(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のコネクタ端子では、係止片4a,4bの先端面に、V字溝5a,5bが形成されているため、係止片4a,4bの先端は極度に厚みが細くなっており、ハウジングへの食い込み量が小さい。従って、係止片4a,4bのハウジングに対する保持力が弱く、コネクタ端子に過度な引き抜きの力が作用すると、コネクタ端子が引き抜かれるおそれがある。
【0007】
例えば、
図22に示すように、角棒状の棒状部材B0の軸線周りに形成される凹部20を、溝底部の角度が90度となるV字溝とする。そうすることにより、係止部310の厚みが凹部20の溝底20aから開口部20bまで同じ厚みとなり、係止部310にハウジングへの十分な食い込み量を確保させることができるので、コネクタ端子の突起片311に十分な保持力を付与することができる。
【0008】
しかし、このような係止部310を形成するために、先端部の角度が90度のパンチで、外周面にめっきが施された棒状部材の周囲面を押圧すると、パンチの先端が棒状部材に食い込む際にめっきが捲れ剥がれる。そして、パンチの押圧が進むと、先細り形状のパンチが深く棒状部材に入り込み、凹部20を押し拡げながら徐々にめっきを剥がすので、パンチにめっきカスが蓄積してしまう。
従って、パンチにより、数多くの棒状部材に凹部を形成してコネクタ端子を製造すると、パンチの傾斜面にめっきが大量に蓄積するおそれがあるため、パンチの清掃が必要となる。パンチの清掃を行うときには、コネクタ端子の製造が停止することになる。
【0009】
また、パンチに蓄積しためっきカスは、パンチの先端部から基端側へ傾斜面に沿って徐々に集積される。従って、めっきカスは、パンチの基端側で、コネクタ端子の長さ方向に沿って、細長い紐状となる。この紐状のめっきカスがコネクタ端子の凹部に付着すると、コネクタ端子のハウジングへの貫入に伴って、めっきカスが、貫入部分となる凹部から、露出部分に移動する。
そうなると、紐状のめっきカスが、隣接するコネクタ端子同士の間で跨がり、コネクタ端子を短絡させてしまう。
【0010】
先端部の角度が90度より大きいパンチで凹部を形成すれば、パンチがめっきを押さえ付けるように押圧するため、めっきの剥がれを抑制することができる。例えば、先端部の角度が120度のパンチにより、棒状部材B0の軸線周りに凹部を形成する。しかし、この場合では、係止部320(破線にて表示)の厚みが、溝底から開口部に向うに従って、徐々に細くなってしまい、係止部320によるハウジングへの保持力の低下を招いてしまう。
【0011】
そこで本発明は、パンチへのめっきカスの蓄積を抑制しつつ、係止部の保持力を維持することができるコネクタ端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電気コネクタのハウジングに貫入されるコネクタ端子であり、外周面にめっきが施された導電性の棒状部材における軸線周りに、複数の凹部
を有し、前記凹部の向き合う内壁面同士の間隔が底部から開口部に向かって拡が
り、前記複数の凹部のうち、前記棒状部材の軸線周りにて隣り合う前記凹部同士の間が前記ハウジングに係止されるコネクタ端子であって、前記凹部の内壁面と直交する前記凹部の断面形状において、前記凹部の最深部への深さ方向の直線を仮想基準線としたときに、前記底部
となる第1面は、前記仮想基準線との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲
であり、前記凹部の内壁面には、
前記第1面に続く第2面および第3面が交互に
連続しており、前記第2面は、前記仮想基準線との成す角度が、0度以上、45度以下となる範囲の平面
であり、前記第3面は、前記仮想基準線との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲の平面
である、コネクタ端子とすることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のコネクタ端子は、導電性の棒状部材における軸線周りに、複数の凹部が形成されている。そして、複数の凹部のうち、棒状部材の軸線周りにて隣り合う凹部同士の間がハウジングに係止される。
