(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900743
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】坑井からの随伴水処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20160324BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20160324BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20160324BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20160324BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20160324BHJP
【FI】
C02F1/44 K
B01D61/14 500
B01D61/58
B01D61/00 500
C02F1/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-89816(P2012-89816)
(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-215686(P2013-215686A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085109
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】渕上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】功刀 亮
(72)【発明者】
【氏名】植竹 規人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】水上 剛志
【審査官】
手島 理
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−539584(JP,A)
【文献】
特開2010−036183(JP,A)
【文献】
特開平04−290597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22、61−71
C02F 1/44
C02F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑井から排出される随伴水に分散剤を添加した後、ろ過処理し、ろ過水を得るろ過処理工程と、前記ろ過水と、揮発性溶質を含有し、前記ろ過水よりも高浸透圧の誘導溶液とを半透膜を介して接触させ、前記ろ過水中の水を前記半透膜を通して前記誘導溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘導溶液と膜濃縮水を得る順浸透工程と、前記希釈誘導溶液を加熱して、揮発した前記溶質と水蒸気からなるガスを得るとともに、前記溶質をほとんど含まない浄水を得る第一蒸発工程と、前記ガスを冷却し、前記誘導溶液を再生する再生工程と、前記順浸透工程で得られる膜濃縮水を蒸発濃縮し、蒸発濃縮水と凝縮水を得る第二蒸発工程と、前記蒸発濃縮水を更に蒸発濃縮し、該蒸発濃縮水に含有される塩類を析出させるとともに凝縮水を得る晶析工程とを有し、前記第二蒸発工程で得られる凝縮水と前記晶析工程で得られる凝縮水の少なくとも一方を前記第一蒸発工程における希釈誘導溶液の加熱源として使用することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
