(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2貫通孔の長穴は、前記第1貫通孔を中心とする円状軌跡に沿った略円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料フィルタの取付け構造。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジン等の燃料供給経路内に介装される燃料フィルタは、エンジンルーム内に配設される。例えば、燃料フィルタは、特許文献1に記載のように、支持ブラケットを介して車体に固定されている。この取付け構造では、支持ブラケットに燃料フィルタがボルトにより組み付けられ、この支持ブラケットが車体に固定される構造となっている。
【0003】
また、燃料フィルタを車体に取り付ける取付け構造として、
図11に示すように、車体に固定される固定ブラケット51と、燃料フィルタ52を支持する支持ブラケット53と、燃料フィルタ52を防護するプロテクタ(図示しない)とを備えたものがある。
この取付け構造にて燃料フィルタ52を車体に固定する場合には、まず、支持ブラケット53を燃料フィルタ52に組み付ける。
次に、燃料フィルタ52が組み付けられた状態の支持ブラケット53を、車体側に予め固定した固定ブラケット51に近づけつつ、固定ブラケット51の3箇所に設けられたボルト54a〜54cに支持ブラケット53の貫通孔をそれぞれ挿通させる。
続いて、支持ブラケット53をボルト54a〜54cに係止した状態で、各ボルト54a〜54cのうち、仮止め用に設けられた1箇所のボルト54aにナット55aを螺合させて、支持ブラケット53を固定ブラケット51に仮止めする。
次に、プロテクタを支持ブラケット53に近付けつつ、ナット55aが螺合されていないボルト54b、54cにプロテクタの貫通孔をそれぞれ挿通させ、ボルト54b、54cにそれぞれナット55b、55cを螺合させるとともに、工具で各ナット55b、55cを締め付けてプロテクタ及び支持ブラケット53を固定ブラケット51に本固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料フィルタの取付け構造では、燃料フィルタを脱着する場合に、燃料フィルタを片手で保持した状態で、ボルトの締結作業をしなければならず、作業性が悪い上、脱着作業時に不注意により燃料フィルタを落としてしまう危険性が大きいと考えられる。特に、作業者の手が届きにくい位置、他部材に隠れて目視し難い位置、周囲の作業スペースが少ない位置等に燃料フィルタが配置される場合には、上記問題がより顕著となり、特許文献1に記載の取付け構造では、燃料フィルタの脱着作業に手間や時間がかかり作業効率が低くなるという問題があると考えられる。
【0006】
また、
図11に示した燃料フィルタの取り付け構造では、支持ブラケットを固定ブラケットに仮止めすることができるので、脱着時における燃料フィルタ脱落の危険性は改善されるが、仮止めするためのボルトとナットを余分に設置するため、部品点数が多くなる上、支持ブラケットや固定ブラケットが大型化されてしまう傾向にあった。また、仮止めを行うためのナットの締結作業が増えるため、作業効率の点において改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであって、燃料フィルタをエンジンルーム内に取り付ける際の脱着作業を効率良く行うことが可能な燃料フィルタの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明に係る燃料フィルタの取付け構造は、燃料フィルタをエンジンルーム内に取り付ける燃料フィルタの取付け構造であって、
前記エンジンルーム内で車体に固定される固定部と、当該固定部から左右幅方向へそれぞれ延設された一対の延設部とを具有する固定ブラケットと、
前記一対の延設部にそれぞれ設けられた2本のボルトと、
