特許第5900746号(P5900746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5900746
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月6日
(54)【発明の名称】電動車両の回生制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/10 20060101AFI20160324BHJP
【FI】
   B60L7/10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-141479(P2012-141479)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-7844(P2014-7844A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】林 邦繁
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−079907(JP,A)
【文献】 特開2008−120378(JP,A)
【文献】 特開2003−235104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
該バッテリからの電力により車輪を駆動しうる駆動用モータと、
該駆動用モータの動作を制御する駆動用モータ制御手段と、
車輪の回転エネルギを前記駆動用モータによって電気エネルギに変換して回生する回生動作を実行する回生実行手段と、
前記回生動作における回生レベルを可変に構成され、当該回生レベルを人為的に設定操作しうる回生レベル設定手段と、
該回生レベル設定手段の操作を可能な状態に切り替える切替手段と、
該回生レベル設定手段によって設定された回生レベルを記憶する回生レベル記憶手段と、
を備え、
前記回生実行手段は、前記切替手段によって操作可能な状態に切り替えられた際、前記回生レベル記憶手段に記憶されている最後の回生レベルに基づいて初期レベルを設定し、且つ前記回生レベル記憶手段に記憶されている最後の回生レベルと共に、車両状況に基づいて前記初期レベルを決定することを特徴とする電動車両の回生制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の電動車両の回生制御装置であって、
前記車両状況には、車両の傾斜情報が含まれていることを特徴とする電動車両の回生制
御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動車両の回生制御装置であって、
前記車両状況には、車両の速度情報が含まれていることを特徴とする電動車両の回生制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の電動車両の回生制御装置であって、
前記車両状況には、車両が走行する道路の地図情報が含まれていることを特徴とする電動車両の回生制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を駆動源として用いる電動車両における回生動作を制御する回生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車(EV)や、ハイブリッド自動車(HEV)等の電動車両においては、車両の減速時等に電動機を発電させることで、すなわち回生動作を行うことで、制動力を得ると共にバッテリの充電を行う技術が知られている。
【0003】
このような回生動作に伴う制動力(回生制動力)は、車両の挙動に影響し、操作性や快適性を低下させる虞がある。このため、運転者の意志により回生制動力を適宜調整することができるようにしたものがある。具体的には、例えば、回生レベルを人為的に設定操作しうる回生レベル設定手段が設けられた電気自動車用回生ブレーキ制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−79907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のように、回生レベルを人為的に設定することで、車両の操作性や快適性を向上することはできる。
【0006】
しかしながら、回生レベルの設定を人為的な操作に任せてしまうと、操作が煩わしくなりすぎてしまい、操作性や快適性が逆に低下してしまう虞がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、回生動作に伴う車両の操作性や快適性をより確実に向上することができる電動車両の回生制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、バッテリと、該バッテリからの電力により車輪を駆動しうる駆動用モータと、該駆動用モータの動作を制御する駆動用モータ制御手段と、車輪の回転エネルギを前記駆動用モータによって電気エネルギに変換して回生する回生動作を実行する回生実行手段と、前記回生動作における回生レベルを可変に構成され、当該回生レベルを人為的に設定操作しうる回生レベル設定手段と、該回生レベル設定手段の操作を可能な状態に切り替える切替手段と、該回生レベル設定手段によって設定された回生レベルを記憶する回生レベル記憶手段と、を備え、前記回生実行手段は、前記切替手段によって操作可能な状態に切り替えられた際、前記回生レベル記憶手段に記憶されている最後の回生レベルに基づいて初期レベルを設定し、且つ前記回生レベル記憶手段に記憶されている最後の回生レベルと共に、車両状況に基づいて前記初期レベルを決定することを特徴とする電動車両の回生制御装置にある。