この凹部の最深部への深さ方向の直線を仮想基準線としたときに、第1面は、仮想基準線との成す角度が45度より大きく、90度以下となる範囲に形成されている。そうすることで、第1面を緩やかな傾斜面により形成することができる。従って、第1面を、めっきが剥がれることなく、めっきが押さえ込まれた面とすることができる。また、第2面は、仮想基準線との成す角度が0度以上、45度以下となる範囲の平面である。そのため、第2面は、第1面より急な傾斜面とすることができるため、凹部同士の間の細りを抑えることができる。しかし、第2面は急な傾斜面であるため、めっきが薄く延びたり、剥がれたりするおそれがある。次の第3面では、仮想基準線との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲の平面で、緩やかな平面である。そのため、第3面ではめっきが押さえ込まれた面とすることができるので、第2面でのめっきの剥がれの連続性を断ち切ることができる。従って、凹部を形成するためのパンチに、削れためっきが多く蓄積することを防止することができる。また、第1面と第3面とが緩やかな傾斜面であっても、第2面は急な傾斜面によって形成されているため、棒状部材の軸線周りにて隣り合う凹部同士の間で、凹部の底部から開口部側に渡って十分な厚みを確保することができる。
また、第1面に続く面は、第2面であるため、めっきを押さえ付けられた第1面および第3面と、めっきが薄く引き伸ばされ、深く棒状部材に深く入り込んだ第2面とを交互に配置することができる。
【0014】
前記第1面は、凹状の円弧面、前記仮想基準線との成す角度が90度となる平面、または前記仮想基準線に対して傾斜した平面のいずれか
であることが望ましい。第1面が仮想基準線との成す角度が90度となる平面とすることで、第1面をめっきは剥がれることなく真っ直ぐ押し込まれた状態の面とすることができる。
【0015】
前記凹部の向き合う内壁面は、前記棒状部材の長さ方向に沿っ
ていることが望ましい。
内壁面が棒状部材の長さ方向に沿って形成されていることで、パンチが棒状部材を押圧して凹部を形成するときに、棒状部材の長さ方向と直交する方向に剥がれることで発生するめっきカスを抑止することができる。
【0017】
前記第2面の傾斜方向の長さが、前記第3面の傾斜方向の長さより、短
いことが望ましい。これにより、第2面がめっきを薄く引き伸ばす、またはめっきを剥がす長さを短いものとすることができる。
【0018】
前記棒状部材は、多角形断面を有し、
前記凹部は、前記棒状部材における軸線周りの各面に
位置していることが望ましい。棒状部材に均等に凹部を形成することができるため、パンチによる押圧力で棒状部材が軸線を中心に回転してしまうことを抑えることができる。
【0019】
前記棒状部材は、円形断面を有し、前記凹部は、前記棒状部材の軸線から半径方向に向かっ
ていることが望ましい。円形断面を有する棒状部材に凹部を形成する際に、凹部を棒状部材の軸線から半径方向に向かって形成することによっても、パンチによる押圧を力で棒状部材が軸線を中心に回転してしまうことを抑えることができる。
【0020】
前記凹部は、円周を等分割した位置に
あることが望ましい。そうすることで、凹部を均等に棒状部材に形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコネクタ端子は、第1面より急な平面で、めっきが薄く延びたり、剥がれたりしても、次の第3面ではめっきが押さえ込まれた面とすることができるので、第2面から引き続いてめっきが剥がれない。従って、凹部を形成するためのパンチに、削れためっきが多く蓄積することを防止することができる。
また、本発明のコネクタ端子は、棒状部材の軸線周りにて隣り合う凹部同士の間で、凹部の底部から開口部側に渡って十分な厚みを確保することができる。
よって、本発明のコネクタ端子は、パンチへのめっきカスの蓄積を抑制しつつ、係止部の保持力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るコネクタ端子を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すコネクタ端子の係止領域に形成された凹部を開口部側から見た図である。
【
図3】
図2に示す凹部のIII−III線断面図である。
【
図4】
図1に示すコネクタ端子の製造方法を説明するための図であり、棒状部材の周囲にパンチを配置した状態の断面図である。
【
図5A】パンチの第1面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の断面図である。
【
図5B】
図5Aに示すパンチによる押圧部分の一部拡大断面図である。
【
図6A】
図5Aに続いて、パンチの第2面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の断面図である。
【
図6B】
図6Aに示すパンチによる押圧部分の一部拡大断面図である。
【
図7】パンチによる棒状部材への押圧が完了した状態の断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態2に係るコネクタ端子の軸線と直交する断面図である。
【
図9】パンチの第1面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の断面図である。
【
図10A】
