(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板の所定の面に電子部品をはんだ付けする場合に、噴流はんだ付け装置が使用される場合が多い。噴流はんだ付け装置には噴流装置が実装され、プリント基板のはんだ付け面に向けて溶融はんだを噴流する。噴流装置は特許文献1〜3に見られるように、ダクト、ノズル及びポンプを有している。
【0003】
これらの噴流装置によれば、ポンプによって溶融はんだがダクトを介してノズルに送出される。ノズルはポンプ出力に対応した液面高さの溶融はんだを噴出する。これにより、ノズルから噴出される溶融はんだによってプリント基板に電子部品をはんだ付けできるようになる。
【0004】
上述の噴流装置に実装されるポンプに関しては、スクリューポンプを覆うポンプハウジングにダクトを接続し、ポンプハウジングからダクトへ溶融はんだを送出する噴流はんだ装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1によれば、ノズル側板間に一対の回動軸が設けられ、この回動軸の各々にノズルが取り付けられる。回動軸を駆動することで、ノズルの開口幅を可変できるようにした。このようにすると、プリント基板に対応して搬送速度が変化した場合、ノズルの開口幅を拡幅することで、プリント基板と溶融はんだとの接触時間を一定にできるというものである。
【0006】
特許文献2には噴流はんだ槽が開示されている。この噴流はんだ槽によれば、二次噴流ノズルが備えられ、この二次噴流ノズルの前後に設けたフロントフォーマー及びリアフォーマーの固定位置を可変できるようにした。フロントフォーマー及びリアフォーマーは側板間に設けられた軸部に取り付けられる。軸部を基準にしてフロントフォーマー及びリアフォーマーの回転角度を調整できるようにした。このようにすると、二次噴流ノズルの開口幅を可変できるというものである。
【0007】
リアフォーマーの先端付近において、側板間には固定板が取り付けられる。この固定板には堰板が固定面に沿って可動自在に設けられ、堰板はリアフォーマーから流れ落ちる溶融はんだの一部をオーバーフローするようになされる。
【0008】
特許文献3にはプリント基板のはんだ付け方法及び噴流はんだ付け装置が開示されている。この噴流はんだ槽によれば、ノズル台が備えられ、このノズル台上には移動ブロックと固定ブロックとが設けられる。移動ブロックと固定ブロックとの間はノズルの開口幅を形成している。移動ブロックは、ノズル台上を摺動可能に取り付けられる。移動ブロックは、基板搬送方向と平行する方向に移動可能となされ、その固定位置を調整できるようにした。このようにすると、移動ブロックと固定ブロックとの間の開口幅を可変することで、ノズルの開口幅が調整できるというものである。
【0009】
特許文献4には、はんだ付け用のジェット噴流ノズルが開示されている。当該ノズルによれば、ノズル本体の上部に1対の平坦状のノズル板が取り付けられ、係合用のビスで取り付け部に固定されている。ビスを緩めると、ノズル板が取り付け部に対して水平方向で左右に摺動可能となされている。このノズル板の開閉構造によって、ノズル板間の開口幅を調整できるというものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態としての噴流ノズル及び噴流装置について説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、噴流ノズル100の構成例(その1,2)について説明する。
【0024】
<噴流ノズル100の構成例>
図1に示す噴流ノズル100は噴流はんだ付け装置において、一次噴流用のノズルに適用可能なものであり、噴流幅を多段に調整可能なノズル本体部30を有している。ノズル本体部30は、
図2に示すような流入口601及び排出口602を有して、流入口601から流入した溶融はんだ7を排出口602から溶融はんだ7を噴流させるものである。なお、
図2は
図1に示した噴流ノズル100のX1−X1の矢視断面図である。
【0025】