【0009】
かかる第1の態様では、少ない操作回数で、運転者の好みに合わせた操作性や快適性を実現することができる。
【0012】
本発明の第の態様は、第の態様の電動車両の回生制御装置であって、前記車両状況には、車両の傾斜情報が含まれていることを特徴とする電動車両の回生制御装置にある。
【0013】
かかる第の態様では、運転者の好みに合わせた操作性や快適性をより確実に実現する
ことができる。
【0014】
本発明の第の態様は、第1又は2の態様の電動車両の回生制御装置であって、前記車両状況には、車両の速度情報が含まれていることを特徴とする電動車両の回生制御装置にある。
【0015】
かかる第の態様では、運転者の好みに合わせた操作性や快適性をより確実に実現する
ことができる。
【0016】
本発明の第の態様は、第1〜3の何れか一つの態様の電動車両の回生制御装置であって、前記車両状況には、車両が走行する道路の地図情報が含まれていることを特徴とする電動車両の回生制御装置にある。
【0017】
かかる第の態様では、運転者の好みに合わせた操作性や快適性をより確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
かかる本発明では、運転者が回生動作の程度(回生レベル)を人為的に設定することができるため、運転者の好みに合わせた操作性や快適性を実現することができる。さらに、回生レベルを記憶しておき、その記憶された情報に基づいて回生レベルを設定することで、運転者の操作回数を減らしつつ、操作性や快適性をより効果的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係る電動車両の構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態1に係る回生制御装置の構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態1に係るフロアシフト操作装置の動作を説明する図である。
図4】本発明の実施形態1に係るパドルスイッチ装置の操作による回生レベルの変化を説明する図である。
図5】本発明の実施形態1に係るフロアシフト操作装置による回生レベルの変化を説明する図である。
図6】本発明の実施形態2に係る回生制御装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1に示すように、電動車両の一例である電気自動車1は、二次電池であるバッテリ2と、このバッテリ2からの電力供給により作動する駆動用モータ3とを備える。駆動用モータ3は、駆動機構4を介して駆動輪(本実施形態では、前輪)5に連結されている。駆動機構4としては、例えば、CVT(無段自動変速機)、デファレンシャルギア等が挙げられる。駆動用モータ3は、駆動機構4を介して駆動輪5を駆動させる一方、いわゆる回生動作時には、駆動輪5からの回転を受けて発電し、その電力をバッテリ2に供給する。
【0022】
また駆動用モータ3とバッテリ2との間には、モータ制御部6が設けられている。モータ制御部6は、駆動用モータ3の動作(出力)、すなわちバッテリ2から駆動用モータ3の電力供給を適宜制御する。
【0023】
またモータ制御部6には、フロアシフト操作装置7及びパドルスイッチ装置8が接続されている。モータ制御部6は、電気自動車1の走行状態に応じて駆動用モータ3を制御すると共に、運転者によるフロアシフト操作装置7及びパドルスイッチ装置8の操作に応じて、駆動用モータ3の出力を適宜制御する。
【0024】
本発明に係る回生制御装置10は、フロアシフト操作装置7及びパドルスイッチ装置8と、モータ制御部6とを備え、以下に説明するように、これらフロアシフト操作装置7及びパドルスイッチ装置8の操作に応じて、回生の程度(回生レベル)の制御を行っている。
【0025】
図2に示すように、回生制御装置10を構成するモータ制御部6は、駆動用モータ制御手段61と、回生実行手段62と、回生レベル記憶手段63と、を備える。
【0026】
駆動用モータ制御手段61は、電気自動車1の走行状態等に応じて駆動用モータ3の出力を適宜制御する。
【0027】
回生実行手段62は、例えば、減速時等に、駆動輪5の回転エネルギを駆動用モータ3によって電気エネルギに変換して回生する、いわゆる回生動作を実行する。すなわち回生動作においては、駆動輪5の回転を利用して駆動用モータ3で発電し、その電力によってバッテリ2を充電する。
【0028】
