へ挿入することもできる。
【0040】
リテーナ40がスライド用溝314に挿入されると、
図3および
図5に示すように、リテーナ40の基部410が基部用溝314aに入り、取付部430がスライド用溝314の取付部用溝314bに入る。
図4に示すように、取付部430における腕部431の爪部432が、取付部用溝314bの取付用突起部314eに接触することで、腕部431が撓み、爪部432が押し下げられる。
更に、リテーナ40が押し込まれると、爪部432が取付用突起部314eを乗り越えることで、腕部431が弾性復帰して、爪部432が取付用突起部314eに係止される。
【0041】
図2に示すように、スライド用溝314へのリテーナ40の挿入は、閉鎖部314gによって非ロック位置に案内される。非ロック位置でのリテーナ40は、
図7および
図8に示すように、基部410に形成された突起部413と、コネクタ端子20の凸部22bとの位置関係はスライド方向F3にずれている。従って、コネクタ端子20は、ハウジング30のランス313aのみにより係止されており、リテーナ40はコネクタ端子20を係止していない状態である。
また、
図14に示すように、基部410の後端部の嵌合凸部414は、凸部414bがスライド用溝314の溝底壁314cに形成された他側S2の凹部314d2に嵌合している。
【0042】
次に、
図13に示すように、操作者が、リテーナ操作用治具50をリテーナ40に挿入し、操作して、リテーナ40を非ロック位置からロック位置へスライドさせる場合を説明する。
図12に示すように、リテーナ操作用治具50の操作棒510は、取手520の中心位置からずれて配置されている。従って、操作棒510を基準に、取手520における、一側S1の側面521までの距離L1が、他側S2の側面522までの距離L2より長い。そのため、取手520を操作棒510の軸線を中心に180度反転させて、そのままの状態の姿勢の電気コネクタ10(
図1参照)に挿入しようとすると、操作棒510と取手520との相対的な位置関係が変わる。
このように、リテーナ操作用治具50の正規な姿勢とは、リテーナ40を操作するときに、操作棒510が取手520の中心位置から他側S2に寄った位置となるような姿勢である。
【0043】
図14に示すリテーナ操作用治具50が正規な姿勢でリテーナ40に挿入した状態で、操作者がリテーナ操作用治具50を操作して、リテーナ40をスライドF3における他側S2から一側S1へスライドする。この操作により、リテーナ操作用治具50は、非ロック位置からロック位置へ移動することになる。
【0044】
リテーナ40がロック位置となる方向の一側S1にスライド(
図14に示すスライド方向F8)すると、基部410が基部用溝314aの中で移動し、取付部430がスライド用溝314の取付部用溝314bの中で移動することで、リテーナ40がスライド用溝314に沿って移動する。
基部410に形成された嵌合凸部414は、凸部414bが移動することで架橋部414aが撓み、他側S2の凹部314d2から外れる。凸部414bは、溝底壁314cに摺動しながら一側S1の凹部314d1の位置まで移動すると、
図15に示すように、架橋部414aが弾性復帰して、凹部314d1に嵌合する。
このとき、リテーナ操作用治具50の取手520におけるスライド方向F3の一側S1の側面521が、ハウジング30の嵌合穴321の内壁面321cに当接する。
【0045】
図9および
図10に示すように、リテーナ40の突起部413は、コネクタ端子20の凸部22bの抜け方向における前方に位置する。突起部413が凸部22bの抜け方向F9における前方に位置することで、コネクタ端子20を係止する。これにより、電気コネクタ10では、ハウジング30のランス313aによる係止と、リテーナ40の突起部413による係止とにより、コネクタ端子20を二重係止することができる。
【0046】
次に、操作者がリテーナ操作用治具50を操作して、リテーナ40をロック位置から非ロック位置へスライドさせる場合を説明する。
操作者がリテーナ40を非ロック位置にスライドさせ、リテーナ40の突起部413によるコネクタ端子20への係止を解除するときには、リテーナ操作用治具50により、リテーナ40をスライド方向F3における他側S2へスライド(
図15に示すスライド方向F10)させる。
【0047】
リテーナ40がスライド用溝314に沿って他側S2に移動する。
基部410に形成された嵌合凸部414は、凸部414bが一側S1の凹部314d1から外れ、溝底壁314cに摺動しながら、
図14に示すように、他側S2の凹部314d2に嵌合する。
このとき、リテーナ操作用治具50の取手520におけるスライド方向F3の他側S2の側面522が、ハウジング30の嵌合穴321の内壁面321dに当接する。
【0048】
リテーナ40の突起部413は、
図7および
図8に示すように、コネクタ端子20の凸部22bの抜け方向における前方の位置から外れ、リテーナ40の挿入時の位置に戻ることで、リテーナ40の突起部413による係止が解除される。
【0049】