1次噴流では、プリント基板1の下方から溶融はんだ7を吹き上げるように当該プリント基板1の下面に溶融はんだ7を付着するようになされる。ここで、2次噴流よりも多め目に溶融はんだ7をプリント基板1に付けるようになされる。こうすることで、プリント基板1上にまで溶融はんだ7を”濡れ上がらせる”ことができる。これに対して、2次噴流では、プリント基板1の進行方向と同じ方向に流れる平らな面を作るようになされる。この平らな面で付着過分の溶融はんだ7を拭い去るようになされる。
【0026】
図1において、Lはノズル本体部30の長さ[mm]であり、Wはその幅[mm]であり、Hはその高さ[mm]である。また、Xはノズル長さ方向であり、Yはノズル幅方向であり、Zは溶融はんだ7の噴流方向である。ノズル本体部30は、ステンレス板を切り曲げ加工して所定の形状を有した筐体に仕上げられる。
【0027】
ノズル本体部30には堰堤部10及び開口可変機構90が設けられている。堰堤部10は長さがL[mm]程度の前成形部11(フロントフォーマー)及び後成形部12(リアフォーマー)を有している。前成形部11及び後成形部12は開口可変機構90を成している。前成形部11は
図2に示すような前成形基板13の上部に取り付けられ、前成形基板13上で左右に可動自在となされている。同様にして、後成形部12も後成形基板14の上部で左右に移動自在となされている。
【0028】
前成形部11及び後成形部12の各々の天板面には長孔部201が設けられる。この長孔部201はネジ回転工具が挿入可能となされている。この長孔部201を利用して、
図2に示すネジ613,614を緩め、前成形部11及び後成形部12の少なくともいずれか一方を摺動して寄せ、又はこれらを離間することにより、排出口602の開口幅を調整できるようになっている(開口可変機構90)。
【0029】
堰堤部10には幅調整部20が取り付けられている。幅調整部20は長さがL[mm]程度の平板状の前溢流板21(前プレート)及び後溢流板22(後プレート)を有している。幅調整部20は、排出口602から噴流される溶融はんだ7の噴流幅を微調整するものである。前溢流板21及び後溢流板22は河川の堰板(ゲート)のように使用する。
【0030】
前溢流板21は前成形部11の上流側の壁面に沿って、ほぼ垂直(鉛直)方向に上下動可能な機構を有している。後溢流板22は後成形部12の下流側の壁面に沿って、同様に上下動可能な機構を有している。ここに上流側とは、プリント基板1が噴流ノズル100に進入してくる側をいい、下流側とは、プリント基板1が噴流ノズル100から進出して行く側をいう。
【0031】
なお、ノズル本体部30の前方(上流側)には庇状の前リターンガータ46が設けられている。その後方(下流側)に樋状の後リターンガータ47が設けられている。前リターンガータ46は、堰堤部10から前方に溢流した溶融はんだ7を所定の方向に導くようになされる。後リターンガータ47は、堰堤部10から後方に溢流した溶融はんだ7を受け止めて所定の方向に導くようになされる。
【0032】
図2において、ノズル本体部30は、側面板61,62(図示せず)、壁面板63,64を有している。側面板61,62、壁面板63,64はノズル筐体42を構成する(
図3参照)。壁面板63は上部に逆L状部位603を有し、壁面板64も上部に逆L状部位604を有している。
【0033】
逆L状部位603,604には堰堤部10が設けられる。堰堤部10は排出口602から溢流される溶融はんだ7を堰上げ及び幅拡張のために、前成形部11及び後成形部12の他に前成形基板13(フロントフォーマーベース)、後成形基板14(リアフォーマーベース)、前シム板15及び後シム板16を有している。
【0034】
前成形部11及び後成形部12は、
図2に示すように各々の内部が空間で断面が四角又は逆台形状を有している。前成形部11の天板面は傾斜し、斜めプレート状を成している。前成形部11の天板面を斜めプレート状にしたのは、噴流はんだ装置上において、プリント基板1の斜め搬送を行うためである。これに対して、後成形部12の天板面は噴流幅を得るためにプレート形状(平坦状)を成している。
【0035】
前成形部11の下方には前成形基板13が設けられ、前成形基板13の下方には前シム板15が設けられている。前シム板15は1mm程度の厚みを有しており、前成形基板13の高さを調整するものである。前成形部11は、前成形基板13及び前シム板15を介在した形態で逆L状部位603にネジ613で固定される。前成形基板13のネジ孔は長孔状に形成され、ネジ613を緩めた状態で左右に移動可能となされている。