回生レベル記憶手段63は、回生レベル設定手段としてのフロアシフト操作装置7又はパドルスイッチ装置8を操作することで設定された回生レベルを記憶する。ここで回生レベルとは、言い換えれば減速度のレベルのことであり、回生レベルが高いほど減速度のレベルも高くなる。この回生レベルは、フロアシフト操作装置7又はパドルスイッチ装置8を操作することで複数段階での設定が可能となっている。そして回生レベル記憶手段63は、回生レベルの設定が変更される毎に、新たに設定された回生レベルを記憶する。このとき、回生レベル記憶手段63は、記憶している回生レベルを新たな回生レベルに更新してもよいし、複数回における回生レベルの設定変更を記憶するようにしてもよい。
【0029】
そして回生実行手段62は、フロアシフト操作装置7及びパドルスイッチ装置8の操作を検出し、その検出結果に基づいて所定の回生レベルで回生動作を行う。また詳しくは後述するが、本実施形態では、回生実行手段62は切替手段としてのフロアシフト操作装置7の操作により、回生レベル設定手段としてのフロアシフト操作装置7の操作が可能な状態に切り替えられた際、回生レベル記憶手段63に記憶されている最後の回生レベルに基づいて新たな回生レベル(初期レベル)を設定する。本実施形態では、回生実行手段62は、上記のタイミングで、回生レベル記憶手段63に記憶されている最後の回生レベルを初期レベルとして設定する。
【0030】
フロアシフト操作装置7は、電気自動車1のフロア部に設けられ、本実施形態では回生レベル設定手段及び切替手段としての機能を備えている。このフロアシフト操作装置7は、シフトレバー71を備えると共に、第1〜第3のシフト経路72〜74を備えている。第1のシフト経路72では、シフトレバー71の操作により、例えば、P(パーキング),R(リバース),N(ニュートラル),D(ドライブ),B(ブレーキ)レンジ等のシフト位置の切り替えを行う。なお詳しくは後述するが、シフト位置をDレンジからBレンジに切り替えることで回生レベルが変更される。
【0031】
また第2のシフト経路73は、M(マニュアル)レンジを構成し、詳しくは後述するが、回生動作における回生レベルのアップ・ダウンの手動による(人為的な)設定が行われる。すなわち、この第2のシフト経路73におけるシフトレバー71の操作が、回生レベル設定手段としてのフロアシフト操作装置7の操作に相当する。
【0032】
第3のシフト経路74は、第1のシフト経路72と第2のシフト経路73とを接続するものであり、この第3のシフト経路74を介してシフトレバー71が第1のシフト経路72から第2のシフト経路73に移動される。このシフトレバー71の第1のシフト経路72から第2のシフト経路73への移動により、フロアシフト操作装置7は回生レベルの手動による設定操作が可能な状態となる。つまり、このシフトレバー71の第1のシフト経路72から第2のシフト経路73への移動が、切替手段としてのフロアシフト操作装置7の操作に相当する。
【0033】
なお第1のシフト経路72は、シフトレバー71が、P,R,N,D,Bの各レンジに対応する位置に保持されるように構成されている。一方、第2のシフト経路73は、シフトレバー71を「−」表示側、又は「+」表示側に傾倒すると、その後、シフトレバー71が元の中心位置に自動復帰するように構成されている。
【0034】
パドルスイッチ装置8は、一対のスイッチレバー81,82を備えている。これら一対のスイッチレバー81,82は、電気自動車1のステアリングホイール9の軸部に取り付けられている。また一対のスイッチレバー81,82は、それぞれ独立して操作可能に構成されている。そして本実施形態では、これらのスイッチレバー81,82によっても、回生動作時の回生レベルを変更できるようになっている。具体的には、左側のスイッチレバー81は、運転者が手前側(ステアリングホイール9の側)に引き起こすことにより、回生レベルをアップさせる指令を出力するスイッチであり、「−」の表示が設けられている。右側のスイッチレバー82は、回生レベルをダウンさせる指令を出力するスイッチであり、「+」の表示が設けられている。
【0035】
次に、このような構成の回生制御装置10の動作について説明する。上述のように、回生制御装置10では、フロアシフト操作装置7及びパドルスイッチ装置8の操作によって回生レベルを人為的に設定操作することができる。例えば、本実施形態に係る回生制御装置10は、回生レベルをB0〜B5の6段階で設定することができる。なお回生レベルがB0に設定されると回生が最も弱く、回生レベルがB5に設定されると回生が最も強くなる。また本実施形態では、回生が常時実行されており、Dレンジにおける回生レベル(初期設定)はB2相当に設定されている。
【0036】
図3(a)に示すように、まず電気自動車1が走行を開始してシフトレバー71を第1のシフト経路72においてPレンジからDレンジに移動させると、回生レベルはB2相当に設定される。通常走行ではこの回生レベルが維持されるが、運転者がフロアシフト操作装置7又はパドルスイッチ装置8を操作することで、回生レベルが変更される。
【0037】