図9に示すパンチの第1面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の一部拡大断面図である。
【
図10B】
図10Aに続いて、パンチの第2面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の一部拡大断面図である。
【
図10C】
図10Bに続いて、パンチの第3面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の一部拡大断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態3に係るコネクタ端子の軸線と直交する断面図である。
【
図12】パンチの第1面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の断面図である。
【
図13A】
図12に示すパンチの第1面が棒状部材のめっきに当接した状態の一部拡大断面図である。
【
図13B】
図13Aに続いて、パンチの第2面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の一部拡大断面図である。
【
図13C】
図13Bに続いて、パンチの第3面が棒状部材のめっきを押さえ込んだ状態の一部拡大断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態4に係るコネクタ端子を示す斜視図である。
【
図15】
図14に示すコネクタ端子の係止領域に形成された凹部を開口部側から見た図である。
【
図17】
図15に示す凹部のXVII−XVII線断面図である。
【
図18A】円形断面を有する棒状部材の周囲にパンチを配置した状態の断面図である。
【
図19】凹部の内壁面が仮想基準線を中心に非対称である状態を説明するための断面図である。
【
図20】特許文献1に記載のコネクタ端子を示す斜視図である。
【
図21】
図20に示すコネクタ端子の係止部の拡大斜視図である。
【
図22】従来の他のコネクタ端子の軸線と直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るコネクタ端子を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コネクタ端子11は、ハウジング(図示せず)に貫入されることで、電気コネクタとしてプリント配線基板(図示せず)に実装される雄型の端子である。
コネクタ端子11は、外周面にめっきが施された導電性の棒状部材により形成されている。
図1に示すコネクタ端子11では、棒状部材を角棒状の金属棒としている。
【0024】
コネクタ端子11は、棒状部材の長さ方向F1において、接続相手となる雌型のコネクタ端子と接触する接触領域A1と、プリント配線基板のスルーホールに挿入される実装領域A2と、接触領域A1および実装領域A2の間に形成された所定の長さを有する少なくとも一つの係止領域とを有している。本実施の形態1では、棒状部材の長さ方向F1に沿って2ヵ所に係止領域A3が形成されている。
【0025】
係止領域A3には、棒状部材における軸線L1周りに、複数の凹部21が形成されている。
図1に示すコネクタ端子11を形成する棒状部材は、角棒状で、正方形状の断面を有している。そのため、棒状部材における軸線L1周りの各面に凹部21が形成されていることで、凹部21は4つ形成されている。
複数の凹部21のうち、棒状部材の軸線L1周りにて隣り合う凹部21同士の間には、係止部30が形成されている。係止部30の頂部には、軸線L1方向から見た接触領域A1や実装領域A2の輪郭から突出した突起部31が形成される。
【0026】
凹部21の向き合う内壁面のうち、長さ方向F1に沿って形成された内壁面210は、その間隔が、底部211から開口部212に向かって拡がるように形成されている。また、長さ方向F1と直交する方向に形成された凹部21の内壁面300は、軸線L1に直交する平行面により形成されている。内壁面210には、連続する段差部が形成されている。
【0027】
ここで、内壁面210に形成された連続する段差部について詳細に説明する。
図2および
図3に示すように内壁面210には、底部211を形成する第1面S11と、第1面S11に続いて交互に形成された第2面S12および第3面S13とを備えている。
まず、
図3に示す凹部21の内壁面210と直交する凹部21の断面形状において、凹部21の最深部への深さ方向F2の直線を仮想基準線L2とする。
図3に示す内壁面210では、最深部は溝底213となる。なお、凹部21は、向き合う内壁面210が仮想基準線L2を対称軸として対称で、深さ方向F2が軸線L1に向かって形成されているため、仮想基準線L2は軸線L1を通過する。
【0028】
第1面S11は、仮想基準線L2との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲に形成されている。