【0036】
同様にして、後成形部12の下方には後成形基板14が設けられ、後成形基板14の下方には後シム板16が設けられている。後シム板16は、傾斜を付けるために2mm程度の厚みを有しており、後成形基板14の高さを前成形基板13よりも高く調整するようになされる。この理由も、プリント基板1の斜め搬送を行うためである。後成形部12は、後成形基板14及び後シム板16を介在した形態で逆L状部位604にネジ614で固定される。後成形基板14のネジ孔も長孔状に形成され、ネジ614を緩めた状態で左右に移動可能となされている(開口可変機構90)。
【0037】
開口可変機構90は前成形部11及び後成形部12の間の離間距離を調整するものである。この離間距離の調整によって、ノズル本体部30の排出口602の開口幅を調整できるようになる。なお、
図2に示す噴流ノズル100によれば、噴流開口幅をWφとしたとき、開口可変機構90によって、Wφ=最小(MIN)に調整されている場合である。
【0038】
開口可変機構90には幅調整部20が設けられる。幅調整部20は、前溢流板21及び後溢流板22を有している。この例では、前溢流板21が前成形部11に設けられ、後溢流板22が後成形部12に設けられる。前溢流板21は、例えば前成形部11の前方の壁面に沿って上下動可能に取り付けられ、前成形部11によって堰上げられた溶融はんだ7の堰上げ高さβ1(
図4参照)を調整する。前溢流板21は、3個のネジ611で前成形部11に固定される。前溢流板21のネジ孔は長U状に形成され、ネジ611を緩めた状態で上下に移動可能となされている。
【0039】
後溢流板22は、後成形部12の後方の壁面に沿って上下動可能に取り付けられ、後成形部12によって堰上げられた溶融はんだ7の堰上げ高さβ2(
図4参照)を調整する。後溢流板22も3個のネジ612で後成形部12に固定される。後溢流板22のネジ孔も長U状に形成され、ネジ612を緩めた状態で上下に移動可能となされている。
【0040】
図2に示す幅調整部20によれば、前溢流板21及び後溢流板22が共に最下位の状態に調整されている場合である。なお、前溢流板21は、プリント基板1を搬送する際の傾斜角θ(例えば、θ=5°)を考慮して、後溢流板22の固定位置よりも低い位置に固定される。溶融はんだ7の堰上げ高さβ1,β2で言うとβ1≦β2に設定される。図中、傾斜角θは、プリント基板1を搬送する方向と水平方向の線分とが成す角度である。この幅調整部20により、排出口602から噴流される溶融はんだ7の噴流幅を微調整できるようになる。
【0041】
ここで、
図3を参照して、噴流ノズル100の組立例について説明する。この例では、
図1に示したような噴流ノズル100を組み立てる場合を挙げる。噴流ノズル100の長さLは400〜450mm程度であり、その幅Wは70〜80mm程度であり、その高さHは120〜125mm程度である。まず、逆ホッパー形状を有したノズル筐体42を準備する。ノズル筐体42には側面板61,62及び壁面板63,64を備えたものを使用する。
【0042】
側面板61,62及び壁面板63,64は、所定の厚み(1.5〜2.0mm程度)を有したステンレス板を切り曲げ加工して形成する。側面板61,62及び壁面板63,64の各々の隅を接合することで、ノズル本体部30の逆ホッパー形状が得られる。ノズル筐体42の下部は流入口601を構成し、その上部は排出口602を構成する。
【0043】
また、壁面板63の上部を逆L状に折り曲げて逆L状部位603を形成する。壁面板64の上部も逆L状に折り曲げて逆L状部位604を形成する。逆L状部位603,604は、堰堤部10の取り付け基準代(基台)となる。逆L状部位603,604の所定の位置に図示しない雌ねじ又はネジ貫通孔を形成する。
【0044】
次に、前成形部11、後成形部12、前成形基板13、後成形基板14、前シム板15、後シム板16、ネジ613,614を準備する。前成形部11及び後成形部12は所定の厚みのステンレス板を折り曲げ加工して、各々の内部が空間で断面が四角又は逆台形状に形成する。各々の天板面は噴流幅を得るためにプレート状に形成する。天板面にはネジ回転具挿入用の長孔部201も形成する。前シム板15には、長さがLmmで、厚み1mmを有したステンレス製の部材を準備する。後シム板16には、長さがLmmで、厚み2mmを有したステンレス製の部材を準備する。