坑井から排出される随伴水に分散剤を添加した後、ろ過処理し、ろ過水を得るろ過処理工程と、前記ろ過水と、揮発性溶質を含有し、前記ろ過水よりも高浸透圧の誘導溶液とを半透膜を介して接触させ、前記ろ過水中の水を前記半透膜を通して前記誘導溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘導溶液と膜濃縮水を得る順浸透工程と、前記希釈誘導溶液を加熱して、揮発した前記溶質と水蒸気からなるガスを得るとともに、前記溶質をほとんど含まない浄水を得る第一蒸発工程と、前記ガスを冷却し、前記誘導溶液を再生する再生工程と、前記順浸透工程で得られる膜濃縮水を蒸発濃縮し、蒸発濃縮水と凝縮水を得る第二蒸発工程と、前記蒸発濃縮水を更に蒸発濃縮し、該蒸発濃縮水に含有される塩類を析出させるとともに凝縮水を得る晶析工程とを有し、前記第二蒸発工程で得られる凝縮水と前記晶析工程で得られる凝縮水の少なくとも一方を前記第一蒸発工程における希釈誘導溶液に加熱源として直接導入することを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
前記浄水を前記坑井の掘削用水または蒸気として再利用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水処理方法。
【請求項4】
坑井から排出される随伴水に分散剤を添加する反応槽と、前記反応槽から流出する反応液をろ過処理し、ろ過水を得るろ過装置と、前記ろ過水と、揮発性溶質を含有し、前記ろ過水よりも高浸透圧の誘導溶液とを半透膜を介して接触させ、前記ろ過水中の水を前記半透膜を通して前記誘導溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘導溶液と膜濃縮水を得る順浸透膜処理装置と、前記希釈誘導溶液を加熱して、揮発した前記溶質と水蒸気からなるガスを得るとともに、前記溶質をほとんど含まない浄水を得る第一蒸発装置と、前記ガスを冷却し、前記誘導溶液を再生する熱交換器と、前記順浸透膜処理装置から得られる膜濃縮水を蒸発濃縮し、蒸発濃縮水と凝縮水を得る第二蒸発装置と、前記蒸発濃縮水を更に蒸発濃縮し、該蒸発濃縮水に含有される塩類を析出させるとともに凝縮水を得る晶析装置とを有し、前記第二蒸発装置から得られる凝縮水と前記晶析装置から得られる凝縮水の少なくとも一方を前記第一蒸発装置内の希釈誘導溶液に加熱源として直接導入する手段を設けたことを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シェールガス、オイルサンド、CBM(炭層メタン)、石油等の坑井から天然ガスや原油を採掘する際等に産生される随伴水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェールガス、オイルサンド、CBM(炭層メタン)、石油等の採掘の際には、天然ガスや原油の採掘量を高めるために薬剤の水溶液が掘削用水や蒸気として注入される場合がある。その結果、油層から取出される原油にはこれらの薬剤水溶液や地層中の無機イオンを含む地下水が随伴水として含まれており、採掘した天然ガスや原油からは随伴水が分離される。分離された随伴水には塩分、有機物、懸濁物などが含まれているので、そのまま排出したのでは環境汚染の問題を生じ、浄化が必要である。
【0003】
この随伴水を浄化する技術としては、砂濾過と活性炭処理を行って懸濁物と有機物を除去し、塩分は残したまま海洋に放流する技術が開発されている(特許文献1)。
【0004】
また、膜分離を利用する技術も知られている(特許文献2)。その方法は、まず、随伴水に含まれている水溶性シリカを不溶性シリカの懸濁物に変えてセラミック膜でこれを除去し、次いで蒸発器で水分を蒸発回収して原油の採掘に再利用するというものである。その蒸発器に代えて逆浸透膜を使用することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−275884号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0168629A1号明細書(第3頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の膜分離を利用する技術は、随伴水を浄化して再利用できる点で優れているが、逆浸透膜処理を6〜8MPa程度の高圧で行っており、大電力を要する。また、逆浸透膜を透過しないで残った濃縮水が随伴水の半分程度と大量に発生し、この濃縮水の蒸発にもエネルギーを要する。
【0007】