前記燃料フィルタが組み付けられる支持部と、前記支持部の左右幅方向側端部に形成されて、前記一対の延設部に重合して固定される一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部の一方に設けられて前記ボルトを挿通可能な第1貫通孔と、前記一対のフランジ部の他方に長穴状に形成されて前記ボルトを挿通可能な第2貫通孔と、前記他方のフランジ部から前記固定ブラケット側へ向かって斜め上方に傾斜するように延設されて、前記他方のフランジ部に重なる他方の前記延設部の上部に嵌合可能に構成されたフック部とを具有する支持ブラケットと、を備え、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に前記ボルトを挿通した状態で前記一対のフランジ部が前記一対の延設部に重なる位置まで前記支持ブラケットを移動した際、前記フック部が前記フック部の傾斜に沿って前記他方の延設部の上部を乗り越えて前記他方の延設部の上部に嵌合され、前記支持ブラケットが前記固定ブラケットに仮止め状態に係止されることを特徴とする。
【0009】
上記燃料フィルタの取付け構造によれば、燃料フィルタが組み付けられた支持ブラケットの各フランジ部にそれぞれボルトを挿通した状態で支持ブラケットのフック部を他方の延設部の上部に嵌合させることで、支持ブラケットを固定ブラケットに係止させて仮止め状態とすることができる。このとき、支持ブラケットは、各フランジ部にそれぞれ挿通されたボルトと、他方の延設部に嵌合されたフック部とにより確実に固定ブラケットに係止され、脱着作業時における燃料フィルタの落下を防止することができる。そのため、燃料フィルタを車体に取り付ける場合、燃料フィルタを組み付けた支持ブラケットを固定ブラケットに仮止めした状態で、支持ブラケットに挿通された2本のボルトにそれぞれナットを締結するだけの簡単な作業で燃料フィルタを車体へ取り付けることができる。したがって、従来のように燃料フィルタやブラケットを片手で保持しながら作業をする必要がなく、簡単かつ確実に燃料フィルタの脱着作業をすることができる。
また、フック部が固定ブラケット側へ向かって斜め上方に傾斜するように延設され、フック部が他方の延設部の上部を乗り越えて嵌合する構成としているので、支持ブラケットの第1貫通孔及び第2貫通孔に固定ブラケットのボルトをそれぞれ通しつつ、支持ブラケットの両フランジ部がそれぞれ各延設部に重なる位置まで移動させてやるだけで、フック部が自身の傾斜に沿って他方の延設部の上端部を乗り越えて嵌合される。ゆえにフック部と他方の延設部を嵌合させるための特別な操作が必要なく、支持ブラケットを固定ブラケット側へ押し込んでやるだけで、自動的に仮止め状態にすることができる。これにより、燃料フィルタを固定する際の作業の手間及び時間を低減でき、燃料フィルタの脱着作業の効率を向上させることができる。
【0010】
また、前記フック部は、前記他方の延設部の上部に嵌合可能な開口部を有し、
前記他方の延設部は、その上部が前記開口部の幅よりも長さが小さく設定された上端部と、前記上端部から下方側に傾斜され、前記他方の延設部の幅方向の長さが下方に行くにしたがって次第に大きくなるよう形成された傾斜部とを有することが好ましい。
【0011】
このように、他方の延設部の上端部の幅方向の長さがフック部の開口部の幅方向の長さよりも小さく設定されているため、他方の延設部の上部が開口部に容易に嵌るので、フック部と延設部との嵌合がスムーズに行われる。したがって仮止めの操作が容易となる。
しかも、傾斜部が他方の延設部の幅方向の長さが下方に行くにしたがって次第に大きくなるよう形成されているので、嵌合状態におけるフック部と他方の延設部の面との接触長を比較的長くとることができる。
【0012】
また、前記第2貫通孔の長穴は、前記第1貫通孔を中心とする円状軌跡に沿った略円弧状に形成されていることが好ましい。
【0013】
このように、第2貫通孔は略円弧状に形成されているため、第1貫通孔に挿通されたボルトの位置を中心として支持ブラケットをスムーズに回動させることができる。そのため、仮止めする際の支持ブラケットの移動がスムーズとなり、燃料フィルタの脱着作業がより行い易くなる。
【0014】
また、前記燃料フィルタを囲って前記燃料フィルタを防護するプロテクタを更に備え、
前記プロテクタは、前記ボルトを挿通可能な貫通孔を設けた締結部を有しており、前記支持ブラケットを前記固定ブラケットに仮止めした状態で、前記ボルトを前記締結部の前記貫通孔にそれぞれ挿通させてナットを前記ボルトに螺合して締め付けることで、前記プロテクタが前記支持ブラケットと共に前記固定ブラケットに固定されることが好ましい。
【0015】