【0045】
前成形基板13及び後成形基板14には長さがLmmで断面が台形状で所定の厚みを有したステンレス製の角棒部材を準備する。前成形基板13及び後成形基板14の所定の位置にネジ貫通孔や、雌ねじを形成する。これらの前成形部11、後成形部12、前成形基板13、後成形基板14、前シム板15、後シム板16、ネジ613,614が準備できたら、まず、ノズル長さ方向Xに沿うようして、前成形基板13及び前シム板15を重ね合わせる。
【0046】
次に、図示しないネジで2つの前成形基板13及び前シム板15を逆L状部位603に固定する。これにより、開口可変機構90の前方側の取り付け基準代が得られる。同様にして、後成形基板14及び後シム板16を重ね合わせる。次に、図示しないネジで2つの後成形基板14及び後シム板16を逆L状部位604に固定する。これにより、開口可変機構90の後方側の取り付け基準代(基台)が得られる。
【0047】
次に、ネジ613で前成形部11を前成形基板13に固定する。前成形部11は前成形基板13に形成された雌ねじにネジ613を螺合することで固定される。これにより、開口可変機構90の前方側が得られる。同様にして、ネジ614で後成形部12を後成形基板14に固定する。後成形部12は後成形基板14に形成された雌ねじにネジ614を螺合することで固定される。これにより、開口可変機構90の後方側が得られると共に堰堤部10が得られる。
【0048】
次に、2枚の前溢流板21と後溢流板22とを準備する。前溢流板21及び後溢流板22は、所定の厚み(1.5〜2.0mm程度)を有したステンレス板を切り欠き加工したものを使用する。この例では、前溢流板21及び後溢流板22の各々の所定の位置に逆長U状の切り欠き部621,622を形成する。
【0049】
前溢流板21及び後溢流板22が準備できたら、3つのネジ611で切り欠き部621を介して前溢流板21を前成形部11に取り付ける。同様にして、3つのネジ612で切り欠き部622を介して後溢流板22を後成形部12に取り付ける。前溢流板21及び後溢流板22を開口可変機構90に取り付けることで、幅調整部20が形成できる(
図1参照)。
【0050】
そして、図示しないネジでサイドガイド44を側面板61に取り付け、同様にして、サイドガイド45を側面板62に取り付ける。最後に、図示しないネジで、前リターンガータ46を壁面板63に取り付け、同様にして、後リターンガータ47を壁面板64に取り付ける。これにより、
図1に示した噴流ノズル100が完成する。
【0051】
続いて、
図4を参照して、噴流ノズル100の機能例について説明する。
図4に示す噴流ノズル100によれば、開口可変機構90によって、噴流開口幅Wφが最大(MAX)に調整されている場合である。Wφ=MAXの状態は、
図2に示したWφ=MINの状態から、ネジ613,614を緩めて、前成形部11及び後成形部12を各々両側に最大に離間スライドさせて、再度、ネジ613,614を逆L状部位603,604に固定することにより得られる。
【0052】
また、
図4に示す噴流ノズル100によれば、幅調整部20によって、前溢流板21、後溢流板22が最上位に調整されている場合である。前溢流板21、後溢流板22の最上位の状態は、
図2に示した前溢流板21、後溢流板22の最下位の状態から、各々のネジ611,612を緩めて、前溢流板21、後溢流板22を各々上方へスライドさせて、再度、ネジ611,612を前成形部11及び後成形部12の各々の壁面に固定することにより得られる。なお、図中の二点鎖線の太線は、溶融はんだ7の噴流波形の想像線である。
【0053】
図中、Wrは噴流有効幅であり、堰堤部10上の溶融はんだ7の噴流最高位置pmaxから所定の高さαだけ下がった位置のノズル本体部30の幅方向の噴流幅をいう。αは、噴流有効幅Wrを定義するための基準指標であり、プリント基板1のスルーホールの深さ(プリント基板1の厚み)等により、任意に設定されるものである。噴流有効幅Wrは、開口可変機構90によって粗く調整され、幅調整部20によって微調整が可能となっている。
【0054】