本発明の目的は、少ない電力、エネルギーで随伴水を処理して再利用できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、逆浸透膜処理に代えて順浸透膜処理を行うことによって、高圧に加圧するのに要する電力を削除し、順浸透膜処理に変えることによって必要となった希釈誘導溶液の加熱の熱源に膜処理で生じる膜濃縮水の蒸発やその後の晶析工程で生じる凝縮液の熱を利用することによって、随伴水の処理に要する全体の電力量およびエネルギーを節減できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)坑井から排出される随伴水をろ過処理し、ろ過水を得るろ過処理工程と、前記ろ過水と、揮発性溶質を含有し、前記ろ過水よりも高浸透圧の誘導溶液とを半透膜を介して接触させ、前記ろ過水中の水を前記半透膜を通して前記誘導溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘導溶液と膜濃縮水を得る順浸透工程と、前記希釈誘導溶液を加熱して、揮発した前記溶質と水蒸気からなるガスを得るとともに、前記溶質をほとんど含まない浄水を得る第一蒸発工程と、前記ガスを冷却し、前記誘導溶液を再生する再生工程と、前記順浸透工程で得られる膜濃縮水を蒸発濃縮し、蒸発濃縮水と凝縮水を得る第二蒸発工程と、前記蒸発濃縮水を更に蒸発濃縮し、該蒸発濃縮水に含有される塩類を析出させるとともに凝縮水を得る晶析工程とを有することを特徴とする水処理方法と、
(2)前記第二蒸発工程で得られる凝縮水と前記晶析工程で得られる凝縮水の少なくとも一方を前記第一蒸発工程における希釈誘導溶液の加熱源として使用することを特徴とする(1)に記載の水処理方法と、
(3)前記第二蒸発工程で得られる凝縮水と前記晶析工程で得られる凝縮水の少なくとも一方を前記第一蒸発工程における希釈誘導溶液に加熱源として直接導入することを特徴とする(2)に記載の水処理方法と、
(4)前記浄水を前記坑井の掘削用水または蒸気として再利用することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の水処理方法と、
(5)坑井から排出される随伴水をろ過処理し、ろ過水を得るろ過装置と、前記ろ過水と、揮発性溶質を含有し、前記ろ過水よりも高浸透圧の誘導溶液とを半透膜を介して接触させ、前記ろ過水中の水を前記半透膜を通して前記誘導溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘導溶液と膜濃縮水を得る順浸透膜処理装置と、前記希釈誘導溶液を加熱して、揮発した前記溶質と水蒸気からなるガスを得るとともに、前記溶質をほとんど含まない浄水を得る第一蒸発装置と、前記ガスを冷却し、前記誘導溶液を再生する熱交換器と、前記順浸透処理装置から得られる膜濃縮水を蒸発濃縮し、蒸発濃縮水と凝縮水を得る第二蒸発装置と、前記蒸発濃縮水を更に蒸発濃縮し、該蒸発濃縮水に含有される塩類を析出させるとともに凝縮水を得る晶析装置とを有することを特徴とする水処理装置と、
(6)前記第二蒸発装置から得られる凝縮水と前記晶析装置から得られる凝縮水の少なくとも一方を前記第一蒸発装置内の希釈誘導溶液に加熱源として直接導入する手段を設けたことを特徴とする(5)に記載の水処理装置
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、坑井から排出される随伴水を、少ない電力とエネルギーで処理でき、処理された水は掘削用水や蒸気として再利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が適用される坑井は、随伴水を排出するものであれば特に制限されないが、例えばシェールガス、オイルサンド、CBM(炭層メタン)、石油等を採掘する坑井などである。
【0013】
随伴水は、坑井からの採掘目的物に同伴して排出される水であり、塩分、有機物、懸濁物などを含んでいる。汚濁物質の濃度としては、例えば蒸発残留物(主にNa
+、K
+、Ca
2+、Cl
-、SO
42-など)が1,000〜100,000mg/L、有機物(油分や添加した薬剤など)がTOCとして10〜1,000mg/L、懸濁物質が100〜10,000mg/Lといった範囲で含有される。
【0014】
随伴水の分離手段は問わないが、例えば沈降などで油水分離が行われている。
【0015】
ろ過処理工程