このように、リテーナ操作用治具50により操作されるリテーナ40の基部410に、嵌合穴321の開口部321bへ向かって突出した突出部420が設けられている(
図6参照)。そのため、操作者は、
図14および
図15に示すリテーナ操作用治具50の操作棒510を、基部410の操作用穴415へ挿入して、リテーナ40を操作するときに、突出部420の案内部421を通じて行えばよい。
従って、ハウジング30の嵌合穴321からリテーナ40を挿入するようにしたときに、電気コネクタ10の小型化が進み、嵌合穴321の開口部321bの間口が狭くても、コネクタ端子20のタブ部21やハウジング30の嵌合穴321の内壁面に傷付けることなく、確実に、リテーナ操作用治具50によりリテーナ40を操作することができる。
【0050】
また、リテーナ40を非ロック位置からロック位置へスライドさせるときには、操作者は、取手520を、嵌合穴321の内壁面321cに当接するまでスライドさせれば、リテーナ40を目的位置となるロック位置に配置することができる。また、反対に、リテーナ40をロック位置から非ロック位置へスライドさせるときには、操作者は、取手520を、嵌合穴321の内壁面321dに当接するまでスライドさせれば、リテーナ40を目的位置となる非ロック位置に配置することができる。
従って、操作者は、迷いなくリテーナ操作用治具50を操作することができ、確実にリテーナ40を目的位置に配置させることができる。
このとき、凸部414bが凹部314d1または凹部314d2に嵌合するときの振動が、リテーナ操作用治具50を介して操作者に伝わる。また、凸部414bが凹部314d1または凹部314d2に嵌合するときの音が操作者に伝わる。従って、操作者は、リテーナ操作用治具50を把持した取手520からの振動や、嵌合音により、リテーナ40が目的位置へスライドして、操作が完了したことを認識することができる。
【0051】
また、案内部421には、
図6に示すように、リテーナ操作用治具50が挿入される挿入口421aから、基部410の操作用穴415まで、リテーナ操作用治具50の挿入方向F4に沿って、切り欠き部421bが形成されている。従って、操作棒510の強度を確保するために、操作棒510をある程度の太さに形成したとしても、案内部421の切り欠き部421bから操作棒510をはみ出させることにより、リテーナ40の突出部420の厚みを薄くすることができる。
【0052】
図2に示すように、嵌合穴321の開口部321bから見たときの突出部420の輪郭の大きさが、基部410より小さく形成されている。そのため、嵌合穴321の空間が狭い電気コネクタであっても、基部410に比べて突出部420を小さく形成することができる。従って、突出部420が基部410から突出したリテーナ40を採用することができる。
【0053】
次に、リテーナ操作用治具50を不正な姿勢で操作した場合を説明する。リテーナ操作用治具50の不正な姿勢とは、正規の姿勢から、リテーナ40のスライド方向F3における取手520の両端部が入れ替わる反転姿勢の状態である。
【0054】
まず、リテーナ40が非ロック位置にある場合を説明する。
図16に示すように、リテーナ40が非ロック位置にあるときには、リテーナ40は、
図17に示すロック位置に対して、ハウジング30のスライド方向F3における他側S2に寄っている。
また、
図16に示すリテーナ操作用治具50が反転した不正な姿勢では、リテーナ操作用治具50は、操作棒510を基準に、取手520における、他側S2となる側面521までの距離L1が、一側S1となる側面522までの距離L2より長いため、操作棒510は、ロック位置の状態より、他側S2に寄った位置に配置されている。
【0055】
従って、リテーナ40を非ロック位置からロック位置へスライドさせる際に、操作者がリテーナ操作用治具50を不正な姿勢で、操作棒510をリテーナ40の案内部421に位置を合わせて挿入しようとすると、取手520の他側S2が嵌合穴321の開口縁部321eに当接して、操作棒510による案内部421への挿入が阻止される。
これにより、操作者は、非ロック位置において、リテーナ操作用治具50を不正な姿勢で、リテーナ40を操作しようとしていることが認識できる。なお、
図16においては、取手520の他側S2が、嵌合穴321の他側S2の321dと重なり干渉している状態を示している。
【0056】
次に、リテーナ40がロック位置にある場合を説明する。
図17に示すように、リテーナ40がロック位置にあるときには、リテーナ40は非ロック位置に対して、ハウジング30のスライド方向F3における一側S1に寄っている。そして、リテーナ40の突出部420に形成された案内部421が、嵌合穴321のスライド方向F3におけるほぼ中央に位置している。
この状態で、操作者が、リテーナ操作用治具50を不正な姿勢で、操作棒510をリテーナ40の案内部421に位置を合わせて挿入しようとする。リテーナ操作用治具50を不正な姿勢では、上述したように、操作棒510を基準に、取手520における、他側S2となる側面521までの距離L1が、一側S1となる側面522までの距離L2より長い。そのため、操作棒510は、突出部420の案内部421に挿入できるが、取手520の側面521が嵌合穴321の内壁面321dに当接して、取手520のスライドが規制される。