なお、hは噴流高さであり、例えば、後成形部12の天板面から噴流最高位置pmaxに至る距離である。β1,β2は前溢流板21、後溢流板22の各々の堰上げ高さであり、各々の最下位置と最上位置との間の差分の距離である。堰上げ高さβ1,β2は噴流有効幅Wrの微調整時、例えば、β1/2,β2/2、β1/3,β2/3、β1/4,β2/4・・・というように設定される。
【0055】
このように、実施形態としての噴流ノズル100によれば、ノズル本体部30の排出口602の開口可変機構90(堰堤部10の両側)に幅調整部20を備え、この幅調整部20で噴流有効幅Wrを調整するようになされる。
【0056】
この構成によって、噴流高さhがほぼ一定の状態であるにも係わらず、前溢流板21、後溢流板22の堰上げ高さβ1,β2を調整できることから、溶融はんだ7の噴流有効幅Wrをノズル幅方向(基板搬送方向)に沿ってその前方・後方に拡幅調整できるようになる。
【0057】
しかも、溶融はんだの基板に対する面圧を強くすることができる。特に、ロングリード部品や、パレット搬送対応として最適なノズル構造が得られた。開口可変機構90と幅調整部20とを併用することで、噴流有効幅Wrを多段かつ微細に調整できるようになる。
これにより、多様化するプリント基板上の部品配置において、幅調整部20及び開口可変機構90によって、プリント基板1に付着された溶融はんだ7の濡れ性を向上できるので、ブリッジ発生や、つらら等を回避できるようになった。
【0058】
<噴流はんだ付け装置200の構成例>
続いて、
図5を参照して噴流はんだ付け装置200の構成例について説明する。
図5に示す噴流はんだ付け装置200は噴流装置の一例を構成し、プリント基板1の所定の面に溶融はんだ7を噴流して、当該プリント基板1に電子部品をはんだ付けするものである。なお、図中のyは基板搬送方向であり、
図1に示したノズル幅方向Yと同じ方向である。
【0059】
噴流はんだ付け装置200は、ダクト41、ポンプハウジング43、ポンプ50、はんだ槽51、モーター60及び噴流ノズル100を備えている。はんだ槽51は上面開放の筺体を有して、溶融はんだ7が収容されている。当該はんだ槽51には、図示しないヒーターが設けられ、溶融はんだ7を一定の温度に保持する。はんだ槽51にはダクト41及びポンプハウジング43が溶融はんだ7に浸される形態で実装されている。
【0060】
ダクト41は、細長い筺体の本体部401を有しており、本体部401の上部にはノズル接続部402が設けられている。本体部401にはポンプハウジング43が接続されており、ポンプハウジング43内にはポンプ50が収納され、溶融はんだ7を吸い込んで所定の方向に送出するように動作する。ポンプ50の回転軸にはプーリー52が取り付けられる。ポンプ50にはスクリュー式のポンプの他にインペラ式のポンプを使用される。
【0061】
はんだ槽51の外部の所定位置にはモーター60が配設され、その軸部にはプーリー53が取り付けられる。上述のポンプ50のプーリー52とモーター60のプーリー53との間には、ベルト54が巻回され、モーター60が所定の方向へ回転すると、ベルト54が掛け回され、ポンプ50が回転する。ポンプ50は溶融はんだ7をダクト41内に押し込むように動作する。これにより、ダクト41は噴流ノズル100に向けて溶融はんだ7を導くようになる。
【0062】
上述のノズル接続部402には噴流ノズル100が接続される。噴流ノズル100には本発明に係る噴流幅多段調整機能付きのものが使用される。噴流ノズル100は下方から溶融はんだ7を取り込み、上方に溶融はんだ7を噴出する。この例で、ノズル筐体42の上部に取り付けられた堰堤部10でプリント基板1に溶融はんだ7が噴流される。これらにより、噴流はんだ付け装置200を構成する。
【0063】
続いて、
図6〜
図8を参照して噴流はんだ付け装置200の動作例(その1〜3)について説明する。
図6〜
図8に示す噴流はんだ付け装置200は、
図5に示した噴流はんだ付け装置200からダクト41の上部及び噴流ノズル100の周辺を抽出した断面図である。
【0064】
この動作例では、プリント基板1の搬送速度を一定にし、溶融はんだ7の噴流速度や圧力等を可変して噴流幅を調整した場合(従来方式)と、本発明に係る幅調整部20を使用して噴流有効幅Wrを調整した場合(本発明方式)とを比較しその作用・効果を考察する。