例えば、パドルスイッチ装置8の一方のスイッチレバー(−)81を操作した(引き起こした)場合(図2参照)、回生レベルは、図4(a)に矢印で示すように、B2からB3にアップする。なおシフトレバー71を第1のシフト経路72においてDレンジからBレンジに移動させた場合にも、回生レベルは、B2からB3にアップする。その後、スイッチレバー81を一回操作する毎に、回生レベルは順次アップする。例えば、回生レベルがB3に設定された状態で、スイッチレバー81を操作することで、図4(b)に示すように、回生レベルはB3からB4に変更される。一方、他方のスイッチレバー(+)82を一回操作する毎に、回生レベルは順次ダウンする。
【0038】
また回生レベルがB2相当に設定(初期設定)された状態で、運転者が他方のスイッチレバー82を操作した場合(図2参照)、回生レベルは、図4(c)に示すように、B2からB1にダウンする。その後、スイッチレバー82を一回操作する毎に、回生レベルが順次ダウンする。またスイッチレバー81を一回操作する毎に、回生レベルが順次アップする。さらに本実施形態では、スイッチレバー81又はスイッチレバー82の何れかを長引きすることで、図4(d)に示すように、現在の回生レベルに拘わらず、Dレンジにおける初期状態であるB2相当に戻るように構成されている。なおシフト位置がBレンジにある場合には、スイッチレバー81又はスイッチレバー82の何れかを長引きすることで、Bレンジにおける初期状態であるB3相当に戻るようになっている。
【0039】
このような一対のスイッチレバー81,82の操作によって変更された回生レベルは、回生レベル記憶手段63によって記憶される。なお回生レベル記憶手段63によって記憶された回生レベルの情報はキーオフ後も残る。
【0040】
また回生レベルの設定操作は、パドルスイッチ装置8だけでなく、フロアシフト操作装置7によっても行うことができる。その場合、まずは図3(b)に示すように、第1のシフト経路72のDレンジに位置するシフトレバー71を、第3のシフト経路74を介して第2のシフト経路73に移動させる。これにより、フロアシフト操作装置7の操作レンジが回生レベルを手動で可変できる状態(Mレンジ)に切り替わる。そして、Mレンジでのフロアシフト操作装置7の切替操作により、回生レベルが適宜変更される。本実施形態では、シフトレバー71を「−」表示側に傾倒する毎に回生レベルが順次アップし、シフトレバー71を「+」表示側に傾倒する毎に回生レベルが順次ダウンする。
【0041】
ここで、シフトレバー71をDレンジからMレンジに移動させた場合、初期状態では回生レベルはB2のままである。一方、上述のように回生レベル記憶手段63によって回生レベルが記憶されている場合、回生レベル記憶手段63に記憶されている最後の回生レベルが、Mレンジにおける回生レベルとなる。
【0042】
例えば、山道等における下り坂を走行しており、前回キーオフ時の回生レベルがB5であった場合、電気自動車1の走行を再開し、第1のシフト経路72から第2のシフト経路73にシフトレバー71を移動することで、すなわちシフト位置をDレンジからMレンジに切り替えることで、図5(a)に示すように、Dレンジでの回生レベルがB2からB5に設定変更される。勿論、キーオフしない場合でも、シフトレバー71を第1のシフト経路72から第2のシフト経路73に移動させた場合には、回生レベル記憶手段63に記憶されている最後の回生レベルが適用される。同様に、シフト位置をDレンジからBレンジに切り替えた場合にも、回生レベル記憶手段63に記憶されている最後の回生レベルが適用される。
【0043】
また例えば、高速道路等を走行しており、前回のキーオフ時の回生レベルがB1であった場合、第1のシフト経路72から第2のシフト経路73にシフトレバー71を移動することで、すなわちシフト位置をDレンジからMレンジに変更することで、図5(b)に示すように、回生レベルがB2からB1に変更される。なおシフトレバー71を第2のシフト経路73から第1のシフト経路72に移動させることで、すなわちシフト位置をMレンジからDレンジに戻すことで、現在の回生レベルに拘わらず回生レベルは初期状態(B2相当)に戻る。
【0044】
このように、前回の回生レベルを記憶しておき、その記憶された情報に基づいて回生レベルを設定することで、運転者による操作回数を減らしつつ、操作性や快適性をより効果的に向上することができる。例えば、山道等で電気自動車1を一旦停車させ、再度走行を開始する場合等であっても、少ない操作回数で所望の回生レベルに設定することが可能となる。
【0045】
上述したようにDレンジでの回生レベルがB2である状態で、例えば、スイッチレバー81の操作により回生レベルをB5に設定しようとすると、回生レベルはB2からB3、B4、B5の順で変更されるため(図4参照)、3回のレバー操作が必要となる。これに対し、シフトレバー71の操作の場合、1回の操作で所望の回生レベルをB5に設定変更することができる。
【0046】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る回生制御装置の構成を示す概略図であり、実施形態1に係る回生制御装置と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態は、回生実行手段62Aが、回生レベル記憶手段63に記憶されている最後の回生レベルと共に、車両状況に基づいて回生レベル(初期レベル)を決定する。