図3に示す第1面S11は、仮想基準線L2との成す角度が60度に傾斜した平面である。
第2面S12は、仮想基準線L2との成す角度が、0度以上、45度以下となる範囲の平面に形成されている。
図3に示す第2面S12は、仮想基準線L2との成す角度が15度に傾斜した平面である。
第3面S13は、仮想基準線L2との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲の平面に形成されている。
図3に示す第3面S13は、仮想基準線L2との成す角度が60度に傾斜した平面である。
また、第2面S12の傾斜方向の長さが、第1面S11と第3面S13との傾斜方向の長さより、短く形成されている。
【0029】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係るコネクタ端子11の製造方法について図面に基づいて説明する。
図4に示すように、角棒状の棒状部材B1における軸線L1周りの各面に対向するように、先細り形状を成す4個のパンチ41が配置されている。ここで、パンチ41の形状について、詳細に説明する。
【0030】
パンチ41は、棒状部材B1の長さ方向F1に沿って形成されると共に、先端部41aから基端部41bに向かって拡がるように延びる傾斜面411のそれぞれに、
図3に示す凹部21の内壁面210に対応する段差部が形成されている。また、パンチ41は、長さ方向F1と直交する方向に沿って形成された一対の端面412を有している。この一対の端面412は、棒状部材B1の軸線L1に直交する平行面である。
【0031】
傾斜面411に形成された段差部は、先端部41aから第1面S111と、第1面S111に続いて交互に形成された第2面S112および第3面S113とを備えている。
第1面S111は、凹部21の第1面S11(
図3参照)に対応する。同様に、第2面S112は、凹部21の第2面S12に対応し、第3面S113は、凹部21の第3面S13に対応する。
この第1面S111から第3面S113は、パンチ41の先端部41aの角度を二等分する二等分線を仮想基準線L3として、凹部21の第1面S11〜第3面S13と同様にして規定された面である。
【0032】
このようなパンチ41を用いて、
図5Aおよび
図5Bに示すように棒状部材B1の軸線L1に向かって先端部41aを、棒状部材B1における軸線L1周りの各面に対して仮想基準線L3が垂直となるように当接して、めっきP1に押圧する。そうすることで、パンチ41の仮想基準線L3と、凹部21に設定した仮想基準線L2とが重なる。
【0033】
パンチ41の先端部41aに形成された第1面S111は、仮想基準線L3との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲に形成された面である。特に、パンチ41の第1面S111では、仮想基準線L3との成す角度が60度に傾斜した平面に形成されている。そのため、パンチ41の先端部41aが棒状部材B1に入り込むと、めっきP1が剥がれずに押し込まれる。
【0034】
次に、
図6Aおよび
図6Bに示すようにパンチ41の第2面S112が、棒状部材B1のめっきP1を押圧する。仮想基準線L3との成す角度が、0度以上、45度以下となる範囲の平面に形成されている。パンチ41の第2面S112では、仮想基準線L3との成す角度が15度に傾斜した平面に形成されている。そのため、第2面S112がめっきP1を押圧すると、パンチ41の第2面S112が棒状部材B1に深く入り込む。
第2面S12は、第1面S11より急な傾斜面となるので、凹部21同士の間の係止部30が細くなることを抑えることができる。
パンチ41の第2面S112が棒状部材B1に深く入り込むことで、第1面S111により押し込まれためっきP1からの続きが断ち切られ、剥がれることがある。剥がれめっきP1は、第2面S112が棒状部材B1に入り込む間だけ蓄積する。従って、パンチ41の傾斜面411全体に亘って蓄積しないので、第2面S112により蓄積されるめっきP1のカスを僅かな量とすることができる。
【0035】
次に、パンチ41の第3面S113が、棒状部材B1のめっきP1を押圧する。仮想基準線L3との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲に形成された面である。パンチ41の第3面S113では、仮想基準線L3との成す角度が60度に傾斜した平面に形成されている。そのため、第3面S113がめっきP1を押圧すると、第3面S113が、めっきP1が剥がれずに押し込まれる。従って、第3面S13では、第2面S12でのめっきの剥がれの連続性を断ち切ることができる。
【0036】
第3面S113の押圧の次には、第2面S112が棒状部材B1を押圧する。これが順次繰り返されることで、