【0065】
図6に示す噴流はんだ付け装置200の動作例(その1)によれば、前溢流板21及び後溢流板22が共に最下位(β1=β2=0:図示ぜず)となるように幅調整部20を設定した場合である。後溢流板22の最下位は後成形部12で噴流高さhの基準面を成す位置である。前溢流板21の最下位は前成形部11の前方の端部位置である。この設定は前溢流板21及び後溢流板22が機能していない従来方式の噴流ノズルと同じ状態である。
【0066】
また、前成形部11及び後成形部12が共に内側に寄せられ、噴流開口幅WφがWφ=MINとなるように開口可変機構90を設定している状態である。なお、本発明方式では、3つの動作例(その1〜3)で共通してポンプ50の出力は、一定となるようにモーター60を駆動している。従って、噴流高さhは一定となる。
【0067】
これらの設定で、溶融はんだ7がダクト41から噴流ノズル100に送り込まれると、その排出口602で前成形部11及び後成形部12の側に分流して噴流する状態となる。前溢流板21及び後溢流板22が共に最下位に固定されているので、噴流有効幅WrがWr1となっている。
【0068】
図7に示す噴流はんだ付け装置200の動作例(その2)によれば、前溢流板21が中間位になされ、後溢流板22が最上位(β2)となるように幅調整部20が設定されている。前溢流板21は例えば、前成形部11の端部からβ1/2だけ突出する高さで固定される。開口可変機構90は、
図6に示した動作例と同じWφ=MINである。この場合、動作例(その1)に比べて前溢流板21がβ1/2だけ前成形部11の端部から突出しているので、噴流有効幅WrはWr2となっている。すなわち、前溢流板21をβ1/2だけ上昇させたことで、ΔWr=Wr2−Wr1の拡幅が見られ、幅調整部20が機能していることが明確となった。
【0069】
図8に示す噴流はんだ付け装置200の動作例(その3)によれば、幅調整部20は動作例(その2)ままで、開口可変機構90は前成形部11及び後成形部12が共に外側に離され、噴流開口幅WφがWφ=MAXに設定されている状態である。この場合の噴流有効幅WrはWr3である。図示せずも、前溢流板21及び後溢流板22が共に最下位(β1=β2=0:図示ぜず)となるように幅調整部20が設定され、噴流開口幅WφがWφ=MAXに設定されている場合に比べて、噴流有効幅Wrが拡幅することが明確となった。
【0070】
因みに、前溢流板21及び後溢流板22が共に最上位(β1,β2)となるように幅調整部20を設定し、かつ、噴流開口幅WφをWφ=MAXに設定すると、
図4に示したように、噴流有効幅WrはWr(max)が得られる。これらの噴流有効幅Wrの間にはWr1<Wr2<Wr3<Wr(max)なる関係が得られる。 この動作例(その1〜3)では、前溢流板21及び後溢流板22の高さによって噴流有効幅Wrの拡幅のみならず噴流有効幅Wrの中心が上流側又は下流側にシフトすることが明確となった。
【0071】
これに対して、従来方式によれば、噴流圧力を増加し、噴流速度を上昇させたが、噴流高さhが高くなる割には噴流有効幅Wrが対して拡がらなかった。本発明方式によれば、噴流圧力を増加することなく、噴流速度を一定としたままの状態であった。溶融はんだ7の噴流高さhがほぼ一定の状態であるにも係わらず、その堰上げ高さβ1,β2が調整できることから、その噴流有効幅Wrを基板搬送方向に沿って前後に拡張できるようになった。
【0072】
このように、実施形態としての噴流はんだ付け装置200によれば、本発明に係る噴流幅多段調整機能付きの噴流ノズル100を備えるので、幅調整部20が無い場合に比べてプリント基板1の被着面が噴流状の溶融はんだ7に曝される状態を長く設定(維持)できるようになる。
【0073】
従って、プリント基板1の接続用のスルーホールやコンタクホール等の細孔部に良好に溶融はんだ7を被着できるようになった。これにより、プリント基板1の搬送速度を従来方式に比べて格上げ設定できるようになり、当該装置のスループットを向上できるようになった。
【0074】
上述した例では、はんだ付けの対象がプリント基板の場合について説明したが、これに限られることはない。はんだ付けの対象は半導体ウエハをパレット搬送する場合であっても同様の効果が得られる。