このように、支持ブラケットを固定するためのボルトを利用してプロテクタを固定する構成としているので、プロテクタを固定するためのボルト等を新たに別途設ける必要がなく、部品点数や作業工数を低減することができる上、支持ブラケットや固定ブラケットを簡素化して小型化することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃料フィルタをエンジンルーム内に取り付ける際の脱着作業を効率良く行うことが可能な燃料フィルタの取付け構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料フィルタを備えた車両のエンジンルームを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る燃料フィルタを備えた車両のエンジンルームを示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る燃料フィルタが車体に固定された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図2のA部拡大図であり、燃料フィルタを車体に取り付けた状態を示す図である。
【
図5】燃料フィルタを車体に取り付けるための固定ブラケット、支持ブラケット及びプロテクタ等を示す斜視図である。
【
図6】燃料フィルタが組み付けられた支持ブラケットを固定ブラケットに固定する状態を示す斜視図である。
【
図7】支持ブラケットを固定ブラケットに仮止めする際の状態を示す斜視図であり、(A)は、フック部の先端部を延設部の上端部に当接させている状態を示し、(B)は、フック部の傾斜に沿って支持ブラケットのフランジ部側がボルトを中心として上方に回動された状態を示し、(C)は、フック部が延設部の上端部を乗り越えてフック部の開口部を延設部の上部に嵌合させて仮止めした状態を示す図である。
【
図8】支持ブラケットを固定ブラケットに仮止めする際の状態を示す側面図であり、(A)は、フック部の先端部を延設部の上端部に当接させている状態を示し、(B)は、フック部の傾斜に沿って支持ブラケットのフランジ部側がボルトを中心として上方に回動された状態を示し、(C)は、フック部が延設部の上端部を乗り越えてフック部の開口部を延設部の上部に嵌合させて仮止めした状態を示す図である。
【
図9】プロテクタを取り付けて、燃料フィルタを車体に固定する状態を示す斜視図である。
【
図10】燃料フィルタを車体に固定した状態を示す斜視図である。
【
図11】従来の取付け構造で燃料フィルタを車体に固定した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る燃料フィルタの取付け構造について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、以下の実施例において、車両前側から車両後側へ向かって車両左方、車両右方をそれぞれ左側、右側という。
【0019】
図1及び
図2は、それぞれ本発明の実施形態に係る燃料フィルタを備えた車両のエンジンルームを示す斜視図、平面図である。また、
図3は、本発明の実施形態に係る燃料フィルタが車体に固定された状態を示す斜視図である。
図1〜
図3に示すように、車両1のエンジンルーム2内のカウルトップ3の下方に燃料フィルタ4が配設されている。燃料フィルタ4は車体(ダッシュパネル)6に取り付けられている。
【0020】
図4は、
図2のA部拡大図であり、燃料フィルタ4を車体6に取り付けた状態を示す図である。また、
図5は、燃料フィルタ4を車体6に取り付けるための固定ブラケット、支持ブラケット及びプロテクタを示す斜視図である。
図4及び
図5に示すように、燃料フィルタ4の取付け構造5は、車体6に固定される固定ブラケット10と、燃料フィルタ4が組み付けられるとともに、固定ブラケット10に固定される支持ブラケット20と、燃料フィルタ4を間に挟んで支持ブラケット20に固定されて燃料フィルタ4を防護するプロテクタ30と、を備えている。
【0021】
固定ブラケット10は、車体6に固定される固定部11と、当該固定部11の左右幅方向端部から左右方向(以下、幅方向という)へそれぞれ延設された一対の延設部12、13とを備えている。
【0022】