従って、操作者は、ロック位置において、リテーナ操作用治具50を不正な姿勢で、リテーナ40を操作しようとしていることが認識できる。
【0057】
図18に示すように、ハウジング30の嵌合穴321には、異物が混入したり、嵌合相手の電気コネクタが嵌合方向F1に対して傾斜した状態で嵌合穴321の奥まで入り込んだりする場合がある。しかし、突出部420は、コネクタ端子20の嵌合穴321側への突出方向F5の先端と同じ位置となるように形成されている。そのため、リテーナ40の突出部420が、異物の混入や、傾斜した状態の嵌合相手のハウジングの挿入を、コネクタ端子20に接触する前に阻止する。従って、コネクタ端子20のタブ部21が、傷付いたり変形したりすることを防止することができる。
なお、
図18に示す突出部420は、タブ部21より更に嵌合穴321側へ突出するように形成されていてもよい。異物や嵌合相手の電気コネクタが、タブ部21より先に突出部420に接触するため、タブ部21が変形したり、嵌合相手の電気コネクタのハウジングが傷付いたりすること防止することができる。
【0058】
また、ハウジング30とリテーナ40とは、ハウジング30に形成された凹部314d1,314d2と、リテーナ40に形成された嵌合凸部414の凸部414bとが嵌合している。しかし、その反対に、ハウジング30側が凸部、リテーナ40側が凹部としてもよい。
【0059】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る電気コネクタを図面に基づいて説明する。なお、
図19から
図22においては、
図6と、
図11および
図12と同じ構成のものは同符号を付して説明する省略する。
本実施の形態2に係る電気コネクタは、リテーナの案内部が、スライド方向またはスライド方向と直交する方向における両端部が非対称に形成されていることを特徴とするものである。
【0060】
図19および
図20に示すリテーナ41は、基部410における操作用穴417と、突出部420における案内部423とが、
図21および
図22に示すリテーナ操作用治具51の操作棒511の挿入方向F4に沿って形成されている。
操作用穴417は、挿入方向F4から見て、矩形状穴の一側S1における端部の一部が矩形状穴の幅を拡げるように形成されている。
案内部423は、操作用穴417と連続して形成されている。案内部423は、突出部420の厚み方向F7で向き合う矩形穴の対向面において、一面側の一部を残す切り欠き部423aが形成されている。
このように、操作用穴417および案内部423が形成されていることで、スライド方向F3における両端部が非対称に形成されている。
【0061】
リテーナ操作用治具51の操作棒511は、この操作用穴417と案内部423との形状に合わせて形成されている。操作棒511は、角棒状の棒本体511aと、棒本体511aの一側S1における端部の一部に、棒本体511aの幅を拡げるように形成されたキー部511bとを備えている。
【0062】
リテーナ41を操作するときに、リテーナ操作用治具51が正規な姿勢であれば、操作者は、案内部423を通じて操作用穴417に、操作棒511を挿入することができる。
しかし、リテーナ操作用治具51を不正な姿勢で、操作棒511を案内部423に挿入しようとしても、案内部423はスライド方向F3における両端部が非対称に形成されているため、キー部511bが突出部420の前面に当接して案内部423に入らない。
従って、操作者は、リテーナ操作用治具51が正規の姿勢であるのか、不正の姿勢であるかが、突出部420に挿入する段階で認識することができる。
【0063】
なお、本実施の形態2では、スライド方向F3における案内部423の両端部が非対称に形成されていたが、案内部は、
図19に示すスライド方向F3と直交する方向(厚み方向F7)における両端部が非対称に形成されていてもよい。そのように案内部が形成されていることで、リテーナ操作用治具がスライド方向F3における一側S1と他側S2とが入れ替わる不正な姿勢で操作棒を案内部に挿入しようとしても、操作用穴への挿入を規制することができる。
【課題】コネクタ端子を確実に係止すると共に、小型化が進んでも、リテーナを操作する際に、コネクタ端子やハウジングに傷付けることなく、確実に操作することができる電気コネクタを提供する。
【解決手段】電気コネクタ10は、コネクタ端子20と、スライド用溝314が形成されたハウジング30と、非ロック位置からロック位置へスライドすることで、コネクタ端子20を係止して抜けを防止するリテーナ40を備えている。リテーナ40は、スライド用溝314に収納されて、奥壁321aの位置から奥側に位置する基部410と、基部410から嵌合穴321の開口部321bへ向かって突出した突出部420とを備えている。基部410には、ロック位置とロック位置とを切り替えるリテーナ操作用治具が挿入される操作用穴が形成されている。突出部には、操作用穴へのリテーナ操作用治具の挿入を案内する案内部が形成されている。