図7に示すように、棒状部材B1に凹部21が形成される。そして、凹部21の内壁面210に、パンチ41の第1面S111に対応する第1面S11、第2面S112に対応する第2面S12、第3面S113に対応する第3面S13が形成される。
【0037】
このように、凹部21の内壁面210が、第1面S11から第3面S13により形成されている。そうすることで、まず、第1面S11が緩やかな傾斜面により形成されていることで、めっきP1が剥がれることなく、めっきが押さえ込まれた面とすることができる。また、第2面S12が第1面S11より急な傾斜面で、めっきP1が薄く延びたり、剥がれたりしても、次の第3面S13では、めっきP1が押さえ込まれているため、第2面S12から引き続いてめっきP1が剥がれていない。そのため、パンチ41の傾斜面411には、削れためっきP1が多く蓄積することを防止することができる。従って、パンチ41を頻繁に清掃しなくてもよい。
【0038】
また、第1面S11と第3面S13とが緩やかな傾斜面であっても、第2面S12は急な傾斜面によって形成されている。そのため、棒状部材B1の軸線l1周りにて隣り合う凹部21同士の間の係止部30に十分な厚みを確保させることができ、ハウジングに十分に食い込ませることができる。従って、係止部30の頂部で過度に細くなり、保持力が低下することを防止することができる。
【0039】
特に、第1面S11に続く第2面S12の開口部212側の端辺と、第3面S13に続く第2面S12の開口部212側の端辺とが、仮想基準線L2との成す角度が45度となる直線状に位置すれば、係止部30を底部211から開口部212まで細らせることなく形成することができる。
【0040】
従って、コネクタ端子11は、パンチ41へのめっきカスの蓄積を抑制しつつ、係止部の保持力を維持することができる。よって、パンチ41のメンテナンス回数を抑えることができるため、コネクタ端子11を効率よく製造することができる。また、パンチ41へのめっきカスの蓄積が抑制できるため、コネクタ端子11をハウジングに貫入する際に、めっきカスによりコネクタ端子11同士が短絡することを防止することができる。従って、コネクタ端子11は、高い信頼性を図ることができる。
【0041】
また、第2面S12の傾斜方向の長さが、第3面S13の傾斜方向の長さより、短く形成されているため、第2面S12がめっきP1を薄く引き伸ばす、またはめっきP1を剥がす長さを短いものとすることができる。
【0042】
また、本実施の形態1では、内壁面210が棒状部材B1の長さ方向に沿って形成されていることで、パンチ41が棒状部材B1を押圧して凹部21を形成するときに、棒状部材B1の長さ方向F1と直交する方向に剥がれ、発生するめっきカスを抑止することができる。
【0043】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るコネクタ端子を図面に基づいて説明する。
本実施の形態2に係るコネクタ端子は、第1面が凹状の円弧面に形成されていることを特徴とするものである。
【0044】
図8に示すように、コネクタ端子12の凹部22には、内壁面220の底部221となる第1面S21が形成されている。この第1面S21について詳細に説明する。
実施の形態1と同様に、凹部22の内壁面220と直交する凹部22の断面形状において、凹部22の最深部への深さ方向F2の直線を仮想基準線L2とする。
図8に示す内壁面220では、最深部は溝底223となる。なお、凹部22は、向き合う内壁面220が仮想基準線L2を対称軸として対称で、深さ方向F2が軸線L1に向かって形成されているため、仮想基準線L2は軸線L1を通過する。
【0045】
第1面S21は、仮想基準線L2との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲に形成された凹状の円弧面である。
第1面S21には、実施の形態1と同様に、第2面S12が続いている。第2面S12には、第3面S13が続いている。そして、凹部22の開口部222に向かって、第2面S12と第3面S13とが交互に形成されている。
【0046】
このような凹部22は、
図9に示すパンチ42によって形成される。
パンチ42には、凹部22の第1面S21に対応する第1面S121が形成されている。この第1面S121は、パンチ42の先端部42aの角度を二等分する二等分線を仮想基準線L3としたときに、この仮想基準線L3との成す角度が、45度より大きく、90度以下となる範囲に形成された凸状の円弧面である。なお、第1面S121は凸状の円弧面であるため、仮想基準線L3は先端部42aに接する接線の垂直二等分線である。
【0047】
このようなパンチ42を用いて、棒状部材B1の軸線L1に向かって先端部42aを、棒状部材B1における軸線L1周りの各面に対して仮想基準線L3が垂直となるように当接して、めっきP1に押圧する。そうすることで、パンチ42の仮想基準線L3と、凹部22に設定した仮想基準線L2とが重なる。