固定部11には、貫通孔11aが形成されており、ボルト11bを当該貫通孔11aに挿通させて車体6に螺合することで、固定ブラケット10を車体6に固定することができる。
各延設部12、13は、後述する支持ブラケット20の各フランジ部22、23をそれぞれ固定する部位であり、それぞれボルト12a、13aが設けられている。詳細は後述するが、このボルト12a、13aとナット40とを締結することで支持ブラケット20が固定ブラケット10に固定される構成となっている。
なお、本実施形態では、各ボルト12a、13aが溶接等により予め各延設部12、13に設けられる構成としているが、各延設部12、13にボルト挿通用の貫通孔をそれぞれ形成し、別体のボルトで締結する構成としてもよい。
【0023】
また、一対の延設部12、13のうち、
図5中の車両右方側の延設部13(他方の延設部に相当)は、その上部が上端側から下方へ向かうにしたがって幅方向の長さが次第に大きくなる形状を有している。具体的には、延設部13の上端部13bから固定部11と反対側に向かって斜め下方に傾斜する傾斜部13dが形成されている。延設部13の上部は、上端部13bの幅方向の長さが後述する支持ブラケット20のフック部24の開口部25の幅方向の長さよりも小さく設定され、傾斜部13dの途中で延設部13の幅方向の長さが開口部25の幅方向の長さよりも大きくなるよう形成されている。
延設部13の上端部13bと傾斜部13dとの境界である角部13cは、面取りされており、曲線状に形成されている。
【0024】
支持ブラケット20は、燃料フィルタ4が組み付けられる支持部21と、支持部21の左右幅方向端部にそれぞれ形成されて、固定ブラケット10の各延設部12、13にそれぞれ重合して固定される一対のフランジ部22、23とを備えている。
【0025】
支持部21の中央部分には、貫通孔21aが形成されており、ボルト21bを当該貫通孔21aに挿通させて燃料フィルタ4に螺合することで、燃料フィルタ4を支持ブラケット20に組み付けることができる。
【0026】
一対のフランジ部22、23のうち、
図5中の車両左方側のフランジ部22には、固定ブラケット10の延設部12のボルト12aが挿通される円形状の貫通孔(第1貫通孔に相当)22aが設けられている。
【0027】
また、
図5中の車両右方側のフランジ部23(他方のフランジ部に相当)には、固定ブラケット10の延設部13のボルト13aが挿通される長穴状の貫通孔(第2貫通孔に相当)23aが設けられている。貫通孔23aは、貫通孔22aを中心とする円状軌跡に沿って略円弧状に形成されている。
さらに、フランジ部23には、固定ブラケット10の延設部13の上部に嵌合可能に形成されたフック部24が設けられている。
【0028】
フック部24は、フランジ部23から固定ブラケット10側へ向かって斜め上方に傾斜するように延設されている。また、フック部24は、その先端部24aが支持部21側へ向かって屈曲する略L字状に形成されており、フック部24の先端部24aと支持部21との間に、延設部13の上部に嵌合可能な開口部25を有している。そして、各フランジ部22、23の貫通孔22a、23aに固定ブラケット10のボルト12a、13aをそれぞれ挿通させて、各フランジ部22、23がそれぞれ延設部12、13に重ね合わされた状態となった際に、フック部24の開口部25が延設部13の上部に嵌合されるよう構成されている。そして、支持ブラケット20のフック部24と固定ブラケット10の延設部13との嵌合により固定ブラケット10に対して支持ブラケット20が係止され、燃料フィルタ4が仮止めされる仕組みとなっている。
【0029】
燃料フィルタ4を保護するプロテクタ30は、燃料フィルタ4の周囲を囲むように屈曲形成された板状の部材で構成されている。プロテクタ30の左右幅方向端部には、支持ブラケット20の各フランジ部22、23にそれぞれ重合して固定される一対の締結部30a、30bが形成されている。各締結部30a、30bには、ボルト12a、13aがそれぞれ挿通可能な貫通孔30c、30dがそれぞれ設けられている。
【0030】
支持ブラケット20及びプロテクタ30は、支持ブラケット20の各貫通孔22a、23a及びプロテクタ30の各貫通孔30c、30dにそれぞれ固定ブラケット10のボルト12a、13aをそれぞれ挿通させた状態で、ナット40を各ボルト12a、13aに螺合して締め付けることで固定ブラケット10に固定される。