本発明においては、この分離された随伴水をまずろ過処理する。このろ過処理は精密膜ろ過膜を用いた濾過器で行い、ろ過膜は、精密ろ過膜として使用されている通常の膜を使用することができる。例えば、酢酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニルなどの外、セラミック製の膜や多孔質ガラス製の膜なども利用できる。精密膜ろ過処理では、精密ろ過膜を通過した膜ろ過水と、膜を通過しないで残った膜濃縮水が得られる。
精密膜ろ過のほか、限外膜ろ過、砂ろ過等のろ過処理が用いられる。限外膜ろ過の材質は精密膜ろ過と同様のものが用いられる。
【0016】
順浸透工程
次に、この膜ろ過液を順浸透法で処理する。
【0017】
順浸透法は、前記膜ろ過水と前記膜ろ過水よりも高浸透圧の誘導溶液とを半透膜を介して接触させ、膜ろ過水中の水をこの半透膜を通して誘導溶液に移動させる方法であり、半透膜装置を用いる。
【0018】
誘導溶液は、前記膜ろ過水よりも高浸透圧の水溶液であり、例えば、所定量のアンモニアと二酸化炭素を水に溶解して生成する炭酸アンモニウム水溶液である。所定量とは、膜ろ過水中の水を半透膜を通過させて誘導溶液まで移動させることができる濃度にする量であり、誘導溶液の浸透圧が膜ろ過水の浸透圧より高くなるように設定される。炭酸アンモニウム水溶液を用いる場合、濃度の上限は、アンモニアと二酸化炭素の塩、すなわち、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニウムカルバメート等が半透膜面や、蒸留塔内で析出しないように定められ、これは実験で求めることができる。半透膜面や蒸留塔内に析出物が生じたか否かの確認方法の一つとして長時間運転をして安定稼動可能かどうかで判断する方法がある。アンモニアと二酸化炭素のモル比は1.5〜3程度である。このモル比も半透膜面や第一蒸発装置内でアンモニアと二酸化炭素の塩が析出しないよう配慮する。
誘導溶液の溶質としては、そのほかにも溶解度が高く高浸透圧が得られ、且つ低沸点で揮発性が高く、毒性の低いものを用いることが可能であり、例えばエチルアルコール,ブチルアルコール等のアルコール類やアセトン等のケトン類を用いることもできる。
【0019】
半透膜は水を選択的に透過できるものがよく、順浸透膜が好ましいが、逆浸透膜も使用できる。材質は特に制限されないが、例示すれば、酢酸セルロース系、ポリアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリスルホン系、ポリベンゾイミダゾール系のものなどを挙げることができる。半透膜の形態も特に制限されず、平膜、管状膜、中空糸などいずれであってもよい。
【0020】
この半透膜を装着する装置は通常は円筒形あるいは箱形の容器内に半透膜を設置して、この半透膜で仕切られた一方の室に膜ろ過水を流し、他方の室に誘導溶液を流せるものであり、公知の半透膜装置を用いることができ、市販品を用いることができる。
【0021】
膜ろ過水を流す室の入口は精密膜ろ過装置の膜ろ過水出口あるいはその貯槽がある場合にはその貯槽に配管接続される。出口側は第二蒸発装置の入口に配管接続される。両配管を結ぶ循環ラインを設けて、膜ろ過水を循環させることもできる。
【0022】
誘導溶液を流す室の入口は再生工程の熱交換器出口に配管接続され、出口は第一蒸発装置の入口側に配管接続され、これによって誘導溶液の循環ラインが形成される。
【0023】
第一蒸発工程
第一蒸発工程は、順浸透工程で得られた希釈誘導溶液を加熱して、揮発した溶質と水蒸気からなるガスを得るとともに誘導溶液の溶質をほとんど含まない浄水を得る工程であり、第一蒸発装置には、蒸留塔を用いることができる。
【0024】
蒸留塔は公知のものを用いればよく、棚段方式、充填方式等いずれのものであってもよい。蒸留塔下部には加熱器を設け、下部の浄水を熱することにより発生する蒸気を上部から落下してくる希釈誘導溶液と接触させて熱交換させる。加熱器にはリボイラーや熱交換器等を用いることができる。加熱器の熱源は問わないが、第二蒸発工程で得られる凝縮水や晶析工程で得られる凝縮水の一方あるいは両方を熱源として使用することができ、これらを直接第一蒸発装置に投入することもでき、それによって熱交換によるロスを省くことができる。この方法は第一蒸発工程の蒸発温度が第二蒸発工程の凝縮水温度より低い場合に適用される。
【0025】