【0048】
図10Aに示すように、パンチ42の先端部42aに形成された第1面S121は、凸状の円弧面である。そのため、パンチ42の先端、つまり、
図8に示す凹部22の溝底223となる位置を微視的に見ると平面であるため、棒状部材B1に入り込むと、めっきP1が剥がれずに押し込まれる。また、パンチ42の先端の平面部分から第2面S112に至る前までの曲面も、仮想基準線L2との成す角度が45度より大きく、90度以下となる範囲に形成された凸状の円弧面であるため、緩やかにめっきP1を押さえ付ける。従って、めっきP1が剥がれることなく押し込まれ、凹部22の第1面S21が形成される。
【0049】
次に、
図10Bに示すようにパンチ42の第2面S112が、棒状部材B1のめっきP1を押圧して、凹部22の第2面S12が形成され、更には、
図10Cに示すようにパンチ42の第3面S113が、棒状部材B1のめっきP1を押圧して、第3面S13が形成される。
【0050】
このようにして、第1面S21を凹状の円弧面に形成することで、第1面S21のめっきP1の剥がれを抑止することができ、パンチ42にめっきが付着することを抑えることができる。従って、パンチ42のメンテナンス回数を抑えることができる。また、めっきカスによりコネクタ端子12同士が短絡することを防止することができる。
【0051】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係るコネクタ端子を図面に基づいて説明する。
本実施の形態3に係るコネクタ端子は、第1面が仮想基準線との成す角度が90度となる平面に形成されていることを特徴とするものである。
【0052】
図11に示すように、コネクタ端子13の凹部23には、内壁面230の底部231となる第1面S31が形成されている。この第1面S31について詳細に説明する。
実施の形態1,2と同様に、凹部23の内壁面230と直交する凹部23の断面形状において、凹部23の最深部への深さ方向F2の直線を仮想基準線L2とする。
図11に示す内壁面230では、最深部は溝底233となる。
第1面S31は、仮想基準線L2との成す角度が90度となる平面である。なお、
図8では、仮想基準線L2が軸線L1を通過しているように設定されているが、第1面S21は深さが一定な平面であるため、仮想基準線L2は、軸線L1から平行にずれていてもよい。
【0053】
第1面S31には、実施の形態1,2と同様に、第2面S12が続いている。第2面S12には、第3面S13が続いている。そして、凹部23の開口部232に向かって、第2面S12と第3面S13とが交互に形成されている。
【0054】
このような凹部23は、
図12に示すパンチ43によって形成される。
パンチ43には、凹部23の第1面S31に対応する第1面S131が形成されている。この第1面S131は、パンチ43の先端部43aの角度を二等分する二等分線である仮想基準線L3との成す角度が90度となる平面である。なお、第1面S131は平面であるため、仮想基準線L3はパンチ43の先端面の垂直二等分線である。
【0055】
このようなパンチ43を用いて、
図13Aに示すように、棒状部材B1の軸線L1に向かって先端部43aを、棒状部材B1における軸線L1周りの各面に対して仮想基準線L3が垂直となるように当接してめっきP1に押圧する。
第1面S131は、平面である。そのため、パンチ43の第1面S131が棒状部材B1に入り込むと、めっきP1が剥がれずに真っ直ぐ押し込まれ、凹部23の第1面S31が形成される。
次に、
図13Bに示すように、パンチ43の第2面S112が、棒状部材B1のめっきP1を押圧して、凹部23の第2面S12が形成され、更には、
図13Cに示すようにパンチ43の第3面S113が、棒状部材B1のめっきP1を押圧して、第3面S13が形成される。
【0056】
このようにして、第1面S31を平面に形成することで、第1面S31のめっきP1の剥がれを抑止することができ、パンチ43にめっきカスが付着することを抑えることができる。従って、パンチ42のメンテナンス回数を抑えることができる。また、めっきカスによりコネクタ端子13同士が短絡することを防止することができる。
【0057】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係るコネクタ端子を図面に基づいて説明する。
本実施の形態4に係るコネクタ端子は、棒状部材の長さ方向に沿って形成された内壁面だけでなく、長さ方向に直交する方向に沿って形成された内壁面にも段差部が形成されていることを特徴とするものである。
【0058】
コネクタ端子14の凹部24は、棒状部材の長さ方向F1に直交する方向で向き合い、長さ方向F1に沿って形成された内壁面210に、実施の形態1と同様に、第1面S11から第3面S13が形成されている。