そして、燃料フィルタ4は、周囲を支持ブラケット20とプロテクタ30で囲まれた状態で固定ブラケット10を介して車体6に固定される。
【0031】
次に、燃料フィルタ4を車体6に取付ける手順について以下で説明する。
【0032】
図6は、燃料フィルタ4が組み付けられた支持ブラケット20を固定ブラケット10に固定する状態を示す斜視図である。
図6に示すように、まず、固定ブラケット10を車体6にボルト11bで固定する。
次に、ボルト21b(
図5参照)を燃料フィルタ4に螺合することで、燃料フィルタ4を支持ブラケット20に組み付ける。そして、燃料フィルタ4が組み付けられた支持ブラケット20を固定ブラケット10側に移動させて、支持ブラケット20の各貫通孔22a、23aにそれぞれボルト12a、13aを挿通させる。
【0033】
図7及び
図8は、それぞれ支持ブラケット20を固定ブラケット10に仮止めする際の状態を示す斜視図、側面図であり、両図の(A)は、フック部24の先端部24aを延設部13の上端部13bに当接させている状態を示し、(B)は、フック部24の傾斜に沿って支持ブラケット20のフランジ部23側がボルト12aを中心として上方に回動された状態を示し、(C)は、フック部24が延設部13の上端部13bを乗り越えてフック部24の開口部25を延設部13の上部に嵌合させて仮止めした状態を示す図である。
【0034】
次に、
図7(A)及び
図8(A)に示すように、支持ブラケット20の各貫通孔22a、23aにそれぞれボルト12a、13aを挿通させた状態で、フック部24を延設部13の上端部13bに当接させつつ、支持ブラケット20を固定ブラケット10側へ移動させる。
【0035】
支持ブラケット20を固定ブラケット10側へ移動させていくと、
図7(B)及び
図8(B)に示すように、フック部24の傾斜に沿って支持ブラケット20のフランジ部23が上方側へ次第に持ち上げられる。そして、フランジ部22の貫通孔22aに挿通されたボルト12aを中心として支持ブラケット20のフランジ部23側が上方へ回動される。なお、貫通孔23aは、貫通孔22aを中心とする略円弧状の長穴に形成されているので、支持ブラケット20の回動が阻害されることはない。
【0036】
支持ブラケット20をさらに固定ブラケット10側へ移動させると、フランジ部23がさらに上方へ回動される。そして、フランジ部23が延設部13に重なり合う位置まで支持ブラケット20を移動させると、
図7(C)及び
図8(C)に示すように、フック部24の先端部24aが延設部13の上方を乗り越えてフック部24の開口部25に延設部13の上端部13bが嵌り込み、ボルト13aと貫通孔23aの上縁部が当接するまで支持ブラケット20のフランジ部23が下方へ回動される。そして、フック部24の開口部25が延設部13の上部(傾斜部13dの位置)に嵌合されて、支持ブラケット20が固定ブラケット10に係止される。このとき、フック部24の先端部24a(開口部25側の辺)が延設部13の裏面(フランジ部23が重なる側と反対側の面)に当接されている。これにより、支持ブラケット20が固定ブラケット10に仮止めされた状態となる。係る状態では、支持ブラケット20は、貫通孔22a、23aにそれぞれボルト12a、13aが挿通されるとともに、フック部24の開口部25が延設部13の上部(傾斜部13dの位置)に嵌合されているため、燃料フィルタ4が落下することはない。
なお、本実施形態では、延設部13の上端部13bの幅方向の長さをフック部24の開口部25の幅方向の長さよりも小さく設定するとともに、上端部13bから斜め下方に傾斜する傾斜部13dを形成することで、延設部13の上部をフック部24の開口部25が嵌合され易く、且つフック部24の先端部24aと延設部13の裏面との接触長が長くとれる形状としている。
【0037】
図9は、プロテクタ30を取り付けて、燃料フィルタ4を車体6に固定する状態を示す斜視図である。
次に、支持ブラケット20(燃料フィルタ4)が固定ブラケット10に仮止めされた状態で、プロテクタ30の各貫通孔30c、30dにそれぞれボルト12a、13aを挿通させながら、プロテクタ30を燃料フィルタ4側に近付ける。ボルト12a、13aがプロテクタ30から突出したら、