第一蒸発装置には、希釈誘導溶液の投入口と、加熱によって揮発した誘導溶液の溶質と水蒸気からなるガスの排出口と、残存する浄水の排出口が設けられ、希釈誘導溶液の投入口は順浸透膜処理装置の希釈誘導溶液出口に、前記ガスの排出口は再生工程の熱交換器に、浄水の排出口は浄水タンクあるいは掘削用水タンクにそれぞれ配管接続される。
【0026】
再生工程
再生工程は前記ガスを冷却して前記誘導溶液を再生する工程であり、熱交換器が用いられる。冷却する熱源には順浸透膜処理装置から排出される希釈誘導溶液などを利用することができる。再生された誘導溶液は順浸透工程で再利用される。
【0027】
第二蒸発工程
第二蒸発工程は、前記ろ過処理工程で得られる膜濃縮水と前記順浸透工程で得られる膜濃縮水とを蒸発濃縮し、蒸発濃縮水と凝縮水を得る工程であり、第二蒸発装置には通常の蒸発缶、すなわち、単一缶、多重効用缶、蒸気圧縮式蒸発缶、多段フラッシュ蒸発缶などを使用することができる。蒸発は、熱源に応じて常圧で行わせてもよく、減圧してもよい。凝縮水は、そのまま第一蒸発装置に投入し、あるいは熱交換器等を介してそれに含まれる熱を第一蒸発工程における熱源として利用することが好ましい。蒸発濃縮水は次工程に送られる。
【0028】
晶析工程
晶析工程は、前記蒸発濃縮水を更に蒸発濃縮し、該蒸発濃縮水に含有される塩類を析出させるとともに凝縮水を得る工程であり、晶析装置には、密閉型の通常の晶析缶を利用できる。凝縮水は、前工程の凝縮水と同様にして第一蒸発工程における熱源として利用することが好ましい。一方、晶析装置から取出されるスラリーは個液分離して、結晶および有機物を含んでいる母液は産廃処分されるか、あるいは重金属や有機物等の環境汚染成分をほとんど含まない場合には融雪剤等に利用することもできる。
【実施例】
【0029】
本発明の実施の一例を
図1により説明する。
図1の装置は、反応槽、MF膜(精密膜ろ過装置)、FO膜(順浸透膜処理装置)、蒸発缶(第一蒸発装置)、蒸発装置(第二蒸発装置)、晶析装置がこの順に配置されている。
【0030】
稼動坑井から取出された原油から分離された1,000m
3/dの随伴水は、まず反応槽に投入され、そこで分散剤が添加されてCa
2+の析出が抑制され、次いでMF膜に送られる。MF膜では、随伴水に含まれる固形物が膜濃縮水として除去され、膜を通過した膜ろ過水はFO膜に送られる。そこでは、誘導溶液と膜を介して接触し、膜ろ過水に含まれる水が膜を通過して誘導溶液を希釈する。この希釈誘導溶液は、10kPaに減圧されている蒸発缶に入り、そこで加熱されて二酸化炭素、アンモニア、水蒸気からなるガスが沸点の45℃で蒸発する。この蒸発に必要な熱量は250GJ/dである。このガスは熱交換器を通って冷却されて誘導溶液に戻り、FO膜に返送される。この際、冷却水として随伴水やMFろ過水を用いれば、処理対象水の加温による粘度低下に伴う膜ろ過速度の増加効果も得られて好適である。蒸発缶に残った45℃の浄水は1,000m
3/dで取出されて薬剤が加えられ、掘削用水として再利用される。
【0031】
一方、水が順浸透膜を通過して離脱することによって濃縮された膜濃縮水は500m
3/dで蒸発装置に送られる。この蒸発装置は真空ポンプで内部が39kPaに減圧されており、また、ヒートポンプによる循環ラインが形成されていて途中で蒸気加熱され、内部を加熱するようになっている。蒸発装置からは75℃の凝縮水が分離され、250m
3/dで引抜かれる。
【0032】
蒸発装置の底部に溜った蒸発濃縮水はポンプで引抜かれて、一部は蒸発装置の頂部から内部に噴霧して戻され、一部は蒸発濃縮水として250m
3/dで晶析装置に送られる。晶析装置にはポンプで抜き出して加熱器で加熱して返送する加熱機構が設けられており、内部の蒸発濃縮水を更に蒸発濃縮するようになっている。濃縮により析出した塩類の結晶は晶析装置の底部から抜き出される。一方、蒸発した凝縮水は250m
3/dで抜き出されて加熱器で75℃に加熱後、蒸発装置からの250m
3/dの凝縮水と合流して75℃の凝縮水が500m
3/d(63GJ/d)で蒸発缶に送られてその熱が利用される。蒸発缶には不足の熱量(187GJ/d)が蒸気としてさらに加えられる。
【0033】
この凝縮水の熱量を廃熱利用することによる蒸気削減効果は次のようになる。
【0034】
【表1】
この廃熱利用による蒸気削減は25%である。
【0035】
本発明により、油井等の坑井から原油等とともに排出される随伴水を処理して再利用できるので、各地の坑井に幅広く利用できる。