また、長さ方向F1で向き合い、長さ方向F1に直交する方向に沿って形成された内壁面240は、その間隔が、底部241から開口部242に向かって拡がるように形成されている。内壁面240には、内壁面210と同様に、第1面S11から第3面S13により段差部が形成されている。
内壁面240に形成された第1面S11から第3面S13は、実施の形態1にて、内壁面210における第1面S11から第3面S13に規定した条件と同じである。
【0059】
このように内壁面210と内壁面240とに、第1面S11から第3面S13が形成されていることで、パンチにより凹部24の内壁面210を形成するときに、長さ方向F1に直交する方向へのめっきP1の剥がれを抑えると共に、パンチにより内壁面240を形成するときに、長さ方向F1へのめっきP1の剥がれを抑えることができる。従って、更に、パンチにめっきカスが付着することを抑えることができるので、パンチのメンテナンス回数を抑えることができる。また、めっきカスによりコネクタ端子14同士が短絡することを防止することができる。
【0060】
本実施の形態4に係るコネクタ端子14では、内壁面210の第1面S11は、
図17に示すように仮想基準線L2に対して傾斜した平面に形成されている。しかし、内壁面210の第1面は、実施の形態2に係る内壁面220の第1面S21(
図8参照)のように凹状の円弧面としたり、実施の形態3に係る内壁面230の第1面S31(
図11参照)のように仮想基準線L2との成す角度が90度となる平面としたりすることができる。
このとき、内壁面240は、
図17に示す仮想基準線L2に対して傾斜した平面(第1面S11)としたり、
図8に示す凹状の円弧面(第1面S21)したり、
図11に示す仮想基準線L2との成す角度が90度となる平面(第1面S31)としたりして、内壁面210〜230の第1面S11〜S31と組み合わせることができる。
【0061】
実施の形態1〜4では、第1面S11〜S31に続く面が、第2面S12であったが、仮想基準線L2との成す角度によって示される条件が第2面S12と異なる第3面S13を含む平面であったり、円弧面であったりしてもよい。実施の形態1〜4では、第1面S11〜S31に続いて第2面S12を配置しているため、めっきP1が押さえ付けられた第1面S11〜S31および第3面S13と、めっきが薄く引き伸ばされて、深く棒状部材B1に深く入り込んだ第2面S12とを交互に配置することができる。そのため、各面を好ましい配置とすることができる。
【0062】
また、実施の形態1〜4では、棒状部材B1の長さ方向F1と直交する断面が四角形の棒状部材であったが、三角形としたり、五角形以上としたり、多角形断面を有する棒状部材とすることができる。このとき、パンチを軸線周りの各面に押圧して凹部を形成することにより、棒状部材に均等に凹部21〜24を形成することができるため、パンチによる押圧力で棒状部材が軸線L1を中心に回転してしまうことを抑えることができる。
【0063】
また、
図18Aに示すように棒状部材B2を、円形断面を有するものとすることができる。なお、
図18Aおよび
図18Bにおいては、パンチ44に形成された第1面から第3面による連続する段差部と、棒状部材B2におけるめっきとは、省略している。
この場合、
図18Bに示す凹部25が、棒状部材B2の軸線L1から半径方向F3に向かって形成されていることで、パンチ44による押圧力で、棒状部材が軸線L1を中心に回転してしまうことを抑えることができる。また、凹部25が、円周を等分割した位置に形成されていることで、凹部25を均等に棒状部材B2に形成することができる。
【0064】
更に、実施の形態1〜4では、凹部21〜24は、仮想基準線L2を対称軸とした線対称に形成されていたが、
図19に示すように凹部26は、内壁面251が緩やかな傾斜面であるのに比べ、内壁面252は急な傾斜面であるため、非対称である。しかし、凹部26の最深部(溝底263)への深さ方向F2の直線を仮想基準線L2とすることで、第1面S11〜第3面S13を規定することができる。
【解決手段】棒状部材に形成されるコネクタ端子11は、隣り合う凹部21同士の間が、電気コネクタのハウジングに係止される。凹部21の内壁面210は、仮想基準線L2との成す角度が、60度に形成された第1面S11と、第1面S11に続き交互に形成され、15度に形成された第2面S12、および60度に形成された第3面S13とを備えている。第1面S11は、めっきが剥がれることなく押さえ込まれた面とすることができる。第2面S12は、深く掘り下げることができる。第2面S12にて、めっきが薄く延びたり、剥がれたりしても、次の第3面S13では、めっきが押さえ込まれた面とすることができる。従って、凹部を形成するためのパンチに、削れためっきが多く蓄積することを防止することができる。