図10に示すように、各ボルト12a、13aにそれぞれナット40を螺合して工具を用いて締め付ける。これにより、支持ブラケット20及びプロテクタ30が、共に固定ブラケット10に固定される。そして、燃料フィルタ4が支持ブラケット20及び固定ブラケット10を介して車体6に取り付け固定される。
【0038】
上述した本実施形態に係る燃料フィルタ4の取付け構造5によれば、支持ブラケット20の各貫通孔22a、23aにそれぞれボルト12a、13aを挿通した状態で、支持ブラケット20のフック部24を延設部13の上部に嵌合させることで、支持ブラケット20を固定ブラケット10に確実に係止させて仮止めすることができる。このため、支持ブラケット20を固定ブラケット10に固定する際に、燃料フィルタ4や支持ブラケット20を片手で保持する必要がなく、簡単かつ確実に燃料フィルタ4の脱着作業を行うことができる。
しかも、フック部24が固定ブラケット10側に向かって斜め上方に傾斜され、フック部24の傾斜に沿ってフック部24が延設部13の上端部13bを乗り越えて嵌合される仕組みとなっているので、支持ブラケット20を固定ブラケット10に仮止めする際、支持ブラケット20の各貫通孔22a、23aにそれぞれ固定ブラケット10のボルト12a、13aを挿通させながら、支持ブラケット20を固定ブラケット10側に移動させてやるだけで、自動的にフック部24を延設部13に嵌合させることができ、簡単に仮止めを行うことができる。したがって、例えば、取り付け位置を作業中に目視できない状態であっても延設部13にフック部24を容易かつ確実に嵌合させることができる。
このように、支持ブラケット20を固定する際の手間及び時間を低減でき、燃料フィルタ4の脱着作業の効率を向上させることができる。
なお、本実施形態の取り付け構造5であれば、フック部24が延設部13に完全に嵌合されていない状態で各ボルト12a、13aとナット40が締結されたとしても、ボルト12a、13aにそれぞれナット40を螺合して締め付けた際に、支持ブラケット20が固定ブラケット10側に移動されて自動的にフック部24の開口部25が延設部13に嵌合されるため、支持ブラケット20は、固定ブラケット10に確実に固定される。したがって、誤った状態で支持ブラケット20が固定ブラケット10に固定されることを防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、延設部13の上端部13bの幅方向の長さが、開口部23の幅方向の長さよりも小さく設定され、さらに、傾斜部13dで上端側から下方へ向かうにしたがって幅方向の長さが次第に大きくなる形状とされているため、フック部24の開口部23を延設部13の上部に容易に嵌め込むことができる。また嵌合状態において、フック部24(先端部24a)が係止される延設部13の面を比較的広く設定でき、フック部24と延設部13との接触長を長く取ることができる。
また、上端部13bと傾斜部13dとの境界部分の角部13cが、面取りされて曲線状に形成されているため、フック部24が延設部13の上端部13bを乗り越えた際に開口部25と延設部13との嵌合がよりスムーズに行うことができる。
【0040】
また、支持ブラケット20のフランジ部23の貫通孔23aを略円弧状に形成しているので、フック部24の開口部25に延設部13を嵌合する際に、支持ブラケット20の貫通孔22aに挿通されたボルト12aの位置を中心として支持ブラケット20のフランジ部23側をスムーズに回動させることができる。したがって、仮止めする際の支持ブラケット20の移動もよりスムーズとなり、燃料フィルタ4の脱着作業が行い易くなる。
【0041】
さらに、プロテクタ30が支持ブラケット20とともに共締めにより固定ブラケット10に固定される構成とされているので、プロテクタ30を固定するためのボルト等を別途設ける必要がないため、部品点数や作業工数を低減することができる上、支持ブラケット20や固定ブラケット10を簡素化して小型化することもできる。しかも、支持ブラケット20を固定ブラケット10に仮止めした状態で、プロテクタ30の各締結部30a、30bをそれぞれボルト12a、13aに挿通させて、ナット40を締結させるだけの簡単な作業でプロテクタ30を確実に固定することができる。
以上説明したように本発明の燃料フィルタ4の取り付け構造5によれば、より簡単かつ確実に燃料フィルタ4を車体6に取り付けることが可能となり、脱着作業の効率化を図ることができる。