【実施例】
【0015】
図1において、1はミシンMの上部フレームで脚柱部2と、脚柱部2から左方へ延びるアーム部3からなる。
4はベッドであり、5はベッド基部6から筒状に延びるフリーアーム部、7はフリーアーム部5の上部開口
を有する上壁31(図5参照)を覆うトップカバー、8は針板である。
フリーアーム部5内には、図示しない下軸に連動する釜などの針糸補足機構や送り機構が収容されており、上部フレーム1のアーム部3内に収容される同じく図示しない上軸によって針棒9が上下方向に駆動され、針棒9の先端に設けられた針が針板8の針穴に挿通駆動されつつ被縫製物が送り機構によって送られて縫製作業が行われるようになっていることは、周知のミシンの機構と同様である。
【0016】
図2〜
5に示すように、フリーアーム部5の
上壁31には、針板8とトップカバー7が取り付けられ、トップカバー7は、針棒9と精密に位置合わせされて取り付けられた針板8と適切な間隙を有するように調整されて取り付けられている。
トップカバー7は、表側の外カバー10と裏側の内カバー11とが、接着により一体に接合された構造を有している。
【0017】
外カバー10は、表面に被縫製物を載置して送る縫製作業面12を有する外頂壁13と、外頂壁13の側端面から垂下する外側壁14からなり、縫製作業面にふさわしい美観と強度を備えたステンレス板を曲げ加工することによって形成されている。
内カバー11は、内面下方に突出する2つのフック状係合片16a,16bを有する内頂壁17と、内頂壁17の先端から垂下してフリーアーム部5の先端上部を覆う前壁18と、内頂壁17の側端部から垂下する内側壁19とからなり、比較的強度のあるプラスチックなどから成形されている。
【0018】
内カバー11の内頂壁17の内面には、フック状係合片16a,16bのそれぞれをはさんで両側に所定間隔離間して一対の突起20a,20bがさらに設けられ、フック状係合片16a,16bとともにトップカバー7をフリーアーム部5に装着するための係合手段を構成する。
フック状係合片16a,16bは、後述するフリーアーム部5の取り付け部に対応して、フリーアーム部5の軸方向および軸方向に垂直方向にそれぞれ所定間隔をおいて互いに位置をずらして設けられている。
また、内カバー11の前壁18の下部には、内側に向けフック状に突出した延出部を有する先端係合部21が設けられている。
【0019】
また、内カバー11の一方の側部には、後述する固定ねじ40c,40dによりフリーアーム部5に締結される固定板22が固定溝23を有して内頂壁17の下面から垂下して設けられるとともに、内側壁19には固定孔24が設けられている。
固定溝23の幅および固定孔24の大きさは、固定ねじ40c,40dの頭部よりも小さいとともに、針板8の交換などに伴う位置決めの際に、微小な位置変化に対応可能な大きさを有し、固定板22および内側面19が固定ねじ40c,40dにより締結可能となっている。
固定板22および固定孔24の挿通孔周辺部26は、内側壁19の外側表面より所定距離だけ間隙を有する、内側にひっこんだ平面を形成している。
そして、外カバー10の外側壁14の一方には、固定溝23および固定孔24に対応して、固定ねじ40c,40dを挿通するとともに外部から固定ねじ40c,40dを操作可能なねじ挿通孔25c,25dが設けられ、これら固定溝23、固定孔24、ねじ挿通孔25c,25dは、トップカバー7の固定部を構成している。
【0020】
図5〜7に示すように、
フリーアーム部5の上部には、針板8を取り付ける針板開口部30以外にも、保守や調整のための種々の開口を有する上壁31が設けられている。
32a,32bは、内カバー11のそれぞれフック状係合片16a,16bが係合する取り付け孔で、フリーアーム部5の軸方向および軸方向に垂直方向にそれぞれ所定間隔をおいて互いに位置をずらして上壁31に設けられ
、これら取り付け孔32a,32bは、フリーアーム部5の上壁31に設けられた取り付け部を構成している。
【0021】
フリーアーム部5の軸方向の側面を形成する側壁33には、固定ねじ40c,40dが螺合する雌ねじ部34c,34dが設けられており、それぞれトップカバー7の固定部である外カバー10のねじ挿通孔25c,25d、内カバー11の固定溝23,固定孔24に対応している。
フリーアーム部5の先端は、