【0048】
車両状況の特定方法は、特に限定されないが、例えば、電気自動車1の傾斜状態や速度、走行する道路の地図情報等から特定すればよい。
【0049】
具体的には、図6に示すように、本実施形態に係る回生制御装置10Aは、坂道等を走行することによる電気自動車1の傾斜状態を検出する傾斜センサ20と、電気自動車1の速度を検出する速度センサ30と、を備える。さらに電気自動車1が走行する道路の地図情報を取得する地図情報取得装置40を備える。なお地図情報取得装置40の構成は特に限定されないが、代表例としては、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)を利用したカーナビゲーション装置が挙げられる。
【0050】
そして、回生実行手段62Aは、回生レベル記憶手段63に記憶されている最後の回生レベルと共に、これら車両の傾斜情報、車両の速度情報、車両が走行する道路の地図情報等から特定される車両状況に基づいて回生レベル(初期レベル)を決定する。
【0051】
例えば、実施形態1では、山道等における下り坂を走行しており、記憶されている回生レベルがB5であった場合、第1のシフト経路72から第2のシフト経路73にシフトレバー71を移動することで、すなわちシフト位置をDレンジからMレンジに変更することで、回生レベルがB2からB5に設定変更される例を説明した(図5参照)。これに対し、本実施形態では、記憶されている回生レベルがB5であった場合でも、回生レベルがB5に設定されない場合もある。例えば、車両の現在の傾斜角度(下り傾斜)が比較的小さい車両状況である場合、記憶されている回生レベルと共にその車両状況を考慮して、所定の回生レベル(例えば、B4)に設定する。
【0052】
このように、記憶されている回生レベルと共に、車両状況に基づいて回生レベルを決定することで、回生レベルをより適切に設定することができ、車両の操作性や快適性をさらに効果的に向上することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0054】
例えば、上述の実施形態では、パドルスイッチ装置8の一方のスイッチレバー(−)81を操作すると回生レベルがアップし、他方のスイッチレバー(+)82を操作すると回生レベルがダウンする例を説明したが、スイッチレバー81,82の操作はこれに限定されるものではない。例えば、上述の例とは逆に、スイッチレバー(−)81を操作すると回生レベルがダウンし、スイッチレバー(+)82を操作すると回生レベルがアップするようにしてもよい。同様に、シフトレバー71の操作も上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、シフトレバー71を「+」表示側に傾倒させる毎に回生レベルが順次アップし、シフトレバー71を「−」表示側に傾倒する毎に回生レベルが順次ダウンするようにしてもよい。
【0055】
また上述の実施形態では、回生レベル設定手段及び切替手段としてのフロアシフト操作装置と共に、パドルスイッチ装置によっても回生レベルの設定操作を行うことができる構成を例示したが、パドルスイッチ装置は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0056】
またフロアシフト操作装置の代わりに、パドルスイッチ装置が回生レベル設定手段及び切替手段として機能するようにしてもよい。この場合には、フロアシフト操作装置によって回生レベルの設定を行うことができなくてもよい。
【0057】
またフロアシフト操作装置又はパドルスイッチ装置が、回生レベル設定手段及び切替手段として機能する必要はなく、これら回生レベル設定手段と切替手段とは別々に設けられていてもよい。
【0058】
また回生レベル設定手段及び切替手段の構成は特に限定されず、上述したフロアシフト操作装置又はパドルスイッチ装置だけでなく、例えば、いわゆるコラムシフトやインパネシフト、或いはモーメンタリスイッチ等で構成されていてもよい。
【0059】
また上述の実施形態では、電動車両の一例として電気自動車を一例として本発明を説明したが、勿論、本発明は、駆動用モータと共にエンジン(内燃機関)を備えるハイブリッド自動車等にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0060】
1 電気自動車
2 バッテリ
3 駆動用モータ
4 駆動機構
5 駆動輪
6 モータ制御部
7 フロアシフト操作装置
8 パドルスイッチ装置
9 ステアリングホイール
10 回生制御装置
20 傾斜センサ
30 速度センサ
40 地図情報取得装置
71 シフトレバー
72 第1のシフト経路
73 第2のシフト経路
74 第3のシフト経路
81,82 スイッチレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6