上壁31が延出して先端縁部35を形成しており、内カバー11の前壁18下部の先端係合部21と係合するようになっている。
【0022】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
トップカバー7をフリーアーム部5に取り付けるためには、まずトップカバー7のフック状係合片16a,16bを、フリーアーム部5のそれぞれ取り付け孔32a,32bに挿入するとともに、トップカバー7の先端係合部21のフック状の延出部をフリーアーム部5の上壁31の先端縁部35より下方位置にくるように、トップカバー7をフリーアーム部5の上部開口側から上壁31に密着させる。
このとき、トップカバー7の一対の突起20a,20bの下面は上壁31の上面に密着している。
【0023】
この状態から、トップカバー7をフリーアーム部5の軸方向に沿ってスライドさせると、
図8(a)に示すように、フック状係合片16a,16bのフック状部27が上壁31の下面に係合して摺動するようになり、さらにトップカバー7をスライドさせると、フック状係合片16a,16bの立ち上がり部28が取り付け孔32a,32bの開口縁に当接してトップカバー7が止まる。
このとき、取り付け孔32a,32b周辺の上壁31は、フック状係合片16a,16bと一対の突起20a,20bとに上下から挟まれ、フック状係合片16a,16bが取り付け孔32a,32bの開口縁によって位置決めされて、トップカバー7はフリーアーム部5に対して位置決めされ装着される。
【0024】
この過程で、トップカバー7の先端係合部21は、上壁31の先端縁部35の下面に係合するとともに軸方向の位置決めをも行い、トップカバー7の先端部のフリーアーム部5への取り付けを確かなものにする。
なお、本実施例では、先端係合部21は、内カバー11の前壁18の下部にフック状に延出したものとしたが、前壁18の内面に単に突出しただけの係合板として、前壁18の内面に位置決め機能を果たさせることも可能である。
また、先端係合部21は必ずしも必要ではなく、フック状係合片16a,16bと取り付け孔32a,32bとの配置、係合状態によっては、適宜省略可能である。
【0025】
フリーアーム部5に装着されたトップカバー7は、取り付け位置を保持するために、さらに固定ねじ40c,40dによってフリーアーム部5に締結されることが望ましい。
トップカバー7がフリーアーム部5に対してスライドされて装着状態となったとき、トップカバーの固定部、すなわち外カバー10のねじ挿通孔25c,25dおよび内カバー11の固定溝23、固定孔24は、フリーアーム部5のそれぞれ雌ねじ部34c,34dと位置が合うようになっている。
固定ねじ40c,40dの頭部の大きさは、ねじ挿通孔25c,25dより小さく、固定溝23の幅および固定孔24より大きいので、固定ねじ40c,40dは、ねじ挿通孔
25c,25dから挿入されて雌ねじ部34c,34dに螺合し、固定溝23を有する固定板22および固定孔24を有する内側壁19を介してトップカバー7をフリーアーム部5に締結して、装着された互いの位置を保持して固定することができる。
【0026】
図8(b)に示されるように、固定板22および固定孔24の挿通孔周辺部26が形成する平面は、内側壁19の外側表面より固定ねじ40c,40dの頭部の高さ以上の所定距離だけ内側にひっこんでいるので、固定ねじ40c,40dは、締着された状態では、トップカバー7の表面より突出しないようになっている。
したがって、見た目がよいとともに、仮に被縫製物がトップカバー7の側部にかかることがあっても、固定ねじ40c,40dに引っかかるようなことがない。
【0027】
なお、本実施例では、固定手段を固定ねじ40c,40dとし、固定手段により締結されるトップカバー7の固定部を固定溝23、固定孔24、ねじ挿通孔25c,25dとしたが、固定手段はねじに限らず、各種のピンやくさびなど、位置を保持することができる部材であればよく、固定部も、固定手段に対応して種々の公知の部材を用いることができる。
また、本実施例では、トップカバー7の外カバー10と内カバー11とは、接着により一体に接合されているが、接着に限らず融着など他の接合方法でもよいことはもちろん、インサート成形など、内カバー11の成形時に一体接合するようにしてもよい。